説明

貯湯式給湯システム

【課題】貯湯式給湯システムにおいて、レジオネラ菌等の有害な菌の発生を防止し、また、沸上効率を低下させない。
【解決手段】貯湯式給湯システム1は、給水を貯留する貯湯タンク2と、貯湯タンク2の水を加熱する加熱源3と、加熱源3により加熱された高温湯を貯湯タンク2の高温層22aへ供給する高温湯供給配管54と、高温湯を出湯する高温湯出湯配管56と、加熱された中温湯を中温層22bへ供給する中温湯供給配管55と、中温湯を出湯する中温湯出湯配管57と、加熱源3の動作を制御する制御部4と、を備える。制御部4は、貯湯タンク2内の中温湯の使用量が一定期間で一定量を越えない場合に、貯湯タンク2内の全ての湯を滅菌可能な温度にまで再沸上する。これにより、レジオネラ菌等の有害な菌の発生を防止することができ、また、不要なタイミングでの中温湯からの沸上を抑えるので、沸上効率を低下させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌を行なう貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱源と加熱した湯を貯湯する貯湯タンクとを備えた貯湯式給湯システムが知られている。このような、貯湯式給湯システムにおいては、長期間、湯の使用がない場合、貯湯タンク内の湯温がタンクからの放熱によって徐々に低下し、レジオネラ菌などの有害な菌が発生する虞がある。このために、タンク内の所定位置の湯温が一定温度以下になったり、湯の使用が一定期間無かった場合に滅菌可能な温度まで沸上を行う貯湯式給湯システムが知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0003】
また、1つの貯湯タンクに高温層、中温層、水層の3層を共存させる貯湯式給湯システムにおいては、有害な菌の発生の可能性が高温層に比べ高くなる中温層を積極的に作ることになる。このような貯湯式給湯システムにおいては、特許文献1乃至3の貯湯式給湯システムのように所定位置の湯温が一定温度以下になった際に滅菌処理を行う方法では、湯の使用状況により中温層の領域が変動するために、湯温が一定温度以下になったかどうかを判断することは困難である。また、中温層の領域の変動状況によっては、中温湯が加熱された直後であっても所定位置の湯温が一定温度以下の場合には滅菌処理を行ってしまうために、沸上効率が低下する。また、湯の使用が一定期間ない場合に滅菌処理する方法では、湯の使用量が少量であっても滅菌処理を行わないために、残っている中温湯に菌が発生する虞がある。
【特許文献1】特開2004−150649号公報
【特許文献2】特開2004−263912号公報
【特許文献3】特開2006−275337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解消するものであり、レジオネラ菌等の有害な菌の発生を防止することができ、また、沸上効率が低下しない貯湯式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、給水を貯留する貯湯タンクと、前記貯湯タンクの水を加熱する加熱源と、前記加熱源により加熱された高温湯を前記貯湯タンクの高温層へ供給する高温湯供給配管と、前記高温湯供給配管により供給された前記貯湯タンクの高温層の高温湯を出湯する高温湯出湯配管と、前記加熱源により加熱された中温湯を前記貯湯タンクの中温層へ供給する中温湯供給配管と、前記中温湯供給配管により供給された前記貯湯タンクの中温層の中温湯を出湯する中温湯出湯配管と、前記加熱源により加熱された湯の供給先を前記高温湯供給配管と中温湯供給配管とに切り替える沸上切替弁と、前記加熱源の動作を制御する制御部と、を備えた貯湯式給湯システムにおいて、前記制御部は、前記貯湯タンク内の中温湯の使用量が一定期間で一定量を越えない場合に、前記貯湯タンク内の湯を滅菌可能な温度にまで再沸上するように前記加熱源、及び沸上切替弁を制御するものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の貯湯式給湯システムにおいて、前記貯湯タンクの中温層から出湯された中温湯の量を測定する出湯量測定手段を有し、前記制御部は、前記出湯量測定手段による測定量に基づいて、前記貯湯タンク内の中温湯の使用量を判定するものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の貯湯式給湯システムにおいて、前記貯湯タンクの中温層に供給した中温湯の量を測定する供給量測定手段を有し、前記制御部は、前記供給量測定手段による測定量に基づいて、前記貯湯タンク内の中温湯の使用量を判定するものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の貯湯式給湯システムにおいて、前記制御部は、前記供給量測定手段に代えて、前記加熱源の加熱能力と加熱時間とから、前記貯湯タンクの中温層に供給した中温湯の量を推定するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、中温湯の使用量に応じて再沸上するので、レジオネラ菌等の有害な菌の発生を防止することができ、また、不要なタイミングでの中温湯からの沸上が抑えられ、沸上効率が低下しない。
【0010】
請求項2の発明によれば、中温湯の出湯量測定手段により貯湯タンク内の中温湯の使用量を判定するので、貯湯タンク内の中温湯の使用量そのものを測定するセンサを必要とせず、低コストにすることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、中温湯の出湯側にフローメータ等の流量測定器を設けると、流量測定器による圧力損失のために出湯量が低下する虞があるが、貯湯タンクへの供給側に供給量測定手段を設けても出湯量が低下する虞がない。このことにより、出湯量を低下させることなく、レジオネラ菌の発生を防止することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、故障の原因となりやすい可動部を有するフローメータ等の機器を用いずに、加熱源の加熱能力と加熱時間とから、貯湯タンクの中温層に供給した中温湯の量を推定するので、貯湯式給湯システムの信頼性が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る貯湯式給湯システムについて図1を参照して説明する。貯湯式給湯システム1は、給水を貯留する貯湯タンク2と、貯湯タンク2の水を加熱する加熱源3と、加熱源3等の各部の動作を制御する制御部4と、を備えている。貯湯タンク2の側壁には頂部から底部にかけて、複数の温度センサ21が設けられており、制御部4は、温度センサ21が検出した湯温から、貯湯タンク2内の高温湯、中温湯、及び水の量を推定する。貯湯タンク2の底部には、給水を行なう給水配管51が接続されており、給水配管51には温度センサ71aとフローメータ72aが配されている。また、貯湯タンク2の底部は、加熱配管52を介して加熱源3と接続されており、貯湯タンク2底部の水が加熱源3で加熱される。加熱配管52は、また、排水弁52aを介して排水口と繋がっている。
【0014】
加熱源3は、加熱した湯を送る内蔵ポンプ31を備えている。加熱源3には、供給配管53が接続されており、供給配管53は、沸上切替弁73aにおいて貯湯タンク2の頂部と繋がる高温湯供給配管54と、貯湯タンク2の中層部に繋がる中温湯供給配管55に分岐している。
【0015】
貯湯タンク2の頂部には、高温出湯口81と繋がる高温湯出湯配管56が接続されている。貯湯タンク2の中層部には中温湯出湯配管57が接続されており、中温湯出湯配管57は、高温湯出湯配管56から分岐した配管58と、出湯切替弁73bによって合流し、配管59と繋がっている。配管59には温度センサ71bと逆止弁74aが配されている。配管59は、給水配管51から分岐した配管60と混合弁73cによって合流し、中温出湯口82に繋がる混合配管61に接続されている。配管60は、逆止弁74bを有している。混合配管61は、温度センサ71cとフローメータ72bを有している。高温湯出湯配管56は、配管中の湯を貯湯タンク2に戻す戻し配管62に接続されている。戻し配管62には、逆止弁74cと即湯ポンプ75と開閉弁73dと温度センサ71dが配されている。
【0016】
次に、貯湯式給湯システム1の動作について説明する。高温出湯口81が開かれると、給水圧によって水が給水配管51を通って貯湯タンク2の底部に入り、加熱配管52を通って加熱源3に入る。制御部4は、水を高温に加熱する。加熱された湯は、供給配管53を通り沸上切替弁73aで、高温湯供給配管54側に切り替えられて貯湯タンク2の頂部に供給され、頂部に貯湯されていた高温湯が高温湯出湯配管56を通って高温出湯口81から出湯する。
