説明

負の熱膨張係数を有する結晶化ガラス及びその製造方法

【課題】ガラス原料を高温で溶融してガラス化する段階を省略することにより、大量生産と製造コスト低減を可能にする、負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法の提供。
【解決手段】製造方法は、(a)組成物を秤量及び混合する段階と、(b)混合した組成物をか焼する段階と、(c)か焼した組成物を焼結する段階と、(d)焼結した組成物を常温で炉冷すると段階を含み、結晶化ガラスは、シリカ(SiO)38%〜64%と、アルミナ(Al)30%〜40%と、酸化リチウム(LiO)5%〜12%とを基本組成として含み、前記基本組成にジルコニア(ZrO)0.5%〜15%、二酸化チタン(TiO)0.5%〜6.5%、五酸化リン(P)0.5%〜4%、酸化マグネシウム(MgO)2%〜5%、及びフッ化マグネシウム(MgF)0%〜5%から選択された1つ又はそれ以上の成分をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化ガラス及びその製造方法に関し、特に固相反応法を用い、ガラス原料の重量比に応じた最適焼結温度などを求め、残留ガラス質を最小限に抑えて大きな結晶を生成し、最も大きな負の熱膨張係数を有する結晶化ガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に結晶化ガラスは、結晶とガラスの複合体であり、ガラス原料を溶融して成形した後、熱処理により結晶化して得られる。
【0003】
このような結晶化ガラスは、多くの場合ガラスからは得られない様々な特性を有するが、特に耐熱性に優れ、非常に低い熱膨張係数を示す。よって、厨房調理器具、調理器の天板、ヒーターパネルなどに使用されると共に、加工性に優れるので、天体望遠鏡の反射鏡、精密機械部品の素材、光通信の波長フィルタやカプラー、導波路などにも応用されている。
【0004】
特に、電子材料の分野において、シール材、各種基板及び構成体の温度変化による熱膨張の補償材として多く応用されているが、最近は負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスに対する研究が盛んに行われている。
【0005】
特許文献1には、主結晶相がβ−ユークリプタイト又はβ−石英固溶体である結晶化ガラスが開示されている。しかし、このような結晶化ガラスは、結晶化温度が非常に高温であり、負の熱膨張係数も約−2×10−7/℃と不十分であるという問題がある。
【0006】
特許文献2には、セラミック体の装飾用釉薬に適したβ−石英固溶体を主結晶相として含有する透明な結晶化ガラスが開示されている。しかし、この結晶化ガラスは核形成剤を多量に含んでいるので、大きな負の熱膨張係数を得ることは困難である。
【0007】
特許文献3には、主結晶相がβ−石英固溶体及び/又は亜鉛ペタライト固溶体であるZnO−Al−SiO系低熱膨張性セラミックスが開示されている。しかし、このセラミックスは、熱膨張係数が最も低いものも−21.5×10−7/℃と不十分であるという問題がある。
【0008】
また、前述した結晶化ガラスの製造方法の全ては、ガラス原料を高温で溶融して原ガラスを製造した後、前記原ガラスを再熱処理することにより結晶を析出させる。しかし、このように高温でガラス化する段階を経ることは、長時間を要し、煩雑でもあるので、大量生産の制約要素となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4209229号明細書
【特許文献2】米国特許第4507392号明細書
【特許文献3】特開平02−208256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、大きな負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスを提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、結晶化ガラスを製造する上で、最初にガラス原料を高温で溶融してガラス化する段階を省略することにより、大量生産と製造コスト低減を可能にする、負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的課題を解決ための本発明による結晶化ガラスの製造方法は、(a)組成物を秤量及び混合する段階と、(b)混合した組成物をか焼する段階と、(c)か焼した組成物を焼結する段階と、(d)焼結した組成物を常温で炉冷すると段階を含み、前記組成物は(重量%)、シリカ(SiO)38%〜64%と、アルミナ(Al)30%〜40%と、酸化リチウム(LiO)5%〜12%とを基本組成とし、前記基本組成にジルコニア(ZrO)0.5%〜15%、二酸化チタン(TiO)0.5%〜6.5%、五酸化リン(P)0.5%〜4%、酸化マグネシウム(MgO)2%〜5%、