説明

調理用容器

【課題】格段と使い勝手を向上し得るようにする。
【解決手段】調理用容器1は、ガラス製で開口部20を有する容器本体10と、容器本体10よりも軟質な材料により構成され、開口部20を覆うよう容器本体10に当接する蓋本体14とを具え、容器本体10は、板状の底壁22の外周から立設する側壁24の容器縁部25が下方向に湾曲する湾曲部30が複数箇所に形成され、蓋本体14は、該蓋本体14の外周に沿って形成された平坦な周縁部32が容器本体10の容器縁部25に当接するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内部の被調理品を加熱調理する調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器本体に蓋をして容器本体内の被調理品を電子レンジにより加熱し蒸し調理する調理用容器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような調理用容器においては、蓋本体により容器本体をある程度密閉することにより、蓋本体及び容器本体内の水蒸気を用いて被調理品を蒸し調理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3160143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような調理用容器においては、蓋本体により容器本体を完全に密閉してしまうと、被調理品から発生した水蒸気の熱膨張により容器本体及び蓋本体内の内圧が上昇し、加熱調理中に蓋本体が容器本体から外れてしまうおそれがあるため、水蒸気を適度に外部に放出することが望ましい。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、格段と使い勝手を向上し得る調理用容器を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明の調理用容器においては、ガラス製でなり、板状の底壁の外周から立設する側壁により上部に開口を形成し、該側壁の上端面が下方向に湾曲する湾曲部が複数箇所に形成された容器本体と、容器本体よりも軟質な材料により構成され、開口を覆うよう容器本体の側壁の上端面に当接する面が平坦に形成された蓋本体とを設けるようにした。
【0007】
この調理用容器は、蓋本体と容器本体との間に形成された間隙から、適度に水蒸気を外部に放出することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蓋本体と容器本体との間に形成された間隙から、適度に水蒸気を外部に放出することができる。かくして本発明は、使い勝手が良い調理用容器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】調理用容器を前方から見た略線的側面図である。
【図2】調理用容器を右方から見た略線的側面図である。
【図3】容器本体及び中敷の構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図4】蓋本体の構成を示す略線的斜視図である。
【図5】中敷の構成を示す略線的斜視図である。
【図6】容器本体及び中敷の構成(2)を示す略線的斜視図である。
【図7】他の実施の形態による容器本体及び中敷の構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図8】他の実施の形態による中敷の構成を示す略線的図である。
【図9】他の実施の形態による中敷の構成を示す略線的図である。
【図10】他の実施の形態による容器本体及び中敷の構成を示す略線的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る調理用容器の実施の形態を図面を参照して説明する。この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0011】
<実施の形態>
図1乃至図3に示すように、調理用容器1は、上端に角丸長方形の開口部20を有する略直方体の容器本体10と、該容器本体10の内部に敷かれる中敷12と、該容器本体10の開口部20を塞ぐ蓋本体14とにより構成されている。
【0012】
