説明

負圧による組織治療システム

【課題】時間の経過とともに、圧力を変化させることにより、細胞成長の活性化を促進する手段を備えた負圧による組織治療システムを提供する。
【解決手段】発泡体パッド11と、この発泡体パッド11を被覆する被覆材料13と、一端部16aが発泡体パッド11に連通する導管16と、この導管16の他端部16bに連通する小型容器18と、この小型容器18に接続されるポンプ14と、このポンプ14と上記小型容器18との間に配置された少なくとも一つのフィルター20,22,23と、第1の減圧と第2の減圧との間の所定の圧力範囲で圧力を変更することによって、ポンプ14による印加圧力を調整し、かつその印加圧力と変動性目標圧力とを比較する管理手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね組織治癒システムに関するものである。より詳細に述べれば、本発明は開放創の治癒を援助する負圧による組織治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
真空による開口創治療は、最近、テキサス州サン・アントニオのキネティック・コンセプト社によって、登録商標V.A.Cの製品ラインで市販化されている。上記真空による開口創治療は、いずれもザミエロウスキー発明の特許文献1とその継続出願、一部継続出願である特許文献2〜4に開示されており、ここで参照することにより、その開示内容は本願に組み込まれる。また、真空による開口創治療法をさらに改良、修正したものが、ザミエロウスキー発明の特許文献5、アルジャンタおよびそのほか発明の特許文献6と7に開示されており、ここで参照することにより、その開示内容は本願に組み込まれる。また、さらに改良されたものがハントおよびそのほか発明の特許文献8に開示されている。
【0003】
実際に、『真空補助閉鎖(Vacuum Assisted Closure)』(またはV.A.C.(登録商標))治療の名称で譲受人もしくはその親会社によって市販されている創傷への負圧印加は、一般的に、創傷部における機械的収縮を含むと同時に、余分な体液の排出を含む。この方法において、V.A.C.(登録商標)治療は、身体の自然炎症過程を増進し、知られている多くの内因性の副作用たとえば、血流量増大による浮腫の生成等を軽減し、適正な静脈還流のために必要な血管構築を不要にする。その結果、V.A.C.(登録商標)治療は創傷閉鎖の促進に非常に効を奏し、以前は多分に治療不可能と考えられていた多くの創傷を治療するのに成功してきた。
【0004】
上記創傷部に負圧を印加する振動数も、時間の経過に伴い圧力を変動させる振動数も、創傷部の治癒速度に直接的な影響を与える。現行の真空補助治療装置によって提供されていない、時間の経過に伴って圧力を変動させることは、創傷部の治癒速度を速めるのに極めて重要と考えられている。同様に、創傷部の治療を受けている患者が、通常の生活に速やかに復帰することも、創傷部の治癒速度を向上させる。なぜなら、身体活動は多くの場合血行をよくするので、創傷部における血流の改善をもたらす。通常の生活に戻ることを唯一阻害するのは、バッテリーの寿命が限られていることで、現在の真空補助創傷治療システムを駆動させるのに必要な電力が原因である。さらに、創傷が感染していないことを確かめるために、創傷部位の頻繁な検査が必要とされる。しかし、通常の生活への早期復帰が、真空補助治療期間中に、小型容器から創傷部滲出体液の不慮の漏出があったり、ポンプ機構へ創傷部滲出体液の侵入があったりするのを防ぐための予防措置を妨げるものであってはならない。
【0005】
