調理油劣化防止具および調理方法
【課題】フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、調理油の寿命を増大させ、また、工業的な生産に適し、かつ、調理油の寿命を安価に増大させること。
【解決手段】食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内に、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の表裏面の大半が、調理中の調理油が接触可能になるように前記保護部材の内面とは離間されて配設されている。チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を食用油と接触させつつ高温で調理されることにより、調理油の寿命が増大され、また、調理品の食感が改善される。
【解決手段】食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内に、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の表裏面の大半が、調理中の調理油が接触可能になるように前記保護部材の内面とは離間されて配設されている。チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を食用油と接触させつつ高温で調理されることにより、調理油の寿命が増大され、また、調理品の食感が改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒や光電変換素子等として有用であるチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の調理油劣化防止材への応用とそれを食用油と接触させつつ調理する調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら油、フライ油等の食用油を高温で長時間使用すると食用油は酸化されて劣化する。これにより、食用油は粘度や付着性が増大して加熱調理容器を汚損させたり、また、食用油の着色や発臭を助長する。これにより、調理された揚げ物の品質を低下させたり、揚げ物のサクサク感を減少させる、などの課題がある。
【0003】
この課題を解決するには、濾材などにより劣化した調理油を濾過して再利用することが一般的に行われ、また、専用の食用濾過器も開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、濾材などによる濾過は、食用油の劣化を直接抑制するものでもなく、また、調理器具としての加熱調理容器の内面への劣化物の付着を防止できない。
【0005】
これに対し、特許文献2によれば、フライヤインナーケースの内面に食用油劣化防止用触媒をコーティングする発明が開示されている。このようなインナーケースを用いることにより、食用油劣化触媒の作用により、食用油の劣化が防止でき、食用油の粘度の上昇を防ぎ、食用油の寿命を増大させることができる。また、このようなインナーケースを用いることにより油の浸透を抑制させて風味の良いカラッとした揚げ物ができると説明されている。また、特許文献2に記載のフライヤインナーケースによれば、劣化防止用触媒として銀含有の改質用触媒およびチタンまたはチタン合金からなる光触媒が例示されている。
【0006】
しかしながら、フライヤインナーケースへの直接コーティングでは、製造工程が複雑であり価格が高騰するなどという課題がある。また、フライヤインナーケースの素材はコーティングに適した材料から選択されなければならない。フライヤインナーケースは、高温化での過酷な調理条件下での、焦げ付き防止、熱伝導性や保温性の確保などに加え、デザイン性などを考慮した調理容器としての選択範囲が制限されるという課題がある。
【0007】
このような状況下で、近年、アナターゼ型の酸化チタン皮膜を製造する方法が精力的に検討されており、例えば、特許文献3には、(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造法が提案された。
【0008】
このような製造方法によれば、工業的生産に適しており、しかもアナターゼ型酸化チタンの形成量が多く、光触媒活性等の特性に優れているアナターゼ型酸化チタン皮膜を製造することができる。
【特許文献1】特開平9−19612号公報
【特許文献2】特開2008−161309号公報
【特許文献3】特許第3858058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することである。具体的には、フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、調理油の寿命を増大させることである。また、本発明の他の課題は、工業的な生産に適し、かつ、調理油の寿命を安価に増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、特許文献3に記載の製造方法で製造されたアナターゼ型酸化チタン皮膜を有するチタン板(チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜)を有するチタン板が、食用油の寿命を著しく増大することを偶然にも見出した。
【0011】
すなわち、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を用いることにより、(1)食用油の酸価の上昇抑制、着色防止、発臭抑制、粘度の上昇抑制が行えるのみならず、揚げ物をした場合のフライの食感テストでは、かりかり、さくさく感が増大することが確認された。
【0012】
また、この素材を日本食品分析センターにて安全性を確認したところ、入手した分析試験成績書に従えば食品規格基準を満たしていることにより構造部品の安全性が確保されていることが確認され、これにより、このアナターゼ型チタン皮膜を有するチタン板が、天ぷら油等の食用油の調理状況における寿命改善と揚げ物の品質改善に適した材料であることが確認された。
【0013】
また、このチタン板を小片として、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には食用油内に投入可能として調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、食用油から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入可能とすれば、フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、上述の従来技術の課題が解決できると考え本発明に到達した。
【0014】
すなわち本発明は、食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内に、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の表裏面の大半が、調理中の調理油と接触可能になるように前記保護部材の内面とは離間されて配設されていることを特徴とする調理油劣化防止具である。
【0015】
ここで、保護部材は、調理油の劣化を防止する目的では本質的に不必要であるが、酸化チタン板は高温の調理油と接触することにより白色から黄色に変化するので、調理者に対する不快感を与える可能性がある。食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内にチタン板が保護されていれば、高温の調理油とチタン板の表面の接触は阻害されずに、その一方で、チタン板の黄変を調理者に意識させることを防止している。
【0016】
この保護部材は、例えば、ステンレス製のパンチングメタルにより構成することができる。ステンレス製であれば耐久性もよく、また、パンチングメタルとすることにより保護部材内への調理中の調理油の流通も良好となり、かつ、調理後に調理油から取り出した場合の調理油の湯切れも良好となる。
【0017】
また、前記チタン板は、前記保護部材とは取り外しが可能に構成されていることが好ましい。溶接を行わずにネジ止め等の手法により取り外しが可能に構成すれば、チタン板の表面に付着物が付着して汚れたり、また、黄変が激しくなった場合においても、保護部材よりチタン板を取り出して、洗浄後に、再び組み立てることが容易となる。
