説明

貼付装置および貼付方法

【課題】貼付部材が傷つくのを防ぐことができ、かつ被貼付部材と貼付部材との間に気泡が生じるのを防ぐことができる貼付装置および貼付方法を提供する。
【解決手段】被貼付部材20が載置されるワークステージ2と、貼付部材21が保持される保持シート4と、保持シート4を押圧した状態のまま保持シート4の一端と他端との間を移動する押圧機構7と、押圧機構7とともに移動して保持シート4を押圧機構7に沿って上方に折り曲げることで貼付部材21を保持シート4から剥離しやすくする剥離機構8とを備え、押圧機構7により貼付部材21の貼始端を被貼付部材20に押し付けるとともに、貼付部材21の貼終端を貼始端よりも上方に位置させた状態で、押圧機構7および剥離機構8を保持シート4の一端側から他端側に移動させることにより、被貼付部材20に貼付部材21を貼り付けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の被貼付部材に、従来の3Dフィルム、偏光フィルム等のフィルム部材に加え、弾性を有する薄いパネル部材を貼付部材として貼り付ける貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの製造工程においては、液晶パネル等の被貼付部材に偏光フィルム等の貼付部材を貼り付けるために貼付装置が使用されている。
貼付装置は従来から種々の方式のものが知られており、例えば、特許文献1には、いわゆる「ローラ貼付方式」を採用したフィルム貼付装置が開示されている。
【0003】
図7に示すように、特許文献1に記載のフィルム貼付装置30は、主に、フィルム保持テーブル35と押圧ローラ37とを備えている。フィルム保持テーブル35は複数の吸気ノズル36を有し、別途設けられた真空ポンプによって偏光フィルム40を吸着保持する。偏光フィルム40は、フィルム保持テーブル35に接する側の面が不図示の保護シートによって保護されている。一方、その対向面である貼付面40aは、保護シートで保護されることなく露出している。
【0004】
図7(A)を参照して、液晶パネル42が所定位置に静止すると、フィルム保持テーブル35および押圧ローラ37が下降し、押圧ローラ37によって偏光フィルム40の貼始端が液晶パネル42に押し付けられる。
【0005】
そして、図7(B)に示すように、押圧ローラ37が半時計周りに回転するとともに、これに同期して液晶パネル42が矢印方向に移動し、偏光フィルム40の貼付面40aが液晶パネル42に貼り付けられて行く。
なお、このフィルム貼付装置30では、偏光フィルム40が液晶パネル42上に落下するのを防ぐために、貼付が終了するまで吸気ノズル36によって偏光フィルム40を吸着し続ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−7748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、フィルム貼付装置では、(1)偏光フィルムを傷つけないこと、および(2)液晶パネルと偏光フィルムとの間に気泡が発生しないことが極めて重要である。
偏向フィルムが傷つくと、表示品質が著しく低下するので、製品として出荷することはできない。また、液晶パネルと偏光フィルムとの間に気泡が発生した場合は、偏光フィルムを剥がし、パネル表面を洗浄した後に再度偏光フィルムを貼り付けるという、非常に面倒な作業が必要になる。
【0008】
この点、図7に示す従来のフィルム貼付装置30では、液晶パネル42を移動させながら、フィルム保持テーブル35に吸着させた偏光フィルム40を液晶パネル42に貼り付けているので、偏光フィルム40とフィルム保持テーブル35とが擦り合わされて、偏光フィルム40に擦り傷がつくおそれがあった。
【0009】
また、従来のフィルム貼付装置30では、フィルム保持テーブル35に保持され得なくなった偏光フィルム40の貼終端が液晶パネル42上に落下して気泡を挟み込んでしまう場合や、偏光フィルム40の貼始端における押圧ローラ37の押付位置がずれて気泡が混入してしまう場合があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、偏光フィルム等の貼付部材が傷つくのを防ぐことができ、かつ液晶パネル等の被貼付部材と貼付部材との間に気泡が生じるのを防ぐことができる貼付装置および貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る貼付装置は、被貼付部材に対し、貼始端と該貼始端に対向した貼終端とを有する貼付部材を貼始端から貼終端にかけて貼り付けていく貼付装置であって、
