説明

警報用スピーカ

【課題】高温環境でも弾性率などの物性の変化が少なく、また、長期間使用しても特性の劣化が少なく音圧を維持できる警報用スピーカを提供する。
【解決手段】警報用スピーカ1は、ハウジング2に収納され所定周波数帯域の警報音を出力するスピーカユニット3を備える。スピーカユニット3は、駆動振動に応じて圧電効果により振動する圧電板31と、圧電板31に駆動される振動板32とを備える。振動板32はアルミニウムにより形成される。ハウジング2は、スピーカユニット3から出力された音波を外部空間に出力する音孔231と、振動板32と音孔231との間の空間であるキャビティ211とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報音を出力する警報用スピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビジョン受像機やパーソナルコンピュータ等に用いるスピーカ装置は、音圧周波数特性のピークやディップを抑制するために様々な技術が採用されている。たとえば、特許文献1には、音響管の側壁に音波を抑制する制動機構を設けることにより、周波数特性の平坦化を行う技術が開示されている。特許文献1に記載されたスピーカ装置は、図によれば、コーン型の振動板を備えたスピーカユニットが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−307985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカユニットの振動板には、樹脂フィルムを用いたものがある。樹脂フィルムの振動板は、内部損失が比較的大きく、共振の尖鋭度が抑制されるから、周波数特性の平坦化に寄与する効果がある。
【0005】
一方、上述のような周波数特性の平坦化が要求されるスピーカ装置ではなく、警報音の出力に特化された警報用スピーカも提供されている。警報用スピーカは、車両に搭載される場合のように、過酷な温度環境にさらされる場合がある。たとえば、車両に搭載されたスピーカ装置の環境は、夏場には非常に高温になることがあり、樹脂フィルムの軟化により振動板の弾性率が変化し、結果的に音圧が変化することがある。また、過酷な温度環境で使用されると樹脂フィルムが経年的に劣化し、振動板の弾性率が変化することにより、長期間の使用では音圧が低下するという問題も生じる。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、長期間使用しても音圧を維持できる警報用スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る警報用スピーカは、圧電効果により駆動される振動板を備え所定周波数帯域の警報音を出力するスピーカユニットと、スピーカユニットを収納するハウジングとを備え、ハウジングは、スピーカユニットから出力された音波を外部空間に出力する音孔と、振動板と音孔との間の空間であるキャビティとを備え、振動板は金属により形成されていることを特徴とする。
【0008】
この警報用スピーカにおいて、振動板は、音波を出力する向きに向かって径を大きくするコーン型であって、振動板の外側に曲率中心を有する曲面を形成することが好ましい。
【0009】
この警報用スピーカにおいて、振動板は、アルミニウムにより形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、振動板が金属により形成されているから、高温環境でも弾性率などの物性の変化が少なく、また、長期間使用しても特性の劣化が少なく音圧を維持できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は実施形態を示す正面図、(b)は同図(a)におけるA−A線断面図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】図1(a)におけるB−B線断面図である。
【図5】同上の外観を示す斜視図である。
【図6】同上の要部を拡大した断面図である。
【図7】同上の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する警報用スピーカは、外部からオンを指示する報知信号が入力されると、警報音として用いられる周波数帯域の音を出力するように構成されている。この警報用スピーカは、たとえば、車両に搭載され、車両の異常を示す報知信号が入力されたときに警報音を出力する装置に用いられる。
【0013】
図1ないし図5に示すように、警報用スピーカ1は、警報音を出力する方向の寸法が他方向の寸法よりも小さく形成されたハウジング2を備える。以下、ハウジング2から警報音を出力する方向をハウジング2の厚み方向とする。すなわち、図1(b)における左右方向がハウジング2の厚み方向になる。
【0014】
ハウジング2は、警報音を出力するスピーカユニット3と、スピーカユニット3を鳴動させるための駆動信号を生成する回路部4と、電源としての電池5とを収納する。ハウジング2の内部空間には、スピーカユニット3が配置されるスピーカ収納部21と、回路部4および電池5が配置される回路収納部22とが設けられる。
【0015】
ハウジング2における厚み方向の一側である前壁23には、警報音を外部に出力する音孔231が開口する。スピーカ収納部21において、スピーカユニット3と前壁23とに囲まれる部位には、キャビティ211が形成される。さらに、ハウジング2において、回路収納部22を設けた部位の側壁には、外部から報知信号が入力されるコネクタ6が設けられる。
【0016】