従来の振動数固定式振動ポンプの使用に関しては、さらに制限が加わる。その制限とは、創傷部位において望ましい負圧を維持するために必要なポンプの大きさに起因する制限や、振動ポンプを作動させるのに必要な電力のために、バッテリーの寿命がさらに短くなることである。従来公知の振動ポンプは、一般的には、限定的な動作条件のために考案されたものである。たとえば、固定振動数における低圧流速を最大化することである。考案された動作条件の下で、上記ポンプの共振振動数を変化させるために、一般的に、さまざまな部品の質量や剛性は変更される。上記ポンプの圧力が増すと、上記システムの剛性は、上記振動ポンプの隔壁を横切る背圧によって増す。上記ポンプの共振振動数が変動すると、振動数固定式駆動では、最適振動数でポンプを駆動しない。その結果、流速が急速に落ち、高圧において空気を駆動するポンプの能力は制限される。従って、振動数固定式振動ポンプを使用した場合に、より高圧で増加した流速を提供するためには、低圧における流速を犠牲にするか、非常に大きなポンプにするかのどちらかが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許番号4,969,880(1990年11月13日発行)
【特許文献2】米国特許番号5,100,396(1992年3月31日発行)
【特許文献3】米国特許番号5,261,893(1993年11月16日発行)
【特許文献4】米国特許番号5,527,293(1996年6月18日発行)
【特許文献5】米国特許番号6,071,267(2000年6月6日発行)
【特許文献6】米国特許番号5,636,643(1997年6月10日発行)
【特許文献7】米国特許番号5,645,081(1997年7月8日発行)
【特許文献8】米国特許番号6,142,982(1998年5月13日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の理由により、時間の経過と共に、自動的に圧力を変化できる、真空補助創傷治療システムが必要とされる。さらに、滲出体液の漏出とポンプの汚染のリスクを軽減し、かつ患者がもっと動き安い、より効果的な真空補助創傷システムが必要とされる。
【0008】
したがって、本願の目的は、時間の経過とともに、圧力を変化させることにより、細胞成長の活性化を促進する手段を備えた負圧による組織治療システムを提供することである。
【0009】
本願の別の目的は、交流電源機構なしで、長時間の操業が可能なシステムを提供することである。
【0010】
本願のさらに別の目的は、小型容器を取り外したり、創傷部位を害することなく、創傷部位から滲出体液を取り出す衛生的かつ経済的なサンプリング手段を提供することである。
【0011】
そのうえ、本願のさらに別の目的は、物に固定でき、操作上の便利な配置が可能で、装置への障害の可能性を低減できる負圧による組織治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を踏まえて、本発明は、通常、創傷部位に実質的に挿入する多孔性パッドと上記創傷部位における上記パッドの気密密閉のための創傷用被覆材料からなる。上記創傷部位に負圧を与えるために、導管の一端部が被覆材料と接続している。上記導管には体液サンプリングポートが設けられており、上記創傷部位から上記導管を通して創傷体液を取り出すサンプリングが行える。負圧源は上記導管の他端部と連通している。収集用小型容器は、取り外し可能に上記導管に接続されており、負圧を印加している間、上記創傷部位から取り出される体液を収集する。第一フィルターは上記小型容器内に組み込まれており、第二フィルターは上記小型容器と上記負圧源との間に位置する。上記負圧源は、交流または直流が供給される電動ポンプなので、電源管理装置に直流が供給されている場合、バッテリーの寿命を最大限にするように、上記装置とそれに付随した電源管理ルールが組み込まれている。締め付け機構は、上記システムを、たとえば、ベッドの手すりや静脈注射液の容器をぶらさげる支柱のような静止している物体に固定するのに便利である。
【発明の効果】
【0013】
上記パッドは、発泡体からなり、その発泡体は、組織細胞の成長を促進すべき領域と接しても望ましくない癒着を避けることができるように、比較的開放部の少ないオープンセルで、排液と負圧治療が損なわれないで続けられるのに充分な数の開放部を有する。上記パッドは、公知技術同様、体液排出を促進する真空源(負圧源)と液体連通するよう配置される。本願の多孔性パッドはポリビニルアルコール発泡体からなってもよい。液体連通は、国際出願WO99/13793(発明の名称『創傷治療のための外科的被覆材料とサクションヘッド』)に開示されているように、導管を被覆材料に接続することにより確立される。上記開示内容はここに組み込まれる。
