説明

貼着シート

【課題】 被貼着体との間の空気が抜け易い貼着シートを提供する。
【解決手段】 貼着シートである遮光シート11は、PET等よりなるシート体20と、シート体20の下面に形成されたシリコーン系吸着剤よりなる貼着層31(図示せず)とから主に構成されている。又、遮光シート11を貫通するように形成されたスリット41は、第1直線部51と、第1直線部51の両端の各々から延びる一対の第2直線部52a、52b及び一対の第3直線部53a、53bとから構成されている。このようなスリット41は、その一端とその他端とを結ぶ一点鎖線で示す直線に対して重ならない形状となるため、該一点鎖線で示す直線とスリット41とで構成される部分65a〜65dの各々が外方に開き易くなる。従って、貼り付け時において、遮光シート11と被貼着体との間の空気が抜け易くなると共に、その後開いた部分は元に戻るので遮光性が低下しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貼着シートに関し、特に、窓ガラス等の平滑な被貼着体に貼り付けて使用する貼着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓ガラス等の平滑な被貼着体に貼り付けて使用する貼着シートは種々のものが提案されている。その中で、被貼着体への貼り付け時に発生する空気溜まりを解消する貼着シートがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
図14は特許文献1で開示された貼着シートの平面図であり、図15は図14で示したY部分の拡大図であり、図16は図15で示したXVI−XVIラインの断面図である。
【0004】
これらの図を参照して、貼着シートである粘着シート70は、図16で示すように、合成樹脂フィルム等よりなる基材71と、基材71の上面に形成された、印刷等が施された装飾層72と、基材71の下面に形成された、アクリル系等の粘着剤層73と、粘着剤層73の下面に取り付けられた剥離材74とから構成されている。
【0005】
尚、粘着シート70においては、例えば粘着剤層73を形成するアクリル系粘着剤に紫外線吸収剤を含有させる等、粘着シート70に紫外線遮蔽(UVカット)加工を施すことによって、遮光性を有する粘着シート70となる。
【0006】
又、粘着シート70には、上述した基材71等を貫通する円形の貫通孔75が複数形成されている。そして、この貫通孔75は、その孔径が0.1〜300μmの範囲に設定すると共に、その孔密度が30〜50000個/100cmの範囲に設定するのが好ましいとされている。
【0007】
次に、このような貫通孔75が形成された粘着シート70を平滑な被貼着体に貼り付けた場合の効果について説明する。
【0008】
図17は図14で示した貼着シートにおける被貼着体への貼り付け工程を示した概略断面図である。
【0009】
まず(1)を参照して、粘着シート70の図16で示した剥離材74を剥離した後、粘着剤層73の露出面を被貼着体である窓ガラス61側となるように位置させ、図の矢印で示すように粘着シート70を窓ガラス61に近付ける。
【0010】
次に(2)を参照して、粘着シート70を窓ガラス61に近付け続けると、粘着シート70と窓ガラス61との間に残留する空気が、図の矢印で示すように貫通孔75を介して外方に排出される。
次に(3)を参照して、粘着シート70を窓ガラス61に更に近付け続けると、粘着シート70の粘着剤層が窓ガラス61に密着し、粘着シート70の窓ガラス61への貼り付けが完了する。この時、(2)で示した通り、粘着シート70と窓ガラス61との間に残留する空気は貫通孔75を介して外方に排出されているため、貼り付け時において空気溜まりが発生する虞が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−75953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような従来の貼着シートでは、粘着シート自体は遮光性を有するものであるが、図17の(3)で示すように、粘着シート70に形成された貫通孔75を介して実線矢印で示す紫外線が室内側(図の上側)に透過する。そのため、粘着シート70の遮光性が低下してしまっていた。そこで、紫外線の透過を抑制するために貫通孔75の孔径及び孔密度を小さくするように設定すると、貼り付け時において粘着シート70と窓ガラス61との間の空気の排出が十分に行われず、空気溜まりが発生し美観を損なってしまう。
【0013】
更に、図17の(3)の一点鎖線矢印で示すように、粘着シート70と窓ガラス61との間に貫通孔75を介して室内側から水分等が浸入することによって、粘着シート70が剥がれ易くなるため、窓ガラス61への貼り付け状態が安定しなかった。
【0014】
このような問題を解決するため、粘着シート70の貫通孔75をスリットに変更する方法が考えられる。
【0015】
図18はスリットが形成された貼着シートを示す拡大平面図であって、従来例の図15に対応するものであり、図19は図18で示したXIX−XIXラインの断面図である。
【0016】
