説明

負極合材およびそれを用いたリチウム二次電池

【課題】本発明は、負極活物質が十分に分散され、厚みや密度のばらつきが少ない電極を作成することが出来る負極合材、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂と、負極活物質とを含む負極合材、および前記負極合材を使用して形成されるリチウム二次電池。
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂の存在下、負極活物質と、導電助剤としての炭素材料とを共分散することを特徴とする、負極合材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質が十分に分散され、厚みや密度のばらつきが少ない電極を作成することが出来る負極合材、その製造方法、およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。また、自動車搭載用などの大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池の実現が望まれている。
【0003】
そのような要求に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
【0004】
一般的に、負極活物質としては、黒鉛等の炭素系材料系、アンチモン系、スズ系、シリコン系等の合金材料系、チタン酸リチウム等の金属複合酸化物系等が用いられている。これら負極活物質の分散が不十分であると、電極シート上の粗大な凝集物残存や、凝集物が欠落して塗膜欠陥の原因となってしまう等、均一な電極膜を作成出来ないという問題が生じる場合がある。
【0005】
また、粗大な凝集粒子が存在すると、多数回充放電を繰り返した場合に集電体と負極合材層の界面の密着性が悪化し、電池性能が低下してしまう可能性がある。これは、充放電におけるリチウムイオンのドープ、脱ドープで活物質および電極合材層が膨張、収縮を繰り返すことにより電極合材層と集電体界面間に局部的なせん断応力が発生した場合に、凝集粒子により応力が緩和されにくくなるため、界面の密着性が悪化することが原因の一つであると考えられる。
【0006】
この様な問題を解決するため、特許文献1には、ニーダーで混練することにより活物質を含む合材を作成する方法が開示されている。しかしながら、単にニーダーで物理的な混練を行うだけでは、優れた分散性、分散安定性を得ることは難しいと思われる。
【0007】
特許文献2には、結着剤であるスチレンブタジエンゴムを有機溶剤により膨潤、増粘させ、負極活物質の分散性を向上させる方法が開示されている。この場合、合材ペーストの増粘効果は期待出来るが、負極活物質の凝集を十分に解きほぐし分散安定化するのは難しいと思われる。
【0008】
また、特許文献3には、界面活性剤を添加し負極活物質を分散混練する方法が開示されている。しかしながら、界面活性剤で良好な分散性、分散安定性を得るためにはその添加量を多くしなければならず、結果として電極中の活物質濃度が低下するため、電池容量が低下してしまうのではないかと思われる。
【0009】
特許文献4には、高分子分散剤を用いて炭素系負極活物質を分散する方法が開示されている。しかしながら、この場合も特許文献3と同様の問題が生じる可能性がある。
【特許文献1】特開平7−29605号公報
【特許文献2】特開2007−234418号公報
【特許文献3】特開平8−190912号公報
【特許文献4】特表2006−516795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、負極活物質の分散性、分散安定性を向上させ、均一かつ負極活物質が高密度に充填された電極を作成することが可能な負極合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の負極合材は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂と、負極活物質とを含有することを特徴とする。
【0012】
更に本発明は、塩基性官能基を有する樹脂が、
片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基と、を反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、
少なくともポリアミン(D1)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、
を反応してなるアミン価が1〜100mgKOH/gである重合体(G1)、並びに、
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応してなるアミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、
2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、
を反応してなるアミン価が5〜100mgKOH/gである重合体(G2)、
からなる群から選ばれる1種類以上の塩基性官能基を有する樹脂である上記負極合材に関する。
【0013】
また本発明は、重合体(G1)を構成する片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)が、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなることを特徴とする上記負極合材に関する。
【0014】
また本発明は、重合体(G2)を構成する片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)が、ビニル重合体、又はポリエステルを含むことを特徴とする上記負極合材に関する。
また本発明は、負極活物質が炭素材料であることを特徴とする上記負極合材に関する。
また本発明は、負極活物質が導電性物質で複合化された負極活物質であることを特徴とする上記負極合材に関する。
また本発明は、負極活物質と複合化する導電性物質が、炭素材料であることを特徴とする上記負極合材に関する。
また本発明は、更に、酸性官能基を有する樹脂以外のバインダー成分を含んでなる上記負極合材に関する。
また本発明は、更に、導電助剤としての炭素材料を含むことを特徴とする上記負極合材に関する。
【0015】
また本発明は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂の存在下、負極活物質と、導電助剤としての炭素材料とを共分散することを特徴とする負極合材の製造方法に関する。
更に本発明は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記負極合材層が、上記の負極合材を用いて作成されたことを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の負極合材は、負極活物質の凝集物を大きく低減させることが可能であり、再凝集もほとんど発生せず保存安定性にも優れている。本発明の負極合材をリチウム電池に使用することにより、均一かつ活物質が高密度に充填された電極膜を作成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明の負極合材に含まれる材料について説明する。
【0018】
<酸性官能基を有する各種誘導体>
本発明における酸性官能基を有する誘導体としては、酸性官能基を有する有機色素誘導体、または酸性官能基を有するトリアジン誘導体から1種類以上選ばれるものである。
とりわけ、下記一般式(1)で示されるトリアジン誘導体、又は一般式(4)で示される有機色素誘導体の使用が好ましい。
【0019】
一般式(1):
【0020】
【化1】

一般式(1)中、
101は、−NH−、−O−、−CONH−、−SONH−、−CHNH−、−CHNHCOCHNH−、又は−X103−Y101−X104−であり、
102、及びX104は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
103は、−CONH−、−SONH−、−CHNH−、−NHCO−、又は−NHSO−であり、
101は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
101は、−SOM、−COOM、又は−P(O)(−OM)であり、
101は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
101は、−O−R102、−NH−R102、ハロゲン基、−X101−R101、又は−X102−Y101−Z101であり、
102は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアルケニル基であり、
101は、1〜4の整数であり、
101は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は下記一般式(2)で表される基である。
一般式(2):
【0021】
【化2】

一般式(2)中、
201は、−NH−、又は−O−であり、
202、及びX203は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SONH−、−CHNH−、又は−CHNHCOCHNH−であり、
201、及びR202は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は−Y201−Z201であり、
201は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
201は、−SO201、−COOM201、又は−P(O)(−OM201であり、
201は、1〜3価のカチオンの一当量である。
【0022】
一般式(1)のR101及び一般式(2)のR201、及びR202で表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、又はジオキサジン系色素の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0023】
一般式(1)のR101及び一般式(2)のR201、及びR202で表される複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、又はアントラキノン等が挙げられる。とりわけ、少なくともS、N、Oのヘテロ原子のいずれかを含む複素環残基の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0024】
一般式(1)のY101及び一般式(2)の及びY201は、炭素数20以下の置換基を有していてもよいアルキレン基、アルケニレン基またはアリーレン基を表すが、好ましくは置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
【0025】
一般式(1)のQ101中に含まれるR102で表される置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基は、好ましくは炭素数20以下のものであり、更に好ましくは炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキル基が挙げられる。置換基を有しているアルキル基又はアルケニル基とは、アルキル基又はアルケニル基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、若しくは臭素原子等のハロゲン基、水酸基、又はメルカプト基等に置換されたものである。
【0026】
一般式(1)のM101及び一般式(2)のM201は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。また、分散剤構造中にMを2つ以上有する場合、Mはプロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0027】
金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(3)で示される構造を有する単一化合物または、混合物である。
【0028】
一般式(3):
【0029】
【化3】

一般式(3)中、R301、R302、R303、及びR304は、水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかである。
【0030】
一般式(3)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
【0031】
4級アンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
一般式(4):
【0033】
【化4】

一般式(4)中、
401、直接結合、−NH−、−O−、−CONH−、−SONH−、−CHNH−、−CHNHCOCHNH−、−X402−Y−、又は−X402−Y−X403−であり、
402は、−CONH−、−SONH−、−CHNH−、−NHCO−、又は−NHSO−であり、
403は、−NH−、又は−O−であり、
401は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
401は、−SO401、−COOM401、又は−P(O)(−OM401であり、
401は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
401は、有機色素残基であり、
401は、1〜4の整数である。
【0034】
一般式(4)のR401で表させる有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又は金属錯体系色素等が挙げられる。Rで表させる有機色素残基には、一般的には色素と呼ばれていない淡黄色のアントラキノン残基を含む。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、又はジオキサジン系色素の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0035】
一般式(4)の式中のM401は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。また、分散剤構造中にMを2つ以上有する場合、M401はプロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0036】
金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(3)で示される構造を有する単一化合物または、混合物である。
一般式(3):
【0037】
【化5】

