説明

識別媒体、識別方法および識別装置

【課題】高い識別性を備えた識別媒体を提供する。
【解決手段】直線偏光フィルタ越しの観察において、直線偏光フィルタの回転角に応じて観察される光の色彩が変化する液晶層308と、その下側に位置するアルミ蒸着層304と、コレステリック液晶層306aおよび306bと、それらの下側に位置する黒色層305とを備えている。円偏光フィルタの機能を利用すると、コレステリック液晶層の見え方の変化が観察され、直線偏光フィルタの機能を利用すると、色彩の変化を観察することができ、これらの見え方の変化を利用して識別を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚的な効果により物品の真贋性(真正性)を識別する技術に係り、偏光フィルタを利用することで特異な見え方をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日用品や衣料品等の物品において、見た目を本物に似せて製造した偽物が市場に出回り問題となっている。このような状況において、性能、信頼性あるいは安全性の保証やブランド力の維持のために、物品の真贋性を識別することができる技術が求められている。
【0003】
物品の真贋性を識別する技術として、物品に特殊なインクを用いて印刷を行う方法、あるいは、特殊な光学反射特性を有する小片を物品に貼り付けたりする方法が知られている。
【0004】
特殊なインクを印刷する方法は、紫外線に対して蛍光するインクを用いて、所定の文字や図柄を印刷し、紫外線を照射した際にその図柄や文字を浮かび上がらせることで、真贋性を確認する方法がある。また、磁性体の粒子や磁性を帯びた粒子を混ぜたインクを塗布し、磁気センサで真贋性を識別する方法も知られている。
【0005】
また、光学反射特性を有する小片としては、ホログラムやコレステリック液晶が示す光学特性を利用したものが知られている。この技術に関しては、例えば特許文献1や特許文献2に示されたものが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−51193号公報
【特許文献2】特開平4−144796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような特殊なインクは、類似品を入手することが比較的容易であり、偽造防止効果は大きくない。また、目視用のホログラムは、見た目による真贋性の判断が困難であるような、偽造レベルの高いものが出回っており、それだけで真贋性を識別するのは困難になりつつある。
【0008】
また、偽造技術が高くなってきている背景において、コレステリック液晶を用いた識別媒体に関しても、より偽造が困難で、高い識別性が得られるものが求められている。
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来技術を用いた識別技術よりもさらに偽造防止レベルが高く、しかも識別を容易にそして確実に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の識別媒体は、直線偏光フィルタを介した観察において、前記直線偏光フィルタの回転角に応じて観察される光の波長が変化する第1の液晶層と、コレステリック液晶層と、このコレステリック液晶層の下側に位置する光吸収層とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、第1の液晶層は、波長400nmから800nmの光に対し、該液晶層を構成する液晶分子の複屈折と螺旋ピッチの積が、光の波長の少なくとも3.5倍よりも大きく、かつ、ブラッグ回折による選択反射を生じない少なくとも1層のねじれネマティック液晶層と、反射層とからなり、直線偏光フィルタ越しに観察した際に、直線偏光フィルタを回転させると、色彩の変化を観察することができる液層層である。
【0012】
以下、この第1の液晶層の光学的な性質を説明する。なお、本明細書において、ねじれネマティック液晶とコレステリック液晶とは以下のように区別する。ねじれネマティック液晶とは、液晶分子の対象軸の方向が自発的にある方向にそろっており巨視的には異方性を示し、且つ液晶分子が層法線方向を螺旋軸とする螺旋構造をとる配向構造を有し、しかも波長400nmから800nmの可視光に対し、モーガン条件(Mauguin Condition)をほぼ満たし、ブラッグ反射を生じない配向構造を有する液晶をいう。コレステリック液晶とは、液晶分子の対象軸の方向が自発的にある方向にそろっており巨視的には異方性を示し、且つ液晶分子が層法線方向を螺旋軸とする螺旋構造をとる配向構造を有するが、波長400nmから800nmの可視光に対し、モーガン条件(Mauguin Condition)を満たさず、ブラッグ反射を生じる配向構造を有する液晶をいう。したがって、ねじれネマティック液晶とコレステリック液晶とは、同様の螺旋配向構造をとりながらも、異なる光学的性質を有する点で区別される。
【0013】
また、本明細書において、螺旋ピッチとは、ねじれネマティック液晶分子あるいはコレステリック液晶分子が層法線方向を螺旋軸として360°回転するのに要する層法線方向の長さを言う。
【0014】
モーガン条件(Mauguin Condition)とは、液晶分子の複屈折(異常光線屈折率と常光線屈折率の差)と螺旋ピッチの積が、光の波長に対し十分大きい場合に、液晶分子の長軸に平行もしくは垂直に入射された直線偏光が、液晶分子の螺旋構造に沿って偏光状態を保ったまま伝播できる条件を言う。
【0015】
一般に、反射板に、面内に光学異方性を有する複屈折媒体を載せて、偏光フィルタ越しに観察すると着色することが知られている。これは、偏光フィルタを通過して直線偏光となった光が、複屈折媒体中を透過する際に2つの固有偏光間に位相差が生じることにより楕円偏光に変換される際に、光の波長ごとに生じる位相差が異なり、楕円偏光の楕円率が異なるためである。
【0016】
この際、生じる着色(色彩)は、用いる複屈折媒体の光学膜厚(リターデーション)によって決まり、色の濃淡(彩度)は、複屈折媒体の進相軸(遅相軸)と偏光フィルタの透過(吸収)軸とがなす角度によって決まる。特開2000-019323号によれば、複屈折媒体の進相軸(遅相軸)と偏光フィルタの透過(吸収)軸とが平行もしくは直交する場合に彩度は最も高くなり、45度をなす場合には最も薄くなることが知られている。
【0017】
しかしながら、上記の反射板/複屈折媒体/偏光フィルタの構成で色彩を変えるには、複屈折媒体の光学膜厚を変える以外の手段は知られておらず、シールやラベルとして用いられる識別媒体において、物品等に貼付された後に複屈折媒体の光学膜厚を変えることは事実上不可能であった。
【0018】
本発明は、観察に用いる偏光フィルタの角度によって所定の色が生じることを可能にしたものであり、偏光フィルタの角度と生じる色を規定することにより真正性を容易に確認できるものであり、かつ、偏光フィルタを用いない限り識別媒体は無色でありコバート性をも有するものである。
【0019】
上記の反射板/複屈折媒体/偏光フィルタの構成で、複屈折媒体の進相軸(遅相軸)と偏光フィルタの透過(吸収)軸とがなす角度によらず色彩が変わらない原因を解析した結果、複屈折媒体により光の波長ごとに楕円偏光の楕円率は異なるように変化するものの、その長軸方位は波長によらず一定であることに原因があることが判明した。その結果、楕円率のみならず長軸方位も波長ごとに変化させることができれば、複屈折媒体の進相軸(遅相軸)と偏光フィルタの透過(吸収)軸とがなす角度を変えることによって色彩を変えることが可能となることを発明するに至った。
【0020】
