説明

貼付剤入り包装袋

本発明は、粘着層にビソプロロールを含む貼付剤を安定に保存することができる貼付剤入り包装袋を提供することを目的とする。本発明の包装乾燥剤1は、互いに対向配置された一対の積層包材7a,7bからなる包装袋8と、この包装袋8内部の空間に収容された貼付剤10を有している。貼付剤10は、支持体12とこの支持体12の片面略全面に積層された粘着層14とを備えるものである。また、粘着層は、粘着剤とビソプロロール又はその薬学的に許容される塩とを含有する粘着剤組成物から構成されている。さらに、包装袋8内には、包装乾燥剤20が収容されている。そして、かかる構成を有する貼付剤入り包装袋1においては、包装袋8内部の相対湿度が25%以下に維持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤入り包装袋、より詳しくは、包装袋及びその内部に収容された貼付剤を有する貼付剤入り包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ビソプロロール(特にフマル酸ビソプロロール)は、交感神経のβ受容体を選択的に遮断する作用を有する薬物として広く知られており、高血圧症、狭心症、不整脈(頻脈)等の治療に用いられている。
【0003】
このビソプロロールは、錠剤に加工されて経口的に投与されることが一般的である。しかしながら、ビソプロロールは加水分解反応を極めて受けやすいという性質を有しているため、空気中に放置された場合に、錠剤中のビソプロロールが経時的に減少してしまうことが多かった。つまり、ビソプロロールを含む錠剤は、保存安定性が低かった。
【0004】
そこで、ビソプロロールを含む錠剤の保存安定性を向上させるため、種々の試みがなされている。例えば、ビソプロロール、乳糖及び特定のセルロース誘導体を含む組成物からなる錠剤が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。かかる組成を有する錠剤においては、上述したようなビソプロロールの加水分解を生じることが少ないため、錠剤の長期保存が可能となる。
【特許文献1】特開2002−308762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、経口投与に代わる薬剤の投与方法として、貼付剤を用いた経皮投与が注目されている。この貼付剤としては、樹脂材料からなるフィルムや織布等の支持体の表面に薬物を含有する粘着層が形成された構成を有するものが広く知られている。このような貼付剤は、生体における皮膚表面に粘着層が接するように貼付されて用いられる。そして、粘着層中の薬物が皮膚を通って血中に浸透することで、生体に対する薬物の効能が発揮される。
【0006】
貼付剤を用いた経皮投与は、長時間にわたって持続的に薬物を投与できるほか、投与量を厳密に制御することができるといった利点を有している。このため、貼付剤による経皮投与によれば、生体に過剰量の薬物が取り込まれることを抑制でき、薬物による望ましくない副作用を低減することができると期待されている。
【0007】
このような状況下、上述したビソプロロールも、他の薬物と同様に貼付剤への適用が検討され始めている。しかし、貼付剤における粘着層に導入されたビソプロロールは、上記従来技術のような錠剤に加工されたものに比して加水分解反応を受けやすいものであった。このため、粘着層にビソプロロールを含有する貼付剤を十分に実用的な期間保存しておくことは困難な傾向にあった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、粘着層にビソプロロールを含む貼付剤を安定に保存することができる貼付剤入り包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、粘着層にビソプロロールを含有する貼付剤の長期保存を達成するために種々の検討を行った。まず、貼付剤と空気との接触を防ぐために、貼付剤を包装袋の内部に収容した状態、すなわち貼付剤入り包装袋の状態で保存することを試みた。しかし、包装体により外部の空気との接触を絶った状態であっても、粘着層中のビソプロロールの加水分解を抑制することは困難であるという結果が得られた。この結果から、貼付剤を包装袋に収容するだけでは、貼付剤を長期保存するのは困難であることが判明した。
【0010】
次いで、ビソプロロールの加水分解反応について詳細な検討を行うために、貼付剤を種々の条件下で保存する試験を行った。その結果、相対湿度が25℃で25%を超えるような条件において貼付剤を保存した場合に、粘着層中のビソプロロールの加水分解反応が著しく進行していることを見出した。そこで、上述した貼付剤入り包装袋における包装袋内部の相対湿度について検討したところ、いずれも相対湿度が上記値を上回っていることが確認された。
【0011】
本発明はこれらの知見に基づいてなされたものであり、包装袋と、この包装袋の内部に収容され、支持体の片面に粘着層が形成された貼付剤とを備える貼付剤入り包装袋であって、粘着層は、粘着剤とビソプロロールまたはその薬学的に許容される塩とを含有する粘着剤組成物から構成されており、包装袋の内部は25℃における相対湿度が25%以下に維持されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、25℃における相対湿度とは、25℃における一定体積中の空気が持つことができる最大の水蒸気量(kg・m−3:飽和湿度)を100とした場合の、これに対する実際に含まれる水蒸気量(kg・m−3)の割合(%)をいうものとする。
