説明

貯湯式給湯装置

【課題】貯湯タンク内に配置された給湯用熱交換器を介して出湯する構成の貯湯式給湯装置において、目標温度の給湯水を安定して供給できる貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】水を加熱するためのヒートポンプユニット1と、そのヒートポンプユニット1により加熱された温水を貯える貯湯タンク21と、貯湯タンク21内に配置され、外部から供給された水を加熱して出湯する給湯用熱交換器22と、給湯用熱交換器22からの温水と外部から供給された水を混合する給湯用混合弁31とを備える。制御部10は、給湯出水温度センサS21により検出された給湯出水温度と給湯入水温度および給湯温度センサS22により検出された給湯温度に基づいて、給湯用混合弁31により混合された温水の温度が給湯目標温度になるように、フィードフォワード制御とフィードバック制御を用いて給湯用混合弁31の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯式給湯装置としては、水を加熱するヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットにより加熱された温水を貯える貯湯タンクとを備え、貯湯タンク内の温水を利用して暖房や給湯を行うものがある(例えば、特開2006−329581号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
上記ヒートポンプ式給湯機では、タンク内の温水を直接用いて、給湯する場合には、タンク上部温度から、高温側の水温は容易に推定できる。このようなタンク上部温度は、タンク内の熱容量が大きいため、大きな変動がない。
【0004】
しかしながら、上記貯湯式給湯装置では、貯湯タンク内に貯えられた温水がそのまま出湯されるのに対して、衛生面などを考慮して貯湯タンク内に給湯用熱交換器を配置し、給水口から給湯用熱交換器を介して出湯する貯湯式給湯装置が別に提案されている。このような給湯用熱交換器を用いたヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク内で熱交換しているため、流速などの外部要因で給湯用熱交換器からの出湯温度が変化するため、目標温度の給湯水を安定して供給することができないという問題がある。
【特許文献1】特開2006−329581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、貯湯タンク内に配置された給湯用熱交換器を介して出湯する構成の貯湯式給湯装置において、目標温度の給湯水を安定して供給できる貯湯式給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の貯湯式給湯装置は、
水を加熱するためのヒートポンプユニットと、
上記ヒートポンプユニットにより加熱された温水を貯える貯湯タンクと、
上記貯湯タンク内に配置され、外部から供給された水を加熱して出湯する給湯用熱交換器と、
上記給湯用熱交換器からの温水と上記外部から供給された水を混合する混合弁と、
上記給湯用熱交換器からの温水の温度である給湯出水温度を検知する第1温度検知手段と、
上記給湯用熱交換器に外部から供給される水の温度である給湯入水温度を検知する第2温度検知手段と、
上記混合弁により混合された温水の温度である給湯温度を検知する第3温度検知手段と、
上記第1温度検知手段により検知された上記給湯出水温度と上記第2温度検知手段により検知された上記給湯入水温度および上記第3温度検知手段により検知された上記給湯温度に基づいて、上記混合弁により混合された温水の温度が給湯目標温度になるように、フィードフォワード制御とフィードバック制御を用いて上記混合弁の開度を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成の貯湯式給湯装置によれば、制御部によって、第1温度検知手段により検知された給湯出水温度と第2温度検知手段により検知された給湯入水温度に基づくフィードフォワード制御と、第1温度検知手段により検知された給湯出水温度と第3温度検知手段により検知された給湯温度に基づくフィードバック制御とを用いて混合弁の開度を制御することにより、混合弁により混合された温水の温度が給湯目標温度になるようにする。これにより、給湯出水温度の急な変化に対しては、フィードフォワード制御により応答を早くできる一方、給湯出水温度の緩やかな変化に対しては、フィードバック制御により滑らかな制御特性が得られる。このように、貯湯タンク内に配置された給湯用熱交換器を介して出湯する構成の貯湯式給湯装置において、給湯温度の制御性を向上でき、目標温度の給湯水を安定して供給することができる。
