識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置
【課題】
本発明は、識別情報の誤読を確実に防止することができる識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の識別情報取得装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置は、磁性情報として読取可能な識別情報を含む手形S等である被読取部材を搬送する搬送路Rに設けられて識別情報を所定の傾き状態で磁性情報として読み取る読取手段である磁気ヘッド10を備えていることを特徴とする。
本発明は、識別情報の誤読を確実に防止することができる識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の識別情報取得装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置は、磁性情報として読取可能な識別情報を含む手形S等である被読取部材を搬送する搬送路Rに設けられて識別情報を所定の傾き状態で磁性情報として読み取る読取手段である磁気ヘッド10を備えていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、磁気インク文字等からなる識別情報の読取処理に用いられる識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金融機関においては、例えば、手形類や小切手等に印字された磁気インク文字情報に基づいて、これら手形等の各種分類整理を行っている。このような分類整理の作業においては、大量の手形等を処理することから、手形等に印字された磁気インク文字情報を磁気情報として自動的に読み取り可能な磁気インク文字読取装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、手形等の読取においては、このような磁気インク文字読取装置を用いたとしても、手形等の文字情報を磁気情報として読み取った結果が、十分な読取品質を有しているにもかかわらず、読取情報と実際の手形等に印字された磁気インク文字情報とが一致しない、いわゆる誤読が生じるという問題がある。
【0004】
例えば、磁気インク文字読取装置での読取処理によって文字情報から文字毎の磁気波形を十分な読取品質で高精度に取得できたとしても、例えば、E13Bフォント(規格フォント)の文字「2」及び「5」等のように磁気波形が非常に似た波形として取得される特定の文字が存在する場合には、読取情報と実際の手形等の磁気インク文字情報とが一致せず、誤読が生じることがある。
【0005】
すなわち、このような特定の文字は、予め読み取った磁気基準波形と実際に読み取った磁気波形との形状比較だけでなく磁気波形の時間軸の差を比較して識別しているため、手形等の搬送速度に変動が生じると、磁気基準波形との照合がうまくいかず、磁気波形の時間軸との差が実質的に小さくなり、文字の誤読が発生してしまう。
【0006】
なお、上記の問題は、手形等の読取処理に限って発生するものではなく、磁性情報として読取可能に付与された識別情報を有する被読取部材の読取処理においても、同様に発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−217635号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情に鑑み、識別情報の誤読を確実に防止することができる識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の識別情報取得装置は、磁性情報として読取可能な識別情報を含む被読取部材を搬送する搬送路に設けられて前記識別情報を所定の傾き状態で前記磁性情報として読み取る読取手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記識別情報読取装置を備えていることを特徴とする手形読取装置にある。
【0011】
さらに、本発明の他の態様は、上記識別情報読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の識別情報読取装置によれば、被読取部材に付与された識別情報において、異なる文字等のように外観等で区別可能な異なる形態でありながら通常の読取処理にて磁気波形が酷似する特定の識別形態が識別情報に含まれていても、その識別情報を所定の傾き状態で読み取るようにしたので、特定の識別形態に基づく磁気波形に、区別できる程度の波形の違いを生じさせることが可能となり、その結果、特定の識別形態を正確に区別することができ、識別情報の誤読を確実に防止することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の他の態様によれば、上記識別情報読取装置を備えているので、識別情報の誤読を確実に防止する手形読取装置、画像読取装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係る磁気インク文字読取装置の構成を示す概略図。
【図2】手形Sの一例を示す概略図。
【図3】E13Bフォントの文字一覧。
【図4】従来装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を示す図。
【図5】従来装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較結果を示す図。
【図6】実施形態1に係る磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図。
【図7】図6に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図。
【図8】実施形態1に係る識別情報の読取手順を示すフローチャート図。
【図9】実施例1に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【図10】実施例2に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【図11】実施例3に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形を示す図。
【図12】比較例1に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形を示す図。
【図13】実施例4に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形を示す図。
【図14】比較例1に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形を示す図。
【図15】実施形態2に係る磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図。
【図16】図15に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図。
【図17】実施例5に係るE13Bフォントの文字「2」の磁気波形を示す図。
【図18】実施例6に係るE13Bフォントの文字「5」の磁気波形を示す図。
【図19】実施例7に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【図20】実施例8に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置の構成を示す概略図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の識別情報読取装置を備えた磁気インク読取装置は、手形読取装置であり、手形を積載する為のホッパー部1を備えている。また、この磁気インク文字読取装置のホッパー部1には、磁性情報として読取可能な識別情報、具体的には磁性材料等を含むインクからなる磁気インク文字(MICR[Magnetic Ink Character Recongnition]文字)により印刷された識別情報を有する手形Sが積載される。なお、手形Sの詳細については後述する。
【0018】
また、ホッパー部1には、積載される手形Sを一方側の端面に付勢する押圧板2が設けられている。そして、手形Sは、ホッパー部1に積載された状態で、押圧板2によって給紙ローラ3に付勢されている。
【0019】
さらに、手形Sは、コントローラユニット4の指示により給紙ローラ3を介してフィードローラ5側に給紙され、分離ローラ6により1枚ずつに分離された後に、搬送路Rに送り出される。手形Sに印刷された識別情報は、搬送路Rに設けられた永久磁石7によって磁化方向が整えられる。なお、本実施形態では永久磁石7を用いているが、勿論これに限定されず、磁気インク文字に磁化を与えるものであればよく、例えば、電磁石等の磁化手段を用いてもよい。また、手形Sは、搬送ローラ対8によって、紙端検知センサ9を経て磁気ヘッド10に搬送され、磁気ヘッド10により識別情報が読み取られる。なお、この磁気ヘッド10には、手形Sを密着させるための押圧コロ11が対向して配置されている。
【0020】
なお、磁気ヘッド10を通過した手形Sは、搬送ローラ対12、13により、搬送路Rを通って画像読み取りのタイミングを取るためのレジストリセンサ14、手形Sの両面の画像を読み取る画像読取センサ対15に搬送され、手形Sの両面の画像を読み取る。
【0021】
そして、手形Sの画像を読み取った後に、手形Sの裏面にエンドーサ16で画像を読み取った日付等を印刷し、排紙ローラ17により搬送される。排紙ローラ17の排紙方向には排紙センサ18、フラッパ19が設けられており、このフラッパ19により搬送路Rが切換えられ、手形Sは排紙トレイ20a、20bの何れかに排紙される。
【0022】
なお、このような磁気インク文字読取装置は、ハウジング21内にローラ群を駆動するモータ22が設けられており、磁気インク文字読取装置全体を制御するコントローラユニット4はインタフェースケーブルを介して接続されている図示しないコンピュータと通信を行う。
【0023】
ここで、図2には、このような磁気インク文字読取装置によって読取対象となる手形Sの一例を示す。手形Sには、例えば、本実施形態では、図2に示すように所定の領域にMICR文字等が、磁気インクや磁気トナー等の磁気インク文字からなり、磁性情報として読取可能な識別情報として印字されている。また、手形Sの領域は、図の左側から91a「補助自行欄II」、91b「補助自行欄I」、91c「交換所欄(交換番号、機関コード)」、91d「自行データ欄(店No・手形No・口座No)」、91e「金額欄」に分けられ、各欄に識別情報が記録されている。
【0024】
また、図3に、E13Bフォントの文字の一覧を示す。図3に示すE13Bフォントの各文字の中には、外観上、各文字の識別が比較的容易であるにもかかわらず、詳細は後述するが、文字「2」及び「5」については磁気波形として非常に酷似しているため、従来装置では、磁気的な情報に基づく判定で両者を確実に識別することが困難である。
【0025】
以下、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を例に挙げ、従来装置において、識別情報の誤読が生じてしまう原因について説明する。ここでは、まず、E13Bフォントの文字「2」及び「5」について、一定搬送速度下で、磁気情報を読み取るようにし、読み取った両者の磁気波形について比較を行った場合について説明する。また、ここでの従来装置は、図示しないが、磁気ヘッドを手形の搬送路(搬送方向)に対して平行、すなわち、直立に設置した装置である。
【0026】
図4には、従来装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を示す。なお、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。また、図中の文字上の線は文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0027】
ここで、文字「2」は、次のようにして磁気ヘッドにより磁気波形として読み取られる。まず、磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図4の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図4の点線のDに対応する。
【0028】
一方、文字「5」についても、上述した文字「2」と同様にして、まず、磁気ヘッドがA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッドがB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図4の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッドがC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッドがD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図4の点線のD´に対応する。
【0029】
そして、上記のようにして読み取った文字「2」及び「5」の磁気波形を比較すると、図4に示すように、非常に似た磁気波形を示しており、両者の相違点としては、ピーク位置(尾根、谷の部分)の時間軸の差のみである。したがって、文字「2」と「5」を区別するためには、磁気波形の時間軸の差を比較し、時間軸方向におけるピーク位置の違いに基づいて、両者を区別しなくてはならない。しかしながら、上述したような磁気波形の解析方法は、手形の搬送速度が一定の場合、すなわち、手形の搬送速度に変動が生じていない状態で有効な解析手法である。したがって、例えば、手形の搬送速度に変動が生じた場合には、上述したような解析手法では、E13Bフォントの文字「2」及び「5」について誤読が生じるおそれがある。この点については、以下に詳述する。
【0030】
ここで、図5には、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較結果を示す。ここでは、手形の搬送速度に変動が生じた場合、具体的には、手形の所定の搬送速度(設定値)から低速側に速度変動した時の文字「2」と高速変動した時の文字「5」についての磁気波形について比較した。なお、図5の文字上の線は文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0031】
図5に示すように、文字「2」の磁気波形については、磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図5の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図5の点線のDに対応する。
【0032】
一方、文字「5」の磁気波形についても、図5に示すように、磁気ヘッドがA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッドがB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図5の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッドがC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッドがD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図5の点線のD´に対応する。
【0033】