【0013】
このように、上記構成を有する貼付剤入り包装袋においては、内部の相対湿度が25℃で25%以下となるように維持された包装袋の内部に貼付剤が保存されている。上述したように、このような条件下においては粘着層中のビソプロロールが加水分解されることは極めて少ない。このため、本発明の貼付剤入り包装袋によれば、貼付剤における粘着層中のビソプロロールの経時的な減少が抑制される。その結果、粘着層にビソプロロールを含有する貼付剤を長期保存することが容易となる。
【0014】
本発明の貼付剤入り包装袋の包装袋内部は、25℃における上記相対湿度が、10%以下に維持されているとより好適である。この条件下では、粘着層中のビソプロロールの加水分解反応が著しく抑制され、かかる加水分解に基づくビソプロロールの減少もほとんど見られなくなる。このため、このような貼付剤入り包装袋によれば、長期保存後の貼付剤であっても、製造時とほぼ変わらない効能を得ることができるようになる。
【0015】
貼付剤入り包装袋における包装袋の内部には、乾燥剤が更に収容されていると好ましい。そして、包装袋の内部は、この乾燥剤が水分を吸収することによって上記相対湿度の値に維持されていることが好ましい。こうすることで、包装袋内部を乾燥するための特段の操作は必要なくなり、その結果、包装袋内部の相対湿度を上記値に維持することが容易となる。
【0016】
またこの場合、包装前の貼付剤における粘着層がある程度の水分を含有している状態であったとしても、かかる貼付剤を乾燥剤とともに包装袋内部に導入することで、粘着層中の水分が乾燥剤に吸収され、これにより粘着層の水分量を好適な範囲とすることができる。つまり、乾燥剤を用いることで、包装袋内部の相対湿度を上記値に維持することができるようになると同時に、貼付剤の製造時に通常必要であった包装材料等の乾燥操作をも省略することが可能となる。
【0017】
上記乾燥剤は、水を物理的に吸着する物質からなる乾燥剤、いわゆる物理的乾燥剤であると好ましい。このような乾燥剤は、包装袋内部の水分を効果的に吸着することができ、上記相対湿度の値を容易に維持することができる。
【0018】
また、乾燥剤は、多孔質物質からなるものであると好ましい。より具体的には、金属酸化物、ゼオライト、粘土鉱物からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料から構成される多孔質物質からなる乾燥剤が好ましい。
【0019】
上記粘着剤としては、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリイソブチレン、及びアクリル系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。これらの粘着剤は、皮膚への密着性が良好であり、皮膚への刺激が少ないという特性を有している。また、これらの粘着剤及びビソプロロールを含有する粘着層によれば、粘着層から皮膚へのビソプロロールの移動が生じ易くなり、その結果、貼付剤の効能がより効果的に発揮されるようになる。
【0020】
また、本発明の貼付剤入り包装袋における包装袋は、水分の透過を遮蔽する遮蔽層を少なくとも有していることが好ましい。これにより、包装袋外部からの水分の浸入が極めて少なくなり、内部の相対湿度を上記値に維持することが容易となる。
【0021】
また、包装袋は、当該包装袋の最も内側に、ポリアクリロニトリルからなる層を有しているとより好ましい。ポリアクリロニトリルからなる層は、貼付剤の粘着層からのビソプロロールの移行が生じ難いという特性を有している。このため、包装袋の最内層にポリアクリロニトリルからなる層を設けることで、ビソプロロールの包装袋への移行に基づく保存安定性の低下を抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の貼付剤入り包装袋によれば、粘着層にビソプロロールを含む貼付剤におけるビソプロロールの加水分解反応を抑制することができ、これにより貼付剤を長期間安定に保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の貼付剤入り包装袋の好適な実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…貼付剤入り包装袋、2…PAN層、4…Al層、6…PET層、7a,7b…積層包材、8…包装袋、10…貼付剤、12…支持体、14…粘着層、16…剥離フィルム、20…包装乾燥剤、22…乾燥剤、24…乾燥剤用包装袋。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の貼付剤入り包装袋の好適な実施形態を示す断面図である。貼付剤入り包装袋1は、互いに対向配置された一対の積層包材7a,7bからなる包装袋8と、この包装袋8内部の空間に収容された貼付剤10を有している。また、図1に示される貼付剤入り包装袋1においては、包装袋8内に、包装乾燥剤20が更に収容されている。このような構成を有する貼付剤入り包装袋1においては、後述するように、包装袋8内部の25℃における相対湿度が25%以下に維持されている。
【0027】