【0008】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置では、
上記制御部は、
上記第1温度検知手段により検知された上記給湯出水温度と、上記第2温度検知手段により検知された上記給湯入水温度と、上記給湯目標温度と、上記混合弁の最大開度とに基づいて、上記フィードフォワード制御するときの上記混合弁の開度を求める混合弁開度演算部を有する。
【0009】
上記実施形態によれば、上記第1温度検知手段により検知された給湯出水温度と、第2温度検知手段により検知された給湯入水温度と、給湯目標温度と、混合弁の最大開度とに基づいて、制御部の混合弁開度演算部により求められた混合弁の開度を用いて、フィードフォワード制御を行うことによって、給湯出水温度の急な変化に対して、速やかに応答できるから、給湯温度の制御性を向上できる。
【0010】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置では、
上記制御部は、
上記混合弁開度演算部により求められた上記混合弁の開度に基づく指令値を、上記混合弁の指令値に対する開度特性に応じて補正する指令値補正部を有し、
上記指令値補正部により補正された上記指令値を上記混合弁に出力する。
【0011】
上記実施形態によれば、上記混合弁開度演算部により求められた混合弁の開度に基づく指令値を、上記制御部の指令値補正部により混合弁の指令値に対する開度特性に応じて補正し、補正された上記指令値を上記混合弁に出力することによって、上記開度の指令値に対して流量比が比例しない開度特性の混合弁に対して、所望の流量比が得られる指令値を混合弁に出力することができる。
【0012】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置では、
外気温度を検知する外気温度検知手段を備え、
上記第2温度検知手段は、上記外気温度検知手段により検知された外気温度に基づいて、上記給湯入水温度を推定する。
【0013】
上記実施形態によれば、上記第2温度検知手段は、外気温度検知手段により検知された外気温度に基づいて、給湯入水温度を推定することによって、給湯用熱交換器に外部から供給される水の温度を直接検知する検知手段を用いることなく、通常備えられている外気温度検知手段を用いて、フィードフォワード制御に必要な給湯入水温度が得られる。
【0014】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置によれば、上記給湯目標温度と上記第3温度検知手段(S22)により検知された上記給湯温度との差分を求め、その差分に基づくPID(比例・積分・微分)制御により上記フィードバック制御するときの上記混合弁の開度を求める混合弁開度演算部を有する。
【0015】
上記実施形態によれば、給湯目標温度と第3温度検知手段により検知された給湯温度との差分に基づくPID制御により、混合弁開度演算部により求められた混合弁の開度を用いて、フィードバック制御を行うことによって、給湯出水温度の緩やかな変化に対して、滑らかな制御特性が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上より明らかなように、この発明の貯湯式給湯装置によれば、貯湯タンク内に配置された給湯用熱交換器を介して出湯する構成の貯湯式給湯装置において、目標温度の給湯水を安定して供給できる貯湯式給湯装置を実現することができる。
【0017】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置によれば、第1温度検知手段により検知された給湯出水温度と、第2温度検知手段により検知された給湯入水温度と、給湯目標温度と、混合弁の最大開度とに基づいて、制御部の混合弁開度演算部により求められた混合弁の開度を用いて、フィードフォワード制御を行うことによって、給湯出水温度の急な変化に対して、速やかに応答できるから、給湯温度の制御性を向上できる。
【0018】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置によれば、上記混合弁開度演算部により求められた混合弁の開度に基づく指令値を、上記制御部の指令値補正部により混合弁の指令値に対する開度特性に応じて補正し、補正された上記指令値を上記混合弁に出力することによって、上記開度の指令値に対して流量比が比例しない開度特性の混合弁に対して、所望の流量比が得られる指令値を混合弁に出力することができ、混合弁による流量比制御が正確に行える。
