説明

貫通部構造を形成する方法、貫通部構造、耐火材支持具及び耐火材受け板

【課題】耐火材を支持する耐火材受け板を任意の長さに容易に調節することができる耐火材支持具及び耐火材受け板、貫通部構造を形成する方法、貫通部構造を提供する。
【解決手段】耐火材支持具20は、支持具本体21と、熱膨張性耐火材11を支持するために支持具本体21の支持板に支持される複数の耐火材受け板30を備える。耐火材受け板30は不燃紙によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成されている。さらに、耐火材受け板30は長辺方向が支持板から各配線・配管材群101,102に向けて延びるように支持板に支持されている。耐火材受け板30は、各配線・配管材群101,102に向けた支持板からの延出部位を裁断することにより支持板からの延出長さを調節可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔内における貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、耐火材を下方から支持する耐火材支持具及び該耐火材支持具が備える耐火材受け板、貫通部構造を形成する方法、貫通部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における防火区画床に配線・配管材を貫通させるため、防火区画床には上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。この防火区画床には、床下側で火災等が発生したとき、貫通孔を経由して床上側に火炎、煙、有毒ガスが流入するのを阻止するための貫通部構造が設けられている。この貫通部構造は、火災等の発生時、貫通孔と配線・配管材の間を耐火材で閉鎖することで、火炎、煙、有毒ガスの床上側への流入を阻止するようになっている。
【0003】
このような貫通部構造は、防火区画床に貫通形成された貫通孔の内周面と、貫通孔に貫通配置された配線・配管材との間の環状空間に耐火材が充填されてなる。なお、防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔内に耐火材を充填するには、耐火材の貫通孔からの落下を防止するため耐火材支持具が用いられる。
【0004】
耐火材支持具としては、例えば特許文献1に開示の充填材支持具が挙げられる。充填材支持具は、断面矩形状をなす貫通孔の長辺方向両側部に対して開口側から装着される一対の支持金具と、貫通孔の長辺方向中間部に対して開口側から装着される補助支持金具とを備える。各支持金具は、環状空間の幅よりも狭い幅で貫通孔の短辺側内面と両長辺側内面に沿って延びる略コの字状に形成されている。また、各支持金具は、貫通孔の入隅に対応する両角部が湾曲形成された充填材用受止め部と、この充填材用受止め部の複数箇所から延出されるとともに貫通孔の開口縁に係止固定可能な掛け止め部とから構成されている。
【0005】
補助支持金具は、両支持金具の充填材用受止め部で受止められた充填材を支持する受け部と、この受け部から延出されるとともに貫通孔の開口縁に係止固定可能な掛け止め部とから構成されている。補助支持金具の受け部は平面視長方形状をなすとともに、長辺方向における先端が配線・配管材に向けて延びるように防火区画床に装着される。また、受け部には、受け部の長辺方向に沿った長さを短くするため、受け部を折り曲げ又は破断可能とする脆弱部が形成されている。
【0006】
そして、特許文献1の充填材支持具を用いて環状空間に耐火材を充填するには、貫通孔の両端部に合わせて一対の支持金具を装着する。次に、貫通孔の長辺方向中間部に補助支持金具を装着する。補助支持金具において、受け部が配線・配管材と干渉してしまう虞があるときは、脆弱部を折り曲げ又は破断して、受け部を短くする。次に、充填材(耐火材)を環状空間内に充填するとともに、充填材支持具(支持金具及び補助金具)によって充填材を支持させることにより、貫通部構造が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−205478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の充填材支持具において、補助支持金具は金属材料製であるため、受け部の長さ調節のために、受け部を折り曲げ又は破断するには、受け部に形成された脆弱部からしか行うことができない。そして、脆弱部は受け部の所定位置に一箇所だけしか設けられておらず、受け部の長さ調節は一段階だけ可能であって、受け部を任意の長さに調節することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、耐火材を支持する耐火材受け板を任意の長さに容易に調節することができる耐火材支持具及び耐火材受け板、貫通部構造を形成する方法、貫通部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成する方法であって、前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記延設部から前記貫通孔内に向けて延設されるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体を前記貫通孔に複数設置し、不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成されている複数の耐火材受け板を、前記支持部から前記貫通体に向けて延びるようにかつ前記支持部の長さ方向に沿って並ぶように前記支持部に支持させ、前記支持部に支持される複数の耐火材受け板のうち、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位が前記貫通孔を貫通する貫通体と干渉する耐火材受け板は、前記貫通体と干渉しないように前記延出部位を裁断することにより前記支持部からの延出長さが調節されており、当該耐火材受け板に前記耐火材を支持させることを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造であって、掛止部により前記貫通孔の周囲に掛止されるとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設された延設部から前記貫通孔内に向けて延設されるとともに前記空間内に配設される支持部に、前記耐火材を支持するための、不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成された複数の耐火材受け板が、前記支持部から前記貫通体に向けて延びるようにかつ前記支持部の長さ方向に沿って並ぶように前記支持部に支持されており、前記支持部に支持される複数の耐火材受け板のうち、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