本発明では、反射板/ねじれネマティック液晶層/偏光フィルタの構成をとり、ねじれネマティック液晶層は偏光変換回転層として機能する。すなわちこの構成においては、非偏光が偏光フィルタを通って偏光となり、ねじれネマティック液晶層に入射する。ねじれネマティック液晶層を透過する際には、偏光はねじれネマティック液晶層の光学膜厚に応じて楕円率が変化すると同時に、ねじれ角に応じて長軸方向が回転する。この楕円率の変化および回転角度は光の波長によって異なる。ねじれネマティック液晶層から出射した光は反射層により反射し再びねじれネマティック液晶層に入射する。ねじれネマティック液晶層から出射した光は偏光フィルタと通過し、観察される。この際、光の波長により楕円率が異なるため波長ごとに偏光フィルタを透過する光の強度が異なることから着色が生じる。また、波長ごとに長軸方向が異なるため、偏光フィルタを回転させることで偏光フィルタの透過軸と楕円偏光の長軸方向が平行に近い波長の光ほど透過量が多くなり、長直交に近い波長の光ほど透過量は少なくなる。すなわち、偏光フィルタの回転により、着色の色味(色彩)が変化することになる。
【0021】
以上述べたようにねじれネマティック液晶層が、通過する偏光の楕円率ばかりでなく長軸方向をも変化させるとこが重要となる。ここで、長軸方向の回転、すなわち旋光能について望ましい条件としてモーガン条件(Mauguin Condition)をほぼ満たすことが挙げられる。すなわち、液晶分子の複屈折(異常光線屈折率と常光線屈折率の差)と螺旋ピッチの積が、光の波長に対し十分大きいことが必要であり、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは3.5倍以上であることが望まれる。3倍よりも少ない場合には、とくに短い波長の光ほど旋光能を失い、ねじれネマティック液晶の螺旋軸に沿って偏光が回転できなくなる。
【0022】
コレステリック液晶層は、自然光を入射させると、所定中心波長であり且つ右旋回または左旋回の円偏光を選択的に反射する性質を有する液晶の層である。コレステリック液晶層は、層状構造を有している。そして、一つの層に着目した場合、層中において液晶分子の分子長軸はその向きが揃っており、かつ層の面に平行に配向している。そして配向の方向は、隣接する層において少しずつずれており、全体としては立体的なスパイラル状に配向が回転しつつ各層が積み重なった構造を有している。この構造において、層に垂直な方向で考えて、分子長軸が360°回転して元に戻るまでの距離をピッチP、各層内の平均屈折率をnとする。この場合、コレステリック液晶層は、λs=n×Pを満たす、中心波長λsで特定旋回方向の円偏光を選択的に反射する性質を示す。すなわち、特定の偏光成分に偏らず、また特定の波長成分に偏っていない光(白色自然光)をコレステリック液晶層に入射させると、特定の波長を中心波長とする右回りまたは左回り円偏光を選択的に反射する。この場合、同じ波長λsで反射した円偏光と逆の旋回方向を有する円偏光と、その他の波長の自然光は、コレステリック液晶層を透過する。
【0023】
反射する円偏光の旋回方向(回転方向)は、コレステリック液晶層のスパイラル方向を選択することで決めることができる。つまり、光の入射方向から見て、右ネジの向きに螺旋を描いて各層における分子長軸が配向しているか、左ネジの向きに螺旋を描いて各層における分子長軸が配向しているか、を選択することで、反射する円偏光の旋回方向(回転方向)を決めることができる。
【0024】
また、コレステリック液晶は視野角によって色が変わるカラーシフトと呼ばれる光学的な性質を示す。これは、視野角が大きくなると、ピッチPが見かけ上減少することから、中心波長λsが短波長側へ移行するためである。たとえば、垂直方向から観察して赤色に呈色するコレステリック液晶の反射色は、視野角を大きくするに従い赤→橙→黄→緑→青と順次変化するように観察される。なお、視野角は、視線と識別媒体表面の垂線とのなす角度として定義される。
【0025】
上述した本発明の構成を備えた識別媒体を直線偏光板と1/4波長板とを積層した構造を有する特殊な光学フィルタ(ビューア)を介して観察することで、高い識別性を得ることができる。すなわち、前記ビューアの一方の面を本発明の構成を備えた識別媒体に対向させ、ビューア越しに当該識別媒体を観察した場合と、前記ビューアの他方の面を本発明の構成を備えた識別媒体に対向させ、ビューア越しに当該識別媒体を観察した場合とで、異なる図柄表示を観察することができ、それにより真贋判定の識別を行うことができる。この識別は、直視、上述した2通りの観察方法における見え方の顕著な違いに基づくものであり、確度の高い真贋判定を行うことができる。
【0026】
なお、1/4波長板というのは、光がそこを透過する際に直交する直線偏光成分の間に90°(π/2)の位相差が生じる複屈折素子(複屈折効果を示す光学素子)のことをいう。1/4波長板に直線偏光を入射させると、円偏光に変換され、円偏光を入射させると、直線偏光に変換される。
【0027】
以下、本発明における識別の原理を説明する。図1は、本発明の原理の一部を説明する概念図である。図1には、直線偏光板101と1/4波長板102とを積層した構造を有するビューア(光学フィルタ)100を介して、コレステリック液晶層103を観察する場合の状態が概念的に示されている。なお図1では、直線偏光板101と1/4波長板102とが離れている状態が示されているが、実際には、両者は密着している。また、ビューア100は、図示するようにコレステリック液晶層103から離して位置させてもよいし、コレステリック液晶層103に密着させてもよい。また、ここでコレステリック液晶層103は、特定中心波長(例えば赤の波長)の左回り円偏光を選択的に反射する性質に設定されているものとする。また、コレステリック液晶層103の下側には、光吸収層が設けられ、コレステリック液晶層103を上から下方向に透過した光は、そこで吸収されるようにされているものとする。
【0028】
図1(A)には、ビューア100の1/4波長板102側をコレステリック液晶層103に対向させた状態で観察を行う場合が示されている。この場合、ビューア100に入射した直線偏光板101に入射した自然光(白色自然光)111は、直線偏光板101を透過して、直線偏光112となる。この直線偏光112は、1/4波長板102を透過することで、円偏光113(この場合は、左回り円偏光)に変換され、コレステリック液晶層103に至る。コレステリック液晶層103は、赤の波長の左回り円偏光を選択的に反射する性質に設定されているから、円偏光113の内、赤の波長成分を反射する。すなわち、コレステリック液晶層103は、赤の左回り円偏光114を選択的に反射する。
【0029】
この赤の左回り円偏光114は、1/4波長板102を透過することで直線偏光102となる。1/4波長板102は、直線偏光112を左回り円偏光113に変換する設定とされているから、1/4波長板102に入射した左回り円偏光114は、直線偏光112と同じ偏光方向の直線偏光115となる。直線偏光115の偏光方向は、直線偏光板101を透過するから、最終的に赤の直線偏光116を観察することができる。
【0030】
図1(A)に示す観察状態において、コレステリック液晶層103が存在していない部分(図示省略)があると、そこで反射する円偏光113の旋回方向は、反転するので、その反射光の旋回方向は、円偏光114と逆方向となる。そのため、それが1/4波長板102を透過した際の直線偏光(直線偏光115に相当する直線偏光)は、その偏光方向が、直線偏光115と直交したものとなり、直線偏光板101を透過できない。そのため、ビューア100を介した観察で対象物からの反射光を観察できない(あるいは反射光が弱く、観察し難くなる)。この反射光の有無(あるいは強弱)により、ビューア100越しの観察において、鮮明に浮かび上がるコレステリック層103のパターンを認識することができる。