これらの図を参照して、粘着シート80には、従来例の図15で示した貫通孔75に代えて、直線状のスリット81が粘着シート80を貫通するように形成されている。従って、従来例の貫通孔75のような開口とはならないため、遮光性がほとんど低下しないと共に、室内側(図19の上側)からスリット81を介して粘着シート80と図示しない窓ガラスとの間に水分等が浸入する虞も低減することになる。
【0017】
しかしながら、このような粘着シート80においては、被貼着体への貼り付け時において問題が生じる。以下に図を用いて説明する。
【0018】
図20は図18で示した貼着シートにおける被貼着体への貼り付け工程を示した概略断面図である。
【0019】
まず(1)を参照して、粘着シート80の図19で示した剥離材74を剥離した後、粘着剤層73の露出面を被貼着体である窓ガラス61側となるように位置させ、図の矢印で示すように粘着シート80を窓ガラス61に近付ける。
【0020】
次に(2)を参照して、粘着シート80を窓ガラス61に近付け続けると、粘着シート80と窓ガラス61との間に残留する空気は、スリット81を介して外方に十分には排出されない。即ち、残留する空気によってスリット81がわずかに変形して隙間が発生するが、図の破線矢印で示すように微量の空気については外方へと排出されるが、その量が十分とはならない。
【0021】
次に(3)を参照して、粘着シート80を窓ガラス61に更に近付け続けると、粘着シート80の粘着剤層が窓ガラス61に密着し、粘着シート80の窓ガラス61への貼り付けが完了する。この時、粘着シート80と窓ガラス61との間に残留する空気は、スリット81を介して外方に十分には排出されていないため、空気溜まり83が発生することになる。尚、このような問題は、遮光性を有さない粘着シートにおいても同様である。
【0022】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、被貼着体との間の空気が抜け易い貼着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、窓ガラス等の平滑な被貼着体に貼り付けて使用する貼着シートであって、合成樹脂フィルムよりなるシート体と、シート体の一方面に形成され、被貼着体に貼り付けられる貼着層と、シート体及び貼着層を貫通するように形成されたスリットとを備え、スリットの少なくとも全体は、その一端とその他端とを結ぶ直線に重ならないものである。
【0024】
このように構成すると、直線とスリットとで構成される部分が外方に開き易い。
【0025】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、シート体及び貼着層の少なくとも一方は遮光性を有するものである。
【0026】
このように構成すると、遮光性を有する貼着シートとなる。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、スリットは、一端及び他端を除き、直線に全く重ならないものである。
【0028】
このように構成すると、直線とスリットとで構成された部分が大きく開く。
【0029】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、スリットは、仮想直線上に形成された第1直線部と、第1直線部の一端から仮想直線に対して線対称に延びる一対の第2直線部と、第1直線部の他端から仮想直線に対して線対称に延びる一対の第3直線部とからなるものである。
【0030】
このように構成すると、少なくとも第1直線部に沿った両側が開く。
【0031】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、スリットは、25〜400箇所/100cmの密度で千鳥状に配置され、第1直線部の長さは1.0mmであり、第2直線部の各々の長さは0.1mmであり、第3直線部の各々の長さは0.1mmであり、第2直線部の各々及び第3直線部の各々の仮想直線とのなす角度は各々30〜150°であるものである。
【0032】
このように構成すると、第1直線部に沿った両側の開き程度が安定する。
【0033】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、貼着層は、吸着剤よりなるものである。
【0034】
このように構成すると、貼り付け作業の際、窓ガラスに霧吹きで水を吹きかけて貼り付ける必要が無く、繰り返しの使用が可能になる。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、貼着層は、粘着剤よりなるものである。
【0036】
このように構成すると、貼り付けと共に空気がスムーズに抜ける。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、直線とスリットとで構成される部分が外方に開き易いため、シート体と被貼着体との間の空気が抜け易くなり、その後開いた部分は元に戻る。
【0038】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、遮光性を有する貼着シートとなるため、直線とスリットとで構成される部分は開いた後で元に戻るので、遮光性がほとんど低下しない。
