説明

警報装置

【課題】 初期火災状態と本格火災状態とを区別して判定しながら、初期火災状態を的確に判定することができる警報装置の提供。
【解決手段】 判定手段が、火災検出手段の出力に関する出力関連値aが本格火災設定値A4以上となると、本格火災状態Zであると判定し、火災検出手段の出力関連値aが本格火災設定値A4よりも小さい初期火災設定値A1,A2,A3以上でかつ環境状態検出手段の出力に関する出力関連値bが環境用初期火災設定値B1以上となると、初期火災状態Yであると判定するように構成され、初期火災設定値A1,A2,A3が、環境状態検出手段の出力関連値bの大小に応じて異なる値となるように設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を検出する火災検出手段と、その火災検出手段の周囲における環境状態を検出する環境状態検出手段と、前記火災検出手段の出力情報及び前記環境状態検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と、その本格火災状態に至る以前の初期火災状態とを判定する判定手段とが設けられている警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような警報装置は、火災警報装置として用いられ、火災検出手段と環境状態検出手段との二つの検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と初期火災状態とを判定するものである。
そして、単に、火災状態であることを判定するだけではなく、その火災状態が、本格火災状態であるか、あるいは、初期火災状態であるかを区別して判定することにより、消火処置等、火災状態に対する対処を火災状態に応じて的確に行えるようにしている。
【0003】
このような警報装置において、従来では、火災検出手段が、雰囲気温度等を検出する温度検出手段であり、環境状態検出手段が、一酸化炭素等検出対象ガスの濃度を検出するガスセンサであり、判定手段が、温度検出手段の出力情報及びガスセンサの出力情報に基づいて、本格火災状態と初期火災状態とを判定している(例えば、特許文献1参照。)。
そして、この特許文献1では、火炎検出手段の出力関連値として、温度検出手段の出力値やその出力値の単位時間当りの増加量を用い、環境状態検出手段の出力関連値として、ガスセンサの出力値を用い、判定手段が、火炎検出手段の出力関連値が一定の本格火災設定値以上となると、本格火災状態と判定し、火炎検出手段の出力関連値が連続的に増加している状態でかつ環境状態検出手段の出力関連値が一定の環境用初期火災設定値以上となると、初期火災状態と判定している。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−117442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の警報装置において、初期火災状態と判定するための条件は、温度検出手段の出力関連値が連続的に増加している状態であるという第一の条件と、ガスセンサの出力関連値が一定の環境用初期火災設定値以上であるという第二の条件とからなる。
そして、第一の条件は、環境状態検出手段の出力関連値の大小にかかわらず、その判定の基準値が一定値となる条件であり、第二の条件も、火災検出手段の出力関連値の大小にかかわらず、その判定の基準値が一定値となる条件である。
【0006】
一方、初期火災状態となる可能性は、環境状態検出手段の出力関連値の大小や火災検出手段の出力関連値の大小によって変化するものである。
即ち、初期火災状態となる可能性は、環境状態検出手段の出力関連値が大きいほど高くなり、また、火災検出手段の出力関連値が大きいほど高くなる。
【0007】
したがって、上記第一の条件における判定の基準値を小さな一定値に設定すると、初期火災状態となっていないときにも、初期火災状態と判定する虞がある。逆に、上記第一の条件における判定の基準値を大きな一定値に設定すると、初期火災状態となっているときに、初期火災状態と判定できない虞がある。
また、上記第二の条件によっても、上記第一の条件と同様に、初期火災状態を誤判定する虞があるので、従来の警報装置では、初期火災状態を的確に判定できない虞がある。
