識別装置および識別方法
【課題】識別対象物体の置かれる向きに関わらず、識別対象物体の識別処理時間を大幅に短縮することが可能な識別装置および識別方法の提供。
【解決手段】入力画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段13と、入力画像から閉領域の特異点を取得する特異点取得手段14と、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段15と、識別対象物体について等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段16と、導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段16に記憶されたテンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別手段17とを含む。
【解決手段】入力画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段13と、入力画像から閉領域の特異点を取得する特異点取得手段14と、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段15と、識別対象物体について等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段16と、導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段16に記憶されたテンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別手段17とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器材や医療機器構成部品などの識別対象物体の識別装置および識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、医療施設において院内感染の撲滅が叫ばれ、様々な感染防止策が徹底されている。主な感染原因の1つとして、医療器材から患者や医療従事者への感染が挙げられる。そのため、医療器材の消毒、滅菌作業には多大な注力がなされている。使用後の器材を消毒、滅菌するまでの過程に人間が関与しているのが現状であり、汚染器材の処理作業は不快感を伴うものであることからも、この処理過程の自動化が強く求められている。
【0003】
ところが、このような背景があるにも関わらず、これまでの医療サポートシステムの研究は、手術支援ロボットや電子カルテシステムの開発といったものがほとんどであり、医療器材の自動処理システムの開発は国内外ともに実用化段階に至っていない。
【0004】
具体的にこれらの作業を自動化するためには、システムが医療器材を正確に識別する必要がある。これまでの医療器材の識別は、バーコード、二次元レーザーマーキングやICタグを用いる技術が主流である。画像処理による識別は、医療器材への血液や体液の付着による画像上の変化が起こりうることや、鋏等の可動軸を有する医療器材は使用前と形状が変わりうること等の事情により膨大な計算を必要とするため、実現は困難と考えられている。
【0005】
次に、医療用に限らない一般的な画像識別の技術水準について概説する。従来、広く用いられている画像識別法として、テンプレートマッチング法がある。この方法は、テンプレート画像を探索範囲内で動かし、類似度が最大となるような位置を求める操作のことである。類似度は、相関係数法、残差逐次検定法、最小二乗法などが使われている(非特許文献1参照。)。
【0006】
また、テンプレートマッチングでは、画素単位で照合を行うため、対象とする画像が任意の傾斜角を持つ場合には適用が困難となるが、この問題を解決する技術として、画像領域内に存在するあるエッジ画素と、一定の距離離れた位置に存在しているエッジ画素について、エッジ方向と、双方のエッジ画素を結ぶ方向との差を求め、その方向差を照合することにより、その累積した照合結果から、探索すべき部分画像の位置と傾きを求める手法が提案されている(非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高木幹雄、下田陽久監修,新編 画像解析ハンドブック,全面改訂版,東京大学出版会,2004年9月
【非特許文献2】林宏樹、斉藤文彦,等距離エッジ点群の幾何特徴に基づく回転対応画像照合,電気学会論文誌C,社団法人電気学会,2006年,126巻,4号,pp.519−525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療器材の識別に、前述のバーコード、二次元レーザーマーキングやICタグを用いる場合には、バーコード、二次元レーザーマーキングやICタグを器材に埋め込む手間が掛かることや、現存する器材に応用することが困難である等の問題が生じる。
【0009】
また、使用後の医療器材はどのような置き方がなされるのか分からないため、前述のように対象とする画像が任意の傾斜角を持つ場合には適用が困難なテンプレートマッチングは不向きである。また、画素単位で照合を行うテンプレートマッチングでは、処理に時間も掛かる。
【0010】
また、非特許文献2に記載の手法では、エッジ方向と、双方のエッジ画素を結ぶ方向との差を求め、その方向差を照合し、累積した照合結果から、探索すべき部分画像の位置と傾きを求めるため、エッジ画素が多い場合にはテンプレートテーブルに登録される方向差リストが極端に多くなり、照合に要する処理時間が膨大となる。
【0011】
そこで、本発明においては、識別対象物体の置かれる向きに関わらず、識別対象物体の識別処理時間を大幅に短縮することが可能な識別装置および識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の識別装置は、識別対象物体の画像を入力する画像入力手段と、画像入力手段により入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、閉領域の特異点を取得する特異点取得手段と、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段と、識別対象物体について等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段と、パラメータ導出手段により導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別手段とを含むものである。
【0013】
また、本発明の識別方法は、識別対象物体の画像を入力する画像入力ステップと、画像入力ステップにより入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、閉領域の特異点を取得する特異点取得ステップと、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出ステップと、識別対象物体について等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータをテンプレート記憶手段に記憶するステップと、パラメータ導出ステップにより導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別ステップとを含む。
【0014】
これらの発明によれば、入力された画像から閉領域を抽出することで、それぞれの閉領域が識別対象物体であると判断される。そして、この閉領域の特異点を抽出し、この特異点を中心として、いくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することにより、特異点周りの等距離画素強度パラメータが導出される。この等距離画素強度パラメータは、それぞれの等しい距離上における閉領域内の画素の含有度をパラメータとしているため、特徴量は距離に依存した一次元データとなる。この等距離画素強度パラメータは、識別対象物体の回転によって変動が生じないパラメータ、すなわち回転不変パラメータである。本発明によれば、この等距離画素強度パラメータを、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合することにより、識別対象物体を識別することができる。
【0015】
また、本発明の識別装置は、画像入力手段により入力された画像を二値化する二値化処理手段をさらに含み、閉領域抽出手段は、二値化処理手段による二値化後の画像から閉領域を抽出する処理を行うものであることが望ましい。画像入力手段により入力された画像がカラー画像やグレースケール画像などの場合、そのままの状態でも閉領域を抽出することは可能であるが、二値化処理により識別対象物体と背景画像とを完全に分離することで、明確な閉領域を抽出することが可能となる。
【0016】
また、特異点取得手段についても、二値化処理手段による二値化後の画像から特異点を取得する処理を行う構成とすることが可能である。この場合、二値化処理により識別対象物体と背景画像とが完全に分離されるため、より正確かつ高速に特異点を取得することが可能となる。
【0017】
なお、特異点としては、識別対象物体の幾何学的重心点や可動軸中心点などを採用することができる。例えば、メス、ヘラ、ノミなどの回転によって形状が変化しない識別対象物体の場合には幾何学的重心点を特異点とすることで、容易に識別対象物体を識別することができる。一方、例えば鋏のような可動軸を有し、この可動軸周りに自由に動作することが可能な識別対象物体の場合には、動作角度によって識別対象物体の形状が変化するため、可動軸中心点を特異点とすることで誤識別を防止することができる。また、幾何学的重心点や可動軸中心点などは、識別対象物体の全体から求めたものに限らず、識別対象物体の特徴のある部分を抽出して求めたものを採用することができる。
【0018】
また、テンプレートデータは、識別対象物体を特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることが望ましい。これにより、識別対象物体の回転によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となる。
【0019】
また、識別対象物体が可動軸を有するものである場合には、特異点は、識別対象物体の可動軸中心点とし、テンプレートデータは、この識別対象物体を、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることが望ましい。これにより、識別対象物体の可動軸中心点を中心とする動作によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となる。