【0014】
上記パッドを配置して、気密シールが創傷部位に形成され、真空漏れを防ぐ。そのようなシールは、上記創傷部位に被覆材料を配置することにより可能となるが、上記被覆材料は創傷部位周囲の健康な皮膚に貼付され、創傷部位そのものを覆って気密シールを維持する。
【0015】
上記導管または管は上記発泡体パッドと液体連通するよう配置され、その端部は体液排液小型容器と連通し、上記小型容器は真空源と液体連通している。継続的または断続的な負圧治療が、従来技術に記載のように行われる。さらに、負圧は、組織細胞の成長をさらに促進するように、時間の経過とともに変更され、そうすることにより、治癒過程を短縮化できる。創傷部位に印加する負圧は、さまざまな目標圧力に合わせて調整される。上記目標圧力は、最大目標圧力と最小目標圧力との間を行ったり来たりする。
【0016】
本発明にしたがって使用される変動性排気ポンプの流速は、上記ポンプの駆動振動数を変化させることにより、圧力範囲内で最大限にされる。最適駆動振動数は、圧力の最適駆動振動数を決定するために、上記ポンプを通る圧力を定期的もしくは継続的にモニターするシステムによって、継続的に調整される。これにより、ポンプ性能は、ポンプの大きさや重量を増加させなくとも、従来技術で使用されている変動性排気ポンプ以上に改善される。同様に、一般的な変動性排気ポンプの性能が、より小さなポンプでも達成でき、患者にとって使いやすく運びやすいように、システム全体の大きさと重量を低減できる。固定排気ポンプのような別の負圧源は、容積移送式ポンプと称されることもあり、これもまた使用できる。
【0017】
上記電源管理システムは、本願において直流下で電力を供給する場合、バッテリー寿命を最大限にするために使用される。上記電源管理システムは、所定の時間をおいて、ディスプレー装置のバックライトまたはタッチスクリーンタイプの液晶表示装置(LCD)コントロールパネルを停止することからなる。上記目標電力設定が電気モータを駆動させるのに、実際に充分大きくなるまで、上記電源管理システムにより電力が上記モータに届かないようにしていると、バッテリーの寿命はさらに延びる。そのような場合において、上記モータは、従来公知の電動ポンプを駆動させて、負圧を供給するのに使用される。
【0018】
上記の内容は、本願のより適切な目的の例を概説している。これらの目的は、本願のより重要な特徴と用途を単に説明したと考えられるべきである。記述された発明を別の方法に適用したり、後述のように本発明を変更することにより、他の多くの有益な結果が達成できる。したがって、他の目的と本願のより完璧な理解は、好ましい態様を含む、以下に記載の本発明の詳細な記述によってなされるだろう。
【0019】
本願の上述およびそのほかの特徴と利点は、いくつかの好ましい態様とその図面を参照することにより、以下に説明される。ただし、それらは本願を制限するものではない。図面において、同様の部材には同じ参照符号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に使用される組織治療システムの略ブロック図である。
【図2】(a)は本発明に使用される体液サンプリングポートの透視図であり、(b)は本発明に使用される体液サンプリングポートの別の態様の透視図である。
【図3】(a)は本発明に使用されるポンプハウジングの背部の透視図であり、(b)は本発明に使用されるポンプハウジングの正面の透視図である。
【図4】(a)は本発明に使用される電源管理システムの実行における好ましい実施態様を表したフローチャートであり、(b)は本発明に使用される電源管理システムの実行における好ましい実施態様を表したフローチャートである。
【図5】本発明に使用されるパルス療法の実行における好ましい実施態様を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
