説明

調整装置及び調整システム

【課題】安価で簡単な機構により被調整体の位置及び姿勢の調整を可能とさせる高精度の位置及び姿勢の調整装置を提供する。
【解決手段】調整装置13は、長手軸線方向に伸縮可能な伸縮機構と、該伸縮機構の先端に取付けられた自在機構47とを備え、伸縮機構を伸縮させることにより自在機構47を介して被調整体である支持台15の位置及び姿勢を調整する。自在機構47は、長手軸線方向に直交する面に沿って移動可能な平面移動機構と、長手軸線方向に対して揺動可能な揺動装置23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調整体の位置及び姿勢を調整するための調整装置及び調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ通信装置の送受信装置、例えばビル間のレーザ通信などで使用されるレーザ送信装置及びレーザ受信装置は、双方の光軸を一致させるために送信装置と受信装置との向きを調整する必要があり、このために、レーザ送信装置及びレーザ受信装置には、位置及び姿勢を微調整する調整装置が使用されている。この調整装置は、環境温度の変化によるレーザ送信装置及びレーザ受信装置の支持台や調整装置のわずかな変位による位置及び姿勢の変化を修正するものであって、長手軸線方向に伸縮可能な伸縮機構と、この伸縮機構の先端に取付けられた自在機構とを備えている。そして、複数個(通常3個)の調整装置によって支持台となる被調整体を支持し、各調整機構の長さを変化させることによって被調整体を介してレーザ送信装置及びレーザ受信装置の位置及び姿勢を修正する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザ通信で使用されるレーザ送信装置及びレーザ受信装置は、通常、屋外に設置されるため、レーザ送信装置やレーザ受信装置を支持する支持台やその調整装置が気温の変化により伸縮して、支持台の取付位置や姿勢に変化が生じることがある。ところが、支持台や調整装置は建物の床面や壁面などに固定されており、支持台や調整装置の寸法の変化に直ちに対応することができないため、支持台にひずみを生じさせ、レーザ送信装置やレーザ受信装置の向きなどに誤差を生じさせたり、支持台と調整装置との接続部が破損したりするという事故が発生することがあった。
また、従来技術の調整装置では、伸縮機構としてボールねじを用い、微調整を可能とするために、減速機を介してモータでボールねじを回転させて微調整を行うものが多い。ところが、ボールねじを使用すると、ねじのピッチが大きいので、微調整するために減速機を使用するか分解能の高いモータを使用することになり、調整装置が高価になるという問題があった。また、ボールねじは摩擦係数が低いためモータに常時通電しておかなければ風などによる長手軸線方向の負荷変動に対しボールねじが回転してしまうという問題もあった。
【0004】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解消して、安価で簡単な機構により支持台などの被調整体の位置及び姿勢を調整することを可能とする高精度の位置及び姿勢の調整装置及び調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的に鑑み、長手軸線方向に伸縮可能な伸縮機構と、該伸縮機構の先端に取付けられた自在機構とを備え、前記伸縮機構を伸縮させることにより前記自在機構を介して被調整体の位置及び姿勢を調整する調整装置において、前記自在機構が、前記長手軸線方向に直交する面に沿って移動可能な平面移動機構と、前記長手軸線方向に対して揺動可能な揺動機構とを有することを特徴とする調整機構を提供する。
【0006】
本発明の調整装置は、被駆動体である支持台と調整装置との接続部である揺動装置の位置が環境温度の変化によって変動しても、自在機構が、長手軸線方向に直交する面に沿って移動可能な平面移動機構と、長手軸線方向に対して揺動可能な揺動機構とを有しているので、位置の変動に無理なく追随することができる。
【0007】
