説明

調理器具

【課題】様々な調理ができる上に、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理が可能な調理器具を提供することを目的としている。
【解決手段】鍋やフライパン等の調理器5内に着脱自在に設置可能で、且つ、少なくとも上面10を開放した筒状の調理器具本体1と、該調理器具本体1の上面10を密閉する蓋体2と、該調理器具本体1内に着脱自在に設置可能で、且つ、被調理物Mを載置可能な被調理物載置板3と、温度表示部40に感温部41aを有する管体41が設けられてなる温度計4とを有する調理器具であって、上記蓋体2には、上下方向に貫通した貫通孔22aが設けられ、その貫通孔22aを介して上記管体41が上記調理器具本体1内に貫入されてなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を蒸すか、あるいは、加熱等する際に用いられる調理器具に関する。より好ましくは、鍋やフライパン等の調理器内に着脱自在に設置可能な調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被調理物を蒸すか、あるいは、加熱等する際、鍋やフライパン等の調理器を用いることが一般的に知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1に記載の調理器は、底部に適量の水を注入し、調理器内に設置されている蒸し板に被調理物を載置し、この状態で、上記調理器をガスコンロ等で加熱することによって調理器内に水蒸気を発生させ、その発生させた水蒸気によって蒸し板に載置した被調理物を蒸すというものである。
【0003】
一方、このような調理器を用いて被調理物を蒸す際、被調理物の蒸し具合を調べるために、調理器内を密閉している蓋体を取り外し、放射温度計を用いて上記調理器内の雰囲気温度を調べたり、被調理物表面を手で触って感触を調べたり、あるいは竹串を刺したりする調理方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−179614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の調理方法には次のような問題があった。すなわち、第1に、上記調理器を用いた調理方法は、水を沸騰させ調理器内の雰囲気温度を100℃以上に保って被調理物を調理するが、この方法では例えば肉等の被調理物に含まれるタンパク質が75℃以上で硬化し被調理物自体が硬くなってしまうため、当該被調理物の食感を大きく損ねてしまうという問題があった。第2に、被調理物の蒸し具合を調べるにあたって、上記蓋体を上記調理器内から必ず取り外さなければならないため、その取外しの際調理器内の雰囲気温度が著しく低下してしまい、例え放射温度計を用いたとしても、調理器内の雰囲気温度を正確に測定することができず、良好な被調理物の蒸し具合を調べることができないという問題があった。そして第3に、被調理物表面を手で触って感触を調べたり、また、竹串を刺したりして被調理物の蒸し具合を調べるには、長年の経験と勘が必要であり、その調理手法を習熟するには、多大な時間と労力を要するという問題があった。また第4に、例え多大な時間と労力を費やしてその調理方法を習熟したとしても、被調理物の蒸し具合を調べるには一定時間上記蓋体を取り外しておかなければならないため、それに伴う被調理物の味の劣化は避けられず、それゆえ良好な調理を施した被調理物を提供することができないという問題もあった。さらに第5に、従来の調理器は、蒸したり焼いたり等の調理別に調理器を揃えなければならず、一つの調理器で様々な調理を行うことができないという問題もあった。
【0006】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、様々な調理ができる上に、被調理物が載置されている密閉状態の調理器具本体内の雰囲気温度や当該被調理物の中心温度を正確に測定することで、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理が可能な調理器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、後述する一実施形態の参照符号を付して説明すると、本発明の請求項1に係る調理器具は、鍋やフライパン等の調理器5内に着脱自在に設置可能で、且つ、少なくとも上面10を開放した筒状の調理器具本体1と、該調理器具本体1の上面10を密閉する蓋体2と、該調理器具本体1内に着脱自在に設置可能で、且つ、被調理物Mを載置可能な被調理物載置板3と、温度表示部40に感温部41aを有する管体41が設けられてなる温度計4とを有する調理器具であって、上記蓋体2には、上下方向に貫通した貫通孔22aが設けられ、その貫通孔22aを介して上記管体41が上記調理器具本体1内に貫入されてなることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明は、上記請求項1に記載の調理器具において、上記蓋体2は、調理器具本体1の上面10に対して接離可能に設けられてなることを特徴としている。