当業者は、特に本願図面を参照することにより、多くの別の態様を容易に理解するであろうが、この詳細記述が本願の望ましい態様の具体例となる。ただし、本願の範囲は、請求項によってのみ制限される。
【0022】
本願は、組織の治療を活性化する負圧による組織治療システムである。
【0023】
図1では、本願によって動作するシステムの主な部品が示されている。本発明品10は、創傷部位12に実質的に挿入される発泡体パッド11と創傷部位12において発泡体パッド11の密閉のための創傷用被覆材料13とを含む。上記発泡体パッド11はポリビニルアルコール(PVA)オープンセルポリマー材か、もしくは、創傷治療を促進するのに充分な大きさの孔を備えた類似の材料からなる。孔密度は、長さ1インチに対して38を超える孔が好ましい。長さ1インチに対して40〜50の孔がさらに望ましく、長さ1インチに対して45が最も望ましい。そのような孔密度は、約400ミクロンの孔径である。
【0024】
クリスタルバイオレット、メチレンブルーや従来公知の類似の薬剤の指示薬を添加すると、細菌性の物質が存在する場合に、上記発泡体11が変色する。そのような場合、ユーザーもしくは医療機関は簡単にかつ直ちに、上記創傷部位12に感染が発生しているかどうかを確認できる。上記指示薬は上記導管16上の上記創傷部位12と上記小型容器18との間に配置することもできる。そのような配置の場合(図示せず)、上記創傷部位12における細菌性の汚染が簡単にかつ直ちに確認でき、上記創傷部位を害することもない。なぜなら、負圧を印加している間に、細菌性感染をした創傷部位滲出体液を創傷部位12から取り出し、導管16を通して取り出され、瞬時に変色するからである。
【0025】
また、上記発泡体パッド11は、細菌発育阻止剤で被覆されていてもよい。そのような薬剤を添加することにより、上記創傷部位12に存在する細菌の密度を制限もしくは低減できる。上記薬剤は、創傷部位に挿入する前、たとえば、殺菌パッケージング過程において、上記発泡体11に被覆もしくは付着させればよい。または、上記薬剤は、上記発泡体パッド11を上記創傷部位12に挿入後、その発泡体パッド11に注入してもよい。
【0026】
上記発泡体パッド11を上記創傷部位12へ挿入し、創傷用被覆材料13で密閉した後、その発泡体パッド11は体液排出と創傷治療を促進するために、従来技術により真空源(負圧源)14と液体連通するよう配備される。上記真空源14は携帯用電動ポンプか、もしくは医療機関で一般的に使用されている壁取付の吸引器でよい。
【0027】
本願の好ましい実施態様によれば、上記発泡体パッド11、創傷用被覆材料13および真空源14は、以下詳述される変更点を除いて、従来公知の方法で配備されればよい。
【0028】
上記発泡体パッド11は、吸引中、創傷体液を効果的に浸透させることができる、細かく網状にされたオープンセルのポリウレタンもしくはポリエーテル発泡体からなることが好ましい。上記パッド11は、プラスチックもしくは同様の材料からなる導管16を介して、小型容器18と真空源14と液体連通するように配置される。上記真空源14が創傷滲出体液で汚染されないように、第一疎水性膜フィルター20が、上記小型容器18と上記真空源14との間に配置される。上記第一フィルター20は、上記小型容器18の注入センサーとしても機能する。液体が上記第一フィルター20に接触すると、信号が上記真空源14に送られ、それを閉鎖する。上記創傷被覆材料13は、上記創傷部位12を覆って密閉用途の為に少なくとも周辺部が感圧接着剤で覆われたエラストマー材からなるのが好ましく、真空密閉が上記創傷部位12を覆って維持される。上記導管16は、上記被覆材料13に付着できる接続手段17により上記発泡体11と液体連通するように配置されてもよい。
【0029】