【0008】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、初期火災状態と本格火災状態とを区別して判定しながら、初期火災状態を的確に判定することができる警報装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明にかかる警報装置の第1特徴構成は、火災を検出する火災検出手段と、その火災検出手段の周囲における環境状態を検出する環境状態検出手段と、前記火災検出手段の出力情報及び前記環境状態検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と、その本格火災状態に至る以前の初期火災状態とを判定する判定手段とが設けられている警報装置において、
前記判定手段が、前記火災検出手段の出力に関する出力関連値が本格火災設定値以上となると、前記本格火災状態であると判定し、前記火災検出手段の出力関連値が前記本格火災設定値よりも小さい初期火災設定値以上でかつ前記環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が環境用初期火災設定値以上となると、前記初期火災状態であると判定するように構成され、
前記初期火災設定値が、前記環境状態検出手段の出力関連値の大小に応じて異なる値となるように設定してある点にある。
尚、上記火災検出手段や環境状態検出手段の出力関連値は、上記火災検出手段や環境状態検出手段の出力、その出力の増加率、又は、その出力が継続して設定出力以上となる継続時間等のように、火災検出手段や環境状態検出手段の出力の状態に伴って増減する値として求めることができる。
【0010】
即ち、本格火災状態となると、初期火災状態となったときに比べて、火災検出手段の出力関連値が大きくなることを利用して、判定手段が、火災検出手段の出力関連値が本格火災設定値以上となることにより、本格火災状態であると判定できる。
前記初期火災状態となると、初期火災状態となっていないときに比べて、火災検出手段の出力関連値が大きくなり、かつ、環境状態検出手段の出力関連値も大きくなることを利用して、判定手段が、火災検出手段の出力関連値が初期火災設定値以上でかつ環境状態検出手段の出力関連値が環境用初期火災設定値以上となることにより、初期火災状態であると判定できる。
【0011】
そして、初期火災設定値を、環境状態検出手段の出力関連値の大小に応じて異なる値となるように設定する。この場合、例えば、初期火災設定値を、環境状態検出手段の出力関連値が小さい側よりも大きい側の方が小さくなるように設定することができる。
このようにすると、初期火災状態となる可能性の高い環境状態検出手段の出力関連値の大きいときには、初期火災設定値を小さい値に設定でき、初期火災状態となる可能性の低い環境状態検出手段の出力関連値の小さいときには、初期火災設定値を大きい値に設定することができる。
したがって、火災検出手段の出力関連値が初期火災設定値以上であるという、初期火災状態と判定するための条件を、初期火災状態となる可能性の高低に対応する状態で設定することができる。
【0012】
また、本格火災状態を判定するための本格火災設定値については、環境状態検出手段の出力関連値の大小にかかわらず、一定値としている。そして、本格火災状態では、その対処として即座に消火を行う必要がある等の理由から、本格火災状態となっているときには、安定してその本格火災状態を判定することが求められる。
そこで、本格火災設定値を、環境状態検出手段の出力関連値にかかわらず一定値とし、その値を極力小さく設定することにより、環境状態検出手段の出力関連値が大きいとき等、本格火災状態となる可能性が高いときは、勿論、環境状態検出手段の出力関連値が小さいとき等、本格火災状態となる可能性が低いときでも、安定して本格火災状態を判定できることになる。
【0013】
以上のことから、初期火災状態と本格火災状態とを区別して判定しながら、初期火災状態を的確に判定することができ、しかも、本格火災状態となっているときには、安定して本格火災状態を判定できる警報装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明にかかる警報装置の第2特徴構成は、火災を検出する火災検出手段と、その火災検出手段の周囲における環境状態を検出する環境状態検出手段と、前記火災検出手段の出力情報及び前記環境状態検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と、その本格火災状態に至る以前の初期火災状態とを判定する判定手段とが設けられている警報装置において、
