説明

調湿装置

【課題】加湿手段の吸水材から清浄な加湿水を空気中へ付与できる調湿装置を提案する。
【解決手段】水タンク(41)内の水には、水浄化手段(51)が発生させた浄化成分が付与される。浄化成分を含む水は、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に供給される。吸着部材(43b)では、水中に含まれる有害物質等が浄化成分によって浄化される。その結果、加湿ロータ(43)からは清浄な加湿水が空気中へ付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水材に供給された水を空気中へ付与して空気を加湿する調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内等の空気の湿度を調節するための調湿装置が広く知られている。特許文献1には、この種の調湿装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の調湿装置は、空気を加湿する加湿装置を構成している。調湿装置は、水を貯留する水容器と、空気通路に跨るように配置される円板状の加湿ロータとを備えている。加湿ロータは、その全域が水分を吸水可能な吸水材で構成され、その下部が水容器内の水中に浸漬されている。
【0004】
調湿装置の運転時には、加湿ロータが連続的に回転する。加湿ロータでは、水容器中で水分を含んだ部位が上記空気通路まで変位する。この部位を空気が通過することで、加湿ロータ中の水分が空気へ付与される。以上のようにして加湿された空気は、空気通路を流出して室内等へ供給される。
【特許文献1】特開2007−139251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のような調湿装置では、上述の如く、室内空気等が加湿ロータの吸水材を連続的に通過することになる。ここで、加湿ロータを通過する空気中には、アンモニアやホルムアルデヒド等の有害物質や臭気物質が含まれていることがある。従って、加湿ロータの吸水材には、このような有害物質等が吸収/吸着され易い。その結果、このような有害物質が高濃度の状態で室内へ供給されて、室内の清浄度が損なわれてしまうという問題が生じる。また、加湿ロータの吸水材で細菌等が繁殖することにより臭気が発生したり、このような菌が室内へ放出されて室内の清浄度が損なわれてしまうという問題も生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加湿手段の吸水材から清浄な加湿水を空気中へ付与できる調湿装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、水が供給される吸水材を有すると共に、該吸水材の水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(43)を備えた調湿装置を前提としている。そして、この調湿装置は、上記加湿手段(43)へ供給される水に付与される浄化成分を発生する水浄化手段(51,70,80)を更に備えていることを特徴とするものである。なお、ここでいう「浄化成分」とは、水分中に含まれる有害物質や臭気物質を分解除去する効能や、水分中に生息する菌類等を死滅させる殺菌の効能を有する物質を意味する。
【0008】
第1の発明の調湿装置では、加湿手段の吸水材に水(即ち加湿水)が適宜供給される。そして、加湿手段(43)の吸水材に供給された水が、空気中へ付与されることで、空気の加湿が行われる。一方、このような運転に伴い、加湿手段(43)の吸水材には、有害物質等が吸収/吸着されると共に、吸水材の水中で菌が繁殖していく。
【0009】
ここで、本発明の調湿装置では、加湿手段(43)に供給される水に対して、水浄化手段(51,70,80)が浄化成分を付与する。従って、加湿手段(43)の吸水材には、この浄化成分も吸収/吸着されることになる。その結果、吸水材では、浄化成分により有害物質等が分解除去され、更に殺菌が行われる。よって、加湿手段(43)からは、空気中へ清浄な加湿水が付与されることになる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の調湿装置において、上記水浄化手段は、放電を生起することで上記浄化成分としての活性種を発生する放電部(51)で構成されていることを特徴とするものである。なお、ここでいう「放電」とは、ストリーマ放電、沿面放電、コロナ放電等を含む意味である。
【0011】