本願の望ましい方法によれば、第二疎水性フィルター22は上記第一フィルター20と上記真空源14との間に配置される。上記第一フィルター20が上記小型容器18の注入センサーとしても使用される場合、上記第二フィルター22を追加すると便利である。そのような場合、上記第一フィルター20は注入センサーとして機能し、上記第二フィルター22はさらに上記真空源14への創傷滲出体液による汚染を防ぐ。このように、機能を安全装置と管理(制限)装置とに分離することにより、各装置を独立して設計することができる。臭気フィルター23は、木炭フィルターであり、上記第一フィルター20と上記第二フィルター22との間に配置され、上記創傷部位における悪臭のひどい気体の生成による影響を弱める。別の態様(図示せず)において、臭気フィルター23は上記第二疎水性フィルター22と上記真空源14との間に配置される。さらに本システムから悪臭のひどい気体が漏れるのを低減するために、第二臭気フィルター15を上記真空源14と外部への排気ポート25との間に配置してもよい。さらに別の態様では、第一および第二フィルター20,22を上記小型容器18と一体化して組み込んで、上記フィルター20,22によって捕捉された汚染物質による本システムの汚染を低減するために、上記フィルター20,22が、通常の使用において汚染されやすい少なくとも一方を自動的に処分することを確実にする。
【0030】
また、上記導管16の再度密封可能アクセスポート24を備えることにより、体液サンプリング手段も活用される。上記ポート24は上記導管16の一端部16aと他端部16bとの間に配置される。上記ポート24は、図2(a)と図2(b)に詳述されているが、上記創傷部位12から吸引された体液をサンプリングするのに使用される。上記ポート24は、上記導管16から突出した付属物として示されているが、埋め込み型ポート(図示せず)でも、同等の目的を果たす。上記ポート24は、皮下注射針等により穴をあけられても再度密封可能な膜26を含み、密封が維持される。穴を開けても密封を維持できる、従来公知のさまざまなゴム状材質が利用できる。
【0031】
本願により、創傷体液をサンプリングする方法は、皮下注射針や注射器のような液体サンプラー28で、上記膜26を貫通することからなる。上記サンプラー28は、上記導管16の内腔30内を流れる創傷体液と接触するまで、上記膜26を通して上記ポート24に挿入される。図2(b)に示され、また、ハントそのほかの発明による米国特許番号6,142,982(1998年5月13日発行)に記載されているように(この参照により、全文を開示したと同様に開示内容が本発明に組み込まれる)、上記内腔30は1つ以上の外側内腔31によって囲まれている。上記外側内腔31は、上記創傷部位12における圧力変動を感知する圧力検出導管として機能する。また、別の態様では(図示せず)、上記外側内腔(1つもしくは複数)31は、負圧導管として機能し、上記内側内腔30は圧力検出導管として機能する。本願において、体液サンプリングポート24は、上記内側内腔30とのみ連通し、上記外側内腔31によって行われる圧力検出を妨害しないようになっている。上記外側内腔31が負圧導管として機能する、別の態様の場合には(図示せず)、上記体液サンプリングポート24は、上記外側内腔31と連通する。
【0032】
図3(a)と図3(b)に示されているように、上記真空源14は、ハウジング32内に収納された携帯ポンプからなる。ユーザーが簡単に上記ハウジング32を持ち運びできるように、ハンドル33が上記ハウジング32に形成もしくは取りつけられている。
【0033】
本願の好ましい態様によれば、上記ハウジング32を静脈注射用の支柱のような静止している物体に固定する手段が、クランプ34の形状で備わっている。上記クランプ34は、従来公知のGクランプでよく、取り外し可能で、使用しないときは、上記ハウジング32内の凹部36内の格納位置に収められる。ヒンジ機構38が備えられ、上記クランプ34が上記ハウジング32の格納位置から外側に90度まで伸びるようになっている。別の態様では(図示せず)、上記クランプ34は上記格納位置から180度まで開く。上記ヒンジ機構38は、上記クランプ34が完全に伸ばされるとその位置で固定され、上記ハウジング32が上記クランプ34によって吊り下げられる。ねじつきボルトのような固定装置40は、上記クランプ34の開口部42を貫通し、上記クランプ34がさまざまな厚みの静止しているさまざまな物体に調整可能に固定できる。
【0034】