【0009】
さらに、請求項3の発明は、上記請求項1又は2に記載の調理器具において、上記被調理物載置板3には、複数の透孔30aが設けられてなることを特徴としている。
【0010】
そして、請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の調理器具において、上記調理器具本体1の下部側外周面には、周方向に複数の流路孔11aが設けられてなることを特徴としている。
【0011】
一方、請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の調理器具において、上記調理器具本体1は、上下面10,11が開放されてなることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の調理器具において、上記管体41は、上記貫通孔22aに上下方向に移動可能に貫入されてなることを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項7の発明は、上記請求項6に記載の調理器具において、上記管体41の先端部41bは、先鋭状に形成されてなることを特徴としている。
【0014】
そして、請求項8の発明は、上記請求項7に記載の調理器具において、上記管体41の外周面には、目盛り41cが設けられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明にかかる調理器具では、筒状の調理器具本体1が調理器5内に着脱自在に設置され、その調理器具本体1内に被調理物Mが載置される被調理物載置板3が着脱自在に設置される。そして、調理器具本体1の上面10は、蓋体2によって密閉され、その蓋体2には上下方向に貫通した貫通孔22aが設けられている。一方、当該調理器具は、温度計4を有し、その温度計4は、温度表示部40に感温部41aを有する管体41が設けられている。そして、その管体41が、上記貫通孔22aを介して調理器具本体1内に貫入されている。
【0016】
しかして、本発明によれば、調理器具本体1内を密閉させた状態で、その調理器具本体1内に貫通孔22aを介して感温部41aを有する管体41を貫入させることができるから、密閉状態の調理器具本体1内の雰囲気温度を測定することができる。それゆえ、調理器具本体1内の雰囲気温度を正確に測定することができる。また、構造が非常に簡便であるため、熟練を要さずとも簡単容易に調理器具本体1内の雰囲気温度を測定することができる。そのため本発明によれば、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理を行うことができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、調理器5内に液体Lを注入すれば蒸し調理ができ、液体Lを調理器5内に注入しなければ無水調理もでき、さらには、調理器5内にハーブ等を敷けば燻製調理もできる。それゆえ、本発明によれば調理別に調理器を揃えずとも、様々な調理を行うことができる。
【0018】
また請求項2の発明によれば、上記蓋体2は、調理器具本体1の上面10に対して接離可能に設けられているから、密閉状態の調理器具本体1内の雰囲気温度を温度表示部40で確認し、所望温度を超えてしまった場合は、調理器具本体1上面10から蓋体2を取外し、調理器具本体1内の蒸気を外方へ拡散させ調理器具本体1内の雰囲気温度を下げた上で、再び蓋体2によって調理器具本体1上面を密閉し、密閉状態の調理器具本体1内の雰囲気温度を測定することができる。それゆえ、本発明によれば、調理器具本体1内の雰囲気温度が所望温度を超えないように簡単容易に制御することができ、より良好な被調理物の調理を行うことができる。
【0019】