第2の発明の調湿装置には、上記水浄化手段としての放電部(51)が設けられる。放電部(51)では、電極の間で所定の放電が行われることで、浄化成分としての活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が生成される。加湿手段(43)へ供給される水には、上記活性種が付与される。その結果、加湿手段(43)の吸水材では、この活性種により水中の有害物質等が除去され、同時に水中での殺菌が行われる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明の調湿装置において、上記水浄化手段は、上記浄化成分としての活性種を発生する光触媒部材(70)で構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第3の発明の調湿装置には、上記水浄化手段としての光触媒部材(70)が設けられる。光触媒部材(70)では、所定の光環境条件下において上記浄化成分としての活性種(OHラジカルやH等)が発生する。加湿手段(43)へ供給される水には、この活性種が付与される。その結果、加湿手段(43)の吸水材の水の浄化が行われる。
【0014】
第4の発明は、第1の発明の調湿装置において、上記水浄化手段は、上記浄化成分としての金属イオンを発生する金属部材(80)で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第4の発明の調湿装置には、上記水浄化手段としての金属部材(80)が設けられる。金属部材(80)では、加湿手段(43)への供給水と反応することで金属イオン(例えば銅イオン)が析出する。この金属イオンが加湿手段(43)の吸水材に吸収/吸着されることで、吸水材における細菌の増殖が抑制される。
【0016】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明の調湿装置において、上記加湿手段(43)の吸水材へ供給するための水が貯留される水容器(41)を備え、上記水浄化手段(51,70,80)は、上記水容器(41)内の水へ上記浄化成分を付与するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第5の発明の調湿装置には、加湿水を貯留するための水容器(41)が設けられる。そして、水浄化手段(51,70,80)からは、水容器(41)内の水へ浄化成分が付与される。従って、水容器(41)内では、水中の有害物質等の除去や殺菌が直接的に行われるので、水の浄化効率が向上する。
【0018】
第6の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明の調湿装置において、上記加湿手段(43)の吸水材へ供給される水が貯留される水容器(41)と、内部を空気が流れるように構成されると共に、流出端が上記水容器(41)内に開口する導入流路(60)とを更に備え、上記水浄化手段(51,70)は、上記導入流路(60)の内部に上記浄化成分を発生させるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第6の発明の調湿装置には、加湿水を貯留するための水容器(41)と、空気が流れる導入流路(60)とが設けられる。水浄化手段(51,70)が導入流路(60)内へ浄化成分(活性種等)を付与すると、この浄化成分が空気と共に導入流路(60)を流出し、水容器(41)内へ供給される。水容器(41)内では、このようにして供給された浄化成分により、水の浄化が行われる。
【0020】
第7の発明は、第5の発明において、上記水浄化手段(51,70,80)は、上記水容器(41)内に配置されていることを特徴とするものである。
【0021】
第7の発明では、上記水浄化手段(51,70,80)が水容器(41)内に配置され、上記浄化成分を発生させる。その結果、水容器(41)内の水と浄化成分とが効率良く反応するので、水の浄化効率が向上する。
【0022】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、空気を浄化するための空気浄化手段(20)を更に備えていることを特徴とするものである。
【0023】
第8の発明の調湿装置には、空気を浄化するための空気浄化手段(20)が設けられる。つまり、本発明の調湿装置は、加湿機能と空気浄化機能との双方が付与されている。このように、この調湿装置を空気浄化の用途として用いる場合、被処理空気には、多量の有害物質や臭気物質が含まれることになる。従って、加湿手段(43)の吸水材にも、有害物質が吸収/吸着され易く、更に細菌等の増殖が促されてしまう。しかしながら、本発明においても、加湿手段(43)の吸水材では、浄化成分により有害物質等の除去や殺菌が行われるので、清浄な加湿水を室内等へ供給することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水浄化手段(51,70,80)で発生させた浄化成分を加湿手段(43)の吸水材へ供給される水に付与することで、吸水材に吸収/吸着された水中の有害物質等を除去し、且つ水中の殺菌を行うことができる。従って、加湿手段(43)からは清浄な加湿水を空気へ付与することができ、室内の快適性を良好に保つことができる。
