説明

調理装置

【課題】呼気中の特定ガス成分の情報に基づき、健康によい調理条件を決定する調理装置を提供する。
【解決手段】調理装置の制御部12は、パーソナル調理の要求が入力されユーザ名が入力されると(S100及びS102にてYES)、ユーザ嗜好データベースからこのユーザの官能試験判定を読出すステップ(S104)と、呼気測定装置から呼気アセトン濃度データDENを受信すると(S108にてYES)、データDENに基づいて食事制限判定を決定するステップ(S116)と、官能試験判定及び食事制限判定に基づいて過熱水蒸気による調理温度を決定するステップ(S118)とを含むプログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食材を調理する技術に関し、特に、個人の健康と、さらには個人の味覚に配慮して食材を調理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
100℃以上の高温状態にした過熱水蒸気を用いて食材を調理する装置が知られている。この過熱水蒸気による調理においては、過熱水蒸気が熱を効率よく伝えるので食材を焼く能力が高く、かつ、食材中の油脂分及び塩分を脱離させることができる(たとえば、特許文献1参照)。近年においては、食材から摂取する油脂分及び塩分の摂取量を減少させて生活習慣病を予防して、成人病の発症に繋がる可能性を低くすることが求められている。大勢の人々が、食材の旨みを落とさずに、食材中の油脂分又は塩分を減少させることを求めている。このような要求に対して、食材の旨みをできるだけ損なうことなく調理可能な、上述した過熱水蒸気を用いた調理装置は好適である。
【0003】
また、人の肥満度合い(食材中の油脂分又は塩分を減少させる必要が高い度合いといえる。)は、たとえば、人の呼気に含まれるアセトンの濃度によって知ることが可能である。人の呼吸動作においては、主として、吸気中の酸素が二酸化炭素と交換されるとともに吸気中の水蒸気が増加されて、呼気として体外に排出される。この呼気に含まれるアセトンの濃度は、人の代謝の状態を表す指標であって、脂肪の減少(体内での脂肪の消費)が大きいほど(肥満度合いが低いほど)、高くなる傾向がある。すなわち、肥満度合いと呼気中のアセトン濃度との間には負の相関関係が成立する。この関係を用いると、個人で異なる肥満度合い(この度合いは、たとえば、BMI(Body Mass Index)指数、メタボリック係数等で表すことができる。)を呼気から推定することが可能である。
【特許文献1】特許第3856788号公報(特開2005−185157号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、肥満度合いが高い人が自分で食材を調理するにしても、調理の度に油脂分の脱離量又は塩分の脱離量を設定することは現実的ではない。さらに、味覚については個人による差があり、食材から同じ量の油脂分又は塩分を脱離させても、脱離により食材の旨みを感じなくなる人も存在し、脱離しても旨みを感じる人も存在する。すなわち、一般的に、油脂分又は塩分を食材から脱離させてしまうと旨みを感じにくくなるが、この感じ方に個人差がある。このため、肥満度合いに基づいて一律に油脂分又は塩分の脱離量を設定することができたとしても、ある人は旨みが不足して(コクが不足ともいえる。)美味しくないと感じ、別の人はコクが強くて(旨みが過重ともいえる。)美味しくないと感じてしまう。
【0005】
したがって、個人の肥満度合いと嗜好とに応じ、適切な調理をすることが可能な調理装置が求められている。
【0006】
それゆえに本発明の目的は、個人の代謝の状態に基づいて、その個人の健康に好ましい調理条件を自動的に決定し食材を調理できる調理装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、個人個人で異なる味に対する嗜好(味覚)と、代謝の状態とに基づいて、その個人の健康状態の維持又は改善を有効に行なうことができる調理条件を自動的に決定し食材を調理できる調理装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、個人個人で異なる味に対する嗜好(味覚)と、肥満度とに基づいて、その個人の健康状態の維持又は改善を有効に行なうことができる調理条件を自動的に決定し食材を調理できる調理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る調理装置は、ユーザの呼気に含まれる成分であって、代謝異常の指標となる特定ガス成分についての情報を取得するための成分情報取得手段と、特定ガス成分についての情報に基づいて、食材の調理条件を決定するための調理条件決定手段と、調理条件決定手段により決定された調理条件にしたがって食材を調理するための調理手段とを含む。
【0010】
成分情報取得手段は、ユーザの呼気に含まれる成分であって、代謝異常の指標となる特定ガス成分についての情報を取得する。調理条件決定手段は、この情報に基づいて食材の調理条件を決定する。この調理条件にしたがって食材が調理される。
【0011】
特定ガス成分についての情報は、ユーザの代謝が正常か異常かを反映している。その情報にしたがって食材の調理条件を設定するので、ユーザの代謝の状態にあわせ、ユーザの健康にとって好ましい調理を行なうことが可能になる。その結果、個人の代謝の状態に基づいて、その個人の健康に好ましい調理条件を自動的に決定し食材を調理できる調理装置を提供することができる。
【0012】
好ましくは、調理装置は、ユーザの味覚に関する嗜好情報を取得するための味覚情報取得手段をさらに含み、調理条件決定手段は、嗜好情報及び特定ガス成分についての情報に基づいて、食材の調理条件を決定するための決定手段を含む。
【0013】
味覚情報取得手段が、ユーザの味覚に関する嗜好情報を取得し、決定手段は、この嗜好情報と成分情報取得手段により取得された成分情報とにもとづいて調理条件を決定する。成分情報だけでなく、嗜好情報まで考慮して調理条件を決定することにより、ユーザの好みに合わせて、ユーザの健康に好ましい調理条件が決定できる。その結果、個人個人で異なる味に対する嗜好(味覚)と、代謝の状態とに基づいて、その個人の健康状態の維持又は改善を有効に行なうことができる調理条件を決定し食材を調理できる調理装置を提供することができる。
【0014】
より好ましくは、味覚情報取得手段は、ユーザが所定の調理条件で調理された食材を食べたときに感じた旨みの程度についての情報をユーザごとに記憶するための記憶手段と、ユーザを特定する入力を受けるためのユーザ入力手段と、ユーザ入力手段により入力されたユーザについての旨みの程度についての情報を記憶手段から読出すための読出手段とを含む。
【0015】