【0039】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、直線とスリットとで構成された部分が大きく開くため、空気がより抜け易くなる。
【0040】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、少なくとも第1直線部に沿った両側が開くため、開く部分が広くなり、効率的な空気の抜けとなる。
【0041】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、第1直線部に沿った両側の開き程度が安定するため、空気抜きの信頼性が向上する。
【0042】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、貼り付け作業の際、窓ガラスに霧吹きで水を吹きかけて貼り付ける必要が無く、繰り返しの使用が可能になるので、空気抜けが良いため繰り返しの使用が容易となる。
【0043】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、貼り付けと共に空気がスムーズに抜けるため、貼り付けの失敗の虞が少なく信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の第1の実施の形態による貼着シートの平面図である。
【図2】図1で示したX部分の拡大図である。
【図3】図2で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【図4】図1で示した貼着シートにおける被貼着体への貼り付け工程を示した概略断面図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図6】この発明の第3の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図7】この発明の第4の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図8】この発明の第5の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図9】この発明の第6の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図10】この発明の第7の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図11】この発明の第8の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図12】この発明の第9の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図である。
【図13】この発明の第10の実施の形態による貼着シートの拡大断面図である。
【図14】従来の貼着シートの平面図である。
【図15】図14で示したY部分の拡大図である。
【図16】図15で示したXVI−XVIラインの断面図である。
【図17】図14で示した貼着シートにおける被貼着体への貼り付け工程を示した概略断面図である。
【図18】スリットが形成された貼着シートを示す拡大平面図である。
【図19】図18で示したXIX−XIXラインの断面図である。
【図20】図18で示した貼着シートにおける被貼着体への貼り付け工程を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1はこの発明の第1の実施の形態による貼着シートの平面図であり、図2は図1で示したX部分の拡大図であり、図3は図2で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【0046】
これらの図を参照して、貼着シートである遮光シート11は、遮光性を有する矩形状のシート体20と、シート体20の下面に形成されたシリコーン系吸着剤よりなる貼着層31と、貼着層31の下面に取り付けられた剥離紙32とから構成されている。尚、遮光シート11には、シート体20、貼着層31及び剥離紙32を貫通する複数のスリット41の各々が千鳥状に配置するように形成されている。
【0047】
又、図3で示すように、シート体20は、UVカット加工が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる第1層21と、接着剤23によるドライラミネート加工によって第1層21の下面に取り付けられたPETよりなる第2層22とから構成されている。尚、第2層22の下面は高い平滑度となるように表面処理されているため、貼着層31と第2層22との貼り付け状態が強固となる。又、第1層21の下面にアルミニウム蒸着を施しても良く、その場合遮光性及び遮熱性が更に向上する。
【0048】
尚、図1においては、遮光シート11における一辺の長さLが10cm、他辺の長さHが10cmの正方形状の範囲を表示している。又、シート体20の第1層21の厚みは25μm、第2層22の厚みは38μm、接着剤23の厚みは2〜3μmに設定されている。更に、貼着層31の厚みは20μm、剥離紙32の厚みは20μmに設定されている。
