説明

調理用液滴飛散防止具

【課題】所望の液滴飛散防止効果を得ながら所望の作業スペースを確保することができ,揚げ料理だけでなく炒め料理にも適した調理用液滴飛散防止具を提供する。
【解決手段】調理鍋10の縁部12に取り付けられる内周部31と,内周部31から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面32とを有し,全体としてすり鉢形状をなす,不燃性または難燃性を有するシート部材30を備えている。シート部材30は内周部31から外周部へ向かって放射状に設けられた複数の折り線に沿って山折りと谷折りとを繰り返すことで蛇腹状に形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,調理用液滴飛散防止具に関する。より詳しくは,鍋やフライパン等の調理鍋を用いて揚げ物や炒め物等を行う際に調理鍋の外に油等の液滴が飛散するのを防止するための調理用液滴飛散防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の調理用液滴飛散防止具として,例えば特許文献1に見られるように,調理鍋の回りに平面視コ字状に設置される屏風状の飛散防止具が知られている。このものは,設置は簡単であるが,調理鍋と飛散防止具との間に大きな隙間が空くため,その隙間から液滴が飛散してしまう。
【0003】
また,例えば特許文献2〜5に見られるように,鍋の縁部に沿って取り付けられる円筒ないし半円筒状の飛散防止具が知られている。これらは,鍋の縁部に沿って取り付けられるから,調理鍋と飛散防止具との間に隙間はできず,したがってその隙間から液滴が飛散してしまうということはない。
しかし,これら特許文献2〜5のものは,基本形状が円筒形であるから,調理のためのスペースを確保しにくい。円筒の上部開口は調理用の作業スペースとしては狭いため,特許文献2〜5のものは,いずれも手前側に作業スペースのための開口(円筒の一部切り欠き)を設けている。しかし,この開口を大きくすると開口からの液滴飛散が生じ,飛散防止具としての役割が低下してしまう。
すなわち,特許文献2〜5のものでは,所望の液滴飛散防止効果を得ながら所望の作業スペースを確保すること(液滴飛散防止効果と作業性の両立を図ること)は困難である。
【0004】
なお,特許文献6には,炎が鍋内の油に引火するのを防止すべく,鍋の縁部から水平方向に延びる鍔を有する天ぷら鍋保護カバーが記載されているが,このカバーは鍔部が水平であるため,液滴飛散防止という点では,その効果は期待できない。
また,特許文献7には,天ぷら等揚げ調理を行う鍋の内面(底面および側面)に敷くようにして取り付ける鍋覆いが記載されている。この鍋覆いは,鍋の内面に敷くようにして取り付けられるから,揚げ調理には適しているかもしれないが,炒め調理には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭51−160664号公報
【特許文献2】特開昭52−99171号公報
【特許文献3】登録実用新案第3010145号公報
【特許文献4】登録実用新案第3018758号公報
【特許文献5】登録実用新案第3008046号公報
【特許文献6】実開昭62−163042号公報
【特許文献7】実公昭52−2689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は,所望の液滴飛散防止効果を得ながら所望の作業スペースを確保すること(液滴飛散防止効果と作業性の両立を図ること)ができ,揚げ料理だけでなく炒め料理にも適した調理用液滴飛散防止具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,本発明の調理用液滴飛散防止具は,調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす,不燃性または難燃性を有するシート部材を備えたことを特徴とする。
この調理用液滴飛散防止具は,その内周部が調理鍋の縁部に取り付けられるので,特許文献1に記載の屏風状飛散防止具に比べ,調理鍋と飛散防止具との間の隙間を無くすことができるか,あるいは著しく小さくすることができる。
したがって,その隙間からの液滴の飛散を防止しまたは著しく抑制することができる。
そして,この発明の調理用液滴飛散防止具は,その全体形状が,前記内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面を有するすり鉢形状となっているので,調理鍋の開口面積に比べて,すり鉢状飛散防止具における傾斜面上方の開口面積の方が大きくなる。したがって,調理のための作業スペースを確保し易くなる。