ユーザ入力手段がユーザを特定する入力を受けると、読出手段がそのユーザに該当する、旨み情報を記憶手段から読出す。決定手段は、この情報と成分情報取得手段により取得された成分情報とにもとづいて調理条件を決定する。成分情報だけでなく、ユーザが感ずる旨みの程度を示す情報まで考慮して調理条件を決定することにより、ユーザの旨みの感じ方に合わせて、ユーザの健康に好ましい調理条件が決定できる。その結果、個人個人で異なる旨みに対する感じ方と、代謝の状態とに基づいて、その個人の健康状態の維持又は改善を有効に行なうことができる調理条件を決定し食材を調理できる調理装置を提供することができる。
【0016】
さらに好ましくは、調理条件は調理の時間及び調理温度に関する条件を含み、調理手段は、調理条件にしたがった調理時間及び調理温度で食材を加熱するための加熱手段を含む。
【0017】
決定手段により決定される調理の時間及び調理温度で加熱手段が食材を加熱することにより、食材中の代謝に影響を与える成分、例えば調理により除去される食塩又は油脂成分の量を調整できる。その結果、ユーザの代謝の状態にあわせた食塩量又は油脂成分量が残るように食材を調理でき、ユーザの健康を増進又は維持することが容易に行なえる。
【0018】
加熱手段は、調理条件にしたがった調理時間及び温度条件で過熱水蒸気に食材が暴露されるように、過熱水蒸気を発生するための手段を含んでもよい。
【0019】
決定手段により決定される調理の時間及び調理温度で過熱水蒸気に食材を暴露することにより、過熱水蒸気が食材に効率よく熱を伝えるので食材を焼く能力が高く、かつ、食材中の油脂分及び塩分を効率的に脱離させることができる。その結果、ユーザの代謝の状態にあわせた食塩量又は油脂成分量が残るように効率的に食材を調理でき、ユーザの健康を増進又は維持することが容易に行なえる。
【0020】
好ましくは、特定ガス成分は、ユーザの肥満の度合いの指標となるガス成分である。
【0021】
ユーザの肥満の度合いの指標となるガス成分に関する情報をユーザの呼気から取得し、その情報にあわせて調理条件を設定できる。その結果、ユーザの肥満の度合いが高いときには肥満の度合いが低くなるような調理条件を設定でき、ユーザの健康を好ましい状態にすることができる可能性が高くなる。
【0022】
より好ましくは、調理装置は、ガス成分の濃度が所定値以上のときには、調理条件決定手段により決定された調理条件に対する補正をユーザに行なわせるための補正手段をさらに含む。
【0023】
肥満の程度が低いときにはガス成分の濃度が所定値以下となり、調理条件を多少修正してもユーザの健康に影響を与えるおそれは少ない。また、ユーザの好みにあわせて調理条件を設定することができればユーザにとってはより好ましい。
【0024】
さらに好ましくは、決定するための手段は、味覚情報取得手段により得られた情報に基づき、ユーザの感じた旨みの程度が低いほど、加熱手段により食材に加えられる総熱量が少なくなるように調理条件を決定する。
【0025】
ユーザの感じた旨みの程度が低い場合には、なるべく食材の旨みを保存する必要がある。そのために、加熱手段により食材に加えられる総熱量を少なくする。その結果、食材に残される旨みが多くなり、ユーザの好みに合った料理となる。逆にユーザの感じた旨みの程度が高い場合には、食材から旨み成分が多く除去されてもユーザの好みにあわない味となるおそれは少ない。そのため、食材に残される、ユーザの代謝に悪影響を及ぼすような成分の量を少なくすることができる。
【0026】
成分情報取得手段は、ユーザの呼気中の、特定ガス成分についての濃度を測定するための呼気センサを含むようにしてもよく、決定するための手段は、呼気センサにより測定された特定ガス成分の濃度が低いほど、加熱手段により食材に加えられる総熱量が多くなるよう調理条件を決定するようにしてもよい。
【0027】
ユーザの呼気中の特定ガス成分の濃度が低い場合には、ユーザの代謝に異常があると考えられる。そのため、食材の旨みを犠牲にしても、ユーザの代謝に悪影響を及ぼすような成分で食材に残る量を少なくすることがユーザの健康には好ましい。加熱手段により食材に加えられる総熱量を多くすることによって、そうした成分を多く除去することができる。
【0028】
好ましくは、成分情報取得手段は、成分についての情報を、調理装置とは別体の呼気測定装置から通信により取得するための手段を含む。
【0029】
調理装置とは別体の呼気測定装置で呼気中の特定ガス成分の量を測定し、調理装置に送信する。呼気測定装置はコンパクトなものにすることができ、調理装置に呼気測定装置を組込む場合と比較して使いやすい。その結果、ユーザが調理装置を使用する場合に使いにくいということがなく、容易にユーザの好みに合った条件で、かつユーザの健康にもよい条件で調理を行なうことができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの機能及び名称も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0031】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る呼気対応型の調理装置について、図1〜図7を参照して説明する。本実施の形態に係る調理装置10は、個人の味覚と肥満度合いとに基づいて過熱水蒸気による調理温度を決定する。
【0032】
図1に本実施の形態に係る調理装置10の全体斜視図を、図2にこの調理装置10とは別体の呼気測定装置30の全体斜視図を、それぞれ示す。
【0033】
図1に示すように、この調理装置10は、過熱水蒸気で食材を調理する調理器具であって、ほぼ直方体の形状を有する中空の筐体10Aと、その筐体の前面に設けられた前扉10Bと、前扉10Bに設けられた庫内透過窓10C及び取手ハンドル10Dとを含む。さらに、筐体10Aの前面には、表示部16及び操作部20を備える。食材は、取手ハンドル10Dをユーザが持って前扉10Bを手前に引いて前扉10Bが開かれた状態で庫内(筐体10A内)に装填する。
【0034】
さらに、この調理装置10は、図示しない過熱水蒸気生成部等を備える。過熱水蒸気生成部は、たとえば、筐体10Aの内部と外部循環路を介して連結されている。この外部循環路を通る気体は、過熱水蒸気生成部からの水蒸気を吸引し、筐体10Aの天井部に設置したサブキャビティに導かれる。サブキャビティは、加熱ヒータを内蔵しており、加熱ヒータによりさらに調理条件により設定される温度まで加熱された気体は、サブキャビティの底面に二次元的または三次元的に分散配置された複数の噴気孔から筐体10Aの内部に下向きに噴出され、支持具上の食材に供給される。食材は、この過熱水蒸気に調理条件により設定される加熱時間だけ暴露されることにより調理される。
【0035】