【0020】
また、本発明の識別装置は、特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出する姿勢検出手段をさらに含むものであることが望ましい。特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素と特異点とを結ぶ直線が識別対象物の長手方向であると考えられるが、この特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素について特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出することで、確実に識別対象物の長手方向を検出して、その姿勢を認識することができる。
【発明の効果】
【0021】
(1)入力された画像から閉領域を抽出し、閉領域の特異点を取得し、特異点からいくつかの等しい距離に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出し、この等距離画素強度パラメータを、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合する構成により、従来のようにエッジを抽出することなく識別対象物体を識別することができる。これにより、識別対象物体の置かれる向きに関わらず、識別対象物体の識別処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0022】
(2)二値化後の画像から閉領域を抽出する構成により、識別対象物体と背景画像とを完全に分離して、明確な閉領域を抽出し、識別精度を向上することができる。
【0023】
(3)二値化後の画像から特異点を取得する構成により、識別対象物体と背景画像とを完全に分離して、より正確かつ高速に特異点を取得することが可能となる。
【0024】
(4)識別対象物体の幾何学的重心点を特異点とすることで、例えば、メス、ヘラ、ノミなどの回転によって形状が変化しない識別対象物体の場合に、容易に識別対象物体を識別することが可能となる。
【0025】
(5)識別対象物体の可動軸中心点を特異点とすることで、例えば鋏のような動作角度によって識別対象物体の形状が変化する可動軸を有する識別対象物体の場合に、誤識別を防止することができる。
【0026】
(6)テンプレートデータとして、識別対象物体を特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることにより、識別対象物体の回転によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となり、より識別精度を向上することができる。
【0027】
(7)テンプレートデータとして、識別対象物体を、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることにより、識別対象物体が可動軸を有するものである場合に、識別対象物体の可動軸中心点を中心とする動作によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となり、より識別精度を向上することができる。
【0028】
(8)特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出することにより、確実に識別対象物の長手方向を検出して、その姿勢を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態における識別装置の概略構成図である。
【図2】図1の識別装置のブロック図である。
【図3】可動軸を有する鋏型器材の例を示す図である。
【図4】閉領域を抽出した例を示す図である。
【図5】特異点周りの等距離画素強度パラメータ導出の説明図である。
【図6】鋏型器材の開閉角度による形状変化を示す図である。
【図7】姿勢検出の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における識別装置による識別処理のフロー図である。
【図9】可動軸抽出のブロック図である。
【図10】ハフ変換により直線抽出した例を示す図である。
【図11】ハフ変換の説明図である。
【図12】交点を算出した例を示す図である。
【図13】複数の交点を算出した例を示す図である。
【図14】識別実験に使用した医療器材を示す図である。
【図15】各対象物の長手方向を検出した際の結果のキャプチャ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明の実施の形態における識別装置の概略構成図、図2は図1の識別装置のブロック図である。
【0031】
図1において、本発明の実施の形態における識別装置1は、テーブルT上に配置された医療器材、医療機器構成部品や工具等の識別対象物体(以下、「対象物」と称す。)Mを撮像する撮像装置としてのカメラ装置2と、対象物Mをピッキングするピッキング装置3と、カメラ装置2およびピッキング装置3が接続された電子計算機としてのコンピュータ4と、コンピュータ4に接続された表示装置としてのディスプレイ5とから構成される。カメラ装置2は、図2に示す画像入力手段10として機能する。
【0032】
ピッキング装置3は、図2に示すピッキング手段19として機能する。ピッキング装置3は、x,y,zの3軸直交で動作するものであり、先端部に上記カメラ装置2とピッキングを行うための二爪のグリッパ3aが取り付けられたものである。なお、カメラ装置2の取り付け位置およびピッキング装置3の動作方向に制約はない。
【0033】
また、コンピュータ4は、図2に示すように、対象物Mが可動軸を有するものであるか否かを判別する可動軸判別手段11、入力画像を二値化する二値化処理手段12、入力画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段13と、対象物M上の特異点を取得する特異点取得手段14、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段15、対象物Mについてのテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段16、対象物Mを識別する識別手段17、対象物Mの姿勢を認識する姿勢検出手段18として機能する。
【0034】
可動軸判別手段11は、画像入力手段10により入力された画像から対象物Mが可動軸を有するものであるか否かを判別するものである。図3に示すように、本実施形態においては、対象物Mが可動軸を有する持針器、コッヘル、クーパーやメッツェンバウムなどの鋏型の医療器材の場合、可動軸中心点に識別マーク20を付している。可動軸判別手段11は、この対象物Mに付された識別マーク20を検出することにより、対象物Mが可動軸を有するものであるか否かを判別する。なお、可動軸判別手段11として、別の手法により判別する構成とすることも可能であるが、これについては後述する。
【0035】
二値化処理手段12は、画像入力手段10により入力された画像を二値化するものである。二値化の際に必要な閾値は、二値化処理により対象物Mを1(黒画素)、背景画像を0(白画素)に完全に分離できる適切な値を実験的に設定する。
【0036】
閉領域抽出手段13は、二値化画像から閉領域を抽出するものである。閉領域を抽出する処理としては、例えばシードフィルアルゴリズム(Paul S.Heckberd, "A seed fill algorithm", Graphic Gems, Academic Press Professional(1990)参照。)を用いることができる。図4は閉領域抽出手段13により閉領域を抽出した例を示している。
【0037】
特異点取得手段14は、画像入力手段10により入力された画像から閉領域の特異点、すなわち対象物Mの特異点を取得するものである。本実施形態においては、二値化処理手段12による二値化後の画像から特異点を取得する。特異点は、対象物Mの幾何学的重心点または可動軸中心点とする。なお、以下の説明では、特異点は対象物Mの全体の幾何学的重心点または可動軸中心点とするが、先端部分だけが異なり、他の部分が同じであるような器材を識別する場合には、特徴のある部分のみを画像から抜き出して、この特徴のある部分の幾何学的重心点または可動軸中心点とすることも可能である。
【0038】
黒画素(対象物M)領域を1、白画素(背景)領域を0とした二値化画像をB(x,y)とすると、対象物Mの幾何学的重心点の座標(xg,xy)は以下の式で表される。
【数1】
ここで、Mは画像の横幅のピクセル数、Nは画像の縦幅のピクセル数を表している。
【0039】
また、対象物Mが可動軸を有するものである場合、特異点取得手段14は、対象物Mに付された識別マーク20によって可動軸中心点を取得する。
【0040】
パラメータ導出手段15は、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するものである。パラメータ導出手段15は、まず、特異点取得手段14により得られた特異点座標から閉鎖領域内の各黒画素までの距離を算出する。
【0041】
ここで、各黒画素に対する距離データをD(x,y)とすると、D(x,y)は以下の式で表される。
【数2】
ここで使用したB(x,y)の値は黒画素の場合は1、白画素の場合は0であるため、背景領域である白画素の部分のD(x,y)は0となる。
【0042】
次に、特異点からの最大距離を算出する。これはD(x,y)の最大値をとることで実現できる。そして、図5に示すように、このDの最大値をRmaxとしてn分割、例えば100分割し、それぞれR1,R2,・・・,Rn(=Rmax)とおく。最後に、各Rx(x=1,2,・・・,n)上に黒画素がいくつ存在するかを累積することで、最終的な特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出する。
【0043】
等距離画素強度パラメータP(x)(x=1,2,・・・・・・,100)は以下の式で導出される。
【数3】
上式をi,jの全ての範囲について計算することで、等距離画素強度パラメータP(x)が決定される。
【0044】
