説明

調節弁

【課題】上蓋と弁本体との締結部分からの漏れを防止し、組み付け及び分解が容易な調節弁を提供することを目的とする。
【解決手段】弁本体2は、流入路8(1次側通路)と、流出路9(2次側通路)と、両者の間に設けられた弁室12と、プラグ1が挿入されるケージ形ガイド3を備えている。弁室12には、平形のガスケット6、断面が楔形で中央に流通孔5cを有するシートリング5、断面がデルタ形(三角形)のガスケット4の順に載置される。プラグ1はケージ形ガイド3に挿入される。その際に、プラグ1とケージ形ガイド3との間にはグランドパッキン7が介装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池自動車に供給される水素ステーションのタンクからの水素供給量を制御する調節弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の調節弁では、弁本体内部に、流入路側(1次側)と流出路側(2次側)とを仕切る隔壁が設けられ、隔壁の開口部に流体の流通孔を有するシートリングが配置されている。流量特性部を有するプラグ(弁体)が前記シートリングのシート面に着座すると全閉状態となり、離間するとプラグの流量特性部とシートリングとの隙間を通って流体が2次側へ流れ込む(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーションにも、調節弁が用いられている。具体的には、燃料電池自動車に水素を供給するディスペンサに内蔵され、タンクからの水素供給量を制御するものである。本調節弁は、燃料電池自動車の走行可能距離250km程度とした場合、35MPaの高圧水素ガスの流量を制御することになる。
図3は、高圧水素ガスの流量制御に用いられる調節弁の従来構造を示す縦断面図である。図3に示すような高圧仕様の調節弁としては、最縮流部(絞り部)より前部を1次側とし、後部を2次側とすると、2次側にプラグを配置するのが一般的である。
【0004】
図3に示す調節弁は、下記のような特徴を有している。
(1)プラグ1及びグランド部(グランドパッキン7)は上蓋10内に収容され、上蓋10と弁本体2とを、スパイラルガスケット11を介して締結部材(トルクレンチ等)で締結している。
(2)流入路(1次側通路)8から弁本体2に流入した流体は、下方よりシートリング5中央の流通孔5cとプラグ1先端のニードル体(流量特性部)1aとの隙間部分(最縮流部)を抜けて、プラグ1下端周面の着座部1bに衝突する。そして、着座部1bより上方に設けられた流出路(2次側通路)9を通って弁本体2の外部へ流出する。
(3)締結部材で上蓋10の上部を締め付けることにより、下向きに押圧力が生じる。上蓋10の下部をシートリング5のフランジ部に当接させ、上記押圧力でシールする構造(以下、他力式シール構造)となっている。
【0005】
図4は、図3の調節弁の他力式シール構造を示す拡大断面図である。図3に示す調節弁は、上蓋10の締め付けトルク(外力)によりシールする他力式シール構造である。
図4において、上記特徴(1)の上蓋10と弁本体2との分割型構造では、振動、圧力履歴、熱履歴等の外的要因により、上蓋10と弁本体2との締結部が緩み、漏れが発生する虞があった。
また、水素のように分子量が小さく漏れ易い流体を扱う場合には、適正なトルクで締結した場合でも、完全に漏れをなくすことは困難であった。
更に、特徴(3)の他力式シール構造では、流体の圧力条件が35MPaという高圧の場合、上蓋10の締め付けトルクが1kN・m以上となり、分解及び組み付けにおいて困難を極めていた。
【0006】
【特許文献1】特開平10−160032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の調節弁は、以上のように構成されていたので、振動や圧力、熱の影響を受けることにより、上蓋と弁本体との締結部分に緩みが生じ、両者の境界部(締結部)から漏れが生じるという課題があった。
また、締結部の締め付け作業が必須であることに加えて、その確実性も要求されるため、締め付け作業に多大な時間を要するという課題もあった。
更に、流体が高圧の場合には、上蓋の締め付けトルクが過大となり、分解及び組み付けが困難となるという課題もあった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、上蓋と弁本体との締結部分からの漏れを防止した調節弁を提供することを目的とする。