図2に示す呼気測定装置30は、調理装置10とは別体の装置であって、呼気アセトン濃度を測定して調理装置10に送信する。図2に示すように、この呼気測定装置30は、本体30Aの上面に設けられた表示部38及び操作部40と、呼気中のアセトン濃度を測定するセンサ部34と、呼気を吹入れる吹込口30Bとを含む。呼気は、吹込口30Bから吹込まれてセンサ部34を通って呼気測定装置30の外部に排出される。
【0036】
図3は、本実施の形態に係る調理装置10及び呼気測定装置30の制御ブロック図である。
【0037】
調理装置10は、この調理装置10を制御する制御部12と、制御部12により制御されて呼気測定装置30との間で近距離無線通信(たとえば、赤外線通信)を行なう通信部14と、制御部12により制御されてこの調理装置10の操作者に対するメッセージ等を表示する表示部16と、各種データベースを記憶する記憶部18と、この調理装置10の操作者が要求を入力する操作部20と、過熱水蒸気調理設定部22とを含む。制御部12においては後述するプログラムが実行される。なお、図3には、これらの他にも含まれる制御機構(たとえば、過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成部を制御する制御機構等)については記載していない。また、制御ブロック以外のハードウェア構成は、たとえば、特許文献1に記載のハードウェアと同一又は類似のものでよい。
【0038】
記憶部18には、味覚についての個人の感覚(ユーザの官能試験判定)を記憶したユーザ嗜好データベース18Aと、官能試験判定と個人の呼気により決定された食事制限判定とに基づいて過熱水蒸気による調理温度を決定するためのテーブルを記憶した調理温度設定データベース18Bとが記憶される。
【0039】
通信部14は、後述する呼気測定装置30の通信部36と赤外線通信が可能な通信ユニットである。表示部16は、たとえば、この調理装置10の筐体10Aの前面に設けられたLCD(Liquid Crystal Display)ユニットである。操作部20は、表示部16近傍に設けられた押しボタン及びジョグダイヤル(回転セレクター)等で構成される操作ユニットである。
【0040】
制御部12により実行されるプログラムにより、この調理装置10においては、パーソナル調理が要求されると、官能試験判定と呼気測定装置30から受信したアセトン濃度とに基づいて過熱水蒸気による調理温度が決定される。
【0041】
図3に示すように、呼気測定装置30は、調理装置10とは別体に設けられ、呼気のアセトン濃度を測定して調理装置10へ無線で送信する装置である。呼気測定装置30は、この呼気測定装置30を制御する制御部32と、制御部32により制御されて呼気中のアセトン濃度が測定可能なセンサ部34と、制御部32により制御されて調理装置10との間で赤外線通信を行なう通信部36と、制御部12により制御されてこの呼気測定装置30の操作者に対するメッセージ等を表示する表示部38と、この呼気測定装置30の操作者が要求を入力する操作部40とを含む。制御部32においては、後述するプログラムが実行される。
【0042】
センサ部34は、たとえば、カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nano Tube)などのカーボンナノ構造体の表面を、特定のガス分子を吸着する物質(金属錯体、官能基、炭化水素基、又は酵素等)で修飾したものからなるセンシング素子を用いる。特定のガス成分がこの錯体に吸着したときの、センシング素子の両端の電気抵抗の変化により、呼気中の特定ガス成分の濃度を測定する。アセトンを検出するためには、カーボンナノ構造体表面を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン5で修飾する。2,4-ジニトロフェニルヒドラジン−硫酸試薬をCNTに塗布することで、アセトンのようなケトン類と反応することが知られている。また、金属フタロシアニン類の一種であるマンガンフタロシアニン(以下MnPc)でCNTの表面を修飾することで、酸素、二酸化炭素、一酸化窒素、窒素の混合した環境から、選択的にアセトンを検出することが可能である。通常、呼気中のアセトン濃度は低く、検出は容易ではないが、上記したようにカーボンナノ構造体を表面修飾し、さらにこのカーボンナノ構造体表面をある流速以上の流速(例えば1〜5000mL/min、より好ましくは10〜1000mL/min)で呼気が通過するように構成することにより、呼気中のアセトン濃度を比較的短時間で精度よく計測することができる。
【0043】
通信部36は、調理装置10の通信部14と赤外線通信が可能な通信ユニットである。表示部38は、たとえば、この呼気測定装置30の本体30Aの上面に設けられたLCDユニットである。操作部40は、表示部38の近傍に設けられた押しボタン等で構成される操作ユニットである。
【0044】
制御部32により実行されるプログラムにより、この呼気測定装置30のセンサ部34で測定されたアセトン濃度DENは、通信部36を介して調理装置10へ送信される。
【0045】
図4にユーザ嗜好データベース18Aの記憶内容を示す。ユーザ嗜好データベース18Aは、ユーザ名記憶フィールドと、そのユーザ名記憶フィールドに対応してユーザ毎の官能試験判定結果が記憶される官能試験判定記憶フィールドとから構成される。官能試験判定とは、基準調理条件で調理した食材を予めユーザが食べたときに感じた味覚に基づいて判定される、味覚についてのユーザ毎の指標である。
【0046】
たとえば、官能試験判定を5段階で判定するとして、その基準調理条件で調理した食材を食べた感想が、「旨みが不足していると感じた」である場合にはA(1)、「旨みがやや不足していると感じた」である場合にはA(2)、「旨みは普通と感じた」である場合にはA(3)、「コクをやや強く感じた」である場合にはA(4)、「コクが強いと感じた」である場合にはA(5)の判定が、操作部20から入力されて、ユーザ嗜好データベース18Aに記憶される。すなわちユーザ嗜好データベース18Aには、ユーザが基準調理条件で調理された食材を食べたときに感じた旨みの程度についての情報が記憶される。
【0047】
官能試験判定A(1)の人のほうが官能試験判定A(5)の人よりも、油脂分又は塩分に起因する旨み又はコクをより鈍感に感じることを示すことにもなる。これが、個人の間に発生する味に対する嗜好(味覚)の差を相対的に表すことになる。たとえば、図4に示すように、ユーザ名が「USER002」のユーザは、官能試験判定がA(2)であることが記憶されている。
【0048】
図5に、調理温度設定データベース18Bの記憶内容を示す。調理温度設定データベース18Bは、2次元のテーブルであって、データA(官能試験)とデータB(呼気)とにより過熱水蒸気による調理温度を算出できるように、5種類のデータA及び3種類のデータBに対応する調理温度を記憶している。なお、調理温度設定データベース18Bにおいては、調理時間を2分と固定した場合の調理温度が記憶されている。
【0049】