前記自在機構が、前記長手軸線方向に平行で且つ互いに平行に配置された一対の平行板ばねからなる平面移動機構と、該一対の平行板ばねに支持された移動体に設けられた球面座からなる揺動装置とによって構成されていてもよい。このように、平面移動機構が互いに平行に配置された一対の平行板ばねによって構成されていれば、長手軸線方向に対しては高い剛性を有するので、外部から被調整体である支持台に加えられる荷重に対して剛性が高く、支持台の姿勢保持に与える影響を低く抑えることができる。
【0008】
また、前記自在機構が、前記伸縮機構の先端に配置された直交面に複数の球体を介して取り付けられており、該複数の球体を介して移動する移動体と、該移動体に設けられた球面座からなる揺動装置とによって構成されていてもよい。このように、複数の球体を介して取り付けることによって、安価でかつ長手軸線方向に対して高い剛性を有するようにできる。また、揺動装置として一般的に使用する球面座を使用すれば、球面座は安価であるので、本発明の調整装置の製造コストを大きく低下させることができる。
【0009】
前記伸縮機構はいわゆるアクメねじのように雄ねじと雌ねじがすべり面として作用する差動ねじ機構であることが好ましい。この差動ねじ機構は、外周面に雄ねじが設けられた回転不能な軸部材と、前記軸部材が挿入され内周面に前記軸部材の雄ねじと螺合する雌ねじが設けられると共に、外周面に前記雌ねじと異なるピッチの雄ねじが設けられ、前記軸部材の周りを回転可能な内筒体と、前記内筒体の外側に設けられ、内周面に前記内筒体の雄ねじと螺合する雌ねじが設けられた回転不能な外筒体とを備えるものが好ましい。このように構成することによって、前記軸部材周りに前記内筒体を回転させることにより、前記差動ねじ機構の長さを調整することができる。そして、このような差動ねじ機構を使用することにより、調整装置の長さの微調整を可能とさせる一方、差動ねじのねじピッチは小さいので長手軸線方向の荷重に対しても自己保持することができ、ボールねじや減速機などの高価で且つ重い部品の使用を回避することが可能になる。
【0010】
前記差動ねじ機構は、前記軸部材と前記外筒体とを互いに離れる方向に付勢するコイルばねを備えることがさらに好ましい。このようなコイルばねを設けることにより、外筒体と内筒体との間並びに内筒体と軸部材との間の螺合部におけるバックラッシュを防止し、調整装置の長さの調整精度を向上させることができる。
【0011】
本発明は、また、上記調整装置を少なくとも3個有し、該少なくとも3個の調整装置の自在機構よって支持された被調整体を備えるようにした調整システムを提供する。この調整システムでは、前記少なくとも3個の調整装置の各々の差動ねじ機構の長さを変化させることにより、前記被調整体の位置及び姿勢を調整することができ、温度変化などに起因して被調整体の位置や姿勢が変化しても、調整装置の伸縮機構を伸縮することによって被調整体の位置や姿勢の変化を修正することができる。
【0012】
前記少なくとも3個の調整装置は、伸縮機構の差動ねじ機構が個別に伸縮するので、伸縮によって被調整体(支持台)との接続部にひずみが生じる。このひずみは、所定の一点(一般には重心)を中心として放射状に起こるので、生じたひずみを十分に吸収するためには、前記少なくとも3個の調整装置が、前記被調整体上に定められた一点を中心として、前記平行板ばねの変位する方向が放射状となるように配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伸縮機構の伸縮及び自在機構を構成する平行板ばねの撓みと揺動装置の揺動により、温度変化に起因する被調整体(支持台)の位置や姿勢の変化を修正することができる。また、伸縮機構である差動ねじ機構、自在機構である平行板ばねや球面座は、いずれも単純な構造であり、安価であるので、調整装置の製造コストを安価にすることができる。したがって、支持台などの被調整体の寸法変化を容易に修正することができ、被調整体にひずみを生じさせない安価で製造の簡単な調整装置及び調整システムが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明の調整装置の第1の実施形態の断面図、図2は、本発明の調整装置の第2の実施形態を示す断面図、図3は、図2の調整装置の直動軸受の上側球体を保持する構成を示す平面図、図4は、図2の調整装置の直動軸受の下側球体を保持する構成を示す平面図、図5は、本発明の調整装置を用いた調整システムの模式図である。