貼付剤10は、略矩形の支持体12と、この支持体12の片面略全面に積層された粘着層14とを備えるものである。また、この貼付剤10における粘着層14には、当該層14からの剥離が可能な剥離フィルム16が付着している。
【0028】
支持体12は、粘着層14を支持可能なものであれば特に制限されないが、貼付剤10の皮膚に対する付着性を高める観点から、適度な柔軟性を有していることが好ましい。支持体12の好適な構成材料としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等のポリマーや、これらを構成する単量体が共重合してなるポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の樹脂材料からなるフィルム、これらの樹脂からなる繊維により形成された織布又は不織布等の布材、又は、これらのフィルム及び布材からなる複合体が挙げられる。
【0029】
粘着層14は、粘着剤、及び、薬物であるビソプロロール又はその薬学的に許容される塩(以下、これらをまとめて「ビソプロロール化合物」という)を含有する粘着剤組成物から構成されるものである。粘着剤組成物における粘着剤としては、皮膚に対する安全性を有しており、常温で貼付剤を皮膚表面に固定できる粘着性を有するものが好ましく、一般に貼付剤の粘着剤として公知である材料からなるものを適用できる。
【0030】
より具体的には、粘着剤としては、基剤、粘着付与剤及び軟化剤から構成されるものが例示できる。この構成の粘着剤における基剤としては、天然ゴム系材料、合成ゴム系材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等が挙げられる。なかでも、粘着性に優れ、また薬物の放出性に優れていることから合成ゴム系材料及び/又はアクリル系樹脂材料が好ましい。合成ゴム系材料としては、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等の単独重合体、又はこれらを含む共重合体が挙げられる。特に、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(以下、「SIS」という)、ポリイソブチレンが好ましい。
【0031】
アクリル系樹脂材料としては、アクリル酸、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸(エステル)の単独重合体や、これらの(メタ)アクリル酸(エステル)を少なくとも一種含有する共重合体が挙げられる。このようなアクリル系樹脂材料としては、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、などが挙げられる。なかでも、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体が好ましい。
【0032】
また、粘着剤としては、上述した樹脂材料を複数種組み合わせた複合材料も好適である。このような複合材料としては、例えば、SISとアクリル系樹脂との複合材料が挙げられ、具体的には、SISとアクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体とを混合した複合材料が好ましい。
【0033】
また、粘着剤に含有させる粘着付与剤としては、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジン誘導体(例えばロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリスリトールエステル等)、テルペン樹脂、石油樹脂、マレイン酸レジン等が挙げられる。なかでも、脂環族飽和炭化水素樹脂や水添ロジンエステルが好適である。これらの粘着付与剤は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
さらに、軟化剤としては、石油系オイル(例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、オレフィン酸、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えばポリブテン、液状イソプレンゴム)、液状脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられる。これらの中でも特に、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル又はセバシン酸ジエチルは皮膚への適度な付着性を付与できることから好ましい。軟化剤は、上述したもののうち1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
さらに、粘着剤組成物中の薬物であるビソプロロール化合物としては、β−受容体を選択的に遮断する作用を有するフマル酸ビソプロロールが例示できる。
【0036】
粘着剤組成物においては、ビソプロロール化合物の含有量が、1〜50質量%であると好ましく、5〜20質量%であるとより好ましい。ビソプロロール化合物の含有量が1質量%未満であると、粘着層14からビソプロロール化合物が放出されにくくなり、使用時に適切な量の薬物を投与することが困難となる傾向にある。一方、50質量%を超えると、粘着層14中にビソプロロールを保持しきれなくなり、また、粘着層14の粘着特性が低下する傾向にある。