また、上記固定装置40が、ばねで作動するボルトやピンからなる場合には、静脈注射用の支柱のような、さまざまな横断面の厚みを有したさまざまな静止している物体に自動的に調整可能である。
【0035】
本発明が電源として直流を使用した場合、バッテリーの寿命を最大限にするために、上記真空源14への電力供給を管理することも考慮している。好ましい態様において、図4(a)のフローチャートに示されるように、モータ制御(44)が、実際の圧力が目標圧力より小さいか同等かを決定する(46)。もし、上記の実際の圧力が上記目標圧力より小さい場合、上記目標圧力に達するのに要する一時的なモータ駆動電力を計算する(48)。もし、上記目標圧力に達するのに要する上記一時的なモータ駆動電力が、失速動力より大きいか同等であれば(49)、上記一時的なモータ駆動電力が実際に上記モータに加えられる(50)。もし、上記実際の圧力が上記目標圧力より大きければ、上記一時的なモータ駆動電力が下げられて、追加の電力が上記失速動力を克服するのに必要かどうか(52)が決定される。上記一時的な電力が上記失速動力を克服するのに不充分だと決定されると、上記一時的な電力は上記モータに供給されない(54)。もし、上記一時的な電力が上記失速動力を克服するのに充分だと決定されると、上記一時的な電力は上記モータに供給される(50)。上記モータ制御(44)は、実際の圧力が所定の目標圧力に対して継続的に計測されるように、閉ループシステムとして機能する。そのようなシステムの利点は、V.A.C.療法に供給される特定の上記目標圧力を維持する必要がないとき、上記モータに電力が供給されるのを防ぐ。したがって、不要なときに上記モータに電力を不必要に供給しないので、バッテリーの寿命が延びる。
【0036】
コンピュータプロセッサにおける総合ソフトウェアプログラムのような、自動的に本発明10の画像表示19のバックライト(図3(b)に図示)を停止状態にする手段により、図4(b)のフローチャートに示されるように、バッテリーの寿命はさらに延びる。所望の目標圧力や治療期間のような情報をユーザーが入力すること(55)により、図3(b)に図示された上記画像表示19のバックライトを起動させる(57)。ユーザーインプット(55)は、従来公知のタッチまたは感圧で起動するスクリーンの場合、単に画像表示19に触れるだけでもよい。警報装置の起動(55)によっても、画像表示19のバックライトを起動する(57)。警報は、上記創傷部位12において、空気漏れが検出された場合に自動的に起動される。そのような漏出は、上記創傷部位12において検出される圧力の急降下もしくは低減によって表示される。事前に設定した時間が経過したかどうか(58)について決定がなされるまで、バックライトは起動したままである。時間が経過していないと、バックライトは起動したままである(57)。時間が経過すると、ただしユーザーが追加情報をインプットした場合にはその時間で、もしくは警報がなって(55)、バックライトは自動的に消える(59)。
【0037】
図1に戻って、本願に使用される上記ポンプ14が振動ポンプである場合、可変振動数ポンプ駆動システム80という手段によりバッテリー寿命はさらに延びる。上記ポンプ駆動システム80は、圧力センサー82、管理システム84および可変振動数駆動回路86からなる。好ましい態様では、上記圧力センサー82が上記ポンプを通る圧力を計測し、上記管理システム84へ中継する。上記管理システム84は上記計測された圧力を考慮し、上記ポンプ14の最適駆動振動数を決定し、上記圧力センサー82に中継する。上記ポンプ14の最適駆動振動数が、繰り返しもしくは継続的に上記管理システム84によって決定される。上記管理システム84は可変振動数駆動回路86を調整し、上記管理システム84によって決定された最適振動数で上記ポンプを駆動する。
【0038】
