説明

調理器

【課題】製品の品位、安全性を高めた調理器を提供する。
【解決手段】本発明の調理器は、内釜としての鍋11と、鍋11を収納する鍋収容部6と、鍋11を加熱し鍋収容部6外方に配置された加熱手段16と、鍋収容部6と加熱手段16を収納する外枠3より構成する本体1と、鍋11上方を覆う内蓋56とを備える。、鍋収容部6上部に設けられた略環状の凸部6Aには、弾性部材から成る鍋支持手段312を設け、鍋11のフランジ部14下面と接触する構造であり、鍋支持手段312は、押さえ部材313と凸部6Aで挟持され、加熱手段16は、誘導加熱方式で加熱するものであり、鍋11外面には、高耐食性或いは高熱伝導性に優れたコーティングを施している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調圧手段を備えた調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、調圧手段の取付は上下方向の爪による嵌合方式が主流であった。
内鍋の圧力を調整する調圧手段は、調圧用弁体と、この調圧用弁体を上方から覆う調圧弁体カバーと、調圧用弁体を下方から保持する調圧弁体ホルダーとから構成されており、調圧用弁体を調圧弁体カバーと調圧弁体ホルダーによって上下方向から挟持するものであった(特許文献1)。
【0003】
ここでの調圧弁体カバーと調圧弁体ホルダーの結合は、爪によって上下方向から嵌合させるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−29402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の調理器では、耐熱性に優れた樹脂で内釜を保持する構成が主流となっていた。内釜は、通常金属製から成り、金属と樹脂が接触することにより、内釜を炊飯器にセットする際に、内釜を落下させた時に製品にダメージが残ったり、IH加熱による内釜の振動により、共振音が発生したり、異常加熱時等、内釜が高温に至る場合、製品にダメージが残ったり、或いは内釜支持手段を樹脂とし、調理器の構造上、取付部下方に孔がある場合、水が浸入する恐れがある等の問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、製品の品位、安全性を高めた調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の調理器では、内釜と、前記内釜を収納する内枠と、前記内釜を加熱し前記内枠外方に配置された加熱手段と、前記内枠と前記加熱手段を収納する外枠より構成する本体とを備えた調理器において、前記内枠に弾性部材から成る内枠支持手段を設け、前記内釜フランジ部と接触する構造とし、前記内枠支持手段は、前記内枠上面に設けた略環状の凸部に設けられると共に、押さえ部材と前記凸部で挟持され、前記加熱手段は、誘導加熱方式で加熱するものであり、前記内釜外面には、高耐食性或いは高熱伝導性に優れたコーティングを施したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1によれば、内釜を調理器にセットする際、内釜を落下させたときでも、内釜の重量分の衝撃から発生するダメージを内枠支持手段によって吸収し、調理器へのダメージを低減することができる。また、加熱手段のIH加熱(電磁誘導加熱)により内釜に振動が発生しても、内釜のフランジ部に当接された内枠支持手段で共振を吸収することにより、音の発生を抑制することができる。さらに、異常加熱時等、内釜が高温に至る場合でも、内枠支持手段で内釜を支持している為、製品へのダメージを低減できる。また、内釜支持手段を弾性部材とし、上枠の内釜支持手段の取付け部分下方に孔がある場合でも、内釜支持手段と押さえ部材によって孔をシールすることにより、孔への水の浸入を防止でき、安価で安全で製品を供給できる。内釜外面にコーティングが施されたことにより、内釜外面の耐食性を高めたり、内釜の熱伝導性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例における炊飯器の全体断面図である。
【図2】同上、蓋開ボタン周辺の構造を示す要部断面図である。
【図3】同上、炊飯器の平面図である。
【図4】同上、加圧時における調圧部およびその周辺の拡大断面図である。
【図5】同上、減圧時における調圧部およびその周辺の拡大断面図である。
【図6】同上、図2とは別な断面であらわした加圧時における要部の拡大断面図である。
【図7】同上、外蓋を外した状態の蓋体内部の斜視図である。
【図8】同上、クランプと、調圧用ソレノイドおよび開閉用ソレノイドの周辺の構造を示す斜視図である。
【図9】同上、調圧用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図10】同上、開閉用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図11】同上、開閉用ソレノイドの非通電時における要部の断面図である。
【図12】同上、図11に示す状態から、内蓋組立体を装着した場合の要部の断面図である。
【図13】同上、図12に示す状態から、内蓋に変形を生じたときの要部の断面図である。
【図14】同上、電気的構成を示すブロック図である。
【図15】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図16】本発明の第2実施例における調理器の安全弁周辺の分解斜視図である。
【図17】同上、第1の回転規制手段付近を底側から見た状態斜視図である
【図18】同上、図18(A)はベース部材の回転方向を示す底面図であり、図18(B)は第1の回転規制手段付近の底面図である。
【図19】本発明の第3実施例における調理器のベース部材の斜視図である。
【図20】同上、第1の位置規制手段付近の内蓋の斜視図である。
【図21】同上、底側から見たベース部材と内蓋の分解斜視図である。
【図22】同上、安全弁と内蓋周辺の分解斜視図である。
【図23】同上、第2の回転規制手段付近の斜視図である。
【図24】本発明の第3実施例における調理器の第2の位置調節手段付近の内蓋を底側から見た分解斜視図である。
【図25】本発明の第4実施例における調理器の調圧部の分解斜視図である。
【図26】同上、調圧部を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図27】同上、調圧部を上方から見た斜視図である。
【図28】同上、調圧弁カバー周りの斜視図である。
【図29】同上、図28において調圧弁カバーに嵌合部材を嵌合させた状態を示す斜視図である。
【図30】本発明の第5実施例における調理器の上枠および外枠を示す斜視図である。
【図31】同上、図30におけるA−A線における要部断面図である。
【図32】同上、内枠支持手段付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における調理器の好ましい各実施例を説明する。なお、各実施例において、共通する箇所には共通する符号を付し、共通する部分の説明については重複をさけるため極力省略する。
【実施例1】
【0011】
まず図1に基づき、本発明の調理器である炊飯器の基本的な構成について説明する。同図において、炊飯器の外郭をなす本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより形成され、外枠3の下方にある底部開口を覆う底板4が設けられている。その際、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から垂下され、この上枠2と一体化したPPなどの合成樹脂で形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
【0012】
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収容される。鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
【0013】
前記内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって発熱体13が発熱し、炊飯時と保温時に鍋11ひいては鍋11内の被炊飯物を加熱するようになっている。
【0014】
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、温度検出手段としてサーミスタ式の鍋温度センサ17が配置され、この鍋温度センサ17の検出温度に応じて加熱コイル16の加熱量を調節し、鍋11を一定温度に保持する構成になっている。
【0015】
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ18が円環状に配置される。このコードヒータ18は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置して取付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング19上に保持されると共に、コードヒータ18を上から覆うようにしてヒータリング19に取付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板20を備えて、フランジヒータを構成している。この金属板20は、炊飯器本体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板20の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ18と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ18が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
【0016】
蓋体31は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋32と、蓋体31の内面である下面を形成し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の放熱板34と、外蓋32の下方に位置して前記鍋11の上方開口部を覆い、外蓋32および放熱板34を結合させる蓋ベース材としての外蓋カバー35とを主たる構成要素としている。また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板34の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ36が設けられている。この蓋ヒータ36は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0017】
前記上枠2の後方には、蓋体31と連結するヒンジ部38が設けられる。このヒンジ部38には、正面から見て左右方向に一対の孔(図示せず)が設けられていると共に、ねじりコイルバネなどで形成したヒンジバネ40が、その内部に収納される。一方、外蓋カバー35の後方にも、前記ヒンジ部38に設けた孔と対向するようにヒンジ受部としての外蓋カバーヒンジ孔(図示せず)が設けられる。そして、このヒンジ孔とヒンジ部38の孔に共通して、棒状のヒンジシャフト41を挿通することで、本体1と蓋体31がヒンジシャフト41を支点として開閉自在に軸支される。さらに、前記ヒンジバネ40の一端と他端が、外蓋カバー35と外枠2にそれぞれ引掛けられることで、蓋体31は常時開方向に付勢されている。
【0018】
蓋体31の前方上面には、蓋開ボタン46が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン46を押すと、蓋体31と本体1との係合が解除され、ヒンジバネ40によって蓋体31が自動的に開く構成となっている。