【0019】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置によれば、外気温度検知手段により検知された外気温度に基づいて、給湯入水温度を推定する第2温度検知手段を用いることによって、給湯用熱交換器に外部から供給される水の温度を直接検知する検知手段を用いることなく、通常備えられている外気温度検知手段を用いて、フィードフォワード制御に必要な給湯入水温度が得られる。
【0020】
また、一実施形態の貯湯式給湯装置によれば、給湯目標温度と第3温度検知手段により検知された給湯温度との差分に基づくPID制御により、混合弁開度演算部により求められた混合弁の開度を用いて、フィードバック制御を行うことによって、給湯出水温度の緩やかな変化に対して、滑らかな制御特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の貯湯式給湯装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
図1はこの発明の実施の一形態の貯湯式給湯機の一例としての貯湯式暖房給湯機の構成を示す回路図である。
【0023】
この貯湯式暖房給湯機は、図1に示すように、ヒートポンプユニット1と、貯湯部2と、図示しない暖房器や給湯器に温水を供給する暖房給湯部を備えている。上記ヒートポンプユニット1には、地球温暖化係数が小さくオゾンを破壊しないCO冷媒を用いている。これにより、ヒートポンプユニット1による出湯温度を高くできる(例えば90℃)。
【0024】
上記ヒートポンプユニット1は、圧縮機11と、上記圧縮機11の吐出側に一端(一次側)が接続された凝縮器(水冷媒熱交換器)12と、上記凝縮器12の他端(一次側)に一端が接続された膨張弁13と、上記膨張弁13の他端に一端が接続され、他端が圧縮機11の吸込側に接続された蒸発器14と、上記蒸発器14に外気を供給する送風ファン15とを有している。上記圧縮機11と凝縮器12と膨張弁13および蒸発器14で冷媒回路を構成している。
【0025】
また、上記圧縮機11の吐出側に、吐出温度を検知する吐出温度センサS1を配置すると共に、吐出圧力を検知する圧力センサ(HPS)16を配置している。また、上記蒸発器14に蒸発器温度を検知する蒸発器温度センサS2を配置し、蒸発器14近傍に、外気温度を検知する外気温度センサS3を配置している。
【0026】
また、上記貯湯タンク21の下部に配管L11の一端を接続し、その配管L11の他端を凝縮器12の一端(二次側)に接続している。上記配管L11に、貯湯タンク21下部から凝縮器12側に向かって水を送出する沸き上げ用循環ポンプ24を配設している。上記ヒートポンプユニット1の凝縮器12の他端(二次側)に配管L12の一端を接続し、その配管L12の他端を沸き上げ用三方弁25の入力側に接続している。上記沸き上げ用三方弁25の一方の出力側に配管L24の一端を接続し、その配管L24の他端を暖房用三方弁32の一方の入力側に接続している。さらに、上記暖房用三方弁32の一方の入力側を配管L35を介して貯湯タンク21の上部に接続している。一方、沸き上げ用三方弁25の他方の出力側に配管L23の一端を接続し、その配管L23の他端を貯湯タンク21の下側に接続している。
【0027】
上記凝縮器12の二次側上流の配管L11に、入水温度を検知する入水温度センサS4を配置し、凝縮器12の二次側下流の配管L12に、出湯温度を検知する出湯温度センサS5を配置している。
【0028】
また、上記貯湯タンク21は、断熱材(図示せず)で囲まれた略円筒形状をしている。上記貯湯タンク21内に、コイル状のパイプからなる給湯用熱交換器22を配置している。この給湯用熱交換器22は、所定の間隔をあけて接続された下側コイル部22aと上側コイル部22bとを有している。上記貯湯タンク21に接続された給水配管L21の一端を、下側コイル部22aの下端に連なる給水口21aに接続し、貯湯タンク21に接続された給湯配管L22の一端を、上側コイル部22bの上端と接続している。上記貯湯タンク21の外側の給湯配管L22に給湯用混合弁31を配設している。上記給湯用混合弁31の一方の入力側と給水配管L21とを配管L25を介して接続している。また、上記給湯配管L22の給湯用混合弁31よりも上流側に、貯湯タンク21から出湯される温水の給湯出水温度T1を検知する第1温度センサの一例としての給湯出水温度センサS21を配置している。また、上記給湯配管L22の給湯用混合弁31よりも下流側に、給湯温度を検知する第3温度センサの一例としての給湯温度センサS22を配置している。