そして、E13Bフォントの文字「2」及び「5」についての磁気波形の特性比較を行うと、図5に示すようにピーク位置(尾根、谷の部分)がかなり近いものとなり、非常に酷似した磁気波形となる。すなわち、手形の搬送速度に変動が発生してしまうと、1文字分の幅を8等分に分割し、磁気ヘッドで文字を読み取った時に得られる読取信号のピークを探索する認識方法においては、時間軸方向に磁気波形が変動した結果、同じブロックにピークが存在するようになり、結果として、例えば、「2」の磁気波形を「5」の磁気波形として認識し、識別情報の誤読が生じる結果になってしまう。
【0034】
これに対し、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置によれば、詳細は後述するが、搬送路Rに設けられて識別情報を所定の傾き状態で磁性情報として読み取る読取手段である磁気ヘッド10を備えているので、上述したような磁気的な情報に基づく判定で識別が困難な文字であっても、比較的容易に且つ正確に識別することができ、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0035】
以下、図6及び図7を参照し、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置により、手形の識別情報の読取機構について説明する。なお、図6は、本発明の実施形態1に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図である。図7は、図6に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の磁気インク文字読取装置は、手形Sの搬送方向上流側から順に、レジストセンサ22、永久磁石7、磁気ヘッド10が搬送路Rに沿ってそれぞれ配置されている。そして、手形Sは、レジストセンサ22により搬送状態が検知され、永久磁石7により識別情報(磁気インク文字)が磁化された後、磁気ヘッド10を通過するようになっている。なお、図中の矢印Dは、手形Sの搬送方向を示す。
【0037】
磁気ヘッド10は、図7に示すように、手形Sに印字された識別情報を、所定の傾き状態で磁性情報として読み取る読取手段を構成している。本実施形態では、磁気ヘッド10は、手形Sの搬送路R(搬送方向D)に対し、所定の角度傾けた状態で設置されている。すなわち、磁気ヘッド10は手形Sの搬送方向Dに所定の角度傾けて設置され、手形Sの識別情報は磁気ヘッド10により所定の傾き状態で読み取られる。
【0038】
ここで、「磁気ヘッド10により識別情報を所定の傾き状態で読み取る」とは、例えば、異なる文字等のように外観等で区別可能な異なる形態でありながら通常の読取処理において磁気波形が酷似する特定の識別形態(以下、特定の識別形態ともいう。)が識別情報に含まれていても、その識別情報を所定の傾き状態で読み取ることを意味する。これにより、特定の識別形態に基づく磁気波形に、区別できる程度の波形の違いを生じさせることが可能となり、その結果、特定の識別形態を正確に区別することができ、識別情報の誤読を確実に防止することができる。なお、ここでいう「所定の傾き状態」とは、特定の識別形態に基づく磁気情報、例えば、磁気波形に、区別できる程度の違いが生じる傾き状態のことを意味する。なお、このような特定の識別形態の一例としては、図3に示すE13Bフォントの文字「2」と「5」が挙げられる。
【0039】
また、本実施形態のように磁気ヘッド10を「所定の角度傾けた状態で設置する」とは、例えば、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を例に挙げれば、これら文字に基づく磁気波形において、区別できる程度の違いが生じる角度で設置することを意味する。なお、「区別できる程度の違い」の一例としては、例えば、手形Sの搬送速度の変動が生じた場合でも、磁気波形のピーク位置が区別できる程度に異なる場合が挙げられる。そして、本実施形態では、磁気ヘッド10による識別情報の読取角度を傾ける度合いによって、特定の識別形態に基づく磁性波形に区別できる程度の違いが生じるよう適宜調整することが可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、磁気ヘッド10の設置角度Xについて、識別情報から読み取る磁気波形が過度に減衰して判読不能にならない角度であることが好ましい。E13Bフォントを例に挙げると、例えば、文字「2」及び「5」以外の文字から読み取る磁気波形特性に支障が出ない程度の角度であることが好ましい。このため、図7に示すように、磁気ヘッド10の設置角度Xとしては、例えば、本実施形態では、図中点線で示した手形Sの搬送路(搬送方向D)に直交する読取基準線に対して磁気ヘッド10を+2度傾けた状態で設置した。
【0041】
そして、このような磁気ヘッド10には、図6に示すように、増幅回路23、フィルタ回路24、A/D変換機25が接続されている。すなわち、磁気ヘッド10で読み込まれた磁性情報(磁気信号)は、増幅回路23によって増幅された後、フィルタ回路24によって高周波域のノイズが取り除かれ、A/D変換機25によってA/D変換される。
【0042】
また、このようなA/D変換機25には、磁気ヘッド10で読み取った読取情報が識別情報に対応する情報であるか否かを判定する判定手段となる文字判定部30が接続されている。この文字判定部30は、A/D変換された読取情報に基づいて所定のテーブルを作成するサンプルテーブル作成部31を有する。このサンプルテーブル作成部31では、磁気波形において文字毎の開始が必ず正ピークからはじまることを利用して、ピークを検出して文字の先頭を検出し、サンプリング周期から文字幅を算出することにより、読取情報について一文字毎の切り分けを行う。そして、磁気波形情報に基づくピーク値データに基づいて、ピーク位置の時間と振幅レベル(極性)の関係をテーブルとして作成する。
【0043】
サンプルテーブル作成部31は、辞書テーブル32を参照可能な判定部33に接続されている。この判定部33では、読取情報に基づくサンプルテーブルと、辞書テーブル32とを照合する演算処理を行い、読取情報が識別情報に対応する情報であるか否かの判定を行うようになっている。なお、辞書テーブル32には、本実施形態に対応する磁気ヘッド10に準じて予め読み取った基準データとなる磁気波形として、例えば、識別情報を所定の傾き状態(本実施形態では磁気ヘッド10の設置角度に対応)で読み取った磁気波形に関する情報(磁気波形のピーク位置に関する情報等)が保存されている。この辞書テーブル32に保存されている情報は、識別情報として認定するための認定基準情報となる。
【0044】
なお、上述した文字判定部30により識別情報に対応する情報として判定した読取情報は、図示しないホストPCに転送される。
【0045】
ここで、図8に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る識別情報の読取手順について詳細に説明する。
【0046】
まず、磁性インク文字読取装置では、図示しないホストPCから手形Sの搬送指示に基づいて、手形Sの搬送を開始する(ステップS200)。手形Sがレジストセンサ22を通過後、図示しないタイマにより時間計測を開始する。また、手形Sが永久磁石7に到達しこれを通過すると、手形Sの識別情報である磁気インク文字が永久磁石7によってある一方向に磁化処理される(ステップS201)。
【0047】
次に、磁気ヘッド10により手形Sの識別情報から磁束を読み取る(ステップS202)。なお、磁気ヘッド10での読取動作は、レジストセンサ22と磁気ヘッド10間の距離をLとし搬送速度をVとすると、磁気ヘッド10に手形Sが到達するL/V秒後に開始する。ここで、本実施形態では、磁気ヘッド10が、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を区別できる程度で且つこれら文字「2」及び「5」以外の磁気波形特性に支障が出ない程度に、読取基準線から2度傾けた状態で搬送路に設置されている(図7参照)。このため、(ステップS202)では、識別情報が搬送路Rに対して2度の傾き状態で読み取られることになる。
【0048】
次に、磁気ヘッド10で検出された磁気信号は、(ステップS203)で増幅回路23によって増幅された後、(ステップS204)でフィルタ回路24によって高周波域のノイズが取り除かれ、さらに、(ステップS205)でA/D変換機25によってA/D変換される。次に、A/D変換された磁気信号は、文字判定部30に送られ、文字判定部30内のサンプルテーブル作成部31で一文字毎に文字の切り分けを行い、サンプルテーブルを作成する(ステップS206)。ここでは、サンプルテーブル作成部31がピーク値データに基づいてピーク位置の時間と振幅レベル(極性)の関係をテーブルとして作成する。
【0049】
次に、判定部33により文字判定する(ステップS207)。ここでは、判定部33は、ピークの検出データからサンプルテーブル作成部31において作成したサンプルテーブルと、辞書テーブル32のデータと照合し、サンプルテーブルが識別情報に対応する情報であるか否かを判定する。
【0050】
上記(ステップS207)での文字判定では、1文字分の幅を時間軸に対して8等分に分割し、磁気ヘッド10で文字を読み取った時に得られる読取信号のピークが、それぞれ異なるブロックに存在するようにする。これは、E13Bフォントの特性として、文字のスタートから次の文字のスタートまで、すなわち、文字のピッチが0.125インチ(3.1mm)であることから、1文字分の幅を8等分に分割すると、磁気ヘッド10で文字を読み取った時に得られる読取信号のピークは何れかのブロックに必ず存在することになる。そして、このようにして1文字毎に8等分すると共に、磁気信号の何処にピークがあるかを検出し、検出したピーク位置をピーク位置信号として算出する。
【0051】
さらに、上記(ステップS207)では、所定の角度傾けた磁気ヘッド10により予め読み取った基準データ(認定基準情報)である磁気波形が保存された辞書テーブル32を参照するが、この辞書テーブル32においては、手形Sの搬送速度の変動に関係なく、E13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置が、区別できる程度に異なっている。このため、読み取った読取情報としてE13Bフォントの文字「2」及び「5」が含まれていても、これら各文字を示す磁気波形についても、手形Sの搬送速度の変動に関係なく、ピーク位置が区別できる程度に異なっている。これにより、仮に手形Sの搬送速度に変動が発生していたとしても、辞書テーブル32と読み取った磁気波形とを照合する際に、E13Bフォントの文字「2」と「5」を誤って照合することがない。したがって、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0052】
なお、上述した一連の処理は、1枚の手形を読み取る場合についての例であるが、複数枚の手形を連続処理する場合には、上述した一連の処理を手形の枚数に応じて連続的に実行することになる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、E13Bフォントの文字「2」及び「5」等のように磁気波形が酷似する特定の識別形態が識別情報として含まれていても、磁気ヘッド10によりその識別情報を所定の傾き状態で読み取るようにしたので、特定の識別形態に基づく磁気波形に、区別できる程度の波形の違いを生じさせることが可能となり、その結果、特定の識別形態が正確に区別でき、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0054】
(実施例1)
以下、実施例1として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「2」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から低速側に搬送速度の変動が生じた場合と、E13Bフォントの文字「5」について、手形Sの高速側に搬送速度の変動が生じた場合とを比較した。その結果を図9に示す。
【0055】
なお、図9は、実施例1に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0056】
まず、文字「2」は、磁気ヘッド10がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図9の実線のAに対応する。次に、磁気ヘッド10がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図9の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッド10がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図9の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド10がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図9の実線のDに対応する。ここでは、磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図9の磁束の減少位置B、磁束の増加位置Cの長さが増加している。
【0057】
一方、文字「5」についても、上記文字「2」と同様に、磁気ヘッド10がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図9の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図9の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図10の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図9の点線のD´に対応する。ここでは、磁気ヘッドを所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図9の磁束の減少位置B´、磁束の増加位置C´間の長さが減少している。
【0058】
以上の文字「2」及び「5」についての実施例1に係る磁気波形の特性比較を行うと、図9に示すように、磁気ヘッド10によってE13Bフォントの文字「2」及び「5」を所定の傾き状態で読み取ることにより、両者はピーク位置(尾根、谷の部分)が異なった磁気波形となる。すなわち、手形Sの搬送速度に低速側又は高速側の変動が発生しても、両者の磁気波形の違い、詳細にはピーク位置の違いにより比較的容易に且つ正確に区別することができるため、両者の誤読を確実に防止することができる。
【0059】
(実施例2)
以下、実施例2として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から搬送速度の変動が生じていない場合におけるE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を比較した。その結果を図10に示す。
【0060】
なお、図10は、実施例2に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0061】
まず、文字「2」は、磁気ヘッド10がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図10の実線のAに対応する。次に、磁気ヘッド10がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図10の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッド10がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図10の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド10がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図10の実線のDに対応する。ここで、磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図10の磁束の減少位置B、磁束の増加位置Cの長さがやや増加している。