被貼付部材が載置されるワークステージと、ワークステージの載置面に対向して設けられ、貼付部材が保持される保持シートと、保持シートを上方から押圧し、押圧した状態のまま保持された貼付部材の貼始端側に位置する保持シートの一端と貼終端側に位置する保持シートの他端との間を移動する押圧機構と、一端と押圧機構との間に設けられ、一端と他端との間を移動して、保持シートを押圧機構に沿って上方に折り曲げることで、保持された貼付部材を保持シートから剥離しやすくする剥離機構と、を備え、
押圧機構により貼付部材の貼始端をワークステージ上の被貼付部材に押し付けるとともに、貼終端を貼始端よりも上方に位置させた状態で、押圧機構および剥離機構を一端側から他端側に移動させることにより、貼付部材を被貼付部材に貼り付けることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、押圧機構により保持シートを介して貼付部材を上方から押圧するとともに、剥離機構により保持シートを押圧機構に沿って上方に折り曲げることで、貼付部材を傷つけることなく、保持シートから剥離して被貼付部材に貼り付けることができる。
また、この構成によれば、貼付部材の貼終端を貼始端よりも上方に位置させた状態で、押圧機構および剥離機構を保持シートの一端側から他端側に移動させることにより貼付部材を被貼付部材に貼り付けているので、貼付部材の未だ押圧されていない部分を、貼付完了まで保持シートに保持させて被貼付部材に接触させないようにすることができる。このため、被貼付部材と貼付部材との間に気泡が生じるのを防ぐことができる。
【0013】
上記貼付装置は、保持シートの他端側を昇降させることにより、保持された貼付部材の貼付面とワークステージ上に載置された被貼付部材の被貼付面とのなす角度を調整可能にする角度可変機構をさらに備えていてもよい。
【0014】
この構成によれば、貼付部材を被貼付部材に貼り付ける際に、貼付部材の貼付面と被貼付部材の被貼付面とのなす角度を徐々に小さくしていくことができるので、貼り付け時に貼付部材にかかる負担を減らすことができる。
これにより、偏光フィルムや3Dフィルム等のフィルム部材だけでなく、弾性を有する薄いパネル部材も貼付部材として被貼付部材に貼り付けることが可能である。
【0015】
上記貼付装置における押圧機構は、該押圧機構の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられた押圧ローラであり、該押圧ローラのローラ面は金属で構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、押圧機構を押圧ローラとすることにより、回転させながら保持シート上を移動させることができるので、保持シートとの擦り合せによる摩耗を低減することができる。また、ローラ面を金属にすることにより、押圧ローラの径が押圧する際にローラ面にかかる圧力により変化したり、押圧ローラの径の寸法にばらつきが生じたりするのを防ぐことができる。
【0017】
上記貼付装置における剥離機構は、該剥離機構の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられた剥離ローラであり、該剥離ローラのローラ面は保持シートを下方から支えていることが好ましい。
また、上記剥離ローラのローラ面は、粘着性を有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、剥離機構を剥離ローラとすることにより、回転させながら保持シートの保持面を移動させることができるので、保持シートとの擦り合せによる摩耗を低減することができる。
また、剥離ローラのローラ面に粘着性を持たせることにより、剥離ローラを移動させながら保持シートの保持面に付着したゴミ等の異物を除去することができる。
【0019】
上記貼付部材は、ワークステージ上に載置され、押圧機構により保持シートが押し付けられた状態で、押圧機構が一端側と他端側との間を移動することにより、保持シートに保持されることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、新たな装置を用いることなく貼付部材を保持シートに保持させることができる。
また、この構成によれば、押圧機構を一端側から他端側に移動させた場合、剥離ローラのローラ面に粘着性を持たせておくことで、貼付部材の下面に付着したゴミ等の異物を除去することができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る貼付方法は、被貼付部材に対し、貼始端と該貼始端に対向した貼終端とを有する貼付部材を貼始端から貼終端にかけて貼り付けていく貼付方法であって、