また、組み付け及び分解が容易な調節弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る調節弁は、弁本体内部のシートリング中央の流通孔を通過する流体の流量をプラグによって制御する調節弁であり、前記シートリングの周面に前記流体の圧力を受け止めて前記シートリングをシールする流体圧力シール部を備えることを特徴としたものである。
【0010】
この発明に係る調節弁は、前記流体圧力シール部が、前記流体の流れ方向に向かって幅が大きくなる断面がテーパ状の周面を有する前記シートリングと、前記シートリングの前記周面に当接配置される断面がテーパ状の周面を有するガスケットにより構成されることを特徴としたものである。
【0011】
この発明に係る調節弁は、前記弁本体が分割不可能に一体形成されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、流体の圧力を受け止めてシートリングをシールするので、上蓋の締め付けトルクを低減することができる。
また、流体が高圧の場合には、上蓋がなくとも十分なシール効果が得られる。
【0013】
この発明によれば、断面がテーパ状の周面同士を当接させてシートリングとガスケットにより流体圧力シール部を構成しているので、上蓋の締め付けトルクを低減することができる。
また、流体が高圧の場合は、上蓋がなくとも十分なシール効果が得られる。
【0014】
この発明によれば、上蓋を廃し、弁本体を分割不可能に一体形成することにより、部品点数を削減することができる。
また、上蓋と弁本体の締め付け作業が不要となる効果が得られる。
更に、上蓋と弁本体との境界部(締結部)からの流体の漏れが一切生じないという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る調節弁を示す縦断面図である。
図1において、弁本体2は、流入路8(1次側通路)と、流出路9(2次側通路)と、両者の間に設けられた弁室12と、プラグ1が挿入されるケージ形ガイド3を備えている。
弁室12には、平形のガスケット6、断面が楔形で中央に流通孔5cを有するシートリング5、断面がデルタ形(三角形)のガスケット4の順に載置される。
プラグ1はケージ形ガイド3に挿入される。その際に、プラグ1とケージ形ガイド3との間にはグランドパッキン7が介装される。
【0016】
ガスケット4、6やグランドパッキン7、シートリング5等のシール部材には、PTFE等の耐熱性、耐食性及びシール性(可撓性)に優れた樹脂を主成分とするものが用いられている。また、その他の部材には、ステンレス等の耐食性に優れた金属が用いられている。
【0017】
次に、動作について説明する。流入路8から弁本体2に流入した流体は、弁室12に達する。
弁室12において、プラグ1の先端に設けられたニードル体(流量特性部)1aはシートリング5の中央に設けられた流通孔5cに挿通され、両者の隙間部分となる最縮流部を形成する。ニードル体1aが流通孔5cを移動することによって流量が絞られ、流通孔5cを通過する流体の流量が調節される。
図1において、最縮流部を通過する流体の流量は、ニードル体1aの上昇に伴い、最縮流部が拡大して増加する。また、ニードル体1aの下降に伴い、最縮流部が縮小して減少する。ニードル体1aがそのまま下降を続けると、最終的には全閉状態となる。
最縮流部を通過した流体は、流出路9から弁本体2の外部に流出する。
【0018】
図1で示されるように、本調節弁の弁本体2には分離可能な上蓋がなく、弁本体2自体を一体成形品としたものである。或いは、弁本体2を複数に分割して成形した後に、溶接等により一体形成して分割不可能としたものであってもよい。従って、従来構造の調節弁が有していた上蓋と弁本体との締結部が存在せず、同部からの漏れが生じない。
【0019】
次に、流体圧力シール部13の構成について説明する。図2は、図1の調節弁の自閉式シール構造を示す拡大断面図である。図2は、プラグ1のニードル体1aの基端部上方に設けられたテーパ状の着座部1bが、シートリング5の流通孔5cの上方に設けられた断面L字型の内周面(シート面5b)に着座した全閉状態を示している。
図2において、流体圧力シール部13は、シートリング5の周面に流体の圧力を受け止めてシートリング5をシールする(以下、自閉式シール)部分である。
【0020】
シートリング5の外周面には、流体の流れ方向に向かって(沿って)幅が大きくなる、断面がテーパ状の部分(以下、外周面テーパ部5a)が形成されている。
また、ガスケット4の内周面には、外周面テーパ部5aと逆向きの、断面がテーパ状の部分(以下、内周面テーパ部4a)が形成されている。