及びフッ化マグネシウム(MgF)0%〜5%から選択された1つ又はそれ以上の成分をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の結晶化ガラスは、上記の製造方法により得られた結晶化ガラスであって、主結晶相がβ−ユークリプタイト、β−スポジュメン、β−石英、バージライト、及びペタライトから選択された1つ又はそれ以上からなり、前記主結晶相の平均結晶粒子径が10μm未満であり、25℃〜400℃の温度範囲における平均熱膨張係数が−40×10−7/℃〜−110×10−7/℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による結晶化ガラスは、固相反応法などの特有の製造方法により残留ガラス質を最小限に抑えて大きな結晶を生成し、最も大きな負の熱膨張係数を有するので、各種ガラス及びそれに類似する製品の温度による熱膨張の補償材として使用できるという利点がある。
【0015】
また、本発明による結晶化ガラスの製造方法は、最初にガラス化段階を経ないので、大量生産が容易であり、製造時に生産容器との反応性がないため生産コストが節減されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例による結晶化ガラスの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明による結晶化ガラスの製造方法を説明する熱処理スケジュール図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。
【0018】
本明細書において、「主結晶相」とは、析出比が比較的大きな結晶相の全てを含む。すなわち、X線回折におけるX線チャート(縦軸はX線回折強度、横軸は回折角度)において最も高い析出割合で析出した結晶相のメインピークのX線回折強度を100とすると、各析出結晶相のメインピークの回折強度の比が30以上であるものを主結晶相という。ここで、主結晶相以外の結晶の回折強度の比は20未満が好ましく、最も好ましくは5未満である。
【0019】
また、「平均結晶粒子径」とは、多結晶体(polycrystal)を構成する結晶粒子のサイズの平均値を指し、「熱膨張係数(coefficient of thermal expansion)」とは、平均線膨張係数(average linear thermal expansion)を指す。
【0020】
本発明による結晶化ガラスは、主結晶相(main crystal phase)がβ−ユークリプタイト(eucryptite)(β−LiO・Al・2SiO)、β−スポジュメン(spodumene)(β−LiO・Al・4SiO)、β−石英(quartz)(β−SiO)、バージライト(virgilite)(LiO・Al・6SiO)、及びペタライト(petalite)(LiO・Al・4SiO)から選択された1つ又はそれ以上からなる。
【0021】
また、前記主結晶相の平均結晶粒子径が10μm未満であり、50℃〜400℃の温度範囲における平均熱膨張係数が−40×10−7/℃〜−110×10−7/℃である。
【0022】
本発明による結晶化ガラスは(重量%)、38%〜64%のシリカ(SiO)と、30%〜40%のアルミナ(Al)と、5%〜12%の酸化リチウム(LiO)とを基本組成物とし、前記基本組成物に0.5%〜15%のジルコニア(ZrO)、0.5%〜15%の二酸化チタン(TiO)、0.5%〜4%の五酸化リン(P)、2%〜5%の酸化マグネシウム(MgO)、及び0%〜5%のフッ化マグネシウム(MgF)から選択された1つ又はそれ以上の組成物をさらに含む。
【0023】
一般に、酸化リチウム(LiO)は、主結晶相の構成成分であり、溶融性を良好にして粘度を減少させる作用をする。含有量の範囲は5%〜12%が好ましく、5%未満では溶融点が高くなるので、主結晶相を得ることが困難であり、12%を超えると溶融点が低くなるので、成長した主結晶相が不安定になり、化学的耐久性が低下する。
【0024】
シリカ(SiO)は、負の熱膨張係数を有する主結晶相の構成成分である。含有量の範囲は38%〜64%が好ましく、38%未満では、主結晶相を得ることが困難であり、他の組成物との含有量比に応じて負の熱膨張係数が小さな他の結晶相が析出する。前記組成において64%を超えると、溶融点が低くなり、ガラス化しやすくなるので、結晶析出が困難になる。
【0025】
また、酸化リチウム(LiO)やシリカ(SiO)が本発明による含有量の範囲を超えると、溶融点が低くなり、反応物がガラス化するので、アルミニウムるつぼに反応物が付着するなどの問題が生じる。
【0026】
さらに、前記含有量の範囲を超えてガラス化した試料を再熱処理により結晶を析出及び成長させても、大きな負の熱膨張係数を有することはできない。なぜなら、ガラス化後に熱処理により結晶を析出させても、残留ガラス質が残っているので、負の熱膨張係数が最大値にならない。