ワークステージに被貼付部材を載置するステップと、ワークステージの載置面に対向して設けられた保持シートに保持された貼付部材とワークステージ上の被貼付部材とが所定のギャップになるように保持シートを下降させるステップと、保持シートを上方から押圧する押圧機構により保持シートを押圧して貼付部材の貼始端を被貼付部材に押し付けるとともに、貼終端を貼始端よりも上方に位置させた状態で、保持シートを押圧機構に沿って上方に折り曲げるために一端と押圧機構との間に設けられた剥離機構を、押圧機構とともに貼終端側に位置する保持シートの一端側から貼始端側に位置する保持シートの他端側に移動させるステップと、を含む貼付プロセスを備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、押圧機構により保持シートを介して貼付部材を上方から押圧するとともに、剥離機構により保持シートを押圧機構に沿って上方に折り曲げることで、貼付部材を傷つけることなく、保持シートから剥離して被貼付部材に貼り付けることができる。
また、この構成によれば、貼付部材の貼終端を貼始端よりも上方に位置させた状態で、押圧機構および剥離機構を保持シートの一端側から他端側に移動させることにより貼付部材を被貼付部材に貼り付けているので、貼付部材の未だ押圧されていない部分を、貼付プロセスが完了するまで保持シートに保持させて被貼付部材に接触させないようにすることができる。このため、被貼付部材と貼付部材との間に気泡が生じるのを防ぐことができる。
【0023】
上記貼付方法は、貼付プロセスの前に、ワークステージに貼付部材を載置するステップと、ワークステージ上の貼付部材に対して所定のギャップになるように保持シートを下降させるステップと、押圧機構により保持シートを貼付部材に押し付けた状態で、押圧機構を一端側と他端側との間で移動させるステップと、を含む保持プロセスを備えていてもよい。
【0024】
この構成によれば、新たな装置を用いることなく貼付部材を保持シートに保持させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、偏光フィルム等の貼付部材を傷つけることなく、しかも液晶パネル等の被貼付部材と貼付部材との間に気泡が生じることがない貼付装置および貼付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る貼付装置の構成を示す図である。
【図2】本発明における保持シート(吸着シート)の構造を示す模式図である。
【図3】本発明における剥離機構を説明するための図である。
【図4】(A)→(B)→(C)→(D)の順に行われる、本発明に係る貼付方法の保持プロセスを示す図である。
【図5】(A)→(B)→(C)→(D)の順に行われる、本発明に係る貼付方法の貼付プロセスを示す図である。
【図6】本発明における保持プロセスの変形例を説明するための図である。
【図7】従来のフィルム貼付装置の貼付動作を説明するための図であって、(A)は貼付開始直後、(B)は貼付終了間際の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る貼付装置および貼付方法の好ましい実施形態について説明する。
【0028】
[貼付装置]
図1に、本発明の一実施形態に係る貼付装置を示す。同図に示すように、本実施形態に係る貼付装置1は、被貼付部材20である液晶パネルに貼付部材21であるセパレータ21b付きの偏光フィルム21aを貼り付ける装置であって、被貼付部材20が載置されるワークステージ2と、ワークステージ2の載置面に対向して設けられた枠体3と、貼付部材21が吸着保持される吸着シート4(本発明の「保持シート」に相当)と、吸着シート4にテンションをかけるためのシリンダ5と、押圧ローラ(本発明の「押圧機構」に相当)7および剥離ローラ(本発明の「剥離機構」に相当)8を有する貼付ユニット6と、ワークステージ2の載置面に対する吸着シート4の角度を調整可能にする角度調整ローラ(本発明の「角度可変機構」に相当)9とを備えている。
【0029】
吸着シート4は、枠体3の他端3bに設けられたシリンダ5により常に一定のテンションがかけられた状態で、一端が枠体3の一端3aにピンで固定されており、他端がシリンダ5に設けられた不図示のピンで固定されている。
図2に示すように、吸着シート4は、基材4aと吸盤層4bとから構成されている。吸盤層4bは合成樹脂からなり、数10μm径の微細孔が1cmあたり約1万個形成されている。微細孔は吸盤として機能し、平坦な部材(本実施形態においては、貼付部材21)を繰り返し吸着保持することができる。上記微細孔のサイズおよび密度は一例であって、いずれも必要な吸着力に応じて適宜変更することができる。
【0030】
再び図1を参照して、貼付ユニット6は、走行制御部10の制御下で、枠体3の一端3aと他端3bとの間に設けられた不図示のガイド機構に沿って、枠体3の一端3aと他端3bとの間を移動する。
【0031】