【0018】
また、本発明は、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を食用油と接触させつつ高温で調理することを特徴とする調理方法である。
【0019】
この食用油としてはとくには限定されず、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、カカオ油、ひまわり油、コーン油、米油、紅花油から選択された植物油、ラード、牛脂から選択された動物油、いわし油、鯨油から選択された一種または二種以上の食用油を含むことができる。
【0020】
また、本発明に係るチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜は、以下の工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造方法により製造されることができる。
【0021】
(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び
(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程。
【0022】
これにより、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を、加熱調理容器とは別体の小片として構成し、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には加熱調理容器内に投入することにより加熱調理容器内の食用油と接触可能であることにより、調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、加熱調理容器から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入して利用することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板(調理油劣化防止材)を調理中の食用油に接触させることにより、(1)食用油の酸価の上昇が抑制され、着色防止、発臭抑制、粘度の上昇も抑制される。また、本発明に係る調理油劣化防止材を調理中の食用油と接触させることにより、揚げ物をした場合のフライの食感テストでは、かりかり、さくさく感が増大する。
【0024】
また、この調理油劣化防止材は、加熱調理容器とは別体であるので、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく複数の容器での使い回しが可能となる。
【0025】
また、この調理油劣化防止材の機能は、触媒作用によるので、触媒自体は消費されることがなく、表面を洗い流せば、触媒表面が露出され、繰り返しの使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】調理油の加熱試験結果を示す図であり、経過時間と酸価の上昇の程度を表す図である。
【図2】調理油の加熱試験結果を示す図であり、経過時間と粘度上昇率(%)の変化を表す図である。
【図3】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と酸価の上昇の程度を表す図である。
【図4】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と重合物の付着量(%)の関係を表す図である。
【図5】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と発泡量(%)の関係を表す図である。
【図6】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と着色の程度の関係を揚げ油の色比較として表す図である。
【図7】本発明に係る調理油劣化防止具の外観を示す斜視図である。
【図8】図7に係る調理油劣化防止具の構造を側面より説明する図である。
【図9】本発明に係る調理油劣化防止具におけるチタン板の固定の変形例を説明する図である。
【図10】本発明に係る調理油劣化防止具の外観を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る調理油劣化防止具の外観を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る調理油劣化防止具におけるチタン板の固定の変形例を説明する図であり、上面に位置する保護板を取り除いた場合の斜視図である。
【図13】図12に係る調理油劣化防止具におけるチタン板の固定の構造を平面より説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実験例により、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板が調理油の劣化防止に優れた作用効果があることを説明する。
【0028】
なお、以下の実験例使用したチタン板は、株式会社昭和が製造し、販売している板であり、日本食品分析センターによる構造部品の安全性については、安全性が認証され、食品規格基準の適合評価を得ている(分析試験成績書第10003923001−02、10003923001−03、10003923001−04。)
(実験例1:加熱試験)
株式会社昭和が製造販売するチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板(表面積S=50cm2)を食用油劣化防止材として使用した。
【0029】
直径225mm、高さ75mmのフライ鍋(表面積:約400cm2)を用い、250gの食用油(大豆新油)と上記チタン板を投入し、油温200℃として、連続30時間の長時間劣化試験を行った。
【0030】
このときの、油の空気への接触量は約0.625g/cm2であり、油のチタン板への接触量は、5g/cm2である。
【0031】
対照として、チタン板を投入しない場合と対比して結果を図1及び図2に示した。ここで、酸価は所定時間ごとにKOH法により室温(25℃)で測定し、基準値との差により表現した。
【0032】
また、粘度上昇は、所定時間ごとに50℃に調整された恒温水槽中にキャノンフェンスケ粘度系をセットして測定し、上昇率(粘度上昇率)に換算して示している。
【0033】
図1から、対照としてのブランクでは、30時間後の酸価が0.50と高くなっているのに対し、チタン板を投入した実験例では、30時間後での酸価は0.20に抑制されていた。
【0034】
また、図2から、対照としてのブランクでは、30時間後の粘度上昇率が55%と高くなっているのに対し、チタン板を投入した実験例では、30時間後での粘度上昇率は23%に抑制されていた。
(実験例2:フライ試験)
実験例1において、実際にフライヤー内でポテトを揚げた場合の実験を行った。
【0035】
ポテトとしては、厚み5mm、約30mm角のポテトの表面に小麦粉を水で溶かした衣を付着させたものを揚げる実験を行った。
【0036】
実験条件としては、油温を200℃に保ち、1回の揚げ時間を5分間とし、1時間経過後にサンプル油の10gを採取し、その後、同様に新たに衣付ポテトを投入して5分間揚げ、2時間経過後にサンプル油の採取を行うという作業を合計6回(6時間)行った。
【0037】
対照例と比較して、酸価、重合物の付着量、発泡量、着色の程度について評価し、図3から図5に示した。
【0038】
酸価の測定:実験例1と同様に行った。
【0039】
重合物の付着量:フライヤー内面の食用油と空気との境界周辺に生成する重合物の付着量を対照と比較してその量の多少で判定した結果を示す。
【0040】
食用油の発泡量:ポテトをフライヤー内に投入した後、1分30秒後における調理油表面全体に占める発泡の程度を比較して示した。
(実験例3:フライ試験、揚げ油の色比較)
実験例1において、実際にフライヤー内でポテトを揚げた場合の実験を行った。
【0041】
ポテトとしては、厚み5mm、約30mm角のポテトの表面に小麦粉を水で溶かした衣を付着させたものを揚げる実験を行った。
【0042】
実験条件としては、油温を200℃に保ち、1回の揚げ時間を5分間とし、1時間経過後にサンプル油の10gを採取し、その後、同様に新たに衣付ポテトを投入して5分間揚げ、2時間経過後にサンプル油の採取を行うという作業を合計5回(5時間)行った。
