説明

豆類の液体含浸法

【課題】乾燥したコーヒー豆などに真空含浸法によって風味を与える製造法に関し、比較的簡易な方法で確実かつ迅速に液体を乾燥豆類に含浸し、風味を長期間持続可能とする。
【解決手段】乾燥したコーヒー豆などの豆類を添加液体と共に収納した真空袋を真空機で充分に減圧するため、内部の豆類の微小な隙間も真空状態にされる。そのため、真空袋を密封してから、大気圧を加えて収縮させると、予め添加されている少量の溶液が各豆類の微小隙間に吸入され含浸される。このような真空含浸法で添加液体を乾燥豆類に浸透させるので、目的の液体が一瞬にして乾燥豆などの材料の中に浸透し、短時間に容易にかつ確実に処理できる。しかも、負圧状態の微小隙間に真空含浸されるので、含浸された液体成分が消失しにくく、風味や味が長持ちする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した黒豆や大豆、小豆等の豆類、カボチャやヒマワリなどの種子類、コーヒー豆など(以下「豆類」又は「乾燥豆類」と総称する)に真空含浸法によって香りや芳香、甘味などの液体による風味を与える製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−342182では、ロブスタ種のような低品質のコーヒー豆の品質を、アラビカ種のような高品質に改善すること、及びアラビカ種のコーヒー豆がもっている不快な酸を低減し、高品質に改善する方法が提案されている。製法は、先ずコーヒーの生豆をショ糖溶液に浸漬して生豆にショ糖溶液を十分に含浸させる。次いでショ糖溶液含浸生豆を釜内で130℃〜160℃の飽和蒸気で5分〜30分間蒸煮処理する。同じ釜内で蒸煮された生豆を3分〜15分間真空冷却乾燥させて得られた生豆を焙煎して、風香味の優れた高品質なコーヒー豆を得る。
【0003】
一方、特開2000−236813では、ハーブ等の乾燥した香材にアルコール水溶液を含浸させて含浸ハーブを作製する方法が提案されている。先ず、コーヒー豆を焙煎し、このコーヒー豆が熱い間に含浸ハーブをこのコーヒー豆と撹拌により混合する。含浸ハーブ及びコーヒー豆の撹拌時にコーヒー豆の上側又は側方から冷却用の風を送るとよい。アルコール水溶液及びコーヒー豆の余熱を巧みに用いることにより、ハーブ等の香材の香りや成分が十分に浸透し且つ乾燥状態の良い香材入りコーヒーを得ることができる。アルコール水溶液としては、ウォッカ、焼酎、ワイン等の酒類を用いることができる。
なお、特開平8−266265には、コーヒー豆に泡盛を添加することで、あるいはコーヒー豆を泡盛に漬け込むことで、コーヒーを風味豊かなものに変える方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−342182
【特許文献2】特開2000−236813
【特許文献3】特開平8−266265
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの製法では、コーヒー豆を液体に浸漬したり、蒸煮したり、アルコール類を加えて、これらの成分をコーヒー豆に含浸させる方法である。そのため、完成までに長時間を要すると共に、作業内容が複雑で、製造コストが高くなり、販売上も不利である。また、折角付与した風味も消失し易く、長続きしない。本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、比較的簡易な方法で確実かつ迅速に液体を乾燥豆類に含浸し、風味を長期間持続可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、黒豆、大豆、小豆等の豆類、カボチャやヒマワリなどの種子類、又はコーヒー豆などの少なくとも1種を乾燥状態で添加液体と共に収納した真空袋の内部を真空機で充分な負圧に減圧してから密封し、さらに大気圧を加えて真空袋を加圧収縮させることを特徴とする豆類の液体含浸法である。このように、乾燥した状態の黒豆、大豆、小豆等の豆類、カボチャやヒマワリなどの種子類、又はコーヒー豆などの少なくとも1種を添加液体と共に収納した真空袋の内部を真空機で充分な負圧に減圧するため、内部のコーヒー豆や食用豆類、種子類などの微小な隙間も真空状態にされる。
【0006】
そのため、真空状態の真空袋を密封してから、大気圧を加えて真空袋を収縮させると、予め添加されている少量の溶液が各豆類の微小隙間に吸入され含浸されることになる。このように、豆類の内部の微小隙間を真空機で充分な負圧にしてから、密封状態の真空袋を大気圧で加圧し、真空状態の微小隙間に液体を含浸させるので、目的の液体が一瞬にして乾燥豆などの材料の中に含浸されることになり、短時間に容易にかつ確実に含浸できる。しかも、負圧状態の微小隙間に真空含浸されるので、含浸された液体成分が消失しにくく、風味や味が長持ちする。