調理用容器1は、中敷12の上面に被調理品が載置され、容器本体10に蓋本体14が被せられた状態で電子レンジで加熱されることにより、被調理品を蒸し調理する用途に使用される。
【0013】
容器本体10は耐熱ガラス製でなり、横方向に長辺を有する角丸長方形の板状の底壁22における前後左右の4辺から所定の厚みを有する側壁24(前側壁24f、後側壁24b、左側壁24l及び右側壁24r)が底壁から立設することにより、上端に水平方向に沿った角丸長方形の開口部20が形成されている。
【0014】
左側壁24l及び右側壁24rの上端面である左縁部25l及び右縁部25rには、それぞれ左方向及び右方向に延びる容器取手26が形成されている。このため使用者は、該容器取手26を把持して容易に容器本体10を持ち運ぶことができる。
【0015】
前側壁24f及び後側壁24bには、該前側壁24f及び後側壁24bの外側面が、下側から上側に向かうに連れて容器本体1の内側へ向かって鱗形状に削り取られた薄肉部28が左右方向に沿って複数個形成されている。
【0016】
このため前側壁24f及び後側壁24bは、下側から上側に向かうに連れて、薄肉部28が形成されている部分の厚みが薄くなっている。
【0017】
前側壁24f及び後側壁24bの上端面である前縁部25f及び後縁部25bには、それぞれの薄肉部28の上部分がやや下方向に沈むように湾曲する湾曲部30が形成されている。以下では、前縁部25f、後縁部25b、左縁部25l及び右縁部25rをまとめて容器縁部25とも呼ぶ。
【0018】
このため容器本体10の前縁部25f及び後縁部25bには、上下方向に波打つような複数の凹凸が左右方向に沿って形成されている。
【0019】
蓋本体14はシリコーン製でなり、ドーム形状に形成され、水蒸気の逃がし孔を設けない構造となっている。
【0020】
図4に示すように、蓋本体14の下端部において該蓋本体14の外周に沿って周回する周縁部32は、平坦に形成され、容器本体10の容器縁部25と当接する。
【0021】
蓋本体14の周縁部32の内側には、容器本体10の開口部20の広さよりもやや小さい広さで、リブ34が周縁部32に沿って立設している。
【0022】
このためリブ34は、該蓋本体14が容器本体10に載置された際に、該容器本体10に対して蓋本体14が横方向にずれて外れてしまうことを防ぐことができる。
【0023】
また、蓋本体14の内壁を流れてきた水滴がリブ34に沿って容器本体10内部に流れ落ちるため、蓋本体14は、水滴を調理用容器1の外部に流出させないようにすることができる。
【0024】
中敷12は可撓性で蓋本体14同様に軟質性樹脂例えばシリコーン製でなり、図3及び図5に示すように、容器本体10の底壁22よりもやや小さい大きさで横方向に長辺を有する板状でなる軟質の板部36と、該板部36から下方向に突設し容器本体の底壁に当接する脚部38とにより構成されている。
【0025】
板部36(図5)の下側の面には、前後方向に所定間隔を空けて脚部38が左右方向に沿うよう立設している。すなわち間隔をあけてほぼ平行に複数の畝状に形成される。
【0026】
板部36の脚部が延びる方向すなわち右端部には、中敷取手40が形成されている。このため使用者は、図6に示すように、中敷取手40を把持して容器本体10から中敷12を長辺方向である右方向に向かって容易に引き出すことができる。
【0027】
これにより中敷12は、被調理品があらかじめ蒸し調理用にためた水分や加熱調理されて発生した肉汁、脂、水分等の流動物に被調理品が直接接触しないようにすることができる。
【0028】
また板部36には、該板部36を上下方向に貫通する貫通孔42が該板部36の全面に亘ってほぼ等間隔に穿設している。
【0029】
このため中敷12は、被調理品から発生した流動物を、貫通孔42を通して容器本体10の底壁22に速やかに排出することができる。
【0030】
また、畝状の脚部38が上下方向に波打つように左右方向に沿って凸凹に形成されていることにより、脚部は底壁に多数の点状に接触する。このため、中敷12は、容器本体10の底壁22に排出し水分を該底壁22の一箇所に集まらないように、凹んだ部分を通して全面に亘ってほぼ均一に分布させることができる。これにより調理用容器1は、水分により、被調理品の一部分だけを加熱することなく、該被調理品を均一に蒸し調理することができる。