【0043】
対照例と比較して、着色の程度について揚げ油の色比較として図6に示した。
【0044】
チタン板を投入したもの(本発明品)では、5時間経過後であっても、ブランクとしての対照例での3時間経過後の着色よりも透明できれいであった。なお、本実験例に係る揚げ湯の色比較の実験データ(カラー)を参考までに補助資料として提出する。
(実験例4:フライヤー実機での試験)
20リットルの容器(フライヤー)を用いた。
【0045】
また、チタン板としては、(5cm×10cm)の2枚(合計面積200cm2)を用い、油としては、大豆油を用い、油温180℃で豚肉のトンカツを揚げた。
【0046】
官能試験として、男性5名(15歳、20歳、30歳、45歳、67歳)及び女性5名(18歳、23歳、32歳、43歳、66歳)をテスターとし、±3の範囲内での7段階評価をお願いしたところ、対照としてのブランクよりもいずれも良好となっているとの結果を得た。
【0047】
プラス1と評価した男性1名は、サクサク、カラット感を感じたと評価した。
【0048】
プラス2と評価した男性3名、女性3名は、概ね明らかにサクサク感、カラット感が得られたと評価した。また、プラス3と評価した男性1名および女性2名は、強いサクサク感とカリット感が得られたと評価した。
【0049】
これによりテスターの男女10名中、9名が良好であると判定した。
【0050】
同様に、食感としてのさらっと感についての評価を受けたところ、男性2名および女性3名は、さらっと感を感じるプラス1の評価を行い、男性2名、女性3名は、明らかなサラット感を感じるプラス2の評価を行った。
【0051】
つぎに、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を本発明に係る調理油劣化防止具とする実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0052】
図7は、本発明に係る調理油劣化防止具の一例を示す斜視図である。
【0053】
この調理油劣化防止具10は、上下一対の保護板(保護部材)20、30とその間に挟まれたチタン板40とから大略構成されている。
【0054】
このチタン板40は、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板であり、例えば、特許第3858058号に記載の方法により製造されたものである。
【0055】
より具体的には、このチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜は、以下の工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造方法により製造されることができる。
【0056】
(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び
(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程。
【0057】
このチタン板40は、通常は0.1mm〜5mmの範囲内であり、好ましくは0.3〜2mm程度の厚みの平板状であるが、この厚みに限定されることはなり。また、チタン板40の形状は、平板状であるのが一般的であるが、平板に限らず、ラス、網、パイプなどの形体であってもよい。折れ曲げ加工、切削加工など適宜の機械加工が施されたものであってもよい。このような機械加工は、酸化チタン皮膜を付与する前、または付与後であってもよい。また、酸化チタン皮膜を付与後においての溶接も行える。
【0058】
本発明においては、このチタン板40は小片として利用される。小片として利用されることにより、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には食用油内に投入可能として調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、食用油から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入可能とすれば、フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、上述の従来技術の課題が解決できる。
【0059】
通常その大きさは、業務用を前提としても50cm×50cm以下であり、好ましくは、30cm×30cm以下である。また、家庭用を前提とすれば、20cm×20cm以下であり、10cm×20cm以下であってもよい。
【0060】
ここで、このチタン板40は、アナターゼ型酸化チタン皮膜を供えており、アナターゼ型酸化チタン皮膜の触媒活性は、表面が多少黄変しても、高温の調理油と接触可能であれば、繰り返して使用することができる。また、本発明においては、保護板20,30のような保護部材により触媒面としての主面が保護され、また、調理者が直接目視することがないので、黄変を気にすることなく使用でき、これにより調理油劣化防止材としての商品価値を高めることができる。
【0061】
ここで、この実施の形態に係る図7では、保護板20,30としては、板厚0.8mmのステンレス製のパンチングメタルが用いられている。この保護板20、30に形成される穴の形状および大きさに特には制限は無く、内部の保護機能と調理油の流通性が確保されればよい。ここで、この例では、長さ230mmのチタン板に対し、周辺にネジ止めしろ(またはピン止めしろ)を残して、直径6mmの孔50が15個程度の割合で、縦方向および横方向ともに等間隔で設けられている。
【0062】
ここで、この実施例では、このネジ止めしろ(またはピン止めしろ)にはネジ止め用の孔(またはピン止め用の孔)60が、四隅と長辺中央の6箇所に設けられている。
【0063】
このネジ止め用の孔またはピン止め用の孔)60を利用して、この実施の形態に係る調理油劣化防止具10では、保護板20と保護板30と一定の距離d、d´を隔ててチタン板40がネジ(またはピン)61により固定されている。ここで、図8に係る実施の形態では、上下一対の環状のスペーサ80A、80Bを介してチタン板40を固定しているので、距離dと距離d´とは同距離であるが、異なっていてもよい。
【0064】
これらのネジ(またはピン)61または環状スペーサ(またはカラー)80A,80Bの材質はとくには限定されなく、例えば、保護板20,30と同質のステンレス製がこの実施例では採用されている。
【0065】
ここで、距離d、d´の確保には、スペーサ80A,80Bに替えて、レールなどを利用することができる。ここで、図9に示す変形例では、図8に示す固定に替えて(または加えて)、ネジ61により保護板20,30の短縁間にレール80Cが固定されている。このレール80Cにガイドされるように、チタン板40が上下の保護板20,30間にスライド式により装着される。固定は適宜ピンなどにより固定してもよい。
【0066】
ここで、以上に示した実施例または変形例に係る調理油劣化防止具40では、保護板20の表面に倒立式の取っ手70が設けられている。ここで、この取っ手70は、図7−図9に示すように、ネジ72により固定された金具71により保護板20に固定されている。
【0067】
つぎに以上のように構成された調理油劣化防止具10の作用について説明する。
【0068】
上記調理油劣化防止具10では、保護板20および保護板30は、ともにパンチングメタルにより構成され、かつ、チタン板40の表裏面と保護板20,30の内面とはスペーサ80A、80Bまたはレール80Cの作用により距離d、d´だけ離間されて配設されているので、食用油は、保護板20,30の内部に向けて流通可能となる。
【0069】
調理中の調理油は、調理容器の下方から加熱と表面からの放熱により絶えず上下方向に対流しているので、表面に多数の孔50を有する保護板20,30の間にも絶えず対流する。これにより、保護板20,30により保護された状態で、チタン板40の表裏面の大半が、調理中の高温度の調理油と絶えず接触可能になり、調理油の劣化物は、アナターゼ型酸化チタン触媒の熱触媒としての作用により分解される。
【0070】
これにより、フライ等の調理を行えば、油は劣化が抑制され、重合されることが少なく、油切れがよい、サラサラ感とカラッとした感覚のフライ等の揚げ物を調理することができる。
【0071】
また、これにより廃油が大幅に削減でき、また、油煙や臭いが軽減され、1月あたりの調理油の使用量の節約(例えば、40%程度の節約)が図れる。