貼付ユニット6に設けられた押圧ローラ7は、吸着シート4を上方から押圧するためのものであり、貼付ユニット6の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられている。押圧ローラ7のローラ面は、金属で構成されている。貼付ユニット6が枠体3の一端3aと他端3bとの間を移動することにより、押圧ローラ7は、吸着シート4を上方から押圧した状態で、吸着シート4の一端と他端との間を移動する。
【0032】
一方、貼付ユニット6に設けられた剥離ローラ8は、吸着シート4に吸着保持された貼付部材21を吸着シート4から剥離しやすくするためのものである。剥離ローラ8は、押圧ローラ7よりも上方に位置し、かつ吸着シート4の一端側(枠体3の一端3a側)に位置するように設けられ、押圧ローラ7と同様に貼付ユニット6の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられている。貼付ユニット6が枠体3の一端3aと他端3bとの間を移動すると、剥離ローラ8は、吸着シート4を下方から支え、かつ吸着シート4を押圧ローラ7に沿って上方に折り曲げた状態で、押圧ローラ7とともに吸着シート4の一端と他端との間を移動する。
図3に示すように、吸着シート4が押圧ローラ7に沿って上方に折り曲げられることで、押圧ローラ7−剥離ローラ8間における吸着シート4と貼付部材21との間には、吸着シート4を上方に持ち上げて貼付部材21から引き剥がそうとする大きな力がかかる。このため、貼付部材21は、吸着シート4との擦り合せによる擦り傷等が発生することなく、吸着シート4から簡単に剥離される。
【0033】
角度調整ローラ9は、枠体3の他端3b側に設けられており、昇降制御部11の制御下で昇降して吸着シート4の他端側を昇降させることで、吸着シート4に吸着保持された貼付部材21の貼付面とワークステージ2上に載置された被貼付部材20の被貼付面とのなす貼付角度(図5(B)のθ)を調整可能にするものである。角度調整ローラ9は、押圧ローラ7および剥離ローラ8と同様に貼付ユニット6の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられている。なお、角度調整ローラ9が昇降動作を行うと、吸着シート4のテンションを一定に保つためにシリンダ5が伸縮動作を行う。
【0034】
枠体3は、昇降制御部12の制御下で昇降する。枠体3が昇降することにより、枠体3に取り付けられている吸着シート4、シリンダ5、貼付ユニット6および角度調整ローラ9も同時に昇降する。
【0035】
ワークステージ2は、不図示の制御部の制御下で、貼付ユニット6の移動方向および該移動方向と直交する方向に移動する。ワークステージ2を少なくとも貼付ユニット6の移動方向に移動させることで、吸着シート4に吸着保持された貼付部材21に対する被貼付部材20の位置合せが可能となり、ワークステージ2を貼付ユニット6の移動方向と直交する方向に移動させることで、被貼付部材20の載置や取出しが容易になる。
また、ワークステージ2の載置面には、不図示のサクション機構に接続された複数の吸着孔が設けられており、これにより被貼付部材20は吸着保持される。
【0036】
[貼付方法]
続いて、図4および図5を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る貼付方法について説明する。
【0037】
本実施形態に係る貼付方法は、貼付部材21を吸着シート4に吸着保持させる保持プロセス(図4(A)〜(D))と、吸着保持させた貼付部材21を被貼付部材20に貼り付ける貼付プロセス(図5(A)〜(D))とを備えている。
なお、保持プロセスを行う前の初期状態では、押圧ローラ7の下端と角度調整ローラ9の下端とが同じ高さになっており、ワークステージ2の載置面と吸着シート4とが平行になっているものとする。また、初期状態では、貼付ユニット6が枠体3の他端3b側に位置しているものとする。
【0038】
図4(A)に示すように、保持プロセスではまず、貼付部材21をワークステージ2の載置面に載置して、貼付部材21と吸着シート4とを対向させるステップが行われる。
ワークステージ2に載置される貼付部材21は、偏光フィルム21aをセパレータ21b、21cで挟んだものであり、セパレータ21cが剥離されることにより偏光フィルム21aの粘着面が露出する。
【0039】
貼付部材21と吸着シート4とを対向させるステップに次いで、吸着シート4と貼付部材21とが所定のギャップになるまで昇降制御部12の制御下で枠体3を下降させるステップが行われる。このステップでは、図4(B)に示すように、吸着シート4のうち押圧ローラ7の直下に位置する部分と、貼付部材21を構成するセパレータ21bの上面とが同じ高さになるまで枠体3が下降する。
【0040】
