説明

豆乳の製造方法

【課題】0.1%〜20重量%の範囲内で自由な濃度の豆乳を得る。
【解決手段】水又は調整水に対する凍り豆腐配合比を0.1%〜22重量%、加熱条件を100℃〜130℃、製品のpH域をpH6〜9の範囲に設定して、それらの条件の組合せを変えることにより、自由な濃度の豆乳が得られる。特に、水又は調整水に対する凍り豆腐配合比を15〜22重量%、加熱条件を115〜130℃、水又は調整水pH7〜9の範囲とすることにより、高濃度の豆乳が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍り豆腐(高野豆腐ともいう)を利用して行う、自由な濃度の豆乳の製造方法及びそれに関連した高濃度豆乳の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている豆乳の濃度は、4%〜13%程度のもの(8〜10%が主流)であり、濃度15%以上もある高濃度の製品は皆無である。それは、豆乳を絞る際に高濃度に絞る技術が存在しないからであると思われる。
【0003】
うすい濃度の豆乳を濃縮して濃度を高めることが一応考えられる。例えば、下記特許文献1は、呉からおからを分離した生豆乳又は加熱処理した豆乳を一次豆乳として、これを引き水に使用し、豆乳濃度の濃い二次豆乳を調製することを特徴とする高濃度豆乳の製造方法を開示している。この方法によれば、豆乳の粘度を上昇させることなく、高濃度の豆乳(Brixが15.0%〜17.5%)が得られるとされている。しかし、この方法は大変手間と費用がかかり、製品のコスト上昇に直結するので、一般的とはいえない。
【特許文献1】特開2000−232860公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、自身の先願(特開2005-13038)において、次のような発明を開示した。すなわち、粉砕した乾物凍り豆腐が10%〜40重量%となるように水分を加え、袋等の容器詰めをした後、100℃〜130℃で加熱をすることにより、緻密な絹ごし豆腐に似た組織とモチ状の食感を持つ新しい豆腐を得る方法である。加熱時間は10分〜120分間、前記水分は、塩分濃度が0.001%〜2%以下の範囲内、pHが6〜9の範囲内になるように調整をした調味液又は調整液であることが好ましい。
【0005】
なお、この先願においては、豆腐状に再結着する状態は凍り豆腐配合比率20重量%付近から上の濃度であることが示されている。それ以下の15%あるいは10重量%の濃度においては、やわらかいか歯ごたえに乏しいものとなっている。これは加工において特別なpH調整をせずに、105℃、60分の加熱条件によるサンプル値によるものである。
【0006】
前記先願を基礎として、凍り豆腐を原料に生豆腐化実験を行っていく中で、本発明者らは、pH調整水に対する凍り豆腐配合比率と加熱条件、pH調整水のpH値との組合わせによって、凝固しない範囲が生じることを新たに発見した。「凝固しない」とは、豆乳のようにコロイド状に流動的なもの、さらに濃度の濃くなった粘度の高い液状のもの、さらにどろっとした液状で一部に粒度を持った半固形物が混ざったものなど、明らかに一体の固形物に固まっていない状態のものである。
【0007】
本発明は、この知見に基づき、0.1%〜20重量%の範囲内で自由な濃度の豆乳の製造方法を提供すること、及び、これに関連して15〜20重量%の範囲の高濃度豆乳の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願請求項1の発明は、水に対する凍り豆腐配合比を0.1%〜22重量%、加熱条件を100℃〜130℃とし、それらの条件の組合せを変えることを特徴とする自由な濃度の豆乳の製造方法である。
【0009】
請求項2の発明は、水がpH調整水であり、製品のpH域がpH6〜9の範囲となるようにpHを調整する請求項1記載の方法である。
【0010】
本願請求項3の発明は、水又は調整水に対する凍り豆腐配合比を15〜22重量%、加熱条件を115〜130℃、水又は調整水pH7〜9の範囲とすることを特徴とする高濃度の豆乳の製造方法である。
【0011】
なお、豆乳の濃度を設定するには、乾物の凍り豆腐が含有する約7%の水分を添加する水分に換算し、予め水分値0に補整しておく必要がある。したがって、例えば、豆乳の濃度20%を得るには、水(又は調整水)78.5重量%に対して乾物の凍り豆腐21.5重量%を配合する。
【発明の効果】
【0012】
本願請求項1及び2の発明においては、0.1%から最大20重量%までの高濃度の液状豆乳を自由に生産することができる。その結果、本発明の豆乳は、こんにゃく・寒天・くず・ゼラチンなどのゲル化剤と混合することで、様々な濃度の固形物に固めるのに利用することができる。
【0013】
本願請求項3の発明によれば、濃度が15%〜20重量%の高濃度豆乳が得られるため、今後豆乳(あるいは豆腐)の持つ大豆の栄養価値を様々な食品中に取り入れる方法として大変有効なものである。
【0014】
さらに、本願発明によれば、味に癖のない飲みやすい豆乳加工品に仕上げることができる。本発明の豆乳は、一般の豆乳と異なり、凍り豆腐を原料とするため、青臭みの少ない飲みやすい豆乳となる。それは、凍り豆腐の製造工程中で豆腐に凝固する部分よりも、凝固せずに外へ流出してしまう大豆ホエー液やオカラの中に、その青臭みの原因となる成分が多く含まれているからである。
【0015】
また、この本発明の豆乳は、100〜130℃の範囲で加熱処理されているため、保存性が高く、常温もしくは要冷蔵保管で長期間保管流通が可能な食品である。したがって、加工原料としても微生物的に安全な原料として安定的に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
水(もしくは調整液)に対する凍り豆腐配合比率と加熱温度を変化させて豆腐状に完全に固まらない条件を求めたところ、下表のデータが得られた。
【0017】
実験結果A
【表1】