【0037】
また、粘着剤が上述した基剤、粘着付与剤及び軟化剤を含有するものである場合、各成分の含有量は以下の範囲であると好ましい。すなわち、総量中、基剤の含有量が10〜90質量%であり、粘着付与剤の含有量が0〜60質量%であり、軟化剤の含有量が0〜30質量%であると好ましい。
【0038】
剥離フィルム16は、粘着層14からの剥離が可能なものであれば特に制限はなく、剥離処理(好ましくはシリコン処理)が施されたポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)やポリエステル等の樹脂フィルム、紙等からなるものが挙げられる。なお、この剥離フィルム16は、貼付剤10にしわやより、ねじれ等が生じないように適度な剛性を有していると好ましい。また、図1に示されるように、貼付剤10使用時における剥離フィルム16の剥離を容易にするため、粘着層14よりも大きな面積を有しているとより好ましい。この場合、剥離フィルム16が粘着層14からはみ出した部位をつまむことで、当該フィルム16を容易に引き剥がすことができる。
【0039】
このような構成を有する貼付剤10のサイズは、貼付剤10を使用する部位や薬物投与量等を考慮して適宜変更することができる。例えば、貼付剤として通常用いられるサイズとすることができ、1〜100cm、好ましくは5〜40cmの面積を有するものを適用できる。また、各層の厚さも上記観点から種々の値をとり得るが、例えば、粘着層14の厚さは10〜300μm、好ましくは25〜150μmである。
【0040】
上述した貼付剤10を包装する包装袋8は、互いに対向配置された一対の略矩形の積層包剤7a,7bから構成されている。積層包材7a,7bは、略矩形を有するフィルム状の積層体であり、ポリアクリロニトリル(以下、「PAN」という)からなるPAN層2と、アルミニウム箔からなるAl層4と、PETからなるPET層6とが内側から順に積層された構成を有している。また、互いに対向配置された積層包材7a,7bは、これらの外縁部において接合されており、これにより周囲が全周にわたって閉じられている。なお、積層包材7同士の外縁部の接合は、ヒートシールにより行うか、または接着剤を用いて行うことができる。
【0041】
積層包剤7a,7bを構成する各層のうち、PAN層2は、貼付剤10における粘着層14中に含まれるビソプロロールと反応したり、又はビソプロロールを吸着したりすることが殆どないことから、貼付剤10から包装袋への薬物移行等を防ぐ役割を果たしている。
【0042】
Al層4は、水分の透過を遮蔽する遮蔽層として機能するほか、気体や光等の透過を遮断する特性に優れていることから、包装袋8内を気密に保つ役割を果たしている。また、PET層6は、酸素の透過性が低いことから、包装袋8の気密性を更に高める効果がある。これらの各層を備える包装袋8によれば、貼付剤からのビソプロロール化合物の移行を抑制でき、また外部雰囲気の影響も極力排除することができるようになるため、貼付剤10の長期保存が可能となる。
【0043】
また、本実施形態の貼付剤入り包装袋1においては、上述したように、包装袋8内の25℃における相対湿度が25%以下に維持されている。
【0044】
ここで、貼付剤10の粘着層14に含まれる薬物であるビソプロロール化合物は、極めて加水分解されやすいという特性を有しているため、従来、ビソプロロール化合物を貼付剤に適用することは非常に困難であった。
【0045】
これに対して、本発明者らの新たな知見によれば、ビソプロロール化合物、特に貼付剤における粘着層に含まれるビソプロロール化合物は、上記相対湿度の値(25℃で25%以下)において、加水分解反応が顕著に抑制されることが判明した。
【0046】
そして、貼付剤入り包装袋1においては、包装袋8内部の相対湿度が25%以下に維持されているため、上述の如く、貼付剤10の粘着層14中のビソプロロール化合物は加水分解を生じることが極めて少ない。したがって、本実施形態の貼付剤入り包装袋1によれば、従来困難であったビソプロロールの貼付剤への適用が容易となる。また、得られた貼付剤1は、この貼付剤入り包装袋1の形態において保存安定性が極めて高いものとなる。
【0047】
なお、貼付剤入り包装袋1における貼付剤10の保存安定性を更に高める観点からは、包装袋8内の25℃における相対湿度は、22%以下であると好ましく、20%以下であるとより好ましく、17%以下であると更に好ましく、15%以下であると一層好ましく、10%以下であると最も好ましい。また、25℃以外の温度、例えば40℃や60℃においても、上述した値以下に維持されるとより好ましい。
【0048】
ビソプロロール化合物の加水分解を防ぐ目的からは、包装体8内には水分が存在していないこと、すなわち相対湿度が0%であることが理想的である。しかし、貼付剤10と包装袋8との間で静電気が発生して両者が接触しやすい場合、また、このために貼付剤10の包装袋8からの取り出しが困難となる場合などは、これらの不都合を避けるために、包装袋8内に僅かに水分が存在していてもよい。この場合、包装袋8内の25℃における相対湿度値は2%以上とすることが好ましい。
【0049】