【0015】
図5に示されているように、本発明の調整システム11は、少なくとも3個の調整装置13又は49と、これら調整装置13又は49に取り付けられて支持される被調整体である支持台15とを備え、この支持台15の上にレーザ送信装置やレーザ受信装置などが取り付けられる。
【0016】
第1の実施形態の調整装置13は、図1に示されているように、ハウジング17と、ハウジング17内に収容される伸縮機構と、該伸縮機構の先端に取り付けられ、一対の平行板ばね21と該平行板ばね21によって支持されている揺動装置23とからなる自在機構47を備えている。図示されている実施形態では、伸縮機構として、差動ねじ機構19が使用されている。また、ハウジング17には、差動ねじ機構19と平行に延びる回転軸25が回転可能に支持されており、差動ねじ機構と回転軸25は平歯車により噛合している。回転軸25の上端はハウジング17の上方に突出し、回転軸25の下端はハウジング17の下方に突出し、例えばスパイラル溝のついたモータの軸端を回転軸端部の六角穴に係合し、別に設けたコンピュータにより演算した移動量分回転させるといった形で操作者がその端部にアクセスできるようになっている。
【0017】
差動ねじ機構19は、ハウジング17に固定された回転不能な軸部材27と、軸部材27が挿入され、軸部材27の周りを回転可能な内筒体29と、内筒体29が挿入された外筒体31とを含む。軸部材27の外周面には雄ねじ27aが設けられている。また、内筒体29の内周面には、軸部材27の雄ねじ27aに螺合する雌ねじ29aが設けられており、内筒体29の外周面には、内周面の雌ねじと29a異なるピッチの雄ねじ29bが設けられている。さらに、外筒体31の内周面には、内筒体29の雄ねじ29bと螺合する雌ねじ31aが設けられている。一方、外筒体31の外周面には、長手軸線方向に延びる溝31bが設けられており、この溝31bにハウジング17に固定された回転防止装置33のボールを係合させることにより、外筒体31の長手軸線方向への移動を許容しながら外筒体31の回転を防止するようにしている。なお、いずれのねじ27a、29a、29b、31aも右ねじであるとする。
【0018】
差動ねじ機構19はこのような構成をとっているので、固定の軸部材27の周りに内筒体29を回転させると、外筒体31が、軸部材27に対する内筒体29の移動方向とは逆方向に、内筒体29に対して移動する。したがって、例えば、内筒体29の雌ねじ29aのピッチを1mm、雄ねじ29bのピッチを1.2mmに設定した場合、内筒体29を一回転させることにより、軸部材27に対して外筒体31を0.2mだけ移動させることができ、減速機等を用いなくても、差動ねじ機構19全体の長さをより微細に調整することが可能となる。また、このような差動ねじ機構19は、ボールねじと減速機などよりも軽量で安価であるので、高精度の調整が可能でありながら、軽量且つ安価な調整装置を実現できる。
【0019】
上述したように軸部材27に対して移動する外筒体31の先端部に、一対の平行板ばね21を介して揺動装置23が取り付けられる。また、外筒体31の先端部には蓋部35が設けられ、蓋部35から長手軸線方向に沿って、外筒体31内の軸部材27の端部に向かってばねガイド37が下方に延びている。そして、外筒体31の蓋部35と軸部材27の先端部との間には、ばねガイド37に沿ってコイルばね39が配置され、外筒体31と軸部材27とを互いに離れる方向に付勢している。この付勢ばね39は、外筒体31の雌ねじ31aと内筒体29の雄ねじ29bとの螺合部、並びに、内筒体29の雌ねじ29aと軸部材27の雄ねじ27aとの螺合部におけるバックラッシュの発生を防止させ、差動ねじ機構19の長さの調整精度をさらに高めさせている。
【0020】
ハウジング17に回転可能に支持される回転軸25のうちハウジング17内に収容されている部分の外周面には、歯車25aが形成されており、内筒体29の下端部に固定された歯車41と噛合している。よって、例えばスパイラル溝のついたモータの軸端を回転軸端部の六角穴に係合し、別に設けたコンピュータにより演算した移動量分回転させるといった形で回転軸25にアクセスして回転軸25を回転させることにより、軸部材27に対して内筒体29を回転させ、差動ねじ機構19を伸縮させることができる。
