説明

貫流ボイラの水位検出用電極棒、貫流ボイラの水位検出方法及び貫流ボイラの水位制御方法。

【課題】高温、高圧、高PH環境下の貫流ボイラの水管と連通する金属製の容器に収容された水の水位をアナログ的に検出することができる貫流ボイラの水位検出用電極棒を提供する。
【解決手段】ボイラ缶体と連通する金属製の容器5を貫通するように取り付けられ、容器5の外側へ突出する外部電源接続端子部2と容器5の内側へ突出する水位検出電極部3を備えた貫流ボイラの水位検出用電極棒1の水位検出電極部3の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いポリエーテルエーテルケトンまたはフッ素樹脂などのエンジニアリングプラスチックで絶縁被膜6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫流ボイラの水位を検出するために、ボイラ缶体内と連通するように接続された金属製の容器に取り付けられる水位検出用電極棒、及びこの水位検出用電極棒を使用した貫流ボイラの水位検出方法、及び貫流ボイラの水位制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気の生成に貫流ボイラが多く使用されているが、貫流ボイラでは、加熱により水管内で発生した泡が上部管寄せに接続されるヘッダ部位を超える状態であるとき、生成された蒸気内に水が混ざり、得られる蒸気は、水分の多い湿った品質の悪い蒸気となる。また、水管内で発生した泡がヘッダ部位まで達しない状態であるとき、生成された蒸気内に水が混ざらず、得られる蒸気は乾いた品質の良い蒸気となるが、水管内で発生した泡の位置が低く、水管のヘッダ部位に泡による水膜が形成できない場合、水管が鉄で製造されているためヘッダ部位が火炎により加熱され溶けて破損するといった事態が生じる。そのため、水管内の水位を、加熱により水管内で発生した泡がヘッダを超えず、水管のヘッダ部分に水膜ができる程度の水位に制御することが求められている。
【0003】
前記水管内の水位は加熱により発生する泡の大きさによって求められる。即ち、発生する泡が大きい時は水位を低くし、泡が小さい時は水位を高くする。発生する泡の大きさは、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等によって異なる。
【0004】
このようなことから、貫流ボイラでは、燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、最適の水位を設定しておき、水管内の水位をセンサーとなる水位検出用電極棒により検出しながら、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じた水位となるように、水管内への給水、給水停止を行うことにより水管内の水位を制御している。
【0005】
従来の貫流ボイラでは、前記水位検出用電極棒による水管内における水位の検出は、次のようにして行われている。
【0006】
前記水位検出用電極棒は、電源に接続される外部電源接続端子部と水と接する水位検出電極部を備え、絶縁体を介して貫流ボイラの水管と連通する水位検出用の金属製の容器に取り付けられている。貫流ボイラの水管と連通する容器は、貫流ボイラの水管と共通する水を収容し、収容した水は水管の水位と共通の水位となる。そして、電源の一方を水位検出用電極棒の外部電源接続端子部と接続し、電源の他方を容器と接続して通電し、外部電源接続端子部と容器との間の導通状態の変化により、水位が水位検出電極部に達したかどうかを検出することができるようになっている。
【0007】
前記容器には、燃焼量と蒸気圧力と給水温度と缶水の電気伝導度とにより設定された水位に対応したそれぞれ長さの異なる複数の水位検出用電極棒が取り付けられており、各水位検出用電極棒で検出された前記容器内の水位が水位制御装置に送信され、水管内の水位が、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて設定された水位となるように、給水制御されて、水管内の水位が所定の水位に制御されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−147407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
貫流ボイラでは、水管内の水位制御は、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて制御されるが、良質な蒸気を得るため、また水管の破損を防止するためには、燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて細かく水位を設定して制御することが好ましい。
【0009】
しかし、従来は、水管内の水位の検出は前記のように長さの異なる複数の水位検出用電極棒により検出しており、1本の水位検出用電極棒で1つの水位しか検出できないため、燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて水位を細かく制御しようとすると、容器に取り付ける水位検出用電極棒の本数も多くなり、その分装置も大きくなり、またコストもアップするといった問題がある。
【0010】