一般式(3)中、R301、R302、R303、及びR304は、水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかである。
【0038】
一般式(3)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
【0039】
4級アンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記分散剤の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39−28884号公報、特公昭45−11026号公報、特公昭45−29755号公報、特公昭64−5070号公報、又は特開2004−217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0040】
本発明の分散剤のうち、例えば酸性官能基としてスルホン酸もしくはその塩を有するものについては、発煙硫酸、濃硫酸および、クロロスルホン酸などのスルホン化剤を用いてスルホン化するのが一般的である。この場合、酸性官能基の数は分布を有し、例えば、無置換体、一置換体、ニ置換体等の混合物となり得る。スルホン酸およびその塩に限らず、カルボン酸、リン酸についても合成方法により酸性官能基の数が異なるものの混合物となる可能性がある。本発明の分散剤としては、この様な酸性官能基数の異なるものの混合物を用いることも可能である。
【0041】
本発明で使用する酸性官能基を有する各種誘導体は、負極活物質表面に作用(例えば吸着)することにより、分散効果を発揮するものと思われる。酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上を、溶剤中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に負極活物質材料を添加、混合することで、負極活物質材料への作用が進むものと思われる。また、後述する塩基性官能基を有する樹脂の塩基性官能基と上記誘導体が有する塩基性官能基の相互作用(例えば酸−塩基相互作用)により、樹脂の立体障害による反発が生じ負極活物質材料の分散性、分散安定性が増すと考えられる。
【0042】
また、本発明の負極合材を使用した電極は、負極活物質材料表面に極性官能基である酸性官能基を有する各種誘導体が存在していると考えられるため、負極活物質材料の電解液に対する濡れ性が向上するとともに、上述の均一分散効果とあいまって電極の電解液に対する濡れ性が向上する。
【0043】
<塩基性官能基を有する樹脂>
本発明の電池用組成物は、塩基性官能基を有する樹脂を含有している。また好ましい塩基性官能基としては、1〜3級のアミノ基である。塩基性官能基を有する樹脂は、分散安定性の観点から、以下に説明する、重合体(G1)、及び重合体(G2)からなる群から選ばれる1種類以上のの二つのタイプが好ましい。
上記の塩基性官能基を有する樹脂は、負極活物質と導電助剤としての炭素材料を結着する、または、負極活物質及び導電助剤としての炭素材料を集電極に結着するためのバインダーとしても機能するが、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上と併用することにより、負極活物質材料の分散性、分散安定性及を向上させることができる。
【0044】
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
<塩基性官能基を有する重合体(G1)>
本発明で用いることのできる塩基性官能基を有する重合体(G1)は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、及びジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、並びに、ポリアミン(D1)及びモノアミン(E1)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させることによって合成される。
【0045】
ビニル重合体(A)由来の側鎖にグラフトされたビニル重合体部位は、広範囲にわたる顔料担体及び分散媒との親和性に優れ、溶剤親和性部位として機能し、主鎖のウレア結合部位が、酸性官能基を有する有機色素誘導体、又は酸性官能基を有するトリアジン誘導体との相互作用能力に優れ、誘導体を介して酸性に偏った顔料表面への吸着基として機能する。さらに、より吸着性を向上させるために、主鎖にアミノ基を導入することも可能である。
【0046】
塩基性官能基を有する重合体(G1)の各構成要素について説明する。
【0047】
《片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)》
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)(以下、ビニル重合体(A1)と略記する場合がある。)は、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合することで得ることができる。ビニル重合体(A1)のビニル重合体部位は、バインダー樹脂等の顔料担体及び分散媒である溶剤に親和性の高い部位であり、下記一般式(4)で表される。
【0048】
一般式(5):
【0049】
【化6】