【0062】
一方、文字「5」についても、上記文字「2」と同様に、磁気ヘッド10がA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図10の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図10の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図10の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図10の点線のD´に対応する。ここでは、磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図10の磁束の減少位置B´、磁束の増加位置C´間の長さがやや減少している。
【0063】
以上の文字「2」及び「5」についての実施例1に係る磁気波形の特性比較を行うと、図10に示すように、磁気ヘッド10によってE13Bフォント「2」及び「5」を所定の傾き状態で読み取ることにより、両者はピーク位置(尾根、谷の部分)が異なった磁気波形となる。すなわち、手形Sの搬送速度に速度変動が生じない場合であっても、両者の磁気波形の違い、詳細にはピーク位置の違いにより比較的容易に且つ正確に区別することができるため、両者の誤読を確実に防止することができる。
【0064】
(実施例3)
以下、実施例3として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「3」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、まず、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から搬送速度の変動が生じていない場合における、実施例3に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形を取得した。その結果を図11に示す。また、比較例1として、直立した磁気ヘッドにより、E13Bフォント「3」の磁気波形を読み取った。その結果を図12に示す。そして、両者の磁気波形を比較し、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置したことによる、E13Bフォント「3」の文字判定への影響を調べた。
【0065】
なお、図11は、実施例3に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形である。図12は、比較例1のE13Bフォントの文字「3」の磁気波形である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「3」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0066】
まず、図11に示すように、実施例3では、文字「3」は、所定の角度傾けて設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図11の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図11の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図11の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図11の実線のDに対応する。
【0067】
一方、図12に示すように、比較例1では、文字「3」は、直立して設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図12の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図12の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図12の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図12の実線のDに対応する。
【0068】
実施例3は、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置していることから、走査する磁束の量が変化し、その結果、比較例1と比べて磁束の増加位置C及びDのピークがやや減衰しているが、ここでのピークの減衰は、文字判定には問題ない程度である。
【0069】
(実施例4)
以下、実施例4として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「8」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、まず、手形の所定の搬送速度(設定値)から搬送速度の変動が生じていない場合における、実施例4に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形を取得した。その結果を図13に示す。また、比較例2として、直立した磁気ヘッドにより、E13Bフォントの文字「8」の磁気波形を読み取った。その結果を図14に示す。そして、両者の磁気波形を比較し、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置したことによる、E13Bフォントの文字「8」の文字判定への影響を調べた。
【0070】
なお、図13は、実施例4に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形である。図14は、比較例2のE13Bフォントの文字「8」の磁気波形である。なお、文字上の線は文字「8」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0071】
まず、図13に示すように、実施例4では、文字「8」は、所定の角度傾けて設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図13の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図13の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図13の実線のCに対応する。次に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図13の実線のDに対応する。次に、磁気ヘッドがEの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図13の実線のEに対応する。最後に、磁気ヘッドがFの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図13の実線のFに対応する。
【0072】
一方、図14に示すように、比較例2では、文字「8」は、直立して設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図14の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図14の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図14の実線のCに対応する。次に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図14の実線のDに対応する。次に、磁気ヘッドがEの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図14の実線のEに対応する。最後に、磁気ヘッドがFの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図14の実線のFに対応する。
【0073】
実施例4では、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置していることから、走査する磁束の量が変化し、その結果、比較例2と比べて磁束の減少位置A及びBのピークがやや減衰しているが、ここでのピークの減衰は、文字判定には問題ない程度である。
【0074】
以上、実施例1〜4の検証から明らかなように、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置において、磁気ヘッドを搬送路に対して所定の角度傾けて設置することで、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を確実に区別可能としつつ、その他の文字、特に、同極のピークが連続した文字「3」及び「8」のように磁気ヘッドを傾けたことによる影響を受けやすい文字についても、磁気波形のピークが判読不能となるまで減衰することがない。すなわち、E13Bフォントについての誤読を確実に防止することができる。
【0075】
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図である。また、図16は、図15に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図である。
【0076】
図15及び図16に示すように、本実施形態では、手形Sの搬送路Rに対して直立した磁気ヘッド100と、手形Sの搬送路Rに対して所定の角度傾けた磁気ヘッド10とを搬送路Rに沿って並列に設置すると共に、各磁気ヘッド10、100で読み取った読取情報を個別処理した後、双方で処理した情報を比較し、最終的に、正確に判読した情報に基づいて識別情報を認定するようにした以外は、上述した実施形態1と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1で説明した構成部分と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
本実施形態では、図15及び図16に示すように、磁気ヘッド10、100が搬送路Rに沿って2つ並列に設けられている。以下、2つの磁気ヘッド10、100については、それぞれ、上流側の磁気ヘッド10及び下流側の磁気ヘッド100とする。
【0078】
上流側の磁気ヘッド100は、手形Sの搬送路Rの上流側に、その搬送路Rに対して直立して設けられている。
【0079】
一方、下流側の磁気ヘッド10は、手形Sの搬送路Rに設けられた上記上流側の磁気ヘッド100の下流側に、手形Sの識別情報を読み取る読取手段として設けられている。そして、この下流側の磁気ヘッド10は、上記上流側の磁気ヘッド100の設置状態とは異なり、手形Sの識別情報を所定の傾き状態で読み取るものであり、例えば、本実施形態では、図16に示すように、手形Sの搬送路R(搬送方向D)に対し、所定の角度傾けた状態で設置されている。すなわち、本実施形態では、上流側の磁気ヘッド100を搬送路Rに対して直立して設置しているので、下流側の磁気ヘッド10は、上流側の磁気ヘッド100の読取角度に対して所定の角度傾いた状態で設置されることになる。ここでの上流側の磁気ヘッド100の読取角度とは、上流側の磁気ヘッド100を直立した場合の読取角度を意味する。なお、下流側の磁気ヘッド10の設置角度を上流側の磁気ヘッド100の設置角度よりも傾ける度合いによって、特定の識別形態に基づく磁性波形に区別できる程度の違いが生じるよう適宜調整することが可能となる。
【0080】
ここで、本実施形態では、図16に示すように、下流側の磁気ヘッド10の設置角度Xとしては、識別情報から読み取る磁気波形が過度に減衰して判読不能にならない角度であることが好ましく、例えば、図中点線で示した手形Sの搬送方向Dに直交する読取基準線に対して磁気ヘッド10を−15度〜+20度の範囲の角度で設置するのが好ましく、本実施形態では+11度の角度とした。
【0081】
なお、手形Sは、上述した本実施形態の磁気インク文字読取装置において、まずレジストセンサ22により搬送状態が検知され、永久磁石7により識別情報(磁気インク文字)が磁化された後、上流側の磁気ヘッド100、下流側の磁気ヘッド10を順次通過するようになっている。なお、上流側の磁気ヘッド100、及び下流側の磁気ヘッド10により読み取った各読取情報(磁性情報)は、それぞれ個別に、増幅回路23、230により増幅された後、フィルタ回路24、240により高周波域のノイズ除去を行い、A/D変換機25、250によりA/D変換される。
【0082】
そして、本実施形態では、上流側の磁気ヘッド100に対応するA/D変換機250に、上流側の磁気ヘッド100で読み取った読取情報(他の読取情報)が識別情報に対応する情報であるか否かを判定する判定手段となる文字判定部300が接続されている。この文字判定部300は、A/D変換された他の読取情報に基づいて所定のテーブルを作成するサンプルテーブル作成部310を有する。このサンプルテーブル作成部310では、磁気波形において文字毎の開始が必ず正ピークからはじまることを利用して、ピークを検出して文字の先頭を検出し、サンプリング周期から文字幅を算出することにより、読取情報について一文字毎の切り分けを行う。そして、磁気波形情報に基づくピーク値データに基づいて、ピーク位置の時間と振幅レベル(極性)の関係をテーブルとして作成する。
【0083】
サンプルテーブル作成部310は、辞書テーブル320を参照可能な判定部330に接続されている。この判定部330では、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報に基づくテーブルと、辞書テーブル320とを照合する演算処理を行い、他の読取情報が識別情報に対応する情報であるか否かの判定を行うようになっている。なお、辞書テーブル320には、上流側の磁気ヘッド100に準じて予め読み取った基準データとなる磁気波形に関する情報(磁気波形のピーク位置に関する情報等)が保存されている。この辞書テーブル320に保存されている情報は、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報について、識別情報として認定するための認定基準情報となる。
【0084】
一方、上記下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報は、上述した実施形態1と同様にして、文字判定部30により、読取情報についての所定の情報処理を実施し、文字判定を行うようになっている。
【0085】
さらに、本実施形態では、上流側の磁気ヘッド100に対応する文字判定部300、及び下流側の磁気ヘッド10に対応する文字判定部30は、文字認定部40が接続されている。この文字認定部40は、下流側の磁気ヘッド10によって読み取られた読取情報と、上流側の磁気ヘッド100によって読み取られた他の読取情報とを受付け、これら各読取情報の中に、所定の個別情報が含まれているか否かを判断する判断手段41を備えている。ここで、「所定の個別情報」とは、特定の識別形態に関する個別情報であり、例えば、E13Bフォントを例に挙げれば、文字「2」、文字「5」等の磁気波形を特定するための個別の情報である。
【0086】
また、文字認定部40は、判断手段41により他の読取情報に所定の個別情報が含まれると判断した際に、下流側の磁気ヘッドで読み取った読取情報を識別情報として認定する認定手段42を備えている。
【0087】
ここで、認定手段42の認定方法については、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報に所定の個別情報が含まれている場合には、当該他の読取情報を認定対象とせず、下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報の全てを識別情報として認定するようにしてもよい。また、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報のうち所定の個別情報について、下流側の磁気ヘッド10で読み取った当該所定の個別情報に対応する個別情報に基づいて補正して、補正後の読取情報を識別情報として認定するようにしてもよい。