位が前記貫通孔を貫通する貫通体と干渉する耐火材受け板は、前記貫通体と干渉しないように個別に前記延出部位が裁断されてその延出方向の長さが調節されており、前記貫通体の周囲に形成される空間には、前記耐火材受け板に支持された耐火材が設けられいることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の貫通部構造において、前記耐火材受け板は前記支持部に粘着テープによって貼着されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具であって、前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記延設部から前記貫通孔内に向けて延設されるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体と、前記耐火材を支持するために前記支持部に支持される複数の耐火材受け板とを備え、前記耐火材受け板は不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成され、さらに、前記耐火材受け板は前記支持部から前記貫通体に向けて延びるようにかつ前記支持部の長さ方向に沿って並ぶように前記支持部に支持され、前記支持部に支持される複数の耐火材受け板のうち、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位が前記貫通孔を貫通する貫通体と干渉する耐火材受け板は、前記貫通体と干渉しないように前記延出部位を裁断することにより前記支持部からの延出長さを調節可能に形成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の耐火材支持具において、前記貫通孔は四角孔状をなすとともに前記支持部は前記貫通孔の一辺の延びる方向へ延びる細長状に形成され、前記複数の耐火材受け板それぞれは矩形状をなし、該耐火材受け板の短辺が前記貫通孔の一辺方向へ延びるとともに、長辺が前記貫通孔における前記一辺に直交する他辺方向へ延びるように前記支持部に支持されていることを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の耐火材支持具において、前記貫通体は複数の配線・配管材が並列されてなり、前記複数の耐火材受け板は前記短辺が前記配線・配管材の並列方向へ延びるように前記支持部に支持されていることを要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の耐火材支持具において、前記耐火材受け板は、前記支持部の長さ方向に対し直交する幅方向に沿って前記支持部に対する位置が調節されることを要旨とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の耐火材支持具において、前記耐火材受け板は、前記支持部の長さ方向全体に亘って前記支持部に支持されていることを要旨とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項4に記載の耐火材支持具において、前記貫通孔は円孔状をなすとともに前記支持部は前記貫通孔の周方向に沿って延びる円弧状に形成され、さらに、前記耐火材受け板は扇形状又は三角形状をなし、該耐火材受け板の円弧又は底辺が、前記貫通孔を形成する前記防火区画床の周面に対向し、かつ耐火材受け板の頂部側が前記貫通体に向けて延びるように前記支持部に支持されていることを要旨とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項4〜請求項9のうちいずれか一項に記載の耐火材支持具において、前記耐火材受け板は前記支持部に固着されていることを要旨とする。
請求項11に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する四角孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具であって、前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記貫通孔の一辺の延びる方向へ細長に延びるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体と、前記耐火材を支持するために前記支持部に支持される複数の矩形状をなす耐火材受け板とを備え、前記耐火材受け板は不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに切断可能に形成され、さらに、前記耐火材受け板は該耐火材受け板の短辺が前記貫通孔の一辺方向へ延びるとともに、長辺が前記貫通孔における前記一辺に直交する他辺方向へ延び、かつ長辺方向が前記支持部から貫通体に向けて延びるように前記支持部に支持され、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位を切断することにより前記支持部からの延出長さを調節可能に形成されていることを要旨とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する円孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具であって、前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記貫通孔の周方向へ円弧状に延びるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体と、前記耐火材を支持するために前記支持部に支持される複数の扇形状又は三角形状をなす耐火材受け板とを備え、前記耐火材受け板は不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに切断可能に形成され、さらに、前記耐火材受け板は該耐火材受け板の円弧又は底辺が、前記貫通孔を形成する前記防火区画床の周面に対向し、かつ耐火材受け板の頂部側が前記貫通体に向けて延びるように前記支持部に支持され、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位を切断することにより前記支持部からの延出長さを調節可能に形成されていることを要旨とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具が備える耐火材受け板であって、不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに、前記貫通体に向けて延びる延出部位の長さを調節可能とするため手動裁断具によって裁断可能に形成されていることを要旨とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