テンプレート記憶手段16は、対象物Mについて等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するものである。なお、図5に示す例では、特異点は、対象物M1の幾何学的重心点であり、対象物M1が回転しても幾何学的重心点であることに変わりなく、この特異点は対象物M1の回転によっても対象物M1上の相対位置が変化しない点である。したがって、特異点周りの等しい距離上における閉領域内の画素の含有度をパラメータとする上記等距離画素強度パラメータは、対象物Mの回転によって変動が生じない回転不変パラメータであるが、入力画像の誤差に対応するため、本実施形態においてはテンプレートデータは、対象物Mを特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値をとる。
【0045】
また、対象物Mが鋏型器材の場合には、図6に示すように、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値をとる。現在の手術において一番多く使用される医療器材は、図6に示すような鋏形状の器材であり、多種類の鋏型器材が存在する。鋏形状の特徴は、一つの軸(可動軸)周りに自由に動くことが可能な点である。
【0046】
図5で説明した回転不変パラメータは、特異点が重心点であり、この重心点周りの等距離画素強度パラメータである。一般に、任意の点からの等距離画素強度パラメータは、回転に対して不変である。しかしながら、図6に示す鋏型器材40のように開閉する器材の場合、開閉に対しては、任意の点からの等距離画素強度パラメータが不変になるわけではない。そこで、鋏型器材40等の開閉器材については、等距離画素強度パラメータが開閉に対して不変となる可動軸中心点41からの等距離画素強度パラメータを用いることにより、開閉および回転の双方に対して不変なパラメータを構築することができる。
【0047】
識別手段17は、パラメータ導出手段15により導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段16に記憶されたテンプレートデータと照合し、対象物Mを識別するものである。前述のように、パラメータ導出手段15により導出された等距離画素強度パラメータP(x)は、対象物Mの回転によって変動が生じない回転不変パラメータであるため、この等距離画素強度パラメータP(x)によって対象物Mの照合を行うことで、対象物Mの回転姿勢に対して不変な識別が可能となる。
【0048】
姿勢検出手段18は、対象物Mの長手方向を検出するものである。なお、対象物Mをピッキングする位置の座標は、対象物Mの重心点である(xg,yg)をピッキング装置3の作業領域に変換したものを使用する。これは対象物Mを掴む際、当然対象物Mの重心点を掴むと安定するためである。一方、対象物Mをグリッパ3aにより掴む角度については、複雑な形状を有する対象物でない限り、大部分が長手方向と直交するようにグリッパ3aの角度を調整することで掴むことが可能である。
【0049】
そこで、姿勢検出手段18は、重心点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の重心点に対するそれぞれの角度の平均値を算出することにより長手方向の角度を取得する。具体的には、姿勢検出手段18は、重心点からの距離D(x,y)の最大値からp(<100)%の距離までの間に存在する閉領域内の黒画素を抽出し、それぞれの重心点に対する角度の平均値を算出する。図7は姿勢検出手段18による姿勢検出の説明図である。
【0050】
ここで、Dの上位p%の値をqとし、重心点から最も離れた黒画素の点群を(xmk,ymk)(k=1,2,・・・,q)とすると、重心点から最も離れた各黒画素の点の角度θkは、
【数4】
で表される。
【0051】
よって、長手方向の角度θは、
【数5】
となる。この角度θ方向に伸ばした直線を掴むようにグリッパ3aの角度を調整することで対象物Mを掴むことができる。
【0052】
次に、上記構成の識別装置1による対象物Mの識別処理について、図8のフロー図に基づいて説明する。なお、図8のフロー図に従って対象物Mの識別処理を行う前に、予め識別対象物体である対象物Mについて等距離画素強度パラメータを導出したテンプレートデータをテンプレート記憶手段16へ記憶しておく。
【0053】
そして、最初に、テーブルT上に配置された対象物Mを画像入力手段10(カメラ装置2)により撮像し、撮像した画像データをコンピュータ4に入力する(ステップS101)。コンピュータ4は、可動軸判別手段11により入力画像から識別マーク20の有無により対象物Mが可動軸を有する可動器材であるか否かを判別する(ステップS102)。
【0054】
次に、コンピュータ4は、二値化処理手段12により入力画像を二値化する(ステップS103)。そして、コンピュータ4は、閉領域抽出手段15により二値化画像から閉領域を抽出し、閉領域が存在しない場合(閉領域の数N=0)、ステップS101に戻る。また、閉領域が複数存在する場合(N≧2)、閉領域をそれぞれ分割し、以下の処理をこの分割した閉領域のそれぞれについて行う(ステップS105)。
【0055】
そして、ステップS102において対象物Mが可動器材であると判別されている場合には(ステップS106)、特異点取得手段14は、対象物Mに付された識別マーク20によって特異点としての可動軸中心点を取得する(ステップS107)。一方、対象物Mが可動器材でないと判別されている場合には(ステップS106)、特異点取得手段14は、前述のように特異点として重心点を算出する(ステップS108)。
【0056】
次に、コンピュータ4は、パラメータ導出手段15により、前述のように、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出する(ステップS109)。
【0057】
その後、コンピュータ4は、識別手段17により、この導出された特異点周りの等距離画素強度パラメータを、予めテンプレート記憶手段16に記憶されたテンプレートデータと照合し、対象物Mを識別する(ステップS110)。
【0058】
そして、コンピュータ4は、姿勢検出手段18により対象物Mの角度θを検出し(ステップS111)、ピッキング手段19(ピッキング装置3)の位置および角度を調整し(ステップS112)、対象物Mをピッキングする(ステップS113)。この一連の処理により、本実施形態における識別装置1では、対象物Mの識別およびピッキングを実現する。
【0059】
以上のように、本実施形態における識別装置1では、入力画像から対象物Mの候補である閉領域を抽出し、対象物Mの特異点としての重心点または可動軸中心点を中心として、いくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することにより特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出し、この等距離画素強度パラメータを、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合する構成により、対象物Mを識別することができる。これにより、対象物Mの置かれる向きに関わらず、対象物Mの識別処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態における識別装置1では、対象物Mが可動器材でない場合には、対象物Mの幾何学的重心点を特異点とするため、容易に対象物Mを識別することが可能となっている。一方、対象物Mが可動器材の場合には、対象物Mの可動軸中心点を特異点とするため、動作角度によって対象物Mの形状が変化していても誤識別を防止することが可能となっている。
【0061】
また、本実施形態における識別装置1では、二値化された画像から閉領域を抽出するので、対象物Mと背景画像とを完全に分離して、明確な閉領域を抽出することが可能となっており、識別精度が向上している。また、特異点の抽出を、二値化された画像から取得するので、対象物Mと背景画像とを完全に分離して、より正確かつ高速な特異点を取得が可能となっている。
【0062】
また、本実施形態における識別装置1では、テンプレートデータとして、対象物Mを特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いているので、対象物Mの回転によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となっており、識別精度が向上している。
【0063】
また、本実施形態における識別装置1では、対象物Mが可動器材の場合には、テンプレートデータとして、対象物Mを、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いているので、対象物Mの可動軸中心点を中心とする動作によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となっており、識別精度がさらに向上している。
【0064】
また、本実施形態における識別装置1では、入力された画像から対象物Mが可動器材であるか否かを自動判別し、対象物Mが可動器材である場合には可動軸中心点を特異点とし、可動器材でない場合には幾何学的重心点を特異点とするので、可動器材とそうでない器材とが混在している場合であっても、誤識別を防止して正確かつ高速に対象物Mを識別することが可能となっている。
【0065】
また、本実施形態における識別装置1では、対象物Mに付された識別マークを検出することにより対象物Mが可動器材であるか否かを判別するので、対象物Mが可動器材であるか否かを容易に判別して、より高速に対象物Mを識別することが可能となっている。また、この識別マークによって可動軸中心点を取得するので、特異点として可動器材の可動軸中心点を容易に取得することができ、さらに高速に対象物Mを識別することが可能である。
【0066】
なお、対象物Mが可動器材であるか否かの判別は、識別マークによらずに、ハフ(Hough)変換などの特徴抽出法を用いて入力画像から対象物Mの可動軸の円を自動的に抽出することにより行う構成とすることも可能である。以下、このハフ変換などの特徴抽出法を用いた対象物Mの可動軸の抽出について説明する。
【0067】
可動軸の抽出は、図9に示す直線検出手段50および可動軸取得手段51により行う。
直線検出手段50は、前述の二値化処理手段11により二値化された画像から複数の直線を検出するものである。本実施形態においては、この直線の検出にデジタル画像処理で用いられる特徴抽出法の1つであるハフ変換(Hough Transform)を利用する。図10は二値化された画像からエッジを抽出し、ハフ変換により直線抽出した例を示している。ハフ変換の基本原理は、いかなる点をとっても、その点を通る直線は無限個存在し、それぞれが様々な方向を向くというものである。このハフ変換の目的は、それらの直線の中で、画像の特徴点を最も多く通るものを決定することにある。すなわち、ハフ変換では、その画像に最もよくあった直線を近似的に検出する。