上述したように、本実施形態の貼付剤入り包装袋1においては、包装袋8内に包装乾燥剤20が貼付剤10とともに収容されており、上記相対湿度の値は、この包装乾燥剤20によって達成されている。より具体的には、包装袋8内に収容された包装乾燥剤20が、包装袋8内に存在する水分を吸収(吸着)することによって当該包装袋8内が乾燥され、これにより、包装袋8内の相対湿度が上述した数値範囲内となる。
【0050】
この包装乾燥剤20は、乾燥剤用包装袋24、及びこの包装袋24内に収容された乾燥剤22から構成されるものである。乾燥剤用包装袋24は、内部に乾燥剤22を収容可能であり、乾燥剤22による乾燥を妨げるものではなく、水分を透過可能なものであれば特に制限なく適用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)からなる樹脂フィルム、織布や不織布等の布剤、紙等の水分を透過可能な材料から構成されるものが例示できる。また、乾燥剤用包装袋24の構成材料としては、これらのような水分を透過可能な材料以外に、水分を透過しない材料を用いることもできる。このような材料を適用する場合には、当該材料から構成される包装袋24に、内部に収容する乾燥剤22が外部に漏出しない程度のサイズであって水分の透過が可能である穴を設けることで、その透水性を確保することができる。
【0051】
この乾燥剤用包装袋24内部に収容される乾燥剤22としては、一般に乾燥剤として用いられる公知の材料からなるものが適用でき、例えば、水分を物理的又は化学的に吸着する能力を有する物質からなる乾燥剤が例示できる。なかでも、乾燥剤22としては、水分を物理的に吸着可能な物理的乾燥剤が、取り扱いが容易であり、貼付剤10等を汚染することが少なく、しかも乾燥能力が高いことから好ましい。このような物理的乾燥剤としては、多孔質物質からなる粉体状の物質が好ましい。
【0052】
より具体的には、多孔質物質としては、無定形の多孔質物質である金属酸化物からなる多孔質物質、結晶性の多孔質物質であるゼオライトからなる多孔質物質、又は、結晶性又は非晶質性の多孔質物質である粘土鉱物からなる多孔質物質が挙げられる。より具体的には、金属酸化物系の多孔質物質としてシリカゲル及びアルミナが挙げられ、ゼオライト系の多孔質物質としてモレキュラーシーブが挙げられ、粘土鉱物系の多孔質物質としてモンモリロナイトが挙げられる。
【0053】
なかでも、乾燥剤22を構成する物質としては、シリカゲル、モレキュラーシーブ又はモンモリロナイトが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。乾燥剤22に上述したような多孔質物質を用いる場合、その細孔のサイズ等は特に制限されず、メソ孔、マイクロ孔等を有する多孔質物質を適宜選択して用いることができる。
【0054】
このような構成を有する包装乾燥剤20は、包装袋8内の相対湿度を上述した値とし得る性能を有している必要がある。すなわち、包装乾燥剤20が有している乾燥剤22の量は、貼付剤入り包装袋1における包装袋8内を当該値の相対湿度とすることができる量である。
【0055】
また、包装乾燥剤20のサイズも、同様の観点に基づいて適宜設定する必要があるが、貼付剤入り包装袋1全体をコンパクトにするために、上記相対湿度が達成できる範囲において可能な限り小さいことが好ましい。より具体的には、貼付剤10の面積よりも大きくならないサイズであって、可能な限り薄いことが好ましい。
【0056】
なお、本発明の貼付剤入り包装袋においては、包装袋8内部の相対湿度の値は、上述した包装乾燥剤20による方法以外に、他の方法によって達成されてもよい。
【0057】
例えば、貼付剤10の製造時又は製造後に、この貼付剤10を加熱・減圧条件下におく等の所定の乾燥操作を施すことで、粘着層14等に吸着された水分量を極力少なくしておき、当該操作後の貼付剤10を直ちに外部の水分を遮蔽できる包装袋8内に密閉する方法が挙げられる。また、貼付剤10を包装するとともに包装袋8内部に乾燥窒素を封入する方法も挙げられる。なお、これらの方法を組み合わせて実施することもできる。
【0058】
このような構成を有する貼付剤入り包装袋1は、例えば、以下に示す製造方法によって製造することができる。
【0059】
貼付剤10の製造に際しては、まず、粘着層14の構成成分である基剤、粘着付与剤、軟化剤及びビソプロロール化合物を混合して粘着剤組成物とした後、この組成物を加熱して溶融(軟化)させる。次いで、溶融(軟化)状態の組成物を支持体12又は剥離フィルム16のいずれか一方の表面に塗布した後、塗布された組成物の層と支持体12及び剥離フィルム16のうちの他方のものとを張り合わせる。これにより支持体12上に粘着層14が形成された貼付剤10に剥離フィルム16が付着した構造の積層体を得る。また、他の方法として、上記組成物をトルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル等の溶媒に溶解させた溶液(又は混合物)を、支持体12及び剥離フィルム16のいずれか一方に塗布し、塗布物中の溶媒を乾燥除去した後、上述したように張り合わせることにより、同様の構造を有する積層体を得る方法も挙げられる。
【0060】
なお、貼付剤10の製造に際しては、粘着層14の形成後、又は、剥離フィルム16の付着後に、貼付剤10を加熱・減圧条件下におくなどして、製造中に粘着層14中に吸着された水分を除去しておくことも好適である。ただし、好適な実施形態の貼付剤入り包装袋1においては、貼付剤10を包装乾燥剤20とともに包装袋8内に包装しているため、粘着層14中の水分は、包装乾燥剤20によって十分に吸着される。このため、粘着層14中の水分量は、貼付剤10を包装した後であっても好適なレベルにまで低減され得る。したがって、包装袋8内に包装乾燥剤20を有する貼付剤入り包装袋1の製造方法においては、上記したような特段の乾燥操作はあえて実施しなくともよい。
