説明

貫通部材支持装置

【課題】可撓性貫通部材の変形に対する対応と、気密性の確保とを両立できる貫通部材支持装置を提供する。
【解決手段】挿通穴26を有するキャブフロア6に、取付用締着ボルト31により固定ブラケット27を固定し、この固定ブラケット27に回動体28を回動自在に軸支する。回動体28内に、キャブフロア6の挿通穴26に貫通したパイロットホース17を保持するホース保持部29を嵌着する。固定ブラケット27は、同一形状の一側枠部材27aと他側枠部材27bとに分割構成し、枠部材間締着ボルト38により一体化する。回動体28は、同一形状の一側回動部材28aと他側回動部材28bとに分割構成し、回動部材間締着ボルトにより締着する。ホース保持部29は、ゴムなどで成形したホース拘束本体部61に、パイロットホース17を閉塞状態に保持する保持穴62を成形し、外側面から保持穴62にわたってスリット63を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のホース支持などに用いられる貫通部材支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械、特に油圧ショベルに於いては運転室内の作業用操作レバーが設けられ、操作レバーにより操作されるパイロット弁に接続されたパイロットホースが運転室の床を抜けて機体側にあるコントロール弁に配設されている。このパイロットホースが床を抜ける部分は、保持手段により保持されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、機体フレームの貫通孔にパイロットホースなどを支持する分割体を設け、パイロットホースなどを床に固定する支持構造が示されているが、パイロットホースの上端に接続された操作レバーの位置を調整できるようにしたものでは、操作レバー位置の調整量の拡大に固定支持構造が対処できないとともに、パイロットホースなどを固定する部分の気密性には全く配慮がなされていない。
【0004】
特許文献2には、固定枠体にパイロットホースなどを挟持する保持部を回動自在に軸支することで、操作レバー位置の調整量の拡大に対処できるようにした規制保持装置が示されているが、パイロットホースなどを保持する部分の気密性に関しては配慮がなされていない構造である。
【特許文献1】特開2005−138746号公報(第4−5頁、図4−7)
【特許文献2】特開2007−009490号公報(第4−5頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のパイロットホースのような可撓性貫通部材を支持または規制保持する構造では、可撓性貫通部材の変形に対する対応と、気密性の確保とを両立できない問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、可撓性貫通部材の変形に対する対応と、気密性の確保とを両立できる貫通部材支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、挿通穴を有する被挿通部材に固定された固定枠体と、この固定枠体に回動自在に軸支された回動体とを具備し、固定枠体は、被挿通部材の挿通穴を閉塞するように固定され、回動体は、回動中心と同心状に設けられて、固定枠体に対し回動時一定の閉塞状態を維持する円弧状面と、可撓性貫通部材を閉塞状態に保持する保持部とを備えた貫通部材支持装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の貫通部材支持装置における保持部が、回動体より弾力性を有する部材により別体に成形され、回動体は、保持部を閉塞状態に嵌着した嵌着面を備え、保持部は、被挿通部材の挿通穴に貫通された可撓性貫通部材を閉塞状態に保持する保持穴を備えたものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の貫通部材支持装置における固定枠体が、同一形状の一側枠部材と他側枠部材とに分割構成され、これらの一側枠部材および他側枠部材は、被挿通部材に取付用締着手段により固定される被固定部と、回動体の円弧状面と対向して閉塞状態を維持する閉塞部と、閉塞部の一端部および他端部より回動体側に設けられて回動体を軸受保持する軸受溝部と、閉塞部の一端側および他端側に一体成形された一端側の被締着部および他端側の被締着部とをそれぞれ具備し、相互に突き合わせた一側枠