【0072】
調理後は、取っ手70をフライハサミなどにより起立させて調理油から取り出し、別の調理油中に投入して使用することもできる。
【0073】
酸化チタンの皮膜は、高温度の調理油と接触すると黄変するが、保護部材としての保護板20,30により保護されているので、黄変を気にすることなく使用することができる。
【0074】
また、黄変を含めた汚れが気に成る場合に、アルカリ性薬剤(例えば、苛性ソーダ等)と、共に中性洗剤で漬け置き洗いするだけできれいになり、手入れが簡易である。頑固な汚れが保護板20,30や取っ手70等に付着した場合には、ネジ止め部を解除させて全体を分解して洗うこともできる。
【0075】
また、チタン板40については、交換したり、製造元等へ洗浄を依頼することもできる。多くの浄水器等の販売において行われているように、一定期間使用後に、あるいは定期的にチタン板40の交換を促すサービスなどを行うこともよい。この場合、交換業者は、専門性を生かした洗浄を行うことにより、チタン板を再生させて再利用することができる。
【0076】
つぎに、変形例としての調理油劣化防止具10Aについて、図10および図11を用いて説明する。
【0077】
ここで、これらの調理油防止具10Aは、上下面の保護板20,30に加え、側面も保護板25により保護されて、保護部材は方形の容器状となっている。いずれの保護板20,25,30も全面に孔50を備えた穴あき板により構成され、その材質は全てセラミックとされている。
【0078】
図11に示す例では、角部に補強を加えた例であり、四隅のコーナ部に角補強用コーナ部材90がそれぞれ配設されている。
【0079】
また、これらの変形例に係る調理油劣化防止具10Aでは、調理油劣化防止具10における取っ手70に変えて小型の固定式の係止部70Aが設けられている。
【0080】
このように構成すれば、全体がセラミックにより構成されるので、軽量であり、かつ、錆びることもない。
【0081】
短辺側に設けられた小型の係止部70Aは、棚等に設けられたフックを利用した保管用の係止部であるが、この係止部70Aを利用して、調理油劣化防止具10Aを取り出すこともできる。もちろん、調理油からの取り出しは、全面に設けられた多数の孔50を利用して取り出してもよい。
【0082】
ここで、これらの調理油劣化防止具10Aの内部におけるチタン保護板40の形状等については、実質的に調理油劣化防止具10と同等であってもよいが、つぎに他の変形例としての調理油劣化防止具10Bについて、図12および図13を用いて説明する。
【0083】
この変形例に係る調理油劣化防止具10Bでは、図12又は図13に示すように、長辺側の側面に位置する保護板25,25間に多数の串41…が貫通して固定されている。この串41には、多数のチタン板40Bがスペーサ(カラー)42を介して串刺状(焼き鳥構造)に固定されている。これにより、各チタン板40Bは、保護板25と概略平行となる。
【0084】
このように構成すれば、チタン板40Aは、小片となり、串刺しにより多数が配列されることにより、油との接触面積を大きく保つことができる。また、このような調理油防止具10Bを保護板30が調理油の下側(したがって保護板20は調理油の表面側)となるようにフライヤ中に投入すれば、スペーサ(カラー)42の作用により調理中の調理油の対流が円滑に行えるので、本発明の作用を一層効率よく達成できる。ここで、チタン板40Aと串41とをスポット溶接により溶接すれば、スペーサ(カラー)は不要となる。
【0085】
なお、油との接触面積を確保したり、対流を円滑に行う目的で、適宜の設計変更を行うことができることはいうまでもない。その一例は、図12に示すチタン板40Aの配列を平面視、千鳥状として配列してもよい。
【0086】
また、特許3858058号(特開2005−240139号)に記載のアナターゼ型酸化チタン皮膜を有するチタン板は、アナターゼ型酸化チタン皮膜を有する状態で加工できるので、例えば、蛇腹状に折りたたんだ構成、渦巻状とする構成、としてもよい。いずれの構成においても、チタン板は、側面の保護板と平行(調理中の主面が鉛直方向なる構成)であることが、対流を十分に確保できるので好ましい。
【0087】
以上、本発明を実施の形態により説明したが、本発明が適用可能な調理油としては、食用に適用可能な広範な調理油を用いることができる。それらは、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、カカオ油、ひまわり油、コーン油、米油、紅花油から選択された植物油、ラード、牛脂から選択された動物油、いわし油、鯨油から選択された一種または二種以上の食用油を含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明に従えば、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を、加熱調理容器とは別体の小片として構成し、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には加熱調理容器内に投入することにより加熱調理容器内の食用油と接触可能であることにより、調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、加熱調理容器から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入して利用することもできる。
【0089】
また、本発明に係る調理油劣化防止材を調理中の高温の食用油に接触させることにより、(1)食用油の酸価の上昇が抑制され、着色防止、発臭抑制、粘度の上昇も抑制される。また、本発明に係る調理油劣化防止材を調理中の食用油と接触させることにより、揚げ物をした場合のフライの食感テストでは、かりかり、さくさく感が増大する。
【0090】
また、この調理油劣化防止材は、加熱調理容器とは別体であるので、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく複数の容器での使い回しが可能となる。
【0091】
また、この調理油劣化防止材の機能は、触媒作用によるので、触媒自体は消費されることがなく、表面を洗い流せば、触媒表面が露出され、繰り返しの使用ができる。
【符号の説明】
【0092】
10,10A,10B:調理油劣化防止具
20:保護板(保護部材)
25:保護板(保護部材)
30:保護板(保護部材)
40:40A,40Bチタン板
41:串
42:スペーサ(カラー)
50:孔
60:ネジ止め用の孔(ピン止め用の孔)
61:ネジ(またはピン)
70:取っ手
70A:係止部
71:金具
72:ネジ
80A,80B:スペーサ(カラー材)
80C:レール
90:角補強用コーナ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒や光電変換素子等として有用であるチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の調理油劣化防止材への応用とそれを食用油と接触させつつ調理する調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら油、フライ油等の食用油を高温で長時間使用すると食用油は酸化されて劣化する。これにより、食用油は粘度や付着性が増大して加熱調理容器を汚損させたり、また、食用油の着色や発臭を助長する。これにより、調理された揚げ物の品質を低下させたり、揚げ物のサクサク感を減少させる、などの課題がある。
【0003】
この課題を解決するには、濾材などにより劣化した調理油を濾過して再利用することが一般的に行われ、また、専用の食用濾過器も開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、濾材などによる濾過は、食用油の劣化を直接抑制するものでもなく、また、調理器具としての加熱調理容器の内面への劣化物の付着を防止できない。
【0005】
これに対し、特許文献2によれば、フライヤインナーケースの内面に食用油劣化防止用触媒をコーティングする発明が開示されている。このようなインナーケースを用いることにより、食用油劣化触媒の作用により、食用油の劣化が防止でき、食用油の粘度の上昇を防ぎ、食用油の寿命を増大させることができる。また、このようなインナーケースを用いることにより油の浸透を抑制させて風味の良いカラッとした揚げ物ができると説明されている。また、特許文献2に記載のフライヤインナーケースによれば、劣化防止用触媒として銀含有の改質用触媒およびチタンまたはチタン合金からなる光触媒が例示されている。