次いで、図4(C)に示すように、貼付ユニット6を枠体3の他端3b側から一端3a側に移動させるステップが行われる。このステップでは、貼付ユニット6が枠体3の他端3b側から一端3a側に移動することにより、押圧ローラ7が吸着シート4を貼付部材21に押し付けながら吸着シート4の他端側から一端側(貼付部材21の貼終端から貼始端)に移動するので、吸着シート4に貼付部材21が吸着保持される。
【0041】
吸着シート4に貼付部材21が吸着保持されると、図4(D)に示すように、貼付部材21を吸着保持させたまま昇降制御部12の制御下で枠体3を上昇させるステップが行われる。このステップでは、ワークステージ2に接続されたサクション機構を停止させているので、枠体3が上昇する際に貼付部材21が吸着シート4から脱落することはなく、吸着シート4とともに貼付部材21も上昇する。
貼付部材21の上昇が終了すると、次の貼付プロセスのために、セパレータ21cを剥離して偏光フィルム21aの粘着面を露出させる。
【0042】
貼付プロセスではまず、被貼付部材20をワークステージ2の載置面に載置して、被貼付部材20と吸着シート4に吸着保持された貼付部材21とを対向させるステップが行われる。より具体的には、カメラや各種センサで貼付部材21の位置を確認しながら、被貼付部材20が載置されたワークステージ2を貼付ユニット6の移動方向および該移動方向と直交する方向に移動させることで、吸着シート4に吸着保持された貼付部材21に対する被貼付部材20の位置合せのステップが行われる。
【0043】
また、位置合せのステップと並行して、角度調整ローラ9により吸着シート4を傾動させるステップが行われる。このステップでは、図5(A)に示すように、昇降制御部11の制御下で角度調整ローラ9が上昇して吸着シート4の他端側が上昇することで、貼付部材21の貼終端が貼始端よりも上方に位置するように吸着シート4が傾動する。
【0044】
上記位置合せのステップおよび吸着シート4を傾動させるステップが終了すると、被貼付部材20と貼付部材21とが所定のギャップになるまで昇降制御部12の制御下で枠体3を下降させるステップが行われる。このステップでは、図5(B)に示すように、押圧ローラ7の直下に位置する貼付部材21の貼始端と被貼付部材20の上面とが同じ高さになるまで枠体3が下降する。より具体的には、貼付部材21の貼終端が貼始端よりも上方に位置した状態のまま枠体3が下降するので、貼付部材21の貼付面とワークステージ2上に載置された被貼付部材20の被貼付面とのなす貼付角度がθとなる。
【0045】
なお、貼付角度θは1〜5°の範囲(例えば2°)に設定されるのが好ましい。貼付角度θを1°よりも小さくすると、押圧ローラ8によって未だ押圧されていない部分において被貼付部材20と貼付部材21とが接着されてしまい、気泡が混入するおそれがある。一方、貼付角度θを5°よりも大きくすると、吸着保持されなくなった貼付部材21の貼終端が勢いよく脱落してやはり気泡が混入したり、貼付部材21に負担がかかったりする。
【0046】
次いで、図5(C)に示すように、貼付ユニット6を枠体3の一端3a側から他端3b側に移動させるステップが行われる。このステップでは、押圧ローラ7により吸着シート4を介して貼付部材21が被貼付部材20に押し付けられるとともに、剥離ローラ8により吸着シート4が押圧ローラ7に沿って上方に折り曲げられた状態のまま、押圧ローラ7および剥離ローラ8が同時に吸着シート4の一端側から他端側に移動する。
吸着シート4が押圧ローラ7に沿って上方に折り曲げられることで、押圧ローラ7−剥離ローラ8間における吸着シート4と貼付部材21との間には、吸着シート4を上方に持ち上げて貼付部材21から引き剥がそうとする大きな力がかかる。このため、貼付部材21は、吸着シート4との擦り合せによる擦り傷等が発生することなく、吸着シート4から簡単に剥離される。
また、このステップでは、貼付部材21の貼終端が貼始端よりも上方に位置した状態のまま押圧ローラ7が貼付部材21の貼始端から貼終端まで移動するので、貼付部材21の未だ押圧されていない部分を、吸着シート4に吸着保持させて被貼付部材20に接触させないようにすることができる。このため、被貼付部材20と貼付部材21との間に気泡が混入することはない。
さらに、このステップでは、押圧ローラ7が貼付部材21の貼始端から貼終端に移動する間、角度調整ローラ9は徐々に下降して貼付角度θが一定(本実施形態では、θ=2°)に保たれるので、貼付部材21にかかる負担を低減することができる。
【0047】
貼付部材21を吸着シート4から完全に剥離させると、図5(D)に示すように、枠体3を上昇させるステップが行われ、貼付プロセスが終了する。
【0048】
以上、本発明に係る貼付装置および貼付方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではない。
【0049】