[一般式(4)中、R501は、化合物(a11)からヒドロキシル基とチオール基とを除く残基であり、R502は、エチレン性不飽和単量体(a12)から二重結合部位及びR503を除く残基であり、
503は、水素原子又はメチル基であり、
501は、2以上の整数、好ましくは3〜200の整数である。
ここで,R501がビニル重合体(A1)でいう、末端領域となる。]
【0050】
〈分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)〉
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)(以下、化合物(a11)と表記する場合がある。)としては、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0051】
目的とする片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)の分子量にあわせて、化合物(a11)とエチレン性不飽和単量体(a12)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(A1)を得ることができる。化合物(a11)は、エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対して、0.5〜30重量部用いて、塊状重合又は溶液重合により得ることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは2〜10重量部である。反応温度は、40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。0.5重量部未満であると、ビニル重合体部位の分子量が高すぎて、顔料担体及び溶剤に対する親和性部位として、その絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合があり、30重量%を超えると、ビニル重合体部の分子量が低すぎて、顔料担体及び溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、顔料の凝集を抑えることが困難になる。
【0052】
〈重合開始剤〉
重合の際、エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
〈重合溶剤〉
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良いが、最終用途で使用する溶剤であることが好ましい。
〈エチレン性不飽和単量体(a12)〉
エチレン性不飽和単量体(a12)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、及びオキセタン(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;並びに、
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等があげられる。
【0054】
又、上記アクリル系単量体と併用できる単量体として、
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;並びに、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
【0055】
又、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等から1種又は2種以上を選択することができる。
【0056】
〈重合条件等〉
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a12)の中でも、分散性及び耐性の観点から、メチルメタクリレートが好ましく用いられ、顔料担体及び分散媒との親和性の観点から、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用することがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(a2)として、メチルメタクリレートを使用し、ブチルメタクリレートを使用しない場合には、エチレン性不飽和単量体(a12)の合計100重量%中、メチルメタクリレートの割合が30〜100重量%であることが好ましく、50〜100重量%であることがより好ましい。又、エチレン性不飽和単量体(a12)として、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用する場合には、両者の合計が、エチレン性不飽和単量体(a12)の30〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(a12)として、メチルメタクリレートを使用した場合、さらには、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用した場合には、顔料分散性がより良好となる。メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートの共重合部位は、分散性等の基本物性を保ちつつ、バインダー樹脂や分散溶媒との親和性もよく、汎用性が高い。
【0057】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)の、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、500〜30,000であることが好ましく、1,000〜15,000であることがより好ましく、1,000〜8,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が500未満では、溶媒親和部による立体反発の効果が少なくなるとともに、顔料の凝集を防ぐことが困難となり、分散安定性が不十分となる場合がある。又30,000を超えると、溶媒親和部の絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。さらに、分散体の粘度が高くなる場合がある。
該重量平均分子量が500〜30,000であれば、顔料の凝集を防ぐことにより、顔料分散体の粘度上昇を抑えることに有利である。
【0058】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、塗膜の耐性が向上するという点から、50〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
【0059】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のTgは、下記のFoxの式で算出した値を用いた。なお、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)由来の骨格もビニル重合体(A1)中に存在するが、ガラス転移温度を計算する以下の計算から除くものとする。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
W1からWnは、使用している各単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、各単量体から得られるそれぞれのホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
【0060】
算出に使用する主なホモポリマーのTgを下記に例示する。
メチルメタクリレート:105℃(378K)
ブチルメタクリレート:20℃(293K)
t−ブチルメタクリレート:107℃(380K)
ラウリルメタクリレート:−65℃(208K)
2−エチルヘキシルメタクリレート:−10℃(263K)
シクロヘキシルメタクリレート:66℃(339K)
ブチルアクリレート:−45℃(228K)
エチルアクリレート:−20℃(253K)
ベンジルメタクリレート:54℃(327K)
スチレン:100℃(373K)
【0061】
《ジイソシアネート(B1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるジイソシアネート(B1)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族含有ジイソシアネート(b11)、脂肪族含有ジイソシアネート(b12)、芳香脂肪族含有ジイソシアネート(b13)、及び脂環族含有ジイソシアネート(b14)等が挙げられる。
【0062】
芳香族含有ジイソシアネート(b11)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0063】
脂肪族含有ジイソシアネート(b12)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0064】
芳香脂肪族含有ジイソシアネート(b13)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
脂環族含有ジイソシアネート(b14)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0066】
以上、列挙したジイソシアネート(B1)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0067】
本発明に用いられるジイソシアネート(B)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
【0068】
《ポリアミン(D1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるポリアミン(D1)としては、少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、イソシアネート基と反応しウレア結合を生成するために用いられる。このようなアミンとしてジアミン(d11)が挙げられる。
【0069】
二つの一級アミノ基有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、
フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0070】
又、二つの二級アミノ基を有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0071】
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
【0072】
本発明のポリアミンは少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンがイソシアネート基と反応してウレア基を生成する、このウレア基が顔料吸着部位になるが、ポリアミン(D1)が、両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、酸性顔料に対しての吸着性が上がるため、特に好ましい。
【0073】
このようなポリアミン(D1)としては、以下の様な両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(d12)が挙げられる。
【0074】
ポリアミン(d12)としては、
メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N‘−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N‘−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、
2つの1級アミノ基と1つの3級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
【0075】
2つの1級アミノ基と1つの2級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、顔料への吸着性が良く好ましい。
【0076】
又本発明のポリアミン(D1)としては、2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(d13)も使用することができる。
【0077】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(d13)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、顔料の凝集を防ぎ、粘度の上昇を抑えることに効果的である。
【0078】
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマール酸等の不飽和カルボン酸;
スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;
グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;
1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;
片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びに
シアン化ビニル等を挙げることができる。
【0079】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、顔料の凝集を防ぐことにより、顔料分散体の粘度上昇を抑えることに効果的である。
【0080】
《モノアミン(E1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるアミン化合物としては、ポリアミン(D1)の他に、さらにモノアミン(E1)も使用することができる。モノアミン(E1)としては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミン(E1)は、ジイソシアネート(B1)とポリアミン(D1)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミン(E1)は、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
【0081】
モノアミン(E1)としては、従来公知のものが使用でき、具体的には、
アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
中でも、剛直性のない脂肪族アミンで第二級アミノ基のみを有するモノアミン化合物は、分散性も良好であり好ましい。
【0082】
第二級アミノ基のみを有する脂肪族モノアミン化合物としては、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、及び3−ピロリジノール等が挙げられる。
【0083】
又、三級アミノ基は、イソシアネート基と反応する活性水素を有していないため、一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンは、モノアミン(E1)として使用することができ、本発明に分散剤の重合体末端に、顔料吸着能を向上させる効果がある三級アミノ基を導入することができる。
【0084】
一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンとしては、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、及びN,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミン;並びに、
N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン等の二級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミンを挙げることができる。
【0085】
これらのモノアミン(E1)化合物は、一種類又は二種類以上混合して用いてもよい。なお、一級アミノ基とイソシアネート基が反応した後のウレア結合の活性水素は、反応性が低く、本発明の分散剤の重合条件では、それ以上イソシアネート基と反応し、分子量が大きくなることはない。
【0086】
《ウレタンプレポリマー(C1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるウレタンプレポリマー(C1)は片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基と、を反応して得られる。
【0087】
例えば、ビニル重合体(A1)のモル数をα、ジイソシアネート(B1)のモル数をβとした場合、α/β=α/(α+1)の時、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られる。αを正の整数とすると、αが大きくなるほど分子量が高くなる。実際の構造制御については、詳しくは後述する。
【0088】
〈合成触媒(F1)〉
ウレタンプレポリマー(C1)の合成時には、公知の触媒(F1)を使用することができ、例えば三級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等を挙げることができる。
【0089】
三級アミン系化合物としては、例えば、
トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)等を挙げることができる。
【0090】
有機金属系化合物としては錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
【0091】
錫系化合物としては、例えば、
ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2−エチルヘキサン酸錫等を挙げることができる。
【0092】
非錫系化合物としては、例えば、
ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛;
2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛系;
2−エチルヘキサン酸鉄、及び鉄アセチルアセトネート等の鉄系;
安息香酸コバルト、及び2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;
ナフテン酸亜鉛、及び2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;並びに、
ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系を挙げることができる。
【0093】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、及び2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
上記3級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等の触媒は、場合によっては単独でも使用できるが、併用することもでる。
【0094】
ウレタンプレポリマー(E)合成時に用いる有機金属化合物触媒は、後述のアミンとの更なる反応においても、該反応を著しく促進する。
【0095】
〈合成溶剤〉
ウレタンプレポリマー(C1)の合成時には公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。
かかる目的で使用される溶剤としては、例えば、
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0096】
ウレタンプレポリマー(C1)の溶解性、溶剤の沸点等、アミンの溶解性の点から特に酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、又はこれらの混合溶剤が好ましい。
【0097】
又、溶剤を使用した場合のウレタンプレポリマー反応系内の濃度は、ウレタンプレポリマーの固形分濃度に換算して、反応制御の観点から、好ましくは30〜95重量%であり、粘度制御の観点から、さらに好ましくは40〜90重量%である。30重量%未満では、反応が遅くなり、未反応物が残ることがあるため好ましくない。95重量%を超えると、反応が部分的に急激に進む場合があり、分子量等のコントロールが難しくなるため好ましくない。
【0098】
〈合成条件〉
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応させてウレタンプレポリマー(C1)をつくるウレタン化反応は、種々の方法が可能である。1)全量仕込みで反応する場合と、2)片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)及び必要に応じて、溶剤をフラスコに仕込み、ジイソシアネート(B1)を滴下した後必要に応じて触媒を添加する方法に大別されるが、反応を精密に制御する場合は2)が好ましい。ウレタンプレポリマー(C1)を得る反応の温度は120℃以下が好ましい。更に好ましくは50〜110℃である。110℃より高くなると反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得られなくなる。ウレタン化反応は、触媒の存在下、50〜110℃で1〜20時間行うのが好ましい。
【0099】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)とジイソシアネート(B1)の配合比は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のモル比率を整数αとした時、ジイソシアネート(B1)のモル比率がα+1で、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)が合成できる。αの最小が1なので、ビニル重合体(A1)に対するジイソシアネート(B1)の配合モル比率(α+1)/αは2以下となる。ジイソシアネートをさらに増やした場合、ウレタンプレポリマー(C1)と過剰のジイソシアネート(B)の混合物中のイソシアネート基すべてを、ポリアミン(D1)とモノアミン(E1)の一級及び/又は二級アミノ基と反応するように設計すれば過剰のジイソシアネート(B1)を本発明の分散剤分子の中に取り込むことが可能である。通常のウレタンプレポリマー(C1)を合成する場合、ポリオールを残さないために、次工程のポリアミンによる鎖延長を見込んで、過剰のポリイソシアネートを配合する場合が多いが、本発明の分散剤では、過剰なジイソシアネート(B1)由来の重合体の構成単位や過剰なジイソシアネート(B1)の加水分解物由来の不純物が、顔料分散性や経時安定性に悪影響を与えることが多い。
【0100】
従って、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)に対するジイソシアネート(B1)の配合モル比は、ウレタンプレポリマー(C1)の生産性の観点から、1.01〜3.00が好ましく、最終合成物である分散剤の設計(顔料吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、1.30〜2.30がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った顔料分散体の分散安定性の観点から、1.50〜2.00が最も好ましい。前記配合モル比が小さすぎると、最終製品である分散剤が高分子量になり、それを用いた顔料分散体、さらにそれを用いた塗料やインキの粘度が高くなり実用上問題がある。又、前述通り、前記配合モル比が2.00より大きいと、ビニル重合体(A1)由来のビニル重合部を持たないジイソシアネート(B1)及びそれ由来のウレタン部位が増え、顔料分散性能に重大な悪影響を及ぼす。
《塩基性官能基を有する重合体(G1)の製造方法及び合成条件等》
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G1)は、
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなる、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)を製造する第二の工程と、
両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基とポリアミン(D1)及びモノアミン(E2)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応させる第三の工程と、により製造することができる。
【0101】
塩基性官能基を有する重合体(G1)において、ウレタンプレポリマー(C1)、ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)、からウレタンウレア樹脂、又は末端に一級又は二級のアミノ基を有するポリウレタンウレアを得るためのウレア反応は、
1)ウレタンプレポリマー(C1)溶液をフラスコに仕込み、ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)を滴下する方法、
2)ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)、及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、ウレタンプレポリマー(C1)溶液を滴下する方法、
に大別される。
【0102】
安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、操作が容易な1)の方法が好ましい。本発明のウレア反応の温度は、100℃以下が好ましい。更に好ましくは70℃以下である。70℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。100℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有するウレタンウレア樹脂を得ることは難しい。
【0103】
又、ウレタンプレポリマー(C1)、及びポリアミン(D1)、さらに必要に応じてモノアミン(E1)との配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。
【0104】
反応の終点は、滴定に因るイソシアネート%測定、IR測定によるイソシアネートピークの消失により判断する。
【0105】
塩基性官能基を有する重合体(G1)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは1,500〜20,000である。重量平均分子量が1,000未満であれば、顔料分散体の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料分散体の増粘が起きる場合がある。又、得られた重合体のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜50mgKOH/g、さらに好ましくは3〜30mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g未満であれば顔料と吸着する官能基が不足し、顔料分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、顔料同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
【0106】
<塩基性官能基を有する重合体(G2)>
本発明で用いることのできる塩基性官能基を有する重合体(G2)は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応してなる、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応させることによって合成される。
すなわち、重合体(A2)由来の溶媒親和性部位と、ポリアミン(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、ポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応してなる、アミノ基及びウレア結合部位を有する顔料吸着性部位を有する構造となっている。前記アミノ基及びウレア結合部位を有する顔料吸着部位が、酸性官能基を有する有機色素誘導体、又は酸性官能基を有するトリアジン誘導体との相互作用能力に優れ、更に、誘導体を介して酸性に偏った顔料表面に対する顔料吸着性に優れ、分散安定化をはかることが可能である。
【0107】
《片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)》
本発明における重合体(A)の重量平均分子量は500〜30,000が好ましく、これによって、立体反発効果に優れ、高い分散性、流動性、及び保存安定性を得ることが可能である。重合体(A)の重量平均分子量はさらに好ましくは2,000から20,000であり、最も好ましくは5,000から10,000である。500未満では、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。また、30,000を超える場合は、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。
【0108】
本発明における重合体(A)は、ポリエステル(A21)、又はビニル重合体(A22)であることが好ましい。これらは溶剤への親和性が良好であり、また、分子量を調整することが容易である。また、片末端領域の(メタ)アクリロイル基は、一級及び/又は二級アミノ基との反応制御の観点から、比較的低温で反応が進むアクリロイル基が好ましい。
<ポリエステル(A21)>
ポリエステル(A21)は、公知の方法で製造することができ、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールを開始剤としてラクトン及び/又はラクチドを開環重合することで容易に得ることができる。
【0109】
[(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール]
開環重合の開始剤として使用する(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールとしては、特に限定はなく、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート、及び2‐ヒドロキシ‐3‐(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる、ヒドロキシル基の反応性の観点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
【0110】
[ラクトン及びラクチド]
ラクトンとしては、特に限定はなく、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトン等が挙げられるが、開環重合性の観点から、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトンからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
【0111】
本発明の製造方法において、ラクトンは、前記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
【0112】
ラクチドとしては、下記一般式(1)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
一般式(6):
【0113】
【化7】