する四角孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具が備える耐火材受け板であって、不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって矩形状に形成されるとともに、短辺が前記貫通孔の一辺方向へ延びるとともに、長辺が前記貫通孔における前記一辺に直交する他辺方向へ延び、かつ長辺方向が前記耐火材支持具から貫通体に向けて延びるように該耐火材支持具に支持され、さらに、前記貫通体に向けて延びる延出部位の長さを調節可能とするため切断可能に形成されていることを要旨とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、防火区画床を上下方向に貫通する円孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具が備える耐火材受け板であって、不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって扇形状又は三角形状に形成されるとともに、円弧又は底辺が、前記貫通孔を形成する前記防火区画床の周面に対向し、かつ頂部側が前記貫通体に向けて延びるように前記耐火材支持具に支持され、さらに、前記貫通体に向けて延びる延出部位の長さを調節可能とするため切断可能に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐火材を支持する耐火材受け板を任意の長さに容易に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】貫通部構造を示す分解斜視図。
【図2】防火区画床に支持金具を装着した状態を示す平面図。
【図3】支持金具の連結部に支持板を支持させた状態を示す平面図。
【図4】支持板に耐火材受け板を支持させた状態を示す平面図。
【図5】支持板に耐火材受け板を支持させた状態を示す断面図。
【図6】熱膨張性耐火材を空間に充填する前の状態を示す斜視図。
【図7】熱膨張性耐火材を空間に充填した状態を示す平面図。
【図8】(a)は貫通孔を示す平面図、(b)は支持具本体を示す斜視図。
【図9】(a)は貫通孔を示す平面図、(b)は耐火材受け板を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、防火区画床Wはコンクリートよりなるとともに、防火区画床Wには、貫通体として第1の配線・配管材群101、及び第2の配線・配管材群102を貫通させるための四角(長方形)孔状をなす貫通孔Waが、防火区画床Wの上下方向(厚み方向)に貫通して形成されている。第1及び第2の配線・配管材群101,102それぞれは、建築物内に配設される配線・配管材100(制御用ケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル、合成樹脂製可撓電線管、鋼製電線管等)を架台13に集結させてなるものである。架台13は、配線・配管材100の配設経路に沿って設けられるものである。そして、架台13は、配線・配管材100の配設経路に沿って間隔をあけて配線・配管材100を担架する桟状の載台14と、この載台14の両端に配置された側板15とから構成されている。貫通孔Wa内には、貫通孔Waの一辺方向たる長辺方向へ配線・配管材100及び側板15が並設されている。なお、貫通孔Waにおいて、長辺(一辺)に対し、直交する他辺を短辺とする。
【0026】
本実施形態において、第1の配線・配管材群101と第2の配線・配管材群102とは、互いに離間するように貫通孔Wa内に配設されている。また、貫通孔Waを形成する防火区画床Wの周面Wbと、この周面Wbに対向する第1及び第2の配線・配管材群101,102との間、及び第1の配線・配管材群101と第2の配線・配管材群102との間には、防火区画床Wの上下両方に向けて開口する空間Sが形成されている。すなわち、空間Sは、貫通孔Wa内における各配線・配管材群101,102の周囲に形成されている。なお、貫通孔Waにおいて、両短辺の中間点を通過する直線を貫通孔Waの中心線Lとする(図2参照)。
【0027】
図7に示すように、防火区画床Wに形成される貫通部構造Tは、貫通孔Waを貫通する両配線・配管材群101,102の周囲に形成された空間Sに、耐火材としての熱膨張性耐火材11が設けられてなるものである。貫通部構造Tを形成する際、空間S内に設けられる熱膨張性耐火材11は耐火材支持具20によって下方から支持されるようになっている。
【0028】
貫通部構造Tを形成する熱膨張性耐火材11は、直方体状に形成されている。図6に示すように、熱膨張性耐火材11は、直方体状に形成されたブロック体11a全体が、四角箱状をなす熱膨張性耐熱材製の外装部材11b内に収容されて形成されている。すなわち、ブロック体11aは外装部材11bによって全体が包まれることにより、外装部材11bから脱落不能になっており、ブロック体11aと外装部材11bは分離不能に一体化されている。
【0029】
ブロック体11aは、セラミックウール、ロックウール等の不燃材料によって直方体状に形成されるとともに、ブロック体11a自身はクッション性を有し、所要の弾性を有する。すなわち、ブロック体11aは圧縮変形可能であるとともに、圧縮変形した状態から原形状に復帰可能である。
【0030】
外装部材11bは、難燃性の熱膨張性耐熱材よりなる。この熱膨張性耐熱材は、120℃以上の熱を受けると体積が加熱前の3倍以上に膨張する膨張材を混入し所定形状に成形した(成形工程を経た)ゴム(熱膨張性ゴム)に、加硫工程を経てなるものである。なお、加硫工程とは、成形工程を経た熱膨張ゴムに熱を加え、加硫(架橋)反応や接着反応を起こさせる工程である。そして、加硫工程を経ることで熱膨張性耐熱材を四角箱状の外装部材11bに成形することが可能となるとともに、外装部材11bにゴム性を付与することが可能となる。熱膨張性耐火材11は、六つの面のうち最大となる二つの面における短辺方向に沿った長さが、貫通孔Waの深さ、すなわち防火区画床Wの厚さと同じになっている。
【0031】
次に、耐火材支持具20について詳細に説明する。図6に示すように、耐火材支持具20は支持具本体21と、複数の耐火材受け板30とから構成されている。まず、支持具本体21について説明する。図1に示すように、支持具本体21は、金属材料製の一対の支持金具22と、金属材料製の一本の支持板26とを組付けて形成されている。
【0032】
支持金具22は、防火区画床Wの上面における貫通孔Waの周囲に掛止される掛止部23を有するとともに、掛止部23に対し直交するように延びる延設部24を有する。延設部24の長さ方向への長さは、貫通孔Waの深さ、すなわち、防火区画床Wの厚さと同じになっている。さらに、支持金具22は、延設部24に対し直交し、かつ掛止部23とは相反する方向へ延びる連結部25を有する。そして、支持金具22は、掛止部23と、延設部24と、連結部25とが形成されるように金属板をクランク状に折り曲げることによって形成されている。