【0029】
上記給水配管L21を介して外部から供給された水は、下側コイル部22aの下端側から上側コイル22bの上端側に向かって流れて、給湯配管L22を介して給湯器(図示せず)に供給される。
【0030】
また、上記貯湯タンク21は、側面に5つの温度センサS6〜S10を上側から下側に向かって順に互いに離間し配置している。上記温度センサS6により貯湯タンク21内の上側部分の水温を検知し、温度センサS8により貯湯タンク21内の中間部分の水温を検知する。また、上記温度センサS6と温度センサS8の中間で温度センサS7により貯湯タンク21内の水温を検知する。また、上記温度センサS10により貯湯タンク21内の下側部分の水温を検知し、温度センサS8と温度センサS10の中間で温度センサS9により貯湯タンク21内の水温を検知する。本実施形態では、貯湯タンク21内の水温を検知する5つの温度センサS6〜S10を設けたが、貯湯タンク内の水温を検知する温度センサは4以上複数あればよい。複数の温度センサにより、給湯水が貯湯タンクの上からどの高さまで貯湯されているか判断することができる。
【0031】
また、上記貯湯タンク21内かつ下側コイル部22aと上側コイル部22bとの間に電熱ヒータ23を配置している。
【0032】
上記貯湯タンク21と給湯用熱交換器22と電熱ヒータ23と沸き上げ用循環ポンプ24と沸き上げ用三方弁25および温度センサS6〜S10で貯湯部2を構成している。
【0033】
次に、上記暖房用三方弁32の他方の入力側に配管L31の一端を接続し、その配管L31の他端を貯湯タンク21の側方(貯湯タンク21の上側コイル部22bと電熱ヒータ23との間)に接続している。
【0034】
そして、上記暖房用三方弁32の出力側を暖房用混合弁33の一方の入力側に接続し、その暖房用混合弁33の出力側に配管L32の一端を接続している。上記配管L32に、暖房用混合弁33側から順に暖房往き温度センサS11と暖房用循環ポンプ34を配設している。上記配管L32の暖房用循環ポンプ34よりも下流側に、暖房端末の一例としてのラジエータ41,42,…の一端を夫々接続している。また、上記貯湯タンク21の下部に配管L33の一端を接続し、その配管L33の他端側にラジエータ41,42,…の他端を夫々接続している。上記配管L33に暖房戻り温度センサS12を配置している。また、上記配管L33の暖房戻り温度センサS12よりも貯湯タンク21側と、暖房用混合弁33の他方の入力側とを配管L34により接続している。
【0035】
上記制御部10は、マイクロコンピュータおよび入出力回路などからなり、フィードフォワード制御するときの給湯用混合弁31の開度を演算する混合弁開度演算部10aと、混合弁開度演算部10aにより求められた給湯用混合弁31の開度に基づく指令値を、給湯用混合弁31の指令値に対する開度特性に応じて補正する指令値補正部10bを有する。
【0036】
また、上記制御部10は、吐出温度センサS1と蒸発器温度センサS2と外気温度センサS3および圧力センサ(HPS)16の検知信号に基づいて、圧縮機11,膨張弁13,送風ファン15などを制御すると共に、温度センサS6〜S10と暖房往き温度センサS11および暖房戻り温度センサS12からの検知信号に基づいて、沸き上げ用三方弁25と暖房用三方弁32と沸き上げ用循環ポンプ24と暖房用循環ポンプ34を制御する。
【0037】
上記構成の貯湯式暖房給湯機において、貯湯部2の沸き上げ用三方弁25の出力側を配管L24側に切り換え、ヒートポンプユニット1の圧縮機11を駆動すると共に送風ファン15の運転を開始する。さらに、貯湯部2の沸き上げ用循環ポンプ24を駆動する。そうすると、圧縮機11から吐出された高圧ガス冷媒は、凝縮器12で放熱して凝縮することにより液冷媒となった後、膨張弁13で減圧された低圧冷媒は、蒸発器14で外気から熱を吸収して蒸発する。そうして、蒸発器14で蒸発した低圧ガス冷媒は、圧縮機11の吸込側に戻る。このとき、沸き上げ用循環ポンプ24により貯湯タンク21の下部から配管L11を介して凝縮器12の二次側に流入した水は、凝縮器12で加熱されて90℃近い温水となり、配管L12,沸き上げ用三方弁25,配管L24,配管L35を介して貯湯タンク21内に戻る。こうして、貯湯タンク21内の水を沸き上げ用循環ポンプ24と凝縮器12を介して循環させることにより、貯湯タンク21内の水を沸き上げる。貯湯タンク2内の温水は、上側に高温の温水、下側に比較的低温の温水が位置するように湯層(温度分布)が形成されている。
【0038】