〔一般式(6)中、
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。〕
本発明の製造方法において、特に好適なラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。
【0114】
前記ラクトン及びラクチドは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。ラクトンとラクチドとでは、溶媒親和性の観点から、ラクトンを用いるのが好ましい。
【0115】
開始剤1モルに対するラクトン及び/又はラクチドの重合モル数は、3〜60モルの範囲が好ましく、更には10〜40モルが好ましく、最も好ましくは15〜30モルである。3モル未満では、分子量が小さくなり、溶媒親和性部位として、十分機能しない。60モルを超えると、分子量が大きくなりすぎて、顔料の分散剤として使用した時に、顔料分散体の粘度が高くなり、問題を生ずる。
【0116】
[開環重合触媒]
開環重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、
テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、及びベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及びテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;
トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;、
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;
ナトリウムアルコラート、及びカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;
トリエチルアミン、及びトリフェニルアミン等の三級アミン類;
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、及びジオクチル錫オキシド等の有機錫化合物;
アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;
テトラ−n−ブチルチタネート、前記ダイマー、テトライソブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、及びジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン等の有機チタネート化合物;並びに、
塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
【0117】
開環重合触媒の使用量は、ラクトン及び/又はラクチド100重量%に対して、0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/又はラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない場合がある。
【0118】
[合成条件]
ラクトン及び/又はラクチドの開環重合温度は、100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅い場合があり、220℃を超えるとラクトン及び/又はラクチドの付加反応以外の副反応、例えば、ラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい場合がある。
【0119】
[ラジカル重合禁止剤]
(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合する際には、ラジカル重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で、(メタ)アクリロイル基を有するアルコール100重量%に対して、0.01重量%〜6重量%、好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%の範囲で用いる。
【0120】
ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。
【0121】
[ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物]
ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0122】
又、ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、二塩基酸無水物基を一個有する化合物を反応させて得られた、片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応しうる基及び前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A21)が得られる。
【0123】
[(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコール]
(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールとしては、水酸基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
【0124】
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、及びパラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環含有モノアルコール;並びに、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
【0125】
[二塩基酸無水物基を一個有する化合物]
二塩基酸無水物基を一個有する化合物は、二塩基酸無水物基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキセン1−2−ジカルボン酸無水物、ジシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、アントラセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及びアントラセン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。又、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、複素環、芳香環、及びハロゲン等の置換基を有する前記ニ塩基酸無水物も挙げられる。
【0126】
[エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物]
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,2−グリシドキシエチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート、及び4,5−エポキシペンチルアクリレート等が挙げられる。
【0127】
又、ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸を開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、前記エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応しうる、ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A21)が得られる。
【0128】
[(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸]
(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸は、(メタ)アクリロイル基を有しない、カルボキシル基を有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸等が挙げられる。
【0129】
<ビニル重合体(A22)>
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(A22)は、片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(a23)に、ヒドロキシル基と反応しうる基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)を反応させることで得ることができる。
【0130】
片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(a23)(以下、ビニル重合体(a23)と略記する場合がある。)は、分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a21)をラジカル重合することで得ることができる。分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、S原子を介してビニル重合体(a23)が合成されるので、その分子量は、エチレン性不飽和単量体(a21)に対する前記化合物(s)の使用量によってビニル重合体(a23)の分子量を上記範囲に調整することが容易であり、その結果、溶剤への親和性も好適に調整することができる。
【0131】
[分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)]
分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)としては、例えば、 1−メルカプトエタノール、及び2−メルカプトエタノール等の分子内に1個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s1);並びに、
1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)が挙げられる。
【0132】
本発明では、分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)であることが好ましく、さらに好ましくは3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)である。
分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基を有する化合物(s2)を用いることによって、最終的に得られる分散剤が、複数のアミノ基を有する顔料吸着部位と、複数の溶媒親和性部位と、を有する理想的な構造となる。
【0133】
[エチレン性不飽和単量体(a21)]
エチレン性不飽和単量体(a21)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル (メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;
アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等の不飽和カルボン酸類;
前記カルボン酸のカプロラクトン付加物(付加モル数1〜5)類;
2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート類;
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸アリル等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
(メタ)アクリルアミド、及びN−ビニルホルムアミド等のアミノ基を有しないアミド類;並びに、
アミノ基を有しないアクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0134】
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a21)の中でも、下記一般式(7)で表わされるエチレン性不飽和単量体(a22)を使用することが好ましい。下記一般式(7)で表されるエチレン性不飽和単量体(a22)の使用量は、エチレン性不飽和単量体(a21)全体に対して20重量%〜100重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。一般式(7)で表わされる単量体を用いると、溶媒親和性が良くなり、顔料分散性が良好になる。20重量%未満では、溶媒親和性を向上させる効果が不十分である。
一般式(7):
【0135】
【化8】

〔一般式(7)中、Rは、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。〕
【0136】
[化合物(s)の使用量]
前記化合物(s)を連鎖移動剤として、目的とするビニル重合体(a23)の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(a21)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(a23)を得ることができる。化合物(s)は、エチレン性不飽和単量体(a21)100重量部に対して、0。8〜30重量部を用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましく、より好ましくは1.5〜15重量部、さらに好ましくは2〜9重量部、特に好ましくは5〜9重量部である。1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。
【0137】
反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。40℃未満では、十分に重合が進行せず、150℃を超えると、高分子量化が進む等、分子量のコントロールが困難になる。
【0138】
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合の際、エチレン性不飽和単量体(a21)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。
【0139】
重合開始剤としては、例えば、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ系化合物および有機過酸化物;並びに、
過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物な等が挙げられ、これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0140】
[ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)]
ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物a24)としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0141】
[重合溶剤]
ポリエステル(A21)及びビニル重合体(A22)は、無溶剤、又は、必要に応じて溶剤を使用して合成することができる。
【0142】
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用したり、製品の一部として使用することもできる。
【0143】
《ポリアミン(B2)》
本発明のポリアミン(B2)は1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンが片末端領域に(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基に付加反応し、アミノ基を有する重合体(C2)を生成する。さらに、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミンの内、一部又は全部をポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と反応させてウレア基を生成する。すなわち、本発明の分散剤は片末端領域に存在するアミノ基及びウレア結合が顔料吸着部位になる。このようなポリアミン(B2)としてジアミン(b21)が挙げられる。また、ポリアミン(B2)が、両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、酸性顔料に対しての吸着性が上がるため、特に好ましい。
【0144】
2個の一級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、
フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0145】
又、2個の二級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0146】
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
【0147】
又、一級及び三級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン[別名:ジメチルアミノエチルアミン]、N,N−ジエチルエチレンジアミン[別名:ジエチルアミノエチルアミン]、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン又はジメチルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
【0148】
両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(b22)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N‘−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N‘−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、
2個の一級アミノ基と1個の三級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
【0149】
2個の一級アミノ基と1個の二級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、顔料への吸着性が良く好ましい。
【0150】
又本発明のポリアミン(B2)としては、2個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b23)も使用することができる。
【0151】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b23)としては、一級アミノ基を有する
エチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、顔料の凝集を防ぎ、粘度の上昇を抑えることに効果的である。
【0152】
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマール酸等の不飽和カルボン酸;
スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;
グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;
1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;
片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びに
シアン化ビニル等を挙げることができる。
【0153】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、顔料の凝集を防ぐことにより、顔料分散体の粘度上昇を抑えることに効果的である。
【0154】
《モノアミン》
本発明の分散剤を構成するアミン化合物としては、ポリアミン(B2)の他に、さらにモノアミンも使用することができる。モノアミンとしては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミンは、重合体(A2)とポリアミン(B)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミンは、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
【0155】
モノアミンとしては、従来公知のものが使用でき、具体的には、
アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
【0156】
《アミノ基を有する重合体(C2)》
アミノ基を有する重合体(C2)は、下記一般式(8)に示すように、ポリアミン(B2)の一級又は二級のアミノ基が、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基に対して、付加反応することによって得られる。この反応は、一般にMichael付加反応と呼ばれている。重合体(A2)及びポリアミン(B2)の配合を調整することにより、イソシアネート基と反応しうる一級又は二級のアミノ基を有する構造にすることができる。
【0157】
一般式(8):
【0158】
【化9】

〔一般式(8)中、Xは、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、ポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Rは、水素原子、又はアルキル基である。〕
例えば、下記一般式(9)のように、片末端領域に1個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子1個に対し、一級アミノ基を2個有するジアミン(B2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。
【0159】
一般式(9):
【0160】
【化10】

〔一般式(9)中、Xは、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基である。〕
又、例えば、下記一般式(10)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子1個に対し、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個を有するジアミン(B2)の分子2個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基4個を有する重合体(C2)の分子1個が得られる。
【0161】
一般式(10):
【0162】
【化11】

〔一般式(10)中、Xは、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、ポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Rは、アルキル基である。〕
更に、例えば、下記一般式(11)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子n個に対し、一級アミノ基2個を有するジアミン(B)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
一般式(11):
【0163】
【化12】

〔一般式(11)中、Xは、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、nは、正の整数である。〕
又、例えば、下記一般式(12)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子n個に対し、二級アミノ基2個を有するジアミン(B2)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基2個と三級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
一般式(12):
【0164】
【化13】