【0061】
包装乾燥剤20は、例えば、乾燥剤用包装袋24を構成するための一対の略矩形のフィルムを準備し、乾燥剤22を挟むようにしてこれらのフィルムを対向配置した後、ヒートシールや接着等により周囲を接合することによって製造することができる。また、予め上記一対の略矩形のフィルムの3辺を接合しておき、開口部から乾燥剤22を投入してから、残りの一辺を閉じるようにしてもよい。
【0062】
そして、このようにして製造された貼付剤10及び包装乾燥剤20を、上述した一対の積層包材7a,7bの間に挟むように配置した後、この積層包材7a,7bの外縁部を、ヒートシール、接着等によって接合する。また、一対の積層包材7a,7bの3辺を予め接合しておき、開口部から貼付剤10及び包装乾燥剤20を導入した後に、残りの一辺を閉じてもよい。このようにして貼付剤入り包装袋1を得ることができる。
【0063】
上述した構成を有する貼付剤入り包装袋1によれば、以下に示す作用・効果が得られるようになる。
【0064】
まず、貼付剤入り包装袋1においては、包装袋8内部の25℃における相対湿度が25%以下に維持されている。この相対湿度の値は、上述の如く、貼付剤10における粘着層14に含有されたビソプロロール化合物の加水分解を効果的に抑制し得る値である。したがって、貼付剤入り包装袋1においては、粘着層14中のビソプロロール化合物の加水分解が極めて進行し難くなっている。その結果、貼付剤10の長期保存が可能となり、長期保存後の貼付剤10であっても、十分に有効な効能を有するものとなる。
【0065】
また、好適な実施形態の貼付剤入り包装袋1においては、包装乾燥剤20を貼付剤10と共存させるだけで上記相対湿度の値を達成することができる。このため、貼付剤10の製造時または包装時には、包装袋8内の水分を除去するための特段の乾燥操作は必要とされない。したがって、貼付剤入り包装袋1によれば、貼付剤10の長期保存が可能になる上、貼付剤10及び貼付剤入り包装袋1の製造工程も簡略化することができるようになる。
【0066】
このように、本発明の貼付剤入り包装袋によれば、従来、その高い加水分解性に起因して極めて困難であったビソプロロール化合物の貼付剤への適用が容易となる。そして、この貼付剤入り包装袋においては、粘着層にビソプロロールを含む貼付剤が高い保存安定性を有している。そのため、かかる貼付剤は、保存中における経時的な効能の低下が極めて少ないものとなる。
【0067】
以上、本発明の貼付剤入り包装袋の実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、貼付剤入り包装袋1においては、貼付剤10及び包装袋8はいずれも略矩形を有するものとしたが、その形状は特に制限されるものではなく、例えば円形や多角形等の形状であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、包装袋8を、3層構造を有する積層包材7a,7bからなるものとして記述したが、本発明の貼付剤入り包装袋における包装袋は、少なくとも水分の透過を遮蔽する能力を有していればよく、この条件を満たす限りにおいて、1層若しくは2層、又は4層以上の積層構造を有していてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<貼付剤の製造>
【0070】
(製造例1)
ビソプロロール、軟化剤である流動パラフィン及びセバシン酸ジエチルを容器に入れて攪拌し、これらを十分に混合した。この混合物を、基剤であるSIS及びアクリル系重合体(Duro-tak2194、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製)、並びに粘着付与剤である脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP−100、荒川化学社製)をトルエンに溶解した溶液と混合して、塗工液を調製した。
【0071】
次いで、この塗工液を、シリコン処理したPETからなる剥離フィルム上に塗布した後、トルエンを揮発及び除去して粘着層とし、さらに、この粘着層上にPETからなる支持体を付着させて、支持体上の粘着層が剥離フィルムに覆われた状態の貼付剤を得た。得られた貼付剤における片面の面積は10cmとなるようにした。なお、本製造例において、上記各成分の配合量は、粘着層中で各成分が下記表1に示す含有量となるように調整した。
【0072】
【表1】

【0073】
(製造例2)
ビソプロロール化合物であるフマル酸ビソプロロール、軟化剤である流動パラフィン及びセバシン酸ジエチル、並びに、無水酢酸ナトリウムを乳鉢にとり、これらを十分に混合した。この混合物を、基剤であるSIS及びアクリル系重合体(Duro-tak2194、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製)、並びに粘着付与剤である脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP−100、荒川化学社製)をトルエンに溶解した溶液と混合して、塗工液を調製した。得られた塗工液を用い、製造例1と同様にして貼付剤を得た。なお、本製造例において、上記各成分の配合量は、粘着層中で各成分が下記表2に示す含有量となるように調整した。