【0006】
しかしながら、フライヤインナーケースへの直接コーティングでは、製造工程が複雑であり価格が高騰するなどという課題がある。また、フライヤインナーケースの素材はコーティングに適した材料から選択されなければならない。フライヤインナーケースは、高温化での過酷な調理条件下での、焦げ付き防止、熱伝導性や保温性の確保などに加え、デザイン性などを考慮した調理容器としての選択範囲が制限されるという課題がある。
【0007】
このような状況下で、近年、アナターゼ型の酸化チタン皮膜を製造する方法が精力的に検討されており、例えば、特許文献3には、(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造法が提案された。
【0008】
このような製造方法によれば、工業的生産に適しており、しかもアナターゼ型酸化チタンの形成量が多く、光触媒活性等の特性に優れているアナターゼ型酸化チタン皮膜を製造することができる。
【特許文献1】特開平9−19612号公報
【特許文献2】特開2008−161309号公報
【特許文献3】特許第3858058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することである。具体的には、フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、調理油の寿命を増大させることである。また、本発明の他の課題は、工業的な生産に適し、かつ、調理油の寿命を安価に増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、特許文献3に記載の製造方法で製造されたアナターゼ型酸化チタン皮膜を有するチタン板(チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜)を有するチタン板が、食用油の寿命を著しく増大することを偶然にも見出した。
【0011】
すなわち、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を用いることにより、(1)食用油の酸価の上昇抑制、着色防止、発臭抑制、粘度の上昇抑制が行えるのみならず、揚げ物をした場合のフライの食感テストでは、かりかり、さくさく感が増大することが確認された。
【0012】
また、この素材を日本食品分析センターにて安全性を確認したところ、入手した分析試験成績書に従えば食品規格基準を満たしていることにより構造部品の安全性が確保されていることが確認され、これにより、このアナターゼ型チタン皮膜を有するチタン板が、天ぷら油等の食用油の調理状況における寿命改善と揚げ物の品質改善に適した材料であることが確認された。
【0013】
また、このチタン板を小片として、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には食用油内に投入可能として調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、食用油から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入可能とすれば、フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、上述の従来技術の課題が解決できると考え本発明に到達した。
【0014】
すなわち本発明は、食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内に、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の表裏面の大半が、調理中の調理油と接触可能になるように前記保護部材の内面とは離間されて配設されていることを特徴とする調理油劣化防止具である。
【0015】
ここで、保護部材は、調理油の劣化を防止する目的では本質的に不必要であるが、酸化チタン板は高温の調理油と接触することにより白色から黄色に変化するので、調理者に対する不快感を与える可能性がある。食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内にチタン板が保護されていれば、高温の調理油とチタン板の表面の接触は阻害されずに、その一方で、チタン板の黄変を調理者に意識させることを防止している。
【0016】
この保護部材は、例えば、ステンレス製のパンチングメタルにより構成することができる。ステンレス製であれば耐久性もよく、また、パンチングメタルとすることにより保護部材内への調理中の調理油の流通も良好となり、かつ、調理後に調理油から取り出した場合の調理油の湯切れも良好となる。
【0017】
また、前記チタン板は、前記保護部材とは取り外しが可能に構成されていることが好ましい。溶接を行わずにネジ止め等の手法により取り外しが可能に構成すれば、チタン板の表面に付着物が付着して汚れたり、また、黄変が激しくなった場合においても、保護部材よりチタン板を取り出して、洗浄後に、再び組み立てることが容易となる。
【0018】
また、本発明は、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を食用油と接触させつつ高温で調理することを特徴とする調理方法である。
【0019】
この食用油としてはとくには限定されず、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、カカオ油、ひまわり油、コーン油、米油、紅花油から選択された植物油、ラード、牛脂から選択された動物油、いわし油、鯨油から選択された一種または二種以上の食用油を含むことができる。
【0020】
また、本発明に係るチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜は、以下の工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造方法により製造されることができる。
【0021】
(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び
(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程。
【0022】
これにより、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を、加熱調理容器とは別体の小片として構成し、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には加熱調理容器内に投入することにより加熱調理容器内の食用油と接触可能であることにより、調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、加熱調理容器から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入して利用することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板(調理油劣化防止材)を調理中の食用油に接触させることにより、(1)食用油の酸価の上昇が抑制され、着色防止、発臭抑制、粘度の上昇も抑制される。また、本発明に係る調理油劣化防止材を調理中の食用油と接触させることにより、揚げ物をした場合のフライの食感テストでは、かりかり、さくさく感が増大する。
【0024】
また、この調理油劣化防止材は、加熱調理容器とは別体であるので、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく複数の容器での使い回しが可能となる。
【0025】
また、この調理油劣化防止材の機能は、触媒作用によるので、触媒自体は消費されることがなく、表面を洗い流せば、触媒表面が露出され、繰り返しの使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】調理油の加熱試験結果を示す図であり、経過時間と酸価の上昇の程度を表す図である。
