説明

調心機能付き転がり軸受

【課題】調心輪により調心性を持たせた軸受であって、高荷重にも対応可能でありながら、省スペースで、長寿命を達成する調心機能付きの転がり軸受を提供する。また、調心機能を円滑に行わせる調心機能付き転がり軸受を提供する。
【解決手段】固定部材に対して回転部材に調心性を持たせて回転支持するための調心機能付き転がり軸受であって、内輪と外輪、これらの間に転動自在に配置され、複列に設けられた複数の転動体、および調心輪を有し、この調心輪は、回転軸に対して嵌合される内周面と、球面状の外周面を有するとともに、上記内輪の内周面が、上記調心輪の球面状の外周面に密着する球面状に形成されている調心機能付き転がり軸受において、前記複列に設けられた転動体の荷重中心線が前記軸受の中心軸に向かうにつれ、互いに接近するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調心機能を設けた転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば圧延機のロール用の軸受等、比較的大荷重が作用し、かつ、調心性が要求される軸を支承する軸受には、一般に、図3に断面図を示すような調心機能付き転がり軸受が用いられる。(特許文献1)この調心機能付き転がり軸受においては、内輪12に2列の軌道面12a、12aが形成されているとともに、外輪11内周面に2列の軌道面11a、11aが設けられ、外輪11の外周面は球面の一部をなす形状とされている。そして、その内輪12と外輪11の間に、前記外輪と内輪とを相対回転させる複数のころ13が配置されている。
【0003】
また、前記外輪11の球面状の外周面に対応する様に、内周面を球面状にした調心輪20を設けることによって、前記調心輪の軸方向中心と、前記外輪11及び内輪12の軸方向中心とが相対的な回動が許容され、前記内輪12、外輪11が前記調心輪20に対して相対的に傾くことがきるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の様な調心機能付き転がり軸受にあっては、外輪外径側に調心機能を設けるスペースが必要となり、転動体のピッチ円直径の設計に制約を受けることが懸念されていた。言い換えると、昨今の軸受に要求される高荷重対応という課題に対して、転動体のピッチ円径を拡大し転動体の数を増加させるには限界が有った。また、複列の転動体の荷重中心線が、軸受中心軸に行くにつれ互いに離間するように配置されているため、転動体を受ける内輪の鍔部の強度を向上させる目的で内輪の大型化が避けられず、軸受の軸方向の小型化にも大きな制約となっていた。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、調心輪により調心性を持たせた軸受であって、高荷重にも対応可能でありながら、省スペースで、長寿命を達成する調心機能付きの転がり軸受の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための第一の発明は、固定部材に対して回転部材に調心性を持たせて回転支持するための調心機能付き転がり軸受であって、内輪と外輪、これらの間に転動自在に配置され、複列に設けられた複数の転動体、および調心輪を有し、この調心輪は、回転軸に対して嵌合される内周面と、球面状の外周面を有するとともに、上記内輪の内周面が、上記調心輪の球面状の外周面に密着する球面状に形成されている調心機能付き転がり軸受において、前記複列に設けられた転動体の荷重中心線が前記軸受の中心軸に向かうにつれ、互いに接近するように設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、第二の発明は、前記複列の各転動体の荷重中心線が軸受中心軸上で互いに交差するとともに、前記調心輪と前記内輪との接点が、前記荷重中心線上に位置するように転動体を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、調心輪を内輪内径側に配置することにより、要求される負荷容量に応じて転動体のピッチ円径を拡大し、転動体数を増加させることで、高荷重の要求に対応が可能となる。また、複列の転動体の各荷重中心線が軸受中心軸上で互いに交差するように、転動体を配置したので、転動体に負荷される荷重が複列の転動体で互いに打ち消す効果が生じ、内輪鍔部の補強も不要になり軸受の省スペース化に寄与できる。さらには、前記荷重中心線上に前記調心輪と前記内輪との接点が位置するように前記転動体を配置したので、円滑な調心が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の調心機能付き転がり軸受を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の調心機能付き転がり軸受の内輪分解図である。
【図3】従来の調心機能付き転がり軸受を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の調心機能付き転がり軸受は、図1に示すように、内輪2と、外輪1と、前記内輪2と前記外輪1間に複列配置される複数の転動体3と、前記内輪内径側に調心輪4とを備えている。
【0012】
調心輪4は中空円筒状に形成され、内径側に回転軸5が貫通固定されているとともに、外径面は凸状の球面形状に形成されている。そして、前記調心輪4の球面状外径面に対応するように、内輪2の内径面も凹状の球面状に形成され、軸受調心機能を可能としている。
【0013】
複列の転動体3が受ける荷重の中心線S1、S2は、各荷重中心線S1、S2が軸受中心軸Lに向かうにつれ、互いに接近するように設けられており、軸受中心軸上で互いに交差しても良い。
【0014】
前記内輪2と前記調心輪4との接点は、転動体3に負荷される荷重の中心線S1、S2上になるように転動体3を配置している。この様にすることで、外輪1、内輪2、調心輪4通しての荷重伝達方向が一致するため、円滑な調心が可能となる。
【0015】
また、従来では、調心輪と内輪との組み付けは、調心輪にスリットを入れて、調心輪を縮径させながら内輪を押し込んでいた(不図示)。しかしながら、本発明においては、図2に示すように、内輪2は左右対称に2分された分割部材2a、2bよりなり、凸球面状の調心輪4に対して軸受軸方向の両側から各分割部材2a、2bをスライドさせて覆い、分割部材2a、2bに設けられた貫通孔2cなどをボルト固定することで、内輪2と調心輪4との組付けが容易に行えるようになった。
【0016】
上記に説明したような構造を採用する事により、調心機能付き転がり軸受の高荷重要求に容易に対応できると共に、軸受の省スペース化に寄与し、円滑な調心を行うことに寄与できる。また、調心輪の組み付けも容易に行うことが出来る。
【符号の説明】
【0017】
1 外輪
2 内輪
3 転動体
4 調心輪
5 回転軸
2a 分割部材
2b 分割部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に対して回転部材に調心性を持たせて回転支持するための調心機能付き転がり軸受であって、内輪と外輪、これらの間に転動自在に配置され、複列に設けられた複数の転動体、および調心輪を有し、この調心輪は、回転軸に対して嵌合される内周面と、球面状の外周面を有するとともに、上記内輪の内周面が、上記調心輪の球面状の外周面に密着する球面状に形成されている調心機能付き転がり軸受において、前記複列に設けられた転動体の荷重中心線が前記軸受の中心軸に向かうにつれ、互いに接近するように設けられていることを特徴とする調心機能付き転がり軸受。
【請求項2】
前記複列の各転動体の荷重中心線が軸受中心軸上で互いに交差するとともに、前記調心輪と前記内輪との接点が、前記荷重中心線上に位置するように転動体を配置したことを特徴とする請求項1記載の調心機能付き転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29149(P2013−29149A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165213(P2011−165213)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】