【0019】
ここで、図2の断面図に基づいて、蓋開ボタン46周辺の構成をさらに詳しく説明すると、蓋体31には係止手段に相当するクランプ44が配置される。このクランプ44は、蓋体31の内部に設けた軸としてのクランプシャフト45を中心として、外蓋カバー35に対し回転自在に軸支される。蓋開閉手段に相当する蓋開ボタン46は、使用者が操作できるように蓋体31の前方上面から露出状態に配設される。蓋体31の内部には、クランプ44の基端部44Aを蓋開ボタン46側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段(図示せず)が設けられ、これにより蓋開ボタン46を常時上方に押し上げる力が作用するようになっている。
【0020】
クランプ44は、蓋開ボタン46に当接する基端部44Aの他に、外蓋カバー35の下面にあるクランプ用孔48から下方に突出する垂下部44Bと、クランプ44の実質的な先端部に相当し、垂下部44Bの下端を起点として、そこから本体1の内方に延出する係合部44Cとにより構成される。クランプ44はステンレスなどの金属部品で形成し、係合部44Cは略L字状とする。そうすることで、クランプ44を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ受け50との係合を得られる。また、蓋体31の中央から左右の略均等位置に係合部44Cを設ける。これらの垂下部44Bや係合部44Cは、クランプ44の下側にあって左右一対に設けられる。クランプ44の回転中心となるクランプシャフト45は、垂下部44Bの上端に沿うように配置され、係合部44Cは本体1の略前後方向に揺動する。
【0021】
一方、上枠2に設けたヒンジ部38の略反対側に位置して、該上枠2の前方には受け手段に相当するクランプ受け50が配設されており、蓋体31を本体1側に閉じようとすると、クランプ付勢手段の付勢力により、クランプ44がクランプシャフト45を中心軸として回転し、当該クランプ受け50に係合することで、蓋体31を本体1に対し閉状態に保持するようになっている。クランプ受け50はステンレスなどの金属部品で形成する。そうすることで、クランプ受け50を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ44との係合を得られる。反対に蓋体31を開く場合には、蓋開ボタン46を押動操作し、クランプ44の基端部を下方に押下げてクランプ44を逆方向に回転させ、係合部44Cを本体1の前方に変位させて、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除する。上枠2のクランプ受け下方部は、クランプ44がクランプシャフト45を軸として回転動作する際に、ぶつからない深さを有することが必要である。また、クランプ44とクランプ受け50下方部の隙間は、通常時のクランプ44とクランプ受け50の係合量よりも大となる寸法関係としておく。更に、外蓋カバー35と上枠2の隙間よりも大となる寸法関係としておく。
【0022】
なお、ここでは蓋体31側にある可動するクランプ44を係止手段といい、本体1側にある固定したクランプ受け50を受け手段としているが、蓋体31に固定した係止手段を設け、本体1に可動する受け手段を設けてもよい。
【0023】
55は、放熱板34の外側すなわち下側に設けられる内蓋組立体である。この内蓋組立体55は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の内蓋56と、鍋11と内蓋56との隙間を塞ぐために、当該内蓋56の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン57と、鍋11の内圧力を調整する調圧部58とを備えている。そして、内蓋56と蓋パッキン57はパッキンベース59で一体化され、これにより外蓋カバー35内面に内蓋組立体55が着脱可能に設けられる。また、環状に形成された蓋パッキン57は、蓋体31を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋56との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。
【0024】
再度図1に戻って説明すると、前記放熱板34には、蓋体31に装着される内蓋56の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ36による内蓋56の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ61が設けられる。また、蓋体31の上面後方寄り部には、蓋体31の上面側から着脱可能な蒸気口146が設けられる。
【0025】
前記内蓋56は、何れも鍋11の内部と連通する複数の孔すなわち連通孔77,181を備えている。また、これらの連通孔77,181を開閉する開閉手段として、調圧部58と開閉弁62がそれぞれ別個に設けられる。調圧部58および開閉弁62は、内蓋56を外蓋カバー35の下側に取付けたときに、何れも蒸気口146の入口側に臨んで設けられ、当該蒸気口146と蓋体31の内部で連通する。そして、これらの調圧部58や開閉弁62が連通孔77,181を開放または閉止することで、鍋11内の圧力を調節するようになっている。
【0026】
ここで、図4〜図6を参照しながら、連通孔77を開閉する調圧部58の構成をより詳しく説明する。調圧手段たる前記調圧部58は、調圧用の調圧弁65と、調圧弁65を保持する調圧弁ホルダー組立体66と、調圧弁65を覆うドーム状の調圧弁カバー67とを備えて構成される。調圧弁65は耐食性に優れた材料で、ある程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレス球で形成される。
【0027】
調圧弁ホルダー組立体66は、第1ホルダー68と、第2ホルダー69と、減圧支持部材に相当する第1調圧パッキン71と、第2調圧パッキン72と、鍋11内からの圧力が第1調圧パッキン71に直接加わらないように、この第1調圧パッキン71の下方にあって、加圧支持部材に相当する弁支持体73と、第1調圧パッキン71の下面に弁支持体73が当接する方向に、当該弁支持体73を付勢する弾性体としての調圧バネ74と、により構成される。弁支持体73には、鍋11内の加圧時にボール状の調圧弁65の下方に当接する調圧孔70が設けられる。この調圧孔70は、鍋11と蓋体31外部とを連通させる為のもので、鍋11内の蒸気が調圧孔70を通過すると、蒸気口146から外気へ放出されるようになっている。また、第1ホルダー68と第2ホルダー69には、互いを嵌合する為の凸状の係合部75と凹状の被係合部76がそれぞれ設けられている。これらの第1ホルダー68と第2ホルダー69は、前記第1調圧パッキン71や弁支持体73などを保持する保持部材として、内蓋56に設けた連通孔77に装着される。第1ホルダー68は全体がキャップ状に形成され、その中央部に貫通孔68Aを有し、貫通孔68Aの周辺部68Bと第2ホルダー69の上端部69Aとにより、第1調圧パッキン71の基部を挟持するようになっている。また、第2ホルダー69は筒状で、その下側には内蓋56の連通孔77周辺の下面に当接するフランジ69Bが形成されると共に、フランジ69Bの上方外周には、リング状の前記第2調圧パッキン72を嵌合させる凹溝69Cが形成される。さらに、第2ホルダー69の内周側には、調圧バネ74の一端部を嵌め込むために、断面L字状の突片69dが形成される。
【0028】
調圧弁ホルダー組立体66の組立に際しては、まず第2ホルダー69の凹溝69Cに調圧パッキン72を嵌め込んだものを、内蓋56に設けた連通孔77に差込み、第2ホルダー69の内周側で調圧バネ74を挟むようにして、弁支持体73を第2ホルダー69の上方から挿入する。次に、弁支持体73および第2ホルダー69の上端部69Aを覆うようにして、第1調圧パッキン71を弁支持体73に載置し、その状態から更に第1調圧パッキン71を挟む様にして、第1ホルダー68を上方から被せ、係合部75と被係合部76とを互いに嵌合させて、第2ホルダー69に第1ホルダー68を取付ける。そして、図4や図5に示すように、調圧弁ホルダー組立体66を組立てた状態では、鍋11内部に第2ホルダー69の内側面と弁支持体73の下面が直接対向し、これらの第2ホルダー69や弁支持体73の上側に配置された第1調圧パッキン71は、鍋11内から直接圧力を受けずに済む構造になっている。
【0029】
この様に組立てた調圧弁ホルダー組立66で調圧弁65を保持し、上方から調圧弁カバー67を被せることで調圧部58を構成する。この時、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67との取付けは爪嵌合でも良いし、ネジやリベットなどの止着部材を利用して止めてもよい。調圧弁カバー67は、調圧弁65の移動範囲を規制するためのもので、調圧孔70から放出する蒸気を蒸気口146に導く複数の孔(図示せず)が設けられている。また内蓋56は、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67とで峡持されるので、内蓋56の連通孔77は露出しない。
【0030】
弁支持体73の調圧孔70の開口面積は、弁支持体73の下側に形成した脚部79の内側の、鍋11内から直接圧力を受ける面80の面積より小さくなっている。また、調圧弁65は調圧孔70を塞ぐように保持される。よって、調圧孔70の開口面積と調圧弁65との重量により、鍋11内の圧力を調整することができる。
【0031】
調圧弁65を動かして蓋体31の密閉度即ち鍋11の内圧を調節する動作源として、蓋体31内の外蓋カバー35には、調圧部58内にある調圧弁65を動かすソレノイド78が設けられる。ソレノイド78の非通電状態では、その先端部を進出位置に保持し、調圧弁65を調圧孔70から退避する一方、ソレノイド78の通電状態では、その先端部を退避させ、調圧弁65を調圧孔70に自重で転動させ、調圧孔70を塞いで鍋11内に圧力を投入する。
【0032】
第1調圧パッキン71および第2調圧パッキン72は、何れもシリコーンゴム等の弾性部材で構成する。これにより、特に図5に示す鍋11内の減圧時には、第1調圧パッキン71の弾性変形により、調圧弁65が当該第1調圧パッキン71に密着し、第1調圧パッキン71における開口部すなわち孔71Aのシール性が向上する。
【0033】
ここで、上記図1〜図6の他に、図7〜図9をもさらに参照しながら、前記調圧部58の操作手段について説明する。蓋体31の内部には、電磁力により内部からプランジャー151を出没させて、調圧部58内にある調圧弁65を動かす調圧用ソレノイド78が設けられる。また、外蓋カバー35に向けてプランジャー151と共に可動する調圧フレーム152や、蓋体31内部を水密状態に保持する可撓性の調圧パッキン153も、同様に蓋体31内の外蓋カバー35に設けられる。調圧パッキン153は、調圧部58に臨んで外蓋カバー35に設けた取付け孔の周縁に嵌合する凹字状の取付部153Aが形成される。そして、図6にも示すように、これらの調圧用ソレノイド78や調圧フレーム152は、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154に収容配置される。
【0034】
調圧フレーム152は、図7〜図9に示すように、調圧弁65に向けて突出した調圧弁操作手段としての調圧操作部161と、調圧用ソレノイド78を囲うようにして設けたフレーム部162と、調圧操作部161の略反対側に設けられた規制手段としてのクランプ動作規制部163とを備えて構成される。ソレノイド78のプランジャー151ひいては調圧フレーム152は、鍋11内を非加圧状態とするために、調圧弁65を押すように常時位置している。このときの調圧フレーム152の位置を、第1フレーム位置とする。特に調圧弁65を操作する調圧フレーム152の部分を、前記調圧操作部161としている。こうすることで、蓋体31を開けようとする場合には、鍋11内を外気と連通させ、負圧の影響を受けずにスムーズな蓋開動作を得ることができる。