【0027】
アルミナ(Al)は主結晶相の必須成分である。含有量の範囲は30%〜40%が好ましく、30%未満では、主結晶相の量が少なくなるので、所望の負の熱膨張係数値を得ることが困難であり、40%を超えると、核成長のための温度が高くなり、好ましくない他の結晶相が生じる。
【0028】
ジルコニア(ZrO)は、ガラスの核生成剤として作用し、また成長した結晶粒子を微細化して機械的強度を向上させ、物質の化学的耐久性を向上させる役割を果たす。好ましい含有量の範囲は0.5%〜15%であり、0.5%未満では、負の熱膨張係数を大きくすることができず、15%を超えると、焼結温度が高くなり、機械的強度が非常に強くなるので、加工性が悪くなる。
【0029】
二酸化チタン(TiO)は、ジルコニア(ZrO)と同様にガラスの核生成剤として作用する。前記組成における好ましい含有量の範囲は0.5%〜4%であり、0.5%未満では、負の熱膨張係数を大きくすることができず、4%を超えると、溶融点が低くなるので、ガラス化しやすく、負の熱膨張係数値が小さなアルミナチタン酸塩(AlTiO)結晶が析出する。
【0030】
五酸化リン(P)は、ガラスの核生成剤として重要な作用をする。好ましい含有量の範囲は2%〜5%であり、2%未満では、初期核形成温度が高くなるので、焼結温度が上昇し、2%以上では、核形成温度が低くなり、初期核形成の反応性がよくなり、5%を超えると、溶融点が低くなるので、ガラス化しやすくなり、るつぼと反応して所望の特性を得ることができない。
【0031】
酸化マグネシウム(MgO)は、β−ユークリプタイト固溶体及びβ−石英固溶体の構成要素であり、焼結強化及び安定化剤として使用される。好ましい含有量の範囲は2%〜5%である。2%未満では、焼結温度は低くなるが、核成長速度が遅くなるので、熱処理時間が長くなり、5%を超えると、溶融点が低くなるので、ガラス化しやすくなる。
【0032】
フッ化マグネシウム(MgF)は、好ましい含有量の範囲が0%〜5%、好ましくは0.1%〜5%であり、酸化マグネシウム(MgO)と同様の役割を果たす。
【0033】
このような組成物を有する本発明の結晶化ガラスは、次の方法により製造される。
【0034】
図1は、本発明の一実施例による結晶化ガラスの製造方法を示すフローチャートである。
【0035】
図1を参照すると、本発明の一実施例による結晶化ガラスの製造方法は、秤量及び混合する段階S110と、か焼する段階S120と、焼結する段階S130と、徐冷する段階S140とを含む。
【0036】
秤量及び混合する段階S110では、前述した組成物が所定の重量比を有して混合されるように、酸化物、炭酸塩などのガラス原料を秤量してアルミナるつぼに入れる。ここで、重量比の合計は100重量%になる。
【0037】
また、試料の均質な混合のために固相反応法を用いる。固相反応法は化学及び材料工学分野において当該出願前に公知となっており、様々に実施されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0038】
本発明による結晶化ガラスの製造方法の一実施例においては、パウダー状のガラス原料をV−Mixerに投入し、十分に混合するために所定時間回転させ、その後アルミナるつぼによく混合したガラス原料を装入して10℃/min昇温した。
【0039】
一般の結晶化ガラスの製造方法であるゾルゲル法やガラス溶融後の再熱処理法は、工程が複雑であり、焼結温度が高い。特に、残留ガラス質及び第2次相により、非常に大きな負の熱膨張係数を有することは困難であった。
【0040】
しかし、本発明による結晶化ガラスの製造方法は、ガラス原料を混合する段階において固相反応法を用いるので、その製造工程が簡素でありながらも、最終的に残留ガラス質が残らず、最も大きな負の熱膨張係数値を有することが確認された。また、製作工程が非常に簡単であるので、商用化及び大量生産が容易である。
【0041】
か焼する段階S120は、揮発成分の一部又は全部を除去する操作であり、常温(25℃)で10℃/min昇温し、680℃〜1000℃で1時間か焼する。
【0042】
ここで、酸化リチウム(LiO)に代替して炭酸リチウム(LiCO)を使用することもできる。炭酸リチウム(LiCO)は、価格が安価であり、か焼する段階S120を経るとCOがガス化して除去されるので、酸化リチウム(LiO)と同じ効果を有する。
【0043】
また、か焼温度と結晶核生成温度はガラス原料の組成比により異なるが、本発明の一実施例による結晶化ガラスの製造方法においては、前記温度の範囲でか焼と結晶核生成がほぼ同時に行われると言える。よって、本発明においては、か焼する段階S120で結晶核をある程度生成する組成物が反応を起こすので、後続の焼結する段階S130で高速の結晶核生成及び成長を実現することができる。
【0044】