そのため、従来は、3〜4通りの水位を設定し、この設定された水位の中で、水管内の水位を制御している。前記特許文献1では、燃焼量と蒸気圧力、また燃焼量と缶水の電気伝導度を組み合わせた4通りの水位を設定し、この4通りの水位の中で水管内の水位を制御することが記載されている。しかし、前記3〜4通りの水位の中での水位の制御では、水管内の水位を必ずしも良質な蒸気を得るため、また水管の破損を防止するための水位とすることは難しい。
【0011】
そこで、上記の問題点を解決するものとして、水位検出用電極棒の水位検出電極部の表面に誘電体となる絶縁被膜を形成し、容器内で水が水位検出電極部に接触する部分をもってコンデンサとし、通電して水位検出電極部に接触する水の変化による水位検出電極部と容器との間の静電容量を測定すれば、この測定された静電容量により容器内における水位検出電極部と接触する水の水位をアナログ的に検出することができ、これにより水管内の水位の細かな制御ができることが考えられる。
【0012】
しかし、貫流ボイラの水管内は、高温、高圧、高PHの環境にあり、高温、高圧、高PHに耐える絶縁材で水位検出電極部の表面に誘電体となる絶縁被膜を形成した水位検出用電極棒は無かった。
【0013】
そこで、本発明者等は、試験研究の結果、耐高温性、耐高圧性、耐高PH性(耐薬品性)の高い絶縁材を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の目的は、貫流ボイラの水管と連通する金属製の容器に収容された水の水位をアナログ的に検出することができる貫流ボイラの水位検出用電極棒を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、上記水位検出用電極棒を使用することにより、ボイラの水管と連通する金属製の容器に収容された水の水位をアナログ的に検出する貫流ボイラの水位検出方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、水管内の水位を、良質な蒸気を得、且つ、水管の破損を防止する最良の水位に制御できるようにした貫流ボイラの水位検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ボイラ缶体内と連通する金属製の容器を貫通するように絶縁体を介して取り付けられ、前記容器の外側へ突出する外部電源接続端子部と前記容器の内側へ突出する水位検出電極部を備えた貫流ボイラの水位検出用電極棒であって、前記水位検出電極部の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記エンジニアリングプラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン或いはフッ素樹脂であることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の水位検出用電極棒を使用した貫流ボイラの水位検出方法であって、電源の一方を前記外部電源接続端子部と接続し、前記電源の他方を前記容器と接続して通電し、前記水位検出電極部の表面に形成された絶縁被膜を誘電体として、前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定し、この静電容量により前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の、前記容器に、前記水位検出電極部の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を補正することを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の貫流ボイラの水位検出方法を使用した貫流ボイラの水位制御方法であって、燃焼量と、蒸気圧力と、給水温度と、缶水の電気伝導度とにより、当該貫流ボイラの目標比例水位を設定しておき、前記貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度とを検出し、これらの検出された検出値により特定される目標比例水位と、水位検出方法により検出された前記貫流ボイラの現実水位との差を常時算出し、現実の水位が特定される目標比例水位を上回っているときは給水を停止し、現実の水位が特定される目標比例水位を下回っているときは目標比例水位まで給水するように給水量を制御することを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の、前記水位検出方法は、前記容器に、前記水位検出電極部の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を補正する水位補正手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の貫流ボイラの水位検出用電極棒によれば、ボイラ缶体内と連通する金属製の容器の内側へ突出する水位検出電極部の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜が形成されているので、水位検出電極部の表面に形成されている絶縁被膜は、前記容器内の高温、高圧、薬品に耐えることができ、そして、前記容器内で水が前記水位検出電極部と接触する部分がコンデンサがとなり、通電して水が接触する前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定することにより、前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することができ、該測定された静電容量の変化によって前記水位の変化をアナログ的に検出することができる。