ここで、データB(呼気)について説明する。食事制限判定であるデータBは、呼気測定装置30により測定された呼気中のアセトン濃度により判定される。アセトンはユーザの代謝条件を表し、肥満の度合いが高ければ高いほど、呼気中のアセトンの濃度は低くなる。すなわち呼気中のアセトン濃度は、代謝の異常を表す指標と考えることができる。たとえば、本実施の形態においては、データBの判定を、B(1)、B(2)及びB(3)のいずれかとしている。すなわち、肥満度合いに基づく食事制限を3段階で評価している。たとえば、呼気測定装置30で測定された呼気中のアセトン濃度が、1ppm未満であると判定B(1)として食事制限が必要であると判定され、1ppm以上5ppm未満であると判定B(2)として食事制限がやや必要であると判定され、5ppm以上であると判定B(3)として食事制限が不要であると判定される。なお、呼気中のアセトン濃度で食事制限判定を行なうのは0.5ppm程度からの範囲である。さらに、これらのアセトン濃度は一例であって、本発明がこれらの濃度に限定されるものではない。また、アセトン濃度は、日頃の平均的なアセトン濃度を記録しておいて個人の基準濃度を作成後、その基準濃度からの変動分を評価する方法であっても良い。
【0050】
たとえば、調理温度設定データベース18Bにおいて、官能試験判定がA(2)であるユーザ(たとえば、ユーザ名が「USER002」のユーザ)に対しては、呼気中のアセトン濃度が低く肥満度が高いと推定される場合には(判定B(1))調理温度が350℃と決定され、呼気中のアセトン濃度が中程度で肥満度も中程度と推定される場合には(判定B(2))調理温度が300℃と決定され、呼気中のアセトン濃度が高く肥満度が低いと推定される場合には(判定B(3))調理温度が250℃と決定される。調理時間が一定であれば調理温度が高いほど脱油量及び脱塩量が多くなるので、食事制限が強いほど調理温度が高く設定される。
【0051】
図6を参照して、本実施の形態に係る調理装置10の制御部12で実行される、パーソナル調理プログラムの制御構造について説明する。
【0052】
ステップ(以下、ステップをSと記載する。)100にて、調理装置10の制御部12は、パーソナル調理の要求が入力されたか否かを判定する。このとき、制御部12は、ユーザが操作部20に入力した情報に基づいて判定する。パーソナル調理の要求が入力されたと判定されると(S100にてYES)、処理はS102へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は何もしないで終了する。
【0053】
S102にて、制御部12は、パーソナル調理された食材を食べるユーザのユーザ名が入力されたか否かを判定する。このとき、制御部12は、ユーザが操作部20に入力した情報に基づいて判定する。ユーザ名が入力されたと判定されると(S102にてYES)、処理はS104へ移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS102へ戻されて、操作部20にユーザがユーザ名を入力するまで待つ。なお、S102の処理において、ユーザ名を入力する場合に、ユーザ毎に登録できるアイコンを用いるようにしても構わない。
【0054】
S104にて、制御部12は、S102にて入力されたユーザ名に基づいて、記憶部18に記憶されたユーザ嗜好データベース18Aから、入力されたユーザの官能試験判定(A(1)〜A(5)のいずれか)を読出す。S106にて、制御部12は、通信部14を用いて、データ受信準備完了信号を呼気測定装置30へ送信する。
【0055】
S108にて、制御部12は、通信部14を用いて、呼気測定装置30から呼気アセトン濃度データDENを受信したか否かを判定する。呼気測定装置30から呼気アセトン濃度データDENを受信すると(S108にてYES)、処理はS114へ移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS110へ移される。S110にて、制御部12は、通信処理がタイムアウト(時間切れ)であるか否かを判定する。たとえば、S106のデータ受信完了信号を呼気測定装置30へ送信してから予め定められた時間が経過したか否かにより、タイムアウトであるか否かが判定される。通信処理がタイムアウトであると判定されると(S110にてYES)、処理はS112へ移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS108へ戻されて、呼気測定装置30からの呼気アセトン濃度データDENの受信を待つ。S112にて、制御部12は、表示部16に通信エラーが発生したことを表示して、処理をS100へ戻す。
【0056】
S114にて、制御部12は、通信部14を用いて、呼気測定装置30へデータ受信完了信号を送信する。S116にて、制御部12は、食事制限判定を決定する。このとき、上述のように、制御部12は、呼気測定装置30で測定された呼気中のアセトン濃度データDENが、1ppm未満であるとB(1)と判定し、1ppm以上5ppm未満であるとB(2)と判定し、5ppm以上10ppm未満であるとB(3)と判定する。
【0057】
S118にて、制御部12は、官能試験判定(A(1)〜A(5))及び食事制限判定(B(1)〜B(3))に基づいて、記憶部18に記憶された調理温度設定データベース18Bのテーブルに従って、調理温度を決定する。S120にて、制御部12は、表示部16に調理内容を表示する。このとき、少なくとも過熱水蒸気による調理温度が表示される。
【0058】
S122にて、制御部12は、食事制限判定がB(3)であるか否かを判定する。食事制限判定がB(3)であると(S122にてYES)、処理はS124へ移される。もしそうでないと(S122にてNO)、処理はS130へ移される。S124にて、制御部12は、表示部16に調理温度の補正要求を表示する。すなわち、ユーザの肥満度合いが低い場合のみ、ユーザに調理条件の補正を許可する。
【0059】
S126にて、制御部12は、補正温度が入力されたか否かを判定する。このとき、制御部12は、ユーザが操作部20に入力した情報に基づいて判定する。補正温度が入力されたと判定されると(S126にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S126にてNO)、処理はS128へ移される。S128にて、制御部12は、補正温度入力処理がタイムアウトであるか否かを判定する。たとえば、S124の調理温度の補正要求を表示部16に表示してから予め定められた時間が経過したか否かにより、タイムアウトであるか否かが判定される。補正温度入力処理がタイムアウトであると判定されると(S128にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S128にてNO)、処理はS128へ戻されて、補正温度が入力されることを待つ。なお、補正温度入力処理がタイムアウトであると判定されると、補正温度が入力されなかったものとして処理が進められる。