【0068】
ここで、ハフ変換について詳細に説明する。2つの点が様々な直線のうち、同一のものの上に乗っていることをはっきりさせるためには、直線と直線との比較ができるような方法で直線を表現する必要がある。標準的なハフ変換では、1つの直線を2つのパラメータで表す。例として、図11の点(x,y)を考える。
【0069】
パラメータは通常、rおよびθで表し、それぞれ原点から問題の直線に引いた法線の長さと角度とを表す。rとθを用いて、直線の式を表すと次式(1)のようになる。
r=xcosθ+ysinθ …(1)
そこで、画像上の全ての直線に、(r,θ)の組を対応させることができる。θ∈[0,π]かつr∈Rとするか、もしくはθ∈[0,π]かつr≧0とすると、ある直線に対する(r,θ)の組は一意に決定する。言い換えれば、θに対して直角で、原点からrの距離にあるものとして直線を表現することができる。この(r,θ)の組の集合がなす平面をハフ空間と呼ぶ。
【0070】
ハフ変換では、角度θを変化させながら式(1)よりrを求めることができる。rを求め、角度θと距離rごとに、その個数を加算していく。個数が最大になった角度θと距離rの組み合わせを元の直角座標に戻したものが、最も直線らしい点の集まりとなる。
【0071】
直線検出の精度にはθとrの2つのパラメータのうちθが大きな影響を及ぼす。理論から十分に予測されるが、直線検出の精度を上げるには膨大な計算が必要となるが、[0,2π]の値をとっているθの等分割する数を調節したり、三角関数のテーブルを予め用意したりすることにより、計算量を減らして高速化を図ることができる。
【0072】
2本の直線を検出するときは、式(1)より次式(2),(3)で表すことができる。
r0=xcosθ0+ysinθ0 …(2)
r1=xcosθ1+ysinθ1 …(3)
なお、2本目の直線検出のとき、1本目の直線が検出されないように1本目の直線を削除する処理を行っている。
【0073】
可動軸取得手段51は、この直線検出手段13により検出された複数の直線の交点を求めて可動軸中心点を取得するものである。直線の交点(x,y)は、式(2),(3)から式(4),(5)で求めることができる。
【数6】
【数7】
ここで、1本目の直線のr,θは添え字0で、2本目の直線のr,θは添え字1とする。実際に交点を算出した例を図12に示す。図の白点が交点である。
【0074】
なお、ハフ変換の直線検出は基準がはっきりしないため、対象物Mの形状によっては取得した可動軸中心点が真の可動軸中心点からずれることがある。そこで、本実施形態においては、直線検出手段50により3以上の直線を検出し、可動軸取得手段51により複数の交点を求め、算出した交点の平均を可動軸中心点とする。これにより、ハフ変換の直線検出の基準が曖昧な部分を補い、複数の交点の中から可動軸中心点を選別する。
【0075】
複数の交点は、次式(6),(7)で求めることができる。このときのnは、直線の本数をNとしたときの(N−1)の総和である。複数点の算出をした画像を図13に示す。
【数8】
【数9】
【0076】
なお、ハフ変換を行い、交点を求めることで、真の可動軸中心点あたりに交点は集中して現れるが、図13に示すように離れている交点もいくつか見られる。そのため、次のような点の選別を行うことが望ましい。選別は、まず対象物Mの閉領域外の点を考慮しないようにする。これにより、その後の処理の高速化を図ることができる。次に、閉領域内の点同士の距離を計算する。そして、計算した結果から離れている点を除き、その他の点で平均値を取得し、その点を可動軸中心点にする。
【実施例】
【0077】
本実施形態における識別装置1を用いて医療器材の識別実験を行った。行った実験は、対象物の姿勢の変化に対する識別精度の確認と、対象物の長手方向の認識精度の2種類である。識別に使用した対象物は、図14に示すものである。
【0078】
識別実験は、図14に示したそれぞれの対象物の入力画像について等距離画素強度パラメータを導出し、テンプレートデータとの比較を行った。データ比較のパラメータとして、2つのデータ間の相関係数を利用した。2つのデータをXi,Yiで表すと、相関係数Rは以下の式で表される。
【数10】
【0079】
ここで、Nは2つのデータのデータ数を表す。このデータ数は実験では200とした。これは前述の最大距離からの分割数nと同じとなる。テンプレートデータと対象物の入力画像の相関係数を上式によって導出し、そのうち一番高い相関を示したものが目的対象物として識別される。
【0080】
以上のように条件を設定して実験を行った。また、回転不変であることを確かめるために1つの対象物につき約72°ずつ回転させていき、計5回の姿勢変化を行い、相関を取った。表1は対象物の入力画像と各テンプレートデータとの相関係数を示している。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から、すべての対象物において、それぞれの対象物のテンプレートデータとの相関が一番高くなっていることが確認できた。この結果は、本識別装置1で任意の回転姿勢の器材を正確に識別できていることを示している。
【0083】
また、対象物の長手方向の認識精度の確認実験では、上位5%の黒画素領域を取得し、長手方向の認識を行った。図15は各対象物の長手方向を検出した際の結果のキャプチャ画像である。図15における黒塗り部分は上位5%の黒画素領域を示している。なお、図15において直線の角度は12時の方向を基準として右側を正、左側を負として導出している。図15の結果から、すべての対象物ではきちんと長手方向の認識ができたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の識別装置および識別方法は、医療器材、医療機器構成部品や工具などの識別対象物体を非接触で識別するための装置および方法として有用である。
【符号の説明】
【0085】
M 医療器材
1 識別装置
2 カメラ装置
3 ピッキング装置
4 コンピュータ
5 ディスプレイ
10 画像入力手段
11 可動軸判別手段
12 二値化処理手段
13 閉領域抽出手段
14 特異点取得手段
15 パラメータ導出手段
16 テンプレート記憶手段
17 識別手段
18 姿勢検出手段
19 ピッキング手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器材や医療機器構成部品などの識別対象物体の識別装置および識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、医療施設において院内感染の撲滅が叫ばれ、様々な感染防止策が徹底されている。主な感染原因の1つとして、医療器材から患者や医療従事者への感染が挙げられる。そのため、医療器材の消毒、滅菌作業には多大な注力がなされている。使用後の器材を消毒、滅菌するまでの過程に人間が関与しているのが現状であり、汚染器材の処理作業は不快感を伴うものであることからも、この処理過程の自動化が強く求められている。
【0003】
ところが、このような背景があるにも関わらず、これまでの医療サポートシステムの研究は、手術支援ロボットや電子カルテシステムの開発といったものがほとんどであり、医療器材の自動処理システムの開発は国内外ともに実用化段階に至っていない。
【0004】
具体的にこれらの作業を自動化するためには、システムが医療器材を正確に識別する必要がある。これまでの医療器材の識別は、バーコード、二次元レーザーマーキングやICタグを用いる技術が主流である。画像処理による識別は、医療器材への血液や体液の付着による画像上の変化が起こりうることや、鋏等の可動軸を有する医療器材は使用前と形状が変わりうること等の事情により膨大な計算を必要とするため、実現は困難と考えられている。
【0005】
次に、医療用に限らない一般的な画像識別の技術水準について概説する。従来、広く用いられている画像識別法として、テンプレートマッチング法がある。この方法は、テンプレート画像を探索範囲内で動かし、類似度が最大となるような位置を求める操作のことである。類似度は、相関係数法、残差逐次検定法、最小二乗法などが使われている(非特許文献1参照。)。
【0006】
また、テンプレートマッチングでは、画素単位で照合を行うため、対象とする画像が任意の傾斜角を持つ場合には適用が困難となるが、この問題を解決する技術として、画像領域内に存在するあるエッジ画素と、一定の距離離れた位置に存在しているエッジ画素について、エッジ方向と、双方のエッジ画素を結ぶ方向との差を求め、その方向差を照合することにより、その累積した照合結果から、探索すべき部分画像の位置と傾きを求める手法が提案されている(非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高木幹雄、下田陽久監修,新編 画像解析ハンドブック,全面改訂版,東京大学出版会,2004年9月
【非特許文献2】林宏樹、斉藤文彦,等距離エッジ点群の幾何特徴に基づく回転対応画像照合,電気学会論文誌C,社団法人電気学会,2006年,126巻,4号,pp.519−525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療器材の識別に、前述のバーコード、二次元レーザーマーキングやICタグを用いる場合には、バーコード、二次元レーザーマーキングやICタグを器材に埋め込む手間が掛かることや、現存する器材に応用することが困難である等の問題が生じる。
【0009】
また、使用後の医療器材はどのような置き方がなされるのか分からないため、前述のように対象とする画像が任意の傾斜角を持つ場合には適用が困難なテンプレートマッチングは不向きである。また、画素単位で照合を行うテンプレートマッチングでは、処理に時間も掛かる。
【0010】
また、非特許文献2に記載の手法では、エッジ方向と、双方のエッジ画素を結ぶ方向との差を求め、その方向差を照合し、累積した照合結果から、探索すべき部分画像の位置と傾きを求めるため、エッジ画素が多い場合にはテンプレートテーブルに登録される方向差リストが極端に多くなり、照合に要する処理時間が膨大となる。
【0011】