【0049】
又、図2で示すように、スリット41は、仮想直線35上に形成された第1直線部51と、第1直線部51の一端から仮想直線35に対して線対称に延びる一対の第2直線部52a、52bと、第1直線部51の他端から仮想直線35に対して線対称に延びる一対の第3直線部53a、53bとから構成されている。
【0050】
このようなスリット41は、その一端とその他端とを結ぶ図2の一点鎖線で示す直線に対して、その一端とその他端とを除いて全く重ならない形状となる。従って、一点鎖線で示す直線とスリット41とで構成される部分65a〜65dの各々が外方に開き易くなる。このように、スリット41はその部分65a〜65dの4箇所が外方に開き易くなるが、そのうち第1直線部51に沿った両側の広範囲の部分65a、65cの2箇所がθの値にかかわらず少なくとも開くので、開口面積が大きくなる。このようなスリット41の形状による効果については後述する。
【0051】
尚、スリット41の第1直線部51の長さAは1.0mm、第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の長さBは全て0.1mmに設定されている。又、第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の仮想直線35とのなす角度θは全て30°に設定されている。更に、遮光シート11におけるスリット41の密度は、400箇所/100cmに設定されている。尚、スリット41の密度は、25〜400箇所/100cmの範囲内に設定するのが好ましい。25箇所/100cm未満の場合、後述する空気抜け性に問題が生じる虞があると共に、400箇所/100cmより高い密度の場合、製造上困難となるからである。
【0052】
又、スリット41を形成する際には、遮光シート11の下面側(剥離紙32側)からカッター等を入れて形成するのが好ましい。このようにスリット41を形成することによって、貼着層31における被貼着体との貼着面にバリ等が発生し難くなり、被貼着体に貼り付け易くなる。
【0053】
次に、このようなスリット41が形成された遮光シート11を平滑な被貼着体に貼り付けた場合の効果について説明する。
【0054】
図4は図1で示した貼着シートにおける被貼着体への貼り付け工程を示した概略断面図である。
【0055】
まず(1)を参照して、遮光シート11の図3で示した剥離紙32を剥離した後、貼着層31の露出面を被貼着体である窓ガラス61側となるように位置させ、図の矢印で示すように遮光シート11を窓ガラス61に近付ける。
【0056】
次に(2)を参照して、遮光シート11を窓ガラス61に近付け続けると、遮光シート11と窓ガラス61との間に空気が残留する。上述した通り、スリット41とその一端及びその他端を結ぶ直線とで構成される部分65a、65bは、外方に開き易い構造となっている。従って、残留する空気によって部分65a、65bの各々が外方に開き、開口66が形成される。そして、この開口66の発生によって、遮光シート11と窓ガラス61との間に残留する空気が外方に排出され易くなる。
【0057】
又、上述した通り、スリット41はその一端とその他端とを除いて、該直線に全く重ならない形状であるため、部分65a、65bの各々は外方に大きく開くことができる。従って、遮光シート11と窓ガラス61との間の空気がより抜け易くなる。
【0058】
更に、図2で示した通り、スリット41はその第1直線部51に沿った両側の部分65a、65cが少なくとも開くため、開口面積が大きくなる。従って、遮光シート11と窓ガラス61との間に残留する空気の抜けが効率的となる。
【0059】
次に(3)を参照して、遮光シート11を窓ガラス61に更に近付け続け、空気が完全に抜けると、遮光シート11の貼着層が窓ガラス61に密着し、遮光シート11の窓ガラス61への貼り付けが完了する。この時、(2)で示した通り、遮光シート11と窓ガラス61との間に残留する空気はスリット41の開口66を介して外方に排出されているため、空気溜まりが発生する虞が無い。
【0060】
又、窓ガラス61への貼り付け後においては、スリット41が開放状態(図の二点鎖線
)から閉鎖状態(貼り付け前の状態)に戻る。従って、貼り付け後の使用状態において遮光性がほとんど低下することがない。更に、スリット41を介して室内側から水等が浸入する虞が低減するため、窓ガラス61への貼り付け状態が安定する。更に、閉鎖状態のスリット41は従来例の貫通孔のような開口とはならないため、スリット41が目立ち難くなるので、遮光シート11の美観が向上する。
【0061】
更に、上述した通り、遮光シート11の貼着層は吸着剤で形成されているため、(3)で示した貼り付け状態から容易に取り外すことができると共に、貼り付け作業の際、窓ガラスに霧吹きで水を吹きかけて貼り付ける必要が無く、繰り返しの使用が可能となる。そして、遮光シート11は窓ガラス61への貼り付け時における空気抜けが良いため、繰り返しの使用が容易となる。
【0062】