【0035】
上記連通孔77に対向する調圧部58とは別に、別な連通孔181に対向して、当該連通孔181を開閉する開閉弁62が内蓋56の上面側に設けられる。当該開閉弁62は、図11〜図13に示すように、上下動可能な開閉弁シャフト201と、シャフト押え202と、弾性体であるコイルスプリングからなるシャフトバネ203と、開閉弁シャフト201の下部に装着するシャフトパッキン204とを備えて構成される。シャフト押え202は筒状で、下端が内蓋56の連通孔181周囲に当接する一方で、上端から開閉弁シャフト201が挿通するようになっている。シャフトバネ203は、開閉弁シャフト201の外周に形成したフランジ201Aと前記シャフト押え202の上端とに間に設けられ、シャフトパッキン204が連通孔181から離れる方向に、開閉弁シャフト201を常時付勢する。このように、シャフトパッキン204を含む開閉シャフト201は、シャフトバネ203により連通孔181を開放する方向に常時付勢されているが、これは内蓋56の上部に溜まったオネバを、連通孔181から鍋11内に戻すことと、蓋体31を閉じる時に、鍋11内から連通孔181を通して外気に空気を抜け易くし、蓋閉時に掛かる力を低減させるためである。さらに、連通孔181に臨んで設けたシャフトパッキン204は、開閉弁シャフト201が下方に移動したときに連通孔181を確実に塞ぐように、柔軟性を有する材料で形成される。
【0036】
205は、前記開閉弁シャフト201やシャフトバネ203の外周を覆い、シャフト押え202の上部に被着される筒状の開閉弁カバーである。この開閉弁カバー205は、前記調圧弁カバー67に取付けてもよいし、調圧弁カバー67とは別個に設けて取付けてもよい。
【0037】
開閉弁62の上部に位置して、外蓋カバー35には操作手段としての開閉弁操作手段211が取付けられる。開閉弁操作手段211は、開閉弁62を操作するための操作部材212としての第1開閉シャフト212Aおよび第2開閉シャフト212Bと、操作部材212を上下に動作させるフレーム部材である開閉フレーム175と、前記第1開閉シャフト212Aと第2開閉シャフト212Bとの間にあって、コイルスプリングからなる弾性部材215と、外蓋カバー35の孔部216を塞ぐ可撓性のシール部材217と、シール部材217の上部に取付けられるキャップ218と、により構成される。シール部材217は、その外周部に蓋体31の内部をシールするシール部221が形成される一方で、中心部には前記操作部材212を覆う有底筒状の操作部222が設けられ、この操作部222が前記開閉弁シャフト201の上端面に当接するようになっている。ここでのシール部221は、断面がコ字状で、外蓋カバー35の孔部216周縁に装着されるようになっており、さらにこの孔部216の周縁とキャップ218の外周部との間に挟持される。また、シール部221と操作部222との間には、これらのシール部221や操作部222よりも肉薄で、柔軟性に富む繋ぎ部223で連結される。この繋ぎ部223は断面が湾曲した形状に形成されるが、操作部222が操作部材212に連動して、開閉弁シャフト201と同じ上下方向に可動する形状であれば、湾曲以外の形状であってもよい。
【0038】
前記キャップ218に挿通する操作部材212と、シール部材217の操作部222との間には、弾性部材215が装着される。また、操作部材212の上方には、前記開閉フレーム175の操作部材可動部188が貫通し当接する孔213が設けられる。
【0039】
有底筒状をなす第1開閉シャフト212Aの上部外周には、円環状の溝241が形成される一方で、第2開閉シャフト212Bの下部内周に形成され、前記溝241に爪242を嵌合させつつ、弾性部材215を介在した状態で、第1開閉シャフト212Aの上部に第2開閉シャフト212Bが上下動可能に装着される。ここで、溝241に一定の幅を持たせることにより、第2開閉シャフト212Bに対する第1開閉シャフト212Aの移動範囲が、溝241の幅で規制されるようになっており、これにより操作部材212は、弾性部材215の所定の取付け位置に設けられる。つまり、ここでの溝241と爪242は、弾性部材215間の弾性力や寸法のばらつきに依存せず、上下方向に可変可能な操作部材212の全長の上限と下限を、一律に規制する規制手段として設けられている。
【0040】
ここで開閉フレーム175とその周辺の構成を、前述した図7および図8や、図10に基づき説明すると、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154とは別の開閉収容部171に、開閉用ソレノイド172が配置される。この開閉用ソレノイド172も、前記調圧用ソレノイド78と同様に、電磁力により内部からプランジャー173を出没させる構成となっている。そして、前記開閉フレーム175は、開閉用ソレノイド172と共に開閉収容部171に収容配置され、プランジャー173と共に可動するようになっている。このように、開閉弁操作手段211を構成する開閉フレーム175が、好ましくはソレノイドである開閉用ソレノイド172を駆動源として動作することで、炊飯行程において確実に開閉フレーム175を移動させることが可能になる。また同様に、調圧フレーム152が、好ましくはソレノイドである調圧用ソレノイド78を駆動源として動作することで、炊飯行程において確実に調圧フレーム152を移動させることが可能になる。
【0041】
前記操作部材可動部188は、操作部材212と開閉用ソレノイド172のプランジャー173との間にあって、開閉フレーム175の後方に一体化して腕片状に形成される。また、この開閉フレーム175の前方には、操作部材可動部188の略反対側に位置して、規制手段としての突出したクランプ動作規制部189が設けられる。この操作部材可動部188は、その中央部188Aと先端部188Bで高低差を有する形状となっており、さらに操作部材212に設けた孔213に貫通した状態でセットされる。つまり、ここでの操作部材可動部188は、操作部材212との当接部にカム面188Cを形成しており、プランジャー173ひいてはこれに連動する操作部材可動部188が出没するのに伴い、操作部材212が接するカム面188Cの位置が変わることで、開閉用シャフト186ひいては開閉弁182が上下動するようになっている。
【0042】
251は、内蓋組立体55の内蓋56に設けられる安全弁である。この安全弁251Aは、鍋11内の圧力が何らかの要因で設定値以上である異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋11の内圧を下げるものである。この安全弁251は、内蓋56に形成した孔252の周辺に設けられ、この孔252の下側から取付けられるベース部材253と、孔252の上側から取付けられるドーム状の安全弁カバー254と、安全弁カバー254内に設けられる開閉保持手段255と、孔252の内面とベース部材253との間を水密に封止する環状パッキン256とにより構成される。この中で、開閉保持手段255は、安全弁側カバー部材254内に上下動自在に設けられる弁体としての開閉手段257と、安全弁側カバー部材254および開閉手段257の間に介在する付勢手段としてのコイルスプリング258とを備えている。ベース部材253には、内蓋56の孔252ひいては安全弁251の内部から蒸気口146に連通する開放部259が開口形成されていると共に、開閉手段257の先端に設けられた弾性部材260が開放部259を常時塞ぐように、開閉保持手段255を構成するコイルスプリング258が、開閉手段257を一方向に付勢するようになっている。また、安全弁251のコイルスプリング258のバネ荷重は、調圧部58が動作する動作圧力値よりも高く設定されている。
【0043】
調圧弁カバー67は、開閉弁カバー205及び安全弁カバー254と一体的に取り付けたもの又は一体成型されたものであるが、それぞれ別体として設けられたものとしてもよい。
【0044】
そして、内蓋組立体55を外蓋カバー35の下面に取付けると、シャフトバネ203によって上方に押し上げられた開閉弁シャフト201の上端面は、シール部材217の操作部222に当接する。このとき、開閉用ソレノイド172は非通電状態にあり、操作部材212の孔213には操作部材可動部188の中央部188Aが位置しているので、弾性部材215が撓んで操作部材212の第1開閉シャフト212Aが上方に押し上げられる。よって、シャフトパッキン204は連通孔181から離れて、当該連通孔181は開放された状態を保持する。つまり図11に示すように、通常時における開閉用ソレノイド172の非通電状態では、操作部材可動部188の中央部188Aに操作部材212が当接し、操作部材212の第1開閉シャフト212Aや開閉弁62の開閉弁シャフト201が上方に位置するので、内蓋56に形成した連通孔181は開放されたままの状態となる。
【0045】
逆に図12に示すように、炊飯の所定の行程が開始して、開閉用ソレノイド172が通電状態になると、開閉フレーム175が動作して、操作部材212の孔213内で操作部材可動部188が後退して貫通移動し、操作部材212は操作部材可動部188の先端部188Bに当接して保持される。前述のように、操作部材可動部188の中央部188Aと先端部188Bでは高低差を有しており、且つ先端部188Bは中央部188Aよりも操作部材212が当接するカム面188Cが下方に位置している。そのため、溝241と爪242との嵌合により操作部材212が一定範囲での全長を保ちながら、操作部材212およびシール部材217の操作部222は下方に移動し、内蓋組立体55に設けた開閉弁シャフト201が、シール部材217の操作部222によって下方に押し込まれることで、この開閉弁シャフト201の先端に取付けたシャフトパッキン204が連通孔181を閉止する。このとき、シャフトパッキン204が連通孔181を確実に閉塞するために、シール部材217の操作部222が開閉弁シャフト201を下方に押し込む力は、シャフトバネ203が開閉弁シャフト201を上方に付勢する力よりも大きくなるようにする。また本実施例では、開閉フレーム175の操作部材可動部188が開閉弁シャフト201を押す際のストローク(移動距離)が、溝241と爪242との嵌合により一定の範囲に規定されるため、シャフトパッキン204が連通孔181を安定して閉塞することができる。
【0046】
先に説明したように、調圧用ソレノイド78の周辺において、調圧フレーム152の後方には、調圧弁65を動かすための調圧操作部161が設けられる一方で、調圧フレーム152の前方には、突出したクランプ動作規制部163が設けられる。これと同様に、開閉用ソレノイド172の周辺において、開閉フレーム175の後方には、カム面188Cを有する操作部材可動部188が設けられ、開閉フレーム175の前方には、突出したクランプ動作規制部189が設けられる。そして、炊飯を開始し、加圧する所定の行程に移行するなどして、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が第2のフレーム位置である後退位置に移動すると、クランプ44がクランプ受け50から係合解除する方向に動くのを規制するために、クランプ動作規制部163がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置されると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が同様に第2のフレーム位置である後退位置に移動すると、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。このとき、蓋開ボタン46によりクランプ44を押し込もうとしても、クランプ44はその動きを規制されて、クランプ受け50との係合を解除できない。
【0047】