【0031】
さらに、蒸し調理が終了した後、使用者が容器本体10の底壁22に溜まった肉汁、脂、水分等の流動物を容器本体10外に捨て、調理用容器1を食卓のテーブルに置き、容器本体10から中敷12を引き出して取り除くことにより、耐熱ガラス製の容器本体10のみをテーブルに置くことができ、食器としての見栄えを向上させることができる。
【0032】
また、脚部38が中敷12の引き出し方向に沿って形成されているため、使用者は脚部38を容器本体10の容器縁部25に引っ掛けることなく、中敷12を容易に引き出すことができる。
【0033】
ところで、仮に容器本体10が中敷12と同じシリコーン製であった場合、ガラスと比べて互いに軟質な素材であり、またシリコーンの表面の摩擦係数はガラスよりも大きいため、中敷12が容器本体10の容器縁部25に引っかかり該容器本体10から引き出しにくくなると考えられる。
【0034】
これに対し本発明においては、容器本体10をガラスで形成したため、使用者は、シリコーン製でなる中敷12を容易に容器本体10から引き出すことができる。
【0035】
以上の構成において、容器本体10の前縁部25f及び後縁部25bの上端面には、左端部から右端部に亘って複数の湾曲部30が形成されている。このため、蓋本体14が容器本体10に載置された際、該容器本体10の前縁部25f及び後縁部25bと、蓋本体14の周縁部32との間には、左右方向に等間隔に間隙が形成される。
【0036】
このように、前縁部25fにおける複数の湾曲部30と、後縁部25bにおける複数の湾曲部30とは対称に形成されているため、前縁部25fに形成された複数の間隙と、後縁部25bに形成された複数の間隙とは、対称に配置されている。
【0037】
これにより、加熱調理が行われる際、容器本体10内部の水蒸気がそれぞれの間隙から放出されるため、水蒸気が容器本体10内部の一箇所に留まったり、一部分からのみ外部に放出されたりすることがない。
【0038】
このように、容器本体10内部のそれぞれの間隙から水蒸気がほぼ均一に外部に放出されるため、調理用容器1は、被調理品の一部分のみを加熱してしまうことなく、全体に亘って均一に加熱調理することができる。
【0039】
また、仮に容器本体10に湾曲部30が形成されておらず、該容器本体10と蓋本体14とが密閉されていた場合、被調理品から発生した水蒸気等の熱膨張により容器本体10及び蓋本体14の内部の内圧が上昇し、加熱調理中に蓋本体14が容器本体10から外れてしまうおそれがある。
【0040】
逆に、湾曲部30が大きく湾曲しており、容器本体10と蓋本体14との間隙が大きすぎる場合、被調理品から蒸発した水分が外部に放出され過ぎてしまい、被調理品が適切に蒸されなくなってしまう。
【0041】
このため調理用容器1においては、被調理品が適切に蒸し調理され、且つ容器本体10及び蓋本体14の内部の内圧が上昇し過ぎない程度となる大きさの間隙を設けるようにした。
【0042】
また容器本体10は製造される際、前側壁24f及び後側壁24bに薄肉部28が形成されるようにガラスがプレス成形された後、プレス成型により形成されたエッジ部を除去するために容器縁部25が炎により炙られる。このとき、薄肉部28の上端部はガラスの厚みが薄くなっているため、沈むように変形し、湾曲部30が波状に形成される。
【0043】
このように容器本体10においては、所定の厚みを有する前側壁24f及び後側壁24bに薄肉部28を設けることによりデザイン性を向上させつつ、該薄肉部28が形成された容器本体10を加熱するだけで湾曲部30を形成することができるため、前縁部25f及び後縁部25bを凹凸に削るような工程が必要なく、作業工程を簡略化することができる。
【0044】
また蓋本体14が、ガラスよりも軟質な材料でなるシリコーンにより形成されているため、容器本体10及び蓋本体14内に充満した水蒸気の熱膨張により、蓋本体14の周縁部32が広がるよう変形する。これにより調理用容器1は、蓋本体14と容器本体10との隙間から水蒸気を外部に放出させやすくすることができる。
【0045】
<他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、前縁部25f及び後縁部25bに湾曲部30を設け、左縁部25l及び右縁部25rには、湾曲部30を設けない場合について述べたが、これに限らず、図7に示す容器本体110のように、左縁部25l及び右縁部25rにも湾曲部30を設けるようにしてもよい。
