説明

調理済み食品の作製の方法

【課題】油で揚げる(deep frying)場合および油で炒める(shallow frying)場合のように大量の脂肪を使用する料理方法と置き換えることができ、脂肪レベルが低減された調理済み食品を提供する。
【解決手段】以下の段階を含む、調理済み食品の作製方法に関する: ・未調理のまたは不完全に調理した食品の外面に、脂肪を基礎とするコーティングを適用する;および ・該食品を、120℃から300℃の温度を有する過熱(superheated)蒸気に、0.3から15分間、好ましくは1から10分間接触させ、調理済み食品を得る。調理済みドーナツに関係し、調理された生地は、脂肪含有量が4から10 wt%、水分含有量が30から40 wt%および比体積が2.5から4.5 ml/gであり、前記ドーナツは、表面から厚さ1 mmの層における脂肪の平均含有量が、表面から厚さ5 mmの層における脂肪の平均含有量より、少なくとも2倍高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未調理のまたは不完全に調理した食品を熱処理することで、調理済み(ready-to-eat)食品を作製する方法に関する。本発明による方法によって、適切に調理されてよい食品の例は、ドーナツ、揚げ麺、タコス、パン粉で覆われた食品およびラードケーキ(lardy cakes)を含む。本発明はまた、調理済み低脂肪ドーナツを提供する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツは、典型的に、生地(dough)またはバッター(batter)を揚げた甘い食品である。最も一般的な2つの種類は、円環型のリング状のドーナツ、および平らにした球形で、ジャム/ゼリー、クリーム、カスタード、またはその他の甘い具(filling)がはさまれた、具の入ったドーナツである。
【0003】
ドーナツ生地は、伝統的に、以下の成分から作られている:小麦粉、牛乳、砂糖、ショートニング、卵(泡立てたもの)、塩およびふくらし粉(leavening agent)(ベークングパウダーまたは酵母)。ふくらし粉として酵母を用いる場合、酵母に生地の膨らましを行わせるため、生地をいわゆる発酵(proofing)させる。ドーナツ生地を揚げている間、生地の水分含量は減少し、同時に脂肪がドーナツにより吸収される。典型的に、調理されたドーナツの生地は、約17から32 wt%の脂肪を含んでいる。
【0004】
揚げる工程の間、脂肪は、揚げる油から調理されるドーナツへ、2つの機構によって移動する:(i) 揚げる生産物内への脂肪の吸収または浸透、および(ii) 一体化することなく外表面に接している脂肪のみが関与する吸着である。
【0005】
脂肪の吸収は、風味の濃厚さに寄与し、口あたりおよび食味(eating quality)を改善し、および製品の有効期間を延長するため、ドーナツの品質を決める重要な要素である。脂肪の吸収が不十分なドーナツは、一般に、練り物のような舌触り(texture)および食味を有す。
【0006】
ドーナツは多くの国で非常に人気のある食品であり、特にアメリカにおいてそうである。ドーナツは、しかしながら、脂肪およびカロリーが両方とも高く、結果として低脂肪食に適さない。
【0007】
それゆえ、低脂肪ドーナツを提供する試みが行われていることは、驚くべきことではない。特許文献1では、例えば、脂肪量が低減され実質的に均一な舌触りを有したドーナツの作製方法が記載されている。その方法は、約0.2-10重量%のポリビニルピロリドンを含むドーナツミックスを提供し、水と混ぜ合わせてバッターを作り、該バッターをドーナツ状に成形し、および該ドーナツ状に成形したものを加熱した食用脂肪に浸して調理することを含む。
【0008】
特許文献2は、低脂肪で、化学的に膨らましたケーキドーナツを作製する方法が記載されており、その方法は以下の段階を含む:
a) 80%から95%の水、5%から20%の不溶性、水結合性線維、および0.2%から2%の熱可逆性、親水コロイドゲル化剤を含む、熱可逆性ゲルを作製する;
b) 25から30重量%の水分含有量を有する、形状を維持でき(self-sustaining)、低弾性率(low modulus)のドーナツ生地であって、20%から30%の段階a)によるゲル、30%から60%の小麦粉、10%から30%の砂糖、および化学的ふくらし粉を含むドーナツ生地を作製する;
c) 前記生地を形状維持できるドーナツ型の小片に成形する;