前記判定手段が、前記火災検出手段の出力に関する出力関連値が本格火災設定値以上となると、前記本格火災状態であると判定し、前記火災検出手段の出力関連値が前記本格火災設定値よりも小さい初期火災設定値以上でかつ前記環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が環境用初期火災設定値以上となると、前記初期火災状態であると判定するように構成され、
前記環境用初期火災設定値が、前記火災検出手段の出力関連値の大小に応じて異なる値となるように設定してある点にある。
【0015】
即ち、上記第1特徴構成で述べた如く、本格火災状態と初期火災状態とにおける火災検出手段の出力関連値の大小や、初期火災状態と初期火災状態となっていないときとにおける火災検出手段の出力関連値の大小及び環境状態検出手段の出力関連値の大小を利用することにより、判定手段が、本格火災状態と初期火災状態とを区別して判定することができる。
【0016】
そして、環境用初期火災設定値を、火災検出手段の出力関連値の大小に応じて異なる値となるように設定する。この場合、例えば、環境用初期火災設定値を、火災検出手段の出力関連値が小さい側よりも大きい側の方が小さくなるように設定することができる。
このようにすると、初期火災状態となる可能性の高い火災検出手段の出力関連値の大きいときには、環境用初期火災設定値を小さい値に設定でき、初期火災状態となる可能性の低い火災検出手段の出力関連値の小さいときには、環境用初期火災を大きい値に設定することができる。
したがって、環境状態検出手段の出力関連値が環境用初期火災設定値以上であるという、初期火災状態と判定するための条件を、初期火災状態となる可能性の高低に対応する状態で設定することができる。
【0017】
しかも、上記第1特徴構成で述べた如く、本格火災設定値を、環境状態検出手段の出力関連値にかかわらず一定値とし、その値を極力小さく設定することにより、本格火災状態となっているときには、安定して本格火災状態を判定できることになる。
【0018】
以上のことから、初期火災状態と本格火災状態とを区別して判定しながら、初期火災状態を的確に判定することができ、しかも、本格火災状態となっているときには、安定して本格火災状態を判定できる警報装置を提供できるに至った。
【0019】
本発明にかかる第3特徴構成は、前記火災検出手段が、煙、熱又は炎を検出する火災センサであり、前記環境状態検出手段が、火災により生成される火災生成ガスの濃度を検出するガスセンサである点にある。
【0020】
即ち、判定手段は、火炎センサの出力値やその出力値の単位時間当りの増加量、又は、その出力値が継続して設定出力以上となる継続時間等のように、火災センサの出力の状態に伴って増減する値を、火炎センサの出力関連値として用いて、火災状態を直接的に判定することができる。しかも、判定手段は、ガスセンサにて検出する火災生成ガスの濃度やその濃度の単位時間当りの増加量、又は、その火災生成ガスの濃度が継続して設定出力以上となる継続時間等のように、ガスセンサの出力の状態に伴って増減する値を、ガスセンサの出力関連値として用いて、火災状態を間接的に判定することができる。
従って、判定手段は、二つの検出手段の出力関連値に基づいて、本格火災状態と初期火災状態とを的確に判定し易いものとなる。
【0021】
本発明にかかる第4特徴構成は、前記判定手段が、前記初期火災状態及び前記本格火災状態を判定していない場合に、前記環境状態検出手段の出力関連値が環境用異常設定値以上となると、環境異常状態であると判定するように構成されている点にある。
【0022】
即ち、判定手段が、初期火災状態及び本格火災状態を判定していない場合においても、環境状態検出手段の出力関連値が環境用異常設定値以上となると、例えば、火災生成ガスの濃度が高い状態である等、環境異常状態であるとして判定できる。
そして、環境異常状態であるときには、その後、初期火災状態に移行する可能性があるので、初期火災状態と環境異常状態とを区別して判定することにより、初期火災状態となる以前の状態をも判定することができ、初期火災状態を的確に判定し易いものとなる。
【0023】
本発明にかかる第5特徴構成は、上記第4特徴構成において、前記判定手段が前記本格火災状態であると判定すると、本格火災用の警報を行い、前記判定手段が前記初期火災状態であると判定すると、初期火災用の警報を行い、前記判定手段が前記環境異常状態であると判定すると、環境異常用の警報を行う警報手段が設けられている点にある。