A:かなり硬い B:硬い C:やや硬い D:ちょうど良い
E:やや軟らかい F:軟らかい G:かなり軟らかい H:液状
【0018】
*評価コメント
凍り豆腐10重量%配合:100℃以上の加熱では、ほぼ完全なコロイド状の豆乳になっている。
凍り豆腐15重量%配合:115℃以上の加熱では、ほぼ完全なコロイド状の豆乳になっている。
凍り豆腐20重量%配合:115℃以上の加熱で、大変クリーミーになり、少しの衝撃で壊れてしまいそうな半液体状である。
凍り豆腐25重量%配合:115℃になると、食感はクリーム状の滑らかさになるが、味的には加熱による不快味が出てまずくなる。
【0019】
この実験結果から、次のように結論することができる。
(1)凍り豆腐10重量%以下の配合比で100〜130℃の加熱条件であれば、豆乳化は全く問題なくできる。
(2)凍り豆腐15重量%以下の配合比で115〜130℃の加熱条件であれば、同様に豆乳化は問題なくできる。
(3)通常条件(水を使用)では、凍り豆腐配合比15〜22重量%の間に完全なコロイド状の豆乳ができる限界点がある。
【0020】
上記(3)に基づき、凍り豆腐の配合比15〜22%、加熱条件115〜130℃、水又は調整水pH7〜9の範囲において、さらに豆乳化が可能な条件範囲を求めたところ、次のようなデータが得られた。
【0021】
実験結果B
通常条件(水を使用)で配合比と加熱条件の組合せ
【表2】

G:かなり軟らかい H:液状
【0022】
実験結果C
pH域を若干アルカリ性にする場合(pH8〜9の範囲)
【表3】

G:かなり軟らかい H:液状
pH調整にはピロリン酸4カリウムを使用した。
【0023】
この結果から、水又は調整水に対する凍り豆腐配合比を15〜22重量%、加熱条件を115〜130℃、水又は調整水pH7〜9の範囲とすることで、高濃度の豆乳が得られることが判明した。
【0024】
これを越える濃度が必要な場合には、前記先願発明(特開2005-13038)によりペースト状もしくは崩れやすい固形状の豆腐を作り、この液体混合とは別の方法で混合すれば使用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の豆乳は、そのまま飲用する以外に、例えば次のように使用することができる。
【0026】
こんにゃく・寒天・くず・ゼラチンなどのゲル化剤と混合することで、様々な濃度の固形物に固めることができる。例:豆乳(豆腐)入のこんにゃく・寒天・くず・ゼリー・プリンなど。
【0027】
麺生地に練り込むことで様々な麺製品に混合使用できる。例:豆乳(豆腐)入のラーメン・そば・うどん・パスタ・スパゲッテイなど。
【0028】
小麦粉や米粉を使ったパン生地に練り込むことで様々なパン製品に混合使用できる。例:豆乳(豆腐)入のパン・ケーキ・ピザ・お好み焼き・たこ焼き・饅頭・おやき・クッキー・ビスケットなど。
【0029】
具体的な使用法を列挙すると次のとおりである。
1)シウマイ・ギョウザの皮の生地に練り込む。
2)スープ類の原料として使用する。特にレトルト仕様のスープ。
3)チーズ・ヨーグルトの原料として使用する。
4)ハンバーグ・ミートボール・コロッケなどの生地に混合する。
5)ハム・ソーセージの原料として混合使用する。
6)だんご・白玉の生地に混合使用する。
7)ソース・ドレッシング・マヨネーズのベースとして、混合使用する。
8)白和えのベースとして使用する。
9)豆乳入健康酢の原料として使用する。
10)アミノ酸入化粧品の原料として使用する。
【0030】
上記実験例や使用例はあくまで例示であり、本発明はこれらによって限定されるものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対する凍り豆腐配合比を0.1%〜22重量%、加熱条件を100℃〜130℃とし、それらの条件の組合せを変えることを特徴とする自由な濃度の豆乳の製造方法。
【請求項2】
水がpH調整水であり、製品のpH域がpH6〜9の範囲となるようにpHを調整する請求項1記載の方法。
【請求項3】
pH調整水に対する凍り豆腐配合比を15〜22重量%、加熱条件を115〜130℃、pH調整水のpH域を7〜9の範囲とすることを特徴とする高濃度の豆乳の製造方法。


【公開番号】特開2006−320225(P2006−320225A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144831(P2005−144831)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(594206819)登喜和冷凍食品株式会社 (3)
【Fターム(参考)】