逆に、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が、第1のフレーム位置である進出位置にあるときには、クランプ動作規制部163がクランプ44の基端部44Aから離れると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が、同様に第1のフレーム位置である進出位置にあるときにも、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aから離れる。つまり、クランプ44の基端部44Aの下方に、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方またはどちらか一方が位置するときには、クランプ44の動作が規制され、クランプ44がクランプ受け50から係合解除できなくなるが、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れると、クランプ44の動作は規制されなくなり、蓋開ボタン46を押動操作すると、クランプ44がクランプ受け50から離脱して、蓋体31が開くようになっている。なお、クランプ動作規制部163,189は、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込まなくても、クランプ44の動作を規制する位置や形状を有していれば、どのようなものでも構わない。
【0048】
また別な例として、上記開閉弁62や開閉用ソレノイド172を含む開閉弁操作手段211などを配置せず、代わりに外蓋カバー35内における調圧フレーム152の可動部下方に、図示しない圧力検出手段を配置し、弾性部材である例えばバネによって、圧力検出手段の圧力検出部が連通孔181を塞ぐ方向へ付勢するように構成してもよい。この場合、圧力検出手段の上部がクランプ動作規制部163を押し上げるように構成する。また、圧力検出弁とクランプ動作規制部163との間には、鍋11内部の圧力状態に応じた圧力検出弁の上下動に合わせて、クランプ動作規制部163を上下動させるパッキンを設ける。圧力検出弁は例えばカバーとホルダーで保持されるようにし、圧力検出弁の下方とカバーとの間に備えた前記ばねにより、当該圧力検出弁が連通孔181に向けて常時下方に付勢される。また、これらの圧力検出手段と内蓋56との間をシールするパッキンを設けるのが好ましい。
【0049】
そしてこの例では、鍋11の内圧が所定値に到達すると、圧力検出弁は上方すなわち連通孔181を開放する方向に移動する。これは圧力検出弁の下方で鍋11からの圧力を直接受ける面積と内圧力の割合が、ばねの付勢力よりも高くなったときに生じる。ばねの付勢力に抗して圧力検出弁が上部に移動すると、クランプ動作規制部163も上方へ移動する。上方へ移動突出したクランプ動作規制部163は、調圧フレーム152の動作を妨げる位置、すなわち前記第2のフレーム位置から第1のフレーム位置への復帰を防止する第3のフレーム位置となる。この時、調圧弁58は調圧孔70を開放したまま、調圧フレーム152がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。
【0050】
81は、蓋体31を本体1に閉じた状態で、鍋11内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段81は、減圧駆動源としての減圧ポンプ82と、この減圧ポンプ82から本体1および蓋体31を経て、内蓋56に設けた孔83に至る管状の経路84とにより構成される。また、蓋体31の内部には、経路84の基端部を開閉する開閉体としての電磁弁87と、この電磁弁87を収容する弁収容体88が設けられる。弁収容体88には、前記内蓋56の孔83の周囲に向けて放熱板34から下方に突出した筒状の減圧パッキン89が接続される。ここでの内蓋56の孔83は、真空引き用の真空連通孔として設けられており、電磁弁87は孔83と減圧ポンプ82との間に設けられる。また経路84は、例えばゴムチューブなどの管で形成され、減圧ポンプ82と電磁弁87との間を連結する。なお、図1では減圧ポンプ82が本体1の後部に設けられているが、これは図7に示すように、蓋体31の後部に設けてもよい。
【0051】
そして、内蓋56を含む内蓋組立体55を蓋体31の下面に装着すると、減圧パッキン89が弾性変形しながら内蓋56の上面に密閉当接し、これにより孔83と減圧ポンプ82とを連通する経路84が形成される。また、内蓋組立体55を装着した状態で蓋体31を閉じると、蓋パッキン57が鍋11に密着して、連通孔77,181が閉塞状態にあれば、密閉した鍋11と電磁ポンプ82との間が経路84により連通する。この状態から減圧ポンプ82を起動させると、電磁弁87ひいては経路84が開放して、鍋11内の空気が経路84および減圧ポンプ82を通って本体1の外部に排出され、密閉した鍋11内の圧力が低下する。また、鍋11内の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合に、電磁弁87ひいては経路84を閉塞して、鍋11内を減圧状態に保っている。さらに、スローリークにより鍋11内の圧力が上昇した場合にも、電磁弁87ひいては経路84を開放し、減圧ポンプ82を起動させて、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持している。
【0052】
この様な鍋11内が大気圧よりも低い減圧状態では、弁支持体73を構成する脚部79の内側の空気が鍋11内に吸引され、それに伴い調圧弁65や、この調圧弁65を載置支持する弁支持体73が、調圧バネ74の付勢に抗して下降する。しかし、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも低い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの弁支持体73に代わって第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保され、減圧を継続して行なえる(図5参照)。
【0053】
逆に炊飯時などにおいて、鍋11内を大気圧以上に加圧する時には、弁支持体脚79の内側が鍋11内から直接圧力を受けるため、調圧弁65の自重に抗して弁支持体73が上昇する。ここで、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも高い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの第1調圧パッキン71に代わって弁支持体73に載置され、調圧孔70を塞ぐと共に、弁支持体73に載置している調圧弁65も、弁支持体73と同様に上昇する。そして、弁支持体73は上昇後、第1調圧パッキン71に当接し、それにより第1調圧パッキン71の孔71Aを通過しようとする蒸気などを遮断して、鍋11内の密閉を保持できる(図4参照)。
【0054】
再度図1に戻り、前記本体1の前部には操作パネル101が設けられている。この操作パネル101の内側には、時間や選択したメニューを表示するLCD102や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させたりする操作スイッチ103(図5参照)の他に、鍋11内の減圧状態を選択する減圧選択スイッチなどを配置した基板が配設される。操作パネル101にはボタン名などが表示され、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル101を蓋体31の正面側に設けてもよい。
【0055】
111は、本体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段111は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器112に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン113から発する風を放熱器112に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
【0056】
冷却ファン113は、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112の下方、若しくは側部に配置されている。また、本体1の底部若しくは側部には、冷却ファン113から発し、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112から熱を奪って温かくなった風を、本体1の外部へ排出するための孔(図示せず)が複数設けられている。加熱制御手段111は製品内部すなわち本体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、本体1の底部若しくは側部に設けた孔も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段111や冷却ファン113と、温かな風を排出する孔114は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。
【0057】
また図2において、141は、蓋開ボタン46の裏(内)側部に取付けられた基板である。この基板141には、前記減圧手段81が動作すると点灯作動する警報手段としてのLED142と、磁気検知素子としてのホール素子143がそれぞれ実装される。LED142は、別な図3に示すように、蓋開ボタン46の上面に対向して設けられており、またホール素子143は、蓋開ボタン46が押されていない状態では、外蓋32に設けた磁性体としてのマグネット144に対向して配設される。ホール素子143は、前記クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときに、マグネット144から離れることにより、その動作を検知して後述する加熱制御手段111に検知信号を出力する検知手段として設けられる。なお、別なセンサにより同等の機能を有する検知手段を構成してもよい。
【0058】
LED142は、炊飯初期のひたしや保温の工程で減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときにのみ連続点灯すると共に、保温工程中に鍋11内が大気圧以下のときに、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとすると、ホール素子143からの検知出力を受けて所定時間点滅し、その後消灯する表示手段として設けられる。LED142に代わり、例えばLCDなどの他の表示手段を用いてもよいし、ブザーなどの報知手段を設けてもよい。この場合、報知手段も同様に工程や連動する構成としてよい。その他、前記蓋体31は、前述した外蓋32,放熱板34,外蓋カバー35,および内蓋組立体55の他に、蓋体31としての外観品位を向上させるために、外蓋32の上面部を覆う三次元形状の金属蓋33を備えてもよい。
【0059】
次に制御系統について、図14を参照しながら説明する。同図において、111は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ17および蓋温度センサ61からの各温度情報や、操作スイッチ103からの操作信号の他に、前記蓋開ボタン46に設けたホール素子143や、蓋体31の開閉を検知する別なホール素子191からの検知信号を受け付けて、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ18と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ36とを各々制御すると共に、前述した減圧ポンプ82や、電磁弁87や、蓋体31の内部に設けたソレノイド78,172や、LED142を含む表示手段128を各々制御するものである。特に本実施例の加熱制御手段111は、鍋温度センサ17の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ26が制御されて放熱板34ひいては内蓋56を温度管理するようになっている。加熱制御手段111は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋11内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段118と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段119とをそれぞれ備えている。