【0021】
図1に示されている第1の実施形態では、揺動装置23として、基台に設けられた球状の凹部内に球状体24を収容し球関節(ボール−ソケット形継手)式に接続した球面座が使用されており、この球面座の球状体24上に支持台15が取り付けられている。しかしながら、球面座は、後述する第2の実施形態のように、中心に配置された球状体を複数の小球で支持する構造であってもよい。
【0022】
揺動装置23が取り付けられた一対の平行板ばね21は、図1において左右方向から力を受けたときに撓んで支持台15を平行に移動させる機能を果たすものであり、板ばねの厚さは、移動させる際の剛性や支持台15の最大変位量などを考慮して、適宜に選択される。
【0023】
第1の実施形態では、一対の平行板ばね21の間に、差動ねじ機構19の先端と揺動装置23との間に複数の球体45がさらに配置されており、この球体45が、一対の平行板ばね21と共に、差動ねじ機構の長手軸線方向から支持台15に加えられる荷重を支持するようになっている。この荷重は、屋外に設置されている支持台15に風が吹き付けた時などに生じるものであって、このように揺動装置23を一対の平行板ばね21だけではなく球体45でも支持することにより、支持台15を支持する板ばね21の長手軸線方向の剛性が低くても十分に大きな荷重を支持することが可能になり、平行板ばね21の横方向からの荷重に対する撓み性を十分に確保することが容易となる。なお、平行板ばね21が撓んだときには、揺動装置23の長手軸線方向への移動を伴うことになるが、この移動はごく僅かであるので無視することができる。
【0024】
第1の実施形態とは異なる構成を有する第2の実施形態の調整装置49は、図2に示すように、ハウジング17と、このハウジング17内に収容される伸縮機構と、該伸縮機構の先端に取り付けられた揺動装置51とからなる自在機構53を有している。この実施形態では、伸縮機構である差動ねじ機構19は、第1の実施形態とほぼ同様なので、以下の説明では、同じ部品には同じ符号を付して説明する。
【0025】
差動ねじ機構19は、ハウジング17に固定された回転不能な軸部材27と、軸部材27が挿入され、軸部材27の周りを回転可能な内筒体29と、内筒体29が挿入された外筒体31とを含む構成となっている。そして、差動ねじ機構19と平行に延びる回転軸25の外周面に形成された歯車25aが内筒体29の下端部に固定された歯車41と噛合している。また、軸部材27の外周面には雄ねじ27aが設けられている。また、内筒体29の内周面には、軸部材27の雄ねじ27aに螺合する雌ねじ29aが設けられており、内筒体29の外周面には、内周面の雌ねじ29aと異なるピッチの雄ねじ29bが設けられている。
【0026】
さらに、外筒体31の内周面には、内筒体29の雄ねじ29bと螺合する雌ねじ31aが設けられている。一方、外筒体31の外周面には、長手軸線方向に延びる溝31bが設けられており、この溝31bにハウジング17に固定された回転防止装置33のボールを係合させることにより、外筒体31の長手軸線方向への移動を許容しながら外筒体31の回転を防止するようになっている。なお、いずれのねじ27a,29a,29b,31aも右ねじである。
【0027】
差動ねじ機構19はこのような構成をとっているので、第1の実施形態と同様に作動することによって、同様に微細な調整をすることが可能となる。そして、ばねガイド37に沿ってコイルばね39が配置されているので、ボールねじと減速機などよりも軽量で安価でありながら、高精度の調整が可能な調整機構を実現することができる。
【0028】