そこで、本発明においては、識別対象物体の置かれる向きに関わらず、識別対象物体の識別処理時間を大幅に短縮することが可能な識別装置および識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の識別装置は、識別対象物体の画像を入力する画像入力手段と、画像入力手段により入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、閉領域の特異点を取得する特異点取得手段と、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段と、識別対象物体について等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段と、パラメータ導出手段により導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別手段とを含むものである。
【0013】
また、本発明の識別方法は、識別対象物体の画像を入力する画像入力ステップと、画像入力ステップにより入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、閉領域の特異点を取得する特異点取得ステップと、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出ステップと、識別対象物体について等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータをテンプレート記憶手段に記憶するステップと、パラメータ導出ステップにより導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別ステップとを含む。
【0014】
これらの発明によれば、入力された画像から閉領域を抽出することで、それぞれの閉領域が識別対象物体であると判断される。そして、この閉領域の特異点を抽出し、この特異点を中心として、いくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することにより、特異点周りの等距離画素強度パラメータが導出される。この等距離画素強度パラメータは、それぞれの等しい距離上における閉領域内の画素の含有度をパラメータとしているため、特徴量は距離に依存した一次元データとなる。この等距離画素強度パラメータは、識別対象物体の回転によって変動が生じないパラメータ、すなわち回転不変パラメータである。本発明によれば、この等距離画素強度パラメータを、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合することにより、識別対象物体を識別することができる。
【0015】
また、本発明の識別装置は、画像入力手段により入力された画像を二値化する二値化処理手段をさらに含み、閉領域抽出手段は、二値化処理手段による二値化後の画像から閉領域を抽出する処理を行うものであることが望ましい。画像入力手段により入力された画像がカラー画像やグレースケール画像などの場合、そのままの状態でも閉領域を抽出することは可能であるが、二値化処理により識別対象物体と背景画像とを完全に分離することで、明確な閉領域を抽出することが可能となる。
【0016】
また、特異点取得手段についても、二値化処理手段による二値化後の画像から特異点を取得する処理を行う構成とすることが可能である。この場合、二値化処理により識別対象物体と背景画像とが完全に分離されるため、より正確かつ高速に特異点を取得することが可能となる。
【0017】
なお、特異点としては、識別対象物体の幾何学的重心点や可動軸中心点などを採用することができる。例えば、メス、ヘラ、ノミなどの回転によって形状が変化しない識別対象物体の場合には幾何学的重心点を特異点とすることで、容易に識別対象物体を識別することができる。一方、例えば鋏のような可動軸を有し、この可動軸周りに自由に動作することが可能な識別対象物体の場合には、動作角度によって識別対象物体の形状が変化するため、可動軸中心点を特異点とすることで誤識別を防止することができる。また、幾何学的重心点や可動軸中心点などは、識別対象物体の全体から求めたものに限らず、識別対象物体の特徴のある部分を抽出して求めたものを採用することができる。
【0018】
また、テンプレートデータは、識別対象物体を特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることが望ましい。これにより、識別対象物体の回転によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となる。
【0019】
また、識別対象物体が可動軸を有するものである場合には、特異点は、識別対象物体の可動軸中心点とし、テンプレートデータは、この識別対象物体を、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることが望ましい。これにより、識別対象物体の可動軸中心点を中心とする動作によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となる。
【0020】
また、本発明の識別装置は、特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出する姿勢検出手段をさらに含むものであることが望ましい。特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素と特異点とを結ぶ直線が識別対象物の長手方向であると考えられるが、この特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素について特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出することで、確実に識別対象物の長手方向を検出して、その姿勢を認識することができる。
【発明の効果】
【0021】
(1)入力された画像から閉領域を抽出し、閉領域の特異点を取得し、特異点からいくつかの等しい距離に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出し、この等距離画素強度パラメータを、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合する構成により、従来のようにエッジを抽出することなく識別対象物体を識別することができる。これにより、識別対象物体の置かれる向きに関わらず、識別対象物体の識別処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0022】
(2)二値化後の画像から閉領域を抽出する構成により、識別対象物体と背景画像とを完全に分離して、明確な閉領域を抽出し、識別精度を向上することができる。
【0023】
(3)二値化後の画像から特異点を取得する構成により、識別対象物体と背景画像とを完全に分離して、より正確かつ高速に特異点を取得することが可能となる。
【0024】
(4)識別対象物体の幾何学的重心点を特異点とすることで、例えば、メス、ヘラ、ノミなどの回転によって形状が変化しない識別対象物体の場合に、容易に識別対象物体を識別することが可能となる。
【0025】
(5)識別対象物体の可動軸中心点を特異点とすることで、例えば鋏のような動作角度によって識別対象物体の形状が変化する可動軸を有する識別対象物体の場合に、誤識別を防止することができる。
【0026】
(6)テンプレートデータとして、識別対象物体を特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることにより、識別対象物体の回転によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となり、より識別精度を向上することができる。
【0027】
(7)テンプレートデータとして、識別対象物体を、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いることにより、識別対象物体が可動軸を有するものである場合に、識別対象物体の可動軸中心点を中心とする動作によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となり、より識別精度を向上することができる。
【0028】
(8)特異点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出することにより、確実に識別対象物の長手方向を検出して、その姿勢を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態における識別装置の概略構成図である。
【図2】図1の識別装置のブロック図である。
【図3】可動軸を有する鋏型器材の例を示す図である。
【図4】閉領域を抽出した例を示す図である。
【図5】特異点周りの等距離画素強度パラメータ導出の説明図である。
【図6】鋏型器材の開閉角度による形状変化を示す図である。
【図7】姿勢検出の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における識別装置による識別処理のフロー図である。
【図9】可動軸抽出のブロック図である。
【図10】ハフ変換により直線抽出した例を示す図である。
【図11】ハフ変換の説明図である。
【図12】交点を算出した例を示す図である。
【図13】複数の交点を算出した例を示す図である。
【図14】識別実験に使用した医療器材を示す図である。
【図15】各対象物の長手方向を検出した際の結果のキャプチャ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明の実施の形態における識別装置の概略構成図、図2は図1の識別装置のブロック図である。
【0031】
図1において、本発明の実施の形態における識別装置1は、テーブルT上に配置された医療器材、医療機器構成部品や工具等の識別対象物体(以下、「対象物」と称す。)Mを撮像する撮像装置としてのカメラ装置2と、対象物Mをピッキングするピッキング装置3と、カメラ装置2およびピッキング装置3が接続された電子計算機としてのコンピュータ4と、コンピュータ4に接続された表示装置としてのディスプレイ5とから構成される。カメラ装置2は、図2に示す画像入力手段10として機能する。
【0032】
ピッキング装置3は、図2に示すピッキング手段19として機能する。ピッキング装置3は、x,y,zの3軸直交で動作するものであり、先端部に上記カメラ装置2とピッキングを行うための二爪のグリッパ3aが取り付けられたものである。なお、カメラ装置2の取り付け位置およびピッキング装置3の動作方向に制約はない。
【0033】