焼結する段階S130は、か焼する段階S120の後に、さらに10℃/min昇温して1100℃〜1350℃で3〜10時間焼結する。ガラス原料の組成により前記焼結温度が異なり、温度が低い場合は、焼結時間を長くすることにより、反応が最大限多く起きるように設定した。
【0045】
一般に、結晶化ガラスはガラス原料の組成比に応じて核生成及び成長し、通常の焼結温度の範囲で最大の結晶成長を実現する。しかし、LAS系結晶化ガラスは焼結温度の範囲が狭く、焼結温度がガラスの溶融点に近接しているので、焼結が困難である。
【0046】
しかし、本発明によるLAS系統結晶化ガラスの製造方法においては、ガラス原料の組成比を変えて最も大きな負の熱膨張係数を有する最適な焼結温度の範囲を求める。すなわち、前記最適な焼結温度でガラス原料が局部的にガラス化することにより、その内部に速く結晶核が成長し、最も大きな負の熱膨張係数を有することを確認した。
【0047】
徐冷する段階S140においては、急冷時に発生し得るるつぼと発熱体間の熱衝撃及び試料に生じる応力を防止するために、常温(25℃)まで徐々に(たとえば、2時間で)冷却する。
【0048】
次に、本発明の負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスを実施例に基づいて詳細に説明する。また、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
表1には本発明による結晶化ガラス(実施例1〜実施例6)の組成物とその重量比を示し、表2には比較対象となる結晶化ガラス(比較例1〜比較例4)の組成物とその重量比を示す。また、各結晶化ガラスの試料の熱膨張係数を示す。
【0050】
表1と表2に示す実施例と比較例の結晶化ガラスの製造方法は次の通りである。
【0051】
まず、前記組成物が表1と表2の重量比となるように、酸化物、炭酸塩などのガラス原料を秤量してアルミナるつぼに入れた。ここで、固相反応法により、原料秤量、粉砕、ミキシング及び常温からの昇温を行った。
【0052】
続いて、反応性ガスを除去するために、アルミナるつぼを用いて1000℃で1時間か焼した。前記温度は、か焼温度であると同時に、結晶核を生成させる温度である。よって、本過程はか焼の意味が強いが、約1時間保持してか焼と同時に結晶核を生成させることにより、全工程を短縮する効果を有する。
【0053】
その後、さらに10℃/min昇温して1100℃〜1350℃を保持する。実施例1は1350℃を6時間保持し、実施例2はジルコニア(ZrO)の量が多いので3時間保持するが、ジルコニアの量が最大19%のときに10時間熱処理を行うと、焼結体が強すぎて粉砕が困難になり、特性も低下するので、15%に限定した。
【0054】
実施例3は1250℃を7時間保持し、実施例4は1150℃を10時間保持し、実施例5は1100℃を10時間保持した。実施例6は1300℃を5時間保持した。比較例も前記焼結温度の範囲内で実験を行った。
【0055】
本発明による負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法においては、それぞれのガラス原料、すなわち組成物の成分比に応じて最も大きな負の熱膨張係数を得るための最適な焼結温度を求めることができた。しかし、比較例の組成物成分比では、焼結温度、焼結時間を変えても、大きな負の熱膨張係数が得られないことを確認した。
【0056】
本発明による実施例においては、組成物の成分比により最適な焼結温度が異なり、最適な焼結温度より焼結温度が低い場合は、焼結時間を長くすることにより、最も大きな負の熱膨張係数を得ることができた。
【0057】
最後に、高温から常温(25℃)に2時間徐冷し、その後直径5mm、長さ10mmの試料を製作し、TA INSTRUMENTS社製TMA Q400熱分析装置を用いて温度範囲50℃〜400℃における熱膨張係数の平均値を測定及び計算した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表1及び表2を参照すると、本発明の実施例1〜実施例6においては、平均熱膨張係数が約−40×10−7/℃〜−110×10−7/℃であり、組成物の含有量の範囲を変えた比較例1〜比較例4に比べて負の熱膨張係数が非常に大きいことが分かる。
【0061】
すなわち、比較例1は二酸化チタン(TiO)の含有量の範囲を超えて含有させて実験を行い、比較例2はジルコニア(ZrO)の含有量の範囲を超えて含有させて実験を行った。この場合、二酸化チタン(TiO)とジルコニア(ZrO)の量が多くなるにつれて融融温度が低くなり、ガラス化しやすくなる。その結果、製造された結晶化ガラスは残留ガラス質が多く、結晶核が十分に成長しておらず、小さな負の熱膨張係数又は正の熱膨張係数を有することが分かった。
【0062】
また、各比較例において、本発明によるシリカ(SiO)の含有量の範囲を超えて含有させて実験を行ったが、やはり小さな負の熱膨張係数又は正の熱膨張係数を有することが分かった。
【0063】