図5はこの発明の第2の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0063】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート12にあっては、スリット42の第2直線部52a、52b及び第3直線部53a、53bの形状を除いては、第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット42における第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の仮想直線35とのなす角度θは全て150°に設定されている。そのため、スリット42の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と、スリット42とで構成される部分65a、65bが2箇所となる。
【0064】
尚、このようなスリット42が複数形成された遮光シート12における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様である。
【0065】
図6はこの発明の第3の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0066】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート13にあっては、スリット43に第4直線部54が更に形成されている点を除いては、第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット43の第1直線部51の中央部分を直交するように、その両端がスリット43の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線上に位置する、長さ0.1mmの第4直線部54が更に形成されている。従って、一点鎖線で示す直線と、スリット43とで構成される部分65a〜65fが細かく分断されるため、部分65a〜65fの各々が外方へ更に開き易くなる。
【0067】
尚、このようなスリット43が複数形成された遮光シート13における他の効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様である。
【0068】
図7はこの発明の第4の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0069】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート14にあっては、スリット44の形状を除いては第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット44は逆L字状に形成されている。従って、スリット44の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と、スリット44とで構成される部分65が三角形となり、外方へ開き易くなる。
【0070】
従って、このようなスリット44が複数形成された遮光シート14における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様となる。
【0071】
図8はこの発明の第5の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0072】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート15にあっては、スリット45の形状を除いては第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット45はX字状に形成されている。従って、スリット45の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と、スリット45とで構成される部分65a〜65dの各々が外方へ開き易くなる。
【0073】
従って、このようなスリット45が複数形成された遮光シート15における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様となる。
【0074】
図9はこの発明の第6の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0075】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート16にあっては、スリット46の形状を除いては第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット46は十字状に形成されている。従って、スリット46の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と、スリット46とで構成される部分65a〜65dの各々が外方へ開き易くなる。
【0076】
従って、このようなスリット46が複数形成された遮光シート16における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様となる。
【0077】