部材の一端側の被締着部と他側枠部材の他端側の被締着部とが一方の枠部材間締着手段により締着されるとともに、他側枠部材の一端側の被締着部と一側枠部材の他端側の被締着部とが他方の枠部材間締着手段により締着されたものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の貫通部材支持装置における回動体が、同一形状の一側回動部材と他側回動部材とに分割構成され、これらの一側回動部材および他側回動部材は、円弧状面をそれぞれ有する回動本体部と、これらの回動本体部の一端面および他端面よりそれぞれ突設された半円断面の一端側の半円軸部および他端側の半円軸部とをそれぞれ具備し、相互に突き合わせた一側回動部材の一端側の半円軸部と他側回動部材の他端側の半円軸部とをこれらの内部に嵌着された一方の回動部材間締着手段により締着して円形断面の一方の円形軸部を形成するとともに、他側回動部材の一端側の半円軸部と一側回動部材の他端側の半円軸部とをこれらの内部に嵌着された他方の回動部材間締着手段により締着して円形断面の他方の円形軸部を形成したものである。
【0011】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の貫通部材支持装置における保持部が、弾力性部材により成形され、外側面から保持穴にわたって設けられたスリットを備えたものである。
【0012】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか記載の貫通部材支持装置における被挿通部材を、加圧式キャブの床部材としたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、被挿通部材の挿通穴を閉塞するように固定した固定枠体に、この固定枠体に対し回動時一定の閉塞状態を維持する円弧状面を回動中心と同心状に設けた回動体を回動自在に軸支し、この回動体の保持部により可撓性貫通部材を閉塞状態に保持するので、可撓性貫通部材の変形に応じて回動体が回動することで可撓性貫通部材の変形に対応できるとともに、回動体の円弧状面により固定枠体に対し回動時一定の閉塞状態を維持することで気密性を確保できる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、保持部を、回動体より弾力性を有する部材により別体に成形するとともに、被挿通部材の挿通穴に貫通された可撓性貫通部材を保持部の保持穴により閉塞状態に保持し、その保持部を回動体の嵌着面により閉塞状態に嵌着したので、可撓性貫通部材を挿通する箇所での気密保持性能を向上できる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、固定枠体を、同一形状の一側枠部材と他側枠部材とに分割構成し、これらの一側枠部材および他側枠部材は、回動体の円弧状面と対向する閉塞部の一端側および他端側に一端側の被締着部および他端側の被締着部をそれぞれ一体成形し、これらの一側枠部材と他側枠部材の相互に反対端側の被締着部を突き合わせて枠部材間締着手段により締着するので、固定枠体を構成する一側枠部材と他側枠部材の2部品を1種類にでき、部品種類数を削減できる。また、取付用締着手段と枠部材間締着手段とによる簡単な締着作業により、固定枠体の取付と回動体の保持とを容易にすることができる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、回動体を、同一形状の一側回動部材と他側回動部材とに分割構成し、これらの一側回動部材および他側回動部材は、円弧状面をそれぞれ有する回動本体部の一端面および他端面より半円断面の一端側の半円軸部および他端側の半円軸部をそれぞれ突設し、これらの一側回動部材と他側回動部材の相互に反対端側の半円軸部を突き合わせて回動部材間締着手段により締着して円形軸部を形成したので、回動体を構成する一側回動部材と他側回動部材の2部品を1種類にでき、部品種類数を削減できる。また、一側回動部材と他側回動部材の半円軸部を、これらの内部に嵌着された回動部材間締着手段により締着して円形軸部を形成したので、一側回動部材と他側回動部材の半円軸部を回動部材間締着手段により直接位置決めしながら、ずれのない正確な円形軸部を形成できる。
【0017】
請求項5に記載された発明によれば、弾力性部材により成形された保持部の外側面から保持穴にわたってスリットを設けたので、このスリットより保持穴に配設作業後の可撓性貫通部材を側面から嵌着することができ、作業性を向上できる。