上記可変振動数ポンプ駆動システム80は、上記ポンプ14の圧力を最大限にすることができる。サンプル振動ポンプのテストにおいて、達成された最大限の圧力は、駆動振動数をたった30%変化させることにより、2倍にすることができた。さらに、上記システム80は広がった範囲の振動数においても流速を最大限にすることができる。その結果、上記ポンプ14の性能は、上記ポンプの大きさや重量を増やすことなく、現存の固定振動数駆動システムにおいて、著しく改善される。結果として、バッテリーの寿命がさらに延びるため、固定電源に拘束されることもなく、より自由に動くことができる。または、従来の固定振動数駆動システムのポンプと同等の性能レベルを、より小さなポンプで達成できる。その結果、電源やポンプの携帯性が改善されることにより、患者の移動性が改善される。
【0039】
また、上記好ましい態様では、図5のフローチャートに図示されているように、時間の経過とともに圧力を変動させることにより、細胞成長の活性化を促進する。そのような圧力の変動は、上記真空源もしくはポンプの機能を管理するコンピュータ処理装置と連動して使用されるソフトウェアプログラムの一連のアルゴリズムを通して達成される。上記プログラムは、医療機関のようなユーザーが上記ポンプの振動モードを起動させる時(60)、初期化される。次に、上記ユーザーは、目標圧力最大値と目標圧力最小値を設定する(62)。次に、上記ソフトウェアが上記圧力指示を「増加」へと初期化する(63)。次に、上記ソフトウェアは、ソフトウェア管理ループに入る。この管理ループにおいて、上記ソフトウェアはまず上記圧力が増加するかどうか(64)を決定する。
【0040】
もし、上記実際の圧力がテスト(64)で増加するなら、次になされる決定は、変動性目標圧力が上記最大目標圧力よりまだ小さいかどうか(70)である。もし、上記変動性目標圧力が上記最大目標圧力よりまだ小さいなら、上記ソフトウェアは、次に上記実際の圧力が上記上昇目標圧力と等しい(近づいている)かどうかを決定する(66)。もし上記実際の圧力が上記上昇目標圧力を達成したなら、上記ソフトウェアは1段階、上記変動性目標圧力を増加させる(68)。そうでなければ、上記実際の圧力が上記上昇目標圧力に等しくなるまで、そうすることを差し控える。もし、上記変動性目標圧力が上記ブロック(70)のテストにおいて、上記最大目標圧力に達したなら、上記ソフトウェアは上記圧力指示を「減少」に設定し(69)、上記変動性目標圧力はその振動サイクルの下降部分へと移行し始める。
【0041】
上記段階は、mmHgもしくは圧力測定の他の一般的な単位によって測定される。上記段階の大きさは、上記ユーザーの好みにもよるが、好ましくは、約1〜10mmHgの範囲である。
【0042】
上記実際の圧力がテスト(64)において減少なら、次になされる決定は、上記変動性目標圧力が上記最小目標圧力よりまだ大きいかどうか(74)である。上記変動性目標圧力が上記最小目標圧力よりまだ大きいなら、上記ソフトウェアが次に決定するのは、上記実際の圧力が上記下降目標圧力に達した(近づいている)かどうか(76)である。もし、上記実際の圧力が、上記下降目標圧力に等しいなら、上記ソフトウェアは上記変動性目標圧力を1段階減少させる(72)。そうでなければ、上記実際の圧力が上記下降目標圧力に等しくなるまで、そうすることを差し控える。もし、上記変動性目標圧力が上記ブロック(74)のテストにおいて上記最小目標圧力に達したなら、上記ソフトウェアは上記圧力指示を「増加」に設定し(73)、上記変動性圧力目標をその振動サイクルの上昇部分へと移行し始める。この変動性過程は、上記ユーザーが振動モードをキャンセルするまで継続する。
【0043】
本発明は、ここで特定の好ましい態様に関して記述されてきたが、これらの態様は例としてのみ提示されたのであって、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、本発明の請求項にしたがってのみ確認されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の負圧による組織治療システムは、創傷部位から創傷部位滲出体液を取り出し、細胞成長の活性化を促進する治療装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
11 発泡体パッド
13 被覆材料
14 ポンプ
16 導管
16a 一端部
16b 他端部
18 小型容器