【0024】
即ち、警報手段が、判定手段による判定結果に基づいて、本格火災用の警報、初期火災用の警報、環境異常用の警報のいずれかを行うことができるので、判定手段による判定結果に対応した処置を行い易いものとなる。
従って、本格火災状態や初期火災状態となったときだけでなく、環境異常状態となったときにも、その後の処置を的確に行うことができ、警報装置として有用なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明にかかる警報装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
この警報装置10は、図1及び図2に示すように、火災を検出する火災検出手段11、その火災検出手段11の周囲における環境状態を検出する環境状態検出手段12、火災検出手段11の出力情報及び環境状態検出手段12の出力情報に基づいて、本格火災状態と、その本格火災状態に至る以前の初期火災状態とを判定する判定手段13、警報を行う警報手段14等を設けて構成されている。
そして、本実施形態では、例えば、警報装置10を家庭内のキッチンの側壁4に設置し、コンロ2上の調理物による火災Fの発生を判定して、火災警報等を行うように構成されている。
【0026】
前記火災検出手段11は、煙、熱又は炎を検出する火災センサ11aであり、環境状態検出手段12は、火災Fにより生成される火災生成ガスの濃度を検出するガスセンサ12aである。
【0027】
前記火災センサ11aは、火災Fによる煙を感知して、その煙の濃度に関連する出力を発する煙センサ、火災Fによる熱を感知して、その熱量や温度に関連する出力を発する熱センサ、火災Fによる炎が発する赤外線や紫外線等の光を感知して、その光の強度に関連する出力を発する炎センサ等として構成されている。
従って、その火災センサ11aの出力値やその出力値の単位時間当りの増加量等が大きいほど、火災Fが発生している可能性が高くなると判断できる。
【0028】
一方、ガスセンサ12aは、火災生成ガスとしての一酸化炭素、水素、アルデヒド類、ケトン類、二酸化炭素、塩化水素及びシアン化水素の少なくとも1つの濃度を検出するセンサとして構成されている。
例えば、一酸化炭素は火災Fにより不完全燃焼が発生することにより生成され、水素やアルデヒド類、ケトン類は、発火前に発生する成分や火災Fによる中間生成物として生成され、二酸化炭素、塩化水素及びシアン化水素は火災Fによる燃焼生成物として生成されるものであり、更に、通常の調理時や喫煙時においては、その生成量は少ない。
従って、そのガスセンサ12aの出力値やその出力値の単位時間当りの増加量等が大きいほど、火災Fが発生している可能性が高くなると判断できる。
【0029】
また、ガスセンサ12aとしては、公知の定電位電解型や起電力検出型、酸化還元混合電位検出型、電解質上設置電極反応電流を検出するタイプ等の電気化学式や金属酸化物半導体式や接触燃焼式等の公知のガスセンサを用いることができる。
例えば、詳細については説明を省略するが、一酸化炭素の濃度を検出するガスセンサとしては、金属酸化物半導体として酸化スズ半導体や酸化インジウム半導体等からなる感応部を用いた半導体式のガスセンサや、電解液や固体電解質等の電解質上に設けた電極上で一酸化炭素が反応することにより発生する電流を検出する電気化学式のガスセンサ等を用いることができる。
また、水素の濃度を検出するガスセンサとしては、金属酸化物半導体として酸化スズ半導体等からなる感応部を用いた半導体式や接触燃焼式のガスセンサを用いることができる。
【0030】
前記判定手段13は、火災センサ11aの出力に関する出力関連値である火災センサ出力関連値aと、ガスセンサ12aの出力に関する出力関連値であるガスセンサ出力関連値bとを常時監視して、火災センサ出力関連値a及びガスセンサ出力関連値bに基づいて、本格火災状態であるか、初期火災状態であるか、環境異常状態であるか、異常無し状態であるかを判定するように構成されている。
そして、この実施形態では、火災センサ出力関連値aとして、火災センサ11aの出力値を用い、ガスセンサ出力関連値bとして、ガスセンサ12aの出力値を用いる。
【0031】
即ち、判定手段13は、火災センサ出力関連値aとガスセンサ出力関連値bとを、図3に示す予め設定しているデータマップに割り当てて、本格火災状態(Z)であるか、初期火災状態(Y)であるか、環境異常状態としてのガス異常状態(X)であるか、異常無し状態(W)であるかを判定するように構成されている。