【0033】
支持板26は、細長に延びる矩形板状の金属板よりなる。本実施形態において、支持板26の長さ方向に沿った長さは、貫通孔Waの長辺方向への長さより若干短くなっている。支持板26は、長辺方向の両端側の下面が、それぞれ支持金具22の連結部25上に支持されるとともに連結部25の上面に接着剤によって接着されるようになっている。そして、支持板26は長さ方向が、貫通孔Waの長辺(一辺)方向へ延びるように貫通孔Wa内に配設される。なお、支持板26において、長さ方向に対し直交する方向を支持板26の幅方向とする。そして、本実施形態において、支持具本体21は、一対の支持金具22の連結部25に支持板26の両端側を接着して支持金具22と支持板26とを組付けて形成されている。
【0034】
次に、耐火材受け板30について説明する。耐火材受け板30は、ケイ酸マグネシウムを主成分とする不燃紙(非金属材料)よりなるものである。耐火材受け板30は、火災等の発生時、焼失してしまうことがなく、また、熱膨張性耐火材11を支持したとき変形することのないように所要の剛性を有するとともに可撓性を有している。耐火材受け板30は短冊状(矩形状)をなすとともに、長辺方向に沿った長さが支持板26の幅方向に沿った長さより長くなっている。なお、本実施形態では、耐火材受け板30の長辺方向に沿った長さは、貫通孔Waの短辺方向に沿った長さの1/4になっている。さらに、耐火材受け板30は、手動裁断具(例えば、鋏やカッターナイフ)によって容易に裁断できるようになっている。
【0035】
図4に示すように、耐火材受け板30は、その短辺が、支持板26の長さ方向に沿うように支持板26の上面に接着剤によって接着されている。よって、耐火材受け板30は、短辺が貫通孔Waの長辺方向へ延びるとともに、耐火材受け板30の長辺が貫通孔Waの短辺方向へ延びるように支持板26に支持されるようになっている。そして、本実施形態では、一対の支持金具22よりなる支持具本体21と、支持具本体21の支持板26に支持された複数の耐火材受け板30とから耐火材支持具20が構成されている。
【0036】
次に、上記耐火材支持具20を用いて防火区画床Wに貫通部構造Tを形成する方法について説明する。貫通孔Wa内には、第1の配線・配管材群101と第2の配線・配管材群102とが互いに離間するように配設されるとともに、各配線・配管材群101,102の周囲には空間Sが形成されている。なお、防火区画床Wには4つの耐火材支持具20が装着されるが、耐火材支持具20の防火区画床Wへの装着方法は4つの耐火材支持具20とも同じであるため、1つの耐火材支持具20を防火区画床Wに装着する場合について説明する。
【0037】
まず、支持具本体21を組付けつつ耐火材支持具20を形成する。図2に示すように、防火区画床Wの上面において、貫通孔Waの周囲となる貫通孔Waの両短辺側に各支持金具22の掛止部23を掛止させるとともに、延設部24を貫通孔Waの周面に沿わせるように配設する。このとき、一対の支持金具22は、貫通孔Waの長辺方向において互いに対向するように防火区画床Wに装着される。掛止部23の下面は防火区画床Wの上面に接着剤で接着される。
【0038】
また、図5に示すように、延設部24は、防火区画床Wの周面Wbに沿って上下方向へ延びるようになっている。そして、延設部24において、防火区画床Wの周面Wbと、この周面Wbに対向する外面とが接着剤によって接着される。連結部25は貫通孔Wa(空間S)内に向けて突出するように配設される。また、連結部25の上面は、防火区画床Wの下面と同一平面上に位置するようになっている。
【0039】
次に、図3に示すように、対向する支持金具22の連結部25に支持板26の両端側を接着剤で接着すると、一対の支持金具22と支持板26とが組付けられると共に支持具本体21が形成される。そして、4つの支持具本体21は、第1の配線・配管材群101と防火区画床Wの周面Wbとの間に1つ、第1の配線・配管材群101と第2の配線・配管材群102の間に2つ、及び第2の配線・配管材群102と防火区画床Wの周面Wbとの間に1つずつ配設されている。
【0040】
次に、各支持具本体21に耐火材受け板30を支持させて耐火材支持具20を形成する方法について説明する。図4及び図5に示すように、複数の耐火材受け板30を、その短辺が支持板26の長さ方向(貫通孔Waの長辺)へ延び、長辺が貫通孔Waの短辺方向へ延び、かつ各配線・配管材群101,102に向けて延びるように各支持板26の上面に接着剤で接着する。すなわち、複数の耐火材受け板30を、その短辺が配線・配管材100の並列方向へ延びるように支持板26に接着、支持させる。このとき、支持板26の長さ方向において、耐火材受け板30同士の間に隙間ができないように耐火材受け板30同士を隣接させて敷き詰める。よって、各支持具本体21において、支持板26は貫通孔Waの長辺方向全体に亘って延びているため、支持具本体21によって貫通孔Waの長辺方向全体に耐火材受け板30が敷き詰められる。
【0041】
第1の配線・配管材群101と、防火区画床Wの周面Wbとの間に位置する支持板26に対して耐火材受け板30を接着する場合は、耐火材受け板30の一方の短辺を防火区画床Wの周面Wbに当接させるとともに、他方の短辺側を第1の配線・配管材群101に向けて延出させるようにする。このとき、第1の配線・配管材群101に向けて支持板26から延びる耐火材受け板30の延出部位が第1の配線・配管材群101と干渉する場合は、延出部位を手動裁断具を用いて裁断する。耐火材受け板30は、配線・配管材100及び側板15との間に大きな隙間が形成されないように裁断されるとともに、耐火材受け板30における延出部位の裁断は、第1の配線・配管材群101の配線・配管材100及び側板15の外面形状に沿って円弧状等に裁断するのではなく、直線状に裁断される。
【0042】
2つの配線・配管材群101,102の間に位置する2つの支持板26に対して耐火材受け板30を接着する場合は、耐火材受け板30の一方の短辺を貫通孔Waの中心線Lに沿わせるとともに、他方の短辺側を各配線・配管材群101,102に向けて延出させるようにする。第1の配線・配管材群101において、配線・配管材100は載台14によって直線状に並ぶように支持されているため配線・配管材100に向けて延びる複数の耐火材受け板30は、側板15と対向する耐火材受け板30を除いて同じ長さに裁断される。側板15に向けて延びる耐火材受け板30は、側板15に干渉しないように裁断される。一方、第2の配線・配管材群102に向けて延びる複数の耐火材受け板30それぞれは、第2の配線・配管材群102における配線・配管材100及び側板15との距離に応じて個別に裁断位置が調節される。
【0043】