【0060】
ここで、蓋開閉検知手段であるホール素子191について説明すると、このホール素子191は例えば蓋体31の後方に設けられた磁性体であるマグネット(図示せず)に対向して、本体1の内部に取付けられる。なお、同様の機能を発揮できれば、ホール素子191に代わり他のセンサを用いてもよい。
【0061】
ここでの保温制御手段119はタイマー手段120を備えており、保温動作が開始するとタイマー手段120を起動させて保温経過時間を計時し、この保温経過時間が予め設定した時間(例えば1時間)に達したら、鍋11内の圧力が加圧状態からほぼ大気圧に戻り、且つ鍋11内の温度が保温温度にまで低下した、いわゆる保温が安定する状態と判断するようになっている。また、加熱制御手段11はその他に、操作スイッチ103からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段121を備えている。なお、前記所定時間は、操作スイッチ103の例えば時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
【0062】
122は、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段111の出力側には、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、放熱板34や内蓋56を加熱するように蓋ヒータ36を駆動させる蓋ヒータ駆動手段123と、コードヒータ18をオンにするコードヒータ駆動手段124と、ソレノイド78,172をオンまたはオフにするソレノイド駆動手段125と、減圧ポンプ82を駆動させるポンプ駆動手段126と、電磁弁87をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段127と、表示手段128を駆動させる表示駆動手段129が各々設けられる。前記炊飯制御手段118による炊飯時、および保温制御手段119による保温時には、鍋温度センサ17と蓋温度センサ61からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ18による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ36による蓋体31への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段118による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段119による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ17の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ18による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0063】
特に前記コードヒータ18による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ18を発熱させて、蓋体31と本体1との隙間の空間に金属板20から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ18により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
【0064】
さらに、本実施例における加熱制御手段111は、予約炊飯制御手段121による予約炊飯の待機時の炊飯が開始するまでの期間や、炊飯制御手段118が実質的な炊飯を開始するまでのひたし行程の期間や、保温制御手段119により前述した保温が安定する状態と判断した後で、鍋11内が大気圧より低くなるように、減圧ポンプ82や減圧状態保持用の電磁弁87を動作させる減圧制御手段130としての機能をも備えている。
【0065】
次に、上記構成について、その作用を図15のタイミングチャートに基づき説明する。この図15において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における温度および圧力の各推移を示し、以下、調圧弁65(調圧用ソレノイド78)の動作タイミングと、開閉弁182(開閉用ソレノイド172)の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
【0066】
炊飯や保温が行なわれていない切状態において、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は共に非通電(オフ)状態にある。このとき、調圧用ソレノイド78のプランジャー151は進出位置にあって、調圧孔70が開放するように調圧弁65が移動すると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173も進出位置にあって、内蓋56の連通孔181が開放するように、開閉弁シャフト201が上方に移動する。したがって、鍋11内は調圧孔70および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。また、クランプ動作規制部163,189が、共にクランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、クランプ44の動作は規制されず、蓋開ボタン46を押動操作すれば、クランプ44がクランプ受け50から離脱する。すなわち切状態では、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0067】
その後、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段118による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段118は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ17による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ18で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。このひたし中は、減圧手段81の減圧ポンプ82と電磁弁87が作動すると共に、鍋11内が大気圧以下のときには、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が共に通電(オン)状態になって、調圧用ソレノイド78のプランジャー151と開閉用ソレノイド172のプランジャー173が各々後退位置に移動する。これにより、調圧操作部161が調圧弁65から離れて、調圧弁65が第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぎ、また操作部材可動部188の先端部188Bに操作部材212が当接して、開閉弁シャフト201が下方に押し込まれ、シャフトパッキン204が内蓋56の連通孔181を塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。また、クランプ動作規制部163,189が、何れもクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44の回動が規制され、蓋開ボタン46を押動操作しようとしても、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31が開かないようになる。
【0068】
また、ひたし行程が開始すると、減圧制御手段130は実質的な炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。このような動作を繰り返すことで、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0069】
こうして、ひたし時には鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0070】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段118は実質的な炊飯動作を開始すると共に、減圧制御手段130による鍋11への減圧制御は中断し、減圧選択スイッチはオフになると共に、LCDによる減圧状態である旨の表示も停止する。併せて、減圧ポンプ82および電磁弁87は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。
【0071】
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段118は加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段118はソレノイド78をオフ状態にして、調圧弁65を調圧孔70から退避させる。これにより鍋11はほぼ大気圧に維持されるが、開閉用ソレノイド172は引き続きオン状態にあり、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aの下方に位置して、蓋体31を開けることができないようになっている。
【0072】
なお、上述の蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ61からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ17と蓋温度センサ61とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0073】
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段111は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ17または蓋温度センサ61が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
【0074】
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段118は蓋ヒータ36による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋56の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ61の検知温度により管理される。そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋11内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段118による炊飯行程を終了し、保温制御手段119により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ61の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ36を通断電し、内蓋56への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段119による保温に移行する。