さらに請求項3の発明によれば、被調理物載置板3に、複数の透孔30aが設けられているから、調理器5内にブランデーやリキュール、塩水等の液体Lを注入したり、ハーブを敷いたりして調理器5をガスコンロ等で加熱すると、調理器具本体1内に香り等が付着した蒸気が上記透孔30aを介して充満する。これにより、被調理物Mの外周に上記香り等が付着した蒸気が略均一に付着されるため、被調理物Mに香りや下味が付き、さらに良好な被調理物の調理を行うことができる。
【0020】
そして請求項4の発明によれば、上記調理器具本体1の下部側外周面には、周方向に複数の流路孔11aが設けられているから、調理器5内に、上記液体Lが注入されると、その液体Lが上記流路孔11aを介して調理器具本体1内外を自由に往来することができる。これにより、調理器具本体1内外における液体Lの水位が略均一に保たれるため、調理器具本体1内の液体水位を確認するために、無駄に当該調理具本体1上面10から蓋体2を取外す必要がなくなる。そのため、被調理物Mの味の劣化を低減させることができる。それゆえ、さらに良好な被調理物の調理を行うことができる。
【0021】
一方、請求項5の発明によれば、上記調理器具本体1は、上下面10,11が開放されているから、上記被調理物載置板3を調理器具本体1内に設置するのが容易である上、調理器具本体1内の洗浄がし易くなる。
【0022】
また、請求項6の発明によれば、上記管体41は、上記貫通孔22aに上下方向に移動可能に貫入されているから、被調理物Mの大きさに合わせて管体41を移動させることできる。それゆえ、調理器具本体1の上面10が蓋体2によって密閉できなくなるような事態を低減することができる。
【0023】
さらに、請求項7の発明によれば、上記管体41の先端部41bは先鋭状に形成されているから、当該先端部41bを被調理物Mの中心位置まで埋没させることができる。そのため、被調理物Mの中心温度を測定することで、当該被調理物Mに内在されている人体に悪影響を及ぼす菌が死滅したか否かを判別することができる。それゆえ、さらに良好な被調理物の調理を行うことができる。
【0024】
そして、請求項8の発明によれば、上記管体41の外周面には、目盛り41cが設けられているから、正確に上記管体41の先端部41bを被調理物Mの中心位置まで埋没させることができる。それゆえ、被調理物Mの中心温度をより正確に測定することができる。そのため、さらに良好な被調理物の調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る調理器具の分解斜視図である。
【図2】同実施形態係る調理器具の縦断面図である。
【図3】同実施形態係る調理器具を調理器内に設置した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る調理器具の使用方法を示し、(a)は調理器内に調理器具を設置する状態、(b)は調理器内に調理器具を設置した状態、のそれぞれ縦断面である。
【図5】本発明の一実施形態に係る調理器具の使用方法を示し、(a)は温度計の先端部を被調理物載置板の上面に当接させた状態、(b)は被調理物を被調理物載置板に載置した状態、のそれぞれ縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る調理器具の使用方法を示し、(a)は図5(b)に示す矢印方向に蓋体及び温度計を移動させた状態、(b)は被調理物の中心位置まで温度計を移動させた状態、のそれぞれ縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る調理器具の一実施形態について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
【0027】
本実施形態に係る調理器具は、図1に示すように、上下面10,11が開放されている筒状の調理器具本体1と、その調理器具本体1の上面10を密閉する蓋体2と、その調理器具本体1内に着脱自在に設置される被調理物載置板3と、上記蓋体2上面中央部に設けられる温度計4とで構成されている。
【0028】
調理器具本体1は、ステンレス鋼等の金属で形成されており、図1に示すように、円筒状に形成されている。そして調理器具本体1の上面10は、図1〜図3に示すように略全面に亘って開放されており、その開放部分の周縁部には、上記蓋体2を支持する円形状の支持部10aが上記上面10と段差が生じるように設けられている。一方、調理器具本体1の下面11は、全面に亘って開放され、調理器具本体1の下部外周面には、周方向所要間隔置きに複数の流路孔11aが穿設されている。なお、本実施形態においては、調理器具本体1の下面11を全面に亘って開放させるようにしたが、開放させなくても良い。しかしながら、下面11を開放させた方が、上記被調理物載置板3を調理器具本体1内に設置するのが容易である上、調理器具本体1内の洗浄がし易くなるため、下面11を開放させた方が好ましい。また、本実施形態においては、調理器具本体1を円筒状に形成したが、円筒状に限定されるものではなく、角筒状でも良く、筒状であればどのような形状であっても良い。