20,22,23 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性パッド(11)と、この多孔性パッド(11)を被覆する被覆材料(13)と、上記多孔性パッド(11)に連通する遠位端(16a)を有する導管(16)と、この導管(16)の近位端(16b)に連通する小型容器(18)と、上記多孔性パッド(11)を介して組織に負圧を印加するように設計されたポンプ(14)と、このポンプ(14)と上記小型容器(18)との間に配置された少なくとも一つのフィルター(20,22,23)と、第1の減圧と第2の減圧との間の所定の圧力範囲で圧力を変更することによって,ポンプ(14)による印加圧力を調整し,かつその印加圧力と変動性目標圧力とを比較する管理手段とからなり、上記管理手段が最小目標圧力と最大目標圧力との間の変動性目標圧力を変動させることを特徴とする負圧による組織治療システム。
【請求項2】
多孔性パッド(11)と、この多孔性パッド(11)を被覆する被覆材料(13)と、上記多孔性パッド(11)に連通する遠位端(16a)を有する導管(16)と、この導管(16)の近位端(16b)に連通する小型容器(18)と、上記多孔性パッド(11)を介して組織に負圧を印加するように設計されたポンプ(14)と、このポンプ(14)と上記小型容器(18)との間に配置された少なくとも一つのフィルター(20,22,23)と、第1の減圧と第2の減圧との間の所定の圧力範囲で圧力を変更することによって,ポンプ(14)による印加圧力を調整し,かつその印加圧力と変動性目標圧力とを比較する管理手段とからなり、上記管理手段が変動性目標圧力と、最小目標圧力と最大目標圧力のうち少なくとも一方とを比較することを特徴とする負圧による組織治療システム。
【請求項3】
多孔性パッド(11)と、この多孔性パッド(11)を被覆する被覆材料(13)と、上記多孔性パッド(11)に連通する遠位端(16a)を有する導管(16)と、この導管(16)の近位端(16b)に連通する小型容器(18)と、上記多孔性パッド(11)を介して組織に負圧を印加するように設計されたポンプ(14)と、このポンプ(14)と上記小型容器(18)との間に配置された少なくとも一つのフィルター(20,22,23)と、第1の減圧と第2の減圧との間の所定の圧力範囲で圧力を変更することによって,ポンプ(14)による印加圧力を調整し,かつその印加圧力と変動性目標圧力とを比較する管理手段とからなり、上記管理手段が前記印加圧力を変動性目標圧力に向けて調整することを特徴とする負圧による組織治療システム。
【請求項4】
多孔性パッド(11)と、この多孔性パッド(11)を被覆する被覆材料(13)と、上記多孔性パッド(11)に連通する遠位端(16a)を有する導管(16)と、この導管(16)の近位端(16b)に連通する小型容器(18)と、上記多孔性パッド(11)を介して組織に負圧を印加するように設計されたポンプ(14)と、このポンプ(14)と上記小型容器(18)との間に配置された少なくとも一つのフィルター(20,22,23)と、第1の減圧と第2の減圧との間の所定の圧力範囲で圧力を変更することによって,ポンプ(14)による印加圧力を調整し,かつその印加圧力と変動性目標圧力とを比較する管理手段とからなり、上記変動性目標圧力が最小目標圧力と最大目標圧力のうち少なくとも一方であることを特徴とする負圧による組織治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−31089(P2011−31089A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258432(P2010−258432)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2008−320110(P2008−320110)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(502408034)ケーシーアイ ライセンシング インク (8)
【Fターム(参考)】