【0075】
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ36により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ18でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ17や蓋温度センサ61が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
【0076】
前述したように、鍋11内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋11内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段118は減圧手段81の作動を停止させつつ、調圧用ソレノイド78および開閉用ソレノイド172を何れもオン状態にし、連通孔77を調圧部58で閉止すると共に、別な連通孔181を開閉弁62で閉止する。これにより、炊飯加熱の継続中は、鍋11内と外部との連通が遮断され、鍋11内の圧力が上昇する。このとき、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31を開けることはできない。
【0077】
その後、鍋11内が所定の圧力に到達したことを検知すると、調圧用ソレノイド78がオン状態からオフ状態に切り換わるため、調圧操作部161が調圧弁65を押す方向に調圧フレーム152が移動し、調圧孔70が開放して鍋11内の圧力が大気圧に近づく。この状態では、調圧フレーム152のクランプ動作規制部163が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置に移動するものの、別な開閉フレーム175のクランプ動作規制部189が、引き続きクランプ44の基端部44Aの下方に位置しているため、蓋開ボタン46によりクランプ44を押し込もうとしても、クランプ44はその動きを規制されて、蓋体31を開けることはできない。
【0078】
むらしに移行すると、その後の保温開始直後に蓋体31が開けられることを考慮して、鍋11内を徐々に大気圧に戻す動作が行なわれる。そして炊飯制御手段118は、むらしの途中で調圧用ソレノイド78を先にオン状態からオフ状態に切り換えて、調圧弁65を調圧孔70から退避させ、連通孔77を開放して鍋11内を大気圧に戻す。その後で、開閉用ソレノイド172をオン状態からオフ状態に切り換え、別な連通孔181を開放する。こうすれば、少なくとも調圧孔70を開放した後も、開閉用ソレノイド172がオフ状態になるまでは、蓋体31を開けることができなくなり、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体31が開くのを防止できる。
【0079】
実質的な炊飯であるむらしが終了して保温工程に移行した直後は、鍋11内が調圧孔70および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。それと共に、クランプ動作規制部163,189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0080】
保温制御手段119は、炊飯行程が終了するとタイマー手段120による保温経過時間の計時を開始する。このとき減圧制御手段130は、当該保温経過時間が予め設定した時間になるまで、すなわち保温が安定する状態と判断されるまで、表示手段128のLCDを利用して、減圧表示を短時間繰り返し行なわせる。これにより利用者は、炊き上げ後、鍋11内が未だ減圧状態に移行していないことを理解できる。保温制御手段119は、保温経過時間が予め設定した時間に達すると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が再び作動制御する。それと共に、鍋11内を密閉状態にするために、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。これにより、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込んで、クランプ44の回動が規制される。なお、こうした動作は、保温工程の所定時間後ではなく、保温工程で鍋11内が所定温度に到達したのを鍋温度センサ17が検出したときに、行なわれるようにしてもよい。
【0081】
その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0082】
保温工程に移行すると、保温制御手段119は前記ホール素子143,191からの検知信号を受け付ける。すなわち、鍋11内を減圧状態にする減圧手段81の作動制御中であって、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が同時にオンしている状態で、使用者が蓋体31を開けようと意図して蓋開ボタン46を押動操作しようとすると、クランプ44はその回動を規制されてはいるものの、蓋開ボタン46がクランプ44の弾性などにより若干下方に押し込まれ、ホール素子143がマグネット144から離れた位置に移動する。このときのホール素子143からの検知信号を保温制御手段119が受けると、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は連動してオフ状態になり、双方のプランジャー151,173が進出して、調圧孔70および連通孔181を開放すると共に、クランプ44に対する回動規制も解除され、蓋開ボタン46を押し続けることで、蓋体31を開けることができるようになる。
【0083】
その後、鍋11内から炊き上がったご飯を取り出すなどして、蓋体31を再度閉じると、今度は別なホール素子191が蓋体31の閉状態を検知し、その信号を保温制御手段119に送出する。これを受けて保温制御手段119は、所定時間後に再び減圧手段81を作動させ、且つ不用意に蓋体31が開かないように、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。
【0084】
このように、内蓋56に設けた2つの連通孔77,181をそれぞれ開閉する動作を繰り返すことで、鍋11内の圧力を自在に変化させることができる。そして、炊飯コースや炊飯量に応じて加圧時の圧力を変えることで、炊き上がりを可変することができるようになる。
【0085】
また、前記むらしや保温工程中において、減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときには、LED142を連続点灯させる制御信号を、加熱制御手段111が表示駆動手段129に送出する。これにより使用者は、鍋11内が減圧中であることにより、蓋体31と本体1が係合ロックされていることを直ぐに認識できる。また、蓋開ボタン46を押動操作しようと意図してから、実際に蓋体31を開放できるまでには、若干のタイムラグがあるので、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合を解除しようと意図したときの検知信号をホール素子143が出力すると、LED142が点滅動作に切り替わり、その後所定時間が経過したら、LED142を自動的に消灯させるようにすれば、何故直ぐに蓋体31が開かないのかを使用者に理解させることができる。
【0086】
ここで、図16及び図17に示すように前述した安全弁251は、回転嵌合手段270を介して回転嵌合される安全弁カバー254とベース部材253とにより内蓋56を挟持する構成となっている。
【0087】
そして、この回転嵌合手段270は、安全弁カバー254の内周面に凸設された嵌合凸部271と、ベース部材253の外周面に凹設された嵌合凹部272を有して構成されている。
【0088】
嵌合凹部272は、ベース部材253上部の外周面をベース部材253の上端から垂直下向きに切欠いて形成された縦溝部273と、縦溝部273の下部に連通して形成され、略1/4周ほどベース部材253の周方向に沿って、ベース部材253上部の外周面を切欠いて形成された周溝部274とからなる側面視略L型の凹溝形状を有して構成されたものである。
【0089】
また図17及び図18に示すようにベース部材253には、ベース部材253下部の周縁よりベース部材253の径方向外向きに互いに所定間隔を有して凸設された一対の安全弁側回転規制用凸部275,275を備えており、この安全弁側回転規制用凸部275,275に対応する調圧弁側回転規制用凸部276がフランジ部69の周縁よりフランジ部69の径方向外向きに凸設されている。
【0090】
これら安全弁側回転規制用凸部275,275と調圧弁側回転規制用凸部276からなる本実施例の第1の回転規制手段277においては、安全弁側回転規制用凸部275,275の間に調圧弁側回転規制用凸部276を配置させることにより、ベース部材253とフランジ部69を備えた第2ホルダー66の互いの回転を規制するように構成されている。
【0091】
また、調圧弁65は、通常炊飯時の鍋の圧力変化で開閉するものであり、安全弁は、通常炊飯圧力、即ち、調圧弁の作動圧力より高い圧力時に作動するように設定されている。
【0092】
このように本実施例では、有底筒状の容器である鍋11や、商用電力を供給する電力供給手段としてのコードリール116や、鍋11および鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル16を備えた炊飯器の本体1と、本体1に対し開閉自在に設けられる蓋体31とから構成し、鍋11の開口部を覆う内蓋56を蓋体31に着脱自在に備え、本体1と蓋体31はヒンジ軸であるヒンジシャフト41で軸支され、このヒンジシャフト41の略反対側に本体1と蓋体31との閉状態を保持する保持部としてのクランプ44を設け、蓋体31の内蓋56は、鍋11の内を連通する孔としての連通孔77,181と、これらの連通孔77,181を開閉する開閉手段として、連通孔181を開閉自在とする開閉装置たる開閉弁62と、連通孔77の開度ひいては鍋11内の圧力を調整する調圧装置たる調圧部58とを備えており、開閉弁62は、開閉弁としての開閉弁シャフト201と、この開閉弁シャフト201による連通孔181の開閉を自在に操作する開閉操作手段たる開閉弁操作手段211を備えた開閉フレーム175で構成される一方で、調圧部58は、調圧弁65と、この調圧弁65による連通77の開閉を自在に操作する調圧操作手段としての調圧操作部161を備えた調圧フレーム152で構成されるものにおいて、コードリール116からの電力供給が遮断されたのを検知すると、開閉弁操作手段211の駆動源であるソレノイド172または調圧操作部161の駆動源であるソレノイド78の何れか一方に、所定時間動作を継続させるための電力を供給し、それにより開閉フレーム175または調圧フレーム152を、クランプ部44の動きを規制する位置に所定時間留まらせる駆動手段341を、コードリール116とは別に設けている。
【0093】
このようにすると、開閉弁シャフト201や調圧弁65が内蓋56の連通孔77,181を塞いでいる状態で、例えば停電などによりコードリール116からの電力供給が途絶えると、コードリール116に代わる駆動手段341が、開閉弁操作手段211の駆動源であるソレノイド172または調圧操作部161の駆動源であるソレノイド78の何れか一方に電力を供給し、その何れか一方のソレノイド78,172の動作を所定時間継続させる。こうすることで、開閉弁シャフト201または調圧弁65の何れか一方で内蓋56の連通孔77,181を閉じたまま、クランプ44の動作を所定時間規制するように、開閉弁操作手段211または調圧操作部161の何れか一方が作用する。そのため、炊飯中の停電発生時などにおいても、クランプ44が動いて蓋体31が不意に開くことはなく、それに伴う米の生煮えを防止できると共に、炊飯器の周辺を汚すといった不具合も回避できる。