さらに、第2の配線・配管材群102と、防火区画床Wの周面Wbとの間に位置する支持板26に対して耐火材受け板30を接着する場合は、耐火材受け板30の一方の短辺を防火区画床Wの周面Wbに当接させるとともに、他方の短辺側を第2の配線・配管材群102に向けて延出させるようにする。このとき、第2の配線・配管材群102において、配線・配管材100は載台14によって直線状に並ぶように支持されているため、配線・配管材100に向けて延びる複数の耐火材受け板30は、側板15と対向する耐火材受け板30を除いて同じ長さに裁断される。一方、側板15に向けて延びる耐火材受け板30は、側板15に干渉しないように裁断される。
【0044】
そして、複数の耐火材受け板30が支持板26に接着、支持されるとともに、支持具本体21と耐火材受け板30とからなる耐火材支持具20が防火区画床Wに装着される。なお、両配線・配管材群101,102の長さ方向両端より外側の空間Sは、裁断されずに支持板26に支持された耐火材受け板30によって閉鎖されている。また、複数の支持板26は、全ての上面が同じ高さに位置し、支持板26に支持された複数の耐火材受け板30も全て同じ高さに位置して同一平面上に位置している。
【0045】
次に、図6及び図7に示すように、熱膨張性耐火材11を空間Sに充填するとともに耐火材受け板30によって耐火材支持具20に支持させる。このとき、熱膨張性耐火材11は、六つの面のうち最大となる二つの面における長辺方向が貫通孔Waの長辺方向へ延びるとともに、六つの面のうち最大となる二つの面における短辺方向が貫通孔Waの深さ方向へ延びるように貫通孔Wa内に充填される。
【0046】
そして、防火区画床Wの周面Wbと各配線・配管材群101,102との間、及び両配線・配管材群101,102同士の間に複数の熱膨張性耐火材11を充填するとともに、全ての熱膨張性耐火材11を耐火材受け板30に支持させる。このとき、全ての耐火材受け板30は同じ高さ(同一平面上)に位置するため、熱膨張性耐火材11を耐火材受け板30に支持させることにより、複数の熱膨張性耐火材11が全て同じ高さになる。
【0047】
また、貫通孔Waの長辺方向へのサイズに合わせて熱膨張性耐火材11を複数充填し、貫通孔Waの短辺方向へのサイズに合わせて熱膨張性耐火材11を複数充填する。貫通孔Waの長辺方向及び短辺方向に隣接する熱膨張性耐火材11同士は、隙間を無くすために互いが長辺方向及び短辺方向に圧接している。
【0048】
また、熱膨張性耐火材11は、ブロック体11aがクッション性を有するため圧縮変形可能であり、外装部材11bもゴム性を有するため弾性変形可能である。このため、貫通孔Waに充填された熱膨張性耐火材11は、圧縮変形状態から原形状への復帰力によって長辺方向及び短辺方向に隣接する熱膨張性耐火材11の外面となる外装部材11bに圧接している。さらに、外装部材11bはゴム性を有するため、圧接した外装部材11b同士が互いに滑りにくくなっており、貫通孔Waに充填された熱膨張性耐火材11が位置ずれすることが防止される。さらに、各配線・配管材群101,102に対して熱膨張性耐火材11の外装部材11bの外面が圧接している。
【0049】
また、貫通孔Waの長辺方向及び短辺方向において、熱膨張性耐火材11同士の間、防火区画床Wの周面Wbと各配線・配管材群101,102との間、架台13と配線・配管材100との間等に熱膨張性耐火材11のサイズよりも小さい隙間が形成された場合は、該隙間の大きさに合わせた熱膨張性耐火材11が充填される。すなわち、熱膨張性耐火材11を所要のサイズに切断して用いられる。また、各配線・配管材群101,102と熱膨張性耐火材11との間、架台13と配線・配管材100との間に形成される僅かな隙間には熱膨張性耐熱シール材(図示せず)が充填される。
【0050】
さて、防火区画床Wに貫通部構造Tが形成された建築物において、防火区画床Wの下側で火災等が発生し、両配線・配管材群101,102が燃焼したとする。このとき、配線・配管材群101,102の外面に圧接するのは熱膨張性耐火材11の外装部材11bとなっている。そして、外装部材11bは難燃性の熱膨張性耐熱材よりなる。このため、熱膨張性耐火材11から発生する熱によって外装部材11bが即座に焼失してしまうことはなく、外装部材11bは熱を受けて膨張する。また、ブロック体11aは不燃性を有する材料より形成されているため、外装部材11bが膨張したとき、ブロック体11aは燃焼することがない。
【0051】
すると、加熱された外装部材11bは熱膨張性耐火材11に向けて膨張するとともに圧接する外装部材11b同士が接合(溶着)して複数の熱膨張性耐火材11が一つの塊状となり、一つの塊状をなす熱膨張性耐火材11によって、各配線・配管材群101,102と、防火区画床Wの周面Wbとの間が密封閉鎖される。すなわち、空間Sが火炎、煙、有毒ガス、熱の経路となり、防火区画床Wの上側へ火炎、煙、有毒ガス、熱が伝わることが防止され、耐火機能が発揮される。
【0052】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)耐火材支持具20は、支持具本体21の支持板26に支持される耐火材受け板30を備え、この耐火材受け板30は不燃紙よりなり手動裁断具によって容易に裁断できる。また、耐火材受け板30は、支持板26から各配線・配管材群101,102に向けて延びるように支持板26に支持されている。そして、支持板26からの耐火材受け板30の延出部位を手動裁断具で裁断することにより、耐火材受け板30の支持板26からの延出長さを容易に調節することができる。さらに、耐火材受け板30は、長辺方向におけるいずれの位置からも裁断可能である。したがって、熱膨張性耐火材11を支持する部材が金属材料よりなる場合と異なり、耐火材受け板30を任意の長さに容易に調節することができる。
【0053】
(2)耐火材受け板30は小片の矩形状をなし、支持板26には複数の耐火材受け板30が支持されている。そして、各耐火材受け板30を個別に裁断することによって各配線・配管材群101,102と干渉しないように耐火材受け板30の長さ調節を行うことができる。したがって、例えば、大判よりなる一枚の耐火材受け板を各配線・配管材群101,102に干渉しないように裁断する場合に比して、耐火材受け板30の配設作業を容易に行うことができる。特に、大判よりなる一枚の耐火材受け板を配線・配管材100の外面形状に沿うように裁断する作業は非常に面倒である。しかし、本実施形態では、複数の耐火材受け板30を個別に裁断するため、一枚の耐火材受け板30の裁断量は僅かで済み、耐火材受け板30の裁断を容易に行うことができる。
【0054】