また、コンピュータ4は、図2に示すように、対象物Mが可動軸を有するものであるか否かを判別する可動軸判別手段11、入力画像を二値化する二値化処理手段12、入力画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段13と、対象物M上の特異点を取得する特異点取得手段14、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段15、対象物Mについてのテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段16、対象物Mを識別する識別手段17、対象物Mの姿勢を認識する姿勢検出手段18として機能する。
【0034】
可動軸判別手段11は、画像入力手段10により入力された画像から対象物Mが可動軸を有するものであるか否かを判別するものである。図3に示すように、本実施形態においては、対象物Mが可動軸を有する持針器、コッヘル、クーパーやメッツェンバウムなどの鋏型の医療器材の場合、可動軸中心点に識別マーク20を付している。可動軸判別手段11は、この対象物Mに付された識別マーク20を検出することにより、対象物Mが可動軸を有するものであるか否かを判別する。なお、可動軸判別手段11として、別の手法により判別する構成とすることも可能であるが、これについては後述する。
【0035】
二値化処理手段12は、画像入力手段10により入力された画像を二値化するものである。二値化の際に必要な閾値は、二値化処理により対象物Mを1(黒画素)、背景画像を0(白画素)に完全に分離できる適切な値を実験的に設定する。
【0036】
閉領域抽出手段13は、二値化画像から閉領域を抽出するものである。閉領域を抽出する処理としては、例えばシードフィルアルゴリズム(Paul S.Heckberd, "A seed fill algorithm", Graphic Gems, Academic Press Professional(1990)参照。)を用いることができる。図4は閉領域抽出手段13により閉領域を抽出した例を示している。
【0037】
特異点取得手段14は、画像入力手段10により入力された画像から閉領域の特異点、すなわち対象物Mの特異点を取得するものである。本実施形態においては、二値化処理手段12による二値化後の画像から特異点を取得する。特異点は、対象物Mの幾何学的重心点または可動軸中心点とする。なお、以下の説明では、特異点は対象物Mの全体の幾何学的重心点または可動軸中心点とするが、先端部分だけが異なり、他の部分が同じであるような器材を識別する場合には、特徴のある部分のみを画像から抜き出して、この特徴のある部分の幾何学的重心点または可動軸中心点とすることも可能である。
【0038】
黒画素(対象物M)領域を1、白画素(背景)領域を0とした二値化画像をB(x,y)とすると、対象物Mの幾何学的重心点の座標(xg,xy)は以下の式で表される。
【数1】
ここで、Mは画像の横幅のピクセル数、Nは画像の縦幅のピクセル数を表している。
【0039】
また、対象物Mが可動軸を有するものである場合、特異点取得手段14は、対象物Mに付された識別マーク20によって可動軸中心点を取得する。
【0040】
パラメータ導出手段15は、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するものである。パラメータ導出手段15は、まず、特異点取得手段14により得られた特異点座標から閉鎖領域内の各黒画素までの距離を算出する。
【0041】
ここで、各黒画素に対する距離データをD(x,y)とすると、D(x,y)は以下の式で表される。
【数2】
ここで使用したB(x,y)の値は黒画素の場合は1、白画素の場合は0であるため、背景領域である白画素の部分のD(x,y)は0となる。
【0042】
次に、特異点からの最大距離を算出する。これはD(x,y)の最大値をとることで実現できる。そして、図5に示すように、このDの最大値をRmaxとしてn分割、例えば100分割し、それぞれR1,R2,・・・,Rn(=Rmax)とおく。最後に、各Rx(x=1,2,・・・,n)上に黒画素がいくつ存在するかを累積することで、最終的な特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出する。
【0043】
等距離画素強度パラメータP(x)(x=1,2,・・・・・・,100)は以下の式で導出される。
【数3】
上式をi,jの全ての範囲について計算することで、等距離画素強度パラメータP(x)が決定される。
【0044】
テンプレート記憶手段16は、対象物Mについて等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するものである。なお、図5に示す例では、特異点は、対象物M1の幾何学的重心点であり、対象物M1が回転しても幾何学的重心点であることに変わりなく、この特異点は対象物M1の回転によっても対象物M1上の相対位置が変化しない点である。したがって、特異点周りの等しい距離上における閉領域内の画素の含有度をパラメータとする上記等距離画素強度パラメータは、対象物Mの回転によって変動が生じない回転不変パラメータであるが、入力画像の誤差に対応するため、本実施形態においてはテンプレートデータは、対象物Mを特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値をとる。
【0045】
また、対象物Mが鋏型器材の場合には、図6に示すように、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値をとる。現在の手術において一番多く使用される医療器材は、図6に示すような鋏形状の器材であり、多種類の鋏型器材が存在する。鋏形状の特徴は、一つの軸(可動軸)周りに自由に動くことが可能な点である。
【0046】
図5で説明した回転不変パラメータは、特異点が重心点であり、この重心点周りの等距離画素強度パラメータである。一般に、任意の点からの等距離画素強度パラメータは、回転に対して不変である。しかしながら、図6に示す鋏型器材40のように開閉する器材の場合、開閉に対しては、任意の点からの等距離画素強度パラメータが不変になるわけではない。そこで、鋏型器材40等の開閉器材については、等距離画素強度パラメータが開閉に対して不変となる可動軸中心点41からの等距離画素強度パラメータを用いることにより、開閉および回転の双方に対して不変なパラメータを構築することができる。
【0047】
識別手段17は、パラメータ導出手段15により導出された等距離画素強度パラメータをテンプレート記憶手段16に記憶されたテンプレートデータと照合し、対象物Mを識別するものである。前述のように、パラメータ導出手段15により導出された等距離画素強度パラメータP(x)は、対象物Mの回転によって変動が生じない回転不変パラメータであるため、この等距離画素強度パラメータP(x)によって対象物Mの照合を行うことで、対象物Mの回転姿勢に対して不変な識別が可能となる。
【0048】
姿勢検出手段18は、対象物Mの長手方向を検出するものである。なお、対象物Mをピッキングする位置の座標は、対象物Mの重心点である(xg,yg)をピッキング装置3の作業領域に変換したものを使用する。これは対象物Mを掴む際、当然対象物Mの重心点を掴むと安定するためである。一方、対象物Mをグリッパ3aにより掴む角度については、複雑な形状を有する対象物でない限り、大部分が長手方向と直交するようにグリッパ3aの角度を調整することで掴むことが可能である。
【0049】
そこで、姿勢検出手段18は、重心点からの距離が最も遠い閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の重心点に対するそれぞれの角度の平均値を算出することにより長手方向の角度を取得する。具体的には、姿勢検出手段18は、重心点からの距離D(x,y)の最大値からp(<100)%の距離までの間に存在する閉領域内の黒画素を抽出し、それぞれの重心点に対する角度の平均値を算出する。図7は姿勢検出手段18による姿勢検出の説明図である。
【0050】
ここで、Dの上位p%の値をqとし、重心点から最も離れた黒画素の点群を(xmk,ymk)(k=1,2,・・・,q)とすると、重心点から最も離れた各黒画素の点の角度θkは、
【数4】
で表される。
【0051】
よって、長手方向の角度θは、
【数5】
となる。この角度θ方向に伸ばした直線を掴むようにグリッパ3aの角度を調整することで対象物Mを掴むことができる。
【0052】
次に、上記構成の識別装置1による対象物Mの識別処理について、図8のフロー図に基づいて説明する。なお、図8のフロー図に従って対象物Mの識別処理を行う前に、予め識別対象物体である対象物Mについて等距離画素強度パラメータを導出したテンプレートデータをテンプレート記憶手段16へ記憶しておく。
【0053】
そして、最初に、テーブルT上に配置された対象物Mを画像入力手段10(カメラ装置2)により撮像し、撮像した画像データをコンピュータ4に入力する(ステップS101)。コンピュータ4は、可動軸判別手段11により入力画像から識別マーク20の有無により対象物Mが可動軸を有する可動器材であるか否かを判別する(ステップS102)。
【0054】
次に、コンピュータ4は、二値化処理手段12により入力画像を二値化する(ステップS103)。そして、コンピュータ4は、閉領域抽出手段15により二値化画像から閉領域を抽出し、閉領域が存在しない場合(閉領域の数N=0)、ステップS101に戻る。また、閉領域が複数存在する場合(N≧2)、閉領域をそれぞれ分割し、以下の処理をこの分割した閉領域のそれぞれについて行う(ステップS105)。
【0055】
そして、ステップS102において対象物Mが可動器材であると判別されている場合には(ステップS106)、特異点取得手段14は、対象物Mに付された識別マーク20によって特異点としての可動軸中心点を取得する(ステップS107)。一方、対象物Mが可動器材でないと判別されている場合には(ステップS106)、特異点取得手段14は、前述のように特異点として重心点を算出する(ステップS108)。
【0056】
次に、コンピュータ4は、パラメータ導出手段15により、前述のように、特異点からいくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出する(ステップS109)。
【0057】
その後、コンピュータ4は、識別手段17により、この導出された特異点周りの等距離画素強度パラメータを、予めテンプレート記憶手段16に記憶されたテンプレートデータと照合し、対象物Mを識別する(ステップS110)。
【0058】
そして、コンピュータ4は、姿勢検出手段18により対象物Mの角度θを検出し(ステップS111)、ピッキング手段19(ピッキング装置3)の位置および角度を調整し(ステップS112)、対象物Mをピッキングする(ステップS113)。この一連の処理により、本実施形態における識別装置1では、対象物Mの識別およびピッキングを実現する。