報知信号がコネクタ6を介して回路部4に入力されると、回路部4はスピーカユニット3に駆動信号を出力し、スピーカユニット3を駆動して警報音を発生させる。スピーカユニット3から出力された警報音は、キャビティ211を通り音孔231からハウジング2の外部に出力される。キャビティ211は、共鳴を利用して警報音として用いられる周波数帯域の音圧を高めるために設けられている。
【0017】
以下では、図1(a)に従って上下方向を規定する。ハウジング2は、後面が開口したケース本体25と、ケース本体25の後面を塞ぐカバー27とにより外郭が形成される。ハウジング2を正面から投影した外周形状は、下部が上に開いたコ字状であり、上部において下に開いた半円状になっている。すなわち、ハウジング2は、正面視における外周形状が全体として、逆U字状かつU字の開端間を直線で閉じた形状を有している。
【0018】
ケース本体25は、ハウジング2における前壁23の周縁から全周に亘って周壁が後方に突設され、さらに、前壁23の後面からハウジング2の内部空間を上下に2分割する仕切壁24が突設される。仕切壁24はケース本体25の上部の周壁(以下、「上周壁」という)と連続し、ケース本体25の上周壁と仕切壁24とにより上述したキャビティ211を円形に囲む壁が形成される。
【0019】
前壁23からの仕切壁24の突出寸法は、前壁23からの周壁の突出寸法よりも小さく、ケース本体25の上周壁には、仕切壁24の後端に連続した肩部(符号なし)が形成される。ケース本体25の上周壁には肩部よりも前方に段差部251が形成され、仕切壁24には段差部251に連続する段差部241が形成される。段差部241,251は、ケース本体25の上周壁と仕切壁24とに囲まれる部位の内寸が、段差部241,251の前側で後側よりも狭くなるように形成される。
【0020】
ところで、ケース本体25の内部には、ケース本体25の上周壁に形成された肩部および仕切壁24の後端縁により支持される中枠26が配置される。中枠26は、ケース本体25の上周壁と仕切壁24とにより支持される支持板260と、支持板260の中央部に形成された開口の周縁から後方に突設された分離壁262とを連続一体に備える。支持板260の外周部の前面には、中枠26をケース本体25に取り付けた状態において、段差部241,251に対向する保持凸部261が支持板260の全周に亘って突設される。
【0021】
一方、カバー27は、板状に形成され、ケース本体25に設けた周壁の後端縁に周部が支持される。カバー27の前面には中枠26の分離壁262の後端部を囲むように支持リブ271が突設される。なお、分離壁262の一部には支持リブ271との間に隙間が形成され、この隙間を通してスピーカユニット3と回路部4とが電気的に接続される(図4参照)。
【0022】
上述した構成により、ケース本体25とカバー27とに囲まれるハウジング2の内部空間は、仕切壁24と中枠26とにより仕切られる。ケース本体25の上周壁と仕切壁24と中枠26とカバー27とに囲まれた空間は、上述したスピーカ収納部21としてスピーカユニット3を収納するとともにキャビティ211を形成する。また、ケース本体25の残りの周壁と仕切壁24と中枠26とカバー27とに囲まれた空間は、上述した回路収納部22として回路部4および電池5を収納する。
【0023】
ケース本体25の前壁23において、上周壁と仕切壁24とに囲まれたキャビティ211に対応する領域の外周部には、複数個(図示例は4個)の音孔231が形成される。上述したように、ケース本体25の上周壁と仕切壁24とは、キャビティ211を円形に囲む壁を形成している。音孔231は、この壁に沿った円周上に等間隔に配列される。本実施形態では、ハウジング2の正面視において、4個の音孔231が上下と左右とに形成される。また、前壁23の後面には、音孔231の内周縁に沿って後方に向かって円環状の制御リブ232が突設されている。
【0024】
ところで、スピーカユニット3は、駆動信号を受けて振動を発生させる駆動部として圧電バイモルフを用いた圧電板31を備え、圧電板31とともに振動して警報音を発生させる振動板32を備える。すなわち、振動板32は圧電板31の厚み方向の一面に結合されており、圧電板31は圧電効果により振動板32を駆動する。圧電バイモルフを形成する圧電材料には、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられる。
【0025】
振動板32は、薄厚の金属材料により形成され、圧電板31の厚み方向において圧電板31から離れるに従って径を広げるコーン型に形成されている。すなわち、振動板32は圧電板31の厚み方向に沿った中心線を有する回転体であって、中心線に沿う方向において圧電板31からの距離が、指数関数状ないし楕円曲線状に変化する形状に形成されている。言い換えると、振動板32は、前記中心線とは反対側(振動板32の外側)に曲率中心を有する曲面をなしたカーブドコーンを形成している。
【0026】
コーン型の振動板32は、共振の尖鋭度が比較的小さく、振動板32の共振周波数が圧電板31の共振周波数と一致していない場合でも音圧の低下が生じにくいという長所を有している。そのため、スピーカユニット3は、製品ごとの音圧のばらつきが少なくなり、歩留まりよく所要の音圧を確保することができる。また、後述するようにコーン型の振動板32は、外周部が撓むように保持されるから、振動板32での集中が生じにくいという特徴を有している。すなわち、車両に搭載する場合のように外部からの飛散物が衝突しやすい環境では、ドーム型の振動板を用いると振動板が飛散物により凹んで音圧に影響することがあるが、コーン型の振動板32では飛散物による変形が生じにくいから音圧への影響が少ない。
【0027】