【0031】
一方、図1(A)の状態からビューア100を裏返し、図1(A)と同様な観察を行うと、コレステリック液晶層103からの反射光は光量が25%以下に減少しており、その部分が暗く(あるいは濃い色に)見える(あるいは観察し難く)。
【0032】
以下、この観察状態の原理を説明する。図1(B)には、図1(A)に示す状態のビューア100の表裏を反転させ、直線偏光板101の側をコレステリック液晶層103に対向させた状態が示されている。この状態において、ビューア100越しにコレステリック液晶層103を観察する場合を説明する。
【0033】
この場合、1/4波長板102に入射した自然光121は、1/4波長板102の作用を受けるが、自然光121は、偏光成分をランダムに含むので、1/4波長板102による偏光状態の変換作用は現れず、自然光122として1/4波長板を透過する。自然光122は、直線偏光板101を透過することで直線偏光123となる。コレステリック液晶層103は、直線偏光を構成する左右の円偏光成分のうち、片方の円偏光成分124を透過し、残りの円偏光成分125を反射する。円偏光125は、直線偏光板101を透過する際に、光量は約半分に減少した直線偏光126となり、1/4波長板102の作用により円偏光127となる。円偏光127の光量は入射時の25%以下となるため、コレステリック液晶層103からの反射光は暗く観察し難い。
【0034】
つまり、ビューア100の表裏を反転させて観察を行うことで、コレステリック液晶層103からの反射光の観察の容易さ、または観察のし難さ(あるいは顕著な強弱)が発生し、それを利用した識別を行うことができる。
【0035】
また本発明の識別媒体によれば、直線偏光フィルタ越しの観察において、直線偏光フィルタの回転角に応じて観察される光の波長が変化する第1の液晶層において色彩の変化(色の変化)を観察することができる。この色彩の変化が上記コレステリック液晶層の光学特性と相乗的に作用し、高い識別性を得ることができる。
【0036】
以下、第1の液晶層の光学特性の原理について説明する。図2は、本発明の原理の一部を説明する概念図である。図2には、直線偏光板101と1/4波長板102とを積層した構造を有するビューア(光学フィルタ)100(図1に図示するビューア100と同じ構成)を介して、本発明の第1の液晶層(図2では色彩が変化する液晶層204と表記)を観察する場合の状態が概念的に示されている。なお図2では、直線偏光板101と1/4波長板102とが離れている状態が示されているが、実際には、両者は密着している。また、ビューア100は、図示するようにコレステリック液晶層103から離して位置させてもよいし、色彩が変化する液晶層201に密着させてもよい。また、色彩が変化する液晶層204は、直線偏光板越しの観察において、光軸を中心に直線偏光板を回転させてゆくと、90°の回転範囲において、青→緑→赤と色彩が変化する設定にされているものとする。
【0037】
まず、図2(A)に示すように、ビューア100の1/4波長板102の側を色彩が変化する液晶層204に対向させ、ビューア100越しに色彩が変化する液晶層204を観察する場合を説明する。この場合、直線偏光板101に入射した自然光201は、直線偏光202となり、さらに1/4波長板102を透過することで左回り円偏光203となる。
【0038】
色彩が変化する液晶層204は、楕円偏光が入射されると、その楕円率を変化させるとともに、長軸方位を回転させる性質を持つ。これによる効果は、直線偏光が入射された場合最大となり、円偏光が入射された場合に最小となる。したがって図2(A)に示すように、円偏光203が入射される場合は、変換後の楕円偏光の楕円率は1に近く、長軸方位が回転しても円偏光203の性質と大きくは変わらない楕円偏光205となる。楕円偏光205は反射板206で反射される際にその位相は180度反転するため、回転方向は楕円偏光205と反対である楕円偏光207に変換される。さらに色彩が変化する液晶層204を通過する際に楕円偏光207の長軸方位は回転するが、楕円率が1に近いため、円偏光203と回転方向が逆の円偏光に近い楕円偏光208となる。楕円偏光208は1/4波長板102を通過することにより、楕円率が0に近い、すなわち直線偏光に近い楕円偏光209に変換される。楕円偏光209の長軸方向は直線偏光202の振動方向と略直交するため、直線偏光板101を透過する直線偏光210は光量の少ない暗い光となる(または非常に見難くなる)。
【0039】
次に図2(B)に示すように、ビューア100を図2(A)に示す状態から表裏を反転させ、直線偏光板101の側を色彩が変化する液晶層204に対向させ、ビューア100越しに色彩が変化する液晶層204を観察する場合を説明する。この場合、1/4波長板102に入射した自然光211は、1/4波長板102を透過して自然光212となる。これは、自然光には、全ての偏光状態が含まれているので、1/4波長板102を透過しても、1/4波長板が有する光学作用の効果が現れないからである。
【0040】
自然光212は、直線偏光板101に入射することで、直線偏光213となり、色彩が変化する液晶層204を通過する。色彩が変化する液晶層では、直線偏光213の楕円率が変化し楕円偏光214となると同時に、楕円偏光214の長軸方向も回転される。この際、楕円偏光の楕円率は0に近いため、回転の影響を大きく受ける。楕円偏光214は反射板206により反射される際に位相が180度変化した楕円偏光215となり色彩が変化する液晶層204を透過する。液晶204を透過する際に、楕円偏光215の長軸方向は再度回転される。この回転の大きさは光の波長によって異なるため、直線偏光101を透過する光量は、光の波長によって異なる直線偏光217となる。直線偏光217は1/4波長板102を透過して円偏光218となるが、光量は直線偏光217と変わらない。すなわち、光の波長ごとに光量は異なり、着色して観察される。
【0041】
色彩が変化する液晶層204により、光の波長ごとに楕円偏光の長軸方位は異なる方向をとるため、直線偏光板101と色彩が変化する液晶層204がなす角度によって観察される色彩が異なることになる。したがって、ビューア100を90°回転させると、円偏光218の見た目の色彩が青→緑→赤と変化する。これら図1および図2に示す光学特性を下記表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示すように、直線偏光板と1/4波長板とを組み合わせたビューアを用意し、ビューアの1/4波長板側を識別媒体側に対向させて当該識別媒体をビューア越しに観察すると、コレステリック液晶層が周囲から鮮やかに黒でない所定の色彩(例えば赤や緑)に浮かび上がって見える。また、色彩が変化する液晶層は、透明に見える。なお、ビューア越しの観察において、コレステリック液晶層が浮かび上がって見えるのは、コレステリック液晶層から反射される円偏光の回転方向がビューアを透過する円偏光の回転方向に一致する場合である。そうでない場合(円偏光の回転方向の設定が逆の場合)は、ビューアの直線偏光板を手前側にした場合であってもコレステリック液晶層は、黒く見える。
【0044】
また、ビューアの直線偏光板側を識別媒体側に対向させて当該識別媒体をビューア越しに観察すると、コレステリック液晶層は黒く見え(あるいは見え難く)、色彩が変化する液晶層は、ビューアの回転角に応じた色に見える。つまり、ビューアを裏返すことで、異なる図柄を観察することができる。
【0045】
また、ビューアを用いずに直視した際は、コレステリック液晶層がぼんやりと所定の色で見える。ここでぼんやりと見えるというのは、コレステリック液晶層のパターン周囲からの反射光も見えるので、鮮明に浮かび上がって見える訳ではないことをいう。またこの際、色彩が変化する液晶層は、透明であり、認識することができない(あるいは認識し難い)。