そのため,この発明の調理用液滴飛散防止具によれば,特許文献2〜5のものとは異なり,必ずしも手前側に作業スペースのための開口(すり鉢形状の一部切り欠き)を設ける必要が無くなるか,設けるにしても,その開口を大きくする必要が無くなる。このため,開口からの液滴飛散を防止し,あるいは著しく低減でき,飛散防止具としての役割を向上させることができる。
以上のように,この発明の調理用液滴飛散防止具によれば,所望の液滴飛散防止効果を得ながら所望の作業スペースを確保すること(液滴飛散防止効果と作業性の両立を図ること)が可能になる。
また,この発明の調理用液滴飛散防止具は,調理鍋の開口縁部に取り付けられるものであるから,揚げ料理だけでなく炒め料理にも好適に利用することができる。
また,上記課題を解決するために,本発明の調理用液滴飛散防止具は,調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす不燃性または難燃性を有する,平面視C状または円環状のシート部材からなり,前記内周部には放射状に切り込みが,平面視C状のシート部材の場合には2本以上,平面視円環状のシート部材の場合には4本以上,設けられることで,調理鍋の縁部に取り付けるための相隣接する舌片が,平面視C状のシート部材の場合には3つ以上,平面視円環状のシート部材の場合には4つ以上形成され,相隣接する舌片同士で前記調理鍋の縁部を内外から挟むことで調理鍋の縁部に取り付けられることを特徴とする。
この調理用液滴飛散防止具によれば,調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす不燃性または難燃性を有するシート部材を備えていることによる上記の作用効果が得られる。
さらに,この発明の調理用液滴飛散防止具は,前記内周部に形成した相隣接する舌片で調理鍋の縁部を内外から挟むことで調理鍋の縁部に取り付けることができるので,他の取り付け具が不要であるという効果が得られる。
また,上記課題を解決するために,本発明の調理用液滴飛散防止具は,調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす,不燃性または難燃性を有するシート部材と,
このシート部材を前記調理鍋の縁部に取り付ける取付部材とを備えたことを特徴とする。
この調理用液滴飛散防止具によれば,調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす不燃性または難燃性を有するシート部材を備えていることによる上記の作用効果が得られる。
さらに,この発明の調理用液滴飛散防止具によれば,取付部材によって,シート部材を確実に調理鍋の縁部に取り付けることが可能となるので,調理鍋を揺動させながら食材を炒める等の調理作業が行いやすくなる。
望ましくは,前記取付部材は,前記調理鍋の縁部を挟むことで調理鍋の縁部に装着される装着部と,この装着部と一体に設けられていて前記調理鍋の縁部の外側または内側に配置され,調理鍋の縁部の外側または内側において前記シート部材の内周部を挟んで把持する把持部とを有している構成とする。
このようにすると,シート部材の内周部を調理鍋の縁部の外側または内側に沿わせた状態で容易にシート部材を調理鍋の縁部に取り付けることができる。
また望ましくは,前記シート部材は前記内周部から外周部へ向かって放射状に設けられた複数の折り線に沿って山折りと谷折りとを繰り返すことで蛇腹状に形成する。
このようにすると,蛇腹によってシート部材が周方向に伸縮可能となるので,異なるサイズの調理鍋に対してシート部材を容易にかつ好適に装着することができるようになる。
また望ましくは,前記傾斜面は,第1傾斜面と,この第1傾斜面に連なる,該第1傾斜面よりも水平面に対する傾斜角が大きな第2傾斜面とを有している構成とする。
このようにすると,第1傾斜面にて作業スペースを確保しつつ第2傾斜面によってより効率的に液滴の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る調理用液滴飛散防止具の一実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図2】本発明に係る調理用液滴飛散防止具の一実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図3】シート部材30の変形例を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図4】シート部材30の変形例を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図5】本発明に係る調理用液滴飛散防止具の他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図6】本発明に係る調理用液滴飛散防止具の他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図7】(a)(b)はそれぞれシート部材の変形例を示す展開図。