【0074】
【表2】

<包装乾燥剤の調製>
【0075】
(包装乾燥剤A)
乾燥剤であるシリカ系乾燥剤(SORB−IT(登録商標)、スードケミー社製)を、透湿性を有する乾燥剤用包装袋により包装して、包装乾燥剤Aを得た。
【0076】
(包装乾燥剤B)
乾燥剤であるモレキュラーシーブ(TRI−SORB(登録商標)、スードケミー社製)を、透湿性を有する乾燥剤用包装袋により包装して、包装乾燥剤Bを得た。
【0077】
(包装乾燥剤C)
乾燥剤である粘土鉱物系乾燥剤(DESIPAK(登録商標)、スードケミー社製)を、透湿性を有する乾燥剤用包装袋により包装して、包装乾燥剤Cを得た。
<貼付剤入り包装袋の製造>
【0078】
(実施例1)
PANからなるPAN層、アルミニウム箔からなるAl層、及びPETからなるPET層をこの順に有する略正方形の積層包材を2つ準備し、これらをPAN層が内側となるように対向に配置した。この一対の積層包材の間に、製造例1の貼付剤、及び、包装乾燥剤Aを挟み、さらに一対の積層包材の外縁をヒートシールにより接合して、貼付剤入り包装袋を得た。得られた貼付剤入り包装袋の内面の全表面積は134cmとした。また、包装袋内の相対湿度は10%となるようにした。
【0079】
なお、包装袋内の相対湿度(10%)は以下に示す方法にしたがって調整した。すなわち、まず、乾燥剤のみを包装体に収容したサンプルを一定の温度及び湿度条件で24時間保管した後に、この包装袋内の相対湿度を測定した。そして、相対湿度の値が10%となった場合のサンプルと同様の条件を、本実施例における「包装袋内の相対湿度が10%である」条件として適用した。なお、包装体内の相対湿度は、以下の試験においても同様にして調整した。
【0080】
(実施例2)
包装乾燥剤Aに代えて包装乾燥剤Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で貼付剤入り包装袋を作製した。
【0081】
(実施例3)
包装乾燥剤Aに代えて包装乾燥剤Cを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で貼付剤入り包装袋を作製した。
【0082】
(比較例1)
包装袋として、実施例1で用いた包装袋のPAN層及びAl層の間に、硫酸マグネシウムをフィラーとして含む低密度ポリエチレンからなる吸湿部材層を更に備える包装袋を用いたこと、及び、乾燥剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤入り包装袋を得た。なお、吸湿部材層は、当該層中に含まれる硫酸マグネシウムにより水分を吸着する特性を有している。
【0083】
なお、ここで用いた包装袋のみを、上記実施例1において相対湿度を決定するのに用いた条件(温度25℃、相対湿度60%)で24時間保管した後、包装袋内部の相対湿度を測定した結果、相対湿度は30%であった。このことから、かかる包装袋のみを用いた場合は、「包装袋内部の相対湿度が30%である」条件となる。
【0084】
(実施例4)
製造例1で得た貼付剤に代えて、製造例2で得た貼付剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件で貼付剤入り包装袋を調整した。
【0085】
(実施例5)
包装乾燥剤Aに代えて包装乾燥剤Bを用いたこと以外は、実施例4と同様の手順及び条件で貼付剤入り包装袋を作製した。
【0086】
(実施例6)
包装乾燥剤Aに代えて包装乾燥剤Cを用いたこと以外は、実施例4と同様の手順及び条件で貼付剤入り包装袋を作製した。
【0087】
(比較例2)
製造例1で得た貼付剤に代えて、製造例2で得た貼付剤を用いたこと以外は、比較例1と同様の手順及び条件で貼付剤入り包装袋を調整した。
【0088】
(実施例7)
包装袋内の相対湿度を20%としたこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤入り包装袋を得た。
[貼付剤入り包装袋の安定性評価]
【0089】
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた各貼付剤入り包装袋を、温度40℃、相対湿度75%の恒温恒湿槽中に3ヶ月間保管した。また、実施例1及び比較例1で得られた貼付剤入り包装袋を、温度25℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽中に12ヶ月間保管した。各保管期間経過後の貼付剤入り包装袋から貼付剤を取り出し、保管後の各貼付剤におけるビソプロロール又はフマル酸ビソプロロール(以下、まとめて「ビソプロロール化合物」という)の含有量を測定した。そして、保管後の各貼付剤におけるビソプロロール化合物の含有量と、保管前の貼付剤におけるビソプロロール化合物の含有量とを比較することで、各貼付剤における保管後のビソプロロール化合物の残存率(%)を算出した。
【0090】