外筒体31の先端部に設けられた蓋部35に取り付けられたプレート55には、複数の球体57,59を介して自在機構53が取り付けられている。自在機構53は、プレート55から立ち上げられたフランジ61が半径方向内方に向かうつば部を有しており、該つば部の対向する二面のうちの一方の面61aは平面状に形成され、他方の面61bには直線溝61cが形成されている。一方、揺動装置51の外筒の上端および下端から半径方向外方に延びるフランジ面のうちフランジ61のつば部の面61aと対向する面51aは平面状に形成され、フランジ61のつば部の面61bと対向する面51bには直線溝61cと対向する位置に直線溝51cが形成されている。そして、球体59が球体保持部材73によって保持された状態で面51aと面61aとの間に狭持され、球体57が球体保持部材71によって保持された状態で直線溝51c,61cに係合しつつ面51bと面61bの間に狭持されている(図3及び4を参照)。すなわち、この複数の球体57,59は、揺動装置51を支持する平面軸受を構成するものであって、この直動軸受の存在によって、揺動装置51は所定の方向のみに軽い力で移動することができる。なお、この直動軸受は、フランジ61のつば部の面61a,61bをともに平面状に形成し、かつ、揺動装置51の外筒のフランジ面51a,51bもともに平面状に形成して、球体保持部材71に保持された球体57を面51bと面61bの間に狭持すると共に、球体保持部材73に保持された球体59を面51aと面61aの間に狭持し、軌道面を形成することなく、任意の方向に移動できるように平面軸受として構成しても良い。
【0029】
揺動装置51は、球面座によって揺動可能になっている。この球面座は、中心に配置された大径の球体63が複数の小球65で支持される構造となっており、軽い力で揺動することはできるように構成されている。そして、中心の球体63に被調整体である支持台15が固定されている。
【0030】
第2の実施形態では、複数の球体57,59からなる直動軸受又は平面軸受を介して自在機構53が取り付けられており、揺動装置51は、中心に配置された大径の球体63が複数の小球65で支持される構造の球面座によって揺動可能になっているので、長手軸線方向の剛性が充分に高い構造でありながら、軽い力で移動又は揺動することが可能であり、容易に調整可能となる。しかしながら、球面座は、第1の実施形態のように、基台に設けられた凹部内に球体を収容し球関節式に接続した構造であってもよい。
【0031】
本発明の調整装置及び調整システムは以上のように構成されており、温度変化による支持台15の位置及び姿勢の変化を修正するときには、個々の伸縮機構を伸縮させるので、支持台15の取付部におけるひずみは、支持台15の中心から放射状に起こると考えることができる。したがって、この支持台15の中心に向って変位する方向が放射状となるように配置することが有効である。そして、中心の位置Oにレーザ送信装置の送信部や、レーザ受信装置の受信部を配置することが好ましい。
【0032】
次に、図1、図2及び図5に示されている調整装置13,49及び調整システム11の動作について説明する。
調整システム11において、支持台15の高さ位置を調整する場合には、支持台15を支持する調整装置13,49全てについて、同じ量だけ、調整装置13,49の長さを伸縮させる。一方、支持台15の姿勢を変える場合には、所望の姿勢が得られるようにそれぞれの調整装置13,49の長さを調整する。なお、調整装置13,49に対する支持台15の姿勢変化は調整装置13,49の先端に取り付けられた揺動装置23,51、すなわち球面座の球状体の回転と伸縮機構に直交する方向の変位によって可能となる。このとき、支持台15の中心から放射状に変位する取付部のひずみは、揺動装置23,51の球面座が回転し、伸縮機構に直交する方向に変位することによって無理なく吸収することができる。
【0033】
調整装置13,49の長さを調整するためには、専用のレンチなどを回転軸25の端部に嵌合させ、あるいはパルスモータなどの駆動源によって回転軸25を回転させる。すると、回転軸25の外周面に設けられた歯車歯25aと差動ねじ機構19の内筒体29の歯車41との噛合により、回転軸25の回転が内筒体29に伝達され、固定された軸部材27の周りを内筒体29が回転する。内筒体29が回転すると、内筒体29はその内周面において軸部材27と螺合しているから、内筒体29が軸部材27に対して移動する。また、内筒体29はその外周面において外筒体31とも螺合しているから、このとき、外筒体31は軸部材27に対する内筒体29の移動の向きとは逆向きに内筒体29に対して移動することになる。すなわち、内筒体29に一回転につき、内筒体29の雌ねじ29aと雄ねじ29bとのピッチの差の分だけ、軸部材27に対して外筒体31が移動することになり、差動ねじ機構19の外筒体31の先端に取り付けられた揺動装置23,51の高さ方向の位置が変化する。このようにして、調整装置13,49の長さが調整される。