【図8】さらなる他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図9】(a)は図8(a)におけるA−A端面図。(b)は取付構造の変形例を示す図で,図8(a)におけるA−A端面図に相当する図,(c)はシート部材30の変形例を示す展開図。
【図10】(a)は他の取付部材40によるシート部材30の取付例を示す斜視図,(b)は取付可能なシート部材30の例を示す展開図,(c)は取付部材40の斜視図。
【図11】(a)は図10(a)におけるA−A端面図,(b)(c)はそれぞれ取付操作の説明図,(d)は取付部材40の変形例を示す図で,図10(a)におけるA−A端面図に相当する図,(e)(f)はそれぞれ取付操作の説明図。
【図12】(a)は取付部材40の変形例を示す図で,図10(a)におけるA−A端面図に相当する図,(b)は図(a)の部分省略左側面図,(c)は取付部材40のさらなる変形例を示す図で,図10(a)におけるA−A端面図に相当する図。
【図13】(a)は取付部材40のさらなる変形例を示す側面図,(b)は同じく斜視図,(c)は取付操作の説明図,(d)は取付状態を示す図で,図10(a)におけるA−A端面図に相当する図。
【図14】(a)は取付部材40のさらなる変形例を示す斜視図,(b)は同じく断面図,(c)は支持棒の側面図,(d)は取付状態を示す図で,図10(a)におけるA−A端面図に相当する図,(e)は変形例を示す図で,図10(a)におけるA−A端面図に相当する図。
【図15】さらなる他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図16】さらなる他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図。
【図17】さらなる他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)は部分省略正面図。
【図18】シート部材を示す図で,(a)は展開図,(b)(c)(d)は折り方の一例の説明図。
【図19】さらなる他の実施の形態を示す部分省略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明に係る調理用液滴飛散防止具の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1,図2はそれぞれ本発明に係る調理用液滴飛散防止具の一実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図である。
この調理用液滴飛散防止具20は,調理鍋10の縁部(開口11の縁部)12に取り付けられる内周部31と,この内周部31から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面32とを有し,全体としてすり鉢形状をなす,不燃性または難燃性を有するシート部材30を備えている。
【0010】
図示の調理鍋10はフライパンであるが,調理用液滴飛散防止具20は天ぷら鍋等の調理鍋にも取り付けることが可能である。
シート部材30は,不燃性または難燃性を有する公知のシート部材(例えばアルミシート,不燃紙,難燃紙,不燃性合成樹脂シート,難燃性合成樹脂シート等)を用いることができる。
【0011】
図1に示すシート部材30は,平面視ないし展開状態でC字状であるが,シート部材30は,図2に示すように,平面視ないし展開状態で円環状のシート部材とすることもできる。図2に示す調理用液滴飛散防止具20には切れ目33があるが,この切れ目33は設けなくてもよい。
【0012】
図1に示す構成とすれば,シート部材30が存在しない空間S1で作業スペースを広くすることができるし,図2に示す構成とすれば,上記空間S1を無くして,その分,液滴の飛散防止効果を向上させることができる。
調理用液滴飛散防止具20はシート部材30のみで構成することもできるし,シート部材30と後述する取付部材40とを備えた構成とすることもできる。
【0013】