【0024】
このような水位検出用電極棒を貫流ボイラの水位の制御に使用することにより、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を細かく制御することが容易となり、水管内の水を常に最適の水位とすることができ、良質な蒸気を得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止することができることになる。
【0025】
請求項2に記載の貫流ボイラの水位検出用電極棒によれば、請求項1に記載の、前記エンジニアリングプラスチックが、ポリエーテルエーテルケトンであるので、水位検出電極部の表面に形成された絶縁被膜は金属製容器内の高温、高圧、薬品に耐えることができ、コンデンサとしての機能を確実に果たすことができる。
【0026】
請求項3に記載の貫流ボイラの水位検出方法は、請求項1又は2に記載の水位検出用電極棒を使用し、電源の一方を前記外部電源接続端子部と接続し、前記電源の他方を前記容器と接続して通電し、前記水位検出電極部の表面に形成された絶縁被膜を誘電体として、前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定し、この静電容量により前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出するようにしたので、前記容器内で水が前記水位検出電極部に接触する部分がコンデンサとなり、通電して水が接触する前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定することにより、前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することができ、この測定された静電容量の変化によって前記水位の変化をアナログ的に検出することができ、この水位の変化を検出することにより、貫流ボイラの水管内の水の水位をアナログ的に検出することができる。
【0027】
このような水位検出方法を貫流ボイラの水位の制御に使用することにより、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を細かく制御することが容易となり、水管内の水を常に最適の水位とすることができ、良質な蒸気を得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止することができる。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の、前記容器に、前記水位検出電極部の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を補正するようにしたので、水内に混在した芥等が水位検出電極部へ付着することにより静電容量に変化が生じ、検出した水の水位に誤差が生じても、前記容器内における水の正確な水位を検出することができる。
【0029】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の貫流ボイラの水位検出方法を使用した貫流ボイラの水位制御方法であって、燃焼量と、蒸気圧力と、給水温度と、缶水の電気伝導度とにより、当該貫流ボイラの目標比例水位を設定しておき、前記貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び給缶の電気伝導度とを検出し、これらの検出された検出値により特定される目標比例水位と、水位検出方法により検出された前記貫流ボイラの現実水位との差を常時算出し、現実の水位が特定される目標比例水位を上回っているときは給水を停止し、現実の水位が特定される目標比例水位を下回っているときは目標比例水位まで給水するように給水量を制御するようにしたので、前記貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を常に最適の水位とすることができることになり、良質な蒸気を得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止することができる。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の、前記水位検出方法が、前記容器に、前記水位検出電極部の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を補正する水位補正手段を備えているので、水内に混在した芥等が水位検出電極部へ付着することにより静電容量に変化が生じ、検出した水の水位に誤差が生じても、前記容器内における現実の水位を正確に検出することができ、これにより前記貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を常に且つ確実に最適の水位とすることができることになり、良質な蒸気を確実に得ることができるとともに、水管の破損を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る貫流ボイラの水位検出用電極棒、貫流ボイラの水位検出方法及び貫流ボイラの水位制御方法を実施するための最良の形態を説明する。