【0029】
一方、蓋体2は、図1に示すように厚板状のガラス板で形成される蓋体本体20を有し、図2及び図3に示すように、この蓋体本体20の外周底面縁部が上記支持部10aに当接される。これにより、蓋体2が上記調理器具本体1の上面10を密閉することとなる。また一方、その蓋体本体20の中央部には、図2及び図3に示すように、上下方向に貫通した挿通孔20aが設けられている。そして、その挿通孔20a周縁部の蓋体本体20の表裏面には夫々、樹脂等で形成されるシール部材21が接着剤等によって固着されている。また、挿通孔20a内には、樹脂等で形成される掴持部22が挿通されている。
【0030】
掴持部22は、断面略L字の円柱状に形成され、上下方向に貫通された貫通孔22aが設けられている。そして、掴持部22の基端側22bは、蓋体本体20の上面に設けられているシール部材21に密接されると共に、使用者が掴持し易いように湾曲状に形成されている。また、掴持部22の先端側22cは、上記挿通孔20aに挿通されると共に、先端には雄ねじ22dが刻設されている。そして、この雄ねじ22dに雌ねじ23aが刻設されているナット23が螺合され、そのナット23が蓋体本体20の裏面に設けられているシール部材21に密接される。これにより、上記蓋体本体20の中央部に掴持部22が固定されることとなる。また、掴持部22の貫通孔22a内には、樹脂等で形成される略円筒状の規制部材24が設けられ、この規制部材24は掴持部22の内周面に接着剤等によって固着されている。
【0031】
一方、被調理物載置板3は、ステンレス鋼等で形成され、図1に示すように、上記調理器具本体1の内径よりも小径に形成される円形状の被調理物載置板本体30と、その本体30を支持する脚部31とで構成されている。この被調理物載置板本体30は、図1〜図3に示すように、上下方向に貫通する透孔30aが網目状に複数設けられ、図3に示すように、上記本体30上面には、被調理物(図示では、肉塊)Mが載置される。また、脚部31は、図1に示すように、上記本体30外周縁に適当間隔を置いて複数個(図示では、4個)溶接等によって固定されている。
【0032】
他方、温度計4は、図1〜図3に示すように、厚板円形状の温度表示部40と、その温度表示部40の下部に垂設されている管体41とで構成されている。この温度表示部40は、略中央部に矩形状の温度を表示するデジタル表示部40aが設けられ、そのデジタル表示部40aは、外周を樹脂等で形成されている円形状のカバー体40bで覆われており、そのカバー体40bの下部に管体41が垂設されている。一方、管体41は、金属等で形成されると共に、上記規制部材24の内径と略同径に形成されており、その管体41の内部先端側には、バイメタル等で形成されている感温部41aが埋設されている。また管体41の先端部41bは、先鋭状に形成され、管体41の外周面軸方向には、0cm〜10cmの目盛り41cが設けられている。そして、このように形成される管体41は、図2及び図3に示すように、上記貫通孔22aに貫入され、さらに、規制部材24内に貫入される。これにより、管体41が、規制部材24によって、左右方向に移動できないように規制されるから、貫通孔22a及び規制部材24を介して確実に上記調理器具本体1内を上下方向に移動できるようになる。なお、本実施形態においては、規制部材24を設ける例を示したが、設けなくとも良い。また、温度計4としてデジタルの温度計を例示したが、アナログの温度計でも良い。さらに、管体41の外周面軸方向に設けられている目盛り41cとして、0cm〜10cmの例を示したが、この範囲に限定されるものではなく、例えば、0cm〜15cm等どのような範囲に設定しても良い。
【0033】