〔一般式(12)中、Xは、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、ポリアミン(B2)の内、二級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Rは、アルキル基であり、nは、正の整数である。〕
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もあるので、一部、予想とは異なる構造の重合体(C2)が得られる場合もあるが、上記付加反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C2)が得られ、その後の反応や、最終的な分散剤としての機能に問題はない。
【0165】
〈合成条件〉
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)と、からアミノ基を有する重合体(C2)を得るためのMichael付加反応は、1)全量仕込みで反応する方法、2)ポリアミン(B2)及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、重合体(A2)溶液を滴下する方法に大別される。安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、反応制御(分子設計制御)が容易な2)の方法が好ましい。
【0166】
本発明のマイケル反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する重合体(C2)を得ることは難しい。
【0167】
又、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。反応の終点は、滴定に因るアミン%測定により判断する。
【0168】
《アミノ基及びウレア結合を有する分散剤》
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)は、アミノ基及びウレア結合を有する分散剤であり、アミノ基を有する重合体(C2)の一級又は二級のアミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基を反応して得られる。アミノ基を有する重合体(C2)の一級又は二級のアミノ基は、反応させるポリイソシアネートの量を調整することにより、一部又は全部がウレア結合を形成し、残りは分散剤中にアミノ基として存在する。
また、アミノ基を有する重合体(C2)は一級又は二級のアミノ基以外にも三級アミノ基を有している場合は、三級アミノ基はイソシアネート基と反応せずそのまま顔料吸着基として分散剤中に残る。
【0169】
例えば、下記一般式(13)のように、一級アミノ基1個と二級アミノ基2個を有する重合体(C2)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、二級アミノ基4個とウレア結合2個とを有する分散剤が得られる。下記一般式(13)中のW1及びW2が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。
【0170】
一般式(13):
【0171】
【化14】

〔一般式(13)中、Xは、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W、及びWは、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Zは、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分である。〕
又、例えば、下記一般式(14)のように、二級アミノ基1個を有する重合体(C2)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子1個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、ウレア結合を有する分散剤が得られる。下記一般式(14)中のWが、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。前記分散剤は、活性水素を有するアミノ基は有しない。
【0172】
一般式(14):
【0173】
【化15】

〔一般式(14)中、Xは、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Wは、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Zは、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分である。〕
更に、例えば、下記一般式(15)のように、前記一般式(13)の生成物である、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子m個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、一級アミノ基2個と二級アミノ基(2nm+2n)個とウレア結合2m個とを有する分散剤が得られる。下記一般式(15)中のY2が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。(n及びmは、正の整数である。)
一般式(15):
【0174】
【化16】

〔一般式(15)中、Xは、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、Wは、重合体(C2)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Zは、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、n及びmは、正の整数である。〕
又、例えば、下記一般式(16)のように、一級アミノ基1個を有するポリアミン(B2)の分子2個と(メタ)アクリロイル基2個を有する重合体(A2)の分子1個とを反応して得られる、重合体(A2)由来の部分から見て両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個を有する重合体(C2)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子m個を反応させた場合、理論上、前記二級級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、ポリウレア鎖から見てり両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個有する分散剤が得られる。(mは、正の整数である。)
一般式(16):
【0175】
【化17】