図1,図2に示す調理用液滴飛散防止具20は,いずれもシート部材30のみで構成し,その内周部31を耐熱性および剥離性(望ましくは再接着・再剥離性)を有する公知の接着剤または両面粘着テープ31tで調理鍋10の縁部12の外側または内側に貼り付けて取り付ける構成とすることができる。図1,図2は,内周部31を縁部12の外側に貼り付けた場合の状態を示しているが,内周部31は縁部12の内側に貼り付けることもできる。内周部31を縁部12の内側に貼り付けた場合には,傾斜面32に飛んだ液滴を調理鍋10内に戻すことができる。いずれの場合も,貼り付けは内周部31をその全長に亘って貼り付けることもできるし,間欠的に複数箇所貼り付けることもできる。内周部31を縁部12の外側に貼り付ける場合には,全長に亘って貼り付けることにより,接着剤または両面粘着テープ31tによって,内周部31と縁部12との間から液滴が垂れることを防止することができる。接着剤または両面粘着テープ31tは取付部材の一態様としてとらえることもできる。
【0014】
これらの調理用液滴飛散防止具20は,その内周部31が調理鍋10の縁部12に取り付けられるので,特許文献1に記載の屏風状飛散防止具に比べ,調理鍋10と飛散防止具20との間の隙間(調理鍋10の縁部12と調理用液滴飛散防止具20の内周部31との間の隙間)を無くすことができるか,あるいは著しく小さくすることができる。
したがって,その隙間からの液滴の飛散を防止しまたは著しく抑制することができる。
【0015】
そして,この調理用液滴飛散防止具20は,その全体形状が,前記内周部31から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面32を有するすり鉢形状となっているので,調理鍋10の開口11の面積に比べてすり鉢状飛散防止具20の開口21の面積の方が大きくなる。したがって,調理のための作業スペースSが確保し易くなる。
そのため,この調理用液滴飛散防止具20によれば,特許文献2〜5のものとは異なり,必ずしも手前側に作業スペースのための開口(すり鉢形状の一部切り欠き)S1を設ける必要が無くなり,設けるにしても,その開口を大きくする必要が無くなる。このため,開口からの液滴飛散を防止し,あるいは著しく低減でき,飛散防止具としての役割を向上させることができる。
【0016】
以上のように,この調理用液滴飛散防止具20によれば,所望の液滴飛散防止効果を得ながら所望の作業スペースを確保すること(液滴飛散防止効果と作業性の両立を図ること)が可能になる。
また,この調理用液滴飛散防止具20は,調理鍋の開口縁部に取り付けられるものであるから,特許文献7のものとは異なり,揚げ料理だけでなく炒め料理にも好適に利用することができる。
【0017】
図3,図4はそれぞれシート部材30の変形例を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図である。これら図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
図3に示すシート部材30は,中心Oから外周円30eまでの距離(半径)を取付時における奥部R1に比べて手前側R2を次第に短くすることで,作業スペースS1を広く確保したものである。
図4に示すシート部材30は,中心Oから外周円30eまでの距離(半径)を取付時における奥部R1に比べて手前側R2を段部を設けて短くすることで,作業スペースS1を広く確保したものである。
【0018】
図5,図6はそれぞれ本発明に係る調理用液滴飛散防止具の他の実施の形態を示す図で,それぞれ(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図である。これら図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0019】
これらの実施の形態が上述した実施の形態と異なる点は,シート部材30の内周部31に,切り込み34を放射状に複数設けることで,調理鍋10の縁部12に取り付けるための複数の舌片35(35’)を形成し,相隣接する舌片35,35’同士で調理鍋10の縁部12を内外から挟む(舌片35,35’の弾性による復元力を利用して挟む)ことで調理鍋10の縁部12に取り付けるようにした点にあり,その他の点に変わりはない。
【0020】
図5,図6に示す例ではそれぞれ,切り込み34を多数設けたが,図7(a)に示すように,平面視C状のシート部材の場合には切り込み34を少なくとも2本設ければ,相隣接する舌片35,35’同士で調理鍋10の縁部12を内外から挟んで縁部12に取り付けることができ,図7(b)に示すように平面視円環状のシート部材の場合には,切り込み34を少なくとも4本設ければ,相隣接する舌片35,35’同士で調理鍋10の縁部12を内外から挟んで縁部12に取り付けることができる。
【0021】
このような調理用液滴飛散防止具によれば,内周部31に形成した複数の相隣接する舌片35,35’で調理鍋10の縁部12を内外から挟むことで調理鍋10の縁部12に取り付けることができるから,前述した作用効果に加え,他に取り付け手段が不要であるという効果が得られる。