その他、LiO又はAlが本発明による含有量の範囲を超えた場合、例えばLiOの量が多くなると、残留ガラス質が多く、負の熱膨張係数を有することができない。これは、一般にLASガラス組成によれば、LiOの量が多くなると、溶融温度が低くなるからである。
【0064】
LiOの量が減り、Alの量が多くなると、焼結温度が高くなるので、焼結温度と焼結時間が長くなり、AlとSiOが互いに反応することにより、負の熱膨張係数が小さいゼオライト結晶が多く生成され、負の熱膨張係数の大きさが減少する傾向を示す。
【0065】
文献によれば、ゼオライト結晶は負の熱膨張係数が約−20×10−7/℃であるため、Alの含有量が多くなるほど、主結晶相であるユークリプタイトの量が減り、ゼオライトの量が多くなる傾向があるので、負の熱膨張係数の値が減少することを確認することができた。
【0066】
以上、添付図面を参照して本発明による技術思想を説明したが、これらは本発明の好ましい実施例を説明したものにすぎず、本発明を限定するものではない。また、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想の範疇を逸脱しない範囲内で様々な変形及び変更が可能であることは明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化ガラスの製造方法において、
(a)固相反応法を用いて組成物を秤量及び混合する段階と、
(b)混合した組成物をか焼する段階と、
(c)か焼した組成物を焼結する段階と、
(d)焼結した組成物を常温で炉冷する段階とを含み、
前記組成物は、
シリカ(SiO)38〜64重量%と、
アルミナ(Al)30〜40重量%と、
酸化リチウム(LiO)5〜12重量%とを基本組成とし、
前記基本組成にジルコニア(ZrO)0.5〜15重量%、二酸化チタン(TiO)0.5〜6.5重量%、五酸化リン(P)0.5〜4重量%、及びフッ化マグネシウム(MgF)0.1〜5重量%から選択された1つ又はそれ以上の成分をさらに含むことを特徴とする負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法。
【請求項2】
結晶化ガラスの製造方法において、
(a)固相反応法を用いて組成物を秤量及び混合する段階と、
(b)混合した組成物をか焼する段階と、
(c)か焼した組成物を焼結する段階と、
(d)焼結した組成物を常温で炉冷する段階とを含み、
前記組成物は、
シリカ(SiO)38〜64重量%と、
アルミナ(Al)30〜40重量%と、
炭酸リチウム(LiCO)5〜12重量%とを基本組成とし、
前記基本組成にジルコニア(ZrO)0.5〜15重量%、二酸化チタン(TiO)0.5〜6.5重量%、五酸化リン(P)0.5〜4重量%、及びフッ化マグネシウム(MgF)0.1〜5重量%から選択された1つ又はそれ以上の成分をさらに含むことを特徴とする負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記(b)段階において、
か焼温度が680℃〜1000℃であり、か焼時間が1時間であることを特徴とする請求項1に記載の負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記(c)段階において、
焼結温度が1100℃〜1350℃であり、焼結時間が3〜10時間であることを特徴とする請求項1に記載の負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記(d)段階が、
25℃まで2時間行われることを特徴とする請求項1に記載の負の熱膨張係数を有する結晶化ガラスの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法により得られた結晶化ガラスであって、
主結晶相がβ−ユークリプタイト、β−スポジュメン、β−石英、バージライト、及びペタライトから選択された1つ又はそれ以上からなり、
前記主結晶相の平均結晶粒子径が10μm未満であり、25℃〜400℃の温度範囲における平均熱膨張係数が−40×10−7/℃〜−110×10−7/℃であることを特徴とする負の熱膨張係数を有する結晶化ガラス。
【請求項7】
前記結晶化ガラスが、
温度補償部材として使用されることを特徴とする請求項6に記載の負の熱膨張係数を有する結晶化ガラス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−56835(P2012−56835A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190791(P2011−190791)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511213535)ジョンクワン カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】