そして、外周面テーパ部5aと内周面テーパ部4aとが当接配置されて、流体圧力シール部13を構成している。
更に、ケージ形ガイド3の底面部と対向するシートリング5の下面には、ガスケット6が当接配置されている。
【0021】
次に、流体圧力シール部13の動作について説明する。先ず、ガスケット4に対して、図2中の矢印方向に流体の圧力がかかる。
ガスケット4は、内周面テーパ部4aに当接するシートリング5の外周面テーパ部5aを押圧する。
シートリング5の外周縁部はケージ形ガイド3の内壁に当接する。また、シートリング5のシート面5bにはプラグ1の着座部1bが着座する。
ガスケット6は、流体の圧力に対してシートリング5を下側から支持することにより、高圧下でシートリング5の周縁部がケージ形ガイド3の底面部で圧縮されて必要以上に変形するのを防止する。
【0022】
流体圧力シール部13はシート漏れを防止し、シートリング5のシート面5bとプラグ1の着座部1bとが形成するシール部はシート漏れを防止する。
即ち、断面が楔形のシートリング5と断面がデルタ形のガスケット4との組み合わせ(楔形構造)により、流体の圧力を利用した自閉式シールを構成するものである。
【0023】
以上のように、この実施の形態1によれば、従来のように上蓋と弁本体との分割型構造とした場合でも、流体の圧力を受け止めてシートリング5をシールするので、上蓋の締め付けトルクを低減することができる。
また、使用する流体が高圧の場合は、自閉式シールのシール性が向上するので、上蓋を締め付けなくとも十分なシール効果が得られる。
更に、流体圧力シール部13を、断面が楔形のシートリング5と断面がデルタ形のガスケット4との組み合わせにより構成するので、組み付けが容易となる効果が得られる。
【0024】
流体が高圧の場合には、上蓋を廃し(上蓋レス構造)、弁本体2を分割不可能に一体形成することにより、部品点数(例えば、図3中の上蓋10とスパイラルガスケット11)を削減することができる。
それと同時に、上蓋と弁本体との締め付け作業が不要となる効果が得られる。
また、上蓋と弁本体との境界部(締結部)が存在しないので、同部からの流体の漏れが一切生じないという効果も得られる。
【0025】
なお、以上の説明において、便宜上、上下左右等の表現を用いたが、実際の弁装置の設置方向は様々であり、以上の説明で用いた方向に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1に係る調節弁を示す縦断面図である。
【図2】図1の調節弁における自閉式シール構造を示す拡大断面図である。
【図3】高圧水素ガスの流量制御に用いられる調節弁の従来構造を示す縦断面図である。
【図4】図3の調節弁における他力式シール構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 プラグ
1a ニードル体(流量特性部)
1b 着座部
2 弁本体
3 ケージ形ガイド
4 ガスケット
4a 内周面テーパ部
5 シートリング
5a 外周面テーパ部
5b シート面
5c 流通孔
6 ガスケット
7 グランドパッキン
8 流入路(1次側通路)
9 流出路(2次側通路)
10 上蓋
11 スパイラルガスケット
12 弁室
13 流体圧力シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体内部のシートリング中央の流通孔を通過する流体の流量をプラグによって制御する調節弁において、
前記シートリングの周面に前記流体の圧力を受け止めて前記シートリングをシールする流体圧力シール部を備えることを特徴とする調節弁。
【請求項2】
前記流体圧力シール部は、
前記流体の流れ方向に向かって幅が大きくなる断面がテーパ状の周面を有する前記シートリングと、
前記シートリングの前記周面に当接配置される断面がテーパ状の周面を有するガスケットにより構成されることを特徴とする請求項1記載の調節弁。
【請求項3】
前記弁本体が分割不可能に一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の調節弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−36364(P2009−36364A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203449(P2007−203449)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】