以下、判定手段13による上記各種状態の判定について説明する。
【0032】
(本格火災状態の判定)
前記判定手段13は、火災センサ出力関連値aが本格火災設定値A4以上となる状態が本格火災設定時間継続すると、本格火災状態(Z)であると判定する。
そして、本格火災設定値A4については、ガスセンサ出力関連値bの大小にかかわらず一定値としているが、極力小さな値に設定して、安定して本格火災状態(Z)であることを判定できるようにしている。
前記火災センサ出力関連値aが、火災センサ11aとしての熱センサで検出された熱量により求められる温度である場合には、本格火災設定値A4を例えば65℃程度に設定する。
【0033】
前記本格火災設定時間については、ガスセンサ出力関連値bの大小にかかわらず一定時間を設定する、又は、ガスセンサ出力関連値bが大きくなるほど短くする状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて異なる時間を設定することができる。
例えば、異なる時間を設定する場合には、ガスセンサ出力関連値bが後述する第二環境用初期火災設定値B2よりも小さい範囲では、本格火災設定時間を数秒と設定し、第二環境用初期火災設定値B2よりも大きい範囲では、0秒と設定することができる。
【0034】
(初期火災状態の判定)
前記判定手段13は、火災センサ出力関連値aが本格火災設定値A4よりも小さい初期火災設定値以上でかつガスセンサ出力関連値bが環境用初期火災設定値B1以上となる状態が初期火災設定時間継続すると、初期火災状態(Y)であると判定する。
【0035】
前記初期火災設定値については、ガスセンサ出力関連値bの大小にかかわらず一定値ではなく、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて異なる値となるように設定してある。
即ち、図3に示すように、初期火災設定値として、第一初期火災設定値A1と、その第一初期火災設定値A1よりも大きい第二初期火災設定値A2と、その第二初期火災設定値A2よりも大きい第三初期火災設定値A3とを設定してある。
一方、環境用初期火災設定値は、第一環境用初期火災設定値B1の一定値に設定してあるが、初期火災設定値を三段階に区分けするために、その第一環境用初期火災設定値B1よりも大きい第二環境用初期火災設定値B2と、その第二環境用初期火災設定値B2よりも大きい第三環境用初期火災設定値B3とも設定されている。
【0036】
そして、ガスセンサ出力関連値bが第三環境用初期火災設定値B3よりも大きい範囲は、第一初期火災設定値A1を初期火災設定値と設定し、ガスセンサ出力関連値bが第二環境用初期火災設定値B2よりも大きい範囲でかつ第三環境用初期火災設定値B3よりも小さい範囲は、第二初期火災設定値A2を初期火災設定値と設定し、ガスセンサ出力関連値bが第一環境用初期火災設定値B1よりも大きい範囲でかつ第二環境用初期火災設定値B2よりも小さい範囲は、第三初期火災設定値A3を初期火災設定値と設定してある。
このようにして、初期火災設定値は、ガスセンサ出力関連値bが小さい側よりも大きい側の方が小さくなる状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて段階的に異なる値となるように設定してある。
【0037】
したがって、判定手段13は、ガスセンサ出力関連値bが第三環境用初期火災設定値B3よりも大きく、かつ、火災センサ出力関連値aが第一初期火災設定値A1以上である状態が初期火災設定時間継続すると、初期火災状態(Y)であると判定する。
また、判定手段13は、ガスセンサ出力関連値bが第二環境用初期火災設定値B2よりも大きくかつ第三環境用初期火災設定値B3よりも小さく、かつ、火災センサ出力関連値aが第二初期火災設定値A2以上である状態が初期火災設定時間継続すると、初期火災状態(Y)であると判定する。
さらにまた、判定手段13は、ガスセンサ出力関連値bが第一環境用初期火災設定値B1よりも大きくかつ第二環境用初期火災設定値B2よりも小さく、かつ、火災センサ出力関連値aが第三初期火災設定値A3以上である状態が初期火災設定時間継続すると、初期火災状態(Y)であると判定する。
【0038】
そして、火災センサ出力関連値aが、火災センサ11aとしての熱センサで検出された熱量により求められる温度である場合には、第一初期火災設定値A1を例えば40℃程度に設定し、第二初期火災設定値A2を例えば50℃程度に設定し、第三初期火災設定値A3を55℃に設定する。