【0046】
このように、ビューアの表裏を利用しての2通りの観察、およびビューアの利用しない直視での観察を行うことで、各場合に異なる図柄を観察することができる。この図柄の違いを利用して識別を行うことができる。この図柄の見え方の違いには、直線偏光板の角度による色彩の違いも含まれているので、詳細な設計条件(液晶の材質や厚さ等)を同じにしなければ同じ物を得ることができない。そのため、偽造が困難であり、高い真贋判定機能を得ることができる。
【0047】
本発明の識別媒体において、第1の液晶の配置パターンとコレステリック液晶層の配置パターンとが同一面上に設けられていることが望ましい。この態様によれば、第1の液晶の配置パターンとコレステリック液晶層の配置パターンとを利用して構成した図柄を効果的に形成することができ、それらパターンにより形成される図柄を利用した識別を行うことができる。
【0048】
本発明において、温度により色彩が変化するインクの層を含むことができる。この態様によれば、温度変化により現れる(あるいは消える)図柄を上述の光学特性に加えて識別に利用することができる。
【0049】
本発明において、コレステリック液晶層は、異なる光学特性を有する複数のコレステリック液晶層を含み、この複数のコレステリック液晶層は、異なる波長および/または旋回方向の光を反射する光学特性を備えている構成とすることができる。この態様によれば、識別媒体の厚み方向に離れて、あるいは平面方向に離れて位置するコレステリック液晶層が示す異なる光学特性を識別に利用することができる。
【0050】
本発明において、複数の光透過性フィルムを積層した構造を有し、隣接する光透過性フィルムの屈折率が異なる設定とされたカラーシフトフィルムの層をさらに含む構成とすることができる。この態様によれば、視野角を変化させていった場合に観察される色調の変化(カラーシフト効果)をカラーシフトフィルムが示し、それを識別に利用することができる。
【0051】
本発明において、ホログラムが形成された層を含む構成とすることもできる。ホログラムは、層にエンボス模様や凹凸を形成することで形成することができる。ホログラムが形成される層は、専用の層(例えばホログラムの模様を形成し易い樹脂層)であってもよいし、液晶層や光反射層を利用してもよい。この態様によれば、ホログラム像を識別に利用することができる。
【0052】
本発明において、蛍光インクの層をさらに含む構成とすることができる。この態様によれば、所定波長の光を照射した際に、蛍光インクの図柄を鮮明に認識することができ、それを識別に利用することができる。
【0053】
本発明において、潜像を形成するためのネマティック液晶層を更に含み、このネマティック液晶層は、識別に利用される波長に対して、n+(1/2)波長(nは、0を含む自然数)から(1/4)波長ずれた位相差の範囲に含まれる位相差または位相差分布を有している構成を採用することができる。この態様によれば、ネマティック液晶層がπ/2〜πの位相差板として機能し、その位相差に応じてコレステリック液晶層からの反射光の光量を調整することができる。このため偏光板を備えたビューアを用いた観察において、コレステリック液晶層のパターンを、濃淡を有する像として観察することができる。この像は、当該ビューアを用いた際に観察される潜像であるので、それを識別に利用することで高い識別性を得ることができる。
【0054】
本発明は、上述した識別媒体を識別する方法として把握することもできる。すなわち、本発明の識別方法は、直線偏光板と1/4波長板とを積層した識別フィルタの一方の面を本発明の識別媒体に向けた状態において、この識別フィルタ越しに当該識別媒体を撮像装置によって撮像する第1撮像ステップと、上記識別フィルタの他方の面を本発明の識別媒体に向けた状態において、この識別フィルタ越しに当該識別媒体を撮像装置によって撮像する第2撮像ステップと、第1撮像ステップおよび/または第2撮像ステップにおいて取得した画像に基づいて識別媒体の真贋を判定する判定ステップとを備えることを特徴とする。
【0055】
判定は、規準となるカラー画像データを電子メモリ等に記憶させておき、それと撮像した画像データとを電子的に比較し、許容されるレベルの一致性が得られるのか否かをCPU等で判定することで行われる。
【0056】
本発明は、上述した識別方法を実行する識別装置として把握することもできる。すなわち、本発明の識別装置は、直線偏光板と1/4波長板とを積層した少なくとも一つの識別フィルタと、この識別フィルタの一方の面を上述した識別媒体に向けた状態において、この識別フィルタ越しに当該識別媒体の撮像を行う第1撮像装置と、上記識別フィルタの他方の面を上述した識別媒体に向けた状態において、この識別フィルタ越しに当該識別媒体の撮像を行う第2撮像装置と、第1撮像装置および/または第2撮像装置が撮像した画像に基づいて当該識別媒体の真贋を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。なお、第1撮像装置と第2撮像装置は、一つの撮像装置で兼ねた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、偽造防止レベルが高く、しかも識別を容易にそして確実に行うことができる技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
(1)第1の実施形態
(1−1)実施形態の構成
図3は、本発明を利用した識別媒体の断面構造を示す概念図である。図3には、物品への貼り付けを行う前の状態(未所用状態)の識別媒体300が示されている。識別媒体300は、ホログラム形成層303の裏面側(貼着面側)に粘着層302を備え、表面側(観察面側)にアルミ蒸着層304を備えた構造を有している。粘着層302は、粘着性を有する材料により構成されており、識別の対象となる物品に識別媒体300を固定するために利用される。粘着層302の露出面側(貼着時に露出する面側)には、離型紙(セパレータ)301が貼り付けられている。識別媒体300を物品に貼着する際は、この離型紙301を剥がし、粘着層302を露出させ、その露出面を物品に接触させる。
【0059】
ホログラム形成層303は、樹脂材料により形成されており、ホログラム表示を行うための凹凸加工が施されている。この凹凸加工は、型をホログラム形成層303に押し付けることで形成される。ホログラム形成層303の上(観察面側)には、可視光線の光反射層として機能するアルミ蒸着層304が設けられている。アルミ蒸着層304の上には、黒色層305を介してコレステリック液晶層306aおよび306bが設けられている。コレステリック液晶層306aおよび306bの違いは、反射する光の中心波長の違いである。また、アルミ蒸着層304上には、接着層307を介して色彩が変化する液晶層308が設けられている。
【0060】
黒色層305は、コレステリック液晶層306を透過してきた光を吸収する光吸収層として機能する。接着層307は、透明であり、色彩が変化する液晶層308をアルミ蒸着層304に固定するために利用されている。
【0061】
コレステリック液晶層306と色彩が変化する液晶層308とは、図柄を構成する所定のパターンを有している。また、コレステリック液晶層306aおよび306bのパターンと、色彩が変化する液晶層308のパターンとの隙間、および色彩が変化する液晶層308の一部を覆うように通常のインク層(印刷層)309が設けられている。
【0062】
(1−2)実施形態の製造例
コレステリック液晶層306は、市販の液晶インクの印刷により形成することができる。この液晶インクとしては、ワッカーケミー社製のものを挙げることができる。色彩が変化する液晶は、以下の製造例により得ることができる。