【0025】
また、例えば水道水を加湿手段(43)へ供給する場合には、水道水中にトリハロメタン等の有機塩素系化合物が含まれることがある。本発明によれば、このような水道水中の有害物質も上記浄化成分により除去できるので、室内等へ更に清浄な加湿水を供給することができる。
【0026】
特に第2の発明や第3の発明では、水浄化手段(51,70,80)で発生させた活性種を利用することで、加湿手段(43)の吸水材中の有害物質等の除去や、殺菌を効果的に行うことができる。また、第4の発明では、金属部材(80)から析出させる金属イオンにより、加湿手段(43)の吸水材中の菌の増殖を効果的に防止することができる。また、第5の発明では、水容器(41)内へ浄化成分を付与することで、水容器(41)内で有害物質等を除去でき、且つ水容器(41)内での菌の増殖を効果的に防止することができる。
【0027】
更に、第6の発明では、水浄化手段(51,70)で発生させた浄化成分を導入流路(60)を介して空気と共に水容器(41)内へ送るようにしている。従って、本発明によれば、水容器(41)内の水中へ多量の浄化成分を供給することができ、水容器(41)内の水を浄化成分により効率良く浄化できる。また、水浄化手段(51,70)を水容器(41)の外部へ配置することができるので、水浄化手段(51,70)の設置スペースを充分確保できる。
【0028】
また、第7の発明によれば、水浄化手段(51,70,80)を水容器(41)内に配置することで、水浄化手段(51,70,80)から発生した浄化成分を確実に水容器(41)の水中へ送ることができるので、水容器(41)の水を安定且つ確実に浄化することができる。更に、第8の発明によれば、空気の加湿に加えて、空気を清浄化できる調湿装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
本実施形態に係る調湿装置(10)は、室内空気を浄化しながら該室内空気を加湿する運転が可能に構成されている。
【0031】
〈調湿装置の全体構成〉
図1及び図2に示すように、調湿装置(10)は、ケーシング(11)を有している。ケーシング(11)は、前後に扁平な矩形状に形成されている。ケーシング(11)には、その前側(図1における左側寄り)に前面パネル(11a)が形成されている。前面パネル(11a)には、空気をケーシング(11)内に導入するための吸込口(12)が形成されている(図2を参照)。吸込口(12)は、例えば前面パネル(11a)の左右側方にそれぞれ形成されている。また、ケーシング(11)には、その上部後方寄りの部位にケーシング(11)内の空気を吹き出すための吹出口(13)が形成されている。そして、ケーシング(11)の内部には、上記吸込口(12)から吹出口(13)に亘って空気が流通する空気通路(14)が形成されている。
【0032】
図2に示すように、空気通路(14)には、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)、加湿ユニット(40)、及び遠心ファン(15)が設けられている。
【0033】
〈空気浄化手段の構成〉
図2に示すように、調湿装置(10)は、空気を浄化するための空気浄化手段(20)として、上述したプレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)を有している。
【0034】
プレフィルタ(21)は、空気中に含まれる比較的大きな塵埃を物理的に捕捉する集塵用のフィルタを構成している。
【0035】
イオン化部(22)は、空気中の塵埃を帯電させる塵埃荷電手段を構成している。イオン化部(22)には、例えば線状の電極と、この線状の電極に対向する板状の電極とが設けられている。イオン化部(22)では、両者の電極に電源(図示省略)から電圧が印加されることで、両電極の間でコロナ放電が行われる。このコロナ放電により、空気中の塵埃が所定の電荷(正又は負の電荷)に帯電される。
【0036】
プリーツフィルタ(23)は、波板状の静電フィルタを構成している。つまり、プリーツフィルタ(23)では、上記イオン化部(22)で帯電された塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。なお、プリーツフィルタ(23)に光触媒等の脱臭用の材料を担持させても良い。
【0037】
〈加湿ユニットの構成〉
図3に示すように、加湿ユニット(40)は、水を貯留するための水タンク(41)と、水タンク(41)の水を汲み上げる水車(42)と、水車(42)によって汲み上げられた水を空気中へ付与する加湿手段を構成する加湿ロータ(43)と、加湿ロータ(43)を回転駆動するための駆動モータ(44)とを備えている。また、加湿ユニット(40)は、加湿ロータ(43)を加熱するためのヒータ(48)を備えている(図2を参照)。