〔一般式(16)中、Xは、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Yは、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、Wは、重合体(C2)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、Rは、水素原子、又はメチル基であり、Zは、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、mは、正の整数である。〕
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もあるので、一部、予想とは異なる構造の分散剤が得られる場合もあるが、上記反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C2)が得られ、分散剤としての機能に問題はない。
【0176】
以上のように、アミノ基を有する重合体(C2)とポリイソシアネート(D2)との反応比を変えることによって、分散剤の分子量やアミノ基(一級、二級、及び/又は三級)並びにウレア結合の量を調整することができる。
【0177】
《ポリイソシアネート(D2)》
本発明に用いられるポリイソシアネート(D2)としては、従来公知のものを使用することができるが、分散体の低粘度効果から、ジイソシアネートであることが好ましく、例えば、芳香族系ジイソシアネート(d21)、脂肪族系ジイソシアネート(d22)、芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d23)、脂環族系ジイソシアネート(d24)、これらジイソシアネートのニ量体(ウレトジオン)、これらジイソシアネートの三量体(イソシアヌレート)とモノアルコールとの反応物、及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応物(両末端イソシアネートのウレタンプレポリマー)等が挙げられる。
【0178】
芳香族系ジイソシアネート(d21)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、ジアニシジンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0179】
脂肪族系ジイソシアネート(d22)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0180】
芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d23)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0181】
脂環族系ジイソシアネート(d24)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0182】
以上、列挙したジイソシアネート(D2)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0183】
本発明に用いられるジイソシアネート(D2)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
【0184】
又、分散剤の分子量を上げる目的で、1分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネ−ト(d25)を使用しても良く、芳香族系ポリイソシアネ−ト、脂肪族系ポリイソシアネ−ト、芳香族−脂肪族系ポリイソシアネ−ト、及び脂環族系ポリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0185】
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート(d25)として、具体的には、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、及び上記ジイソシアネートのビウレット体等のジイソシアネートの三量体、上記ジイソシアネートのポリオールアダクト体、二種以上の上記ジイソシアネートの共重合体、芳香族系トリイソシアネート、並びに、ポリメリック型の芳香族系イソシアネートオリゴマー等が挙げられる。
【0186】
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート(d25)としては、例えば、 トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、HDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する場合がある。)アダクト体、TDIのTMPアダクト体、及びTDI/HDIコポリマー等のジイソシアネート変性物;
2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、及び4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等の芳香族系トリイソシアネート;並びに、
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(別名MDIオリゴマー)等のポリメリック型芳香族系イソシアネートオリゴマー)等が挙げられる。
【0187】
〈合成条件〉
アミノ基を有する重合体(C2)とポリイソシアネート(D2)との反応は、1)全量仕込みで反応する場合と、2)重合体(C2)溶液をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(D2)を滴下する方法に大別されるが、反応を精密にする場合は2)が好ましい。本発明のウレア化反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する分散剤を得ることは難しい。
【0188】
また、アミノ基を有する重合体(C2)に対するポリイソシアネート(D2)の配合比は、重合体(C2)の活性水素を有するアミノ基(一級及び二級アミノ基)当量を〔C2〕、ポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基当量を〔D2〕とすると、〔D2〕/〔C2〕は0.25〜1.00で、イソシアネート基の全てを活性水素を有するアミノ基と反応させるとことが好ましく、最終合成物である分散剤の設計(顔料吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、0.35〜0.9がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った顔料分散体の分散安定性の観点から、0.5〜0.8が最も好ましい。
【0189】
前記配合当量比が0.25より小さいと、最終製品である分散剤中のウレア結合の量が少なくなり、分散性が悪くなる場合がある。又、配合当量比が1.00より大きいと、反応活性が高いイソシアネート基が残り、水等と反応し、高分子量化して粘度が高くなることがあり、好ましくない。又、前記配合当量が、1.00であると、例えば、活性水素を有するアミノ基を2個有するポリアミン(C2)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(D2)との反応では、理論上、分子量が無限大となるため、分子量制御の観点で、好ましくない。
【0190】
更に、三級アミノ基、及びウレア結合に加えて一級及び/又は二級アミノ基(活性水素を有するアミノ基)が、分散剤骨格中に存在すると、顔料に対する吸着性が向上し、溶剤親和性部位とのバランスも良くなり、顔料分散性及びその経時安定性も良くなる。
【0191】
又、活性水素を有するアミノ基が多く残り過ぎると、顔料吸着必要量を超えてしましまい、例えば、レジストインキを調整する場合に添加する多官能モノマーのアクリロイル基と反応する等の問題を生じる。
【0192】
従って、適度に、活性水素を有するアミノ基が残るように配合することが、好ましい。
即ち、前記のように、配合当量比が、0.35〜0.9、好ましくは0.5〜0.8の時、三級アミノ基、ウレア結合、活性水素を有するアミノ基、及び溶剤親和部位のバランスが良くなり、優れた顔料分散安定性を示す。
【0193】
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C2)を製造する第二の工程と、並びに、
アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、少なくとも2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応させる第三の工程と、
を含む製造法により製造することができる。
各工程の合成方法及び条件等は前述のとおりである。
【0194】
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が1,000未満であれば、顔料分散体の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料分散体の増粘が起きる場合がある。又、得られた分散剤のアミン価は、5〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは20〜50mgKOH/gである。アミン価が5mgKOH/g未満であれば顔料と吸着する官能基が不足し、顔料分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、顔料同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
【0195】
塩基性官能基を有する樹脂は、上記記載の二つのタイプのみに限定されるものでなく、二つのタイプ以外のポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの塩基性官能基を有する樹脂は2種類以上を併用することもできる。
【0196】
<その他の市販の塩基性官能基を有する樹脂>
市販の塩基性官能基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0197】
ビックケミー社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、Disperbyk−108、109、112、116、130、161、162、163、164、166、167、168、180、182、183、184、185、2000、2001、2050、2070、2150、BYK−9077等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、20000、24000SC、24000GR、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、37500、38500、39000等が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、EFKA4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4500、4550、4560、4570、4580、4800等が挙げられる。
【0198】
味の素ファインテクノ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822等が挙げられる。
楠本化成社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン1850、1860、DA−1401等が挙げられる。
共栄社化学製の塩基性官能基を有する樹脂としては、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17等が挙げられる。
【0199】
<負極活物質>
本発明で使用する負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiFe、LiFe、LiWO、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。
これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0200】
本発明で使用する負極活物質としては、導電性物質で複合化されたものも好適に用いられる。導電性物質としては、炭素材料、導電性高分子材料、金属等が挙げられるが、本発明の分散剤との相互作用を考慮すると、炭素材料もしくは導電性高分子材料が好ましい。
【0201】
導電性高分子材料としては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン誘導体等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛質炭素として天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、非晶質炭素としてアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、繊維状炭素材料としてカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。金属としては、Al,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn等が挙げられる。
これらの複合化処理は、必要に応じ複数を組み合わせて行っても良い。
【0202】
負極活物質を導電性物質で複合化する方法としては、例えば炭素材料、金属を複合化する場合であれば、特開2003−308845号、特許第3985263号に記載のメカノフュージョン、ハイブリダイゼーション処理等の機械的処理、導電性高分子材料を複合化する場合であれば、特開2001−68096号に記載の、導電性高分子が溶解している有機溶剤溶液に浸漬させ、乾燥、熱処理する方法等が挙げられる。更には、CVD法による有機物の熱分解物被覆法やプラズマ法を用いた活物質表面への被覆層の形成法なども挙げられる。また、その他の活物質粒子表面に導電性材料を被覆する方法として、結着剤を用いる方法、気相中に分散された粉体が互いに接触するときに生じる摩擦帯電を利用して表面吸着を行う方法等を用いることも出来る。
【0203】
また、金属系、金属酸化物系の負極活物質、もしくは金属で複合化した負極活物質については、本発明で使用する分散剤との相互作用を考慮し、シランカップリング剤等のカップリング剤で表面を処理することも可能である。
【0204】
<導電助剤>
本発明の負極合材に使用される導電助剤としては、炭素材料、リチウムと合金化し難い金属、導電性高分子材料等が挙げられるが、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
【0205】
導電助剤として用いるカーボンブラックは、酸化処理したカーボンを用いることも可能ではある。カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0206】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、
トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック;プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック;Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、975 ULTRA、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック;#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック;MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック;Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック;ケッチェンブラックEC−300J、及びEC−600JD等のアクゾ社製ケッチェンブラック; 並びに、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等の電気化学工業社製アセチレンブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0207】
<バインダー成分>
本発明の負極合材には、更に、バインダー成分を含有させることが好ましい。使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類、ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。
【0208】
<溶剤>
本発明の負極合材に使用される溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられるが、これに限定されない。
【0209】
<組成>
負極合材中の総固形分に占める負極活物質の割合は、80重量%以上、98.5重量%以下で使用することが望ましい。負極活物質の割合が80重量%を下回ると、十分な導電性、放電容量を得ることが難しくなる場合があり、98.5重量%を超えると、バインダー成分の割合が低下するため、集電体への密着性が低下し、負極活物質が脱離しやすくなる場合がある。
【0210】
また、負極合材中の総固形分に占める、導電助剤の固形分の割合は、0.5重量%以上、19重量%以下、好ましくは1.0重量%以上、15重量%以下で使用することが望ましい。導電助剤の割合が、0.5重量%を下回ると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、19重量%を超えると、電池性能に大きく関与する正極活物質の割合が低下するため、放電容量が低下する等の問題が発生する場合がある。
【0211】
また、負極合材中の総固形分に占める、バインダー成分の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい。バインダー成分の割合が1重量%を下回ると、結着性が低下するため、集電体から負極活物質や導電助剤としての炭素材料等が脱離しやすくなる場合があり、10重量%を超えると、負極活物質及び導電助剤としての炭素材料の割合が低下するため、電池性能の低下に繋がる場合がある。
【0212】
また、負極合材の適正粘度は、その塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0213】
<製造方法>
次に、本発明の負極合材の製造方法について説明する。
【0214】
本発明の負極合材は、例えば、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂と、負極活物質とを溶剤に分散し、該分散体に、必要に応じて導電助剤としての炭素材料、バインダーを混合することにより製造することができる。各成分の添加順序等については、これに限定されるわけではない。また、必要に応じて更に溶剤を追加しても良い。
【0215】
上記製造方法は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の誘導体と、塩基性官能基を有する樹脂とを、溶剤中に完全又は一部溶解させ、その溶液中に負極活物質を添加、混合することで、これらを負極活物質に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するものである。このときの分散体中における負極活物質の濃度は、使用する負極活物質の比表面積や表面官能基量等の負極活物質固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、90重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以上、80重量%以下である。負極活物質の濃度が低すぎると、生産効率が悪くなり、更に合剤ペーストの粘度が低くなりやすく経時で負極活物質が沈降しやすくなり、均一な電極が作成しにくい場合がある。一方、負極活物質の濃度が高すぎると、分散体の粘度が著しく高くなり、分散効率や分散体のハンドリング性が低下する場合がある。
【0216】
酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の誘導体の添加量は、用いる負極活物質の比表面積等により決定される。一般には、前記誘導体を、負極活物質100重量部に対して、0.01重量部以上、30重量部以下、好ましくは0.05重量部以上、25重量部以下、更に好ましくは、0.1重量部以上、20重量部以下で添加する。添加量が少ないと十分な効果が得られず、必要以上に添加しても顕著な分散性向上は見られない。
【0217】
塩基性官能基を有する樹脂の添加量についても、用いる負極活物質の比表面積等により決定される。一般には、前記樹脂を、負極活物質100重量部に対して、0.01重量部以上、30重量部以下、好ましくは0.05重量部以上、25重量部以下、更に好ましくは、0.1重量部以上、20重量部以下で添加する。添加量が少ないと十分な効果が得られず、必要以上に添加しても顕著な分散性向上は見られない。
【0218】
負極活物質を分散するための装置としては、例えば、顔料分散等に通常用いられている以下の様な分散機が使用できる。
【0219】
分散機の例としては、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;又は、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0220】
金属混入防止処理としては、例えばメディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。又、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0221】
強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0222】
本発明における負極合材は、負極活物質の分散性が優れるため、負極合材ペーストを作成する際に混合・分散する際のエネルギーが、負極活物質の凝集物に阻害されることなく効率よく炭素材料(導電助剤)に伝わり、結果的に炭素材料(導電助剤)の分散性も向上させることができると考えられる。
【0223】
負極活物質と導電助剤としての炭素材料を共分散すると、本発明で使用する酸性官能基を有する各種誘導体および塩基性官能基を有する樹脂は、導電助剤としての炭素材料にも分散効果があると思われるため、導電助剤としての炭素材料の分散性も向上すると考えられる。
【0224】
酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の誘導体で、あらかじめ処理された負極活物質を使用することも出来る。負極活物質を、酸性官能基を有する各種誘導体であらかじめ処理した後、塩基性官能基を有する樹脂と、必要に応じて更に塩基性官能基を有する各種誘導体を添加し、上述した方法で負極合材を作成することが出来る。
【0225】
酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の誘導体であらかじめ処理された負極活物質を得る方法としては、乾式処理による方法および、液相中での処理による方法が挙げられる。
【0226】
乾式処理としては、例えば、常温もしくは加熱下で、乾式処理装置により負極活物質および分散剤の、混合、粉砕等を行いながら、負極活物質表面に分散剤を作用(例えば吸着)させる方法が挙げられる。使用する装置としては特に限定されるものではく、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、アトライター、振動ミル等のメディア型分散機、ニーダー、ローラーミル、石臼式ミル、プラネタリーミキサー、フェンシェルミキサー、ハイブリダイザー((株)奈良機械製作所)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所)、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株))等のメディアレス分散・混錬機が使用できるが、金属コンタミ等を考慮し、メディアレスの分散・混錬機を使用するのが好ましい。
【0227】
液相処理としては、溶剤中で、酸性官能基を有する各種誘導体と負極活物質とを混合し、前記誘導体を負極活物質に作用(例えば吸着)させる工程と、前記誘導体が作用した負極活物質を凝集させ、凝集粒子を得る工程を含むことが好ましい。
【0228】
特に、酸性官能基を有する各種誘導体を、溶剤に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に負極活物質を添加して混合・分散することで、これら分散剤を負極活物質に作用(例えば吸着)させるのが好ましい。
【0229】
酸性官能基を負極活物質に作用(例えば吸着)させる工程において使用する溶剤としては、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。とりわけ、処理液中での負極活物質の濃度を上げ、処理効率を高めるためには、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、更に好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用するのが好ましい。
比誘電率が15を下回る溶剤では前記誘導体の溶解性が著しく低下し、負極活物質の分散性は低下するため、負極活物質濃度を上げることができないことが多く、また、比誘電率が200を超える溶剤を使用しても、顕著な効果が得られないことが多い。
【0230】
負極活物質を溶剤に混合・分散させつつ、上記誘導体を負極活物質に作用(例えば吸着)させるための装置としては、顔料分散等に通常用いられている上述した分散機が使用できる。処理の効率や生産性の観点から、ミキサーやメディア型分散機の使用が好ましい。また、装置からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0231】
酸性官能基を有する各種誘導体が作用した負極活物質を液中で凝集させ、凝集粒子を得る工程としては、上述の処理物を加熱および/もしくは減圧して、溶剤を留去する方法が挙げられる。
【0232】
また、負極活物質表面にある酸性官能基を有する各種誘導体の溶剤に対する溶解性または分散性を低下させて凝集させる方法として、上述の処理スラリーにを比誘電率が15未満、さらに好ましくは10以下の溶剤と混合することで凝集させる方法等が挙げられる。比誘電率が15未満の溶剤としては特に限定されるものではないが、例えば、メチルイソブチルケトン(比誘電率:13.1)、酢酸エチル(6.0)、酢酸ブチル(5.0)、ジエチルエーテル(4.2)、キシレン(2.3)、トルエン(2.2)、ヘプタン(1.9)、ヘキサン(1.9)、ペンタン(1.8)等が挙げられる。そしてこれらの凝集物を、濾過または遠心分離等により取り出す。得られた処理物はそのまま使用することもできるが、その後、洗浄、乾燥、粉砕して使用するのが好ましい。
【0233】
水系であらかじめ処理を行う場合、水はイオン交換水または精製水を使用するのが好ましい。また、酸性官能基を有する各種誘導体の溶解性を上げるために、処理液のpHは、7<pH<14が好ましく、更に好ましくは7<pH≦11、特に好ましくは8≦pH≦10である。処理液のpHを塩基性にする為に塩基性化合物を添加する。塩基性化合物としては、アルカリ金属等の金属水酸化物類、弱酸と強塩基の反応により得られる塩類、アンモニア、有機アミン類等、水に溶解して塩基性を示す化合物を用いることができる。
【0234】
酸性官能基を有する各種誘導体が作用した負極活物質を液中で凝集させ、凝集粒子を得る工程としては、上述の処理物を加熱および/もしくは減圧して、水分を留去する方法が挙げられる。また、負極活物質表面にある前記誘導体の、水に対する溶解性または分散性を低下させて凝集させる方法として、処理液のpHを中性ないしは酸性化して凝集させる方法、また、例えば塩化ナトリウムの様な無機塩を添加し、負極活物質表面の分散剤を塩析させ凝集させる方法、更には、アミンまたはアミン塩等を添加して凝集させる方法等が挙げられる。中でも、処理液のpHを中和ないしは酸性化して凝集させる方法および、アミンまたはアミン塩等を添加して凝集させる方法が好ましい。
【0235】
中和ないし酸性化には酸性化合物を添加する。酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、強酸と弱塩基の反応によって得られる塩類の無機化合物、カルボン酸類、スルホン酸類などの有機酸、水に溶解して酸性を示す化合物を用いることができる。中でも揮発性のカルボン酸類や塩酸の使用が好ましい。
【0236】
また、アミンおよびアミン塩としは、負極活物質に分散剤を作用させる工程で使用した塩基よりも水に対する溶解性が低いものを使用することが好ましい。
【0237】
凝集させた粒子については、濾過または遠心分離、洗浄工程を経て、酸性官能基を有する各種誘導体をあらかじめ処理した負極活物質とするのが好ましい。また、得られた酸性官能基を有する各種誘導体をあらかじめ処理した負極活物質は、乾燥して使用することもできる。
【0238】
<リチウム二次電池>
次に、本発明の組成物を用いたリチウム二次電池について説明する。
【0239】
リチウム二次電池は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合材層と前記集電体との間や、前記負極合材層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。
【0240】
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅の使用が好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、およびメッシュ状のものも使用できる。
【0241】
正極合材層は、正極活物質、導電助剤、バインダー成分等からなる。正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーを使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0242】
導電助剤としては、炭素材料、リチウムと合金化し難い金属、導電性高分子材料等を使用することができる。また、バインダー成分としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0243】
集電体上に電極合材層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合材ペーストを直接塗布し乾燥する方法、および集電体上に電極下地層を形成した後に電極合材ペーストを塗布し乾燥する方法などが挙げられる。また、電極下地層の上に電極合材層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合材ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合材層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0244】
塗布方法については、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法等が挙げられる。また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
【0245】
本発明のリチウム二次電池を構成する電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、LiBPh等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0246】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のグライム類、メチルフォルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、アセトニトリル等のニトリル類、が挙げられる。またこれらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0247】
更に上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0248】
本発明の組成物を用いたリチウム二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型など、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【0249】
[実施例]
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表す。
実施例で使用した分散剤について構造を表1〜表5に示す。
【0250】
【表1】