【0032】
先ず、本発明に係る貫流ボイラの水位検出用電極棒の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る貫流ボイラの水位検出用電極棒の実施の形態の一例を示す一部断面正面図である。
【0033】
本例の水位検出用電極棒1は、一端側に外部電源接続端子部2を、他端側には水位検出電極部3を備えており、筒状の絶縁体4で保持され、この絶縁体4を介して、外部電源接続端子部2が金属製の容器5の外側へ突出し、そして水位検出電極部3が容器5の内側へ突出するように容器5に取り付けられるようになっている。
【0034】
水位検出電極部3にあっては、ステンレスで形成され、その表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜6が形成されている。該エンジニアリングプラスチックとしては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリルエーテルケトン等のケトン系合成樹脂材料が使用されるが、特に、耐熱性の高いポリエーテルエーテルケトンが好ましい。
【0035】
前記のように、その表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜6が形成されている水位検出電極部3は、その長さが、少なくとも必要最低水位を検出できる長さに設定されている。
【0036】
前記のように構成された水位検出用電極棒1によれば、水を収容する容器5の内側へ突出する水位検出電極部3の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜6が形成されているので、電源の一方を外部電源接続端子部2と接続し、前記電源の他方を容器5と接続して通電すると、容器5内で水と接触する水位検出電極部3の接触部分がコンデンサとなり、水位検出電極部3の表面に形成された絶縁被膜6を誘電体として、水位検出電極部3と容器5との間の静電容量を測定し、該静電容量により容器5内で水位検出電極部3と接触する水の水位を検出することができ、該測定された静電容量の変化によって前記水位の変化をアナログ的に検出することができる。前記電源として、本例では交流電源が使用されている。
【0037】
このような水位検出用電極棒1を貫流ボイラの水位の制御に使用することにより、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を細かく制御することが容易となり、水管内の水を常に最適の水位とすることができ、良質な蒸気を得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止することができるものとなる。
【0038】
また、水位検出電極部3の表面の絶縁被膜6は耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックで形成されているので、容器5内の高温、高圧、薬品に耐えることができ、コンデンサとしての機能を確実に果たすことができる。
【0039】
次に、前記水位検出用電極棒1を使用した本発明に係る貫流ボイラの水位検出方法の実施の形態を説明する。
本例では、水位検出電極部3の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜6が形成されている水位検出用電極棒1を、その外部電源接続端子部2を容器5の外側へ突出させ、そして水位検出電極部3を容器5の内側へ突出させるようにして取り付け、交流電源の一方を水位検出用電極棒1の外部電源接続端子部2と接続し、前記交流電源の他方を容器5と接続して通電する。
【0040】
そして、水位検出電極部3の表面に形成された絶縁被膜6を誘電体として、水位検出電極部3と容器5との間の静電容量を測定し、この静電容量により容器5内で水位検出電極部3と接触する水の水位を検出する。
【0041】
このようにすることにより、容器5内で水と接触する水位検出電極部3の接触部分がコンデンサとなり、通電して水と接触する水位検出電極部3と容器5との間の静電容量を測定することにより、容器5内で水位検出電極部3と接触する水の水位を検出することができる。そして、測定された静電容量の変化によって水位の変化をアナログ的に検出することができ、検出した水位の変化により、貫流ボイラの水管内の水の水位をアナログ的に検出することができる。
【0042】
このような水位検出方法を貫流ボイラの水位の制御に使用することにより、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を細かく制御することが容易となり、水管内の水を常に最適の水位とすることができ、良質な蒸気を得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止することができる。
【0043】
また、本例では、容器5に、水位検出電極部3の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した容器5に収容された水の特定の水位と、水位検出電極部3と容器5との間の静電容量を測定して検出した容器5内における水の水位との差を求め、この差を基に、水位検出電極部3と容器5との間の静電容量を測定して検出する容器5内における水の水位を補正する。
【0044】