このように構成される調理器具は、図3に示すように、上面を開放した有底の調理器本体50の外周面所要箇所に棒状の把持部51が溶接等によって固定されている調理器5内に設置される。すなわち、上面に被調理物(図示では、肉塊)Mが載置されている被調理物載置板3が、調理器本体50の内周底面部50aに接して設置され、さらに、蓋体2によって上面を密閉された調理器具本体1が、その被調理物載置板3を覆うように調理器本体50の内周底面部50aに接して設置される。また、調理器本体50内には、ブランデーやリキュール、塩水等の液体Lが注入されており、その液体Lが上記流路孔11aを介して調理器具本体1内外を自由に往来(矢印P1参照)できるようになっている。これにより、調理器具本体1内外における液体Lの水位が略均一に保たれるため、調理器具本体1内の液体水位を確認するために、無駄に当該調理具本体1上面から蓋体2を取外す必要がなくなるから、被調理物Mの味の劣化を低減させることができる。なお、本実施形態においては、調理器具本体1の下部外周面に、周方向所要間隔置きに複数の流路孔11aが穿設される例を示したが、液体Lが調理器本体1内外を自由に往来できれば良いため、複数の流路孔11aは調理器具本体1の下部側に設けられていれば良く、必ずしも下部に限定されるものではない。また、複数の流路孔11aはランダムに設けても良い。
【0034】
一方、上記のように調理器本体50内に液体Lが注入されると共に、調理器具が設置された状態で、調理器本体50の外周底面部50bがガスコンロ等によって加熱されると、その加熱によって液体Lが気化され蒸気となる。そして、この蒸気は上記透孔30aを介して蓋体2に向かって上昇し(矢印P2参照)、その蒸気が被調理物Mの外周に略均一に付着される。これにより、被調理物Mに香りや下味が付き良好な調理を行うことができる。それゆえ、被調理物載置板3には複数の透孔30aを設けなくとも良いが設けた方が好ましい。
【0035】
また一方、図3に示すように、蓋体2の中央部には温度計4が設けられており、温度計4の管体41が貫通孔22a及び規制部材24を介して貫入されている。これにより、調理器具本体1内の雰囲気温度を管体41の先端側に埋設されている感温部41aが検知し、その検知した温度が図3に示すように、デジタル表示部40aに表示(図示では、74℃)される。それゆえ、蓋体2によって密閉されている調理器具本体1内の雰囲気温度を測定しながら、被調理物Mの調理を行うことができる。なお、本実施形態においては、上記管体41が上記調理器具本体1内を上下方向に移動できるように、上記管体41を貫通孔22aに上下方向に移動できるように貫入させたが、固定させても良い。しかしながら、上記管体41を上記貫通孔22aに上下方向に移動可能なように貫入させた方が好ましい。被調理物Mの大きさに合わせて管体41を移動させることで、調理器具本体1の上面10が蓋体2によって密閉できないというような事態を低減させることができるためである。
【0036】
次に、上記のように構成される調理器具の使用例を、図4〜図6を用いてより具体的に説明する。まず、液体Lが注入された調理器本体50内に調理器具を設置する。すなわち、図4(a)に示すように、矢印P3方向に、被調理物載置板3,調理器具本体1及び中央部に温度計4が設けられている蓋体2を移動させ、図4(b)の状態とする。具体的には、被調理物載置板3が調理器本体50の内周底面部50aに接して設置され、その被調理物載置板3を覆うように調理器具本体1が調理器本体50の内周底面部50aに接して設置される。そして、その調理器具本体1の上面が蓋体2によって密閉されることで、図4(b)のような状態となる。
【0037】
そして次に、その状態で、温度計4を矢印P4方向に移動させ管体41の外周面に設けられている目盛り41cの基準位置を設定する。すなわち、図5(a)に示すように、管体41の先端部41bを被調理物載置板3の上面に当接させる。これにより、掴持部22の上面部に位置する目盛り41cの値(図示では、0cm)が基準位置として設定されることとなる。なお、本実施形態においては、基準位置を0cmに設定したが、被調理物載置板3の上面に管体41の先端部41bが当接された際の目盛り41cの値が1cmであれば、それが基準位置として設定されることとなる。それゆえ、基準位置が必ず0cmとして設定されるわけではない。
【0038】
このように目盛り41cの基準位置を設定した後、矢印P5方向に蓋体2によって上面を密閉された調理器具本体1を移動させ、図5(b)に示すように、被調理物載置板3を調理器具本体1内から開放する。この状態で、被調理物載置板3の上面に被調理物Mを載置し、上面を密閉された調理器具本体1をP6方向に移動させると共に、温度計4、すなわち、管体41をP7方向に移動させ、図6(a)に示す状態とする。これにより、被調理物Mの表面近傍まで温度計4(すなわち、管体41)を移動させた際の掴持部22の上面部に位置する目盛り41cの値(図示では、4cm)を確認することで、被調理物Mの高さを測定することができる。すなわち、被調理物Mの高さは、被調理物Mの表面近傍まで温度計4(すなわち、管体41)を移動させた際の目盛り41cの値から上記設定した基準位置の目盛り41cの値を減算した値がその高さとなる。これにより、被調理物Mの中心位置(被調理物Mの高さの半分、すなわち、本実施形態では2cm)を測定することが可能となる。