【0018】
請求項6に記載された発明によれば、被挿通部材を加圧式キャブの床部材として、加圧式キャブに上記の貫通部材支持装置を適用することで、この貫通部材支持装置においても加圧式キャブの気密性を確保して加圧効率を向上できるとともに、外部の塵埃などが貫通部材支持装置を経てキャブ内へ侵入するおそれを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図6に示された一実施の形態、図7に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図5は、油圧ショベル型の作業機械1を示し、この作業機械1は、下部走行体2に上部旋回体3が旋回可能に設けられ、この上部旋回体3にキャブ4および作業装置5が搭載されている。
【0021】
キャブ4は、外気圧より内気圧がやや高くなるように空調装置で設定されたプレッシャライズ機能を有する加圧式キャブであり、図6に示されるように、その加圧式キャブの床部材である被挿通部材としてのキャブフロア6には、座席7が前後方向および上下方向に位置調整可能に設置されている。
【0022】
すなわち、図6に示されるようにキャブフロア6上に空調エアの吹出口を有する空調ボックス11が設置され、この空調ボックス11の上面に前後方向移動調整機構12が設置され、この前後方向移動調整機構12によって高さ調整機構およびサスペンション13が前後方向移動可能に設けられ、この高さ調整機構およびサスペンション13上にリクライニング可能な座席7が設置されている。前後方向移動調整機構12としては前後方向のガイドレールに沿って高さ調整機構およびサスペンション13の下側フレームを摺動自在にかつ係止可能に嵌着する。
【0023】
座席7のオペレータから見て左右両側部には、座席7とともにコンソール14が位置調整可能に設けられ、これらのコンソール14上に作業用の操作レバー15が突設され、各コンソール14内に操作レバー15により手動操作されるレバー操作型パイロット弁16が設けられ、これらのレバー操作型パイロット弁16に接続された複数本の可撓性貫通部材としてのパイロットホース17は、コンソール14から引出され、キャブフロア6を通してその下側に配置されたコントロール弁までのパイロット油圧ラインとして配設されている。これらのパイロットホース17は、コンソール14とキャブフロア6との間では、蛇腹ダクト状のカバー18内に嵌着されて保護されている。
【0024】
キャブフロア6の下側に落し込まれた複数本のパイロットホース17は、各レバー操作型パイロット弁16にパイロット1次圧を供給するパイロットポンプ(図示せず)、各レバー操作型パイロット弁16から出力されたパイロット2次圧によりパイロット操作されるメインコントロール弁(図示せず)および油タンク(図示せず)に接続されている。これらは、上部旋回体3上に設置されている。
【0025】
キャブフロア6には、コンソール14から引出されてキャブフロア6の下側に落し込まれる複数のパイロットホース17を規制保持する貫通部材支持装置25が設置されている。
【0026】
図1乃至図4に示されるように、この貫通部材支持装置25は、挿通穴26を有するキャブフロア6に、固定枠体としての固定ブラケット27が固定され、この固定ブラケット27に回動体28が回動自在に軸支され、この回動体28内に、キャブフロア6の挿通穴26に貫通されたパイロットホース17を保持する保持部としてのホース保持部29が嵌着されたものである。
【0027】
図1および図2に示されるように、固定ブラケット27は、キャブフロア6の挿通穴26を閉塞するように固定され、同一形状の一側枠部材27aと他側枠部材27bとに分割構成されている。
【0028】
これらの一側枠部材27aおよび他側枠部材27bは、下部に、キャブフロア6に取付用締着手段としての取付用締着ボルト31により固定される被固定部32が形成され、この被固定部32より上側に、回動体28の外面側に形成された円弧状面33と対向して閉塞状態を維持する閉塞部34が設けられ、この閉塞部34より回動体28側に、回動体28を軸受保持する軸受溝部35が設けられ、この軸受溝部35より上側であって閉塞部34の一端側および他端側に、一端側の被締着部36および他端側の被締着部37が一体成形されている。
【0029】