【0017】
中温出湯口82が開かれると、高温湯の場合と同様に水が加熱源3に入って加熱される。制御部4は、水を加熱源3によって中温に加熱する。加熱された中温湯は、供給配管53を通り、沸上切替弁73aで中温湯供給配管55側に切り替えられて貯湯タンク2の中温層22bに供給される。中温層22bに貯湯されていた中温湯が中温湯出湯配管57、配管59、及び混合配管61を通って中温出湯口82から出湯する。制御部4は、中温湯を出湯するときに、貯湯タンク2内の中温湯の量が少ないと判断したときには、出湯切替弁73bを配管58側に切り替え、混合弁73cの混合割合を調整して高温湯と給水とを混合し、中温湯にして中温出湯口82から出湯する。
【0018】
制御部4は、貯湯タンク2内の湯水を沸かし上げる場合には、加熱源3内の内蔵ポンプ31を駆動し、貯湯タンク2内の湯水を加熱源3で所定の温度に加熱する。制御部4は、高温に加熱したときには、供給配管53から高温湯供給配管54を介して貯湯タンク2の高温層22aに供給し、中温に加熱したときには、供給配管53から中温湯供給配管55を介して貯湯タンク2の中温層22bに供給する。
【0019】
また、制御部4は、高温出湯口81が開かれたときに、温度の低下していない湯を直ぐに出湯する、所謂、即湯をするために配管中の湯を循環させている。高温湯出湯配管56中の湯を循環するには、制御部4は開閉弁73dを開き、即湯ポンプ75を駆動させる。高温湯出湯配管56中の湯が貯湯タンク2の高温湯と置換されるので、高温出湯口81を開くと直ぐに高温湯が出湯される。
【0020】
このような貯湯式給湯システム1において、貯湯タンク2の中温層22bが新たに加熱された中温湯によって入れ替わっておらずに中温湯が一定時間以上滞留していると、レジオネラ菌の発生する虞がある。そこで、貯湯タンク2内の中温湯の一定時間での使用量が一定量を越えない場合には、貯湯タンク2内の湯を全て沸かし上げる。
【0021】
制御部4は、出湯切替弁73bと、混合弁73cと、フローメータ72bとを出湯量測定部8(出湯量測定手段)とし、中温出湯口82が開かれている場合で、出湯切替弁73bが中温湯出湯配管57側に切り替わっているときに、混合弁73cの混合割合とフローメータ72bによって検出した流量とから、貯湯タンク2内の中温湯の使用量を判定する。例えば、フローメータ72bが10リッター/分の流量を示し、混合弁73cが配管59側に80%開いているときには、貯湯タンク2内の中温湯を8リッター/分の割合で使用しているとして、中温湯の使用量を判定する。そして、中温湯の使用量が一定期間で一定量を越えない場合には、貯湯タンク2内の全ての湯を滅菌可能な温度まで再沸上する。このことにより、レジオネラ菌の発生を防止することができ、また、不要なタイミングでの沸上を抑えるので、沸上効率が低下しない。
【0022】
特に、加熱源3がヒートポンプ式の場合には、中温湯から高温湯への沸上は熱効率が悪いので、このように、中温湯からの沸上を抑えることにより、沸上効率の低下を防ぐことができる。また、貯湯タンク2内の中温湯の使用量を測定するための新たなセンサを設けることなく、従来の貯湯式給湯システムが備えているフローメータ72b等によって中温湯の使用量を判定するので、コストを低くすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る貯湯式給湯システムについて図2を参照して説明する。本実施形態においては、第1の実施形態と異なり、貯湯タンク2への中温湯の供給量によって、中温湯の使用量を判定する。貯湯式給湯システム1は、中温湯供給配管55にフローメータ72cを備えている。フローメータ72cは、加熱源3から貯湯タンク2へ供給される中温湯の流量と戻し配管62から戻される中温湯の流量を測定するが、制御部4は、加熱源3が中温湯を加熱しているときのフローメータ72cの流量を、中温湯の使用量とする。そして、中温湯の使用量が一定期間で一定量を越えない場合には、貯湯タンク2内の全ての湯を滅菌可能な温度まで再沸上する。
【0024】
フローメータ等の流量測定器を中温湯の出湯側の中温湯出湯配管57に設けると、流量測定器による圧力損失のために、出湯量が低下する虞があるが、貯湯タンク2への供給側の中温湯供給配管55にフローメータ72cを設けても出湯量が低下する虞がない。このことにより、出湯量を低下させることなく、レジオネラ菌の発生を防止することができる。