一方、ガスセンサ出力関連値bが、ガスセンサ12aとしての一酸化炭素センサで検出された火災生成ガスとしての一酸化炭素の濃度である場合には、第一環境用初期火災設定値B1を例えば100ppm程度に設定し、第二環境用初期火災設定値B2を例えば200ppm程度に設定し、第三環境用初期火災設定値B3を例えば550ppm程度に設定する。
【0039】
このようにして、火炎センサ出力関連値aが初期火災設定値以上であるという、初期火災状態(Y)と判定するための条件を、初期火災状態となる可能性の高低に対応する状態で設定して、初期火災状態を的確に判定することができる。
【0040】
また、初期火災設定時間については、ガスセンサ出力関連値bの大小にかかわらず一定時間を設定する、又は、ガスセンサ出力関連値bが大きくなるほど短くなる状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて異なる時間を設定することができる。
例えば、異なる時間を設定する場合には、ガスセンサ出力関連値bが第三環境用初期火災設定値B3よりも小さい範囲では、初期火災設定時間を150秒と設定し、第三環境用初期火災設定値B3よりも大きい範囲では、0秒と設定することができる。
このようにして、初期火災設定時間をも、初期火災状態となる可能性の高低に対応させて設定して、初期火災状態を的確に判定ようにしてもよい。
【0041】
(ガス異常状態の判定)
前記判定手段13は、初期火災状態(Y)及び本格火災状態(Z)を判定していない場合に、ガスセンサ出力関連値bが環境用異常設定値B’以上となる状態が環境異常設定時間継続すると、環境異常状態としてのガス異常状態(X)であると判定する。
そして、環境用異常設定値B’については、図3に示すように、第二環境用初期火災設定値B2と同じ値に設定している。
【0042】
したがって、判定手段13は、ガスセンサ出力関連値bが第三環境用初期火災設定値B3よりも大きく、かつ、火災センサ出力関連値aが第一初期火災設定値A1未満である状態が環境異常設定時間(例えば3分間)継続すると、ガス異常状態(X)であると判定する。
また、判定手段13は、ガスセンサ出力関連値bが第二環境用初期火災設定値B2よりも大きくかつ第三環境用初期火災設定値B3よりも小さく、かつ、火災センサ出力関連値aが第二初期火災設定値A2未満である状態が環境異常設定時間(例えば10分間)継続すると、ガス異常状態(X)であると判定する。
【0043】
(異常無し状態の判定)
前記判定手段13は、本格火災状態(Z)、初期火災状態(Y)、及び、ガス異常状態(X)のいずれでもない場合には、異常無し状態(W)と判定する。
【0044】
次に、警報手段14の詳細構成について、説明を加える。
前記警報手段14は、判定手段13が本格火災状態(Z)であると判定すると、本格火災用の警報を行い、判定手段13が初期火災状態(Y)であると判定すると、初期火災用の警報を行い、判定手段13がガス異常状態(X)であると判定すると、環境異常用の警報を行うように構成されている。
【0045】
即ち、警報手段14は、本格火災用の警報として、例えば、「火災警報装置が作動しました。確認してください。」という音声ガイダンスを出力する。そして、警報手段14は、初期火災用の警報として、例えば、「火元を確認してください。」という音声ガイダンスを出力する。また、警報手段14は、環境異常用の警報として、例えば、「空気が汚れて危険です。窓を開けて換気してください。」という音声ガイダンスを出力する。
【0046】
前記警報手段15の警報を出力する形態としては、上記のようなスピーカ等による音声ガイダンスを出力する形態以外の形態により行うこともできる。
即ち、インターネット等の通信ネットワークを通じてガス供給会社や警備会社等のセンター装置に判定手段13による判定結果を通報するための外部通報信号を送信する形態や、判定手段13による判定結果に応じて自動的にコンロ2へのガスの供給を遮断するガス遮断信号を遮断弁に対して送信する形態等や、その他の公知の警報の出力形態を採用することができる。
例えば、判定手段13が本格火災状態(Z)を判定した場合には、警報手段14は、外部通報信号及びガス遮断信号を送信する形態を採用し、判定手段13が初期火災状態(Y)を例えば一定時間継続して判定した場合には、本格火災状態(Z)の場合と同様に、警報手段15は、上記外部通報信号及び上記ガス遮断信号を送信する形態を採用するように構成することができる。