このようにすることにより、水内に混在した芥等が水位検出電極部3へ付着することにより静電容量に変化が生じ、検出した水の水位に誤差が生じても、容器5内における水の正確な水位を検出することができるものとなり、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水を常に最適の水位に正確に制御することができ、良質な蒸気をより確実に得ることができるとともに、水管の破損をより確実に防止することができる。
【0045】
図2は本発明に係る貫流ボイラの水位検出方法を実施するボイラシステムの一例の概略構成を示す説明図である。
図中、7はボイラ缶体であって、このボイラ缶体7は、円周方向へ所定の間隔で立設された複数の水管8と、この複数の水管8の下端に接続され、給水ポンプ9から給水管10を介して水を導入し複数の水管8に供給する下部管寄せ11と、複数の水管8の上端に接続され、水管8で生成された蒸気を集め蒸気管12から負荷側へ送りだす上部管寄せ13と、複数の水管8により包囲されて形成された燃焼室14とで構成されている。
【0046】
ボイラ缶体7には、下部管寄せ11及び上部管寄せ13に、連通管15,16を介して水管8内の水位を検出する水位検出用の容器5が接続されている。
【0047】
容器5には、水位検出電極部3の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜6が形成されている水位検出用電極棒1が、その外部電源接続端子部2を容器5の外側へ突出させ、そして水位検出電極部3を容器5の内側へ突出させるようにして取り付けられている。水位検出電極部3は、その長さが、少なくとも必要最低水位を検出できる長さに設定されている。
【0048】
そして、電源17の一方が外部電源接続端子部2と接続され、電源17の他方が容器5と接続されている。本例では、電源17として交流電源が使用されている。この電源回路には、通電により、水位検出電極部3の表面に形成された絶縁被膜6を誘電体として、水位検出電極部3と容器5との間の静電容量を測定する測定回路部18と、予め設定した静電容量と水管8内の水位の関係が記憶され、測定回路部18で測定した静電容量を水管8内の水位に変換するプログラムを備え、静電容量から変換した水位を検出する水位検出回路部19と、後述する補正用水位検出用電極棒で検出された水の特定の水位と、水位検出回路部19で検出した水位との差を求め、該差を記憶し、該差を基に、水位検出回路部19で検出した水位を補正するプログラムを備え、水位検出回路部19で検出した水位を補正する補正水位検出回路部20とが接続されている。
【0049】
更に、容器5には、水位検出電極部3の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒21が併設されている。この補正用水位検出用電極棒21は、一端側に外部電源接続端子部22を、他端側には水位検出電極部23を備えており、筒状の絶縁体24で保持され、この絶縁体24を介して、外部電源接続端子部22が容器5の外側へ突出し、そして水位検出電極部23が容器5の内側へ突出するように容器5に取り付けられている。
【0050】
そして、電源25の一方が外部電源接続端子部22と接続され、電源25の他方が容器5と接続されている。本例では、電源25として交流電源が使用されている。この電源回路には、通電により、水位検出電極部23の下端に水が接触することによる外部電源接続端子部22と容器5との間の導通状態の変化により、容器5内の水が水位検出電極部23の下端に達したこと、即ち、容器5内の水が特定の水位に達したことを検出し、容器5内の水が特定の水位に達したことを補正水位検出回路部20に送信する水位検出回路部26が接続されている。
【0051】
更に、貫流ボイラの水位検出方法を実施するボイラシステムには、燃焼量と蒸気圧力と給水温度と缶水の電気伝導度とにより水管8内の水の水位を設定した水位設定部27と、貫流ボイラの現実の運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等の入力により水位設定部27から特定の水位を求め、補正水位検出回路部20から容器5内の、即ち水管8内の水の水位信号を受けながら、給水ポンプ9を駆動して水管8内に水を供給し、又は給水ポンプ9を停止して水管8内への水の供給を停止し、水管8内の水の水位を、水位設定部27で特定された水位に制御する水位制御部28が備えられている。
【0052】
前記ボイラシステムにおいて本発明に係る貫流ボイラの水位検出方法の実施は、次のようにして行われる。
【0053】
水位検出用電極棒1の外部電源接続端子部2と容器5との間を通電すると、水位検出電極部3と水が接触しているとき、水位検出電極部3の表面に形成された絶縁被膜6が誘電体となり、容器5内で水と接触する水位検出電極部3の接触部分がコンデンサとなる。そして、水位検出用電極棒1の外部電源接続端子部2と容器5との間を通電することにより、水位検出電極部3と容器5との間の静電容量が測定回路部18で測定され、この測定された静電容量が水位検出回路部19で水位に変換されて検出され、静電容量の変化による水位の変化がアナログ的に検出される。
【0054】
また、水位検出用電極棒1の外部電源接続端子部2と容器5との間を通電するとともに、補正用水位検出用電極棒21の外部電源接続端子部22と容器5との間を通電すると、水位検出回路部26で、容器5内の水が水位検出電極部23の下端に達したこと、即ち、容器5内の水が特定の水位に達したことが検出され、容器5内の水が特定の水位に達したことが補正水位検出回路部20に送信される。