なお、各貼付剤におけるビソプロロール化合物の含有量、及び、各貼付剤入り包装袋におけるビソプロロール化合物の残存率は、以下の通りにして測定及び算出した。すなわち、まず、保管後の各貼付剤に付着した剥離フィルムを剥離し、この貼付剤を50mL遠沈管に入れた。この遠沈管内に抽出液としてテトラヒドロフラン10mLを入れて、1時間振とうした。次いで、抽出液に内部標準物質(4−アミノ安息香酸イソプロピル/メタノール溶液)を添加した後、この溶液をメタノールで50mLに希釈して試験サンプルとした。得られた各試験サンプルを高速液体クロマトグラフィーにより分析した。そして、予め濃度既知の標準溶液を分析して得られた検量線に基づいて、各貼付剤に含まれるビソプロロール化合物の含有量を算出した。
【0091】
一方、保管前の貼付剤として製造例1及び製造例2で得たのと同じ貼付剤を準備し、これを用いて上述した方法と同様にして各貼付剤に含まれるビソプロロール化合物の含有量を算出した。
【0092】
そして、保管後の各貼付剤入り包装袋における貼付剤に含まれるビソプロロール化合物の含有量(N)、及び、それぞれに対応する保管前の貼付剤に含まれるビソプロロール化合物の含有量(N)の値を、下記式(1)に示す関係式に代入して得られた値(Ri)を、各貼付剤入り包装袋における保管後のビソプロロール化合物の残存率(%)とした。
(%)=N/N×100 …(1)
【0093】
実施例1〜7及び比較例1〜2の各貼付剤入り包装袋を用い、温度40℃、相対湿度75%の恒温恒湿槽中に3ヶ月間保管した場合のビソプロロール化合物の残存率を、それぞれの貼付剤入り包装袋における包装袋内の相対湿度の値とともに表3に示す。また、実施例1及び比較例1の貼付剤入り包装袋を用い、温度25℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽中に12ヶ月間保管した場合のビソプロロール化合物の残存率を、それぞれの貼付剤入り包装袋における包装袋内の相対湿度の値とともに表4に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
表3及び表4より、包装袋内に乾燥剤を導入することで、包装体内の相対湿度が25%以下であった本発明の貼付剤入り包装袋(実施例1〜7)は、相対湿度が25%よりも大きかった比較例1及び2の貼付剤入り包装袋に比して、いずれの条件で保管した場合であっても、貼付剤中のビソプロロール化合物の残存率が高かった。これにより、本発明の貼付剤入り包装袋によれば、ビソプロロール化合物を含む貼付剤の長期保存が可能となることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋と、前記包装袋の内部に収容され、支持体の片面に粘着層が形成された貼付剤と、を備える貼付剤入り包装袋であって、
前記粘着層は、粘着剤と、ビソプロロール又はその薬学的に許容される塩と、を含有する粘着剤組成物から構成されており、
前記包装袋の内部は、25℃における相対湿度が25%以下に維持されている、
ことを特徴とする貼付剤入り包装袋。
【請求項2】
前記相対湿度が10%以下に維持されていることを特徴とする請求項1記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項3】
前記包装袋の内部に、乾燥剤が更に収容されていることを特徴とする請求項1又は2記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項4】
前記乾燥剤は、水を物理的に吸着する物質からなる乾燥剤であることを特徴とする請求項3記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項5】
前記乾燥剤は、多孔質物質からなる乾燥剤であることを特徴とする請求項3又は4記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項6】
前記乾燥剤は、金属酸化物、ゼオライト及び粘土鉱物からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料から構成される多孔質物質からなる乾燥剤であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項7】
前記粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリイソブチレン、及び、アクリル系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項8】
前記包装袋は、水分の透過を遮蔽する遮蔽層を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項9】
前記包装袋は、当該包装袋の最も内側に、ポリアクリロニトリルから形成された層を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の貼付剤入り包装袋。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/072716
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517535(P2005−517535)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001272
【国際出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】