【0047】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、判定手段13が初期火災状態を判定するに当り、初期火災設定値を、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて異なる値となるように設定し、環境用初期火災設定値を、第一環境用初期火災設定値B1の一定値としているが、逆に、環境用初期火災設定値を、火炎センサ出力関連値aの大小に応じて異なる値となるように設定し、初期火災設定値を一定値としてもよい。
【0048】
この場合、例えば、環境用初期火災設定値として、第四環境用初期火災設定値と、その第四環境用初期火災設定値よりも大きい第五環境用初期火災設定値と、その第五環境用初期火災設定値よりも大きい第六環境用初期火災設定値とを設定し、火炎センサ出力関連値aが小さい側よりも大きい側の方が小さくなる状態で、環境用初期火災設定値を三段階に設定する。一方、初期火災設定値については、第四初期火災設定値の一定値と設定することができる。
そして、この例を図3に適応した場合には、第四環境用初期火災設定値をB1とし、第五環境用初期火災設定値をB2とし、第六環境用初期火災設定値をB3とし、第四初期火災設定値をA1とすることができる。
【0049】
(2)上記実施形態では、初期火災設定値を、ガスセンサ出力関連値bが小さい側よりも大きい側の方が小さくなる状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて段階的に設定してあるが、例えば、ガスセンサ出力関連値bが大きくなるほど小さくなる状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて連続的に異なる値となるように設定することもできる。
そして、初期火災設定値を段階的に設定する場合でも、第一初期火災設定値A1と第二初期火災設定値A2と第三初期火災設定値A3の三段階に限らず、初期火災設定値を二段階又は四段階以上に設定することも可能である。
【0050】
また、上記別実施形態(1)で述べた如く、環境用初期火災設定値を、火炎センサ出力関連値aの大小に応じて異なる値となるように設定した場合にも、段階的又は連続的を問わず、環境用初期火災設定値を火炎センサ出力関連値aの大小に応じて異なる値となるように設定することができる。
【0051】
(3)上記実施形態では、火災検出手段11として、火災センサ11aを例示し、環境状態検出手段12として、ガスセンサ12aを例示したが、例えば、火災により発生するニオイを検出するニオイセンサ等を火災検出手段として構成する等、火災検出手段11及び環境状態検出手段12をどのようなセンサにて構成するかは適宜変更が可能である。
【0052】
(4)上記実施形態では、火災センサ出力関連値aとして、火災センサ11aの出力値を用いたが、火災センサ11aの出力値の単位時間当りの増加量等を用いることもできる。
また、ガスセンサ出力関連値bについても、ガスセンサ12aの出力値に限らず、ガスセンサ12aの出力値の単位時間当りの増加量等を用いることができる。
【0053】
(5)上記実施形態では、判定手段13は、予め設定した図3に示すデータマップを記憶し、火災センサ出力関連値a及びガスセンサ出力関連値bを図3に示すデータマップに割り当てる形態で、本格火災状態や初期火災状態等を判定するようにしているが、データマップに代えて、火災センサ出力関連値a及びガスセンサ出力関連値bに基づいて本格火災状態や初期火災状態等を判定するための所定の判定処理フローを構築しておいても構わない。
【0054】
(6)上記実施形態では、判定手段13が環境異常状態としてのガス異常状態(X)を判定するに当り、環境異常設定値を第二環境用初期火災設定値B2と同じ値にしているが、環境異常設定値を、第二環境用初期火災設定値B2とは別の値としてもよい。
【0055】