【0038】
水タンク(41)は、上側が開口する横長の水容器を構成している。水タンク(41)は、ケーシング(11)内の下部の空間に設置され、ケーシング(11)の引出口(11b)を通じて出し入れ自在に構成されている(図1を参照)。これにより、ユーザー等は水タンク(41)内に加湿用の水(例えば水道水)を適宜補充することができる。また、水タンク(41)の底面には、水車(42)を回転自在に保持するための軸受部材(41a)が立設している。
【0039】
水車(42)は、前後に扁平な略円板状に形成され、その軸心部に回転軸(42a)が突設されている。回転軸(42a)は、上記軸受部材(41a)の上端に枢支されている。水車(42)は、水タンク(41)の加湿水中に一部(下端部を含む所定部位)が浸漬するように回転自在に設けられている。
【0040】
水車(42)には、その後側の側面(上記加湿ロータ(43)に面する側面)の軸周りに複数の凹部(42b)が形成されている。複数の凹部(42b)は、径方向外側に向かうに連れて幅が拡大されるような略台形形状の開口を有している。また、凹部(42b)の開口の周方向の幅は、該凹部(42b)の内部空間の周方向の幅よりも狭くなっている。更に、凹部(42b)の径方向内側の内壁は、開口端に向かうに連れて徐々に軸心側に近づくように傾斜している。各凹部(42b)は、水車(42)の径方向外側端部において周方向に等間隔で配列されている。回転動作中の水車(42)では、凹部(42b)が水タンク(41)の水中に浸漬する位置と、水中から引き出される位置とを交互に変位する。
【0041】
また、水車(42)の後側の側面には、その軸心寄りの部位に歯車(42c)が一体的に形成されている。歯車(42c)は、後述する加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と噛み合うように構成されている。
【0042】
加湿ロータ(43)は、環状の従動歯車(43a)と、この従動歯車(43a)に内嵌して保持される円板状の吸着部材(43b)とを有している。吸着部材(43b)は、水分を吸収/吸着する吸水材を構成している。更に詳細には、吸着部材(43b)は、ハニカム構造の基材の表面に吸着剤が担持されて構成されている。上記吸着剤としては、粒状のゼオライト等、水分に対する吸着性能に優れた材料が用いられる。また、吸着剤を基材に担持させるためのバインダーとしては、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0043】
加湿ロータ(43)は、上記水タンク(41)の満水時の水位よりも高い位置において、回転軸を介して回転自在に保持されている。また、加湿ロータ(43)は、その下端を含む所定部位が上記水車(42)と実質的に接触するように配置されている。つまり、加湿ロータ(43)は、水車(42)の凹部(42b)と軸方向に一致する部位を有している。これにより、加湿ロータ(43)には、水車(42)の凹部(42b)によって汲み上げられた加湿水が吸着部材(43b)に吸収/吸着される。
【0044】
駆動モータ(44)は、駆動歯車(44a)を有している。駆動歯車(44a)は、ピニオン(45)を介して加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と歯合している。即ち、駆動モータ(44)が駆動歯車(44a)を回転駆動させると、ピニオン(45)及び従動歯車(43a)が回転し、更に従動歯車(43a)と歯合する水車(42)が回転する。
【0045】
図2に示すヒータ(48)は、加湿ロータ(43)の上流側の側面の上端部に近接して配置されている。ヒータ(48)は、加湿ロータ(43)へ流入する空気を加熱可能に構成されている。
【0046】
〈水浄化ユニットの構成〉
調湿装置(10)は、水タンク(41)から加湿ロータ(43)に供給される水を浄化するための水浄化ユニット(50)を更に備えている。図4に示すように、水浄化ユニット(50)は、水浄化手段としての水浄化用放電部(51)と、導入流路を構成する配管ユニット(60)とを備えている。
【0047】
配管ユニット(60)は、流入側配管(61)と放電ユニット収容部(62)と流出側配管(63)とが順に接続されて構成されている。流入側配管(61)は、その流入端が上記空気通路(14)に開口しており、その流出端が放電ユニット収容部(62)内に連通している。流入側配管(61)は、水平な姿勢で保持されている。流出側配管(63)は、その流入端が上記放電ユニット収容部(62)に連通し、その流出端が水タンク(41)内に開口している。流出側配管(63)は、鉛直な姿勢となりながら、その流出端が水タンク(41)内の水位よりも低くなるように保持されている。そして、配管ユニット(60)では、流入側配管(61)、放電ユニット収容部(62)、及び流出側配管(63)の各内部空間が順に繋がることで、上記導入流路が形成されている。なお、配管ユニット(60)は、空気通路(14)を流れる空気の一部が分岐して導入されるように構成されている。