【0088】
後者の場合には、例えば、E13Bフォントを例に挙げると、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報に、E13Bフォントの文字「2」、「5」の個別情報が含まれている場合に、これらE13Bフォントの文字「2」、「5」についての他の読取情報に含まれる個別情報について、下流側の磁気ヘッド10で読み取った文字「2」、「5」の個別情報に対応する読取情報(磁気波形)に基づいて補正する。これは、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報のうち、E13Bフォントの文字「2」、「5」以外の文字については、正確に判読されているため、そのまま採用することができるからである。そして、誤読し易いE13Bフォントの文字「2」、「5」については、下流側の磁気ヘッド10での読取情報に基づいて正確に判読できるため、これを採用することで、全体として識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0089】
以上説明した本実施形態によれば、2つの磁気ヘッド10、100を搭載する場合に、下流側の磁気ヘッド10で識別情報を所定の傾き状態で読み取るようにしたので、上流側の磁気ヘッド100での読取情報に所定の個別情報が含まれていても、下流側の磁気ヘッド10で正確に区別した読取情報に基づいて識別情報を認定することが可能となり、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0090】
(実施例5)
以下、実施例5として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、上流側の磁気ヘッド100及び下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「2」の磁気波形をそれぞれ読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「2」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から低速側に搬送速度の変動が生じた場合の磁気波形をそれぞれ読み取った。その結果を図17に示す。
【0091】
なお、図17は、実施例5に係るE13Bフォントの文字「2」の磁気波形である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0092】
まず、上流側の磁気ヘッド100により読み取った磁気波形について説明する。図17に示すように、上流側の磁気ヘッド100がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッド100がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッド100がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド100がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のDに対応する。
【0093】
次に、下流側の磁気ヘッド10により読み取った磁気波形について説明する。図17に示すように、磁気ヘッド10がA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のD´に対応する。
【0094】
上流側の磁気ヘッド100と下流側の磁気ヘッド10とでそれぞれ読み取った磁気波形について比較すると、図17に示されるように、下流側の磁気ヘッド10の方は、上流側の磁気ヘッド100と比べて、磁界量が変化することから、1つ目の最小位置B´と2つ目の最大位置C´との時間が長くなる。その結果、下流側の磁気ヘッド10は、所定の角度傾けて設置されることで、手形Sの搬送速度が低速側に変動した場合に、E13Bフォントの文字「2」の磁気波形のピーク位置に区別できる程度の違いを生じさせることができる。
【0095】
(実施例6)
以下、実施例6として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、上流側の磁気ヘッド100及び下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「5」の磁気波形をそれぞれ読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「5」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から高速側に搬送速度の変動が生じた場合の磁気波形をそれぞれ読み取った。その結果を図18に示す。
【0096】
なお、図18は、実施例6に係るE13Bフォントの文字「5」の磁気波形である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0097】
まず、上流側の磁気ヘッド100により読み取った磁気波形について説明する。図18に示すように、磁気ヘッド100がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッド100がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッド100がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド100がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のDに対応する。
【0098】
次に、下流側の磁気ヘッド10により読み取った磁気波形について説明する。図18に示すように、磁気ヘッド10がA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のD´に対応する。
【0099】
上流側の磁気ヘッド100と下流側の磁気ヘッド10とでそれぞれ読み取った磁気波形について比較すると、図18に示されるように、下流側の磁気ヘッド10の方は、上流側の磁気ヘッド100と比べて、磁界量が変化することから、1つ目の最小位置B´と2つ目の最大位置C´との時間が短くなる。その結果、下流側の磁気ヘッド10は、所定の角度傾けて設置されることで、手形Sの搬送速度が低速側に変動した場合に、E13Bフォントの文字「5」の磁気波形のピーク位置に区別できる程度の違いを生じさせることができる。
【0100】
(実施例7)
以下、実施例7として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「2」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から低速側に搬送速度の変動が生じた場合と、E13Bフォントの文字「5」について、手形Sの高速側に搬送速度の変動が生じた場合とを比較した。その結果を図19に示す。
【0101】
なお、図19は、実施例8に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0102】
図19に示すように、文字「2」について手形Sの搬送速度が低速側に変動し、文字「5」について手形Sの搬送速度が高速側に変動したとしても、両者を下流側の磁気ヘッド10で読み取ることにより、文字「5」の磁気波形の1つ目の最小位置B´と2つ目の最大位置C´の時間が短くなり、両者の違いは容易に且つ確実に区別することができる。したがって、文字認定部により下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報に基づいて識別情報を認定することにより、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0103】
(実施例8)
以下、実施例8として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、手形Sの所定の搬送速度(設定値)に変動が生じない場合において、E13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を比較した。その結果を図20に示す。
【0104】
なお、図20は、実施例8に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0105】
図20に示すように、文字「2」及び「5」の磁気波形については、下流側の磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、両者の違いは容易に且つ確実に区別することができる。したがって、文字認定部40(認定手段42)により下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報に基づいて識別情報を認定することにより、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0106】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1及び2について説明したが、勿論、本発明は上述の実施形態1及び2に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、被読取部材として手形Sを例示し、さらにその手形に含まれる磁性情報として、特別の識別形態の文字としてE13Bフォントを例示して説明したが、勿論本発明はこれに限定されず、その他の文字形態情報として、例えば、ヨーロッパで幅広く使用されているCMC7等であってもよし、あるいは文字以外の模様等であってもよい。要するに、本発明は、磁気波形等の磁性情報に基づくと区別が難しい識別形態について適用可能である。
【0107】
また、上述した実施形態1及び2では、被読取部材として手形Sを例示して説明したが、本発明は、識別情報が付与された被読取部材を搬送しながら当該識別情報を磁性情報として読み取る場合に適用できることから、このような被読取部材については特に限定されない。すなわち、本発明は、磁性情報として読取可能な識別情報が付与された物であれば特に限定されず、例えば、有価証券、公共料金の請求書、サービス申込書等のシート材でも適用可能であり、勿論、包装材等の立体形状であっても適用可能である。
【0108】
また、上述した実施形態1及び2では、設置型の磁気ヘッド10、100によって手形を順次搬送しながら識別情報の読取を行うようにしたが、勿論これに限定されず、例えば、一定範囲で往復等するような走査型の磁気ヘッドを用いて、順次搬送される手形を走査しながら読み取るようにしてもよし、読み取る際に手形の搬送を一時停止して読み取るようにしてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態1及び2では、磁気ヘッド10自体を搬送方向に所定の角度傾けて設置した場合について説明したが、勿論これに限定されず、例えば、磁気ヘッド自体を傾けて設置しなくても、磁気ヘッド内の読取部を傾けるようにしてもよい。何れにしても、本発明は、読取手段により識別情報を所定の傾き状態で読み取るものであれば特に限定されるものではない。
【0110】
さらに、上述した実施形態2では、上流側の磁気ヘッド100を直立に設置したが、勿論これに限定されず、所定の傾き状態で読み取る磁気ヘッドの下流側に、直立の磁気ヘッドを配置してもよい。
【0111】
なお、上述した実施形態1及び2では、本発明の識別情報読取装置を適用した一例として磁気インク文字読取装置を挙げて説明したが、本発明は、広く識別情報読取装置全般を対象としたものである。すなわち、本発明は、被読取部材の搬送路を備え、その搬送路に所定の傾き状態で識別情報を読み取るための読取手段を有する識別情報読取装置に関するものであり、それ以外の構成として、例えば、被読取部材の識別情報等を読み取ってシート等の印刷媒体(紙媒体)に画像を形成する画像形成手段を設けて画像形成装置としてもよいし、画像を読み取る画像読取装置に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0112】
S 手形
1 ホッパー部
2 押圧板
3 給紙ローラ
4 コントローラユニット
5 フィードローラ
6 分離ローラ6
7 永久磁石
8 搬送ローラ対
9 紙端検知センサ
10 磁気ヘッド
23 増幅回路
24 フィルタ回路
25 A/D交換機
30 文字判定部
31 サンプルテーブル作成部
32 辞書テーブル
33 判定部
40 文字認定部
41 判断手段
42 認定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、磁気インク文字等からなる識別情報の読取処理に用いられる識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金融機関においては、例えば、手形類や小切手等に印字された磁気インク文字情報に基づいて、これら手形等の各種分類整理を行っている。このような分類整理の作業においては、大量の手形等を処理することから、手形等に印字された磁気インク文字情報を磁気情報として自動的に読み取り可能な磁気インク文字読取装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、手形等の読取においては、このような磁気インク文字読取装置を用いたとしても、手形等の文字情報を磁気情報として読み取った結果が、十分な読取品質を有しているにもかかわらず、読取情報と実際の手形等に印字された磁気インク文字情報とが一致しない、いわゆる誤読が生じるという問題がある。
【0004】
例えば、磁気インク文字読取装置での読取処理によって文字情報から文字毎の磁気波形を十分な読取品質で高精度に取得できたとしても、例えば、E13Bフォント(規格フォント)の文字「2」及び「5」等のように磁気波形が非常に似た波形として取得される特定の文字が存在する場合には、読取情報と実際の手形等の磁気インク文字情報とが一致せず、誤読が生じることがある。
【0005】
すなわち、このような特定の文字は、予め読み取った磁気基準波形と実際に読み取った磁気波形との形状比較だけでなく磁気波形の時間軸の差を比較して識別しているため、手形等の搬送速度に変動が生じると、磁気基準波形との照合がうまくいかず、磁気波形の時間軸との差が実質的に小さくなり、文字の誤読が発生してしまう。
【0006】
なお、上記の問題は、手形等の読取処理に限って発生するものではなく、磁性情報として読取可能に付与された識別情報を有する被読取部材の読取処理においても、同様に発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−217635号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情に鑑み、識別情報の誤読を確実に防止することができる識別情報読取装置、及び手形読取装置、並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の識別情報取得装置は、磁性情報として読取可能な識別情報を含む被読取部材を搬送する搬送路に設けられて前記識別情報を所定の傾き状態で前記磁性情報として読み取る読取手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記識別情報読取装置を備えていることを特徴とする手形読取装置にある。
【0011】