(3)各配線・配管材群101,102は複数の配線・配管材100が並列されてなり、各配線・配管材群101,102の外面形状は複数の配線・配管材100によって凹凸状になっている。複数の耐火材受け板30は、短辺が配線・配管材100の並列方向へ延びるように支持板26に支持されている。そして、配線・配管材100の外面形状に合わせて複数の耐火材受け板30を個々に裁断することにより、各配線・配管材群101,102の凹凸形状に容易に対応することができる。特に、耐火材受け板30は短辺が配線・配管材100の並列方向へ延びるように支持板26に支持される。このため、各耐火材受け板30の裁断は、耐火材受け板30の短辺方向への裁断となり、例えば、耐火材受け板30を長辺方向へ裁断する場合に比して耐火材受け板30の裁断量を減らすことができ、耐火材受け板30の裁断作業そのものを簡易化することができる。
【0055】
(4)耐火材受け板30は支持板26の上面に接着剤によって接着(固着)されている。このため、耐火材受け板30を支持板26に安定した状態に支持させることができ、耐火材受け板30によって熱膨張性耐火材11を安定した状態に支持させることができる。
【0056】
(5)支持具本体21は、一対の支持金具22の連結部25に、支持板26の両端を連結してなる。そして、支持板26の長さを変更することで、貫通孔Waの大きさ、形状に対応することができる。
【0057】
(6)耐火材受け板30は、ケイ酸マグネシウムを主成分とする不燃紙よりなる。このため、耐火材受け板30は、熱膨張性耐火材11が膨張するまで熱膨張性耐火材11を支持することができる。また、耐火材受け板30は紙であるため、手動裁断具で容易に裁断することができる。
【0058】
(7)耐火材受け板30は、支持板26によって貫通孔Waの長辺方向全体に敷き詰められるとともに、貫通孔Waの短辺方向に複数装着された支持板26によって貫通孔Waの短辺方向全体に耐火材受け板30が敷き詰められている。このため、空間Sは耐火材受け板30によって閉鎖され、空間Sからの熱膨張性耐火材11の落下が防止されている。したがって、例えば、貫通孔Waの長辺方向に間隔を空けて耐火材受け板30が支持されている場合のように、熱膨張性耐火材11の落下防止のために熱膨張性耐火材11の位置を考慮する必要がない。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図8及び図9にしたがって説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成については、同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0060】
図9(a)に示すように、防火区画床Wの貫通孔Wcは円孔状をなす。第2の実施形態の耐火材支持具40は、図8(b)に示す支持具本体41と、図9(b)に示す扇形状をなす耐火材受け板45とを組みつけて形成されている。図8(a)及び図8(b)に示すように、支持具本体41は、防火区画床Wの上面における貫通孔Wcの周囲に掛止される掛止部42を有するとともに、掛止部42に対し直交するように延びる延設部43を有する。延設部43の長さ方向への長さは、貫通孔Wcの深さ、すなわち、防火区画床Wの厚さと同じになっている。さらに、支持具本体41は、延設部43に対し直交し、かつ掛止部42とは相反する方向へ延び、さらに貫通孔Waの周方向に沿って延びる円弧状の支持部44を有する。耐火材受け板45は中心角45°の扇形状に形成されている。そして、支持部44に耐火材受け板45が接着剤によって接着されるとともに支持されることで支持具本体41と耐火材受け板45が組み付けられて耐火材支持具40が形成されている。
【0061】
次に、上記耐火材支持具40を用いて防火区画床Wに貫通部構造Tを形成する方法について説明する。貫通孔Wc内には、貫通体としてのケーブル200が配設されるとともに、ケーブル200の周囲には空間Sが形成されている。なお、防火区画床Wには4つの耐火材支持具40が装着される。
【0062】
まず、図8(a)に示すように、防火区画床Wの上面において、貫通孔Wcの周縁に掛止部42を掛止させるとともに、延設部43を貫通孔Wcの周面に沿わせるように配設する。掛止部42の下面は防火区画床Wの上面に接着剤で接着されるとともに防火区画床Wの周面Wdと、この周面Wdに対向する外面とが接着剤によって接着される。すると、支持部44は、その上面が防火区画床Wの下面と同一平面上に位置するようになっている。
【0063】
次に、図9(a)に示すように、各支持具本体41の支持部44に耐火材受け板45を接着、支持させて耐火材支持具40を形成する。本実施形態では、1つの支持部44に2つの耐火材受け板45を支持させる。このとき、耐火材受け板45の円弧が、貫通孔Wcを形成する防火区画床Wの周面Wdに対向しながら沿うように耐火材受け板45を支持部44に接着するとともに、耐火材受け板45の頂部側をケーブル200に向けて延出させる。
【0064】
次に、ケーブル200に向けて支持部44から延びる耐火材受け板45の延出部位(頂部側)を手動裁断具を用いて裁断する。耐火材受け板45における延出部位の裁断は、ケーブル200の外面形状に沿って円弧状等に裁断するのではなく、直線状に裁断される。そして、複数の耐火材受け板45によって、ケーブル200の周囲に位置する円環状の空間Sが閉鎖されるとともに、耐火材受け板45に熱膨張性耐火材11が支持されて貫通部構造Tが形成される。
【0065】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)、(4)、及び(6)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(8)掛止部42及び支持部44の形状を円孔状の貫通孔Wcに合わせて円弧状に形成するとともに耐火材受け板45を扇形状に形成した。このため、ケーブル200の周囲に円環状の空間Sが形成されても、空間Sを耐火材受け板45によって閉鎖することができ、熱膨張性耐火材11を耐火材支持具40によって下方から支持することができる。
【0066】
なお、各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態において、耐火材受け板30は支持板26の長さ方向に等間隔おき又は不等間隔おきに支持されていてもよい。又は、耐火材受け板30は貫通孔Waの長辺方向において、隣り合う耐火材受け板30の長辺同士が重なり合った状態で、全ての耐火材受け板30が同一平面上に位置するように支持板26に支持されていてもよい。
【0067】
○ 第2の実施形態において、耐火材受け板45は、中心角が90°や120°の扇形状に形成され、貫通孔Wc内に4枚や3枚配設されていてもよい。又は、第2の実施形態において、耐火材受け板45は、中心角が45°の二等辺三角形状、中心角が90°の二等辺三角形状、又は中心角が120℃の二等辺三角形状に形成されていてもよい。この場合、耐火材受け板45は、三角形の底辺が貫通孔Waを形成する防火区画床Wの周面Wdに対向するように耐火材支持具40に支持される。また、扇形状又は二等片三角形状をなす耐火材受け板45は、支持部44に支持された際に支持部44からの延出部位が存在し、かつケーブル200に延出部位が干渉する状態となる大きさで頂部側が予め切除されたものでもよく、ケーブル200に干渉する部位を予め切除されたものでもよい。