【0251】
【表2】

【0252】
【表3】

【0253】
【表4】

【0254】
【表5】

【0255】
<負極活物質分散体の調製>
[負極活物質分散体1〜27]
表6に示す組成に従い、容器に、溶剤、塩基性官能基を有する各種誘導体、酸性官能基を有する樹脂を仕込み、混合攪拌して該誘導体を完全ないしは一部溶解させた。次に、負極活物質を加え、メディアレス分散機であるフィルミックス(プライミクス社製)で分散し、負極活物質分散体(1)〜(27)を得た。
【0256】
負極活物質としては、メソフェーズカーボンMFC(mesophase carbon)(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m/g大阪ガスケミカル社製)、球状黒鉛(平均粒径約10〜20μm、日本黒鉛社製)、チタン酸リチウム(LiTi12、平均一次粒子径0.3μm、比表面積15m/g)、リチウムバナジウム酸化物(Li1.10.9、特開2008−153177記載の方法で作成したもの)のいずれかを使用した。
また、複合化負極活物質については、後述する方法で調整した複合化負極活物質(a)〜(d)を用いた。
【0257】
塩基性官能基を有する各種誘導体であらかじめ処理した負極活物質については、後述する方法で調整した、誘導体前処理負極活物質(e)を用いた。
【0258】
塩基性官能基を有する樹脂については、後述する方法で作成したものを使用した。また、塩基性官能基を有する樹脂(G1)、(G2)以外の塩基性官能基を有する樹脂として、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)、SOLSPERSE24000GR(日本ルーブリゾール社製)を使用した。
尚、表6中のアニオン性の界面活性剤は、デモールN(β−ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩、花王社製)を使用した。
【0259】
<複合化負極活物質の調製>
[複合化負極活物質の調整(a)]
メソフェーズカーボンMFC(mesophase carbon)(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m/g大阪ガスケミカル社製)47部、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m/g、電気化学工業社製)3部を、ハイブリダイゼーション(奈良機会製作所社製)で処理し複合化負極活物質(a)を得た。
[複合化負極活物質の調整(b)]
チタン酸リチウム(LiTi12、平均一次粒子径0.3μm、比表面積15m/g)47部、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m/g、電気化学工業社製)3部を、ハイブリダイゼーション(奈良機会製作所社製)で処理し複合化負極活物質(b)を得た。
[複合化負極活物質の調整(c)]
リチウムバナジウム酸化物(Li1.10.9、特開2008−153177記載の方法で作成したもの)、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、一次粒径48nm、比表面積48m/g、電気化学工業社製)3部を、ハイブリダイゼーション(奈良機会製作所社製)で処理し複合化負極活物質(c)を得た。
[複合化負極活物質の調整(d)]
ケイ素粉末(平均一次粒子径3μm)を、炭素源としてトルエンを用いCVD処理し、カーボンコーティングされた複合化負極活物質(d)を得た。
【0260】
<誘導体前処理負極活物質の調製>
[誘導体前処理負極活物質の調整(e)]
イオン交換水2000部に、分散剤De5部を添加した。ディスパーにて攪拌混合しつつ25%アンモニア水を添加し、液のpHを約10とし、分散剤を溶解させた。続いて、メソフェーズカーボンMFC(mesophase carbon)(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m/g大阪ガスケミカル社製)100部を加え、pHを9.5〜10.5の範囲で維持しながら攪拌混合した。次に、処理スラリーを磁石つきのストレーナーを通した後、1N塩酸水溶液を加え、液のpHを2〜3とした。このとき液の粘度が急激に上昇するため、適宜イオン交換水を追加した。凝集物を濾取した後、イオン交換水で洗浄、その後乾燥、粉砕して分散剤前処理処理負極活物質(e)を得た。
【0261】
<塩基性官能基を有する樹脂>
● 塩基性官能基を有する重合体(G1)タイプ
[アミノ基を有するビニル系樹脂(G1−1)の調整]
<ビニル重合体(A1−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 500部、チオグリセロール 28部と、N−メチル−2−ピロリドン 528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4200の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(a−1)の固形分50%溶液を得た。
【0262】
<重合体(A1−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−1)の固形分50%溶液 1022部と、イソホロンジイソシアネート 45.2部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.11gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン 26.7部、N−メチル−2−ピロリドン 363.3部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体(G1−1)の淡黄色透明溶液を得た。重合体(G1−1)の重量平均分子量は13500であり、アミン価27.5mg KOH/gであった。
【0263】
[アミノ基を有するビニル系樹脂(G1−2)の調整]
<ビニル重合体(A1−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルメタクリレート 500部と、チオグリセロール 28部と、N−メチル−2−ピロリドン 528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4800の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1−2)の固形分50%溶液を得た。
【0264】
<重合体(G1−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−2)の固形分50%溶液 1056部と、イソホロンジイソシアネート 115.1部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.12gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン 25.5部と、2−アミノ−2−メチル−プロパノール 11.5部と、N−メチル−2−ピロリドン 492.0部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体(G1−2)の淡黄色透明溶液を得た。重合体(G1−2)の重量平均分子量は21600であり、アミン価17.4mg KOH/gであった。
【0265】
[アミノ基を有するビニル系樹脂(G1−3)の調整]
<ビニル重合体(A1−3)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 400部と、ブチルアクリレート 100部と、チオグリセロール 56部と、N−メチル−2−ピロリドン 556部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量3000の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1−3)の固形分50%溶液を得た。
【0266】
<重合体(G1−3)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−3)の固形分50%溶液 1112部と、イソホロンジイソシアネート 230.2部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.13gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、メチルイミノビスプロピルアミン 56.4部と、ジブチルアミン 33.4部と、N−メチル−2−ピロリドン 757.9部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体(G1−3)の淡黄色透明溶液を得た。重合体(G1−3)の重量平均分子量は11900であり、アミン価25.2mg KOH/gであった。
【0267】
● 塩基性官能基を有する重合体(G2)タイプ
[アミノ基を有するポリエステル系重合体(G2−1)の調整]
<片末端にアクリロイル基を有するポリエステル(A2−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、4−ヒドロキシブチルアクリレート20.8部とε−カプロラクトン379部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部を仕込み、乾燥空気流下で120℃で4時間加熱、撹拌し固形分測定により95%が反応したことを確認し反応を終了し、N−メチル−2−ピロリドン171部を加えて希釈し、更に、固形分70重量%に調整して、重量平均分子量6500の、片末端に1つのアクリロイ基を有するポリエステル(A2−1)の固形分70重量%溶液を得た。
【0268】
<重合体(G2−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン18.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してポリエステル(A2−1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート16.0部、N−メチル−2−ピロリドン112部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/gの重合体(G2−1)の固形分30重量%溶液を得た。
【0269】
[アミノ基を有するポリエステル系重合体(G2−2)の調整]
<重合体(G2−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルイミノビスプロピルアミン23.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してポリエステル(A2−1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート18.3部、N−メチル−2−ピロリドン207部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量27000、アミン価41mgKOH/gの重合体(G2−2)の固形分30重量%溶液を得た。
【0270】
[アミノ基を有するビニル系重合体(G2−3)の調整]
<片末端にアクリロイル基を有するビニル重合体(A2−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート400部とブチルアクリレート100部、N−メチル−2−ピロリドン100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール27.5部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、N−メチル−2−ピロリドン427部を加えて希釈したのち、乾燥空気流下でアクリロイルオキシエチルイソシアネート32.6部、DBTDL 1部、メチルハイドロキノン0.3部を加え、さらに2時間加熱攪拌し、更に、固形分50重量%に調整して、重量平均分子量4500の、片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体(A2−2)の固形分50重量%溶液を得た。
【0271】
<重合体(G2−3)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン27.8部と、N−メチル−2−ピロリドン184部を仕込み、50℃に加熱してビニル重合体(A2−2)の固形分70重量%溶液500部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート15.7部、N−メチル−2−ピロリドン121部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量15200、アミン価94mgKOH/gの重合体(G2−3)の固形分30重量%溶液を得た。
【0272】
【表6】