さらに、本発明の他の態様は、上記識別情報読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の識別情報読取装置によれば、被読取部材に付与された識別情報において、異なる文字等のように外観等で区別可能な異なる形態でありながら通常の読取処理にて磁気波形が酷似する特定の識別形態が識別情報に含まれていても、その識別情報を所定の傾き状態で読み取るようにしたので、特定の識別形態に基づく磁気波形に、区別できる程度の波形の違いを生じさせることが可能となり、その結果、特定の識別形態を正確に区別することができ、識別情報の誤読を確実に防止することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の他の態様によれば、上記識別情報読取装置を備えているので、識別情報の誤読を確実に防止する手形読取装置、画像読取装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係る磁気インク文字読取装置の構成を示す概略図。
【図2】手形Sの一例を示す概略図。
【図3】E13Bフォントの文字一覧。
【図4】従来装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を示す図。
【図5】従来装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較結果を示す図。
【図6】実施形態1に係る磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図。
【図7】図6に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図。
【図8】実施形態1に係る識別情報の読取手順を示すフローチャート図。
【図9】実施例1に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【図10】実施例2に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【図11】実施例3に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形を示す図。
【図12】比較例1に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形を示す図。
【図13】実施例4に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形を示す図。
【図14】比較例1に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形を示す図。
【図15】実施形態2に係る磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図。
【図16】図15に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図。
【図17】実施例5に係るE13Bフォントの文字「2」の磁気波形を示す図。
【図18】実施例6に係るE13Bフォントの文字「5」の磁気波形を示す図。
【図19】実施例7に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【図20】実施例8に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置の構成を示す概略図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の識別情報読取装置を備えた磁気インク読取装置は、手形読取装置であり、手形を積載する為のホッパー部1を備えている。また、この磁気インク文字読取装置のホッパー部1には、磁性情報として読取可能な識別情報、具体的には磁性材料等を含むインクからなる磁気インク文字(MICR[Magnetic Ink Character Recongnition]文字)により印刷された識別情報を有する手形Sが積載される。なお、手形Sの詳細については後述する。
【0018】
また、ホッパー部1には、積載される手形Sを一方側の端面に付勢する押圧板2が設けられている。そして、手形Sは、ホッパー部1に積載された状態で、押圧板2によって給紙ローラ3に付勢されている。
【0019】
さらに、手形Sは、コントローラユニット4の指示により給紙ローラ3を介してフィードローラ5側に給紙され、分離ローラ6により1枚ずつに分離された後に、搬送路Rに送り出される。手形Sに印刷された識別情報は、搬送路Rに設けられた永久磁石7によって磁化方向が整えられる。なお、本実施形態では永久磁石7を用いているが、勿論これに限定されず、磁気インク文字に磁化を与えるものであればよく、例えば、電磁石等の磁化手段を用いてもよい。また、手形Sは、搬送ローラ対8によって、紙端検知センサ9を経て磁気ヘッド10に搬送され、磁気ヘッド10により識別情報が読み取られる。なお、この磁気ヘッド10には、手形Sを密着させるための押圧コロ11が対向して配置されている。
【0020】
なお、磁気ヘッド10を通過した手形Sは、搬送ローラ対12、13により、搬送路Rを通って画像読み取りのタイミングを取るためのレジストリセンサ14、手形Sの両面の画像を読み取る画像読取センサ対15に搬送され、手形Sの両面の画像を読み取る。
【0021】
そして、手形Sの画像を読み取った後に、手形Sの裏面にエンドーサ16で画像を読み取った日付等を印刷し、排紙ローラ17により搬送される。排紙ローラ17の排紙方向には排紙センサ18、フラッパ19が設けられており、このフラッパ19により搬送路Rが切換えられ、手形Sは排紙トレイ20a、20bの何れかに排紙される。
【0022】
なお、このような磁気インク文字読取装置は、ハウジング21内にローラ群を駆動するモータ22が設けられており、磁気インク文字読取装置全体を制御するコントローラユニット4はインタフェースケーブルを介して接続されている図示しないコンピュータと通信を行う。
【0023】
ここで、図2には、このような磁気インク文字読取装置によって読取対象となる手形Sの一例を示す。手形Sには、例えば、本実施形態では、図2に示すように所定の領域にMICR文字等が、磁気インクや磁気トナー等の磁気インク文字からなり、磁性情報として読取可能な識別情報として印字されている。また、手形Sの領域は、図の左側から91a「補助自行欄II」、91b「補助自行欄I」、91c「交換所欄(交換番号、機関コード)」、91d「自行データ欄(店No・手形No・口座No)」、91e「金額欄」に分けられ、各欄に識別情報が記録されている。
【0024】
また、図3に、E13Bフォントの文字の一覧を示す。図3に示すE13Bフォントの各文字の中には、外観上、各文字の識別が比較的容易であるにもかかわらず、詳細は後述するが、文字「2」及び「5」については磁気波形として非常に酷似しているため、従来装置では、磁気的な情報に基づく判定で両者を確実に識別することが困難である。
【0025】
以下、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を例に挙げ、従来装置において、識別情報の誤読が生じてしまう原因について説明する。ここでは、まず、E13Bフォントの文字「2」及び「5」について、一定搬送速度下で、磁気情報を読み取るようにし、読み取った両者の磁気波形について比較を行った場合について説明する。また、ここでの従来装置は、図示しないが、磁気ヘッドを手形の搬送路(搬送方向)に対して平行、すなわち、直立に設置した装置である。
【0026】
図4には、従来装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を示す。なお、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。また、図中の文字上の線は文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0027】
ここで、文字「2」は、次のようにして磁気ヘッドにより磁気波形として読み取られる。まず、磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図4の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図4の点線のDに対応する。
【0028】
一方、文字「5」についても、上述した文字「2」と同様にして、まず、磁気ヘッドがA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッドがB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図4の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッドがC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図4の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッドがD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図4の点線のD´に対応する。
【0029】
そして、上記のようにして読み取った文字「2」及び「5」の磁気波形を比較すると、図4に示すように、非常に似た磁気波形を示しており、両者の相違点としては、ピーク位置(尾根、谷の部分)の時間軸の差のみである。したがって、文字「2」と「5」を区別するためには、磁気波形の時間軸の差を比較し、時間軸方向におけるピーク位置の違いに基づいて、両者を区別しなくてはならない。しかしながら、上述したような磁気波形の解析方法は、手形の搬送速度が一定の場合、すなわち、手形の搬送速度に変動が生じていない状態で有効な解析手法である。したがって、例えば、手形の搬送速度に変動が生じた場合には、上述したような解析手法では、E13Bフォントの文字「2」及び「5」について誤読が生じるおそれがある。この点については、以下に詳述する。
【0030】
ここで、図5には、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置で読み取ったE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較結果を示す。ここでは、手形の搬送速度に変動が生じた場合、具体的には、手形の所定の搬送速度(設定値)から低速側に速度変動した時の文字「2」と高速変動した時の文字「5」についての磁気波形について比較した。なお、図5の文字上の線は文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0031】
図5に示すように、文字「2」の磁気波形については、磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図5の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図5の点線のDに対応する。
【0032】
一方、文字「5」の磁気波形についても、図5に示すように、磁気ヘッドがA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッドがB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図5の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッドがC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図5の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッドがD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となりこの時の磁気波形は図5の点線のD´に対応する。
【0033】
そして、E13Bフォントの文字「2」及び「5」についての磁気波形の特性比較を行うと、図5に示すようにピーク位置(尾根、谷の部分)がかなり近いものとなり、非常に酷似した磁気波形となる。すなわち、手形の搬送速度に変動が発生してしまうと、1文字分の幅を8等分に分割し、磁気ヘッドで文字を読み取った時に得られる読取信号のピークを探索する認識方法においては、時間軸方向に磁気波形が変動した結果、同じブロックにピークが存在するようになり、結果として、例えば、「2」の磁気波形を「5」の磁気波形として認識し、識別情報の誤読が生じる結果になってしまう。
【0034】
これに対し、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置によれば、詳細は後述するが、搬送路Rに設けられて識別情報を所定の傾き状態で磁性情報として読み取る読取手段である磁気ヘッド10を備えているので、上述したような磁気的な情報に基づく判定で識別が困難な文字であっても、比較的容易に且つ正確に識別することができ、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0035】
以下、図6及び図7を参照し、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置により、手形の識別情報の読取機構について説明する。なお、図6は、本発明の実施形態1に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図である。図7は、図6に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の磁気インク文字読取装置は、手形Sの搬送方向上流側から順に、レジストセンサ22、永久磁石7、磁気ヘッド10が搬送路Rに沿ってそれぞれ配置されている。そして、手形Sは、レジストセンサ22により搬送状態が検知され、永久磁石7により識別情報(磁気インク文字)が磁化された後、磁気ヘッド10を通過するようになっている。なお、図中の矢印Dは、手形Sの搬送方向を示す。
【0037】
磁気ヘッド10は、図7に示すように、手形Sに印字された識別情報を、所定の傾き状態で磁性情報として読み取る読取手段を構成している。本実施形態では、磁気ヘッド10は、手形Sの搬送路R(搬送方向D)に対し、所定の角度傾けた状態で設置されている。すなわち、磁気ヘッド10は手形Sの搬送方向Dに所定の角度傾けて設置され、手形Sの識別情報は磁気ヘッド10により所定の傾き状態で読み取られる。
【0038】
ここで、「磁気ヘッド10により識別情報を所定の傾き状態で読み取る」とは、例えば、異なる文字等のように外観等で区別可能な異なる形態でありながら通常の読取処理において磁気波形が酷似する特定の識別形態(以下、特定の識別形態ともいう。)が識別情報に含まれていても、その識別情報を所定の傾き状態で読み取ることを意味する。これにより、特定の識別形態に基づく磁気波形に、区別できる程度の波形の違いを生じさせることが可能となり、その結果、特定の識別形態を正確に区別することができ、識別情報の誤読を確実に防止することができる。なお、ここでいう「所定の傾き状態」とは、特定の識別形態に基づく磁気情報、例えば、磁気波形に、区別できる程度の違いが生じる傾き状態のことを意味する。なお、このような特定の識別形態の一例としては、図3に示すE13Bフォントの文字「2」と「5」が挙げられる。
【0039】
また、本実施形態のように磁気ヘッド10を「所定の角度傾けた状態で設置する」とは、例えば、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を例に挙げれば、これら文字に基づく磁気波形において、区別できる程度の違いが生じる角度で設置することを意味する。なお、「区別できる程度の違い」の一例としては、例えば、手形Sの搬送速度の変動が生じた場合でも、磁気波形のピーク位置が区別できる程度に異なる場合が挙げられる。そして、本実施形態では、磁気ヘッド10による識別情報の読取角度を傾ける度合いによって、特定の識別形態に基づく磁性波形に区別できる程度の違いが生じるよう適宜調整することが可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、磁気ヘッド10の設置角度Xについて、識別情報から読み取る磁気波形が過度に減衰して判読不能にならない角度であることが好ましい。E13Bフォントを例に挙げると、例えば、文字「2」及び「5」以外の文字から読み取る磁気波形特性に支障が出ない程度の角度であることが好ましい。このため、図7に示すように、磁気ヘッド10の設置角度Xとしては、例えば、本実施形態では、図中点線で示した手形Sの搬送路(搬送方向D)に直交する読取基準線に対して磁気ヘッド10を+2度傾けた状態で設置した。