【0055】
そして、補正水位検出回路部20で、水位検出回路部26で検出された容器5内の水の水位と、水位検出回路部19で検出した水位との差が求められ、差がある場合は、この差を基に水位検出回路部19で検出した水位が正しい水位に補正される。
【0056】
更に、貫流ボイラの水位検出方法を実施するボイラシステムには、水管8内の水の水位を、水位設定部27で設定された特定の水位に制御する水位制御部28が備えられており、貫流ボイラの現実の運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等の入力があると、水位設定部27から特定の水位を求め、補正水位検出回路部20から容器5内における、即ち水管8内における水の水位信号を受けながら、給水ポンプ9を駆動して水管8内に水を供給し、又は給水ポンプ9を停止して水管8内への水の供給を停止し、水管8内の水の水位を、水位設定部27で設定された特定の水位に制御する。
【0057】
次に、本発明に係る貫流ボイラの水位制御方法の実施の形態を説明する。
本例では、燃焼量と、蒸気圧力と、給水温度と、缶水の電気伝導度とにより、貫流ボイラの目標比例水位を設定しておく。そして、貫流ボイラの現実の運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等を検出し、これらの検出された検出値により算出される目標比例水位と、貫流ボイラの前記水位検出方法により検出された現実水位との差を常時算出し、現実の水位が目標比例水位を上回っているときは給水を停止し、現実水位が目標比例水位を下回っているときは目標比例水位まで給水するように給水量を制御するようにした。
【0058】
前記貫流ボイラの目標比例水位とは、燃焼量と、蒸気圧力と、給水温度と、缶水の電気伝導度等とを総合して算出した総合数値Aにより設定した水位である。
【0059】
総合数値Aは、次のようにして算出される。
貫流ボイラの水位と、燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度とは、燃焼量が増えたとき水位を下げ、蒸気圧力が上昇したとき水を上げ、給水温度が上昇したとき水位を下げ、缶水の電気伝導度が大きくなったとき水位を下げる、といった関係にある。
【0060】
先ず、燃焼量と、蒸気圧力と、給水温度と、缶水の電気伝導度の特定な値の時の適切な水位を示す基準値を1とする。
【0061】
例えば、
燃焼量:100%燃焼=1
蒸気圧力:5kg/cm=1
給水温度:15℃=1
缶水の電気伝導度:3000μS/cm=1
とし、燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度の値の変化に応じたそれぞれの適切な水位を示す個別水位基準値a,b,c,dを求める。
【0062】
例えば、
燃焼量:70%燃焼=1.1(a)
蒸気圧力:10kg/cm=1.3(b)
給水温度:15℃=1(c)
缶水の電気伝導度:1500μS/cm=1.2(d)
このようにして求めた基準値a,b,c,dを乗じ、総合数値Aとしている。
即ち、A=a×b×c×d
上記例では、A=1.1×1.3×1×1.2=1.7であり、総合数値Aが1.7となり、1.7のところが最適の水位となる。
【0063】
そして、前記のようにして算出した総合数値Aと、この総合数値Aに応じた水位をデータ取りして目標比例水位を算出して設定しておく。そして、貫流ボイラの運転時における燃焼量と蒸気圧力と給水温度と缶水の電気伝導度とを検出し、検出された検出値から、前記計算式により総合数値Aを算出し、設定されている目標比例水位から前記算出した総合数値Aに応じた目標比例水位を特定し、この特定した目標比例水位と、貫流ボイラの前記水位検出方法により検出された現実水位との差を常時算出し、現実水位が特定される目標比例水位を上回っているときは給水を停止し、現実水位が特定される目標比例水位を下回っているときは目標比例水位まで給水するように給水量を制御する。
【0064】
このようにすることにより、貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度等に応じて、水管内の水の水位を細かく制御することが容易となり、水管内の水の水位を常に最適の水位とすることができることになり、良質な蒸気を得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止することができる。
【0065】
本発明に係る貫流ボイラの水位制御方法は、前記図2に示すボイラシステムにより実施される。
図2に示すボイラシステムにおいて、本発明に係る貫流ボイラの水位制御方法を実施するために、水位設定部27は、総合数値Aに応じた水位をデータ取りして設定された目標比例水位を記憶する記憶手段と、適宜のセンサー等により検出された貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度の検出値により総合数値Aを算出するプログラムと、記憶手段に記憶されている目標比例水位から総合数値Aに応じた目標比例水位を特定するプログラムを備えている。
【0066】
前記ボイラシステムにおいて本発明に係る貫流ボイラの水位制御方法の実施は、次のようにして行われる。