【0063】
例えば、液晶材料を含有する溶液を配向基板上に塗布して、液晶状態においてねじれネマティック配向させた後に、液晶分子の配向構造を固定化する方法を採用することが出来る。また、このような液晶材料としては、液晶分子がねじれネマティック配向構造となるものであればよく、高分子液晶と低分子液晶のいずれも使用できる。さらに,このように液晶分子の配向構造を固定化する方法としては、液晶材料として70℃以上のガラス転移温度を有する高分子液晶を用いる場合には、液晶状態においてねじれネマティック配向させた後に急冷する方法が挙げられる。また、液晶材料として低分子液晶を用いる場合には、液晶状態においてねじれネマティック配向させた後に、例えばエネルギー線照射により架橋させる方法が挙げられる。
【0064】
このような高分子液晶としては、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系等の主鎖型高分子液晶、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリマロネート系、ポリシロキサン系の側鎖型高分子液晶が挙げられる。また、高分子の構成単位としては、例えば芳香族又は脂肪族ジオール単位、芳香族又は脂肪族ジカルボン酸単位,芳香族又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を好適な例として挙げられる。
【0065】
また、このような低分子液晶としては、飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、不飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、ビフェニルカルボン酸誘導体類、芳香族オキシカルボン酸誘導体類、シッフ塩基誘導体類、ビスアゾメチン化合物誘導体類、アゾ化合物誘導体類、アゾキシ化合物誘導体類、シクロヘキサンエステル化合物誘導体類、ステロール化合物誘導体類等の末端に反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や、前記化合物誘導体類の中で液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物等が挙げられる。
【0066】
さらに、液晶状態において形成させた配向構造を熱架橋や光架橋で固定化する場合においては、熱又は光によって架橋反応し得る官能基又は部位を有している液晶材料を含有させることが好ましい。このような官能基としては、例えばアクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニエーテル基、アリル基、アリロキシ基、グリシジル基等のエポキシ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、低級エステル基等が挙げられ、特にアクリル基、メタクリル基が好ましい。また、前記架橋反応し得る部位としては、マレイミド、マレイン酸無水物、ケイ皮酸およびケイ皮酸エステル、アルケン、ジエン、アレン、アルキン、アゾ、アゾキシ、ジスルフィド、ポリスルフィド等の分市構造を含む部位等が挙げられる。また、これら架橋基及び架橋反応部位は、液晶材料を構成する液晶物質自身に含まれていてもよいが、架橋性基又は部位をもつ非液晶性物質を別途液晶材料に添加してもよい。
【0067】
また、このような液晶材料を含有する溶液は、液晶状態において液晶分子をねじれネマティック配向させるための光学活性化合物を更に含むことが好ましい。このような光学活性化合物としては、光学活性な低分子化合物又は高分子化合物を挙げることが出来る。光学活性を有する化合物であればいずれも本発明に使用することができるが、高分子液晶との相溶性の観点から光学活性な液晶性化合物であることが望ましい。
【0068】
また、前記液晶材料を含有する溶液には、塗布を容易にするために適宜公知の界面活性剤を加えてもよい。さらに、前記駅所材料を含有する溶液には、得られる液晶層の耐熱性等を向上させるために、液晶相の発現を妨げない程度のビスアジド化合物やグリシジルメタクリレート等の架橋剤を添加し、後の工程で架橋することもできる。
【0069】
また、このような液晶材料を含有する溶液の調整に用いる溶媒としては、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、これらとフェノール類の混合溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、スルホラン、シクロヘキサンなどの極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、用いる液晶材料の種類等に応じれ適宜好適なものを選択して使用することができ、必要により適宜混合して使用しても良い。また、このような溶液の濃度は、液晶材料の分子量や溶解性等に応じて適宜選択することができる。
【0070】
また、このような配向基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエテールエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルム、又はこれらのフィルムの一軸延伸フィルム等を用いることができる。これらのフィルムはその製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも液晶材料に対し十分な配向能を示すものがあるが、配向が不十分、又は配向能を示さない等の場合には、適度な過熱下に延伸する処理、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けるラビング処理、酸化ケイ素等の斜方蒸着処理、及び、これらを適宜組み合わせた処理等を必要により適宜施したフィルムを用いてもよい。
【0071】
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であればよく、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することが出来る。このような塗布方法としては、例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法等を挙げることができる。また、塗布の後に、ヒーターや温風吹きつけ等の方法による溶媒状況(乾燥)工程を入れてもよい。
【0072】
また、配向基板上に液晶分子を固定化した後においては、配向基板と色彩が変化する液晶層との界面においてロールなどを用いて機械的に剥離する方法、構造材料すべてに対する貧溶媒に浸漬した後に機械的に剥離する方法,貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、配向基板と色彩が変化する液晶層との熱膨張係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、配向基板そのもの、又は配向基板上の配向膜を溶解除去する方法等によって、色彩が変化する液晶層単体を得ることができる。
【0073】
(1−3)実施形態の識別機能
図3に例示する識別媒体の識別機能の一例を説明する。図4は、図3に示す識別媒体300を正面(図3の上方)から観察した場合の見え方の一例を示す概念図である。図4のA−A’で切った断面が図3に示されている。
【0074】
図4(A)は、図1に示すビューア100を利用せずに直接識別媒体の観察を行った場合の見え方である。図4(B)は、ビューア100の直線偏光板101側を手前側(観察者側)にし、(1/4)波長板102を識別媒体300側にした状態で識別媒体300の観察を行った場合の見え方である。図4(C)は、ビューア100の(1/4)波長板102を手前側(観察者側)にし、直線偏光板101側を識別媒体300側にした状態で識別媒体300の観察を行った場合の見え方である。