【0025】
次に、本実施形態の変形例について説明する。貯湯式給湯システム1は、本実施形態と異なってフローメータ72cを有さずに、貯湯タンク2に供給した中温水の量を推定する。加熱源3は、高温湯や中温湯を加熱することができる量である加熱能力が想定されており、制御部4は、中温湯の加熱能力と、加熱時間から、供給した中温水の量を推定する。
【0026】
例えば、制御部4が加熱源3に中温湯の加熱指示を行ない、中温水の加熱能力が10リッター/分であり、加熱時間が10分である場合、制御部4は、100リッターの中温湯が貯湯タンク2に供給されたと推定し、この供給量に基づいて、貯湯タンク2の湯水の再沸上を行なう。これにより、故障の原因となりやすい可動部を有するフローメータ等の機器を用いずに、加熱源の加熱能力と加熱時間から、貯湯タンクの中温層に供給した中温湯の量を推定し、再沸上を行なうので、貯湯式給湯システムの信頼性が良くなる。
【0027】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、出湯量測定部として中温湯出湯配管57にフローメータを配してもよい。中温湯の使用量の測定が正確になり、滅菌の信頼性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る貯湯式給湯システムの構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る貯湯式給湯システムの構成図。
【符号の説明】
【0029】
1 貯湯式給湯システム
2 貯湯タンク
22a 高温層
22b 中温層
3 加熱源
4 制御部
55 中温湯供給配管
57 中温湯出湯配管
72c フローメータ(供給量測定手段)
8 出湯量測定部(出湯量測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を貯留する貯湯タンクと、前記貯湯タンクの水を加熱する加熱源と、前記加熱源により加熱された高温湯を前記貯湯タンクの高温層へ供給する高温湯供給配管と、前記高温湯供給配管により供給された前記貯湯タンクの高温層の高温湯を出湯する高温湯出湯配管と、前記加熱源により加熱された中温湯を前記貯湯タンクの中温層へ供給する中温湯供給配管と、前記中温湯供給配管により供給された前記貯湯タンクの中温層の中温湯を出湯する中温湯出湯配管と、前記加熱源により加熱された湯の供給先を前記高温湯供給配管と中温湯供給配管とに切り替える沸上切替弁と、前記加熱源の動作を制御する制御部と、を備えた貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御部は、前記貯湯タンク内の中温湯の使用量が一定期間で一定量を越えない場合に、前記貯湯タンク内の湯を滅菌可能な温度にまで再沸上するように前記加熱源、及び沸上切替弁を制御することを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項2】
前記貯湯タンクの中温層から出湯された中温湯の量を測定する出湯量測定手段を有し、
前記制御部は、前記出湯量測定手段による測定量に基づいて、前記貯湯タンク内の中温湯の使用量を判定することを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項3】
前記貯湯タンクの中温層に供給した中温湯の量を測定する供給量測定手段を有し、
前記制御部は、前記供給量測定手段による測定量に基づいて、前記貯湯タンク内の中温湯の使用量を判定することを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記供給量測定手段に代えて、前記加熱源の加熱能力と加熱時間とから、前記貯湯タンクの中温層に供給した中温湯の量を推定することを特徴とする請求項3に記載の貯湯式給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−174781(P2009−174781A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14196(P2008−14196)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】