図2に示されるように、一端側の被締着部36には、枠部材間締着手段としての枠部材間締着ボルト38が挿入されるボルト挿入孔41と、位置決め用の凸部42とが設けられ、また、他端側の被締着部37には、枠部材間締着ボルト38が螺合される枠部材間締着手段としてのボルト螺合孔43と、対向する位置決め用の凸部42が嵌合される位置決め穴44とが設けられている。この位置決め穴44の下側に軸受溝部35を介して位置する固定ブラケット下部の端面にも位置決め用の凸部45が設けられ、この位置決め用の凸部45と対向する相手の固定ブラケット下部の端面にも凸部45と嵌合する位置決め穴46が設けられている。
【0030】
そして、図2および図3に示されるように、相互に突き合わせた一側枠部材27aの一端側の被締着部36と他側枠部材27bの他端側の被締着部37とが、一方の枠部材間締着ボルト38とボルト螺合孔43との螺合により締着されるとともに、他側枠部材27bの一端側の被締着部36と一側枠部材27aの他端側の被締着部37とが、他方の枠部材間締着ボルト38とボルト螺合孔43との螺合により締着される。
【0031】
回動体28は、同一形状の一側回動部材28aと他側回動部材28bとに分割構成され、これらの一側回動部材28aおよび他側回動部材28bは、回動本体部51の外面側に、固定ブラケット27に対し回動時一定の閉塞状態を維持する前記円弧状面33が、回動中心と同心状に設けられ、回動本体部51の内面側に、ホース保持部29を閉塞状態に嵌着した嵌着面52が凹形に設けられている。
【0032】
図2に示されるように、これらの回動本体部51の一端面および他端面より、半円断面の一端側の半円軸部53および他端側の半円軸部54がそれぞれ突設されている。一端側の半円軸部53には、その円弧面側から内部に回動部材間締着手段としてのナット55を嵌着するためのナット嵌着溝56が形成され、その平面側には一対の位置決め凸部57が突出形成されている。
【0033】
さらに、他端側の半円軸部54には、その円弧面側から水平に貫通するように回動部材間締着手段としての回動部材間締着ボルト58を挿入するためのボルト挿入溝59が形成され、その平面側にはボルト挿入溝59を挟んで配置された一対の位置決め凹部60が形成されている。回動部材間締着ボルト58は、その頭部が半円軸部54の表面に突出しないように半円軸部54の内部に嵌着される6角溝付ボルトである。
【0034】
そして、相互に突き合わせた一側回動部材28aの一端側の半円軸部53と他側回動部材28bの他端側の半円軸部54とを、位置決め凸部57および位置決め凹部60の嵌合により位置決めしながら、これらの半円軸部53,54の内部に嵌着された一方の回動部材間締着ボルト58およびナット55により締着することで、円形断面の一方の円形軸部を形成するとともに、同様に、他側回動部材28bの一端側の半円軸部53と一側回動部材28aの他端側の半円軸部54とを、これらの内部に嵌着された他方の回動部材間締着ボルト58およびナット55により締着することで、円形断面の他方の円形軸部を形成する。
【0035】
ホース保持部29は、回動体28より弾力性を有する別体の弾力性部材であるゴムまたは合成樹脂により成形されたホース拘束本体部61に、パイロットホース17を閉塞状態に保持する保持穴62が成形され、外側面から保持穴62にわたってスリット63が設けられたものである。
【0036】
次に、この図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0037】
図1に示されるように、パイロットホース17をホース保持部29の保持穴62内にスリット63より嵌め込み、さらに、このホース保持部29を回動体28の一側回動部材28aと他側回動部材28bとで挟み込んで、これらの回動体28の半円軸部53,54を、それらの内部まで嵌着された回動部材間締着ボルト58およびナット55により締着することで、一側回動部材28aと他側回動部材28bとを固定するとともに、それらの両端部で半円軸部53,54が一体化された円形軸部を形成する。このとき、回動部材間締着ボルト58およびナット55は、一端側と他端側とで逆向きに付ける。
【0038】
さらに、このようにして形成された回動体28の両端部の円形軸部を、固定ブラケット27の一側枠部材27aおよび他側枠部材27bの軸受溝部35で挟み込むことによって回動自在に保持するとともに、枠部材間締着ボルト38をボルト螺合孔43に螺入して、固定ブラケット27の一側枠部材27aと他側枠部材27bとを一体化する。このとき、枠部材間締着ボルト38は、一側と他側とで逆向きに付ける。