上記実施形態では、保持シートとして吸着シート4を用いているが、吸着シート4に替えて粘着性を有する微粘着シートを用いてもよい。微粘着シートとしては、例えば、樹脂フィルム等からなる基材の少なくとも保持面側に、シリコン系化合物やウレタン系化合物等からなる繰り返し使用可能な微粘着層が形成されたものを用いることができる。
【0050】
また、上記微粘着シート(微粘着層)よりも粘着力の弱い微粘着層を剥離ローラ8のローラ面に設け、該ローラ面に粘着性を持たせてもよい。ローラ面に粘着性を持たせた剥離ローラ8を移動させることにより、保持シート(吸着シート4または微粘着シート)の保持面に付着したゴミ等の異物を除去することができる。
【0051】
さらに、上記実施形態では、保持プロセスにおいて吸着シート4に貼付部材21を吸着保持させるために、貼付ユニット6を枠体3の他端3b側から一端3a側に(押圧ローラ7を吸着シート4の他端側から一端側に)移動させているが(図4(B)参照)、貼付部材21が軟質フィルム等の軟質材である場合には、貼付ユニット6を枠体3の一端3a側から他端3b側に(押圧ローラ7を吸着シート4の一端側から他端側に)移動させてもよい。
なお、貼付部材21がパネル(ガラス)等のコシのある硬質材である場合には、上記実施形態のように貼付ユニット6を枠体3の他端3b側から一端3a側に移動させる必要がある。
また、図6に示すように、押圧ローラ7を吸着シート4の一端側から他端側に移動させた場合、貼付部材21’(軟質フィルム21’aをセパレータ21’b、21’cで挟んだ軟質材)は押圧ローラ7に沿って上方に折り曲げられた状態になり、剥離ローラ8が貼付部材21’の下面(セパレータ21’cの表面)を移動することになるので、剥離ローラ8のローラ面に粘着性を持たせておくことにより、セパレータ21’cの表面に付着したゴミ等の異物を除去することができる。セパレータ21’c表面の異物をある程度除去することができれば、セパレータ21’cを剥離する際に飛散する異物の量を低減させることができるので、異物混入による不良率を下げることができる。
【0052】
さらに、上記実施形態では、吸着シート4との擦り合せによる摩耗を低減する観点から押圧機構として押圧ローラ7を用いているが、吸着シート4を押圧機構に沿って上方に折り曲げることができるように、少なくとも吸着シート4に接触する先端部分が湾曲した形状を有しているのであれば、押圧ローラ7に替えて任意の形状の押圧機構を用いることができる。
【0053】
なお、図7に示す従来のフィルム貼付装置30では、貼付部材40が傷つかないよう押圧ローラ37のローラ面をゴムで形成しているため、貼付部材40を押圧する際にローラ面にかかる圧力により押圧ローラ37の径が変化して、貼付部材21と被貼付部材20とのギャップ(偏光フィルム21aの粘着面を形成する接着剤の厚さ)にばらつきが生じる恐れがある。
この点、上記実施形態に係る貼付装置1では、押圧ローラ7のローラ面を金属で形成しているので、径が変化してしまうのを防ぐことができ、貼付部材21と被貼付部材20とのギャップにばらつきが生じるのを防ぐことができる。
【0054】
また、上記実施形態では、粘着面を有する貼付部材21を貼り付けたが、被貼付部材20に接着剤を塗布する等して被貼付部材20側に粘着面を形成してもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、昇降制御部12は押圧ローラ7の下端が所定の高さになるように枠体3を昇降させているが、押圧する際に押圧ローラ7のローラ面にかかる圧力が所定の値になるように枠体3を昇降させてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、「被貼付部材20」として液晶パネル(パネル部材)を用いているが、ワークステージ2の載置面に吸着保持できる部材であれば、任意の部材を用いることができる。例えば、液晶パネル等のパネル部材に替えて、フィルム部材を「被貼付部材20」として用いてもよい。
さらに、上記実施形態では、「貼付部材21」として偏光フィルム21a(フィルム部材)を用いているが、保持シート(吸着シート4または微粘着シート)に保持でき、被貼付部材20に貼り付けることができる部材であれば、任意の部材を用いることができる。
被貼付部材20と貼付部材21の組み合せとしては、例えば、“液晶パネル−弾性パネル”、“液晶パネル−3Dフィルム”、“電子ペーパ−カラーフィルタ”、“フレキシブルプリント基板(FPC)-フィルム”等が考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1 貼付装置
2 ワークステージ
3 枠体
4 吸着シート(保持シート)
4a 基材
4b 吸盤層
5 シリンダ
6 貼付ユニット
7 押圧ローラ(押圧機構)
8 剥離ローラ(剥離機構)
9 角度調整ローラ(角度可変機構)
10 走行制御部
11 昇降制御部
12 昇降制御部