【0039】
この状態で、調理器本体50の外周底面部50bをガスコンロ等によって加熱し、その加熱した際の調理器本体50内の雰囲気温度を温度計4によって測定する。すなわち、温度計4の管体41の先端側に埋設されている感温部41aによって上記調理器本体50内の雰囲気温度が検知され、その検知された温度がデジタル表示部40aに表示される。これにより、蓋体2によって密閉されている調理器本体1内の雰囲気温度を測定しながら、被調理物Mの調理を行うことができる。なお、このデジタル表示部40aの温度が所望温度を超えてしまった場合は、調理器具本体1上面10から蓋体2を取外し、調理器具本体1内の蒸気を外方へ拡散させ調理器具本体1内の雰囲気温度を下げた上で、再び蓋体2によって調理器具本体1上面10を密閉し、密閉状態の調理器具本体1内の雰囲気温度を測定すれば良い。しかして、蓋体2は、上記調理具本体1の上面10に対して接離可能に設けられているから、調理器具本体1内の雰囲気温度が所望温度を超えないように制御することができる。
【0040】
そして次に、上記のように調理器具本体1内の雰囲気温度を制御し、所望温度(例えば、74℃)に達したらガスコンロ等の加熱を停止し、温度計4(すなわち、管体41)を矢印P8方向に移動させ図6(b)の状態とする。すなわち、管体41の先端部41bを被調理物Mの中心位置まで埋没させる。具体的には、この被調理物Mの中心位置は、図6(a)によって測定した被調理物Mの高さの半分の位置(本実施形態では、目盛り41cの値が2cmの位置)であるから、掴持部22の上面部に位置する目盛り41cの値が上記高さの半分の位置になるところまで、管体41を下方向に移動させる。これにより、管体41の先端部41bが被調理物Mの中心位置まで埋没されることとなる。そして、管体41の先端部41bが被調理物Mの中心位置まで埋没されれば、管体41の先端側に埋設されている感温部41aによって上記被調理物Mの中心温度が検知され、その検知された温度が温度表示部40(すなわち、デジタル表示部40a)に表示される。なお、このように被調理物Mの中心温度を測定するのは、被調理物Mに内在されている人体に悪影響を及ぼす菌が死滅したか否かを判別するためである。そのため、人体に悪影響を及ぼす菌が内在されていない被調理物Mに対しては、当該被調理物Mの中心温度を測定しなくとも良い。その際は、密閉された調理器具本体1内の雰囲気温度のみ測定することとなる。
【0041】
そして、このように感温部41aによって検知された被調理物Mの中心温度が所望温度(例えば、67℃)に達したら、被調理物Mに内在されている菌が死滅したことが分かるため、その時点で、本実施形態に係る調理器具を用いた被調理物Mの調理は終了となる。なお、本使用例においては、蒸し調理を用いた例を示したが、その調理に限定されるものではなく、例えば、液体Lを調理器本体50内に注入しなければ無水調理も可能であり、さらには、調理器本体50内にハーブ等を敷けば燻製調理も可能である。すなわち、本実施形態に係る調理器具は様々な調理に適用することが可能である。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る調理器具によれば、筒状の調理器具本体1が調理器5の調理器本体50内に着脱自在に設置され、その調理器具本体1内に被調理物Mが載置される被調理物載置板3が着脱自在に設置される。そして、調理器具本体1の上面10は、蓋体2によって密閉され、その蓋体2には上下方向に貫通した貫通孔22aが設けられている。一方、当該調理器具は、温度計4を有し、その温度計4は、温度表示部40に感温部41aを有する管体41が設けられている。そして、その管体41が、上記貫通孔22aを介して調理器具本体1内に貫入されている。
【0043】