【0075】
直接観察した場合、図4(A)に示すように、まずホログラムの模様を示すアルミ蒸着層304が金属光沢で見える。これは、図3に示すホログラム形成層303の凹凸構造に倣ってアルミ蒸着層304が形成されており、それが図4に示す符号304のパターンで観察されるからである。また、コレステリック液晶層306a〜cが所定の設定された色にぼんやりと(やや不鮮明に)見える。これは、コレステリック液晶層306a〜cから反射された所定の色の円偏光が周囲の反射光に混ざって観察されるからである。なおこの例において、コレステリック液晶層306aは、赤の左回り円偏光を反射し、コレステリック液晶層306bは、緑の左回り円偏光を反射し、コレステリック液晶層306cは、黄緑の左回り円偏光を反射する設定とされている。
【0076】
また直接観察した場合、図4(A)に示すように、色彩が変化する液晶層308の文字パターンがホログラムの模様に観察される。これは、直接観察した場合、色彩が変化する液晶層308は透明であるので、図示する文字パターンでアルミ蒸着層304(図3参照)からの反射光が観察されるからである。また直接観察した場合、図4(A)に示すように、通常のインク層309が観察される。この例では、通常のインク層309は青のインクとされている。
【0077】
次に図4(A)に示す識別媒体300を図1に示すビューア100を介して観察した場合の見え方の一例を説明する。まず、ビューア100の直線偏光板101側を手前側(観察者側)にし、(1/4)波長板102を識別媒体300側にした状態で識別媒体300の観察を行った場合の見え方の一例を説明する。
【0078】
この場合、図1(A)に示す原理により、コレステリック液晶層306a〜cが図4(A)の場合に比較してより鮮明に浮かび上がって見える。また、図2(A)に示す原理により、色彩が変化する液晶層308の色彩は認識されず、図4(A)の場合より暗い見え方で色彩が変化する液晶層308の文字パターンが観察される。なお、アルミ蒸着層304および通常のインク層309は、ビューア100における光量の減衰の影響により、図4(A)の場合に比較して暗く見える。
【0079】
次に図4(A)に示す識別媒体300を図1に示すビューア100を介して観察した場合の見え方の他の一例を説明する。この場合、ビューア100の直線偏光板101側を識別媒体300側にし、(1/4)波長板102を手前側(観察者側)にした状態で識別媒体300の観察が行なわれる。
【0080】
この場合、図1(B)に示す原理により、コレステリック液晶層306a〜306cからの所定の色の反射光は観察されず(もしくは見え難く)、コレステリック液晶層306a〜306cへの入射光は、そこを透過して黒色層305に吸収される。このため、コレステリック液晶層306a〜306cは、黒いパターンもしくは暗いパターンに見える。また、色彩が変化する液晶層308は、図2(B)に示す原理に従って、ビューア100の回転角に応じた色彩に見える。すなわち、ビューア100を回転させると、図4に示す色彩が変化する液晶層308の文字パターンの色が変化する。例えば、光軸を中心にビューア100を回転させてゆくと、90°の回転範囲において、液晶層308の文字パターンの色が青→緑→赤と変化する模様が観察される。なお、アルミ蒸着層304および通常のインク層309は、図4(A)の場合に比較して暗く見える。
【0081】
このように、直線偏光板と(1/4)波長板とを積層したビューア(光学フィルタ)を介して、識別媒体300を観察する際、ビューアの表裏を反転させることで、コレステリック液晶層306a〜cの表示パターンが(所定の色彩表示)⇔(黒表示)と変化し、色彩が変化する液晶層308の表示パターンが(所定文字パターンのホログラム表示)⇔(ビューアの角度により変化する色彩表示)と変化する。この見え方の変化を利用することで識別媒体300の真贋を判定することができる。この変化は、鮮明であるので、高い識別機能を得ることができる。
【0082】
(2)第2の実施形態
本実施形態は、図4に示す識別媒体300の再利用を困難にする工夫に関する。図5は、他の実施形態の識別媒体を示す正面図である。図5に示す識別媒体320は、図4に示す識別媒体300の少なくとも一部の層に対して、その周辺付近に放射状に切れ目321が入れてある。この構成によれば、真贋判定の対象となる物品に貼り付けた状態から、識別媒体320を引き剥がそうとした際に、切れ目321から識別媒体320が引き裂かれ、再利用が困難になる。このため、悪意をもった者による識別媒体320の再利用(悪用)を困難にすることができる。
【0083】
(3)第3の実施形態
図3に示す構成において、黒色層305の変わりに、黒色インクで構成された図柄や文字の層、その上の室温(例えば30℃以下の温度範囲)で黒または濃い色で、高温(例えば45℃を超える温度範囲)で透明なるインク(示温インクと称する)により構成される層とで構成された積層構造を配置してもよい。この場合、室温では、図3の場合と同じ見え方を示し、高温になると、黒色インクで形成した図柄や文字が浮かび上がって見えてくる光学特性を得ることができる。なお、黒色インクと淡色インクで図柄や文字を構成するとさらによく浮かび上がる。このように、本発明の構成に、温度により発色や透過性が変化するインク材料を組み合わせることで、より複雑な光学特性を得ることができる。
【0084】
(4)第4の実施形態
(4−1)実施形態の構成
図6は、他の実施形態の構造を示す断面図である。図6には、識別媒体630の断面構造が示されている。識別媒体630は、透明な樹脂により構成されるホログラム形成層633の裏面側に黒色粘着層632を設けた構成を有している。黒色粘着層632は、光吸収層としても機能する。黒色粘着層632の裏面側には、セパレータ(離型紙)631が貼り付けられている。識別媒体630を物品に貼り付ける際には、セパレータ631を剥がし、黒色粘着層632の露出した面を物品の表面に接触させる。
【0085】
ホログラム形成層633の表側(観察面側)には、コレステリック液晶のインクを利用して形成したコレステリック液晶層634が設けられている。この例において、コレステリック液晶層634は、下地のホログラム形成層633の凹凸構造に倣った層構造を有している。コレステリック液晶層634上には、透明な樹脂で構成された接着層635が設けられ、その上にコレステリック液晶層636と色彩が変化する液晶層637が設けられている。接着層635とコレステリック液晶層636の積層構造、さらに接着層635と色彩が変化する液晶層637の積層構造は、所定のパターンに形成されている。また、コレステリック液晶層634は、緑の左回り円偏光を選択的に反射し、コレステリック液晶層636は、赤の右回り円偏光を選択的に反射する設定とされている。2つのコレステリック液晶層の光学特性の組み合わせは、反射光の旋回方向のみを変えてもよいし、反射光の中心波長のみを変えるのであってもよい。
【0086】
この例において、ホログラム形成層633を利用せずに、コレステリック液晶層634にホログラム型を用いてホログラムを形成するための凹凸を直接形成することもできる。この場合、ホログラム形成層633は不要となる。
【0087】
(4−2)実施形態の識別機能
図6に示す識別媒体630を直接見ると、コレステリック液晶層634が直接見える部分では、コレステリック液晶層634が緑色のホログラム模様に見え、さらにコレステリック液晶層634とコレステリック液晶層636とが重なった部分が黄色のホログラム模様に見える。
【0088】