【0039】
この固定ブラケット27の被固定部32を、キャブフロア6に開けられた挿通穴26を塞ぐように、取付用締着ボルト31によりキャブフロア6に固定する。
【0040】
そして、図6に示される座席7の前後方向移動調整機構12と、高さ調整機構およびサスペンション13によって、レバー操作型パイロット弁16の位置が前後方向および高さ方向に変化すると、このレバー操作型パイロット弁16に接続された複数本のパイロットホース17も、図4に実線から2点鎖線で示されるように変形するので、このパイロットホース17の変形に追従して、貫通部材支持装置25の回動体28も回動する。このとき、回動体28の円弧状面33は、固定ブラケット27の閉塞部34に対し気密性を確保しながら回動する。
【0041】
このように、キャブフロア6の挿通穴26を閉塞するように固定した固定ブラケット27に、この固定ブラケット27に対し回動時一定の閉塞状態を維持する円弧状面33を回動中心と同心状に設けた回動体28を回動自在に軸支し、この回動体28の嵌着面52にホース保持部29を閉塞状態に嵌着し、このホース保持部29の保持穴62によりパイロットホース17を閉塞状態に保持するので、パイロットホース17の変形に応じて回動体28が回動することでパイロットホース17の変形に対応できるとともに、回動体28の円弧状面33により固定ブラケット27に対し回動時一定の閉塞状態を維持することで気密性を確保できる。
【0042】
ホース保持部29を、回動体28より弾力性を有するゴムまたは合成樹脂などの部材により別体に成形するとともに、キャブフロア6の挿通穴26に貫通されたパイロットホース17をホース保持部29の保持穴62により閉塞状態に保持し、そのホース保持部29を回動体28の嵌着面52により閉塞状態に嵌着したので、パイロットホース17を挿通する箇所での気密保持性能を向上できる。
【0043】
固定ブラケット27を、同一形状の一側枠部材27aと他側枠部材27bとに分割構成し、これらの一側枠部材27aおよび他側枠部材27bは、回動体28の円弧状面33と対向する閉塞部34の一端側および他端側に被締着部36および被締着部37をそれぞれ一体成形し、これらの一側枠部材27aと他側枠部材27bの相互に反対端側の被締着部36,37を突き合わせて枠部材間締着ボルト38およびボルト螺合孔43により締着するので、固定ブラケット27を構成する一側枠部材27aと他側枠部材27bの2部品を1種類にでき、部品種類数を削減できる。
【0044】
また、一側枠部材27aおよび他側枠部材27bは、取付用締着ボルト31によりキャブフロア6に固定される被固定部32をそれぞれの下部に形成し、この被固定部32より上側に閉塞部34および軸受溝部35を設け、この軸受溝部35より上側であって閉塞部34の一端側および他端側に一端側の被締着部36および他端側の被締着部37を一体成形したので、2個の取付用締着ボルト31と2個の枠部材間締着ボルト38とによる4点の簡単な締着作業により、固定ブラケット27の取付と回動体28の保持とを容易にすることができる。
【0045】
回動体28を、同一形状の一側回動部材28aと他側回動部材28bとに分割構成し、これらの一側回動部材28aおよび他側回動部材28bは、円弧状面33をそれぞれ有する回動本体部51の一端面および他端面より半円断面の一端側の半円軸部53および他端側の半円軸部54をそれぞれ突設し、これらの一側回動部材28aと他側回動部材28bの相互に反対端側の半円軸部53,54を突き合わせて回動部材間締着ボルト58およびナット55により締着して円形軸部を形成したので、回動体28を構成する一側回動部材28aと他側回動部材28bの2部品を1種類にでき、部品種類数を削減できる。
【0046】
また、一側回動部材28aと他側回動部材28bの半円軸部53,54を、これらの内部に嵌着された回動部材間締着ボルト58およびナット55により締着して円形軸部を形成したので、一側回動部材28aと他側回動部材28bの半円軸部53,54を回動部材間締着ボルト58により直接位置決めしながら、ずれのない正確な円形軸部を形成できる。
【0047】
弾力性を有するゴムまたは合成樹脂により成形されたホース保持部29の外側面から保持穴62にわたってスリット63を設けたので、このスリット63より保持穴62内にパイロットホース17を側面から嵌着することができ、固定ブラケット27および回動体28をそれぞれ分割構成したことと相俟って、配設作業後のパイロットホース17に対して貫通部材支持装置25を取付作業でき、作業性を向上できる。