【0034】
以上、図示された実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、図示された実施形態に限定されるものではない。例えば、図示された実施形態では、調整装置の伸縮機構として差動ねじ機構を用いているが、従来のようにボールねじ機構を使用することも可能である。この場合でも、揺動装置の支持に平行板ばねや直動軸受又は平面軸受を用いていれば、支持台の位置や姿勢の修正において取付部に無理なひずみを発生させることがないという本発明の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の調整装置の第1の実施形態の断面図である。
【図2】本発明の調整装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図3】図2の調整装置の直動軸受の上側球体を保持する構成を示す平面図である。
【図4】図2の調整装置の直動軸受の下側球体を保持する構成を示す平面図である。
【図5】本発明の調整装置を用いた調整システムの模式図である。
【符号の説明】
【0036】
11 調整システム
13 調整装置
15 支持台
19 差動ねじ機構
21 平行板ばね
23 揺動装置
27 軸部材
27a 雄ねじ
29 内筒体
29a 雌ねじ
29b 雄ねじ
31 外筒体
31a 雌ねじ
39 コイルばね
45 球体
47 自在機構
49 調整装置
51 揺動装置
53 自在機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸線方向に伸縮可能な伸縮機構と、該伸縮機構の先端に取付けられた自在機構とを備え、前記伸縮機構を伸縮させることにより前記自在機構を介して被調整体の位置及び姿勢を調整する調整装置において、
前記自在機構が、前記長手軸線方向に直交する面に沿って移動可能な平面移動機構と、前記長手軸線方向に対して揺動可能な揺動機構とを有することを特徴とする調整機構。
【請求項2】
前記自在機構が、前記長手軸線方向に平行で且つ互いに平行に配置された一対の平行板ばねからなる平面移動機構と、該一対の平行板ばねに支持された移動体に設けられた球面座からなる揺動装置とによって構成されている、請求項1に記載の調整装置。
【請求項3】
前記自在機構が、前記伸縮機構の先端に配置された直交面に複数の球体を介して取り付けられており、該複数個の球体を介して移動する移動体と、該移動体に設けられた球面座からなる揺動装置とによって構成されている、請求項1に記載の調整装置。
【請求項4】
前記伸縮機構が、外周面に雄ねじが設けられた回転不能な軸部材と、前記軸部材が挿入され、内周面に前記軸部材の雄ねじと螺合する雌ねじが設けられると共に、外周面に前記雌ねじと異なるピッチの雄ねじが設けられ前記軸部材の周りを回転可能な内筒体と、前記内筒体の外側に設けられ、内周面に前記の雄ねじと螺合する雌ねじが設けられた回転不能な外筒体とを備える差動ねじ機構である、請求項1に記載の調整装置。
【請求項5】
前記差動ねじ機構は、前記軸部材と前記外筒体とを互いに離れる方向に付勢するコイルばねを備える、請求項4に記載の調整装置。
【請求項6】
請求項1に記載の調整装置を少なくとも3個有し、該少なくとも3個の調整装置の自在機構によって支持された被調整体を備えることを特徴とする調整システム。
【請求項7】
前記少なくとも3個の調整装置は、前記被調整体上に定められた一点を中心として、前記平行板ばねの変位する方向が放射状となるように配置される、請求項6に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−146922(P2007−146922A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340395(P2005−340395)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】