【0022】
図8は他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図である。図9(a)は図8(a)におけるA−A端面図である。これらの図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は,前述したシート部材30と,このシート部材30を調理鍋10の縁部12に取り付ける取付部材40とを備えた点にある。
取付部材40は,公知のクリップ(例えば板バネからなる挟み部41とこの挟み部41を操作するための摘み部42とを有する金属製のクリップ)で構成することができる。
この調理用液滴飛散防止具によれば,シート部材30を備えることによる前述した効果に加え,取付部材40によってシート部材30を確実に調理鍋10の縁部12に取り付けることが可能となるので,調理鍋10を揺動させながら食材を炒める等の調理作業が行いやすくなるという効果が得られる。
【0023】
図8は,調理鍋10の縁部12の外側にシート部材30の内周部31が配置された取付状態を示しているが,シート部材30の内周部31が縁部12の内側に位置するように取り付けることもできる。他の実施の形態においても同様である(ただし図5〜図7,図15の例は除く)。
図8に示すシート部材30には,その内周部31を取付部材40で挟みやすくするための開口36を設けてあるが,この開口36は必ずしも設ける必要はなく,図9(b)に示すように,内周部31をその全周に亘って調理鍋10の縁部12に被せるように折り曲げ,その折り曲げ部を縁部12とともに取付部材40で挟むことによって,シート部材30を調理鍋10の縁部12に取り付けることもできる。
また,図9(c)に示すように,シート部材30における内周部31の適所に,取付部材40で挟むための突片37を設け,この突片37を図9(b)に示すように,調理鍋10の縁部12に掛けるように折り曲げ,その折り曲げ部を縁部12とともに取付部材40で挟むことによって,シート部材30を調理鍋10の縁部12に取り付けることもできる。
【0024】
図10(a)は他の取付部材40によるシート部材30の取付例を示す斜視図,図10(b)は取付可能なシート部材30の例を示す展開図,(c)は取付部材40の斜視図である。図11(a)は図10(a)におけるA−A端面図である。これらの図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この取付部材40は,調理鍋10の縁部12を挟むことで調理鍋10の縁部12に装着される装着部43と,この装着部43と一体に設けられていて調理鍋10の縁部12の外側または内側に配置され,調理鍋10の縁部12の外側または内側においてシート部材30の内周部31を挟んで把持する把持部44とを有している。
このような取付部材40を用いると,シート部材30の内周部31を調理鍋10の縁部12の外側または内側に沿わせた状態で容易にシート部材30を調理鍋10の縁部12に取り付けることができる。
【0025】
図10(c),図11(a)に示すように,取付部材40は側面視S字形で点対称形状のパイプ状のバネ部材で構成することができる。取付部材40は耐熱性(不燃性,難燃性)およびバネ性を有する合成樹脂で構成することもできるし,金属バネで構成することもできる。図10(c)は,合成樹脂製のものを示している。金属バネで構成した場合,図示のものよりも肉薄になる。図示の取付部材40は調理鍋10の縁部12の周方向に関して短手のものを示しているが,取付部材40を柔軟性のある合成樹脂で構成すれば,シート部材30の内周部31を全長に亘って支持する長手の(チューブ状の)取付部材40とすることもできる。後述する合成樹脂製の取付部材40についても同様である。
【0026】
取付部材40は,そのバネ性により,両端部45が,自由状態において,当該取付部材40の外周面40sに圧接される。
したがって,図11(a)に示すように,取付部材40は,その一端45を開いて外周面40sとの間に調理鍋10の縁部12を挟むことで縁部12に取り付けることができ,他端45と外周面40sとの間に,図11(b)に矢印で示すように内周部31を圧入する,または,図11(c)で示すように他端45を開いて外周面40sとの間に内周部31を挟むことで,シート部材30を取り付けることができる。
【0027】
図11(d)は取付部材40の変形例を示す図である。この取付部材40が図11(a)に示す取付部材40と異なる点は,両端45を開き方向へ湾曲させた点にあり,その他の点に変わりはない。この取付部材40は自由状態において両端部分の腹部45bが外周面40sに当接する。