【図2】調理油の加熱試験結果を示す図であり、経過時間と粘度上昇率(%)の変化を表す図である。
【図3】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と酸価の上昇の程度を表す図である。
【図4】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と重合物の付着量(%)の関係を表す図である。
【図5】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と発泡量(%)の関係を表す図である。
【図6】フライ試験結果を示す図であり、経過時間と着色の程度の関係を揚げ油の色比較として表す図である。
【図7】本発明に係る調理油劣化防止具の外観を示す斜視図である。
【図8】図7に係る調理油劣化防止具の構造を側面より説明する図である。
【図9】本発明に係る調理油劣化防止具におけるチタン板の固定の変形例を説明する図である。
【図10】本発明に係る調理油劣化防止具の外観を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る調理油劣化防止具の外観を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る調理油劣化防止具におけるチタン板の固定の変形例を説明する図であり、上面に位置する保護板を取り除いた場合の斜視図である。
【図13】図12に係る調理油劣化防止具におけるチタン板の固定の構造を平面より説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実験例により、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板が調理油の劣化防止に優れた作用効果があることを説明する。
【0028】
なお、以下の実験例使用したチタン板は、株式会社昭和が製造し、販売している板であり、日本食品分析センターによる構造部品の安全性については、安全性が認証され、食品規格基準の適合評価を得ている(分析試験成績書第10003923001−02、10003923001−03、10003923001−04。)
(実験例1:加熱試験)
株式会社昭和が製造販売するチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板(表面積S=50cm2)を食用油劣化防止材として使用した。
【0029】
直径225mm、高さ75mmのフライ鍋(表面積:約400cm2)を用い、250gの食用油(大豆新油)と上記チタン板を投入し、油温200℃として、連続30時間の長時間劣化試験を行った。
【0030】
このときの、油の空気への接触量は約0.625g/cm2であり、油のチタン板への接触量は、5g/cm2である。
【0031】
対照として、チタン板を投入しない場合と対比して結果を図1及び図2に示した。ここで、酸価は所定時間ごとにKOH法により室温(25℃)で測定し、基準値との差により表現した。
【0032】
また、粘度上昇は、所定時間ごとに50℃に調整された恒温水槽中にキャノンフェンスケ粘度系をセットして測定し、上昇率(粘度上昇率)に換算して示している。
【0033】
図1から、対照としてのブランクでは、30時間後の酸価が0.50と高くなっているのに対し、チタン板を投入した実験例では、30時間後での酸価は0.20に抑制されていた。
【0034】
また、図2から、対照としてのブランクでは、30時間後の粘度上昇率が55%と高くなっているのに対し、チタン板を投入した実験例では、30時間後での粘度上昇率は23%に抑制されていた。
(実験例2:フライ試験)
実験例1において、実際にフライヤー内でポテトを揚げた場合の実験を行った。
【0035】
ポテトとしては、厚み5mm、約30mm角のポテトの表面に小麦粉を水で溶かした衣を付着させたものを揚げる実験を行った。
【0036】
実験条件としては、油温を200℃に保ち、1回の揚げ時間を5分間とし、1時間経過後にサンプル油の10gを採取し、その後、同様に新たに衣付ポテトを投入して5分間揚げ、2時間経過後にサンプル油の採取を行うという作業を合計6回(6時間)行った。
【0037】
対照例と比較して、酸価、重合物の付着量、発泡量、着色の程度について評価し、図3から図5に示した。
【0038】
酸価の測定:実験例1と同様に行った。
【0039】
重合物の付着量:フライヤー内面の食用油と空気との境界周辺に生成する重合物の付着量を対照と比較してその量の多少で判定した結果を示す。
【0040】
食用油の発泡量:ポテトをフライヤー内に投入した後、1分30秒後における調理油表面全体に占める発泡の程度を比較して示した。
(実験例3:フライ試験、揚げ油の色比較)
実験例1において、実際にフライヤー内でポテトを揚げた場合の実験を行った。
【0041】
ポテトとしては、厚み5mm、約30mm角のポテトの表面に小麦粉を水で溶かした衣を付着させたものを揚げる実験を行った。
【0042】
実験条件としては、油温を200℃に保ち、1回の揚げ時間を5分間とし、1時間経過後にサンプル油の10gを採取し、その後、同様に新たに衣付ポテトを投入して5分間揚げ、2時間経過後にサンプル油の採取を行うという作業を合計5回(5時間)行った。
【0043】
対照例と比較して、着色の程度について揚げ油の色比較として図6に示した。
【0044】
チタン板を投入したもの(本発明品)では、5時間経過後であっても、ブランクとしての対照例での3時間経過後の着色よりも透明できれいであった。なお、本実験例に係る揚げ湯の色比較の実験データ(カラー)を参考までに補助資料として提出する。
(実験例4:フライヤー実機での試験)
20リットルの容器(フライヤー)を用いた。
【0045】
また、チタン板としては、(5cm×10cm)の2枚(合計面積200cm2)を用い、油としては、大豆油を用い、油温180℃で豚肉のトンカツを揚げた。
【0046】
官能試験として、男性5名(15歳、20歳、30歳、45歳、67歳)及び女性5名(18歳、23歳、32歳、43歳、66歳)をテスターとし、±3の範囲内での7段階評価をお願いしたところ、対照としてのブランクよりもいずれも良好となっているとの結果を得た。
【0047】
プラス1と評価した男性1名は、サクサク、カラット感を感じたと評価した。
【0048】
プラス2と評価した男性3名、女性3名は、概ね明らかにサクサク感、カラット感が得られたと評価した。また、プラス3と評価した男性1名および女性2名は、強いサクサク感とカリット感が得られたと評価した。
【0049】
これによりテスターの男女10名中、9名が良好であると判定した。
【0050】
同様に、食感としてのさらっと感についての評価を受けたところ、男性2名および女性3名は、さらっと感を感じるプラス1の評価を行い、男性2名、女性3名は、明らかなサラット感を感じるプラス2の評価を行った。
【0051】
つぎに、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を本発明に係る調理油劣化防止具とする実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0052】
図7は、本発明に係る調理油劣化防止具の一例を示す斜視図である。
【0053】
この調理油劣化防止具10は、上下一対の保護板(保護部材)20、30とその間に挟まれたチタン板40とから大略構成されている。
【0054】
このチタン板40は、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板であり、例えば、特許第3858058号に記載の方法により製造されたものである。
【0055】
より具体的には、このチタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜は、以下の工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造方法により製造されることができる。
【0056】
(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び
(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程。
【0057】