さらに、振動板32は金属材料により形成されているから、車両に搭載する場合のような高温環境で使用する場合でも弾性率などの物性の変化がほとんどなく、さらには、高温と低温とを繰り返すことによる劣化も生じにくい。すなわち、温度環境や経年変化による音圧の変化が少なく、長期間に亘って使用することができる。振動板32を形成する金属材料は、剛性が高く、かつ音速の大きい材料が適している。このような特性を備えた振動板32を用いることにより、音エネルギーの損失が少なく共振周波数において高い音圧が得られる。この種の金属材料として、本実施形態は、アルミニウムを選択しているが、チタン、マグネシウム合金などの他の金属を用いることも可能である。
【0028】
スピーカユニット3は、ケース本体25に設けた段差部241,251と中枠26の支持板260との間に、振動板32の外周部が挟持されることにより、ハウジング2に取り付けられる。段差部241,251には、図6に示すように、凹溝253が形成され(図示例は、段差部251を示している)、凹溝253には環状に形成された弾性部材252が嵌め込まれる。弾性部材252の一部は凹溝253から露出する。振動板32の外周部は、支持板260の保持凸部261と段差部241,251との間に挟まれ、この状態において弾性部材252が振動板32の外周部に弾接し、振動板32からケース本体25への振動の伝達が抑制される。
【0029】
さらに、振動板32の外周部であって保持凸部261に当接しない部位には、前方に凸となるように湾曲した撓み部322が形成される。撓み部322は、振動板32からケース本体25や中枠26への振動の伝達を抑制する機能を有する。したがって、撓み部322および弾性部材252により、振動板32からハウジング2に振動エネルギーが伝達されることによる損失を抑制することになり、振動板32の振動エネルギーが効率よく音波に変換されることになる。
【0030】
上述したように、ケース本体25においてスピーカユニット3の前方にはキャビティ211が形成され、キャビティ211は、制御リブ232により中央部空間と外周部空間とに仕切られている。また、制御リブ232は振動板32との間に隙間を有し、この隙間を介してキャビティ211の中央部空間と外周部空間とが連通している。外周部空間は音孔231を通してハウジング2の外部空間と連通する。したがって、スピーカユニッ3から出力された音波は、キャビティ211の中央部空間から前記隙間を通り、さらに、キャビティ211の外周部空間を通して音孔231からハウジング2の外部空間に出力される。
【0031】
前記構造のキャビティ211がハウジング2に設けられていることにより、スピーカユニット3から出力された警報音の音圧がヘルムホルツ共鳴の原理による共鳴を利用して高められることになる。すなわち、図7に示すように、圧電板31のみの周波数特性(特性A0)は尖鋭度が大きく音圧が小さいが、圧電板31と振動板32とを組み合わせた周波数特性(特性A1)は尖鋭度が小さく警報音に対する音圧が高くなる。さらに、圧電板31と振動板32とキャビティ211とを組み合わせることにより、図7に周波数特性(特性A2)で示すように、警報音に対してさらに高い音圧が得られる。
【0032】
上述したように、ハウジング2の下部には、ケース本体2の下部の周壁と仕切壁24と中枠26とカバー27とに囲まれた回路収納部22が形成されている。回路収納部22のうちケース本体2の下部の周壁と仕切壁24とに囲まれる空間には電池5が収納され、残りの空間には回路基板に実装された回路部4が収納される。電池5は容量の大きい1次電池であるリチウム電池が用いられる。さらに、回路基板には複数本の端子ピン61が接続される。端子ピン61の一部は、図2のように、ハウジング2の側壁に連続一体に設けた筒部62の内側に配置され、筒部62と端子ピン61とによりコネクタ6が形成される。
【0033】
ハウジング2の後面には、取付ねじ8を用いて他部材にハウジング2を取り付けるための取付台7が形成されている。取付台7は、上向きおよび後向きに開いた取付溝71を備え、取付溝71は、下部において、前部の左右幅が後部の左右幅よりも広い蟻溝状に形成されている。つまり、取付溝71の下部には、前部に広幅部711が形成され、後部に狭幅部712が形成されている。狭幅部712の左右幅は取付ねじ8の脚部の直径程度に形成され、広幅部711の左右幅は取付ねじ8の頭部の幅程度に形成される。また、広幅部711の前後幅は、取付ねじ8の頭部の厚み寸法程度に形成される。したがって、取付けねじ8の頭部を広幅部711に挿入することによって、ハウジング2に取付けねじ8が結合される。なお、取付ねじ8には、四角頭のねじが用いられる。
【符号の説明】
【0034】
2 ハウジング
3 スピーカユニット
32 振動板
211 キャビティ
231 音孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電効果により駆動される振動板を備え所定周波数帯域の警報音を出力するスピーカユニットと、前記スピーカユニットを収納するハウジングとを備え、前記ハウジングは、前記スピーカユニットから出力された音波を外部空間に出力する音孔と、前記振動板と音孔との間の空間であるキャビティとを備え、前記振動板は金属により形成されていることを特徴とする警報用スピーカ。
【請求項2】
前記振動板は、音波を出力する向きに向かって径を大きくするコーン型であって、前記振動板の外側に曲率中心を有する曲面を形成することを特徴とする請求項1記載の警報用スピーカ。
【請求項3】
前記振動板は、アルミニウムにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の警報用スピーカ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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