(7)上記実施形態では、判定手段13が初期火災状態を判定するに当り、初期火災設定時間について、ガスセンサ出力関連値bが大きくなるほど短くする状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて異なる時間を設定しているが、逆に、初期火災設定時間について、ガスセンサ出力関連値bが大きくなるほど長くする状態で、ガスセンサ出力関連値bの大小に応じて異なる時間を設定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、火災検出手段の出力情報及び環境状態検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と初期火災状態とを判定する判定手段を設けた火災警報装置等、各種の警報装置に適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】警報装置の設置状態を示す図
【図2】警報装置の概略構成図
【図3】本格火災状態、初期火災状態、ガス異常状態の判定の状態を示す説明図
【符号の説明】
【0058】
10:警報装置
11:火災検出手段
11a:火炎センサ
12:環境状態検出手段
12a:ガスセンサ
13:判定手段
14:警報手段
a:火災センサ出力関連値
b:ガスセンサ出力関連値
A1,A2,A3:初期火災設定値
A4:本格火災設定値
B1,B2,B3:環境用初期火災設定値
B’:環境用異常設定値
F:火災
X:環境異常状態
Y:初期火災状態
Z:本格火災状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を検出する火災検出手段と、
その火災検出手段の周囲における環境状態を検出する環境状態検出手段と、
前記火災検出手段の出力情報及び前記環境状態検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と、その本格火災状態に至る以前の初期火災状態とを判定する判定手段とが設けられている警報装置であって、
前記判定手段が、前記火災検出手段の出力に関する出力関連値が本格火災設定値以上となると、前記本格火災状態であると判定し、前記火災検出手段の出力関連値が前記本格火災設定値よりも小さい初期火災設定値以上でかつ前記環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が環境用初期火災設定値以上となると、前記初期火災状態であると判定するように構成され、
前記初期火災設定値が、前記環境状態検出手段の出力関連値の大小に応じて異なる値となるように設定してある警報装置。
【請求項2】
火災を検出する火災検出手段と、
その火災検出手段の周囲における環境状態を検出する環境状態検出手段と、
前記火災検出手段の出力情報及び前記環境状態検出手段の出力情報に基づいて、本格火災状態と、その本格火災状態に至る以前の初期火災状態とを判定する判定手段とが設けられている警報装置であって、
前記判定手段が、前記火災検出手段の出力に関する出力関連値が本格火災設定値以上となると、前記本格火災状態であると判定し、前記火災検出手段の出力関連値が前記本格火災設定値よりも小さい初期火災設定値以上でかつ前記環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が環境用初期火災設定値以上となると、前記初期火災状態であると判定するように構成され、
前記環境用初期火災設定値が、前記火災検出手段の出力関連値の大小に応じて異なる値となるように設定してある警報装置。
【請求項3】
前記火災検出手段が、煙、熱又は炎を検出する火災センサであり、
前記環境状態検出手段が、火災により生成される火災生成ガスの濃度を検出するガスセンサである請求項1又は2に記載の警報装置。
【請求項4】
前記判定手段が、前記初期火災状態及び前記本格火災状態を判定していない場合に、前記環境状態検出手段の出力関連値が環境用異常設定値以上となると、環境異常状態であると判定するように構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の警報装置。
【請求項5】
前記判定手段が前記本格火災状態であると判定すると、本格火災用の警報を行い、前記判定手段が前記初期火災状態であると判定すると、初期火災用の警報を行い、前記判定手段が前記環境異常状態であると判定すると、環境異常用の警報を行う警報手段が設けられている請求項4に記載の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−163633(P2006−163633A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351878(P2004−351878)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】