【0041】
そして、このような磁気ヘッド10には、図6に示すように、増幅回路23、フィルタ回路24、A/D変換機25が接続されている。すなわち、磁気ヘッド10で読み込まれた磁性情報(磁気信号)は、増幅回路23によって増幅された後、フィルタ回路24によって高周波域のノイズが取り除かれ、A/D変換機25によってA/D変換される。
【0042】
また、このようなA/D変換機25には、磁気ヘッド10で読み取った読取情報が識別情報に対応する情報であるか否かを判定する判定手段となる文字判定部30が接続されている。この文字判定部30は、A/D変換された読取情報に基づいて所定のテーブルを作成するサンプルテーブル作成部31を有する。このサンプルテーブル作成部31では、磁気波形において文字毎の開始が必ず正ピークからはじまることを利用して、ピークを検出して文字の先頭を検出し、サンプリング周期から文字幅を算出することにより、読取情報について一文字毎の切り分けを行う。そして、磁気波形情報に基づくピーク値データに基づいて、ピーク位置の時間と振幅レベル(極性)の関係をテーブルとして作成する。
【0043】
サンプルテーブル作成部31は、辞書テーブル32を参照可能な判定部33に接続されている。この判定部33では、読取情報に基づくサンプルテーブルと、辞書テーブル32とを照合する演算処理を行い、読取情報が識別情報に対応する情報であるか否かの判定を行うようになっている。なお、辞書テーブル32には、本実施形態に対応する磁気ヘッド10に準じて予め読み取った基準データとなる磁気波形として、例えば、識別情報を所定の傾き状態(本実施形態では磁気ヘッド10の設置角度に対応)で読み取った磁気波形に関する情報(磁気波形のピーク位置に関する情報等)が保存されている。この辞書テーブル32に保存されている情報は、識別情報として認定するための認定基準情報となる。
【0044】
なお、上述した文字判定部30により識別情報に対応する情報として判定した読取情報は、図示しないホストPCに転送される。
【0045】
ここで、図8に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る識別情報の読取手順について詳細に説明する。
【0046】
まず、磁性インク文字読取装置では、図示しないホストPCから手形Sの搬送指示に基づいて、手形Sの搬送を開始する(ステップS200)。手形Sがレジストセンサ22を通過後、図示しないタイマにより時間計測を開始する。また、手形Sが永久磁石7に到達しこれを通過すると、手形Sの識別情報である磁気インク文字が永久磁石7によってある一方向に磁化処理される(ステップS201)。
【0047】
次に、磁気ヘッド10により手形Sの識別情報から磁束を読み取る(ステップS202)。なお、磁気ヘッド10での読取動作は、レジストセンサ22と磁気ヘッド10間の距離をLとし搬送速度をVとすると、磁気ヘッド10に手形Sが到達するL/V秒後に開始する。ここで、本実施形態では、磁気ヘッド10が、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を区別できる程度で且つこれら文字「2」及び「5」以外の磁気波形特性に支障が出ない程度に、読取基準線から2度傾けた状態で搬送路に設置されている(図7参照)。このため、(ステップS202)では、識別情報が搬送路Rに対して2度の傾き状態で読み取られることになる。
【0048】
次に、磁気ヘッド10で検出された磁気信号は、(ステップS203)で増幅回路23によって増幅された後、(ステップS204)でフィルタ回路24によって高周波域のノイズが取り除かれ、さらに、(ステップS205)でA/D変換機25によってA/D変換される。次に、A/D変換された磁気信号は、文字判定部30に送られ、文字判定部30内のサンプルテーブル作成部31で一文字毎に文字の切り分けを行い、サンプルテーブルを作成する(ステップS206)。ここでは、サンプルテーブル作成部31がピーク値データに基づいてピーク位置の時間と振幅レベル(極性)の関係をテーブルとして作成する。
【0049】
次に、判定部33により文字判定する(ステップS207)。ここでは、判定部33は、ピークの検出データからサンプルテーブル作成部31において作成したサンプルテーブルと、辞書テーブル32のデータと照合し、サンプルテーブルが識別情報に対応する情報であるか否かを判定する。
【0050】
上記(ステップS207)での文字判定では、1文字分の幅を時間軸に対して8等分に分割し、磁気ヘッド10で文字を読み取った時に得られる読取信号のピークが、それぞれ異なるブロックに存在するようにする。これは、E13Bフォントの特性として、文字のスタートから次の文字のスタートまで、すなわち、文字のピッチが0.125インチ(3.1mm)であることから、1文字分の幅を8等分に分割すると、磁気ヘッド10で文字を読み取った時に得られる読取信号のピークは何れかのブロックに必ず存在することになる。そして、このようにして1文字毎に8等分すると共に、磁気信号の何処にピークがあるかを検出し、検出したピーク位置をピーク位置信号として算出する。
【0051】
さらに、上記(ステップS207)では、所定の角度傾けた磁気ヘッド10により予め読み取った基準データ(認定基準情報)である磁気波形が保存された辞書テーブル32を参照するが、この辞書テーブル32においては、手形Sの搬送速度の変動に関係なく、E13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置が、区別できる程度に異なっている。このため、読み取った読取情報としてE13Bフォントの文字「2」及び「5」が含まれていても、これら各文字を示す磁気波形についても、手形Sの搬送速度の変動に関係なく、ピーク位置が区別できる程度に異なっている。これにより、仮に手形Sの搬送速度に変動が発生していたとしても、辞書テーブル32と読み取った磁気波形とを照合する際に、E13Bフォントの文字「2」と「5」を誤って照合することがない。したがって、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0052】
なお、上述した一連の処理は、1枚の手形を読み取る場合についての例であるが、複数枚の手形を連続処理する場合には、上述した一連の処理を手形の枚数に応じて連続的に実行することになる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、E13Bフォントの文字「2」及び「5」等のように磁気波形が酷似する特定の識別形態が識別情報として含まれていても、磁気ヘッド10によりその識別情報を所定の傾き状態で読み取るようにしたので、特定の識別形態に基づく磁気波形に、区別できる程度の波形の違いを生じさせることが可能となり、その結果、特定の識別形態が正確に区別でき、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0054】
(実施例1)
以下、実施例1として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「2」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から低速側に搬送速度の変動が生じた場合と、E13Bフォントの文字「5」について、手形Sの高速側に搬送速度の変動が生じた場合とを比較した。その結果を図9に示す。
【0055】
なお、図9は、実施例1に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0056】
まず、文字「2」は、磁気ヘッド10がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図9の実線のAに対応する。次に、磁気ヘッド10がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図9の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッド10がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図9の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド10がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図9の実線のDに対応する。ここでは、磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図9の磁束の減少位置B、磁束の増加位置Cの長さが増加している。
【0057】
一方、文字「5」についても、上記文字「2」と同様に、磁気ヘッド10がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図9の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図9の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図10の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図9の点線のD´に対応する。ここでは、磁気ヘッドを所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図9の磁束の減少位置B´、磁束の増加位置C´間の長さが減少している。
【0058】
以上の文字「2」及び「5」についての実施例1に係る磁気波形の特性比較を行うと、図9に示すように、磁気ヘッド10によってE13Bフォントの文字「2」及び「5」を所定の傾き状態で読み取ることにより、両者はピーク位置(尾根、谷の部分)が異なった磁気波形となる。すなわち、手形Sの搬送速度に低速側又は高速側の変動が発生しても、両者の磁気波形の違い、詳細にはピーク位置の違いにより比較的容易に且つ正確に区別することができるため、両者の誤読を確実に防止することができる。
【0059】
(実施例2)
以下、実施例2として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から搬送速度の変動が生じていない場合におけるE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を比較した。その結果を図10に示す。
【0060】
なお、図10は、実施例2に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0061】
まず、文字「2」は、磁気ヘッド10がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図10の実線のAに対応する。次に、磁気ヘッド10がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図10の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッド10がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図10の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド10がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図10の実線のDに対応する。ここで、磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図10の磁束の減少位置B、磁束の増加位置Cの長さがやや増加している。
【0062】
一方、文字「5」についても、上記文字「2」と同様に、磁気ヘッド10がA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図10の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図10の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図10の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図10の点線のD´に対応する。ここでは、磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、図10の磁束の減少位置B´、磁束の増加位置C´間の長さがやや減少している。
【0063】
以上の文字「2」及び「5」についての実施例1に係る磁気波形の特性比較を行うと、図10に示すように、磁気ヘッド10によってE13Bフォント「2」及び「5」を所定の傾き状態で読み取ることにより、両者はピーク位置(尾根、谷の部分)が異なった磁気波形となる。すなわち、手形Sの搬送速度に速度変動が生じない場合であっても、両者の磁気波形の違い、詳細にはピーク位置の違いにより比較的容易に且つ正確に区別することができるため、両者の誤読を確実に防止することができる。
【0064】
(実施例3)
以下、実施例3として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「3」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、まず、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から搬送速度の変動が生じていない場合における、実施例3に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形を取得した。その結果を図11に示す。また、比較例1として、直立した磁気ヘッドにより、E13Bフォント「3」の磁気波形を読み取った。その結果を図12に示す。そして、両者の磁気波形を比較し、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置したことによる、E13Bフォント「3」の文字判定への影響を調べた。
【0065】
なお、図11は、実施例3に係るE13Bフォントの文字「3」の磁気波形である。図12は、比較例1のE13Bフォントの文字「3」の磁気波形である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「3」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0066】
まず、図11に示すように、実施例3では、文字「3」は、所定の角度傾けて設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図11の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図11の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図11の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図11の実線のDに対応する。
【0067】
一方、図12に示すように、比較例1では、文字「3」は、直立して設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図12の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図12の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図12の実線のCに対応する。最後に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図12の実線のDに対応する。