貫流ボイラの運転時における燃焼量と蒸気圧力と給水温度と給水の電気伝導度とが適宜のセンサー等で検出され、それらの検出値が水位設定部27に送信される。燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度の検出値を受けた水位設定部27は、それらの検出値から、総合数値Aを算出し、設定されている目標比例水位から算出した総合数値Aに応じた目標比例水位を特定して水位制御部28に送信する。水位制御部28は、水位設定部27から特定した目標比例水位信号を受けると共に補正水位検出回路部20から容器5内の、即ち水管8内の水の水位信号を受け、特定した目標比例水位と補正水位検出回路部20から受けた容器5内の、即ち水管8内の水の水位(現実の水位)との差を常時算出し、現実の水位が特定された目標比例水位を上回っているときは給水ポンプ9を停止して水管8内への水の供給を停止し、現実水位が特定された目標比例水位を下回っているときは給水ポンプ9を駆動して水管8内に水を目標比例水位まで給水するように給水量を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る貫流ボイラの水位検出用電極棒の実施の形態の一例を示す一部断面正面図。
【図2】本発明に係る貫流ボイラの水位検出方法及び貫流ボイラの水位制御方法を実施するボイラシステムの一例の概略構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0068】
1 水位検出用電極棒
2 外部電源接続端子部
3 水位検出電極部
4 絶縁体
5 容器
6 絶縁被膜
7 ボイラ缶体
8 水管
9 給水ポンプ
10 給水管
11 下部管寄せ
12 蒸気管
13 上部管寄せ
14 燃焼室
15,16 連通管
17 電源
18 測定回路部
19 水位検出回路部
20 補正水位検出回路部
21 補正用水位検出用電極棒
22 外部電源接続端子部
23 水位検出電極部
24 絶縁体
25 電源
26 水位検出回路部
27 水位設定部
28 水位制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ缶体内と連通する金属製の容器を貫通するように絶縁体を介して取り付けられ、前記容器の外側へ突出する外部電源接続端子部と前記容器の内側へ突出する水位検出電極部を備えた貫流ボイラの水位検出用電極棒であって、前記水位検出電極部の表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜が形成されていることを特徴とする貫流ボイラの水位検出用電極棒。
【請求項2】
前記エンジニアリングプラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン或いはフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の貫流ボイラの水位検出用電極棒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水位検出用電極棒を使用した貫流ボイラの水位検出方法であって、電源の一方を前記外部電源接続端子部と接続し、前記電源の他方を前記容器と接続して通電し、前記水位検出電極部の表面に形成された絶縁被膜を誘電体として、前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定し、この静電容量により前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することを特徴とする貫流ボイラの水位検出方法。
【請求項4】
前記容器に、前記水位検出電極部の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を補正することを特徴とする請求項3に記載の貫流ボイラの水位検出方法。
【請求項5】
請求項3に記載の貫流ボイラの水位検出方法を使用した貫流ボイラの水位制御方法であって、燃焼量と、蒸気圧力と、給水温度と、缶水の電気伝導度とにより、当該貫流ボイラの目標比例水位を設定しておき、前記貫流ボイラの運転時における燃焼量、蒸気圧力、給水温度及び缶水の電気伝導度を検出し、これらの検出された検出値により特定される目標比例水位と、水位検出方法により検出された前記貫流ボイラの現実水位との差を常時算出し、現実の水位が特定される目標比例水位を上回っているときは給水を停止し、現実の水位が特定される目標比例水位を下回っているときは目標比例水位まで給水するように給水量を制御することを特徴とする貫流ボイラの水位制御方法。
【請求項6】
前記水位検出方法は、前記容器に、前記水位検出電極部の範囲内における特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を補正する水位補正手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の貫流ボイラの水位制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−271593(P2007−271593A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106072(P2006−106072)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】