説明

貯蔵容器

【課題】容器を設置する空間を有効に活用できる貯蔵容器を提供する。
【解決手段】内部に中空な空間を有する容器であって、円筒状に形成された胴板2と、胴板2における軸方向の一端に設けられた半球形の上部鏡板3と、胴板2における軸方向の他端に設けられた、胴板2の径方向に沿って長軸を有する半楕円球形の下部鏡板4とからなる。胴板2を設けても、貯蔵容器1の全高Hを、胴板2と同じ直径を有する球形の容器と同じ高さとすることができる。そして、胴板2の部分と下部鏡板とを合わせた容積は、前記半球形の鏡板の容積よりも大きくなるので、前記球形の容器に比べて、貯蔵容器1の容量を大きくできる。しかも、貯蔵容器1は、その上部の容積に比べて下部の容積が大きくなるので、容器の安定性を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液体や気体等を収容する貯蔵容器として、一般的には、球形の貯蔵容器が使用されている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかるに、従来の球形の貯蔵容器は、空間の利用効率が良くないという問題があった。つまり、図2に示すように、貯蔵容器100を設置するには、空間ES(図2中点線で囲まれた部分)が必要となるので、貯蔵容器100の下方には無駄な空間DSが存在することになる。そして、従来は、この無駄な空間DSが有効に活用されていない。
【0004】
【特許文献1】特表2005−529286号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、容器を設置する空間を有効に活用できる貯蔵容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の貯蔵容器は、内部に中空な空間を有する容器であって、円筒状に形成された胴板と、該胴板における軸方向の一端に設けられた半球形の上部鏡板と、前記胴板における軸方向の他端に設けられた、前記胴板の径方向に沿って長軸を有する半楕円球形の下部鏡板とからなることを特徴とする。
第2発明の貯蔵容器は、第1発明において、前記胴板の直径が、容器全高と同じ長さであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、下部鏡板が胴板の径方向に沿って長軸を有する半楕円球形であり、その長軸と同じ長さの直径を有する半球形の鏡板に比べて、下部鏡板はその高さが低くなる。すると、胴板を設けても、貯蔵容器の全高を、胴板と同じ直径を有する球形の容器の全高と同じ高さとすることができる。そして、胴板の部分と下部鏡板とを合わせた容積は、前記半球形の鏡板の容積よりも大きくなるので、前記球形の容器に比べて、貯蔵容器の容量を大きくできる。しかも、貯蔵容器は、その上部の容積に比べて下部の容積が大きくなるので、容器の安定性を高くすることができる。
第2発明によれば、貯蔵容器の重心を、その全高の1/2よりも下方にすることができるので、貯蔵容器の安定性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態の貯蔵容器1の概略正面図である。同図に示すように、本実施形態の貯蔵容器1は円筒状に形成された胴板2と、この胴板2の軸方向の両端、つまり、胴板2の上下端部にそれぞれ設けられた上部鏡板2および下部鏡板3とから構成されている。
この貯蔵容器1は、その胴部2の中心軸CLが垂直になるように配設される竪型の容器である。そして、この貯蔵容器1は、その内部が中空となるように構成されているから、例えば、液化石油ガスや液化天然ガス等の液化ガスや、その他の気体や液体を内部に収容することができる。
【0009】
図1に示すように、胴板2は直径Wの円筒状の部材であり、この胴板2の上端には、上部鏡板3が取り付けられている。この上部鏡板3は、上方に凸であって直径Wである半球形に形成されている。
【0010】
一方、前記胴板2の下端には、下部鏡板4の上端が取り付けられている。この下部鏡板4は、胴板2の直径、つまり、上部鏡板3の直径Wと同じ長さの長軸を有する半楕円球形に形成されており、下方に凸となるように胴板2の下端に取り付けられている。
より具体的に下部鏡板4の形状を説明すれば、下部鏡板4は、上部鏡板3の直径Wと同じ長さの長軸を有する楕円を短軸周り(図1であれば中心軸CL周り)に回転させて得られる楕円体を、その長軸を含みかつその短軸と直交する面で切断した半楕円球形に形成されているのである。
【0011】