【0068】
実施例3は、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置していることから、走査する磁束の量が変化し、その結果、比較例1と比べて磁束の増加位置C及びDのピークがやや減衰しているが、ここでのピークの減衰は、文字判定には問題ない程度である。
【0069】
(実施例4)
以下、実施例4として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、E13Bフォントの文字「8」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、まず、手形の所定の搬送速度(設定値)から搬送速度の変動が生じていない場合における、実施例4に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形を取得した。その結果を図13に示す。また、比較例2として、直立した磁気ヘッドにより、E13Bフォントの文字「8」の磁気波形を読み取った。その結果を図14に示す。そして、両者の磁気波形を比較し、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置したことによる、E13Bフォントの文字「8」の文字判定への影響を調べた。
【0070】
なお、図13は、実施例4に係るE13Bフォントの文字「8」の磁気波形である。図14は、比較例2のE13Bフォントの文字「8」の磁気波形である。なお、文字上の線は文字「8」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0071】
まず、図13に示すように、実施例4では、文字「8」は、所定の角度傾けて設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図13の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図13の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図13の実線のCに対応する。次に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図13の実線のDに対応する。次に、磁気ヘッドがEの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図13の実線のEに対応する。最後に、磁気ヘッドがFの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図13の実線のFに対応する。
【0072】
一方、図14に示すように、比較例2では、文字「8」は、直立して設置した磁気ヘッドがAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図14の実線のAである。次に、磁気ヘッドがBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図14の実線のBに対応する。次に、磁気ヘッドがCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図14の実線のCに対応する。次に、磁気ヘッドがDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図14の実線のDに対応する。次に、磁気ヘッドがEの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図14の実線のEに対応する。最後に、磁気ヘッドがFの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図14の実線のFに対応する。
【0073】
実施例4では、磁気ヘッドを所定の角度傾けて設置していることから、走査する磁束の量が変化し、その結果、比較例2と比べて磁束の減少位置A及びBのピークがやや減衰しているが、ここでのピークの減衰は、文字判定には問題ない程度である。
【0074】
以上、実施例1〜4の検証から明らかなように、本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置において、磁気ヘッドを搬送路に対して所定の角度傾けて設置することで、E13Bフォントの文字「2」及び「5」を確実に区別可能としつつ、その他の文字、特に、同極のピークが連続した文字「3」及び「8」のように磁気ヘッドを傾けたことによる影響を受けやすい文字についても、磁気波形のピークが判読不能となるまで減衰することがない。すなわち、E13Bフォントについての誤読を確実に防止することができる。
【0075】
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置の要部を示す構成ブロック図である。また、図16は、図15に示す磁気ヘッドの設置状態を示す概略図である。
【0076】
図15及び図16に示すように、本実施形態では、手形Sの搬送路Rに対して直立した磁気ヘッド100と、手形Sの搬送路Rに対して所定の角度傾けた磁気ヘッド10とを搬送路Rに沿って並列に設置すると共に、各磁気ヘッド10、100で読み取った読取情報を個別処理した後、双方で処理した情報を比較し、最終的に、正確に判読した情報に基づいて識別情報を認定するようにした以外は、上述した実施形態1と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1で説明した構成部分と同一部分については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
本実施形態では、図15及び図16に示すように、磁気ヘッド10、100が搬送路Rに沿って2つ並列に設けられている。以下、2つの磁気ヘッド10、100については、それぞれ、上流側の磁気ヘッド10及び下流側の磁気ヘッド100とする。
【0078】
上流側の磁気ヘッド100は、手形Sの搬送路Rの上流側に、その搬送路Rに対して直立して設けられている。
【0079】
一方、下流側の磁気ヘッド10は、手形Sの搬送路Rに設けられた上記上流側の磁気ヘッド100の下流側に、手形Sの識別情報を読み取る読取手段として設けられている。そして、この下流側の磁気ヘッド10は、上記上流側の磁気ヘッド100の設置状態とは異なり、手形Sの識別情報を所定の傾き状態で読み取るものであり、例えば、本実施形態では、図16に示すように、手形Sの搬送路R(搬送方向D)に対し、所定の角度傾けた状態で設置されている。すなわち、本実施形態では、上流側の磁気ヘッド100を搬送路Rに対して直立して設置しているので、下流側の磁気ヘッド10は、上流側の磁気ヘッド100の読取角度に対して所定の角度傾いた状態で設置されることになる。ここでの上流側の磁気ヘッド100の読取角度とは、上流側の磁気ヘッド100を直立した場合の読取角度を意味する。なお、下流側の磁気ヘッド10の設置角度を上流側の磁気ヘッド100の設置角度よりも傾ける度合いによって、特定の識別形態に基づく磁性波形に区別できる程度の違いが生じるよう適宜調整することが可能となる。
【0080】
ここで、本実施形態では、図16に示すように、下流側の磁気ヘッド10の設置角度Xとしては、識別情報から読み取る磁気波形が過度に減衰して判読不能にならない角度であることが好ましく、例えば、図中点線で示した手形Sの搬送方向Dに直交する読取基準線に対して磁気ヘッド10を−15度〜+20度の範囲の角度で設置するのが好ましく、本実施形態では+11度の角度とした。
【0081】
なお、手形Sは、上述した本実施形態の磁気インク文字読取装置において、まずレジストセンサ22により搬送状態が検知され、永久磁石7により識別情報(磁気インク文字)が磁化された後、上流側の磁気ヘッド100、下流側の磁気ヘッド10を順次通過するようになっている。なお、上流側の磁気ヘッド100、及び下流側の磁気ヘッド10により読み取った各読取情報(磁性情報)は、それぞれ個別に、増幅回路23、230により増幅された後、フィルタ回路24、240により高周波域のノイズ除去を行い、A/D変換機25、250によりA/D変換される。
【0082】
そして、本実施形態では、上流側の磁気ヘッド100に対応するA/D変換機250に、上流側の磁気ヘッド100で読み取った読取情報(他の読取情報)が識別情報に対応する情報であるか否かを判定する判定手段となる文字判定部300が接続されている。この文字判定部300は、A/D変換された他の読取情報に基づいて所定のテーブルを作成するサンプルテーブル作成部310を有する。このサンプルテーブル作成部310では、磁気波形において文字毎の開始が必ず正ピークからはじまることを利用して、ピークを検出して文字の先頭を検出し、サンプリング周期から文字幅を算出することにより、読取情報について一文字毎の切り分けを行う。そして、磁気波形情報に基づくピーク値データに基づいて、ピーク位置の時間と振幅レベル(極性)の関係をテーブルとして作成する。
【0083】
サンプルテーブル作成部310は、辞書テーブル320を参照可能な判定部330に接続されている。この判定部330では、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報に基づくテーブルと、辞書テーブル320とを照合する演算処理を行い、他の読取情報が識別情報に対応する情報であるか否かの判定を行うようになっている。なお、辞書テーブル320には、上流側の磁気ヘッド100に準じて予め読み取った基準データとなる磁気波形に関する情報(磁気波形のピーク位置に関する情報等)が保存されている。この辞書テーブル320に保存されている情報は、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報について、識別情報として認定するための認定基準情報となる。
【0084】
一方、上記下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報は、上述した実施形態1と同様にして、文字判定部30により、読取情報についての所定の情報処理を実施し、文字判定を行うようになっている。
【0085】
さらに、本実施形態では、上流側の磁気ヘッド100に対応する文字判定部300、及び下流側の磁気ヘッド10に対応する文字判定部30は、文字認定部40が接続されている。この文字認定部40は、下流側の磁気ヘッド10によって読み取られた読取情報と、上流側の磁気ヘッド100によって読み取られた他の読取情報とを受付け、これら各読取情報の中に、所定の個別情報が含まれているか否かを判断する判断手段41を備えている。ここで、「所定の個別情報」とは、特定の識別形態に関する個別情報であり、例えば、E13Bフォントを例に挙げれば、文字「2」、文字「5」等の磁気波形を特定するための個別の情報である。
【0086】
また、文字認定部40は、判断手段41により他の読取情報に所定の個別情報が含まれると判断した際に、下流側の磁気ヘッドで読み取った読取情報を識別情報として認定する認定手段42を備えている。
【0087】
ここで、認定手段42の認定方法については、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報に所定の個別情報が含まれている場合には、当該他の読取情報を認定対象とせず、下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報の全てを識別情報として認定するようにしてもよい。また、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報のうち所定の個別情報について、下流側の磁気ヘッド10で読み取った当該所定の個別情報に対応する個別情報に基づいて補正して、補正後の読取情報を識別情報として認定するようにしてもよい。
【0088】
後者の場合には、例えば、E13Bフォントを例に挙げると、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報に、E13Bフォントの文字「2」、「5」の個別情報が含まれている場合に、これらE13Bフォントの文字「2」、「5」についての他の読取情報に含まれる個別情報について、下流側の磁気ヘッド10で読み取った文字「2」、「5」の個別情報に対応する読取情報(磁気波形)に基づいて補正する。これは、上流側の磁気ヘッド100で読み取った他の読取情報のうち、E13Bフォントの文字「2」、「5」以外の文字については、正確に判読されているため、そのまま採用することができるからである。そして、誤読し易いE13Bフォントの文字「2」、「5」については、下流側の磁気ヘッド10での読取情報に基づいて正確に判読できるため、これを採用することで、全体として識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0089】
以上説明した本実施形態によれば、2つの磁気ヘッド10、100を搭載する場合に、下流側の磁気ヘッド10で識別情報を所定の傾き状態で読み取るようにしたので、上流側の磁気ヘッド100での読取情報に所定の個別情報が含まれていても、下流側の磁気ヘッド10で正確に区別した読取情報に基づいて識別情報を認定することが可能となり、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0090】
(実施例5)
以下、実施例5として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、上流側の磁気ヘッド100及び下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「2」の磁気波形をそれぞれ読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「2」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から低速側に搬送速度の変動が生じた場合の磁気波形をそれぞれ読み取った。その結果を図17に示す。
【0091】
なお、図17は、実施例5に係るE13Bフォントの文字「2」の磁気波形である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0092】
まず、上流側の磁気ヘッド100により読み取った磁気波形について説明する。図17に示すように、上流側の磁気ヘッド100がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッド100がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッド100がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド100がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のDに対応する。
【0093】
次に、下流側の磁気ヘッド10により読み取った磁気波形について説明する。図17に示すように、磁気ヘッド10がA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図17の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図17の点線のD´に対応する。
【0094】
上流側の磁気ヘッド100と下流側の磁気ヘッド10とでそれぞれ読み取った磁気波形について比較すると、図17に示されるように、下流側の磁気ヘッド10の方は、上流側の磁気ヘッド100と比べて、磁界量が変化することから、1つ目の最小位置B´と2つ目の最大位置C´との時間が長くなる。その結果、下流側の磁気ヘッド10は、所定の角度傾けて設置されることで、手形Sの搬送速度が低速側に変動した場合に、E13Bフォントの文字「2」の磁気波形のピーク位置に区別できる程度の違いを生じさせることができる。