【0048】
キャブフロア6を加圧式キャブの床部材として、加圧式キャブに上記の貫通部材支持装置25を適用することで、この貫通部材支持装置25においても加圧式キャブの気密性を確保して加圧効率を向上できるとともに、外部の塵埃などが貫通部材支持装置25を経てキャブ4内へ侵入するおそれを確実に防止できる。
【0049】
固定ブラケット27および回動体28は、それぞれの2部品を同じ形の共通部品を対向させて用いることにより構成できるので、固定ブラケット27、回動体28およびホース保持部29の3種類の部品により、5個の部品を安価に製作できる。
【0050】
以上のように、キャブ4内の気密性を保持しながら、パイロットホース17の変形にも追従する回動、支持構造であるから、シート位置の前後方向および高さ方向の調整移動と、上下方向のサスペンション動作と、オペレータの昇降時に行なうコンソール14の跳ね上げ動作とに対応できる。
【0051】
座席7を動かすことによりパイロットホース17の形状が大きく変化するので、従来は余裕を持たせるためパイロットホース17を長くしなければならず、パイロットホース17が長いとスペースを広くする必要があったり邪魔になるが、この貫通部材支持装置25によればパイロットホース17を長くする必要がない。
【0052】
なお、図1乃至図3に示された実施の形態は、保持部としてのホース保持部29を、回動体28より弾力性を有するゴムまたは合成樹脂により別体に成形したが、回動体28と同一の部材により一体に成形しても良い。その場合は、保持穴62から円弧状面33にわたってスリットを設けるか、または、回動体28とともに保持穴62を分割できるように一体成形すると良い。
【0053】
例えば、図7に示された貫通部材支持装置25は、他の実施の形態を示し、挿通穴を有する被挿通部材としてのキャブフロアに固定された固定枠体としての固定ブラケット27と、この固定ブラケット27に回動自在に軸支された回動体28とを具備し、固定ブラケット27は、キャブフロアの挿通穴を閉塞するように固定され、回動体28は、回動中心と同心状に設けられて、固定ブラケット27に対し回動時一定の閉塞状態を維持する円弧状面33を有する一側回動部材28aおよび他側回動部材28bと、可撓性貫通部材としてのパイロットホース17を閉塞状態に保持する保持部としてのホース保持部29a,29b,29cとを備えている。
【0054】
ホース保持部29a,29bは回動体28の一側回動部材28aおよび他側回動部材28bと一体に成形され、ホース保持部29cは、ホース保持部29a,29bとは別個に分割形成され、一側回動部材28aおよび他側回動部材28bの側壁面に設けられた凹形の嵌着面52に嵌着される。これらのホース保持部29a,29bとホース保持部29cの対向面には、ホース保持穴となる半円断面の保持溝62a,62b,62cが形成されている。なお、図2に示されたものと同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
そして、ホース保持部29a,29bの各嵌着面52にホース保持部29cの一側部および他側部を嵌着することで、保持溝62aと保持溝62cとで保持穴を形成してパイロットホース17を挟み込むとともに、保持溝62bと保持溝62cとで保持穴を形成してパイロットホース17を挟み込み、回動部材間締着ボルト58およびナット55の締着作用により、一側回動部材28aおよび他側回動部材28bと、ホース保持部29a,29b,29cとを一体化し、さらにこれらを一側枠部材27aおよび他側枠部材27bの間に設置する。
【0056】
本発明は、作業機械の油圧配管、自動車の電気配線などの可撓性貫通部材を支持する際に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る貫通部材支持装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上支持装置の分解斜視図である。
【図3】同上支持装置の斜視図である。
【図4】同上支持装置のホース回動支持作用を示す説明図である。
【図5】同上支持装置を装着した作業機械の側面図である。
【図6】同上支持装置をパイロットホースに適用した例を示す座席回りの配管図である。