【0060】
S130にて、制御部12は、表示部16に調理内容についての確認要求を表示する。S132にて、制御部12は、調理内容についての確認が入力されたか否かを判定する。このとき、制御部12は、ユーザが操作部20に入力した情報に基づいて判定する。調理内容についての確認が入力されたと判定されると(S132にてYES)、処理はS134へ移される。もしそうでないと(S132にてNO)、処理はS132へ戻されて、操作部20にユーザが調理内容についての確認を入力するまで待つ。
【0061】
S134にて、制御部12は、過熱水蒸気による調理条件、すなわち調理温度及び調理時間を設定して調理を開始する。このとき、制御部12は、過熱水蒸気調理設定部22に、決定した調理温度及び調理時間をセットする。調理温度と調理時間とによって、食材に加えられる総熱量が決定される。
【0062】
図7を参照して、本実施の形態に係る調理装置10へ、呼気アセトン濃度データDENを送信する呼気測定装置30の制御部32で実行される、呼気アセトン濃度送信プログラムの制御構造について説明する。
【0063】
S150にて、呼気測定装置30の制御部32は、パーソナル調理のための呼気測定要求が入力されたか否かを判定する。このとき、制御部12は、ユーザが操作部40に入力した情報に基づいて判定する。パーソナル調理のための呼気測定要求が入力されたと判定されると(S150にてYES)、処理はS152へ移される。もしそうでないと(S150にてNO)、処理はS150へ戻されてパーソナル調理のための呼気測定要求が入力されるまで待つ。
【0064】
S152にて、制御部32は、通信部36を用いて、調理装置10からデータ受信準備完了信号を受信したか否かを判定する。調理装置10からデータ受信準備完了信号を受信すると(S152にてYES)、処理はS156へ移される。もしそうでないと(S152にてNO)、処理はS154へ移される。S154にて、制御部32は、通信準備処理がタイムアウトであるか否かを判定する。たとえば、S150のパーソナル調理のための呼気測定要求が入力されてから予め定められた時間が経過したか否かにより、タイムアウトであるか否かが判定される。通信準備処理がタイムアウトであると判定されると(S154にてYES)、この処理は何もしないで終了する。もしそうでないと(S154にてNO)、処理はS152へ戻されて、調理装置10からのデータ受信準備完了信号の受信を待つ。
【0065】
S156にて、制御部32は、表示部38に測定開始準備完了を表示する。S158にて、制御部32は、センサ部34を用いて、呼気中のアセトン濃度を測定する。S160にて、制御部32は、通信部36を用いて、呼気中のアセトン濃度データDENを調理装置10へ送信する。
【0066】
S162にて、制御部32は、通信部36を用いて、調理装置10からデータ受信完了信号を受信したか否かを判定する。調理装置10からデータ受信完了信号を受信すると(S162にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S162にてNO)、処理はS164へ移される。S164にて、制御部32は、通信終了処理がタイムアウトであるか否かを判定する。たとえば、S160の呼気アセトン濃度データDENを調理装置10へ送信してから予め定められた時間が経過したか否かにより、タイムアウトであるか否かが判定される。通信終了処理がタイムアウトであると判定されると(S164にてYES)、処理はS166へ移される。もしそうでないと(S164にてNO)、処理はS162へ戻されて、調理装置10からのデータ受信完了信号の受信を待つ。
【0067】
S166にて、制御部32は、呼気アセトン濃度データDENの送信をリトライするか否かを判定する。たとえば、リトライ回数を予め設定しておいて、そのリトライ回数を超えるまでは、呼気アセトン濃度データDENを調理装置10へ繰返し送信する。呼気アセトン濃度データDENの送信をリトライすると判定されると(S166にてYES)、処理はS160へ戻されて、通信部36を用いて調理装置10へ呼気アセトン濃度データDENが送信される。もしそうでないと(S166にてNO)、処理はS168へ移される。
【0068】
S168にて、制御部32は、表示部38に通信エラーが発生したことを表示して、処理を終了させる。
【0069】
以上のような構造を有する調理装置10及び呼気測定装置30の動作について説明する。
【0070】
[官能試験判定]
ユーザが、この調理装置10の操作部20の「パーソナル調理」に対応するボタン等を押すと(S100にてYES)、たとえば、図4のユーザ嗜好データベース18Aに登録されているユーザの一覧が表示部16に表示される。この調理装置10により調理された食材を食べるユーザのユーザ名を、操作部20に表示されたユーザ一覧から選択すると(S102にてYES)、ユーザ名に基づいて、ユーザ嗜好データベース18Aからこのユーザの官能試験判定(A(1)〜A(5))が読出される(S104)。ここでは、この調理装置10により調理された食材を食べるユーザのユーザ名が「USER002」と仮定するので、ユーザの官能試験判定はA(2)である。
【0071】
呼気中のアセトン濃度データDENを受信する準備が完了したので、呼気測定装置30へデータ受信準備完了信号が送信される(S106)。
【0072】
[呼気アセトン濃度測定及び食事制限判定]
この調理装置10により調理された食材を食べるユーザ(ユーザ名が「USER002」のユーザ)の呼気中のアセトン濃度を測定するために、たとえば、このユーザが呼気測定装置30の操作部40の「アセトン濃度測定」に対応するボタンを押す(S150にてYES)。
【0073】
調理装置10からデータ受信準備完了信号を受信しているので(S152にてYES)、呼気測定装置30の表示部38に測定開始準備完了が表示される。ユーザが呼気を吹込口30Bからセンサ部34に吹込んで、呼気中のアセトン濃度が測定される(S158)。呼気測定装置30から調理装置10へ呼気アセトン濃度データDENが送信され(S160)、調理装置10がこの呼気アセトン濃度データDENを受信する(S108にてYES)。
【0074】
なお、通信完了処理として、調理装置10から呼気測定装置30へデータ受信完了信号が送信され(S114)、呼気測定装置30がこのデータ受信完了信号を受信する(S162にてYES)。
【0075】
受信した呼気アセトン濃度データDENに基づいて、食事制限判定(B(1)〜B(3)のいずれか)が決定される(S116)。ここでは、このユーザ(ユーザ名が「USER002」のユーザ)の呼気アセトン濃度データDENが3.3ppmと仮定すると、食事制限判定B(2)であると決定される。