【0046】
この場合、前縁部25f及び後縁部25bに加え、左縁部25l及び右縁部25rと蓋本体との間隙からも水蒸気が調理用容器の外部に放出されるため、より一層被調理品を均一に加熱調理することができる。
【0047】
また上述した実施の形態においては、側壁24の外側面に薄肉部28を形成する場合について述べたが、これに限らず、側壁24の外側面に薄肉部28を形成せずに平坦にし、前縁部25f及び後縁部25bに湾曲部30を刻設してもよい。
【0048】
さらに上述した実施の形態においては、中敷12の板部36における下側の面に、左右方向に沿うよう脚部38を立設する場合について述べたが、これに限らず、図8に示す中敷212のように、脚部238が前後方向に沿って立設していてもよい。
【0049】
また図9に示す中敷312のように、脚部238が前後方向に沿って立設すると共に、中敷取手340が後端部から後方向に延びるように形成されていてもよい。この場合使用者は、該中敷取手340を把持して容器本体から中敷312を短辺方向である後方向に向かって容易に引き出すことができる。
【0050】
さらに上述した実施の形態においては、底壁22が略長方形でなる容器本体10について述べたが、これに限らず、図10に示すように容器本体410を円形の開口部及び底壁を有する円筒形状とし、中敷412を該容器本体410の形状に対応した円板状としてもよい。また、図示していないが底壁22が楕円板状や正方形状としてもよい。
【0051】
この場合、容器本体410においては、左端部及び右端部の上端には、それぞれ左方向及び右方向に延びる容器取手426が形成され、容器本体410の縁部425のうち、該容器取手426を除いた部分に湾曲部430が形成されている。
【0052】
さらに上述した実施の形態においては、蓋本体14及び中敷12をシリコーンにより形成する場合について述べたが、これに限らず、例えばガラスや耐熱性樹脂(ポリプロピレン等)等により形成してもよい。さらに湾曲部30は、容器縁部25において少なくとも2つ設けられていればよい。
【符号の説明】
【0053】
1,101…調理用容器、10,110,410…容器本体、12,212,412…中敷、14…蓋本体、20…開口部、22…底壁、24…側壁、25…容器縁部、26,426…容器取手、28…薄肉部、30…湾曲部、32…周縁部、34…リブ、36…板部、38…脚部、40,340…中敷取手、42…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製でなり、板状の底壁の外周から立設する側壁により上部に開口を形成し、該側壁の上端面が下方向に湾曲する湾曲部が複数箇所に形成された容器本体と、
前記容器本体よりも軟質な材料により構成され、前記開口を覆うよう前記容器本体の前記側壁の上端面に当接する面が平坦に形成された蓋本体と
を有する調理用容器。
【請求項2】
前記容器本体は、
前記湾曲部が形成された位置における前記側壁の厚みが、前記湾曲部が形成されていない位置における前記側壁の厚みよりも薄い請求項1に記載の調理用容器。
【請求項3】
前記容器本体は、略四角形状の底壁の一辺から立設する第1の側壁と、該一辺に対向する他辺から立設する第2の側壁とを有し、前記第1の側壁の上端面と、前記第2の側壁の上端面とのそれぞれには、ほぼ同一の大きさでなる複数の前記湾曲部が形成され、該第1の側壁の上端面に形成された湾曲部と、該第2側壁の上端面に形成された湾曲部とは、ほぼ対称に配置されている請求項1に記載の調理用容器。
【請求項4】
さらに前記容器本体の前記底壁に敷かれる中敷きを具備し、前記中敷きは軟質性の板部とこの板部から突設し前記底壁に当接する脚部を形成してなる請求項1ないし3のいずれかに記載の調理用容器。
【請求項5】
前記中敷きは前記脚部が複数の畝状に設けられ、前記板部は前記脚部間に貫通孔が形成され、中敷取手が前記脚部が延びる方向の前記板部の端部に設けられている請求項4記載の調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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