表6中、略称は以下に示す通りである。
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
PB821:アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)
SP24000:SOLSPERSE24000GR(日本ルーブリゾール社製)
【0273】
<負極活物質と導電助剤の共分散体調整>
表7に示す組成に従い、容器に、溶剤、酸性官能基を有する各種誘導体を仕込み、混合攪拌して該誘導体を完全ないしは一部溶解させた。次に、負極活物質、導電助剤を加え、メディアレス分散機であるフィルミックス(プライミクス社製)で分散し、負極活物質導電助剤共分散体(28)〜(31)を得た。
【0274】
導電助剤としては以下のものを使用した。
・デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):
アセチレンブラック、一次粒径48nm、比表面積48m2/g。
・デンカブラックFX−35(電気化学工業社製):
アセチレンブラック、一次粒径23nm、比表面積133m2/g。
・Super−P Li(TIMCAL社製):
ファーネスブラック、一次粒径40nm、比表面積62m2/g。
【0275】
【表7】

表7中、略称は以下に示す通りである。
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
【0276】
<分散処理負極活物質の濡れ性評価>
負極活物質分散体1、2、7、9、21、22については、分散処理後の負極活物質の濡れ性評価を行った。
【0277】
各負極活物質分散体の溶剤をエバポレーターにて減圧留去した後、得られた残渣を80℃で10時間減圧乾燥した。続いて乾燥物をメノウ製の乳鉢で粉砕した後、更に80℃で12時間減圧乾燥した。得られた乾燥物を再度メノウ製乳鉢で粉砕した後、錠剤成型器(Specac社製)にて500kgf/cmで荷重をかけ、負極活物質のペレットを作製(直径10mm、厚0.5mm)した。このペレットにマイクロシリンジにて、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1混合した液滴を落とし、液滴がペレットに浸透する時間を測定した。この測定を各サンプルとも5回行い、それらの平均浸透時間が1秒未満であったものを「◎」、1秒以上、5秒未満であったものを「○」、5秒以上、10秒未満であったものを「△」、10秒以上であったものを「×」とした。
【0278】
結果を表8に示す。本発明の、酸性官能基を有する各種誘導体と、塩基性官能基を有する樹脂を用いて分散した負極活物質は、比較例1のものと比べて、電解液に対する濡れ性が向上している。
【0279】
【表8】

【0280】
<リチウム二次電池用負極合材ペーストの調製>
負極活物質分散体(1)〜(27)、負極活物質導電助剤共分散体(28)〜(31)を用い、以下の様にして負極合材ペースト(1)〜(31)を作成した。組成を表9および表10に示す。
[負極合材ペースト(1)〜(5)、(7)〜(10)、(12)〜(14)、(16)〜(27)]
負極活物質分散体146.5部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW1100、クレハ社製)4.9部、導電助剤2部およびN−メチル−2−ピロリドン18部を加え、プラネタリーミキサーにより混練し、負極合材ペーストとした。
尚、複合化負極活物質を使用している負極活物質分散体については、導電助剤量を1部とした。
【0281】
[負極合材ペースト(6)、(11)、(15)]
負極活物質分散体146.5部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW1100、クレハ社製)4.9部、導電助剤2部およびN,N’−ジメチルホルムアミド18部を加え、プラネタリーミキサーにより混練し、負極合材ペーストとした。
尚、複合化負極活物質を使用している負極活物質分散体については、導電助剤量を1部とした。
【0282】
[負極合材ペースト(28)〜(30)]
負極活物質導電助剤共分散体148.5部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW1100、クレハ社製)4.9部、およびN−メチル−2−ピロリドン18部を加え、プラネタリーミキサーにより混練し、負極合材ペーストとした。
[負極合材ペースト(31)]
負極活物質導電助剤共分散体148.5部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW1100、クレハ社製)4.9部、およびN,N’−ジメチルホルムアミド18部を加え、プラネタリーミキサーにより混練し、負極合材ペーストとした。
【0283】
【表9】

表9中、略称は以下に示す通りである。
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
【0284】
【表10】

表10中、略称は以下に示す通りである。
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
【0285】
<リチウム二次電池用負極の作製>
先に調製した各種負極合材ペーストを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥、圧延処理し、厚さ100μmの負極合材層(1)〜(31)を作製した。
<リチウム二次電池負極評価用セルの組み立て>
先に作製した負極を、直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製 #2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、セル組み立て後、以下に示す電池特性評価を行った。
【0286】
<リチウム二次電池負極特性評価>
[充放電サイクル特性 実施例6−31、比較例2−6]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電にて、0.05Vで満充電とし、充電時と同じレートの定電流で電圧が1.5Vになるまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とした。
まず5回この充放電操作を行い、6回目の放電容量を初期値とした。その後、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工製SM−8)を行った。また、評価後のセルを分解し、電極塗膜不良の有無を目視にて確認し、問題の無いものは「○」とした。評価結果を表11および表12に示す。
【0287】
【表11】

【0288】
【表12】

表11および表12の結果から分かる通り、実施例6〜31は、本発明で添加する分散剤を使用していない比較例2〜6と比べて、負極活物質の分散性が優れていて粗大な凝集粒子が存在しないため、20サイクル容量維持率が向上した。
【0289】
[負極活物質分散体保存試験 実施例32、33、比較例7、8]
負極合材ペースト(1)、(19)、(22)、(23)について、40℃で1週間保存した後、上述した方法で負極および評価用セルを作成し、実施例6〜31および比較例2〜6と同様に充放電サイクル試験を行った。結果を表13に示す。
【0290】
【表13】

【0291】
表13の結果から分かる通り、実施例32、33は負極活物質の分散安定性が優れているため、負極合材ペーストを40℃で1週間保存した後に評価を行うと、本発明で添加する分散剤を使用していない比較例7、8と比べて、20サイクル容量維持率が高かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性官能基を有する有機色素誘導体、および酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂と、負極活物質とを含むことを特徴とする負極合材。
【請求項2】
塩基性官能基を有する樹脂が、
片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、少なくともポリアミン(D1)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基とを反応してなるアミン価が1〜100mgKOH/gである重合体(G1)、並びに、
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応してなるアミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基とを反応してなるアミン価が5〜100mgKOH/gである重合体(G2)、からなる群から選ばれる1種類以上の塩基性官能基を有する樹脂である請求項1記載の負極合材。
【請求項3】
重合体(G1)を構成する片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)が、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなることを特徴とする請求項2記載の負極合材。
【請求項4】
重合体(G2)を構成する片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)が、ビニル重合体、又はポリエステルを含むことを特徴とする請求項2または3記載の負極合材。
【請求項5】
負極活物質が炭素材料であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の負極合材。
【請求項6】
負極活物質が導電性物質で複合化された負極活物質であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の負極合材。
【請求項7】
負極活物質と複合化する導電性物質が、炭素材料であることを特徴とする請求項6記載の負極合材。
【請求項8】
更に、酸性官能基を有する樹脂以外のバインダー成分を含んでなる請求項1ないし7いずれか記載の負極合材。
【請求項9】
更に、導電助剤としての炭素材料を含むことを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の負極合材。
【請求項10】
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上と、塩基性官能基を有する樹脂の存在下、負極活物質と、導電助剤としての炭素材料とを共分散することを特徴とする、請求項9記載の負極合材の製造方法。
【請求項11】
集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記負極合材層が、請求項1ないし9いずれか記載の負極合材、および請求項10記載の製造方法により製造された負極合材、を用いて作成されたことを特徴とするリチウム二次電池。


【公開番号】特開2010−61931(P2010−61931A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225385(P2008−225385)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】