このような取付部材40によると,外周面40sと端部45との間に内周部31を圧入し易くなる。また,端部45を摘みやすくなるので,縁部12への装着作業や内周部31の挟み込みが容易になる。
【0028】
図11(a)〜(e)は,調理鍋10の縁部12の外側においてシート部材30の内周部31を挟んでいる状態を示しているが,図11(f)に示すように,縁部12の内側においてシート部材30の内周部31を挟むことにより,内周部31を縁部12の内側に位置させることもできる。
また,図12に示すように,取付部材40は,その把持部44が,縁部12の上方に位置する形状(略8の字形状の両端が開く形状)とし,縁部12の延長上で内周部31を把持する構成とすることもできる。この場合,図12(b)に示すように,シート部材30の内周部31には,取付部材40を逃がす凹所(切り欠き)38を設けることが望ましい。このように構成すると,調理鍋10の縁部12とシート部材30の内周部31とをより近接させることができる。
【0029】
図12(a)に示す取付部材40は金属バネ性であり,パイプ状金属バネを背中合わせに溶接することで構成することができる。図12(c)に示す取付部材40は合成樹脂製である。
なお,装着部43のみからなる円筒状(断面C状)の取付部材を構成すれば,その取付部材は,図8に示した取付部材40の代わりに用いることもできる。装着部43のみからなる円筒状(断面C状)の取付部材もチューブ状に構成することで,内周部31を全長に亘って挟むことができるようになる。
【0030】
図13に示すように,取付部材40の把持部44には,レバー(摘み棒)46を一体に設けることができる。このような摘み棒46を設けると,摘み棒46を摘んで図(c)に示すように把持部44を開きやすくなるので,シート部材30の内周部31を取り付けやすくなる。図(d)に示すように,シート部材30を取り付けた後は,摘み棒46がシート部材30を外方から支持するので,調理鍋10に対するシート部材30の取付状態が安定する。
【0031】
図14(a)(b)に示すように,取付部材40には,支持穴47,47を設け,この支持穴47,47に図(c)に示すような支持棒48を差し込み,この支持棒48で図(d)に示すようにシート部材30の外周を支持する構成とすることもできる。支持棒48は,調理鍋10の縁部12に沿って複数本(望ましくは3本以上)設ける。支持棒48には大径部からなるストッパ48sを設ける。
このように構成すると,シート部材30の内周部31は縁部12に沿った状態で縁部12に対して,支持棒48を含む取付部材40で支持されるようにして取り付けられる(配置される)ため,内周部31を取付部材40で挟み込む必要が無くなる。したがって,調理鍋10の縁部12に対してシート部材30を容易に取り付けることができる。
取付部材40における支持穴47を設ける部位は円筒状に限らず適宜の形状を用いることができ,例えば図(e)に示すように角筒状とすることもできる。
【0032】
図15,図16はそれぞれさらなる他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)はシート部材の展開図である。これらの図において,上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は,シート部材30を,内周部31から放射状に設けた複数の折り線39に沿って山折りと谷折りとを繰り返すことで蛇腹状に形成した点にある。
このように構成すると,蛇腹によってシート部材31が周方向に伸縮可能となるので,異なるサイズの調理鍋10に対してシート部材30を容易にかつ好適に装着することができるようになる。
【0033】
シート部材30の調理鍋10への取付手段は,前述した適宜の取付手段を採用することができる。図15に示す取付手段は,図5に示した手段と同様,シート部材30の内周部31に,切り込み34を放射状に複数設けることで,調理鍋10の縁部12に取り付けるための複数の舌片35(35’)を形成し,相隣接する舌片35,35’同士で調理鍋10の縁部12を内外から挟むことで調理鍋10の縁部12に取り付けるようにした手段であり,図16に示す取付手段は図10に示した取付部材40を用いた手段であるが,前述した他の適宜の取付手段を採用することができる。
【0034】
図17はさらなる他の実施の形態を示す図で,(a)は調理鍋へ取り付けた状態を示す斜視図,(b)は部分省略正面図である。図18はシート部材を示す図で,(a)は展開図,(b)(c)(d)は折り方の一例の説明図である。これらの図において,上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は,シート部材30の傾斜面32が,第1傾斜面321と,この第1傾斜面321に連なる,該第1傾斜面321よりも水平面Hに対する傾斜角θ2が大きな第2傾斜面322とを有している点にある。第1傾斜面の水平面Hに対する傾斜角はθ1であり,θ2>θ1である。