図10はこの発明の第7の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0078】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート17にあっては、スリット47の形状を除いては第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット47はH字状に形成されている。従って、スリット47の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と、スリット47とで構成される部分65a、65bの各々が外方へ開き易くなる。
【0079】
従って、このようなスリット47が複数形成された遮光シート17における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様となる。
【0080】
図11はこの発明の第8の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0081】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート18にあっては、スリット48の形状を除いては第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット48は半円弧状に形成されている。従って、スリット48の一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と、スリット48とで構成される部分65が半円形状となり、外方へ開き易くなる。
【0082】
従って、このようなスリット48が複数形成された遮光シート18における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様となる。
【0083】
図12はこの発明の第9の実施の形態による貼着シートのスリット部分の拡大平面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0084】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート19にあっては、スリット49の形状を除いては第1の実施の形態による貼着シートの断面構成と同一である。即ち、スリット49はS字状に形成されている。従って、スリット49がその一端及びその他端を結ぶ図の一点鎖線で示す直線と交差する。そして、該一点鎖線で示す直線とスリット49とで構成される部分65a、65bの各々は半円形状となり、外方へ開き易くなる。
【0085】
更に、このような形状のスリット49においては、その一端及びその他端の各々からスリット49の円頂部付近の各々に接線状に延びる図の二点鎖線で示す直線とスリット49とで構成される部分の各々も、外方へ開き易くなることになる。
【0086】
従って、このようなスリット49が複数形成された遮光シート19における効果については、第1の実施の形態によるものとほぼ同様となる。
【0087】
図13はこの発明の第10の実施の形態による貼着シートの拡大断面図であって、第1の実施の形態の図3に対応するものである。
【0088】
この実施の形態による貼着シートである遮光シート25にあっては、シート体26及び貼着層27の構成を除いては第1の実施の形態による貼着シートと同一である。即ち、シート体26はPETよりなる第1層37と、接着剤39によるドライラミネート加工によって第1層37の下面に取り付けられたPETよりなる第2層38とから構成されている。そして、シート体26の下面にはUVカット加工が施されたアクリル系粘着剤よりなる貼着層27が形成されており、貼着層27の下面には剥離紙32が取り付けられている。
【0089】
尚、シート体26の第1層37の厚みは16μm、第2層38の厚みは25μm、接着剤39の厚みは2〜3μmに設定されている。更に、貼着層27の厚みは20μmに設定されている。
【0090】
このように、貼着層27を粘着剤で形成することによって、遮光シート25が被貼着体に対して強固に密着することになるため、例えば被貼着体である窓ガラスが割れた場合に、割れた窓ガラスの破片が室内等に飛び散る虞が低減する。更に、剥離紙32側から形成されたスリット41による効果については第1の実施の形態と同様であるため、被貼着体への貼り付けと共に空気がスムーズに抜けるため、貼り付けの失敗の虞が少なく、信頼性が向上する。
【0091】
尚、上記の各実施の形態では、貼着シートは遮光シートとして窓ガラスに貼り付けて使用されているが、例えば、遮光性を有さない貼着シートを窓ガラスに貼り付ける(窓ガラスの飛散防止用)、台所の壁に貼り付ける(汚れ防止用)、又は液晶画面の保護として貼り付ける等、種々の平滑な被貼着体に貼り付けて、種々の用途で使用できることは言うまでもない。
【0092】
又、上記の各実施の形態では、貼着シートは矩形状に形成されているが、例えば円形状又は三角形状等、他の形状に形成されていても良い。
【0093】
更に、上記の各実施の形態では、シート体はPETよりなる2層及び接着剤によって構成されているが、例えばPETあるいはポリ塩化ビニルよりなる1層のみで構成する等、合成樹脂フィルムによって構成されていれば良い。
【0094】