【0076】
[調理温度決定]
調理温度設定データベース18Bに従って、このユーザ(ユーザ名が「USER002」のユーザであって、官能試験判定がA(2)かつ食事制限時判定がB(2))の調理温度が決定される(S118)。このとき、調理温度設定データベース18Bによると、このユーザの調理温度は300℃に決定され、調理内容が表示部16に表示されるとともに(S120)、調理内容についての確認要求が表示部16に表示される(S130)。ユーザが調理内容(特に、過熱水蒸気による調理温度)を確認して、操作部20における確認に対応するボタン等を押すと(S132にてYES)、過熱水蒸気による調理温度及び調理時間(加熱時間)が過熱水蒸気調理設定部22にセットされて調理が開始される。
【0077】
[温度補正処理]
このユーザ(ユーザ名が「USER002」のユーザであって、官能試験判定がA(2))の呼気アセトン濃度データDENが7.7ppmであると、食事制限時判定がB(3)に決定され(S116)、調理温度が決定される(S118)。このとき、調理温度設定データベース18Bによると、このユーザの調理温度は250℃に決定され、調理内容が表示部16に表示されるとともに(S120)。調理温度の補正要求が表示部16に表示される(S122にてYES、S124)。タイムアウトまでに操作部20において補正温度を入力すると(S126にてYES)、補正された調理温度を反映させた調理内容についての確認要求が表示部16に表示される(S130)。このとき、補正温度は、10℃刻みで補正することが可能であるとする。
【0078】
すなわち、食事制限判定がB(3)のユーザは、呼気アセトン濃度が高く肥満度が低いユーザである。このため、官能試験判定でこのユーザの嗜好を反映して調理温度を決定したが、肥満度が低く食事制限がないので、このユーザ自身の判断による調理温度の補正(修正)を認めている。調理メニュー、食材又はこの日の体調によっては、このユーザが旨みを強く求める場合には調理温度を250℃からさらに10℃刻みで下げることを許容して、脱油量及び脱塩量を減少させても旨みを強く(コクを強くともいえる)出すことができる。
【0079】
ユーザが調理内容(特に、過熱水蒸気による調理温度)を確認して、操作部20における確認に対応するボタン等を押すと(S132にてYES)、過熱水蒸気による調理温度及び調理時間が過熱水蒸気調理設定部22にセットされて調理が開始される。
【0080】
以上のようにして、本実施の形態に係る調理装置によると、この調理装置で調理された食材を食べるユーザの味覚についての嗜好及び呼気アセトン濃度に基づくこのユーザの肥満度に対応する食事制限に基づいて、過熱水蒸気での調理温度を決定することができる。このため、ユーザの嗜好及びユーザの肥満度合いを考慮して、過熱水蒸気による調理温度を自動的に設定することができ、ユーザの健康とユーザの味覚満足度とを両立させることができる。
【0081】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る呼気対応型の調理装置について、図8〜図10を参照して説明する。本実施の形態に係る調理装置50は、個人の味覚と肥満度合いとに基づいて過熱水蒸気による調理時間を決定する。ここで、図8は上述の図3に、図9は上述の図5に、図10は上述の図6に、それぞれ対応する。なお、上述の実施の形態と同じ構造については同じ参照符号を付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0082】
図8は、本実施の形態に係る調理装置50及びこの調理装置50とは別体の呼気測定装置30の制御ブロック図である。図3に示すように、この調理装置50は、上述の第1の実施の形態に係る調理装置10が調理温度設定データベース18Bを記憶する記憶部18を備えていたことに対して、調理時間設定データベース58Bを記憶する記憶部58を備えることが特徴である。さらに、この調理装置50は、上述の第1の実施の形態に係る調理装置10の制御部12で実行されるプログラムとは異なるプログラムを実行する制御部52を備えることが特徴である。
【0083】
図9に、調理時間設定データベース58Bの記憶内容を示す。調理時間設定データベース58Bも、上述の調理温度設定データベース18Bと同じく、2次元のテーブルであって、データA(官能試験)とデータB(呼気)とにより過熱水蒸気による調理時間を算出できるように、5種類のデータA及び3種類のデータBに対応する調理時間(加熱時間)を記憶している。なお、調理時間設定データベース58Bにおいては、調理温度を250℃と固定した場合の調理時間が記憶されている。
【0084】
たとえば、調理時間設定データベース58Bにおいて、官能試験判定がA(2)であるユーザ(たとえば、ユーザ名が「USER002」のユーザ)に対しては、呼気中のアセトン濃度が低く肥満度が高いと推定される場合には(判定B(1))調理時間が2.31分と決定され、呼気中のアセトン濃度が中程度で肥満度も中程度と推定される場合には(判定B(2))調理時間が2.16分と決定され、呼気中のアセトン濃度が高く肥満度が低いと推定される場合には(判定B(3))調理時間が2分と決定される。調理時間が長いほど脱油量及び脱塩量が多くなるので、食事制限が強いほど調理時間が長く設定されている。
【0085】
図10を参照して、本実施の形態に係る調理装置50の制御部52で実行される、パーソナル調理プログラムの制御構造について説明する。なお、図10に示すフローチャートの中で、上述の図6と同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらの処理は同じである。したがってそれらについての説明はここでは繰返さない。
【0086】
S200にて、調理装置50の制御部52は、官能試験判定(A(1)〜A(5))及び食事制限判定(B(1)〜B(3))に基づいて、記憶部58に記憶された調理時間設定データベース58Bのテーブルに従って、調理時間を決定する。
【0087】
S202にて、制御部52は、表示部16に調理時間の補正要求を表示する。
【0088】
S204にて、制御部52は、補正時間が入力されたか否かを判定する。このとき、制御部52は、ユーザが操作部20に入力した情報に基づいて判定する。補正時間が入力されたと判定されると(S204にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S204にてNO)、処理はS128へ移される。
【0089】
以上のような構造を有する調理装置50の動作について説明する。なお、動作の説明においても、上述の第1の実施の形態と同じ説明はここでは繰返さない。
【0090】
[調理時間決定]