20 被貼付部材
21 貼付部材
21a 偏光フィルム
21b、21c セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付部材に対し、貼始端と該貼始端に対向した貼終端とを有する貼付部材を前記貼始端から前記貼終端にかけて貼り付けていく貼付装置であって、
前記被貼付部材が載置されるワークステージと、
前記ワークステージの載置面に対向して設けられ、前記貼付部材が保持される保持シートと、
前記保持シートを上方から押圧し、押圧した状態のまま保持された前記貼付部材の前記貼始端側に位置する前記保持シートの一端と前記貼終端側に位置する前記保持シートの他端との間を移動する押圧機構と、
前記一端と前記押圧機構との間に設けられ、前記一端と前記他端との間を移動して、前記保持シートを前記押圧機構に沿って上方に折り曲げることで、保持された前記貼付部材を前記保持シートから剥離しやすくする剥離機構と、
を備え、
前記押圧機構により前記貼付部材の前記貼始端を前記ワークステージ上の前記被貼付部材に押し付けるとともに、前記貼終端を前記貼始端よりも上方に位置させた状態で、前記押圧機構および前記剥離機構を前記一端側から前記他端側に移動させることにより、前記貼付部材を前記被貼付部材に貼り付けることを特徴とする貼付装置。
【請求項2】
前記保持シートの前記他端側を昇降させることにより、保持された前記貼付部材の貼付面と前記ワークステージ上に載置された前記被貼付部材の被貼付面とのなす角度を調整可能にする角度可変機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の貼付装置。
【請求項3】
前記押圧機構は、該押圧機構の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられた押圧ローラであり、該押圧ローラのローラ面は金属で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付装置。
【請求項4】
前記剥離機構は、該剥離機構の移動方向と直交する方向に延びた軸を中心に回転可能に設けられた剥離ローラであり、該剥離ローラのローラ面は前記保持シートを下方から支えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の貼付装置。
【請求項5】
前記剥離ローラの前記ローラ面は、粘着性を有していることを特徴とする請求項4に記載の貼付装置。
【請求項6】
前記貼付部材は、
前記ワークステージ上に載置され、前記押圧機構により前記保持シートが押し付けられた状態で、前記押圧機構が前記一端側と前記他端側との間を移動することにより、前記保持シートに保持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の貼付装置。
【請求項7】
被貼付部材に対し、貼始端と該貼始端に対向した貼終端とを有する貼付部材を前記貼始端から前記貼終端にかけて貼り付けていく貼付方法であって、
ワークステージに前記被貼付部材を載置するステップと、
前記ワークステージの載置面に対向して設けられた保持シートに保持された前記貼付部材と前記ワークステージ上の前記被貼付部材とが所定のギャップになるように前記保持シートを下降させるステップと、
前記保持シートを上方から押圧する押圧機構により前記保持シートを押圧して前記貼付部材の前記貼始端を前記被貼付部材に押し付けるとともに、前記貼終端を前記貼始端よりも上方に位置させた状態で、前記保持シートを前記押圧機構に沿って上方に折り曲げるために前記一端と前記押圧機構との間に設けられた剥離機構を、前記押圧機構とともに前記貼終端側に位置する前記保持シートの一端側から前記貼始端側に位置する前記保持シートの他端側に移動させるステップと、
を含む貼付プロセスを備えたことを特徴とする貼付方法。
【請求項8】
前記貼付プロセスの前に、
前記ワークステージに前記貼付部材を載置するステップと、
前記ワークステージ上の前記貼付部材に対して所定のギャップになるように前記保持シートを下降させるステップと、
前記押圧機構により前記保持シートを前記貼付部材に押し付けた状態で、前記押圧機構を前記一端側と前記他端側との間で移動させるステップと、
を含む保持プロセスを備えたことを特徴とする請求項7に記載の貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95006(P2013−95006A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238371(P2011−238371)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(507414306)株式会社石山製作所 (6)
【Fターム(参考)】