更に、上記の各実施の形態では、シート体又は貼着層にUVカット加工が施されているが、UVカット加工はシート体及び貼着層の少なくとも一方に施されていれば良い。又は、どちらにもUVカット加工が施されていなくても良い。尚、本明細書における遮光とは、紫外線の透過を遮る作用のみならず、可視光や赤外線(熱線)等の透過を遮る作用をも含む概念である。
【0095】
更に、上記の各実施の形態では、貼着層の下面には剥離紙が取り付けられているが、剥離紙は無くても良い。
【0096】
更に、上記の各実施の形態では、特定形状のスリットが形成されているが、スリットは少なくともシート体及び貼着層を貫通するように形成されていれば良く、更にスリットの少なくとも全体が、その一端及び他端を結ぶ直線に重ならないように形成されていれば、他の形状であっても良い。又は、第1〜第8及び第10の実施の形態においては、スリットはその一端及び他端を除き、その一端及び他端を結ぶ直線に全く重ならないように形成されていれば、他の形状であっても良い。又、第1〜第10の実施の形態のスリットを各々組み合わせて、一枚のシート体に形成しても良い。尚、各実施の形態においては線状のスリットが形成されているが、本明細書におけるスリットは、例えばスリットの形成時におけるシート体のカス等を除去することによって発生する微小な隙間等をも含む概念のものである。
【0097】
更に、上記の第1〜第3及び第10の実施の形態では、スリットは特定寸法の第1直線部〜第3直線部を有すると共に、400箇所/100cmの密度で千鳥状に配置するように貼着シートに形成されているが、上述したスリットによる機能を発揮できる形状であれば、これらは他の値及び配置形状であっても良い。
【0098】
更に、上記の第1〜第9の実施の形態では、貼着層はシリコーン系吸着剤で形成されているが、例えば貼着層を軟質なポリ塩化ビニルで形成する等、貼着層は他の素材による吸着剤で形成されていても良い。又は、第10の実施の形態のように貼着層が粘着剤によって形成されていても良い。
【0099】
更に、上記の第10の実施の形態では、貼着層はアクリル系粘着剤で形成されているが、例えばポリエステル系、ウレタン系及びゴム系等、貼着層は他の素材による粘着剤で形成されていても良い。
【実施例】
【0100】
次に、第1〜第3の実施の形態による貼着シートである遮光シート(実施例1〜6)と従来例及び参考例による遮光シート(比較例1〜3)とを用いて、各々の遮光シートによる遮光性及び空気溜まり性についての実験をおこなった。まず、各実施例及び比較例の構成について説明する。
【0101】
実施例1は、第1の実施の形態による遮光シートと同様であり、図2で示すように、スリット41の第1直線部51の長さAが1.0mm、第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の長さBが全て0.1mmに設定されている。又、第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の仮想直線35とのなす角度θは全て30°に設定されている。更に、スリット41の密度は、400箇所/100cmに設定されている。
【0102】
実施例2は、実施例1の構成からスリットの角度θを60°に変更したものである。
【0103】
実施例3は、実施例2の構成からスリットの角度θを150°に変更したもの、即ち図5で示したスリット42と同様のものである。
【0104】
実施例4は、実施例1の構成からスリットの密度を100箇所/100cmに変更したものである。
【0105】
実施例5は、実施例4の構成からスリットの密度を25箇所/100cmに変更したものである。
【0106】
実施例6は、実施例1の構成から、スリットの第1の直線部に対して直交する第4の直線部を更に形成したもの、即ち図6で示したスリット43と同様のものである。
【0107】
比較例1は、実施例1の構成からスリットの第2直線部及び第3直線部を無くしたもの、即ち図18で示した直線のスリット81と同様のものである。
【0108】
比較例2は、実施例1の構成から、スリットの形状を直径Aが1.0mmの円形の貫通孔に変更したものである。
【0109】
比較例3は、実施例1の構成から、スリットが1箇所形成される範囲に対して、各々の直径Aが0.5mmの円形の貫通孔を正方形形状に4つ形成したものである。尚、貫通孔の各々の中心間距離Bは1.0mmに設定されている。
【0110】
遮光性に係る実験においては、厚さ3.0mmのフロート板ガラスの片面(室内側)に各実施例及び比較例のシートを施工した後、JIS A5759(建築窓ガラス用フィルム)に従って試験を行った。判定基準としては、孔を空ける前の遮光シートの紫外線透過率(τ0)を基準として、孔を空けた後の遮光シートの紫外線透過率(τ1)との差が1.0%以内であれば合格とした。即ち、
τ1−τ0≦1.0%・・・・・・・・・・・・・(1)
の時を合格とした。
【0111】