【0094】
続いて、回転嵌合手段270を介して安全弁カバー254とベース部材253を回転嵌合させる方法について説明する。最初に、安全弁カバー254の中心軸Xとベース部材253の中心軸Yを略同軸上に配置した状態から、安全弁カバー254下部とベース部材253上部とを近接させていき、嵌合凸部271を嵌合凹部272の縦溝部273に対して相対的に上から下へと通過させて、縦溝部273の下壁273Aに当接させる。その後、ベース部材253を、安全弁カバー254に対して相対的にその中心軸Xを回転軸とした回転をさせて、嵌合凸部271を嵌合凹部272の周溝部274内部へと通過させる。その後、嵌合凸部271が周溝部274の側壁274Aに当接するまで回転させることで、回転嵌合手段270による安全弁カバー254とベース部材253の回転嵌合は完了する。このように、嵌合凸部271を、中心軸X方向に移動させて縦溝部273を通過させて、さらに中心軸Xを回転軸とした回転により周溝部274を通過させて回転嵌合させることにより、嵌合凹部272に対する嵌合凸部271の移動距離を増大させて、つまり、嵌合凸部271と嵌合凹部272の係合量を増大させることにより、容易な組立方式で十分な嵌合強度を有することが可能となり、安全弁カバー254とベース部材253の嵌合が容易に解除されることのない組立性に優れた内蓋56とすることができる。
【0095】
次に、回転嵌合手段270を介して回転嵌合方式により組み立てられた安全弁251に対して、調圧弁65を組み立てる際に、ベース部材253の安全弁側回転規制用凸部275,275の間に、調圧弁ホルダー組立体66に設けられたカバー側回転規制用凸部276が配置されるように調圧弁カバー67と調圧弁ホルダー組立体66を嵌合することにより、ベース部材253の中心軸Y方向への回転が規制される。このように、ベース部材253に備えた安全弁側回転規制部275,275と、調圧弁ホルダー組立体66に備えた調圧弁側回転規制部276からなる第1の回転規制手段277を介して、ベース部材253の中心軸Y方向への回転を規制したことにより、ベース部材253に力が働くことによる不慮の回転を防止して、安全弁カバー254とベース部材253の嵌合が不用意に解除されることを防止することができる。
【0096】
本実施例は、有底筒状の容器としての鍋11と、鍋11を覆う蓋体としての内蓋56と、内蓋56に設けた調圧手段としての安全弁251とを備えた調理器において、前記安全弁251は、前記内蓋56上方から調圧用弁体としての開閉手段257を覆う調圧弁体カバーとしての安全弁カバー254と、前記内蓋56下方より開閉手段257を保持する調圧弁体ホルダーとしてのベース部材253で形成され、回転嵌合手段270を介してベース部材253と安全弁カバー254とを回転嵌合させ、内蓋56を挟持するものである。
【0097】
この場合、回転嵌合手段270を介して、安全弁カバー254とベース部材253を回転嵌合させることにより、安全弁カバー254とベース部材253とを嵌合させる際の係合量を増大させることにより、容易な組立方式で十分な嵌合強度を有することが可能となり、安全弁カバー254とベース部材253の嵌合が容易に解除されることのない組立性に優れた内蓋56とすることができる。
【0098】
また、前記蓋体としての内蓋56には、前記調圧手段である安全弁251とは別の第1の調圧手段としての調圧部58と、前記調圧手段としての第2の調圧手段としての安全弁251を有し、安全弁251は、前記調圧弁体ホルダーとしての第2の調圧弁体ホルダーであるベース部材253と前記調圧弁体カバーとしての第2の調圧弁体カバーである安全弁カバー254の回転嵌合手段270を介しての回転嵌合後、調圧部58に備えた第1の調圧弁体ホルダーであるホルダー組立体66と第1の調圧弁体カバーである調圧弁カバー67を嵌合させ、ホルダー組立体66とベース部材253を、ホルダー側回転規制手段である第1の回転規制手段277を介して互いの回転を規制するものである。
【0099】
この場合、ホルダー組立体66とベース部材253の互いの回転を規制することにより、回転嵌合手段270によって安全弁カバー254と回転嵌合しているベース部材253の回転を防止し、安全弁カバー254からベース部材253が脱落することを防ぐことができる。
【0100】
さらに、前記第1の調圧手段としての調圧部58は、調圧部58に備えた第1の調圧弁体である調圧弁65の自重で調圧する構成とし、前記第2の調圧手段である安全弁251に備えた前記請求項1記載の調圧用弁体である第2の調圧弁体としての開閉手段257は、弾性部材であるコイルスプリング258によって調圧する構成としている。
【0101】
この場合、調圧部58と安全弁251にそれぞれ異なる調圧方式を採用としたことにより、鍋11内の様々な圧力値に対して調圧を行うことが可能となるので、鍋11内の圧力を適切な状態に保持することができる。
【0102】
また、前記容器である鍋11内の圧力に応じて前記第1の調圧手段である調圧部58及び前記第2の調圧手段である安全弁251を作動させる調圧値を、調圧部58に対し、安全弁251を高く設定している。
【0103】
この場合、安全弁251のコイルスプリング258のバネ荷重は、調圧部58が動作する動作圧力値よりも高く設定されたことにより、鍋11内の圧力が何らかの要因で調圧部58の調圧値(前記動作圧力値)である設定値以上の圧力に昇圧すると安全弁251を開弁させて、鍋11の内圧を下げるものであるので、調理器の安全性を向上させることができる。
【実施例2】
【0104】
図19乃至図23は、本発明の第2実施例を示すもので、前記第1実施例の第1の回転規制手段277に替わり、ベース部材253の回転動作を規制して、さらにベース部材253の内蓋56への取付位置を規制する手段として、図23乃至図26に示すようにベース部材253の下部を円盤状に設けられたフランジ部281の上方を縮径して形成された凸型の段差の一部を切欠いて形成された平面視略D型状の安全弁側位置規制部282と、内蓋56の孔252の周囲を平面視略D型形状に拡径して凹型の段差として形成された、安全弁側回転規制部282を嵌合可能とする内蓋側位置規制部283とか構成される第1の位置規制手段280を備えている。
【0105】
さらに、図22及び図23に示すように、それぞれ別体に設けられた調圧弁カバー67と安全弁カバー245において、安全弁カバー245の外周面に安全弁カバー245の径方向外向きに互いに所定間隔を有して凸設された一対の安全弁側回転規制用凸部290,290を備えており、この安全弁側回転規制用凸部290,290に対応する第2の調圧弁側回転規制用凸部291が調圧弁カバー67の外周面より調圧弁カバー67の径方向外向きに凸設されている(図23参照)。
【0106】
これら第2の安全弁側回転規制用凸部290,290と第2の調圧弁側回転規制用凸部291からなる本実施例の第2の回転規制手段292においては、安全弁側回転規制用凸部290,290の間に第2の調圧弁側回転規制用凸部291が入り込むように配置させることにより、安全弁カバー245と調圧弁カバー67の互いの回転を規制するように構成されている。尚、それ以外の構成は、第1実施例のものと共通している。
【0107】
そして、本実施例では、内蓋56に設けた内蓋側位置規制部283にベース部材253の安全弁側位置規制部282を嵌合させた状態で、回転嵌合手段270を介して安全弁カバー245とベース部材253を回転嵌合させることにより、ベース部材253を内蓋56に回転を規制された状態で保持して、第2の回転規制手段292を介して、安全弁カバー245の中心軸X方向への回転を規制したことにより、安全弁カバー245に力が働くことによる不慮の回転を防止して、安全弁カバー254とベース部材253の回転嵌合が解除されることを防止することができる。
【0108】
本実施例は、前記蓋体である内蓋56と前記調圧弁体ホルダーであるベース部材253には、互いの位置を規制する位置規制手段として第1の位置規制手段280を設けたことにより、ベース部材253を内蓋56に対して回転不能に取り付けて、ベース部材253の安全弁カバー245に対する回転も規制して、ベース部材253が安全弁カバー245から離脱することを防ぐことができる。
【0109】
また、前記蓋体としての内蓋56には、前記調圧手段である安全弁251とは別の第1の調圧手段としての調圧部58と、前記調圧手段としての第2の調圧手段としての安全弁251を有し、安全弁251は、前記調圧弁体ホルダーとしての第2の調圧弁体ホルダーであるベース部材253と前記調圧弁体カバーとしての第2の調圧弁体カバーである安全弁カバー254の回転嵌合手段270を介しての回転嵌合後、調圧部58に備えた第1の調圧弁体ホルダーであるホルダー組立体66と第1の調圧弁体カバーである調圧弁カバー67を嵌合させ、調圧弁カバー67と安全弁カバー254は、互いの回転を規制する構成として第2の回転規制手段292を備えている。
【0110】
この場合、第2の回転規制手段292を介して、安全弁カバー245の中心軸X方向への回転を規制したことにより、安全弁カバー245に力が働くことによる不慮の回転を防止して、安全弁カバー254とベース部材253の回転嵌合が解除されることを防止することができる。
【実施例3】
【0111】
図24は、本発明の第3実施例を示すもので、前記第2実施例の第1の位置規制手段280に替わるベース部材253の内蓋56への取付位置を規制する手段として、ベース部材253のフランジ部281の平面に凸設された第2の安全弁側位置規制部300と、内蓋56の孔252の周囲を平面視略円形状の段差として形成された、フランジ部282を嵌合可能とする安全弁設置部301の平面に前記第2の位置規制部300が嵌合可能に凹設された第2の内蓋側位置規制部302とか構成される第2の位置規制手段303を有するものである。尚、それ以外の構成は、第2実施例のものと共通している。
【0112】
そして、本実施例では、内蓋56に設けた第2の内蓋側回転規制部302にベース部材253の第2の安全弁側回転規制部300を嵌合させることにより、ベース部材253を内蓋56に回転を規制された状態で保持することができる。
【0113】
本実施例は、前記蓋体である内蓋56と前記調圧弁体ホルダーであるベース部材253には、互いの位置を規制する位置規制手段として第2の位置規制手段303を設けたことにより、ベース部材253を内蓋56に対して回転不能に取り付けて、ベース部材253の安全弁カバー245に対する回転も規制して、ベース部材253が安全弁カバー245から離脱することを防ぐことができる。
【実施例4】
【0114】
図25乃至図29は、本発明の第4実施例を示すもので、前記第2実施例ではそれぞれ別体に設けられた調圧弁カバー67と安全弁カバー245を第2の回転規制手段292を介して互いの回転を規制する構成としていたが、本実施例では、調圧弁カバー67と安全弁カバー254を一体形成することで互いの回転を規制する構成を採用している。図25および図26に示すように、調圧部58の調圧弁カバー67を内蓋56に係合させるための嵌合部材261が付加される。嵌合部材261は弾性を有し、線状体からなり、調圧弁カバー67の側部に形成した環状溝部67Aに嵌合する強度と耐食性を有する、例えばオーステナイト系のステンレス等の金属製のリング状の固定部262から構成される。また図27及び図29に示すように、嵌合部材261の固定部262の一部に嵌合部材261自体の径方向への弾性変形を可能とする切欠部262Aを有している。さらに調圧弁カバー67には、嵌合部材261を装着したときに容易に弾性変形して、第1ホルダー68に係合し易いように、切れ目部となるスリット67Cが形成される。スリット67Cの形状などは特に限定されるものではなく、調圧弁カバー67自体が比較的弾性に富む材料ならば、スリット67Cを設けなくてもよい。さらに、265はフィルター押えである。尚、それ以外の構成は、第2実施例及び第3実施例のものと共通している。