このチタン板40は、通常は0.1mm〜5mmの範囲内であり、好ましくは0.3〜2mm程度の厚みの平板状であるが、この厚みに限定されることはなり。また、チタン板40の形状は、平板状であるのが一般的であるが、平板に限らず、ラス、網、パイプなどの形体であってもよい。折れ曲げ加工、切削加工など適宜の機械加工が施されたものであってもよい。このような機械加工は、酸化チタン皮膜を付与する前、または付与後であってもよい。また、酸化チタン皮膜を付与後においての溶接も行える。
【0058】
本発明においては、このチタン板40は小片として利用される。小片として利用されることにより、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には食用油内に投入可能として調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、食用油から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入可能とすれば、フライヤインナーケースへの直接コーティングによらない方法により、上述の従来技術の課題が解決できる。
【0059】
通常その大きさは、業務用を前提としても50cm×50cm以下であり、好ましくは、30cm×30cm以下である。また、家庭用を前提とすれば、20cm×20cm以下であり、10cm×20cm以下であってもよい。
【0060】
ここで、このチタン板40は、アナターゼ型酸化チタン皮膜を供えており、アナターゼ型酸化チタン皮膜の触媒活性は、表面が多少黄変しても、高温の調理油と接触可能であれば、繰り返して使用することができる。また、本発明においては、保護板20,30のような保護部材により触媒面としての主面が保護され、また、調理者が直接目視することがないので、黄変を気にすることなく使用でき、これにより調理油劣化防止材としての商品価値を高めることができる。
【0061】
ここで、この実施の形態に係る図7では、保護板20,30としては、板厚0.8mmのステンレス製のパンチングメタルが用いられている。この保護板20、30に形成される穴の形状および大きさに特には制限は無く、内部の保護機能と調理油の流通性が確保されればよい。ここで、この例では、長さ230mmのチタン板に対し、周辺にネジ止めしろ(またはピン止めしろ)を残して、直径6mmの孔50が15個程度の割合で、縦方向および横方向ともに等間隔で設けられている。
【0062】
ここで、この実施例では、このネジ止めしろ(またはピン止めしろ)にはネジ止め用の孔(またはピン止め用の孔)60が、四隅と長辺中央の6箇所に設けられている。
【0063】
このネジ止め用の孔またはピン止め用の孔)60を利用して、この実施の形態に係る調理油劣化防止具10では、保護板20と保護板30と一定の距離d、d´を隔ててチタン板40がネジ(またはピン)61により固定されている。ここで、図8に係る実施の形態では、上下一対の環状のスペーサ80A、80Bを介してチタン板40を固定しているので、距離dと距離d´とは同距離であるが、異なっていてもよい。
【0064】
これらのネジ(またはピン)61または環状スペーサ(またはカラー)80A,80Bの材質はとくには限定されなく、例えば、保護板20,30と同質のステンレス製がこの実施例では採用されている。
【0065】
ここで、距離d、d´の確保には、スペーサ80A,80Bに替えて、レールなどを利用することができる。ここで、図9に示す変形例では、図8に示す固定に替えて(または加えて)、ネジ61により保護板20,30の短縁間にレール80Cが固定されている。このレール80Cにガイドされるように、チタン板40が上下の保護板20,30間にスライド式により装着される。固定は適宜ピンなどにより固定してもよい。
【0066】
ここで、以上に示した実施例または変形例に係る調理油劣化防止具40では、保護板20の表面に倒立式の取っ手70が設けられている。ここで、この取っ手70は、図7−図9に示すように、ネジ72により固定された金具71により保護板20に固定されている。
【0067】
つぎに以上のように構成された調理油劣化防止具10の作用について説明する。
【0068】
上記調理油劣化防止具10では、保護板20および保護板30は、ともにパンチングメタルにより構成され、かつ、チタン板40の表裏面と保護板20,30の内面とはスペーサ80A、80Bまたはレール80Cの作用により距離d、d´だけ離間されて配設されているので、食用油は、保護板20,30の内部に向けて流通可能となる。
【0069】
調理中の調理油は、調理容器の下方から加熱と表面からの放熱により絶えず上下方向に対流しているので、表面に多数の孔50を有する保護板20,30の間にも絶えず対流する。これにより、保護板20,30により保護された状態で、チタン板40の表裏面の大半が、調理中の高温度の調理油と絶えず接触可能になり、調理油の劣化物は、アナターゼ型酸化チタン触媒の熱触媒としての作用により分解される。
【0070】
これにより、フライ等の調理を行えば、油は劣化が抑制され、重合されることが少なく、油切れがよい、サラサラ感とカラッとした感覚のフライ等の揚げ物を調理することができる。
【0071】
また、これにより廃油が大幅に削減でき、また、油煙や臭いが軽減され、1月あたりの調理油の使用量の節約(例えば、40%程度の節約)が図れる。
【0072】
調理後は、取っ手70をフライハサミなどにより起立させて調理油から取り出し、別の調理油中に投入して使用することもできる。
【0073】
酸化チタンの皮膜は、高温度の調理油と接触すると黄変するが、保護部材としての保護板20,30により保護されているので、黄変を気にすることなく使用することができる。
【0074】
また、黄変を含めた汚れが気に成る場合に、アルカリ性薬剤(例えば、苛性ソーダ等)と、共に中性洗剤で漬け置き洗いするだけできれいになり、手入れが簡易である。頑固な汚れが保護板20,30や取っ手70等に付着した場合には、ネジ止め部を解除させて全体を分解して洗うこともできる。
【0075】
また、チタン板40については、交換したり、製造元等へ洗浄を依頼することもできる。多くの浄水器等の販売において行われているように、一定期間使用後に、あるいは定期的にチタン板40の交換を促すサービスなどを行うこともよい。この場合、交換業者は、専門性を生かした洗浄を行うことにより、チタン板を再生させて再利用することができる。
【0076】
つぎに、変形例としての調理油劣化防止具10Aについて、図10および図11を用いて説明する。
【0077】
ここで、これらの調理油防止具10Aは、上下面の保護板20,30に加え、側面も保護板25により保護されて、保護部材は方形の容器状となっている。いずれの保護板20,25,30も全面に孔50を備えた穴あき板により構成され、その材質は全てセラミックとされている。
【0078】
図11に示す例では、角部に補強を加えた例であり、四隅のコーナ部に角補強用コーナ部材90がそれぞれ配設されている。
【0079】
また、これらの変形例に係る調理油劣化防止具10Aでは、調理油劣化防止具10における取っ手70に変えて小型の固定式の係止部70Aが設けられている。
【0080】
このように構成すれば、全体がセラミックにより構成されるので、軽量であり、かつ、錆びることもない。
【0081】
短辺側に設けられた小型の係止部70Aは、棚等に設けられたフックを利用した保管用の係止部であるが、この係止部70Aを利用して、調理油劣化防止具10Aを取り出すこともできる。もちろん、調理油からの取り出しは、全面に設けられた多数の孔50を利用して取り出してもよい。
【0082】
ここで、これらの調理油劣化防止具10Aの内部におけるチタン保護板40の形状等については、実質的に調理油劣化防止具10と同等であってもよいが、つぎに他の変形例としての調理油劣化防止具10Bについて、図12および図13を用いて説明する。
【0083】
この変形例に係る調理油劣化防止具10Bでは、図12又は図13に示すように、長辺側の側面に位置する保護板25,25間に多数の串41…が貫通して固定されている。この串41には、多数のチタン板40Bがスペーサ(カラー)42を介して串刺状(焼き鳥構造)に固定されている。これにより、各チタン板40Bは、保護板25と概略平行となる。
【0084】