【0007】
請求項2は、請求項1の方法で真空含浸された豆類を、真空袋から取り出して焙煎することによって、余分なアルコール分や水分を蒸発させ、香りや味などの成分を残した高品質の豆類を実現することを特徴とする豆類の焙煎処理方法である。このように、真空含浸された豆類の使用に際しては、請求項1の方法で真空含浸された豆類を、真空袋から取り出して焙煎する。その結果、余分なアルコール分や水分が蒸発するので、香りや味などの成分のみが微小隙間中に残り、香りや味の高い、風味豊かな高品質の豆類を実現でき、かつ風味が長続きする。
【0008】
請求項3は、請求項1の方法で添加溶液を含浸させてなることを特徴とする豆類である。このように、請求項1の方法で添加溶液を真空含浸させてなる豆類は、真空袋に入ったまま気密状態で保管したり販売でき、品質の低下を来さず、取り扱いも簡便である。しかも、負圧状態の微小隙間に添加液体が真空含浸されているので、時間が経過しても、或いは真空袋から出した状態でも、含浸された液体成分が消失しにくく、風味や味が長持ちする。
【0009】
請求項4は、請求項2の方法で焙煎することにより、余分なアルコール分や水分を蒸発させてなることを特徴とする豆類である。このように、請求項2の方法で焙煎してなる豆類は、余分なアルコール分や水分は蒸発させてあるので、香りや味などの成分だけが微小隙間中に残っている。したがって、直ちに使用したり、密封して販売するのに適している。香りや味などの成分は微小隙間中に残っているので、風味が消失し難く、時間が経過したり真空袋から出した状態でも長続きする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように、乾燥したコーヒー豆などの豆類を添加液体と共に収納した真空袋を真空機で充分に減圧するため、内部の豆類の微小な隙間も真空状態にされる。そのため、真空袋を密封してから、大気圧を加えて収縮させると、予め添加されている少量の溶液が各豆類の微小隙間に吸入され含浸される。このような真空含浸法で添加液体を乾燥豆類に浸透させるので、目的の液体が一瞬にして乾燥豆などの材料の中に含浸され、短時間に容易にかつ確実に含浸できる。しかも、負圧状態の微小隙間に真空含浸されるので、含浸された液体成分が消失しにくく、風味や味が長持ちする。
【0011】
請求項2のように、真空含浸された豆類の使用に際しては、請求項1の方法で真空含浸された豆類を、真空袋から取り出して焙煎する。その結果、余分なアルコール分や水分が蒸発するので、香りや味などの成分のみが微小隙間中に残り、香りや味の高い、風味豊かな高品質の豆類を実現でき、かつ風味が長続きする。
【0012】
請求項3のように、請求項1の方法で添加溶液を真空含浸させてなる豆類は、真空袋に入ったまま気密状態で保管したり販売でき、品質の低下を来さず、取り扱いも簡便である。しかも、負圧状態の微小隙間に添加液体が真空含浸されているので、時間が経過したり真空袋から取り出しても、含浸された液体成分が消失しにくく、風味や味が長持ちする。
【0013】
請求項4のように、請求項2の方法で焙煎してなる豆類は、余分なアルコール分や水分は蒸発させてあるので、香りや味などの成分だけが微小隙間中に残っている。したがって、直ちに使用したり、密封して販売するのに適している。香りや味などの成分は微小隙間中に残っているので、風味が消失し難く、時間が経過したり真空袋から出した状態でも長続きする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明による乾燥豆類の液体含浸法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図は本発明による液体含浸法を実施する真空機の模式断面図であり、図1(1)は準備状態である。先ず、真空機1の真空処理室1a内の処理台2上に、真空袋3をセットする。この真空袋3には、コーヒー豆などの乾燥した豆類4と少量の添加液体5を予め収納してある。豆類4は乾燥してあるので、その断面を拡大して示すと、図1(2)のように、微小な隙間(空隙)Gが無数に開いている。この隙間Gに液体が真空含浸される。真空袋3の封口3iは開けた状態である。この真空袋3は、可撓性に富んだ合成樹脂製の袋が適しており、運搬や保管、保にも好適である。
【0015】
次に、図2(1)のように蓋6を閉じて、真空機1内を密閉した状態で、真空機1を作動させ、真空処理室1a内を真空吸引して、減圧する。充分に減圧して負圧状態にすると、真空袋3の中も排気されて負圧状態になると共に、図2(2)のように、収納されている乾燥豆類4の内部の無数の微小隙間G中の空気aも排気されて真空状態となり、添加液体が入り込み易い状態となる。この状態で、加熱状態のシーラーSが作動して下降し、下側の加熱状態の封止台7上に、真空袋3の封口3iを押しつけ、封口3iを加熱溶融して密閉することによって、真空袋3を密封する。