d) 前記生地の小片を、予め加熱しておいたオーブンにて、華氏375から425度の温度で10分未満焼く。
【0009】
特許文献3は、超低脂肪ドーナツを作る方法が記載されており、該方法は以下の段階を含む:強化漂白小麦粉(enriched wheat flour bleached)、速効性ふくらし粉および大豆粉末を含むバッターを提供し;該バッターをちぎって、1.3から1.7オンスのドーナツの小片にし;該ドーナツの小片を発酵させ;および該ドーナツの小片を対流オーブン中で焼く。
【0010】
本発明の目的は、脂肪を十分含む油で揚げたドーナツに、食味が匹敵する低脂肪ドーナツを提供することである。
【特許文献1】米国特許第4937086号明細書
【特許文献2】米国特許第5804243号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0182865号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0482709号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/066751号パンフレット
【発明の概要】
【0011】
発明者らは、未調理のまたは不完全に調理したドーナツ生地に脂肪を基礎とするコーティングを行い、続いて脂肪でコーティングしたドーナツ生地を過熱蒸気(superheated steam)に接触させ、調理済みドーナツを得ることで、上述の目的を実現した。発明者らはさらに、本方法の利点は、調理済みドーナツの作製のみならず、揚げ麺、タコス、パン粉で覆われた食品およびラードケーキといった、生地またはバッターから作られるその他の食品の作製にも同様に、好都合に適用できることを発見した。従って本発明は、以下の段階を含む調理済み食品を作製する方法を提供する:
・未調理のまたは不完全に調理した食品の表面に脂肪を基礎とするコーティングを適用する;および
・該脂肪コーティングした食品を、120℃から300℃の温度を有する過熱蒸気に、0.3から15分間、好ましくは1から10分間接触させ、調理済み食品を得る。
【0012】
本発明による方法は、例えば油で揚げる(deep frying)場合および油で炒める(shallow frying)場合のように大量の脂肪を使用する料理方法と適当に置き換えることができ、脂肪レベルが低減された調理済み食品の作製を可能とする。このように脂肪レベルが低下するにもかかわらず、これらの調理済み食品の食味は優れている。例えば、本発明により得られるドーナツの表面および中身(crumb)の性質は、油で揚げたドーナツの性質と驚くほど同じである。
【0013】
低脂肪スナック食品(snacks)のための、蒸気で揚げる調理法の使用については、幾つかの刊行物で記述されている。
【0014】
特許文献4では、例えば、低脂肪デンプン質(farinaceous)スナック食品の作製方法について記載されており、該方法は生地を型に入れて過熱蒸気を用いて148℃から218℃の温度で調理することを含む。
【0015】
特許文献5では、以下の段階を含む、生産物を熱処理する方法が記載されている:
a. 熱処理を行うにあたって、生産物に望ましい特性を獲得させるために必要な水分活性値 (water activity value) を決定する;
b. 生産物の表面温度が80℃から260℃となるように、上昇する温度およびそれに伴う飽和蒸気圧(p*)にて、水蒸気と生産物とを接触させる;
c. 段階(b)における蒸気圧(p)を、p/p*の値が段階(a)で決定した水分活性値に等しくなるように、設定する;および
d. 望ましい特性を持った生産物を得るため、段階(b)および(c)に記載した条件を、所要の時間(t)の間維持する。
【0016】
特許文献5に記載される方法は、ココア豆、カカオニブ、コーヒー豆、ピーナツ、ナッツ、大豆製品、(粉末状) ハーブ、(粉末状) 香辛料、ジャガイモ、デンプン性および穀物性製品およびパン、ケーキ、肉(meat)、スナック食品および魚介製品の処理に適していると言われている。
【0017】
本発明による方法で得られる調理済みドーナツは、通常のドーナツより脂肪の含有量が非常に低い。しかし、過熱蒸気に接触させる前に脂肪を基礎とするコーティングを適用させる結果、これらの低脂肪ドーナツは、基本的に、油で揚げたドーナツと区別がつかない。この特別な実施態様によって得られた調理済みドーナツは、表面の上層部分(upper skin)は脂肪含有量が高く、全体としては脂肪含有量が低いことが特徴付けられる。