【0048】
上記水浄化用放電部(51)は、放電ユニット収容部(62)内に配置されている。水浄化用放電部(51)は、放電に伴い配管ユニット(60)内で活性種を発生させる放電部を構成している。水浄化用放電部(51)は、棒状電極(52)と平板電極(53)とを有している。棒状電極(52)は、基板(52a)に支持板(52b)を介して支持されている。棒状電極(52)は、細長い線状に形成され、略円形状の縦断面を有している。平板電極(53)は、棒状電極(52)と同一方向に延びる平板状に形成されている。棒状電極(52)と平板電極(53)とは、互いに平行な姿勢となっており、棒状電極(52)の先端が平板電極(53)と対向している。
【0049】
棒状電極(52)は電源(18)の正極側に接続され、平板電極(53)は上記電源(18)の負極側(又はアース側)に接続されている。電源(18)から両者の電極(52,53)に電位差が付与されると、棒状電極(52)の先端から平板電極(53)に向かってストリーマ放電が生起する。その結果、水浄化用放電部(51)では、ストリーマ放電に伴う活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生し、この活性種が空気中へ付与される。なお、電源(18)から水浄化用放電部(51)へは、直流の高圧電圧が供給されることが好ましく、更には水浄化用放電部(51)の放電電流が一定となるような、いわゆる定電流制御を行うことが好ましい。
【0050】
−運転動作−
本実施形態に係る調湿装置(10)では、室内空気を浄化すると同時に室内空気を加湿する加湿運転が行われる。
【0051】
加湿運転では、遠心ファン(15)運転されることで室内の空気が吸込口(12)を通じて空気通路(14)内に導入される。また、加湿ロータ(43)が回転駆動されると共にヒータ(48)が通電状態となる。更に、イオン化部(22)の電極に電圧が印加される。
【0052】
図2に示すように、空気通路(14)に流入した空気は、プレフィルタ(21)を通過して塵埃が捕捉された後、イオン化部(22)を通過する。イオン化部(22)では、電極間でコロナ放電が行われており、空気中の塵埃が帯電される。イオン化部(22)を流出した空気は、プリーツフィルタ(23)を通過する。プリーツフィルタ(23)では、帯電した塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。プリーツフィルタ(23)を流出した空気は、ヒータ(48)で加熱された後、加湿ロータ(43)を通過する。
【0053】
ここで、加湿ユニット(40)では、水車(42)が回転することで、水タンク(41)内の加湿水が加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に適宜供給される。具体的に、水車(42)では、水タンク(41)に貯留された加湿水中に凹部(42b)が浸漬する。これにより、加湿水中では、凹部(42b)内に加湿水が侵入して保持される。加湿水を保持した状態の凹部(42b)は、加湿水中から引き上げられて更に上方へ変位する。この凹部(42b)が加湿ロータ(43)に徐々に近接していくと、凹部(42b)内に保持された加湿水も自重により徐々に凹部(42b)内から流出する。そして、凹部(42b)が最上端位置に変位する際には、凹部(42b)内の加湿水が概ね全量流出することになる。
【0054】
凹部(42b)から流出した加湿水は、該凹部(42b)と近接する加湿ロータ(43)と接触し、吸着部材(43b)に吸収/吸着される。このような動作により、加湿ユニット(40)では、加湿ロータ(43)に連続的に加湿水が供給される。
【0055】
加湿ロータ(43)では、水分が補給された吸着部材(43b)を空気が流通する。その結果、吸着部材(43b)に吸収/吸着していた水分が空気中へ放出され、これにより空気の加湿が行われる。以上のようにして清浄化及び加湿された空気は、吹出口(13)を通じて室内へ供給される。なお、この加湿運転では、電源(18)からイオン化部(22)への電圧の供給を停止させることで、空気の浄化を積極的に行わない運転を行うことも可能である。
【0056】
〈水浄化動作〉