なお、ヒートポンプユニット1の起動時などの際、まだヒートポンプユニット1の凝縮器12から出る温水が十分に高温となっていない場合、該温水は配管L24等を介して貯湯タンク21の上部に戻るのではなく、配管L23を介して貯湯タンク21の下部の第2の沸き上げ戻り口に戻るように、沸き上げ用三方弁25が制御される。このように、温水の温度により戻り口を切り替えるのは、十分に高温になっていない温水を貯湯タンク21の上部に戻すと貯湯タンク21内の温度分布が乱れる可能性があり、これを防止するためである。この沸き上げ用三方弁25の切り替えは、凝縮器12と沸き上げ用三方弁25との間に設けられた出湯温度センサS5の出力に基づいて行われる。
【0039】
次に、暖房運転を行う場合、暖房給湯部3の暖房用三方弁32を、配管L31側と暖房用混合弁33側が接続されるように切り換えて、暖房用循環ポンプ34を駆動する。そうすると、貯湯タンク21の中間部の温水が配管L31,暖房用三方弁32,暖房用混合弁33,暖房用循環ポンプ34を介してラジエータ41,42,…に夫々流入する。そして、上記ラジエータ41,42,…から出た戻り温水は、配管L33を介して貯湯タンク21の下部から貯湯タンク21内に戻る。
【0040】
ここで、上記温度センサS6〜S10からの検知信号と暖房往き温度センサS11により検知された暖房往き温度および暖房戻り温度センサS12により検知された暖房戻り温度に基づいて、制御部10により暖房用混合弁33および暖房用循環ポンプ34を制御する。また、ヒートポンプユニット1による沸き上げと暖房運転を同時に行ってもよい。
【0041】
次に、給湯運転を行う場合、給湯器(図示せず)の給湯用蛇口を開くと、外部からの給水圧力により供給された水は、給水配管L21,給湯用熱交換器22,給湯配管L22を介して給湯器に流れて、給湯用熱交換器22で加熱された温水が給湯器に供給される。なお、上記暖房運転またはヒートポンプユニット1による沸き上げの少なくとも一方と給湯運転を同時に行ってもよく、各々の運転に制約はない。
【0042】
上記給湯運転時、制御部10は、給湯出水温度センサS21により検知された給湯出水温度T1と給湯入水温度T2に基づくフィードフォワード制御と、給湯出水温度センサS21により検知された給湯出水温度T1と給湯温度センサS22により検知された給湯温度に基づくフィードバック制御とを用いて、給湯用混合弁31の開度を制御して、給湯器に供給される温水の温度を所望の温度に調節する。
【0043】
給湯用混合弁31の開度は、
給湯用混合弁31の開度=フィードフォワード開度×X+フィードバック開度×(1−X)
ただし、制御比率Xは0<X<100
により決定される。
【0044】
上記構成の貯湯式給湯装置によれば、制御部10によって、給湯出水温度センサS21により検知された給湯出水温度T1と給湯入水温度T2に基づくフィードフォワード制御と、給湯出水温度センサS21により検知された給湯出水温度T1と給湯温度センサS22により検知された給湯温度に基づくフィードバック制御とを用いて、給湯用混合弁31の開度を制御することにより、給湯用混合弁31により混合された温水の温度が給湯目標温度になるようにする。ここで、制御部10は、第2温度センサとして、外気温度センサS3により検知された外気温度に基づいて給湯入水温度T2を推定する。
【0045】
これにより、給湯出水温度T1の急な変化に対しては、フィードフォワード制御により応答を早くできる一方、給湯出水温度T1の緩やかな変化に対しては、フィードバック制御により滑らかな制御特性が得られる。このように、貯湯タンク21内に配置された給湯用熱交換器22を介して出湯する構成の貯湯式給湯装置において、給湯温度の制御性を向上でき、目標温度の給湯水を安定して供給することができる。
【0046】
図2は上記貯湯式暖房給湯機のフィードフォワード制御の説明をするための模式図を示している。図2に示すように、貯湯タンク21から出湯される温水の給湯出水温度T1とし、給湯入水温度T2とし、給湯目標温度をT3とするとき、フィードフォワード制御に用いる給湯用混合弁31のフィードフォワード開度は、上記制御部10の混合弁開度演算部10aにより、
フィードフォワード開度=(T3−T2)/(T1−T2)×Dmax
(ただし、Dmaxは給湯用混合弁31の最大開度)により求める。例えば、給湯出水温度T1を70℃、給湯入水温度T2を30℃、給湯目標温度T3を50℃としたときは、給湯用混合弁31のフィードフォワード開度を50%とすればよい。なお、フィードフォワード開度は、上記式に限らず、貯湯式暖房給湯機の構成などに応じて適宜設定された式を用いて求めてもよい。
【0047】