識別媒体630を図1および図2に示すビューア100で見ると以下のように見える。まず、ビューア100の直線偏光板101側を手前側(観察者側)にしてビューア100越しに識別媒体630を観察すると、図1(A)に示す原理により、コレステリック液晶層634からの緑の左回り円偏光を観察することができる。この際、コレステリック液晶層636からの赤の右回り円偏光は、ビューア100で遮断されるので、コレステリック液晶層636のパターンは黒く見える。
【0089】
そして、ビューア100の表裏を反転させてビューア100越しに識別媒体630を観察すると、図1(B)の原理により、コレステリック液晶層634と636は黒くまたは暗く見え、色彩が変化する液晶層637がビューア100の回転角度に応じた色彩で見える。
【0090】
また、ビューアとして、直線偏光板101と(1/4)波長板の向きをビューア100とは90度異ならせて積層したものを用い、直線偏光板101側を手前側(観察者側)にしてビューア100越しに識別媒体630を観察した場合、さらに別の見え方を観察することができる。すなわちこの場合、ビューア100を透過する円偏光の旋回方向が反転するので、図1(A)に示す原理により、コレステリック液晶層636からの赤の右回り円偏光を観察することができる。この際、コレステリック液晶層634からの緑の左回り円偏光は、ビューア100で遮断されるので、露出したコレステリック液晶層634のパターンは黒く見える。
【0091】
また、この場合もビューアを裏返し、(1/4)波長板側を手前側として観察を行なうと、コレステリック液晶層634と636は黒くまたは暗く見え、色彩が変化する液晶層637がビューア100の回転角度に応じた色彩で見える状態となる。
【0092】
このように、本実施形態においても、コレステリック液晶層と色彩が変化する液晶層の見え方がビューアの表裏の反転により明確に変化する模様を観察することができる。そしてこの見え方の変化を利用した識別を行なうことができる。
【0093】
(5)第5の実施形態
コレステリック液晶層、色彩が変化する液晶およびカラーシフトフィルムを組み合わせた構造とすることもできる。図7に本実施形態の断面構造を示す。図7に示す識別媒体640は、光吸収層兼粘着層として機能する黒色粘着層632上にカラーシフトフィルム641が設けられ、その上に透明な樹脂材料により構成されるホログラム形成層642が設けられた構造を有している。また、ホログラム形成層642上には、接着層635とコレステリック液晶層636、さらに接着層635と色彩が変化する液晶層637とが、所定のパターンで形成されている。
【0094】
カラーシフトフィルム641は、異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した積層構造を有するフィルムである。カラーシフトフィルムは、例えば第1の屈折率を有する光透過性の薄膜フィルム(A層)と第2の屈折率を有する光透過性の薄膜フィルム(B層)とを交互に多層に積層した構造を有している。
【0095】
カラーシフトフィルムに白色光を当てると、フレネルの反射則に従って、各層の界面において光の反射が発生する。すなわち、A層とB層との間の界面において、入射光の一部が反射し、その他は透過する。A層とB層との間の界面において、入射光の一部が反射するのは、A層の屈折率とB層の屈折率とが異なるからである。A層とB層との間の界面は、繰り返し現れるので、各界面で生じた反射光は干渉する。入射光の入射角を徐々に大きくすると、各界面で生じた反射光の光路差は、徐々に小さくなり、より短波長の光が干渉し強め合うようになる。従って、白色光が当たっているカラーシフトフィルムをより斜め(面に平行に近い角度)から見る程、より短波長の光が強く反射しているように見え、反射光がだんだん青っぽく見えるようになる。この現象をカラーシフトという。なお、入射角は、入射面への垂線と入射光の光軸とがなす角度として定義される。
【0096】
この構成によれば、図1および図2に示す原理を利用した光学特性に加えて、視野角を変化させた際に、カラーシフトフィルム641が示すカラーシフトを観察することができる。また、コレステリック液晶層636もカラーシフトを示すので、両者のカラーシフトが重なったものを観察することができる。また、これらのカラーシフトが、ホログラム模様(あるいはホログラム画像)の色合いの変化として観察される。このため見え方が複雑なものとなり、より高い識別性を得ることができる。
【0097】
(6)第6の実施形態
コレステリック液晶層や色彩が変化する液晶層の上に蛍光インクで図柄を印刷してもよい。この構成によれば、適当な波長の光(例えばブラックライト)を当てることで蛍光インクの図柄が浮かび上がり、それを識別に利用することができる。
【0098】
(7)第7の実施形態
本発明を利用した識別媒体において、コレステリック液晶層上またはその上方に、潜像を形成するためのネマティック液晶層を配置し、このネマティック液晶層を識別に利用される波長に対して、n+(1/2)波長(nは、0を含む自然数)から(1/4)波長ずれた位相差の範囲に含まれる位相差(または位相差分布)としてもよい。
【0099】
この構成によれば、直視した場合には観察できない(あるいは観察し難い)潜像を、偏光板を備えた光学フィルタ(例えば、図1や図2に示すビューア)を介して観察した際に観察することができる。特に、位相差分布を有するネマティック液晶層とすることで、濃淡のある潜像を形成することができる。このため、さらに高い識別性を得ることができる。
【0100】
(8)第8の実施形態
(8−1)実施形態の構成
以下、本発明を利用した識別媒体を識別する装置の例およびその装置の動作例について説明する。図8は、識別装置の一例を示す概念図である。図8に示す識別装置800は、装置筐体801内に識別対象の物品を置くステージ802を備えている。図8には、ステージ802上に身分証明カード803が置かれた状態が示されている。身分証明カード803には、第1の実施形態で説明したのと同じ構造の識別媒体804が貼り付けられている。
【0101】
識別装置800は、識別媒体804に光を照射するためのライト805およびCCDカメラ807を備えている。ライト805は、特定の波長や偏光状態にない白色自然光を発生する。CCDカメラ807は、ライト805によって照らされた識別媒体804を撮像する。この際、識別媒体804とCCDカメラ807との間には、光学フィルタ806が挿入される。光学フィルタ806は、図1および図2に示すビューア100と同じ構成を有し、表裏を反転可能で、また識別媒体804とCCDカメラ807との間から退避可能な機構を備えている。
【0102】
CCDカメラ807が撮像した画像の画像データは、判定装置808に出力される。判定装置808は、メモリ809に記憶されている判定の基準となる画像データを読み出し、それとCCDカメラ807から出力された画像データとを比較する。判定装置808は、所定のレベルよりも画素データの相違が多い場合、識別媒体804を贋物(偽造品)と判定し、そうでない場合、識別媒体804を真正と判定する。この判定結果は、判定結果出力装置810に出力される。
【0103】
判定結果出力装置810は、ブザー、ランプまたは液晶ディスプレイ等を備え、判定結果を装置外に出力する。例えば、判定結果出力装置810は、識別媒体804が贋物と判定された場合は赤ランプを点灯し、真正と判定された場合は青ランプを点灯する構成を有する。
【0104】
本実施形態では、撮像装置とビューアとを一つ備えた例を説明したが、撮像装置および/またはビューアを複数配置し、観察状態に応じてそれらを適宜選択する構成としてもよい。
【0105】
(8−2)実施形態の動作