ところで、上記加湿運転を継続して行うと、被処理空気中に含まれる有害物質や臭気物質(アンモニア、ホルムアルデヒド、たばこ臭等)が、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に吸収/吸着して濃縮してしまうことがある。そして、例えばヒータ(48)を通電させて上記加湿運転を開始する直後には、このように濃縮された有害物質等が空気中へ放出される虞がある。この場合には、室内へ高濃度の有害物質等が供給されることとなり、室内の清浄度が損なわれてしまう。また、加湿運転時には、被処理空気中に含まれる菌類等も吸着部材(43b)に捕捉される。従って、吸着部材(43b)の表面等で菌類等が繁殖することで、臭気が発生したり、このような菌類が空気中へ放出されて室内の清浄度が損なわれたりする虞もある。そこで、本実施形態の調湿装置(10)では、加湿ロータ(43)へ供給される水を上記水浄化ユニット(50)により浄化する水浄化動作が可能となっている。
【0057】
具体的に、水浄化動作は例えば上記加湿運転と同時に行われる。この水浄化動作では、配管ユニット(60)内へ空気が導入される(図4を参照)。また、電源(18)から水浄化用放電部(51)へ電圧が印加される。その結果、水浄化用放電部(51)では、上記ストリーマ放電が行われ、放電ユニット収容部(62)内で活性種が発生する。この活性種は、放電ユニット収容部(62)を流れる空気と共に流出側配管(63)へ流出する。流出側配管(63)からは、水タンク(41)内の水中へ空気が流出する。その結果、水タンク(41)内には、活性種を含む空気が気泡となって水中へ供給される。これにより、水タンク(41)内の水は活性種を含んだ状態となる。
【0058】
活性種を含んだ水は、上述のように水車(42)を介して加湿ロータ(43)へ供給される。加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)には、水分と共に活性種が送られる。吸着部材(43b)に吸収/吸着されている有害物質は、この活性種により分解除去される。同時に、吸着部材(43b)の表面で殺菌が行われる。このように加湿運転時には、吸着部材(43b)に吸収/吸着している水が適宜浄化される。従って、加湿ロータ(43)からは清浄な加湿水が空気中へ付与されるので、加湿運転時に室内の清浄度が損なわれてしまうことがない。
【0059】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、水浄化用放電部(51)で発生させた活性種を水タンク(41)内の水に付与させ、この水を加湿ロータ(43)に供給するようにしている。従って、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に吸収/吸着された有害物質等を活性種により分解除去し、且つ吸着部材(43b)の表面の除菌を行うことができる。その結果、加湿運転時には、清浄な加湿水を空気中へ付与することができ、室内の清浄度を保つことができる。また、この水浄化用放電部(51)では、電力消費が比較的小さく活性種を高密度に発生できるストリーマ放電を行うようにしている。従って、調湿装置(10)の省エネ性を確保しながら、水タンク(41)に回収される水を高効率に浄化することができる。更に、水タンク(41)には、ユーザー等により水道水が適宜補給されるが、上記活性種により水道水中に含まれるトリハロメタン等の有機塩素化合物を分解除去することもできる。
【0060】
−実施形態の変形例−
上記実施形態において、水タンク(41)へ回収される水を浄化する水浄化手段として、以下のような各変形例の構成を採用することもできる。
【0061】
〈変形例1〉
図4に示す水浄化用放電部(51)では、ストリーマ放電を行うことで、空気中へ活性種を付与するようにしている。しかしながら、水浄化用放電部(51)においては、例えば沿面放電やコロナ放電等の他の放電により浄化成分としての活性種を発生するようにしても良い。また、水浄化用放電部(51)を水タンク(41)内に設け、放電に伴う活性種を水タンク(41)内で発生させるようにしても良い。
【0062】
〈変形例2〉
図5に示すように、水浄化手段として光触媒部材(70)を用いるようにしても良い。光触媒部材(70)は、基材の表面に例えば二酸化チタン等の光触媒が担持されて構成されている。光触媒部材(70)は、水タンク(41)内に配置されて水中に浸漬している。また、変形例2では、光触媒部材(70)と対向するように紫外線ランプ(71)が設けられている。紫外線ランプ(71)は、光触媒部材(70)に向かって紫外線を照射するように構成され、例えば水タンク(41)のカバー(72)の下面に保持されている。
【0063】
変形例2では、紫外線ランプ(71)による紫外線の照射環境下において、光触媒部材(70)からOHラジカルやH等の活性種(浄化成分)が発生する。この活性種が加湿ロータ(43)に供給されることで、加湿ロータ(43)に保持されている水中の有害物質等が分解除去され、更に水中の殺菌が行われる。なお、このような光触媒部材(70)を上記実施形態の配管ユニット(60)内に配置するようにしても良い。
【0064】
〈変形例3〉