【0059】
以上のように、本実施形態における識別装置1では、入力画像から対象物Mの候補である閉領域を抽出し、対象物Mの特異点としての重心点または可動軸中心点を中心として、いくつかの等しい距離上に存在する閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することにより特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出し、この等距離画素強度パラメータを、テンプレート記憶手段に記憶されたテンプレートデータと照合する構成により、対象物Mを識別することができる。これにより、対象物Mの置かれる向きに関わらず、対象物Mの識別処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態における識別装置1では、対象物Mが可動器材でない場合には、対象物Mの幾何学的重心点を特異点とするため、容易に対象物Mを識別することが可能となっている。一方、対象物Mが可動器材の場合には、対象物Mの可動軸中心点を特異点とするため、動作角度によって対象物Mの形状が変化していても誤識別を防止することが可能となっている。
【0061】
また、本実施形態における識別装置1では、二値化された画像から閉領域を抽出するので、対象物Mと背景画像とを完全に分離して、明確な閉領域を抽出することが可能となっており、識別精度が向上している。また、特異点の抽出を、二値化された画像から取得するので、対象物Mと背景画像とを完全に分離して、より正確かつ高速な特異点を取得が可能となっている。
【0062】
また、本実施形態における識別装置1では、テンプレートデータとして、対象物Mを特異点周りにいくつかの角度に回転させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いているので、対象物Mの回転によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となっており、識別精度が向上している。
【0063】
また、本実施形態における識別装置1では、対象物Mが可動器材の場合には、テンプレートデータとして、対象物Mを、可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した等距離画素強度パラメータの平均値を用いているので、対象物Mの可動軸中心点を中心とする動作によって若干生じる入力画像の誤差に対応することが可能となっており、識別精度がさらに向上している。
【0064】
また、本実施形態における識別装置1では、入力された画像から対象物Mが可動器材であるか否かを自動判別し、対象物Mが可動器材である場合には可動軸中心点を特異点とし、可動器材でない場合には幾何学的重心点を特異点とするので、可動器材とそうでない器材とが混在している場合であっても、誤識別を防止して正確かつ高速に対象物Mを識別することが可能となっている。
【0065】
また、本実施形態における識別装置1では、対象物Mに付された識別マークを検出することにより対象物Mが可動器材であるか否かを判別するので、対象物Mが可動器材であるか否かを容易に判別して、より高速に対象物Mを識別することが可能となっている。また、この識別マークによって可動軸中心点を取得するので、特異点として可動器材の可動軸中心点を容易に取得することができ、さらに高速に対象物Mを識別することが可能である。
【0066】
なお、対象物Mが可動器材であるか否かの判別は、識別マークによらずに、ハフ(Hough)変換などの特徴抽出法を用いて入力画像から対象物Mの可動軸の円を自動的に抽出することにより行う構成とすることも可能である。以下、このハフ変換などの特徴抽出法を用いた対象物Mの可動軸の抽出について説明する。
【0067】
可動軸の抽出は、図9に示す直線検出手段50および可動軸取得手段51により行う。
直線検出手段50は、前述の二値化処理手段11により二値化された画像から複数の直線を検出するものである。本実施形態においては、この直線の検出にデジタル画像処理で用いられる特徴抽出法の1つであるハフ変換(Hough Transform)を利用する。図10は二値化された画像からエッジを抽出し、ハフ変換により直線抽出した例を示している。ハフ変換の基本原理は、いかなる点をとっても、その点を通る直線は無限個存在し、それぞれが様々な方向を向くというものである。このハフ変換の目的は、それらの直線の中で、画像の特徴点を最も多く通るものを決定することにある。すなわち、ハフ変換では、その画像に最もよくあった直線を近似的に検出する。
【0068】
ここで、ハフ変換について詳細に説明する。2つの点が様々な直線のうち、同一のものの上に乗っていることをはっきりさせるためには、直線と直線との比較ができるような方法で直線を表現する必要がある。標準的なハフ変換では、1つの直線を2つのパラメータで表す。例として、図11の点(x,y)を考える。
【0069】
パラメータは通常、rおよびθで表し、それぞれ原点から問題の直線に引いた法線の長さと角度とを表す。rとθを用いて、直線の式を表すと次式(1)のようになる。
r=xcosθ+ysinθ …(1)
そこで、画像上の全ての直線に、(r,θ)の組を対応させることができる。θ∈[0,π]かつr∈Rとするか、もしくはθ∈[0,π]かつr≧0とすると、ある直線に対する(r,θ)の組は一意に決定する。言い換えれば、θに対して直角で、原点からrの距離にあるものとして直線を表現することができる。この(r,θ)の組の集合がなす平面をハフ空間と呼ぶ。
【0070】
ハフ変換では、角度θを変化させながら式(1)よりrを求めることができる。rを求め、角度θと距離rごとに、その個数を加算していく。個数が最大になった角度θと距離rの組み合わせを元の直角座標に戻したものが、最も直線らしい点の集まりとなる。
【0071】
直線検出の精度にはθとrの2つのパラメータのうちθが大きな影響を及ぼす。理論から十分に予測されるが、直線検出の精度を上げるには膨大な計算が必要となるが、[0,2π]の値をとっているθの等分割する数を調節したり、三角関数のテーブルを予め用意したりすることにより、計算量を減らして高速化を図ることができる。
【0072】
2本の直線を検出するときは、式(1)より次式(2),(3)で表すことができる。
r0=xcosθ0+ysinθ0 …(2)
r1=xcosθ1+ysinθ1 …(3)
なお、2本目の直線検出のとき、1本目の直線が検出されないように1本目の直線を削除する処理を行っている。
【0073】
可動軸取得手段51は、この直線検出手段13により検出された複数の直線の交点を求めて可動軸中心点を取得するものである。直線の交点(x,y)は、式(2),(3)から式(4),(5)で求めることができる。
【数6】
【数7】
ここで、1本目の直線のr,θは添え字0で、2本目の直線のr,θは添え字1とする。実際に交点を算出した例を図12に示す。図の白点が交点である。
【0074】
なお、ハフ変換の直線検出は基準がはっきりしないため、対象物Mの形状によっては取得した可動軸中心点が真の可動軸中心点からずれることがある。そこで、本実施形態においては、直線検出手段50により3以上の直線を検出し、可動軸取得手段51により複数の交点を求め、算出した交点の平均を可動軸中心点とする。これにより、ハフ変換の直線検出の基準が曖昧な部分を補い、複数の交点の中から可動軸中心点を選別する。
【0075】
複数の交点は、次式(6),(7)で求めることができる。このときのnは、直線の本数をNとしたときの(N−1)の総和である。複数点の算出をした画像を図13に示す。
【数8】
【数9】
【0076】
なお、ハフ変換を行い、交点を求めることで、真の可動軸中心点あたりに交点は集中して現れるが、図13に示すように離れている交点もいくつか見られる。そのため、次のような点の選別を行うことが望ましい。選別は、まず対象物Mの閉領域外の点を考慮しないようにする。これにより、その後の処理の高速化を図ることができる。次に、閉領域内の点同士の距離を計算する。そして、計算した結果から離れている点を除き、その他の点で平均値を取得し、その点を可動軸中心点にする。
【実施例】
【0077】
本実施形態における識別装置1を用いて医療器材の識別実験を行った。行った実験は、対象物の姿勢の変化に対する識別精度の確認と、対象物の長手方向の認識精度の2種類である。識別に使用した対象物は、図14に示すものである。
【0078】
識別実験は、図14に示したそれぞれの対象物の入力画像について等距離画素強度パラメータを導出し、テンプレートデータとの比較を行った。データ比較のパラメータとして、2つのデータ間の相関係数を利用した。2つのデータをXi,Yiで表すと、相関係数Rは以下の式で表される。
【数10】
【0079】
ここで、Nは2つのデータのデータ数を表す。このデータ数は実験では200とした。これは前述の最大距離からの分割数nと同じとなる。テンプレートデータと対象物の入力画像の相関係数を上式によって導出し、そのうち一番高い相関を示したものが目的対象物として識別される。
【0080】
以上のように条件を設定して実験を行った。また、回転不変であることを確かめるために1つの対象物につき約72°ずつ回転させていき、計5回の姿勢変化を行い、相関を取った。表1は対象物の入力画像と各テンプレートデータとの相関係数を示している。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から、すべての対象物において、それぞれの対象物のテンプレートデータとの相関が一番高くなっていることが確認できた。この結果は、本識別装置1で任意の回転姿勢の器材を正確に識別できていることを示している。
【0083】
また、対象物の長手方向の認識精度の確認実験では、上位5%の黒画素領域を取得し、長手方向の認識を行った。図15は各対象物の長手方向を検出した際の結果のキャプチャ画像である。図15における黒塗り部分は上位5%の黒画素領域を示している。なお、図15において直線の角度は12時の方向を基準として右側を正、左側を負として導出している。図15の結果から、すべての対象物ではきちんと長手方向の認識ができたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の識別装置および識別方法は、医療器材、医療機器構成部品や工具などの識別対象物体を非接触で識別するための装置および方法として有用である。
【符号の説明】
【0085】
M 医療器材
1 識別装置