このようにすると,第1傾斜面321にて作業スペースを確保しつつ第2傾斜面322によってより効率的に液滴の飛散を防止することができる。
【0035】
このような形状のシート部材30は,例えば,内周部31から放射状に設けた複数の折り線39に沿って山折りと谷折りとを繰り返すことで蛇腹状に形成した後,あるいは折り線39に沿って山折りと谷折りとを繰り返す過程で,図18(b)(c)(d)に示すように,山折り部となる折り線391と,その両側に位置する谷部となる折り線392とを周方向に結ぶ一対の第1折り線393,393を山折りすることによって得られる頂部394に対し,第1折り線393より上部において,山折り部となる折り線391と,その両側に位置する谷部となる折り線392とを周方向に結ぶ一対の第2折り線395,395を谷折りすることによって得られる逆さ頂部396を外側に位置させるように折り込むことによって形成することができる。
【0036】
なお,図19に示すように,上記第1折り線393と第2折り線395との内外関係を逆にすることで,第1傾斜面321’に対する第2傾斜面322’の曲げ方向を逆にし,θ2<θ1とすることもできる。
このようにすると,第2傾斜面322’にて作業スペースを確保しつつ第1傾斜面321’および第2傾斜面322’によって効率的に液滴の飛散を防止することができる。
【0037】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。また,上記の実施の形態や構成例は適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 調理鍋
12 縁部
30 シート部材
31 内周部
32 傾斜面
34 切り込み
35 舌片
40 取付部材
43 装着部
44 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす,不燃性または難燃性を有するシート部材を備えたことを特徴とする調理用液滴飛散防止具。
【請求項2】
調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす不燃性または難燃性を有する,平面視C状または円環状のシート部材からなり,前記内周部には放射状に切り込みが,平面視C状のシート部材の場合には2本以上,平面視円環状のシート部材の場合には4本以上設けられることで,調理鍋の縁部に取り付けるための舌片が,平面視C状のシート部材の場合には3つ以上,平面視円環状のシート部材の場合には4つ以上形成され,相隣接する舌片同士で前記調理鍋の縁部を内外から挟むことで調理鍋の縁部に取り付けられることを特徴とする調理用液滴飛散防止具。
【請求項3】
調理鍋の縁部に取り付けられる内周部と,この内周部から外方かつ斜め上方に向かって延びる傾斜面とを有し,全体としてすり鉢形状をなす,不燃性または難燃性を有するシート部材と,
このシート部材を前記調理鍋の縁部に取り付ける取付部材とを備えたことを特徴とする調理用液滴飛散防止具。
【請求項4】
前記取付部材は,前記調理鍋の縁部を挟むことで調理鍋の縁部に装着される装着部と,この装着部と一体に設けられていて前記調理鍋の縁部の外側または内側に配置され,調理鍋の縁部の外側または内側において前記シート部材の内周部を挟んで把持する把持部とを有していることを特徴とする請求項3記載の調理用液滴飛散防止具。
【請求項5】
前記シート部材は前記内周部から外周部へ向かって放射状に設けられた複数の折り線に沿って山折りと谷折りとを繰り返すことで蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の調理用液滴飛散防止具。
【請求項6】
前記傾斜面は,第1傾斜面と,この第1傾斜面に連なる,該第1傾斜面よりも水平面に対する傾斜角が大きな第2傾斜面とを有していることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の調理用液滴飛散防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−224090(P2011−224090A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95348(P2010−95348)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(309037170)
【Fターム(参考)】