このように構成すれば、チタン板40Aは、小片となり、串刺しにより多数が配列されることにより、油との接触面積を大きく保つことができる。また、このような調理油防止具10Bを保護板30が調理油の下側(したがって保護板20は調理油の表面側)となるようにフライヤ中に投入すれば、スペーサ(カラー)42の作用により調理中の調理油の対流が円滑に行えるので、本発明の作用を一層効率よく達成できる。ここで、チタン板40Aと串41とをスポット溶接により溶接すれば、スペーサ(カラー)は不要となる。
【0085】
なお、油との接触面積を確保したり、対流を円滑に行う目的で、適宜の設計変更を行うことができることはいうまでもない。その一例は、図12に示すチタン板40Aの配列を平面視、千鳥状として配列してもよい。
【0086】
また、特許3858058号(特開2005−240139号)に記載のアナターゼ型酸化チタン皮膜を有するチタン板は、アナターゼ型酸化チタン皮膜を有する状態で加工できるので、例えば、蛇腹状に折りたたんだ構成、渦巻状とする構成、としてもよい。いずれの構成においても、チタン板は、側面の保護板と平行(調理中の主面が鉛直方向なる構成)であることが、対流を十分に確保できるので好ましい。
【0087】
以上、本発明を実施の形態により説明したが、本発明が適用可能な調理油としては、食用に適用可能な広範な調理油を用いることができる。それらは、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、カカオ油、ひまわり油、コーン油、米油、紅花油から選択された植物油、ラード、牛脂から選択された動物油、いわし油、鯨油から選択された一種または二種以上の食用油を含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明に従えば、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を、加熱調理容器とは別体の小片として構成し、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく調理中には加熱調理容器内に投入することにより加熱調理容器内の食用油と接触可能であることにより、調理中の高温に晒された食用油と接触可能であり、調理後においては、加熱調理容器から取り出し、他の加熱調理容器内にも投入して利用することもできる。
【0089】
また、本発明に係る調理油劣化防止材を調理中の高温の食用油に接触させることにより、(1)食用油の酸価の上昇が抑制され、着色防止、発臭抑制、粘度の上昇も抑制される。また、本発明に係る調理油劣化防止材を調理中の食用油と接触させることにより、揚げ物をした場合のフライの食感テストでは、かりかり、さくさく感が増大する。
【0090】
また、この調理油劣化防止材は、加熱調理容器とは別体であるので、加熱調理容器の種類、形状、大きさに関わりなく複数の容器での使い回しが可能となる。
【0091】
また、この調理油劣化防止材の機能は、触媒作用によるので、触媒自体は消費されることがなく、表面を洗い流せば、触媒表面が露出され、繰り返しの使用ができる。
【符号の説明】
【0092】
10,10A,10B:調理油劣化防止具
20:保護板(保護部材)
25:保護板(保護部材)
30:保護板(保護部材)
40:40A,40Bチタン板
41:串
42:スペーサ(カラー)
50:孔
60:ネジ止め用の孔(ピン止め用の孔)
61:ネジ(またはピン)
70:取っ手
70A:係止部
71:金具
72:ネジ
80A,80B:スペーサ(カラー材)
80C:レール
90:角補強用コーナ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内に、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の表裏面の大半が、調理中の調理油が接触可能になるように前記保護部材の内面とは離間されて配設されていることを特徴とする調理油劣化防止具。
【請求項2】
前記保護部材は、ステンレス製のパンチングメタルにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の調理油劣化防止具。
【請求項3】
前記チタン板は、前記保護部材とは取り外しが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の調理油劣化防止具。
【請求項4】
チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を食用油と接触させつつ高温で調理することを特徴とする調理方法。
【請求項5】
前記食用油は、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、カカオ油、ひまわり油、コーン油、米油、紅花油から選択された植物油、ラード、牛脂から選択された動物油、いわし油、鯨油から選択された一種または二種以上の食用油を含むことを特徴とする請求項4記載の調理方法。
【請求項6】
前記チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜は、以下の工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造方法により製造されたことを特徴とする請求項1に記載の調理油劣化防止具。
(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び
(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程。
【請求項1】
食用油が内部に向けて流通可能な保護部材内に、チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板の表裏面の大半が、調理中の調理油が接触可能になるように前記保護部材の内面とは離間されて配設されていることを特徴とする調理油劣化防止具。
【請求項2】
前記保護部材は、ステンレス製のパンチングメタルにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の調理油劣化防止具。
【請求項3】
前記チタン板は、前記保護部材とは取り外しが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の調理油劣化防止具。
【請求項4】
チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜を有するチタン板を食用油と接触させつつ高温で調理することを特徴とする調理方法。
【請求項5】
前記食用油は、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、カカオ油、ひまわり油、コーン油、米油、紅花油から選択された植物油、ラード、牛脂から選択された動物油、いわし油、鯨油から選択された一種または二種以上の食用油を含むことを特徴とする請求項4記載の調理方法。
【請求項6】
前記チタン鋼材を陽極酸化することにより得られる酸化チタン皮膜は、以下の工程を含むアナターゼ型酸化チタン皮膜の製造方法により製造されたことを特徴とする請求項1に記載の調理油劣化防止具。
(i)チタン又はチタン合金の表面にチタン窒化物を形成する工程、及び
(ii)チタンに対してエッチング作用を有する無機酸及び該作用を有する有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する電解液中に、上記工程(i)で得られたチタン又はチタン合金を浸漬し、火花放電発生電圧以上の電圧を印加することにより陽極酸化を行う工程。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【公開番号】特開2011−200406(P2011−200406A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70117(P2010−70117)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505255286)
【出願人】(510083267)有限会社アルセ・エコ開発 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505255286)
【出願人】(510083267)有限会社アルセ・エコ開発 (1)
【Fターム(参考)】
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