以下、識別装置800の動作の一例を説明する。まず、メモリ809に真正の識別媒体804の撮像画像の画像データを基準画像データとして記憶させておく。ここでは、光学フィルタ806を退避させた状態で撮像した画像データ(つまり識別媒体804を直接撮像した場合の画像データ)と、光学フィルタ806越しの撮像において、光学フィルタ806の一方の面を識別媒体804に向けた状態で撮像を行った場合の画像データと、光学フィルタ806越しの撮像において、光学フィルタ806の他方の面を識別媒体804に向けた状態で撮像を行った場合の画像データとを基準画像データとしてメモリ809に記憶しておく。
【0106】
識別動作に当たっては、識別媒体804が貼り付けられた物品(この場合は、身分証明カード803)をステージ802上に置く。次いで光学フィルタ806を識別媒体804とCCDカメラ807との間から退避させた状態において、ランプ805から白色自然光を識別媒体804に照射し、CCDカメラ807によって識別媒体804を撮像する。この撮像画像の画像データは、判定装置808に送られ、さらに一旦メモリ809に記憶される。
【0107】
次に光学フィルタ806を識別媒体804とCCDカメラ807との間に配置し、光学フィルタの一方の面側を識別媒体に向けた状態とする。そして、ランプ805から白色自然光を識別媒体804に照射し、光学フィルタ越しにCCDカメラ807によって識別媒体804を撮像する。この撮像画像の画像データも一旦メモリ809に記憶させる。
【0108】
次に光学フィルタ806の表裏を反転させ、光学フィルタの他方の面側を識別媒体に向けた状態とする。そして、ランプ805から白色自然光を識別媒体804に照射し、光学フィルタ越しにCCDカメラ807によって識別媒体804を撮像する。この撮像画像の画像データも一旦メモリ809に記憶させる。
【0109】
そして、撮像した各画像データと対応する基準画像とをメモリ809から読み出し、3撮像条件における基準画像の画像データと撮像画像の画像データとの比較が判定装置808において行われる。3つの撮像条件において、基準画像と撮像画像とがそれぞれ一致した場合、判定装置808は、真正の判定結果を出力する。また、3つの撮像条件において、一つでも基準画像と撮像画像とが一致しないものがある場合、判定装置808は、贋物の判定結果を出力する。そして、これら判定結果が、ユーザが認識できる情報として、判定結果出力装置810から識別装置800外に出力される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】発明の原理の一部を示す概念図である。
【図2】発明の原理の一部を示す概念図である。
【図3】発明を利用した識別媒体の概略の構造を示す断面図である。
【図4】発明を利用した識別媒体の見え方を概念的に示す正面図である。
【図5】発明を利用した他の識別媒体の概要を示す正面図である。
【図6】発明を利用した他の識別媒体の概略の構造を示す断面図である。
【図7】発明を利用した他の識別媒体の概略の構造を示す断面図である。
【図8】識別装置の概略を示す概念図である。
【符号の説明】
【0111】
300…識別媒体、301…離型紙、302…粘着層、303…ホログラム形成層、304…アルミ蒸着層、305…黒色層、306a…コレステリック液晶層、306b…コレステリック液晶層、307…接着層、308…色彩が変化する液晶層、309…通常のインク層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光フィルタを介した観察において、前記直線偏光フィルタの回転角に応じて観察される光の波長が変化する第1の液晶層と、
コレステリック液晶層と、
前記コレステリック液晶層の下側に位置する光吸収層と
を備えることを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
前記第1の液晶層は、
波長400nmから800nmの光に対し、
該液晶層を構成する液晶分子の複屈折と螺旋ピッチの積が、光の波長の少なくとも3.5倍よりも大きく、
かつ、ブラッグ回折による選択反射を生じない少なくとも1層のねじれネマティック液晶層と、
反射層と
からなることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
前記第1の液晶層の配置パターンと前記コレステリック液晶層の配置パターンとが同一面上に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の識別媒体。
【請求項4】
切れ目が形成された層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の識別媒体。
【請求項5】
温度により色彩が変化するインクの層を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項6】
前記コレステリック液晶層は、異なる光学特性を有する複数のコレステリック液晶層を含み、
前記複数のコレステリック液晶層は、異なる波長および/または旋回方向の光を反射する光学特性を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項7】
複数の光透過性フィルムを積層した構造のカラーシフトフィルムを含み、
前記カラーシフトフィルムは、隣接する前記光透過性フィルムの屈折率が異なる値に設定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項8】
ホログラムが形成された層を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項9】
蛍光インクの層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項10】
潜像を形成するためのネマティック液晶層を更に含み、
前記ネマティック液晶層は、識別に利用される波長に対して、n+(1/2)波長(nは、0を含む自然数)から(1/4)波長ずれた位相差の範囲に含まれる位相差または位相差分布を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項11】
直線偏光板と1/4波長板とを積層した識別フィルタの一方の面を前記請求項1または前記請求項2に記載の識別媒体に向けた状態において、前記識別フィルタを介して前記識別媒体を撮像装置によって撮像する第1撮像ステップと、
前記識別フィルタの他方の面を前記請求項1または前記請求項2に記載の識別媒体に向けた状態において、前記識別フィルタを介して前記識別媒体を撮像装置によって撮像する第2撮像ステップと、
前記第1撮像ステップおよび/または前記第2撮像ステップにおいて取得した画像に基づいて前記識別媒体の真贋を判定する判定ステップと
を備えることを特徴とする識別方法。
【請求項12】
直線偏光板と1/4波長板とを積層した少なくとも一つの識別フィルタと、
前記識別フィルタの一方の面を前記請求項1または前記請求項2に記載の識別媒体に向けた状態において、前記識別フィルタを介して前記識別媒体の撮像を行う第1撮像装置と、
前記識別フィルタの他方の面を前記請求項1または前記請求項2に記載の識別媒体に向けた状態において、前記識別フィルタを介して前記識別媒体の撮像を行う第2撮像装置と、
前記第1撮像装置および/または前記第2撮像装置が撮像した画像に基づいて前記識別媒体の真贋を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−129421(P2008−129421A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315743(P2006−315743)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】