調理時間設定データベース58Bに従って、このユーザ(ユーザ名が「USER002」のユーザであって、官能試験判定がA(2)かつ食事制限時判定がB(2))の調理時間が決定される(S200)。このとき、調理時間設定データベース58Bによると、このユーザの調理温度は2.16分に決定され、調理内容が表示部16に表示されるとともに(S120)、調理内容についての確認要求が表示部16に表示される(S130)。ユーザが調理内容(特に、過熱水蒸気による調理時間)を確認して、操作部20における確認に対応するボタン等を押すと(S132にてYES)、過熱水蒸気による調理温度及び調理時間が過熱水蒸気調理設定部22にセットされて調理が開始される。
【0091】
[時間補正処理]
このユーザ(ユーザ名が「USER002」のユーザであって、官能試験判定がA(2))の呼気アセトン濃度データDENが7.7ppmであると、食事制限時判定がB(3)に決定され(S116)、調理時間が決定される(S200)。このとき、調理時間設定データベース18Bによると、このユーザの調理温度は2分に決定され、調理内容が表示部16に表示されるとともに(S120)。調理時間の補正要求が表示部16に表示される(S122にてYES、S202)。タイムアウトまでに操作部20において補正時間を入力すると(S204にてYES)、補正された調理時間を反映させた調理内容についての確認要求が表示部16に表示される(S130)。このとき、補正時間は、10秒刻みで補正することが可能であるとする。
【0092】
すなわち、食事制限判定がB(3)のユーザは、呼気アセトン濃度が高く肥満度が低いユーザである。このため、官能試験判定でこのユーザの嗜好を反映して調理時間を決定したが、肥満度が低く食事制限がないので、このユーザ自身の判断による調理時間の補正(修正)を認めている。調理メニュー、食材又はこの日の体調によっては、このユーザが旨みを強く求める場合には調理時間を2分からさらに10秒刻みで短くすることを許容して、脱油量及び脱塩量を減少させても旨みを強く(コクを強くともいえる)出させることができる。
【0093】
ユーザが調理内容(特に、過熱水蒸気による調理温度)を確認して、操作部20における確認に対応するボタン等を押すと(S132にてYES)、過熱水蒸気による調理温度及び調理時間が過熱水蒸気調理設定部22にセットされて調理が開始される。
【0094】
以上のようにして、本実施の形態に係る調理装置によると、この調理装置で調理された食材を食べるユーザの味覚についての嗜好及び呼気アセトン濃度に基づくこのユーザの肥満度に対応する食事制限に基づいて、過熱水蒸気での調理時間を決定することができる。このため、ユーザの嗜好及びユーザの肥満度合いを考慮して、自動的に過熱水蒸気による調理時間を設定することができ、ユーザの健康とユーザの味覚満足度とを両立させることができる。
【0095】
<変形例>
本実施の形態では、近距離無線通信型の呼気測定装置を用いている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。携帯電話又は無線通信機能を持つ情報端末のように、一般的な通信が可能な装置に呼気測定装置を組込むようにしてもよい。そのような装置をユーザが携帯していると、ジョギング又はウォーキング、若しくはスポーツジムでの適度な運動でカロリーの消費をユーザが行なった後の呼気アセトンを計測し、そのデータをユーザの調理装置に送信することができる。そのような仕組みを利用することで、運動直後のユーザの体の状態に基づき、健康維持のためにより適切な調理メニューを提案することが可能となる。
【0096】
<上述した2つの実施の形態に共通する変形例>
上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、調理装置と呼気測定装置とを別体であって無線通信するとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、別体であって有線通信するものであってもよい。さらに、調理装置に呼気測定装置が組込まれた一体であってもよい。
【0097】
さらに、ユーザの官能試験判定及び食事制限判定に基づいて、第1の実施の形態においては過熱水蒸気による調理温度を決定し、第2の実施の形態においては過熱水蒸気による調理時間を決定していた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、調理温度及び調理時間の双方をユーザの官能試験判定及び食事制限判定に基づいて決定するものであってもよい。この場合、基本的には、呼気中のアセトン濃度が低い(ユーザの肥満度が高い)ほど、食材に加えられる総熱量が大きくなるようにすればよい。
【0098】
さらに、ユーザ毎に官能試験判定が記憶されるユーザ嗜好データベースをさらに発展させて、食事制限判定(B(1)〜B(3))をユーザ毎に記憶させたり、過熱水蒸気による調理温度又は調理時間を記憶させて、ユーザ毎のデータベースを構築させたりしてもよい。
【0099】
さらに、このような過熱水蒸気による調理温度又は調理時間を決定するにあたり、料理のメニューは、調理装置が記憶していてもよいし、インターネット経由でホームページ等からダウンロードするものであってもよい。
【0100】
上記した実施の形態では、アセトンの検出に、ナノ構造体表面を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン5にて修飾したものを用いた。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、アセトンと特異的に結合するものであれば、どのようなものを用いてもよい。場合によっては、アセトンのみを選択的の透過する機能膜をセンサの前段に設け、この機能膜を透過した後の呼気中のアセトン濃度を検出するようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、呼気中のアセトンの量が少なくなるほど食材に加えられる総熱量が多くなるようにしている。しかし本発明はそのような制御方法には限定されない。代謝が悪くなると呼気中の成分が高くなるような特定ガス成分を検出する場合には、アセトンの場合と反対に、呼気中のその成分の量が多くなるほど食材に加えられる総熱量が多くなるようにしてもよい。
【0102】
この発明の他の局面に係る調理装置は、調理された食材を食べるユーザの味覚についての情報を取得するための味覚情報取得手段と、ユーザの呼気に含まれる成分であって、ユーザの肥満度合いに関連する成分についての情報を取得するための成分情報取得手段と、味覚についての情報及び成分についての情報に基づいて、調理方法を決定するための決定手段とを含む。
【0103】
好ましくは、成分情報取得手段は、ユーザの呼気に含まれる、代謝に関連するガス(アセトン、エタノール等)の濃度を取得するための手段を含む。
【0104】