【0018】
従って、本発明の別の側面は、調理された生地を含む調理済みドーナツに関係し、該調理された生地は、4から10 wt%の脂肪含有量、30から40 wt%の水分含有量および2.5から4.5 ml/gの比体積を有しており、前記ドーナツは、表面から厚さ1 mmの層における脂肪の平均含有量が、表面から厚さ5 mmの層における脂肪の平均含有量の少なくとも2倍であると特徴付けられる。
【発明の詳細な説明】
【0019】
従って、本発明の一側面は、以下の段階を含む調理済み食品の作製方法に関する:
・未調理のまたは不完全に調理した食品の外面に、脂肪を基礎とするコーティングを適用する;および
・該食品を、120℃から300℃の温度を有する過熱(superheated)蒸気に、0.3から15分間、好ましくは1から10分間接触させ、調理済み食品を得る。
【0020】
本出願で使用される「過熱蒸気」という用語は、該蒸気の飽和蒸気圧より低い(静)圧力を有する蒸気を指す。蒸気の飽和蒸気圧は温度により変化する。温度が高い程、飽和蒸気圧は高くなる。本発明による方法に使用される過熱蒸気の圧力は飽和蒸気圧より低いため、該蒸気は乾燥に使用可能である。すなわち、該過熱蒸気流に接触させて、食品から水分を気化させることに使用可能である。
【0021】
本出願で使用される「脂肪を基礎としたコーティング」という用語は、少なくとも20 wt%の脂肪を含む組成物を指す。好ましくは、本発明による脂肪を基礎としたコーティングは、少なくとも50 wt%、およびより好ましくは少なくとも70 wt%の脂肪を含む。脂肪以外に、脂肪を基礎としたコーティングは、水、糖およびタンパク質といった付加的な成分を適切に含んでよい。特に好ましい実施態様よると、脂肪および水を合わせた量は、脂肪を基礎とするコーティングの少なくとも80 wt%、さらに好ましくは少なくとも90 wt%である。脂肪を基礎としたコーティングは、過熱蒸気による処理の間に表面の褐変を促進する成分を適切に含んでよい。そのような成分の例は、還元糖およびタンパク質性成分(アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチド)である。
【0022】
本発明による方法において、様々なコーティング技術を適切に適用してよい。脂肪を基礎としたコーティング材料は、例えば、未調理のまたは不完全に調理した食品に、噴霧(spray)または塗布(brush)することができる。あるいは、脂肪を基礎としたコーティングは、食品を液体の脂肪に浸漬(dipping)または液浸(immersion)することで、適用することができる。加熱された脂肪に短い時間液浸することは、この処理によって食品が完全に調理されないならば、脂肪を基礎としたコーティングの適用のために適切に使用してよい。ラードケーキのようなバッター(batter)から作られる食品の場合、まずバッターの小片を加熱した油に液浸し、生産物の表面を「硬化(setting)」させることで、該バッターの小片が確実に形状を維持できる(self supporting)ようにし、続いてこれらの形状を維持する小片を加熱蒸気に接触させることは都合が良い。
【0023】
本発明による方法は、ドーナツ、揚げ麺、タコス、パン粉で覆われた食品、ラードケーキ(lardy cakes)、シュプリッツクーヘン(Spritzkuchen)、クラッペン、チューロ、ブニュエロおよびクコス(xuxos)を含む、様々な生地またはバッターを基礎とする食品の調理に、有利に使用してよい。
【0024】
特に好ましい実施態様によると、本発明による方法は、小麦粉(flour)を基礎とした生地またはバッターを少なくとも40 wt%で含む未調理のまたは不完全に調理した食品の調理に使用される。未調理のまたは不完全に調理した食品は、生地またはバッター以外に、中に具(filling)を適切に含んでいてよい。そのような具は、通常、未調理のまたは完全に調理した食品の80 wt%を越えず、好ましくは70 wt%を超えない。典型的に、生地、バッターおよび具を合わせると、未調理のまたは不完全に調理した食品の少なくとも90 wt%である。未調理のまたは不完全に調理した食品に含まれる生地またはバッターは、典型的に、少なくとも20 wt%の小麦粉および少なくとも30 wt%の水を含む。典型的に、小麦粉および水を合わせた量は、未調理のまたは不完全に調理した食品の少なくとも70 wt%である。
【0025】