しかして、本実施形態によれば、調理器具本体1内を密閉させた状態で、その調理器具本体1内に貫通孔22aを介して感温部41aを有する管体41を貫入させることができるから、密閉状態の調理器具本体1内の雰囲気温度を測定することができる。それゆえ、調理器具本体1内の雰囲気温度を正確に測定することができる。また、構造が非常に簡便であるため、熟練を要さずとも簡単容易に調理器具本体1内の雰囲気温度を測定することができる。そのため本実施形態によれば、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理を行うことができる。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、調理器本体50内に液体Lを注入すれば蒸し調理ができ、液体Lを調理器本体50内に注入しなければ無水調理もでき、さらには、調理器本体50内にハーブ等を敷けば燻製調理もできる。それゆえ、調理別に調理器を揃えずとも、様々な調理を行うことができる。
【0045】
一方、本実施形態によれば、上記管体41の先端部41bは先鋭状に形成されているから、当該先端部41bを被調理物Mの中心位置まで埋没させることができる。そのため、被調理物Mの中心温度を測定することで、当該被調理物Mに内在されている人体に悪影響を及ぼす菌が死滅したか否かを判別することができる。それゆえ、より良好な被調理物Mの調理を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、上記管体41の外周面には、目盛り41cが設けられているから、正確に上記管体41の先端部41bを被調理物Mの中心位置まで埋没させることができる。それゆえ、被調理物の中心温度をより正確に測定することができる。そのため、さらに良好な被調理物Mの調理を行うことができる。
【0047】
ところで、本実施形態において、調理器として鍋を例示したが、鍋の形状は本実施形態に示した形状に限定されるものではなくどのような形状であってもよい。また、調理器としては鍋に限定されるものでもなく、例えばフライパン等、様々な調理機器を採用することが可能である。
【0048】
また、本実施形態において、被調理物として肉塊を例示したが、肉塊に限定されず、魚や野菜等の食材を用いて良い。
【符号の説明】
【0049】
1 調理器具本体
2 蓋体
3 被調理物載置板
4 温度計
5 調理器
10 (調理器具本体の)上面
11 (調理器具本体の)下面
11a 流路孔
20 蓋体本体
22 掴持部
22a 貫通孔
30 被調理物載置板本体
30a 透孔
40 温度表示部
40a デジタル表示部
41 管体
41a 感温部
41b (管体の)先端部
41c 目盛り
50 調理器本体
M 被調理物
L 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋やフライパン等の調理器内に着脱自在に設置可能で、且つ、少なくとも上面を開放した筒状の調理器具本体と、該調理器具本体の上面を密閉する蓋体と、該調理器具本体内に着脱自在に設置可能で、且つ、被調理物を載置可能な被調理物載置板と、温度表示部に感温部を有する管体が設けられてなる温度計とを有する調理器具であって、
前記蓋体には、上下方向に貫通した貫通孔が設けられ、その貫通孔を介して前記管体が前記調理器具本体内に貫入されてなることを特徴とする調理器具。
【請求項2】
前記蓋体は、調理器具本体の上面に対して接離可能に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項3】
前記被調理物載置板には、複数の透孔が設けられてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の調理器具。
【請求項4】
前記調理器具本体の下部側外周面には、周方向に複数の流路孔が設けられてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項5】
前記調理器具本体は、上下面が開放されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項6】
前記管体は、前記貫通孔に上下方向に移動可能に貫入されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項7】
前記管体の先端部は、先鋭状に形成されてなることを特徴とする請求項6に記載の調理器具。
【請求項8】
前記管体の外周面には、目盛りが設けられてなることを特徴とする請求項7に記載の調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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