このように、上記制御部10の混合弁開度演算部10aにより求められた給湯用混合弁31のフィードフォワード開度を用いて、フィードフォワード制御を行うことによって、給湯出水温度T1の急な変化に対して、速やかに応答できるから、給湯温度の制御性を向上できる。
【0048】
図3は上記貯湯式暖房給湯機のフィードバック制御の説明をするための模式図を示している。図3に示すように、加算シンボル51において、給湯目標温度から実際の給湯温度を減算して差分を求め、その差分に基づいてPID制御ブロック52によりPID制御することにより、フィードバック制御に用いる給湯用混合弁31のフィードバック開度を求める。なお、フィードバック開度は、図3に示す制御ブロックに限らず、貯湯式暖房給湯機の構成などに応じて適宜設定された制御ブロックを用いて求めてもよい。
【0049】
上記混合弁開度演算部10aにより求められた給湯用混合弁31のフィードフォワード開度に基づく指令値を、上記制御部10の指令値補正部10bにより給湯用混合弁31の指令値に対する開度特性に応じて補正し、補正された上記指令値を給湯用混合弁31に出力することによって、上記フィードフォワード開度の指令値に対して流量比が比例しない開度特性の給湯用混合弁31に対して、所望の流量比が得られる指令値を給湯用混合弁31に出力することができ、給湯用混合弁31による流量比制御が正確に行える。
【0050】
上記制御部10において、必要な流量比に対して、給湯用混合弁31の開度を決定する方法としては、図4に示すように給湯用混合弁31の開度率と流量比とが比例しているものと近似して、給湯用混合弁31の開度を決定する方法と、図5,図6に示すように、給湯用混合弁31の開度率と流量比との特性に近似した特性に基づいて、給湯用混合弁31の開度を決定する方法とがある。
【0051】
図5は上記混合弁の開度率と流量(水側流量と湯側流量)の特性グラフを示す図を示しており、図6は混合弁パルス数と流量(水側流量と湯側流量)の特性グラフから数値データをサンプルした例を示す図を示している。この実施の形態の給湯用混合弁31には、ステッピングモータ(図示せず)により駆動されるパルス駆動方式の混合弁が用いられている。
【0052】
図6に示す特性グラフから読み取った数値データに基づく流量比に対する混合弁パルス数の関係を図7に示している。ここで、流量比は、図6において読み取った湯側流量と水側流量の数値データに基づいて、
流量比=湯側流量/(湯側流量+水側流量)×100
により求める。これにより、流量比に対する混合弁パルス数の関係を示すグラフの近似式(多項式)を導き出す。図8には、図7に示す流量比に対する混合弁パルス数の関係を示すグラフと求めた近似式(多項式)に基づくグラフを示している。
【0053】
また、上記制御部10は、第2温度センサの一例として、外気温度センサS3により検知された外気温度に基づいて、給湯入水温度T2を推定することによって、給湯用熱交換器22に外部から供給される水の温度を直接検知するセンサを用いることなく、通常備えられている外気温度センサを用いて、フィードフォワード制御に必要な給湯入水温度T2が得られる。
【0054】
例えば、外気温度センサS3により検知された外気温度に基づいて、
給水温度=60%×外気温度+5℃
により給水温度を推定する(但し、10℃≦給水温度≦35℃)。
【0055】
なお、上記実施の形態では、外気温度センサS3により検知された外気温度に基づいて、給湯入水温度T2を推定したが、第2温度センサとして給湯入水温度センサを配管L34などに設けて、給湯入水温度T2を直接検知してもよい。
【0056】
上記実施の形態では、貯湯式給湯機として貯湯式暖房給湯機について説明したが、暖房機能を有しないに貯湯式給湯機に適用してよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の貯湯式給湯機の一例としての貯湯式暖房給湯機の構成を示す回路図である。
【図2】図2は上記貯湯式暖房給湯機のフィードフォワード制御の説明をするための模式図である。
【図3】図3は上記貯湯式暖房給湯機のフィードバック制御の説明をするための模式図である。
【図4】図4は混合弁の開度率と流量比が比例しているものと近似したときの図である。
【図5】図5は上記混合弁の開度率と流量(水側流量と湯側流量)の特性グラフを示す図である。
【図6】図6は上記混合弁のパルス数と流量(水側流量と湯側流量)の特性グラフから数値データをサンプルした例を示す図である。
【図7】図7は図6に示す特性グラフから読み取った数値データに基づく流量比に対する混合弁パルス数の関係を示す図である。