ここで、上記のごとき半楕円球形の高さ(図1ではH3)は、長軸と同じ長さの直径を有する半球(図1の仮想半球C)の高さ(図1ではH4)よりも低くなる。
すると、本実施形態の貯蔵容器1は、球形の容器(図1であれば、上部鏡板3と仮想半球Cとからなる容器)と同じ全高Hとしても、下部鏡板4の高さH3と仮想半球Cの高さH4との差H2の高さを有する胴板2を設けることが可能となる。このとき、胴板2の容積と下部鏡板4の容積とを合わせた合計容積は、仮想半球Cの容積に比べて、図1における斜線で示すAの領域の分だけ大きくなる。
つまり、本実施形態の貯蔵容器1は、同じ高さの球形の容器に比べて、その容量を大きくできる。言い換えれば、本実施形態の貯蔵容器1は、今まで容器を設置するために無駄にしていた空間を有効に活用することができるのである。
【0012】
しかも、下部鏡板4のみを半楕円球形としているので、貯蔵容器1の上部の容積は変化せず、貯蔵容器1の下部の容積のみが大きくなる。すると、貯蔵容器1の重心を低くできるので、貯蔵容器1の安定性を高くすることができる。
【0013】
貯蔵容器1は、その胴板2の直径Wや胴部2の高さH2等を任意に決定することができ、その長さを調整することによって容積を自由に調整することができる。
とくに、胴板2の直径Wが貯蔵容器1の全高Hと同じになるように調整すれば、上部鏡板3が半球形であるから、上部鏡板3の高さH1が貯蔵容器1の全高の1/2となる。すると、貯蔵容器1の重心は、常に、その全高Hの1/2よりも下方にすることができるので、容器に貯蔵する気体や液体を入れたときにおける安定性を高くすることができる。
【0014】
なお、上記の例では、球形の容器と比べて本実施形態の貯蔵容器1を説明したが、胴板を有しその上下に半球形の鏡板を有する容器に本実施形態の貯蔵容器1の技術を導入することは当然可能である。
つまり、胴板を有しその上下に半球形の鏡板を有する貯蔵容器において、半球形の下部鏡板に代えて、本実施形態の貯蔵容器のごとく半楕円球形の下部鏡板を採用することができる。この場合、半楕円球形の下部鏡板における高さと、半球形の下部鏡板における高さの分だけ、胴板を延長できる。すると、延長された胴板と半楕円球形の下部鏡板とを合わせた容積は、もとの半球形の鏡板の容積よりも大きくなるから、貯蔵容器の全高を変えることなくその容積を増加させることができる。
【0015】
なお、下部鏡板4の半楕円球形の形状、言い換えれば、長軸と短軸の長さの割合は特に制限されないが、両者の差が小さくなれば下部鏡板4の高さが高くなり、貯蔵容器における容積の増加割合が少なくなる。一方、両者の差が大きくなりすぎれば、平板上となってしまい耐圧性が低下する。よって、下部鏡板の形状としては、正半楕円体形鏡板や皿型鏡板が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の貯蔵容器は、船舶や地上の設備において、気体や液体を貯蔵する容器に適しており、内部に収容する収容物を冷却して保存する低温式貯蔵容器や、気体を加圧し液化して保存する加圧式または低温加圧式貯蔵容器にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の貯蔵容器1の概略正面図である。
【図2】従来の貯蔵容器100の概略説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 貯蔵容器
2 胴板
3 上部鏡板
4 下部鏡板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空な空間を有する容器であって、
円筒状に形成された胴板と、
該胴板における軸方向の一端に設けられた半球形の上部鏡板と、
前記胴板における軸方向の他端に設けられた、前記胴板の径方向に沿って長軸を有する半楕円球形の下部鏡板とからなる
ことを特徴とする貯蔵容器。
【請求項2】
前記胴板の直径が、容器全高と同じ長さである
ことを特徴とする請求項1記載の貯蔵容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−273609(P2008−273609A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122084(P2007−122084)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(300070055)株式会社関西マテリアル (1)
【Fターム(参考)】