【0016】
密封が完了すると、シーラーSが復帰上昇すると共に、真空機1の真空処理室1aが大気に開放される。その結果、図2(1)の真空袋3の外側にも大気圧が加わって加圧されるので、図3(1)のように、真空状態の真空袋3はペシャンコに押しつぶされて収縮する。このようにペシャンコに押しつぶされる際に、真空袋3中の添加液体5も真空袋3の外から加圧されて、真空袋3内の全体に分散すると共に、図3(2)のように各豆類4中の微小隙間G中に一瞬にして入り込み、添加液体が浸透する。以上の工程で真空含浸処理が完了するため、最後に図3(1)のように蓋6を開け、真空袋3を取り出す。
【0017】
このように添加液体を真空含浸してなる乾燥豆類を収納した真空袋3は、真空状態で保管するのに適しており、そのまま販売もできる。乾燥豆類としてコーヒー豆を例示したが、通常の食用の豆類として、黒豆、大豆、小豆等が挙げられる。カボチャやヒマワリなどの種子類も、液体の真空含浸に適している。ハトムギや押し麦などの麦類や米その他の穀類にも適用可能である。
【0018】
これらの乾燥豆類に含浸する液体としては、香りないし芳香、甘味を加えることによって風味を付加できる液体が適している。例えば、ブランデー、焼酎、泡盛、ウォッカ、ワインなどのアルコール飲料が適している。各種のハーブ類やシークヮーサー(ヒラミレモン)その他の果汁、糖類も適しており、香料としては、バニラ、シナモン、アーモンドなどが適しているが、これらに限定はされない。各種の調味料を含浸させることによって、味付けすることもできる。
【0019】
真空袋3中の豆類の使用に際しては、豆類を焙煎して、含浸した液体中の余分なアルコールや水分を蒸発させることが望ましい。その結果、香りや味の成分だけが微小隙間G中に残るので、風味に富んだ高品質の製品を実現でき、風味も長続きする。したがって、喫茶店などの業務用でも、家庭においても、風味豊かな製品を提供できる。焙煎状態で合成樹脂袋や缶、ビンなどで保管したり販売もできる。焙煎した豆類は、細かい粉末や粒状に粉砕して、菓子類にトッピングしたり、チンスコーなどの焼き菓子の生地に混ぜ込むこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、乾燥した豆類を添加液体と共に収納した真空袋の内部を真空機で充分な負圧にしてから密封し、大気に戻す方法によると、添加液体が一瞬にして豆類などの材料の中に真空含浸されるので、処理も容易である。この豆類を焙煎して、余分なアルコールや水分を蒸発させることにより、香りや味が豊かな風味の高い高品質な製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】各図は本発明による液体含浸法を実施する真空機の模式断面図で、(1)は準備状態、(2)は豆類の拡大断面図である。
【図2】(1)は図1の真空機における真空処理中、(2)は真空処理中の豆類の拡大断面図である。
【図3】(1)は図2の真空処理・封止の後の大気開放状態、(2)は大気加圧状態の豆類の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 真空機
1a 真空処理室
2 処理台
3 真空袋
3i 封口
4 乾燥した豆類
G 豆類中の微小隙間
5 添加液体
6 蓋
7 封止台
S シーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒豆、大豆、小豆等の豆類、カボチャやヒマワリなどの種子類、又はコーヒー豆などの少なくとも1種を乾燥状態で添加液体と共に収納した真空袋の内部を真空機で充分な負圧に減圧してから密封し、さらに大気圧を加えて真空袋を加圧収縮させることを特徴とする液体含浸法。
【請求項2】
請求項1の方法で真空含浸された豆類を、真空袋から取り出して焙煎することによって、余分なアルコール分や水分を蒸発させ、香りや味の成分を残して高品質の製品を実現することを特徴とする焙煎処理方法。
【請求項3】
請求項1の方法で液体を含浸させてなることを特徴とする真空袋入りの豆類。
【請求項4】
請求項2の方法で焙煎することにより、余分なアルコール分や水分を蒸発させてなることを特徴とする豆類。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−73008(P2008−73008A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258573(P2006−258573)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(506322639)
【Fターム(参考)】