さらに好ましくは、決定手段は、代謝に関連するガスの濃度が低い場合には高い場合に比べて、調理による脱油量、脱塩量、又はその双方が多くなるように、調理方法を決定するための手段を含む。
【0105】
さらに好ましくは、味覚情報取得手段は、ユーザが標準的な調理方法で調理された食材を食べたときの味覚についての情報であって、旨みが不足しているか否かについての情報を取得するための手段を含む。
【0106】
さらに好ましくは、決定手段は、味覚情報取得手段により旨みが不足しているという情報が取得されたユーザには、旨みが不足していないという情報が取得された他のユーザよりも、調理による脱油量、脱塩量、又はその双方が少なくなるように、調理方法を決定するための手段を含む。
【0107】
さらに好ましくは、この調理装置は、過熱水蒸気を用いて食材を調理する装置であって、決定手段は、過熱水蒸気の調理温度、過熱水蒸気による調理時間、又はその双方を設定して、過熱水蒸気を用いた調理による脱油量、脱塩量、又はその双方が調整されるように、調理方法を決定するための手段を含む。
【0108】
さらに好ましくは、決定手段は、過熱水蒸気の調理温度を高く、又は過熱水蒸気による調理時間を長く、又はその双方に設定して、脱油量及び脱塩量の少なくともいずれかを増加させた調理方法を決定するための手段を含む。
【0109】
さらに好ましくは、決定手段は、過熱水蒸気の調理温度を低く設定及び過熱水蒸気による調理時間を短く設定の少なくともいずれかに設定して、脱油量及び脱塩量の少なくともいずれかを減少させた調理方法を決定するための手段を含む。
【0110】
さらに好ましくは、この調理装置は、ユーザの肥満度合いが低い場合には、決定手段により決定された調理方法を補正するための手段をさらに含む。
【0111】
さらに好ましくは、成分情報取得手段は、成分についての情報を、調理装置とは別体の呼気測定装置から通信により取得するための手段を含む。
【0112】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上述した実施の形態のみに限定されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る調理装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る調理装置に呼気アセトン濃度を送信する呼気測定装置の全体を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る調理装置及び呼気測定装置の制御ブロック図である。
【図4】図3に示すユーザ嗜好データベースの内容を示す図である。
【図5】図3に示す調理温度設定データベースの内容を示す図である。
【図6】図3に示す調理装置の制御部12で実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】図3に示す呼気測定装置の制御部32で実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る調理装置及び呼気測定装置の制御ブロック図である。
【図9】図8に示す調理温度設定データベースの内容を示す図である。
【図10】図8に示す調理装置の制御部12で実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0114】
10、50 調理装置
30 呼気測定装置
12、52 制御部
14、36 通信部
16、38 表示部
18、58 記憶部
20、40 操作部
22 過熱水蒸気調理設定部
34 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの呼気に含まれる成分であって、代謝異常の指標となる特定ガス成分についての情報を取得するための成分情報取得手段と、
前記特定ガス成分についての情報に基づいて、食材の調理条件を決定するための調理条件決定手段と、
前記調理条件決定手段により決定された調理条件にしたがって食材を調理するための調理手段とを含む、調理装置。
【請求項2】
ユーザの味覚に関する嗜好情報を取得するための味覚情報取得手段をさらに含み、
前記調理条件決定手段は、前記嗜好情報及び前記特定ガス成分についての情報に基づいて、食材の調理条件を決定するための決定手段を含む、請求項1に記載の調理装置。
【請求項3】
前記味覚情報取得手段は、前記ユーザが所定の調理条件で調理された食材を食べたときに感じた旨みの程度についての情報をユーザごとに記憶するための記憶手段と、
ユーザを特定する入力を受けるためのユーザ入力手段と、
前記ユーザ入力手段により入力されたユーザについての前記旨みの程度についての情報を前記記憶手段から読出すための読出手段とを含む、請求項2に記載の調理装置。
【請求項4】
調理条件は調理の時間及び調理温度に関する条件を含み、
前記調理手段は、前記調理条件にしたがった調理時間条件及び温度条件で食材を加熱するための加熱手段を含む、請求項3に記載の調理装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記調理条件にしたがった調理時間及び温度条件で過熱水蒸気に食材が暴露されるように、過熱水蒸気を発生するための手段を含む、請求項4に記載の調理装置。
【請求項6】
前記特定ガス成分は、ユーザの肥満の度合いの指標となるガス成分である、請求項2〜請求項5のいずれかに記載の調理装置。
【請求項7】
前記ガス成分の濃度が所定値以上のときには、前記調理条件決定手段により決定された調理条件に対する補正をユーザに行わせるための補正手段をさらに含む、請求項6に記載の調理装置。
【請求項8】
前記決定するための手段は、前記味覚情報取得手段により得られた情報に基づき、ユーザの感じた旨みの程度が低いほど、前記加熱手段により食材に加えられる総熱量が少なくなるように調理条件を決定する、請求項6又は請求項7に記載の調理装置。
【請求項9】
前記成分情報取得手段は、ユーザの呼気中の、前記特定ガス成分についの濃度を測定するための呼気センサを含み、
前記決定するための手段は、前記呼気センサにより測定された前記特定ガス成分の濃度が低いほど、前記加熱手段により食材に加えられる総熱量が多くなるよう調理条件を決定する、請求項6〜請求項8のいずれかに記載の調理装置。
【請求項10】
前記成分情報取得手段は、前記成分についての情報を、前記調理装置とは別体の呼気測定装置から通信により取得するための手段を含む、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−25422(P2010−25422A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186734(P2008−186734)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】