【0068】
○ 各実施形態において、耐火材受け板30,45は、貫通孔Wa,Wcを形成する防火区画床Wの周面Wb,Wdから延設された支持部によって支持されていてもよい。
○ 第1の実施形態において、支持板26は長さ方向に直交する断面形状がコ字状に形成されたものでもよく、この場合、支持板26は、下方に向けて開口するように連結部25に接着、支持される。また、断面形状がコ字状に形成されているため、開口と反対側の上面に耐火材受け板30を支持する支持面が形成される。
【0069】
○ 各実施形態において、耐火材受け板30,45は、熱を受けると発泡するもので形成されていてもよい。
○ 第1の実施形態において、裁断した耐火材受け板30を支持板26に支持させたとき、支持板26の幅方向に沿って耐火材受け板30を第1の配線・配管材群101や第2の配線・配管材群102に向けて移動させてもよい。このように構成すると、第1の配線・配管材群101や第2の配線・配管材群102と、耐火材受け板30との間に隙間があっても耐火材受け板30の移動により、隙間を無くすことができる。
【0070】
○ 第1の実施形態において、支持金具22(掛止部23及び延設部24)と防火区画床Wとを粘着テープによって貼着してもよい。又は耐火材受け板30と支持板26とを粘着テープによって貼着(固着)してもよい。さらには、連結部25と支持板26とを粘着テープによって貼着してもよい。第2の実施形態において、支持具本体41(掛止部42及び延設部43)と防火区画床Wとを粘着テープによって貼着してもよい。又は耐火材受け板45と支持部44とを粘着テープによって貼着(固着)してもよい。
【0071】
○ 第1の実施形態では、耐火材受け板30の長辺方向に沿った長さは、貫通孔Waの短辺方向に沿った長さの1/4に設定したが、これに限らず、裁断される前の耐火材受け板30の長辺方向への長さを貫通孔Waの大きさに合わせて変更してもよい。
【0072】
○ 第1の実施形態において、貫通孔Waの長辺方向に沿って支持金具22を複数装着し、各支持金具22の連結部25に耐火材受け板30を支持させ、この耐火材受け板30によって熱膨張性耐火材11を支持させてもよい。この場合、連結部25が耐火材受け板30の支持部を兼用する。なお、両配線・配管材群101,102の間の空間Sに充填される熱膨張性耐火材11は、第1の実施形態と同様に、貫通孔Waの長辺方向に架設された支持板26に支持された耐火材受け板30によって支持する。
【0073】
○ 耐火材受け板30,45を、プラスチックやゴムなどに難燃剤(例えば、ハロゲン化合物)を練り込んだり、繊維の表面に難燃剤を塗布してなる難燃材料(難燃性を有する材料)で形成してもよい。
【0074】
○ 各実施形態において、複数の耐火材受け板30,45のうち延出部位の切断量が同じものは、それら複数の耐火材受け板30,45を重ねて丸ノコのような電動工具で切断してもよい。
【符号の説明】
【0075】
S…空間、T…貫通部構造、W…防火区画床、Wa,Wc…貫通孔、Wb,Wd…貫通孔の周面、11…耐火材としての熱膨張性耐火材、20,40…耐火材支持具、21,41…支持具本体、23,42…掛止部、24,43…延設部、25…連結部、26…支持部としての支持板、30,45…耐火材受け板、44…支持部、100…配線・配管材、101,102…貫通体としての第1及び第2の配線・配管材群、200…貫通体としてのケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成する方法であって、
前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記延設部から前記貫通孔内に向けて延設されるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体を前記貫通孔に複数設置し、
不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成されている複数の耐火材受け板を、前記支持部から前記貫通体に向けて延びるようにかつ前記支持部の長さ方向に沿って並ぶように前記支持部に支持させ、前記支持部に支持される複数の耐火材受け板のうち、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位が前記貫通孔を貫通する貫通体と干渉する耐火材受け板は、前記貫通体と干渉しないように前記延出部位を裁断することにより前記支持部からの延出長さが調節されており、当該耐火材受け板に前記耐火材を支持させることを特徴とする貫通部構造を形成する方法。
【請求項2】
防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造であって、
掛止部により前記貫通孔の周囲に掛止されるとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設された延設部から前記貫通孔内に向けて延設されるとともに前記空間内に配設される支持部に、
前記耐火材を支持するための、不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成された複数の耐火材受け板が、前記支持部から前記貫通体に向けて延びるようにかつ前記支持部の長さ方向に沿って並ぶように前記支持部に支持されており、
前記支持部に支持される複数の耐火材受け板のうち、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位が前記貫通孔を貫通する貫通体と干渉する耐火材受け板は、前記貫通体と干渉しないように個別に前記延出部位が裁断されてその延出方向の長さが調節されており、前記貫通体の周囲に形成される空間には、前記耐火材受け板に支持された耐火材が設けられいることを特徴とする貫通部構造。
【請求項3】
前記耐火材受け板は前記支持部に粘着テープによって貼着されている請求項2に記載の貫通部構造。
【請求項4】
防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具であって、
前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記延設部から前記貫通孔内に向けて延設されるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体と、
前記耐火材を支持するために前記支持部に支持される複数の耐火材受け板とを備え、