図6に示すように、水浄化手段として所定の金属イオン(浄化成分)を発生する金属部材(80)を用いるようにしても良い。この例では、金属部材(80)が銅イオン化合物で構成されている。そして、金属部材(80)は、水タンク(41)内に配置されて水中に浸漬している。
【0065】
変形例3では、金属部材(80)から水タンク(41)内の水中へ銅イオンが析出する。この銅イオンが加湿ロータ(43)へ供給されることで、加湿ロータ(43)の水中での細菌の繁殖が抑制/阻害され、水の浄化が行われる。なお、金属部材(80)として、他のイオン(例えば銀イオン)を発生する金属化合物等を用いるようにしても良い。更に、金属部材(80)に代えて、細菌の繁殖を防止する他の機能材料を用いても良い。この機能材料としては、例えばカテキン等の植物由来精油(浄化成分)を発生する材料が挙げられ、より詳細には、このような植物由来精油を溶解性のマイクロカプセル内に注入したものが挙げられる。
【0066】
以上の実施形態や各変形例に係る発明を適宜組み合わせても良い。また、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、吸水材に供給された水を空気中へ付与して空気を加湿する調湿装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、実施形態に係る調湿装置の全体構成を示す斜視図であり、水タンクをケーシングから引き出した状態を示すものである。
【図2】図2は、調湿装置の内部を表した概略の縦断面図である。
【図3】図3は、加湿ユニットの斜視図である。
【図4】図4は、水浄化ユニットの概略の構成を模式的に表した図である。
【図5】図5は、変形例2の水浄化ユニットの概略の構成を模式的に表した図である。
【図6】図6は、変形例3の水浄化ユニットの概略の構成を模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0069】
20 空気浄化手段
41 水タンク(水容器)
43 加湿ロータ(加湿手段)
51 水浄化用放電部(放電部、水浄化手段)
60 配管ユニット(導入流路)
70 光触媒部材(水浄化手段)
80 金属部材(水浄化手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が供給される吸水材を有すると共に、該吸水材の水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(43)を備えた調湿装置であって、
上記加湿手段(43)へ供給される水に付与される浄化成分を発生する水浄化手段(51,70,80)を更に備えていることを特徴とする調湿装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記水浄化手段は、放電を生起することで上記浄化成分としての活性種を発生する放電部(51)で構成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記水浄化手段は、上記浄化成分としての活性種を発生する光触媒部材(70)で構成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記水浄化手段は、上記浄化成分としての金属イオンを発生する金属部材(80)で構成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記加湿手段(43)の吸水材へ供給するための水が貯留される水容器(41)を備え、
上記水浄化手段(51,70,80)は、上記水容器(41)内の水へ上記浄化成分を付与するように構成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記加湿手段(43)の吸水材へ供給される水が貯留される水容器(41)と、
内部を空気が流れるように構成されると共に、流出端が上記水容器(41)内に開口する導入流路(60)とを更に備え、
上記水浄化手段(51,70)は、上記導入流路(60)の内部に上記浄化成分を発生させるよう構成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項7】
請求項5において、
上記水浄化手段(51,70,80)は、上記水容器(41)内に配置されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
空気を浄化するための空気浄化手段(20)を更に備えていることを特徴とする調湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−145023(P2009−145023A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325622(P2007−325622)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】