調理済み食品が小麦粉(flour)を基礎とした食品である場合、過熱蒸気に接触させる前に、未調理のまたは不完全に調理した食品の中心部(core)を、デンプンがゼラチン化する温度にさらさないことが好ましい。従って、本発明による方法の非常に好ましい実施態様は、小麦粉を基礎とした未調理のまたは不完全に調理した食品の中心部の小麦粉デンプンが、過熱蒸気に接触させるときに、非ゼラチン化の状態である。
【0026】
脂肪を基礎としたコーティングが未調理の食品に適用され、続いて該脂肪コーティングされた未調理の食品が過熱蒸気に接触させられる場合に、本発明による利益が特に顕著で予想外である。
【0027】
発明者らは、食品と過熱蒸気とを接触させる前に少量の脂肪を適用することにより、実質的に脂肪含有量が低いこと以外は、油で揚げた(deep fried)または油で炒めた(shallow fried)食品に非常に類似した、調理済み食品を作ることができることを発見した。典型的に、脂肪は、未調理のまたは不完全に調理した食品の重量に対して、1%から10%の量で適用される。最も好ましくは、脂肪は、未調理のまたは不完全に調理した食品の重量に対して、2%から8%の量で適用される。
【0028】
本出願で使用される脂肪という用語は、トリグリセリド、ならびに、ジグリセリド、モノグリセリド、モノグリセリドのエステル、ジグリセリドのエステル、リン脂質およびそれらの混合物といった脂肪酸含有乳化剤を含む。好ましくは、本発明による方法で使用される脂肪は、少なくとも60 wt%、もっとも好ましくは少なくとも80 wt%のトリグリセリドを含む。本発明による方法で使用される脂肪は、液体または固体の形態で適用されてよい。好ましくは、脂肪は、液体の形態で、例えば噴霧(spraying)、塗布(brushing)、浸漬(dipping)または液浸(immersion)によって適用される。脂肪は、植物、動物(乳製品を含む)または海産物由来である。最も好ましくは、使用される脂肪は、液体植物油である。典型的に、食品の外表面の少なくとも50%、好ましくは80%および最も好ましくは90%が脂肪でコーティングされる。
【0029】
本発明による方法で使用される過熱蒸気の温度は、幅広い範囲で変更することができる。表面がわずかにきつね色に焼け、内部が十分調理された調理済み食品を得るために、蒸気温度および接触時間の適切な組み合わせが選択されるべきである。一般的に言って、蒸気温度が高いほど、接触時間は短い。好ましくは、本発明による方法で使用される過熱蒸気は、130℃から280℃の範囲、最も好ましくは150℃から250℃の範囲にある温度である。
【0030】
未調理のまたは不完全に調理した食品は、その飽和蒸気圧より実質的に低い圧力を有する過熱蒸気に、有利に接触させられる。特に好ましい実施態様によると、過熱蒸気は、過熱蒸気の水蒸気圧の0.15から0.95倍、好ましくは0.3から0.8倍の圧力を有する。
【0031】
未調理のまたは不完全に調理した食品と過熱蒸気との接触は、未調理のまたは不完全に調理した食品に対して過熱蒸気の安定した気流を通すことで適切に達成される。調理工程が適切な速度で進むことを確実にするため、過熱蒸気を、少なくとも1 m/s、好ましくは少なくとも3 m/sの流速で未調理のまたは不完全に調理した食品に通すことが好ましい。通常、流速は、50 m/sを超えず、好ましくは30 m/sを超えない。
【0032】
過熱蒸気と未調理のまたは不完全に調理した食品とを直接接触させることは、生産物の望ましい特性を達成するために必要である。直接の接触は、特に、適切な表面の褐変および水分低下の達成に関連がある。それゆえ、未調理のまたは不完全に調理した食品が、トレイに置かれてまたはバスケットに入れられて過熱蒸気に接触させられる場合、過熱蒸気が、そのようなトレイまたはバスケットを通過し、食品の表面まで達成できることが必要である。典型的に、本発明による方法では、未調理のまたは不完全に調理した食品の表面の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%が、過熱蒸気に直接さらされている。
【0033】
本発明による方法で得られる調理済み食品は、好ましくは十分調理された食品である。小麦粉を基礎とした食品の場合、調理済み食品中の小麦粉デンプンは、好ましくは、過熱蒸気との接触の間に十分ゼラチン化される。
【0034】
最も好ましくは、本発明による方法で得られる調理済み食品はドーナツであり、該方法は、脂肪を基礎とするコーティングを適用する前に、以下の段階を含む:
・小麦粉、水、ふくらし粉(leavening agent)および任意にその他のパン用成分(bakery ingredients)を混合し、ドーナツ生地を作る;および
・該ドーナツ生地を分けて、成形した生地の小片とする。
【0035】
適したドーナツは、ふくらし粉の使用なしでは、作ることができない。本発明による方法に適切に使用されるふくらし粉の例は、酵母およびベーキングパウダーを含む。最も好ましくは、本発明による方法では酵母を使用する。酵母をふくらし粉として使用する場合、膨らませた後(発酵(proofing)の後)に、特に生地の小片が少なくとも1.5 ml/gの比体積まで膨らんだ後に、成形した生地の小片の外面に脂肪を適用することが好ましい。
【0036】
本発明による方法で得られる調理済み食品は、有利に、14 wt%を超えない、最も好ましくは10 wt%を超えない量まで脂肪含有量が低下した、調理された生地を含む。好ましくは、該調理された生地は、少なくとも3 wt%、最も好ましくは4 wt%の脂肪を含む。
【0037】
本発明による方法で使用されるドーナツ生地は脂肪を含まなくてもよく、または、脂肪を10 wt%までの量で含んでよい。幾つかの脂肪が、調理済みドーナツに、食した際のすばらしい特性をもたらすことがわかっているならば、好ましくはそれらがドーナツ生地に取り込まれる。有利に、ドーナツ生地は、2から8 wt%の脂肪含有量である。
【0038】
本発明による方法で得られる調理済みドーナツに含まれる、調理された生地の水分含有量は、典型的に、25から42 wt%の範囲内であり、好ましくは30から40 wt%の範囲内である。過熱蒸気との接触の間にかなりの量の水分が気化するため、未調理のまたは不完全に調理したドーナツ生地の水分含有量は、実質的に、調理されたドーナツ生地よりも高い。典型的に、形成した生地の小片において、過熱蒸気との接触の間に、生地の水分含有量は少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%減少する。
【0039】
本発明は、油で揚げたドーナツと同程度に高い比体積を有したドーナツを作ることが可能という利点を提供する。好ましくは、調理済みドーナツは、2.2から4.5 ml/g、最も好ましくは2.8から4.0 ml/gの比体積を有する。
【0040】
調理済みドーナツの作製において、形成した生地の小片を過熱蒸気に接触させる間、生地の小片の膨張が起こる。典型的に、形成した生地の小片の体積は、過熱蒸気に接触させる間に、10%から100%増加する。
【0041】
本発明による方法で使用されるドーナツ生地は、小麦粉、水、ふくらし粉および、任意に、砂糖、卵、脂肪等といったその他のパン用成分を含む。典型的に、本発明による方法で使用されるドーナツ生地は、45から65 wt%の小麦粉、25から45 wt%の水および1から6 wt%の脂肪を含む。
【0042】
本発明による都合のよい実施態様では、食品は、コンベヤーを用いてオーブンに移動され、そこで過熱蒸気に接触される。好ましくは、移動の間、食品は、少なくとも10%、好ましくは50%の空隙率を有した、穴の開いたトレイまたはバスケットで運ばれる。上述のバスケットは、成型用の型(moulding device)として、食品、特に生地の小片という形態をとる食品の成型のために適切に使用してよい。
【0043】
発明者らは、過熱蒸気に接触させた後に、少量の脂肪を基礎としたコーティングを食品に適用することもまた、有利となりうることを発見した。過熱蒸気による処理の間、幾つかの脂肪が、食品の表面から除去される可能性がある。ドーナツといった特定の食品では、外見が油っぽい方が望ましい。それゆえ、調理済み生産物が油っぽい外見であることを確実にするために、その他の脂肪を基礎としたコーティングが、過熱蒸気との接触の後に、食品に有利に適用される。
【0044】
本発明の別の側面は、(十分に)調理された生地を含む調理済みドーナツに関係し、前記調理された生地は、脂肪含有量が4から10 wt%、水分含有量が30から40 wt%および比体積が2.5から4.5 ml/gであると特徴付けられ、前記ドーナツは、表面から厚さ1 mmの層における脂肪の平均含有量が、表面から厚さ5 mmの層における脂肪の平均含有量より、少なくとも2倍高いと特徴付けられる。前述の通り、過熱蒸気との接触の前に幾つかの脂肪が成形された生地の小片の外面に適用される場合に、特に良質な低脂肪ドーナツが前述した方法によって得られる。そのように得られたドーナツは、脂肪含有量の低い中身(crumb)と、脂肪含有量の高い薄い表面層が合わさっている。ドーナツの中身の脂肪含有量は、表面の脂肪含有量よりも、ドーナツの食味への関与は小さいと考えられている。従って、本発明によるドーナツは、すばらしい食味を達成するために必要な絶対最小量の脂肪を含むという利点を提供する。