2 カメラ装置
3 ピッキング装置
4 コンピュータ
5 ディスプレイ
10 画像入力手段
11 可動軸判別手段
12 二値化処理手段
13 閉領域抽出手段
14 特異点取得手段
15 パラメータ導出手段
16 テンプレート記憶手段
17 識別手段
18 姿勢検出手段
19 ピッキング手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象物体の画像を入力する画像入力手段と、
前記画像入力手段により入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
前記閉領域の特異点を取得する特異点取得手段と、
前記特異点からいくつかの等しい距離上に存在する前記閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、前記特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段と、
前記識別対象物体について前記等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段と、
前記パラメータ導出手段により導出された前記等距離画素強度パラメータを前記テンプレート記憶手段に記憶された前記テンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別手段と
を含む識別装置。
【請求項2】
前記画像入力手段により入力された画像を二値化する二値化処理手段をさらに含み、
前記閉領域抽出手段および前記特異点取得手段のいずれか一方または両方は、前記二値化処理手段による二値化後の画像から処理を行うものである
請求項1記載の識別装置。
【請求項3】
前記特異点は、前記識別対象物体の全体または特徴のある部分の幾何学的重心点または可動軸中心点である請求項1または2に記載の識別装置。
【請求項4】
可動軸を有する前記識別対象物体の前記テンプレートデータは、前記可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した前記等距離画素強度パラメータの平均値である請求項3記載の識別装置。
【請求項5】
前記特異点からの距離が最も遠い前記閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の前記特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出する姿勢検出手段をさらに含む請求項1から4のいずれかに記載の識別装置。
【請求項6】
前記姿勢検出手段は、前記特異点からの距離の最大値からp(<100)%の距離までの間に存在する前記閉領域内の画素について前記特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出するものである請求項5記載の識別装置。
【請求項7】
前記識別対象物体が、医療器材または医療機器構成部品である請求項1から6のいずれかに記載の識別装置。
【請求項8】
識別対象物体の画像を入力する画像入力ステップと、
前記画像入力ステップにより入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、
前記閉領域の特異点を取得する特異点取得ステップと、
前記特異点からいくつかの等しい距離上に存在する前記閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、前記特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出ステップと、
前記識別対象物体について前記等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータをテンプレート記憶手段に記憶するステップと、
前記パラメータ導出ステップにより導出された前記等距離画素強度パラメータを前記テンプレート記憶手段に記憶された前記テンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別ステップと
を含む識別方法。
【請求項9】
前記画像入力ステップにより入力された画像を二値化する二値化処理ステップをさらに含み、
前記閉領域抽出ステップおよび前記特異点取得ステップのいずれか一方または両方は、前記二値化処理ステップによる二値化後の画像から処理を行うものである
請求項8記載の識別方法。
【請求項10】
前記特異点は、前記識別対象物体の全体または特徴のある部分の幾何学的重心点または可動軸中心点である請求項8または9に記載の識別方法。
【請求項11】
前記特異点からの距離が最も遠い前記閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の前記特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出する姿勢認識ステップをさらに含む請求項8から10のいずれかに記載の識別方法。
【請求項12】
前記識別対象物体が、医療器材または医療機器構成部品である請求項8から11のいずれかに記載の識別方法。
【請求項1】
識別対象物体の画像を入力する画像入力手段と、
前記画像入力手段により入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
前記閉領域の特異点を取得する特異点取得手段と、
前記特異点からいくつかの等しい距離上に存在する前記閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、前記特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出手段と、
前記識別対象物体について前記等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータを記憶するテンプレート記憶手段と、
前記パラメータ導出手段により導出された前記等距離画素強度パラメータを前記テンプレート記憶手段に記憶された前記テンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別手段と
を含む識別装置。
【請求項2】
前記画像入力手段により入力された画像を二値化する二値化処理手段をさらに含み、
前記閉領域抽出手段および前記特異点取得手段のいずれか一方または両方は、前記二値化処理手段による二値化後の画像から処理を行うものである
請求項1記載の識別装置。
【請求項3】
前記特異点は、前記識別対象物体の全体または特徴のある部分の幾何学的重心点または可動軸中心点である請求項1または2に記載の識別装置。
【請求項4】
可動軸を有する前記識別対象物体の前記テンプレートデータは、前記可動軸中心点を中心としていくつかの角度に動作させた状態でそれぞれ取得した前記等距離画素強度パラメータの平均値である請求項3記載の識別装置。
【請求項5】
前記特異点からの距離が最も遠い前記閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の前記特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出する姿勢検出手段をさらに含む請求項1から4のいずれかに記載の識別装置。
【請求項6】
前記姿勢検出手段は、前記特異点からの距離の最大値からp(<100)%の距離までの間に存在する前記閉領域内の画素について前記特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出するものである請求項5記載の識別装置。
【請求項7】
前記識別対象物体が、医療器材または医療機器構成部品である請求項1から6のいずれかに記載の識別装置。
【請求項8】
識別対象物体の画像を入力する画像入力ステップと、
前記画像入力ステップにより入力された画像から閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、
前記閉領域の特異点を取得する特異点取得ステップと、
前記特異点からいくつかの等しい距離上に存在する前記閉領域内の画素の含有度をそれぞれ算出することで、前記特異点周りの等距離画素強度パラメータを導出するパラメータ導出ステップと、
前記識別対象物体について前記等距離画素強度パラメータを予め導出したテンプレートデータをテンプレート記憶手段に記憶するステップと、
前記パラメータ導出ステップにより導出された前記等距離画素強度パラメータを前記テンプレート記憶手段に記憶された前記テンプレートデータと照合し、識別対象物体を識別する識別ステップと
を含む識別方法。
【請求項9】
前記画像入力ステップにより入力された画像を二値化する二値化処理ステップをさらに含み、
前記閉領域抽出ステップおよび前記特異点取得ステップのいずれか一方または両方は、前記二値化処理ステップによる二値化後の画像から処理を行うものである
請求項8記載の識別方法。
【請求項10】
前記特異点は、前記識別対象物体の全体または特徴のある部分の幾何学的重心点または可動軸中心点である請求項8または9に記載の識別方法。
【請求項11】
前記特異点からの距離が最も遠い前記閉領域内の画素から順に抽出した複数の画素の前記特異点に対するそれぞれの角度の平均値を算出する姿勢認識ステップをさらに含む請求項8から10のいずれかに記載の識別方法。
【請求項12】
前記識別対象物体が、医療器材または医療機器構成部品である請求項8から11のいずれかに記載の識別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−248756(P2011−248756A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123241(P2010−123241)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業「知的クラスター創成事業(第II期)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【出願人】(000132666)株式会社セントラルユニ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業「知的クラスター創成事業(第II期)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【出願人】(000132666)株式会社セントラルユニ (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]