空気溜まり性に係る実験においては、一辺が20cmの正方形状の遮光シートを使用した。そして、まず被貼着体となる窓ガラスを清掃し、ゴミや埃の無い状態とした。残存するゴミや埃が原因となる貼り付け時の空気溜まりについては、本実験の対象外であるためである。そして、清掃した窓ガラスを常温にさらした後、各実施例及び比較例を、例えば霧吹き等で窓ガラスに水を吹きかけずに、直接貼り付けた。尚、判定方法は目視であり、判定基準は貼り付け後において直径5.0mm以上の空気溜まりが確認されない場合を合格とした。即ち、このような空気溜まりが一つでも確認された場合には不合格とした。
【0112】
このようにしておこなった実験結果を以下の表に示す。
【0113】
【表1】

上記の表を参照して、まず、実施例1〜実施例6の遮光シートについては、遮光性及び空気溜まり性が両方とも合格であった。一方、比較例1の遮光シートについては、遮光性の判定は合格であるが、空気溜まり性の判定は不合格であった。又、比較例2の遮光シートについては、空気溜まり性の判定は合格であるが、遮光性の判定は不合格であった。更に、比較例3の遮光シートについては、遮光性及び空気溜まり性が両方とも不合格であった。従って、比較例1〜3については総合的な判定を不合格とした(上記の表の右端の欄)。
【0114】
このような実験結果から、スリット41の形状は、図2で示す第1直線部51の長さAが1.0mmに設定され、第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の長さが0.1mmに設定されると共に、第2直線部52a、52bの各々及び第3直線部53a、53bの各々の仮想直線35とのなす角度θが30〜150°に設定されるのが好ましいと言える。そして、このようなスリット41はその開き程度が安定するため、空気抜きの信頼性が向上する。更に、このようなスリット41が25〜400箇所/100cmの密度で千鳥状に配置された遮光シート11においては、スリット41の通気機能がシート全体に発揮される。
【0115】
次に、上述した実験における各実施例及び比較例は、貼着層がシリコーン系吸着剤で形成されているが、貼着層がアクリル系粘着剤で形成されている遮光シートについても同様の実験を行った。この実験における実施例1は第10の実施の形態による遮光シートと同様であり、その他の各実施例及び比較例におけるスリットの形状及び貫通孔の形状等の各条件は、上述したシリコーン系吸着剤よりなる貼着層を有する遮光シートによるものと同様とした。
【0116】
又、遮光性及び空気溜まり性に係る実験についても同様であるが、空気溜まり性に係る実験においては、窓ガラスに霧吹きで水を吹きかけた後、各実施例及び比較例を貼り付けた点のみが相違している。
【0117】
このような実験を行った結果、上記の表1と同様の実験結果が得られた。従って、貼着層がアクリル系粘着剤で形成されている場合であっても、実施例1〜6に係る遮光シートの空気抜きの信頼性が向上すると言える。
【符号の説明】
【0118】
11〜19、25…遮光シート
20、26…シート体
27、31…貼着層
35…仮想直線
41〜49…スリット
51…第1直線部
52…第2直線部
53…第3直線部
61…窓ガラス
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラス等の平滑な被貼着体に貼り付けて使用する貼着シートであって、
合成樹脂フィルムよりなるシート体と、
前記シート体の一方面に形成され、前記被貼着体に貼り付けられる貼着層と、
前記シート体及び前記貼着層を貫通するように形成されたスリットとを備え、
前記スリットの少なくとも全体は、その一端とその他端とを結ぶ直線に重ならない、貼着シート。
【請求項2】
前記シート体及び前記貼着層の少なくとも一方は遮光性を有する、請求項1記載の貼着シート。
【請求項3】
前記スリットは、前記一端及び前記他端を除き、前記直線に全く重ならない、請求項1又は請求項2記載の貼着シート。
【請求項4】
前記スリットは、
仮想直線上に形成された第1直線部と、
前記第1直線部の一端から前記仮想直線に対して線対称に延びる一対の第2直線部と、
前記第1直線部の他端から前記仮想直線に対して線対称に延びる一対の第3直線部とからなる、請求項3記載の貼着シート。
【請求項5】
前記スリットは、25〜400箇所/100cmの密度で千鳥状に配置され、
前記第1直線部の長さは1.0mmであり、
前記第2直線部の各々の長さは0.1mmであり、
前記第3直線部の各々の長さは0.1mmであり、
前記第2直線部の各々及び前記第3直線部の各々の前記仮想直線とのなす角度は各々30〜150°である、請求項4記載の貼着シート。
【請求項6】
前記貼着層は、吸着剤よりなる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の貼着シート。
【請求項7】
前記貼着層は、粘着剤よりなる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の貼着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−126855(P2012−126855A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281126(P2010−281126)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】