【図7】同上支持装置の他の実施の形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
6 被挿通部材としてのキャブフロア(加圧式キャブの床部材)
17 可撓性貫通部材としてのパイロットホース
25 貫通部材支持装置
26 挿通穴
27 固定枠体としての固定ブラケット
27a 一側枠部材
27b 他側枠部材
28 回動体
28a 一側回動部材
28b 他側回動部材
29 保持部としてのホース保持部
31 取付用締着手段としての取付用締着ボルト
32 被固定部
33 円弧状面
34 閉塞部
35 軸受溝部
36,37 被締着部
38 枠部材間締着手段としての枠部材間締着ボルト
43 枠部材間締着手段としてのボルト螺合孔
51 回動本体部
52 嵌着面
53,54 半円軸部
55 回動部材間締着手段としてのナット
58 回動部材間締着手段としての回動部材間締着ボルト
62 保持穴
63 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通穴を有する被挿通部材に固定された固定枠体と、
この固定枠体に回動自在に軸支された回動体とを具備し、
固定枠体は、被挿通部材の挿通穴を閉塞するように固定され、
回動体は、
回動中心と同心状に設けられて、固定枠体に対し回動時一定の閉塞状態を維持する円弧状面と、
可撓性貫通部材を閉塞状態に保持する保持部とを備えた
ことを特徴とする貫通部材支持装置。
【請求項2】
保持部は、回動体より弾力性を有する部材により別体に成形され、
回動体は、保持部を閉塞状態に嵌着した嵌着面を備え、
保持部は、被挿通部材の挿通穴に貫通された可撓性貫通部材を閉塞状態に保持する保持穴を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の貫通部材支持装置。
【請求項3】
固定枠体は、
同一形状の一側枠部材と他側枠部材とに分割構成され、
これらの一側枠部材および他側枠部材は、
被挿通部材に取付用締着手段により固定される被固定部と、
回動体の円弧状面と対向して閉塞状態を維持する閉塞部と、
閉塞部の一端部および他端部より回動体側に設けられて回動体を軸受保持する軸受溝部と、
閉塞部の一端側および他端側に一体成形された一端側の被締着部および他端側の被締着部とをそれぞれ具備し、
相互に突き合わせた一側枠部材の一端側の被締着部と他側枠部材の他端側の被締着部とが一方の枠部材間締着手段により締着されるとともに、他側枠部材の一端側の被締着部と一側枠部材の他端側の被締着部とが他方の枠部材間締着手段により締着された
ことを特徴とする請求項1または2記載の貫通部材支持装置。
【請求項4】
回動体は、
同一形状の一側回動部材と他側回動部材とに分割構成され、
これらの一側回動部材および他側回動部材は、
円弧状面をそれぞれ有する回動本体部と、
これらの回動本体部の一端面および他端面よりそれぞれ突設された半円断面の一端側の半円軸部および他端側の半円軸部とをそれぞれ具備し、
相互に突き合わせた一側回動部材の一端側の半円軸部と他側回動部材の他端側の半円軸部とをこれらの内部に嵌着された一方の回動部材間締着手段により締着して円形断面の一方の円形軸部を形成するとともに、他側回動部材の一端側の半円軸部と一側回動部材の他端側の半円軸部とをこれらの内部に嵌着された他方の回動部材間締着手段により締着して円形断面の他方の円形軸部を形成した
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の貫通部材支持装置。
【請求項5】
保持部は、弾力性部材により成形され、
外側面から保持穴にわたって設けられたスリットを備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の貫通部材支持装置。
【請求項6】
被挿通部材は、加圧式キャブの床部材である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の貫通部材支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−138870(P2009−138870A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316862(P2007−316862)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】