【0095】
(実施例6)
以下、実施例6として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、上流側の磁気ヘッド100及び下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「5」の磁気波形をそれぞれ読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「5」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から高速側に搬送速度の変動が生じた場合の磁気波形をそれぞれ読み取った。その結果を図18に示す。
【0096】
なお、図18は、実施例6に係るE13Bフォントの文字「5」の磁気波形である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0097】
まず、上流側の磁気ヘッド100により読み取った磁気波形について説明する。図18に示すように、磁気ヘッド100がAの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のAに対応する。次に、磁気ヘッド100がBの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のBに対応する。次に、磁気ヘッド100がCの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のCに対応する。最後に、磁気ヘッド100がDの部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のDに対応する。
【0098】
次に、下流側の磁気ヘッド10により読み取った磁気波形について説明する。図18に示すように、磁気ヘッド10がA´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のA´に対応する。次に、磁気ヘッド10がB´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のB´に対応する。次に、磁気ヘッド10がC´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最大となり、この時の磁気波形は図18の点線のC´に対応する。最後に、磁気ヘッド10がD´の部分を走査している箇所で、磁界の変化量は再び最小となり、この時の磁気波形は図18の点線のD´に対応する。
【0099】
上流側の磁気ヘッド100と下流側の磁気ヘッド10とでそれぞれ読み取った磁気波形について比較すると、図18に示されるように、下流側の磁気ヘッド10の方は、上流側の磁気ヘッド100と比べて、磁界量が変化することから、1つ目の最小位置B´と2つ目の最大位置C´との時間が短くなる。その結果、下流側の磁気ヘッド10は、所定の角度傾けて設置されることで、手形Sの搬送速度が低速側に変動した場合に、E13Bフォントの文字「5」の磁気波形のピーク位置に区別できる程度の違いを生じさせることができる。
【0100】
(実施例7)
以下、実施例7として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、E13Bフォントの文字「2」について、手形Sの所定の搬送速度(設定値)から低速側に搬送速度の変動が生じた場合と、E13Bフォントの文字「5」について、手形Sの高速側に搬送速度の変動が生じた場合とを比較した。その結果を図19に示す。
【0101】
なお、図19は、実施例8に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0102】
図19に示すように、文字「2」について手形Sの搬送速度が低速側に変動し、文字「5」について手形Sの搬送速度が高速側に変動したとしても、両者を下流側の磁気ヘッド10で読み取ることにより、文字「5」の磁気波形の1つ目の最小位置B´と2つ目の最大位置C´の時間が短くなり、両者の違いは容易に且つ確実に区別することができる。したがって、文字認定部により下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報に基づいて識別情報を認定することにより、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0103】
(実施例8)
以下、実施例8として、上述した本実施形態に係る識別情報読取装置を備えた磁気インク文字読取装置を用いて、下流側の磁気ヘッド10によりE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を読み取った例について説明する。ここでは、手形Sの所定の搬送速度(設定値)に変動が生じない場合において、E13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形を比較した。その結果を図20に示す。
【0104】
なお、図20は、実施例8に係るE13Bフォントの文字「2」及び「5」の磁気波形の比較図である。なお、文字上の線はE13Bフォントの文字「2」及び「5」のピーク位置を示す。また、図中の縦軸は出力電圧値であり、横軸は時間の経過を表す。この線上の磁界の変化量が磁気波形として読み取られる。
【0105】
図20に示すように、文字「2」及び「5」の磁気波形については、下流側の磁気ヘッド10を所定の角度傾けているので、走査する磁束量が変化し、両者の違いは容易に且つ確実に区別することができる。したがって、文字認定部40(認定手段42)により下流側の磁気ヘッド10で読み取った読取情報に基づいて識別情報を認定することにより、識別情報の誤読を確実に防止することができる。
【0106】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1及び2について説明したが、勿論、本発明は上述の実施形態1及び2に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、被読取部材として手形Sを例示し、さらにその手形に含まれる磁性情報として、特別の識別形態の文字としてE13Bフォントを例示して説明したが、勿論本発明はこれに限定されず、その他の文字形態情報として、例えば、ヨーロッパで幅広く使用されているCMC7等であってもよし、あるいは文字以外の模様等であってもよい。要するに、本発明は、磁気波形等の磁性情報に基づくと区別が難しい識別形態について適用可能である。
【0107】
また、上述した実施形態1及び2では、被読取部材として手形Sを例示して説明したが、本発明は、識別情報が付与された被読取部材を搬送しながら当該識別情報を磁性情報として読み取る場合に適用できることから、このような被読取部材については特に限定されない。すなわち、本発明は、磁性情報として読取可能な識別情報が付与された物であれば特に限定されず、例えば、有価証券、公共料金の請求書、サービス申込書等のシート材でも適用可能であり、勿論、包装材等の立体形状であっても適用可能である。
【0108】
また、上述した実施形態1及び2では、設置型の磁気ヘッド10、100によって手形を順次搬送しながら識別情報の読取を行うようにしたが、勿論これに限定されず、例えば、一定範囲で往復等するような走査型の磁気ヘッドを用いて、順次搬送される手形を走査しながら読み取るようにしてもよし、読み取る際に手形の搬送を一時停止して読み取るようにしてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態1及び2では、磁気ヘッド10自体を搬送方向に所定の角度傾けて設置した場合について説明したが、勿論これに限定されず、例えば、磁気ヘッド自体を傾けて設置しなくても、磁気ヘッド内の読取部を傾けるようにしてもよい。何れにしても、本発明は、読取手段により識別情報を所定の傾き状態で読み取るものであれば特に限定されるものではない。
【0110】
さらに、上述した実施形態2では、上流側の磁気ヘッド100を直立に設置したが、勿論これに限定されず、所定の傾き状態で読み取る磁気ヘッドの下流側に、直立の磁気ヘッドを配置してもよい。
【0111】
なお、上述した実施形態1及び2では、本発明の識別情報読取装置を適用した一例として磁気インク文字読取装置を挙げて説明したが、本発明は、広く識別情報読取装置全般を対象としたものである。すなわち、本発明は、被読取部材の搬送路を備え、その搬送路に所定の傾き状態で識別情報を読み取るための読取手段を有する識別情報読取装置に関するものであり、それ以外の構成として、例えば、被読取部材の識別情報等を読み取ってシート等の印刷媒体(紙媒体)に画像を形成する画像形成手段を設けて画像形成装置としてもよいし、画像を読み取る画像読取装置に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0112】
S 手形
1 ホッパー部
2 押圧板
3 給紙ローラ
4 コントローラユニット
5 フィードローラ
6 分離ローラ6
7 永久磁石
8 搬送ローラ対
9 紙端検知センサ
10 磁気ヘッド
23 増幅回路
24 フィルタ回路
25 A/D交換機
30 文字判定部
31 サンプルテーブル作成部
32 辞書テーブル
33 判定部
40 文字認定部
41 判断手段
42 認定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性情報として読取可能な識別情報を含む被読取部材を搬送する搬送路に設けられて前記識別情報を所定の傾き状態で前記磁性情報として読み取る読取手段を備えていることを特徴とする識別情報読取装置。
【請求項2】
前記読取手段は、前記被読取部材の搬送路に対して所定の角度傾けた状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載の識別情報読取装置。
【請求項3】
前記識別情報として認定するための認定基準情報と前記読取手段が読み取った読取情報とを照合することにより前記読取情報を前記識別情報として認定する認定手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2項に記載の識別情報読取装置。
【請求項4】
前記認定基準情報は、文字形態情報としてE13Bフォントの文字2及び5に関する磁性情報を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の識別情報読取装置。
【請求項5】
前記被読取部材の搬送路に別途設けられて前記識別情報を前記磁性情報として読み取る他の読取手段と、前記識別情報として認定するための認定基準情報と前記読取手段で読み取った読取情報及び前記他の読取手段で読み取った他の読取情報とを照合することにより前記識別情報に対応する情報であるか否かを判定する判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の識別情報読取装置。
【請求項6】
前記他の読取情報に所定の個別情報が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記他の読取情報に前記所定の個別情報が含まれると判断した際に前記判定手段で前記識別情報に対応する情報であると判定した前記読取情報を前記識別情報として認定する認定手段とを備えていることを特徴とする請求項5記載の識別情報読取装置。
【請求項7】
前記他の読取情報に所定の個別情報が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記他の読取情報に前記所定の個別情報が含まれると判断した際に前記他の読取情報に含まれる前記所定の個別情報に対応する特定の個別情報について前記読取手段で読み取った読取情報に含まれる前記所定の個別情報に対応する個別情報に補正する補正手段と、前記補正後の第1読取情報を前記識別情報として認定する認定手段とを備えていることを特徴とする請求項5記載の識別情報読取装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の識別情報読取装置を備えていることを特徴とする手形読取装置。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載の識別情報読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
磁性情報として読取可能な識別情報を含む被読取部材を搬送する搬送路に設けられて前記識別情報を所定の傾き状態で前記磁性情報として読み取る読取手段を備えていることを特徴とする識別情報読取装置。
【請求項2】
前記読取手段は、前記被読取部材の搬送路に対して所定の角度傾けた状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載の識別情報読取装置。
【請求項3】
前記識別情報として認定するための認定基準情報と前記読取手段が読み取った読取情報とを照合することにより前記読取情報を前記識別情報として認定する認定手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2項に記載の識別情報読取装置。
【請求項4】
前記認定基準情報は、文字形態情報としてE13Bフォントの文字2及び5に関する磁性情報を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の識別情報読取装置。
【請求項5】
前記被読取部材の搬送路に別途設けられて前記識別情報を前記磁性情報として読み取る他の読取手段と、前記識別情報として認定するための認定基準情報と前記読取手段で読み取った読取情報及び前記他の読取手段で読み取った他の読取情報とを照合することにより前記識別情報に対応する情報であるか否かを判定する判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の識別情報読取装置。
【請求項6】
前記他の読取情報に所定の個別情報が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記他の読取情報に前記所定の個別情報が含まれると判断した際に前記判定手段で前記識別情報に対応する情報であると判定した前記読取情報を前記識別情報として認定する認定手段とを備えていることを特徴とする請求項5記載の識別情報読取装置。
【請求項7】
前記他の読取情報に所定の個別情報が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記他の読取情報に前記所定の個別情報が含まれると判断した際に前記他の読取情報に含まれる前記所定の個別情報に対応する特定の個別情報について前記読取手段で読み取った読取情報に含まれる前記所定の個別情報に対応する個別情報に補正する補正手段と、前記補正後の第1読取情報を前記識別情報として認定する認定手段とを備えていることを特徴とする請求項5記載の識別情報読取装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の識別情報読取装置を備えていることを特徴とする手形読取装置。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載の識別情報読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−244299(P2010−244299A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92342(P2009−92342)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
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