【0045】
本発明によるドーナツは、典型的に、表面から厚さ1 mmの層における脂肪の平均含有量が、少なくとも40 wt%、好ましくは少なくとも50 wt%である。表面から厚さ5 mmの層における脂肪の平均含有量は、典型的に、30 wt%を超えず、より好ましくは25 wt%を超えない。対照的に、通常のドーナツにおける、表面から厚さ5 mmの層は、典型的に、少なくとも40 wt%の脂肪を含んでいる。
【0046】
特に好ましい実施態様によると、表面から厚さ1 mmの層における脂肪の平均含有量は、表面から厚さ5 mmの層における脂肪の平均含有量の少なくとも3倍高い。
【0047】
本発明による調理済みドーナツは、典型的に30から80 gの重量を有する。
【0048】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
リングドーナツ(41グラム)を、以下のレシピを用いて作製した。
【表1】

【0050】
最後に揚げるための別の場所に輸送できるようにするため、そのように作製した未加工のドーナツを-20℃の冷凍庫で保存した。3週間後、冷凍したドーナツを冷凍庫から取り出し、25℃で30分間解凍させた。続いて、ドーナツを、発酵室(proofing cabinet)において、60分間発酵(proof)させた(30℃、80%相対湿度)。
【0051】
そのように得られた、発酵させたドーナツを、4群:A、B、C、Dおよび参照群に分けた。B、C、D群に属するドーナツは、それぞれ、総量が2%、6%および9%のパーム油で両側を噴霧した。参照群に属すドーナツは油で揚げた。
【0052】
発酵および脂肪コーティングの直後、ドーナツを目の細かな金網のトレイにおいた(湿度80%超)。そのトレイを、蒸気の導管(channel)においた。そこでは、過熱蒸気(180℃)が、金網を通過して上向きに噴出する(7.2 m/s)。90秒後、トレイを取り出し、ドーナツを裏返し、再びトレイを蒸気の導管に入れた。さらに90秒後、トレイを、蒸気の導管から取り出し、冷却させた。
【0053】
そのように作製したドーナツを分析し、以下の結果を得た。
【表2】

【0054】
そのように得られたドーナツの脂肪含有量は、参照群に属すドーナツのその値よりも非常に低かった。後者のドーナツは約18 wt%の脂肪含有量であった。
【0055】
過熱蒸気の処理の後に得られた、最終的な揚げた生産物はまた、専門家により評価された。最後の揚げる処理の前にパーム油でコーティングされた生産物(B、CおよびDの生産物)は、コーティングされていないドーナツ(Aの生産物)より優れていることがわかった。特に、前処理されていないドーナツは、わずかに「がさがさの(leathery)」の表面を有すことが観察された。
【0056】
[実施例2]
実施例1を、今回はパーム油の代わりにヒマワリ油を用いて行った。同等の結果が得られた。
【0057】
[実施例3]
実施例1を、今回はパーム油の代わりにナタネ油を用いて行った。同等の結果が得られた。
【0058】
[実施例4]
過熱蒸気の温度を220℃とし、およびドーナツの最後の揚げを、蒸気の導管に50秒 x 2回蒸気を導入することで行うという変更を加えて、実施例1を行った。再び、同等の結果が得られた。
【0059】
[実施例5]
過熱蒸気の温度を160℃とし、およびドーナツの最後の揚げを、蒸気の導管に110秒 x 2回蒸気を導入することで行うという変更を加えて、実施例1を行った。再び、同等の結果が得られた。
【0060】
[実施例6]
最後の揚げの準備のできたリングドーナツを、実施例1に従って作製した。発酵の後、ドーナツを、180℃の温度を有した加熱された油のなかに10秒間浸漬(dipping)して、軽く揚げた(parfried)。続いて、ドーナツを、蒸気の導管における滞留時間を40秒間 x 2回という変更のみを加えて、実施例1と同様な方法で、最後の揚げを行った。そのように得られたドーナツの脂肪含有量は、約11.5 wt%であった。品質の観点から、これらのドーナツは、実施例1のCおよびD群に属すドーナツと同等であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、調理済み食品を作製する方法:
・未調理のまたは不完全に調理した食品の表面に脂肪を基礎とするコーティングを適用する;および
・該脂肪コーティングされた食品を、120℃から300℃の温度を有する過熱蒸気に、0.3から15分間、好ましくは1から10分間接触させ、調理済み食品を得る。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記調理済み食品が、脂肪コーティングされた未調理の食品と過熱蒸気との接触によって作製される方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、前記脂肪が、前記食品の重量に対して、1から10%、好ましくは2から8%の量で適用される方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の方法であって、前記脂肪が、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質およびそれらの組み合わせから成る群から選択される方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の方法であって、前記過熱蒸気が、130℃から280℃の範囲、好ましくは150℃から250℃の範囲の温度を有する方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の方法であって、前記未調理のまたは不完全に調理した食品を、飽和水蒸気圧の0.15倍から0.95倍の圧力を有する過熱蒸気に接触させる方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の方法であって、前記過熱蒸気が、1から50 m/s、好ましくは3から30 m/sの流速で前記食品に通される方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の方法であって、前記未調理のまたは不完全に調理した食品が、小麦粉(flour)を基礎とした生地またはバッター(batter)を少なくとも40 wt%の量で、および任意に具(filling)を80 wt%以下の量で含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記調理済み食品がドーナツであり、脂肪を基礎とするコーティングの適用の前に以下の段階を含む方法:
・小麦粉、水、ふくらし粉(leavening agent)および任意にその他のパン用成分(bakery ingredients)を混合し、ドーナツ生地を作る;および
・該ドーナツ生地を分けて、成形した生地の小片とする。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記成形した生地の小片の中心部(core)における小麦粉デンプンが、過熱蒸気との接触のときに、非ゼラチン化状態である方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10の何れか1項に記載の方法であって、前記調理済みドーナツの調理された生地が、3から14 wt%、好ましくは4から10 wt%の脂肪含有量である方法。
【請求項12】
調理された生地を含む調理済みドーナツであって、該調理された生地が、4から10 wt%の脂肪含有量、30から40 wt%の水分含有量および2.5から4.5 ml/gの比体積であることが特徴付けられ、前記ドーナツが、表面から厚さ1 mmの層における脂肪の平均含有量が、表面から厚さ5 mmの層における脂肪の平均含有量の少なくとも2倍であると特徴付けられる調理済みドーナツ。
【請求項13】
請求項12に記載の調理済みドーナツであって、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の方法によって作製される調理済みドーナツ。

【公開番号】特開2007−236389(P2007−236389A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−60692(P2007−60692)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(505152480)シーエスエム・ネーデルランド・ビー.ブイ. (9)
【Fターム(参考)】