【0115】
ここでは、予め内蓋56に装着された調圧弁ホルダー組立体66上に調圧弁65を保持した状態(図28参照)で、上方から調圧弁カバー67を被せた後に、嵌合部材261を調圧弁カバー67に取付ける(図26、図27、図29参照)。嵌合部材261の固定部262を調圧弁カバー67の環状溝部67Aに嵌合させると、嵌合部材261の弾性力が作用して、調圧弁カバー67が調圧弁ホルダー組立体66を締め付ける方向に弾性変形し、調圧弁カバー67を調圧弁ホルダー組立体66、ひいては内蓋56に係合させることができる。また、内蓋組立体61の細部を清掃する場合には、嵌合部材261を調圧弁カバー67から取外すだけで、調圧弁カバー67に対する弾性力が作用しなくなって、調圧弁カバー67を調圧弁ホルダー組立体66から簡単に外すことが可能になる。したがって、この場合は調圧弁カバー67や、調圧弁65や、調圧弁ホルダー組立体66などを、個々に清掃することができる。さらに、嵌合部材261の固定部262の一部に嵌合部材261自体の径方向への弾性変形を可能とする切欠部262Aを有することで、嵌合部材261を環状溝部67Aに嵌め込む際の嵌合部材261の調圧弁カバー67への締付によるダメージを低減させることができる。
【0116】
このように、本実施例では、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体21と、蓋体21に着脱可能な内蓋56と、本体1内の圧力を調整する圧力調整手段たる調圧部58とを備えた炊飯器において、調圧部58を内蓋56に係合させる嵌合部材261を設けると共に、この嵌合部材261は、調圧部58を固定するための固定部262を形成している。この場合、調圧部58とは別の嵌合部材261を利用して、調圧部58を内蓋56に係合させることができるので、調圧部58と内蓋56との係合状態を損ねることなく、安定した状態で調圧部58を内蓋56に組み込むことができるとともに、調圧部58と内蓋56とを簡単に着脱することができ、組立て作業が容易になるだけでなく、ユーザが清掃しやすい炊飯器を提供できる。
【0117】
また、本実施例における嵌合部材261が弾性部材よりなるので、嵌合部材261が持つ弾性力を利用して、調圧部58を内蓋56に係合したままの状態にすることができる。
【0118】
また、ここでの調圧部58は、調圧弁65と、少なくともこの調圧弁65の保持部材である調圧弁ホルダー組立体66またはカバー部材としての調圧弁カバー67とにより構成され、調圧弁カバー67を固定部262で固定する構成となっている。このように、調圧部58の調圧弁カバー67を嵌合部材261の固定部262が固定する構造になっていると、調圧弁カバー67に例えば切れ目部であるスリット67Cを入れて若干の弾性を持たせることにより、従来の圧入による係合をやめて、ダメージを受けることなく調圧部58の調圧弁カバー67と内蓋56とを簡単に着脱することができる。
【0119】
本実施例では、第1の調圧弁体カバーとしての調圧弁カバー67と前記第2の調圧弁体カバーとしての安全弁カバー254が、一体で形成されたことにより、調圧弁カバー67と安全弁カバー254の互いの回転が規制されるとともに、製品全体の部品点数が減少し、製造コストの抑制や組立性が向上を図ることができる。
【0120】
また、前記第1の調圧弁体カバーとしての調圧弁カバー67の外側部に形成された環状溝部67Aには、調圧弁カバー67の外方への変形を防止する変形防止手段としての嵌合部材261を嵌合可能に設けている。
【0121】
この場合、嵌合部材261により調圧弁カバー67の外方への変形を防止することにより、調圧弁カバー67と調圧弁ホルダー組立体66との嵌合が解除されることを防ぐことができる。
【実施例5】
【0122】
図30乃至図32は、本発明の第5実施例を示すもので、図30は、前記上枠2および外枠3を示す外観図である。前記本体1を構成する上枠2の上部には、鍋収容体9の上端より外側水平方向に拡がるようにして、湾曲状のなだらかな傾斜面401が形成される。この傾斜面401は、蓋31を開いたときに本体1の上部に露出するもので、鍋収容体9の上端外周の略全域に渡って、上枠2上部の外方より内方に向けて、次第に水平になるように下がる形状を有している。また本実施例では、上枠2の上面を覆う金属材料402に傾斜面401を形成しているが、上枠2(ここでは鍋収容部6)そのものに傾斜面401を形成してもよい。つまり、傾斜面401を形成する金属材料402は、上枠2とは異なる部材で形成される。また同図に示すように、本体1の前側にあって上枠2の上部にはクランプ受け50が設けられ、その反対側の本体1の前側には、同じく上枠2の上部にヒンジ部38が設けられる。
【0123】
一方、図30は傾斜面401周辺の構造を示しており、上枠2の上面から外枠3の外方にかけて、前記傾斜面401を有する金属材料402が配設される。傾斜面401は上枠2上部の外方から内方にかけて傾斜している。
【0124】
次に本実施例における特徴部分を図30乃至図32に基づき説明する。鍋収容部6の上部6Aは、上枠2上面より上方へ凸設して形成され、鍋11のフランジ部14と対向する略環状の凸条として形成されている。
【0125】
鍋収容部6の上部6Aの一部に形成された平坦部310には、この上部6Aと貫通部311が形成されており、この貫通部311の中央部分では断面略凸型の耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる鍋支持手段312が上枠2の上面に載置され、この鍋支持手段312と貫通部311の隙間を埋めるように挿入された略リング状の押さえ部材313を備えており、この押さえ部材313の下部には外側に折り返して形成された係止部314が形成されており、この係止部314を貫通部311周縁を形成している上部6Aに係止させることによって、鍋支持部材312は上部6Aと押さえ部材313との間に挟持される構造としている。また、上枠2の鍋支持部材312の取付部分には、下方に孔を設けない構造が望ましい。これは、本体1への水の浸入を防止するためである。
【0126】
また、鍋11の外面には、高耐食性或いは高熱伝導性に優れたアルマイト層等のコーティングが施されたものとする。尚、それ以外の構成は、第1実施例のものと共通している。
【0127】
本実施例では、鍋収容部6の上部6Aを、略環状の凸条として形成したことにより、この上部6Aの形状を鍋11のフランジ部14の形状に沿ったものとして、さらにこの上部6Aと鍋11のフランジ部14との接触面積を低減させたことにより、鍋収容部6に収容された鍋11のフランジ部14のひっかかりが良くなり、鍋11を取り出す際の使い勝手が良くなる。
【0128】
本実施例では、鍋11を調理器の本体1にセットする際、鍋11を鍋収納部6に落下させたときでも、鍋11の重量分の衝撃から発生する本体1へのダメージは鍋支持手段312で吸収し、本体1へのダメージを低減することができる。
【0129】
加熱手段16のIH加熱(電磁誘導加熱)により鍋11に振動が発生しても、鍋11のフランジ部14に当接された鍋支持手段312で共振を吸収することにより、音の発生を抑制することができる。また、異常加熱時等、鍋11が高温に至る場合でも、耐熱性に優れたゴム部材からなる鍋支持手段312で鍋11を支持している為、製品へのダメージを低減できる。さらに鍋支持手段312を弾性部材とし、上枠2の鍋支持手段312の取付け部分下方に孔2Aがある場合でも、鍋支持手段312と押さえ部材313によって孔2Aをシールすることにより、孔2Aから本体1への水の浸入を防止でき、安価で安全で製品を供給できる。鍋11の外面にコーティングが施されたことにより、鍋11の外面の耐食性を高めたり、鍋11の熱伝導性を高めることができる。
【0130】
本実施例は請求項1に対応しており、内釜としての鍋11と、鍋11を収納する内枠としての鍋収容部6と、鍋11を加熱し鍋収容部6外方に配置された加熱手段16と、鍋収容部6と加熱手段16を収納する外枠3より構成する本体1と、鍋11上方を覆う蓋体としての内蓋56とを備えた調理器において、鍋収容部6上部に設けられた略環状の凸部6Aには、弾性部材から成る内枠支持手段としての鍋支持手段312を設け、鍋11のフランジ部14下面と接触する構造であり、鍋支持手段312は、押さえ部材313と凸部6Aで挟持され、加熱手段16は、誘導加熱方式で加熱するものであり、鍋11外面には、高耐食性或いは高熱伝導性に優れたコーティングを施している。
【0131】
この場合、鍋11を調理器の本体1にセットする際、鍋11を鍋収納部6に落下させたときでも、鍋11の重量分の衝撃から発生する本体1へのダメージは鍋支持手段312で吸収し、本体1へのダメージを低減することができる。また、加熱手段16のIH加熱(電磁誘導加熱)により鍋11に振動が発生しても、鍋11のフランジ部14に当接された鍋支持手段312で共振を吸収することにより、音の発生を抑制することができる。さらに、異常加熱時等、鍋11が高温に至る場合でも、耐熱性に優れたゴム部材からなる鍋支持手段312で鍋11を支持している為、製品へのダメージを低減できる。また、鍋支持手段312を弾性部材とし、上枠2の鍋支持手段312の取付け部分下方に孔2Aがある場合でも、鍋支持手段312と押さえ部材313によって孔2Aをシールすることにより、孔2Aへの水の浸入を防止でき、安価で安全で製品を供給できる。鍋11の外面にコーティングが施されたことにより、鍋11の外面の耐食性を高めたり、鍋11の熱伝導性を高めることができる。
【0132】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、上述した各実施例の特徴をそれぞれ組み合わせた構成であってもよい。さらに開閉弁装置としての開閉弁62や、調圧装置としての調圧部58の各部構成は、実施例中のものに限定されない。また、前記第1実施例の回転規制手段についても、安全弁側回転規制手段と調圧弁側回転規制手段の関係を逆としてもよく、或いは本実施例のように凸部が凸部間に入り込むように収まる構造ではなく、凸部が凹部に入り込むように収まる構造としてもよい。さらに、第1の位置規制手段280における各位置規制部の平面視方向の形状についても、D型に限られるものではなく、矩形、三角形、多角形、十字型等、あるいはこれらを組み合わせた、所謂ひっかかりを有する形状であればよいものとする。
【符号の説明】
【0133】
1 本体
3 外枠
6 鍋収容部(内枠)
6A 凸部
11 鍋(内釜)
14 フランジ部
16 加熱手段
56 内蓋(蓋体)
312 鍋支持手段(内枠支持手段)
313 押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内釜と、前記内釜を収納する内枠と、前記内釜を加熱し前記内枠外方に配置された加熱手段と、前記内枠と前記加熱手段を収納する外枠より構成する本体とを備えた調理器において、前記内枠に弾性部材から成る内枠支持手段を設け、前記内釜フランジ部と接触する構造とし、前記内枠支持手段は、前記内枠上面に設けた略環状の凸部に設けられると共に、押さえ部材と前記凸部で挟持され、前記加熱手段は、誘導加熱方式で加熱するものであり、前記内釜外面には、高耐食性或いは高熱伝導性に優れたコーティングを施したことを特徴とする調理器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192283(P2012−192283A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159870(P2012−159870)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2009−128315(P2009−128315)の分割
【原出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】