前記耐火材受け板は不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに手動裁断具により裁断可能に形成され、さらに、前記耐火材受け板は前記支持部から前記貫通体に向けて延びるようにかつ前記支持部の長さ方向に沿って並ぶように前記支持部に支持され、前記支持部に支持される複数の耐火材受け板のうち、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位が前記貫通孔を貫通する貫通体と干渉する耐火材受け板は、前記貫通体と干渉しないように前記延出部位を裁断することにより前記支持部からの延出長さを調節可能に形成されている耐火材支持具。
【請求項5】
前記貫通孔は四角孔状をなすとともに前記支持部は前記貫通孔の一辺の延びる方向へ延びる細長状に形成され、前記複数の耐火材受け板それぞれは矩形状をなし、該耐火材受け板の短辺が前記貫通孔の一辺方向へ延びるとともに、長辺が前記貫通孔における前記一辺に直交する他辺方向へ延びるように前記支持部に支持されている請求項4に記載の耐火材支持具。
【請求項6】
前記貫通体は複数の配線・配管材が並列されてなり、前記複数の耐火材受け板は前記短辺が前記配線・配管材の並列方向へ延びるように前記支持部に支持されている請求項5に記載の耐火材支持具。
【請求項7】
前記耐火材受け板は、前記支持部の長さ方向に対し直交する幅方向に沿って前記支持部に対する位置が調節される請求項5又は請求項6に記載の耐火材支持具。
【請求項8】
前記耐火材受け板は、前記支持部の長さ方向全体に亘って前記支持部に支持されている請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の耐火材支持具。
【請求項9】
前記貫通孔は円孔状をなすとともに前記支持部は前記貫通孔の周方向に沿って延びる円弧状に形成され、さらに、前記耐火材受け板は扇形状又は三角形状をなし、該耐火材受け板の円弧又は底辺が、前記貫通孔を形成する前記防火区画床の周面に対向し、かつ耐火材受け板の頂部側が前記貫通体に向けて延びるように前記支持部に支持されている請求項4に記載の耐火材支持具。
【請求項10】
前記耐火材受け板は前記支持部に固着されている請求項4〜請求項9のうちいずれか一項に記載の耐火材支持具。
【請求項11】
防火区画床を上下方向に貫通する四角孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具であって、
前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記貫通孔の一辺の延びる方向へ細長に延びるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体と、
前記耐火材を支持するために前記支持部に支持される複数の矩形状をなす耐火材受け板とを備え、
前記耐火材受け板は不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに切断可能に形成され、さらに、前記耐火材受け板は該耐火材受け板の短辺が前記貫通孔の一辺方向へ延びるとともに、長辺が前記貫通孔における前記一辺に直交する他辺方向へ延び、かつ長辺方向が前記支持部から貫通体に向けて延びるように前記支持部に支持され、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位を切断することにより前記支持部からの延出長さを調節可能に形成されている耐火材支持具。
【請求項12】
防火区画床を上下方向に貫通する円孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具であって、
前記貫通孔の周囲に掛止される掛止部を有するとともに前記貫通孔の周面に沿って上下方向へ延びるように前記掛止部から延設される延設部を有し、さらに、前記貫通孔の周方向へ円弧状に延びるとともに前記空間内に配設される支持部を有する支持具本体と、
前記耐火材を支持するために前記支持部に支持される複数の扇形状又は三角形状をなす耐火材受け板とを備え、
前記耐火材受け板は不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに切断可能に形成され、さらに、前記耐火材受け板は該耐火材受け板の円弧又は底辺が、前記貫通孔を形成する前記防火区画床の周面に対向し、かつ耐火材受け板の頂部側が前記貫通体に向けて延びるように前記支持部に支持され、前記貫通体に向けた前記支持部からの延出部位を切断することにより前記支持部からの延出長さを調節可能に形成されている耐火材支持具。
【請求項13】
防火区画床を上下方向に貫通する貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具が備える耐火材受け板であって、
不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって形成されるとともに、前記貫通体に向けて延びる延出部位の長さを調節可能とするため手動裁断具によって裁断可能に形成されていることを特徴とする耐火材受け板。
【請求項14】
防火区画床を上下方向に貫通する四角孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具が備える耐火材受け板であって、
不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって矩形状に形成されるとともに、短辺が前記貫通孔の一辺方向へ延びるとともに、長辺が前記貫通孔における前記一辺に直交する他辺方向へ延び、かつ長辺方向が前記耐火材支持具から貫通体に向けて延びるように該耐火材支持具に支持され、さらに、前記貫通体に向けて延びる延出部位の長さを調節可能とするため切断可能に形成されていることを特徴とする耐火材受け板。
【請求項15】
防火区画床を上下方向に貫通する円孔状の貫通孔を貫通体が貫通するとともに、前記貫通孔内における前記貫通体の周囲に形成される空間に耐火材が設けられてなる貫通部構造を形成するため、前記耐火材を下方から支持する耐火材支持具が備える耐火材受け板であって、
不燃性又は難燃性を有する非金属材料によって扇形状又は三角形状に形成されるとともに、円弧又は底辺が、前記貫通孔を形成する前記防火区画床の周面に対向し、かつ頂部側が前記貫通体に向けて延びるように前記耐火材支持具に支持され、さらに、前記貫通体に向けて延びる延出部位の長さを調節可能とするため切断可能に形成されていることを特徴とする耐火材受け板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236080(P2012−236080A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188871(P2012−188871)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2008−56586(P2008−56586)の分割
【原出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】