【図8】図8は図7に示す流量比に対する混合弁パルス数の関係を示すグラフとそのグラフの近似式に基づくグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…ヒートポンプユニット
2…貯湯部
10…制御部
10a…混合弁開度演算部
10b…指令値補正部
11…圧縮機
12…凝縮器
13…膨張弁
14…蒸発器
15…送風ファン
16…圧力センサ
21…貯湯タンク
22,122…給湯用熱交換器
22a,122a…下側コイル部
22b,122b…上側コイル部
23…電熱ヒータ
24…沸き上げ用循環ポンプ
25…沸き上げ用三方弁
26…犠牲陽極
27…パイプ
31…給湯用混合弁
32…暖房用三方弁
33…暖房用混合弁
34…暖房用循環ポンプ
41,42…ラジエータ
S1…吐出温度センサ
S2…蒸発器温度センサ
S3…外気温度センサ
S4…入水温度センサ
S5…出湯温度センサ
S6〜S10…温度センサ
S11…暖房往き温度センサ
S12…暖房戻り温度センサ
S21…給湯出水温度センサ
S22…給湯温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱するためのヒートポンプユニット(1)と、
上記ヒートポンプユニット(1)により加熱された温水を貯える貯湯タンク(21)と、
上記貯湯タンク(21)内に配置され、外部から供給された水を加熱して出湯する給湯用熱交換器(22)と、
上記給湯用熱交換器(22)からの温水と上記外部から供給された水を混合する混合弁(31)と、
上記給湯用熱交換器(22)からの温水の温度である給湯出水温度を検知する第1温度検知手段(S21)と、
上記給湯用熱交換器(22)に外部から供給される水の温度である給湯入水温度を検知する第2温度検知手段と、
上記混合弁(31)により混合された温水の温度である給湯温度を検知する第3温度検知手段(S22)と、
上記第1温度検知手段(S21)により検知された上記給湯出水温度と上記第2温度検知手段により検知された上記給湯入水温度および上記第3温度検知手段(S22)により検知された上記給湯温度に基づいて、上記混合弁(31)により混合された温水の温度が給湯目標温度になるように、フィードフォワード制御とフィードバック制御を用いて上記混合弁(31)の開度を制御する制御部(10)と
を備えたことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
請求項1に記載の貯湯式給湯装置において、
上記制御部(10)は、
上記第1温度検知手段(S21)により検知された上記給湯出水温度と、上記第2温度検知手段により検知された上記給湯入水温度と、上記給湯目標温度と、上記混合弁(31)の最大開度とに基づいて、上記フィードフォワード制御するときの上記混合弁(31)の開度を求める混合弁開度演算部(10a)を有することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項3】
請求項2に記載の貯湯式給湯装置において、
上記制御部(10)は、
上記混合弁開度演算部(10a)により求められた上記混合弁(31)の開度に基づく指令値を、上記混合弁(31)の指令値に対する開度特性に応じて補正する指令値補正部(10b)を有し、
上記指令値補正部(10b)により補正された上記指令値を上記混合弁(31)に出力することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1つに記載の貯湯式給湯装置において、
外気温度を検知する外気温度検知手段(S3)を備え、
上記第2温度検知手段は、上記外気温度検知手段(S3)により検知された外気温度に基づいて、上記給湯入水温度を推定することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項5】
請求項1に記載の貯湯式給湯装置において、
上記給湯目標温度と上記第3温度検知手段(S22)により検知された上記給湯温度との差分を求め、その差分に基づくPID制御により上記フィードバック制御するときの上記混合弁の開度を求める混合弁開度演算部(10a)を有することを特徴とする貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−287816(P2009−287816A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139437(P2008−139437)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】