説明

質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチド

【課題】生体試料中の代謝酵素のタンパク質絶対量を高感度に一斉定量することが可能なアミノ酸配列からなるペプチドやその使用方法を提供すること。
【解決手段】細胞内タンパク質である代謝酵素を高感度に一斉定量することを可能とする質量分析装置で高感度検出可能なペプチドを選択し、アミノ酸配列を同定する。この定量対象ペプチドと、同じアミノ酸配列を有する安定同位体標識ペプチドとを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する。試料の被定量代謝酵素タンパク質をトリプシンにより断片化して得られるペプチド断片に、安定同位体標識ペプチドを添加してLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量代謝酵素タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出し、該面積比から検量線を用いて定量値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は哺乳類における代謝酵素タンパク質を、質量分析装置を用いて一斉に定量するために用いるペプチドやその使用方法に関し、より詳細には、生体試料中の複数のヒト又は哺乳類における代謝酵素タンパク質の絶対量を、質量分析装置を用いて高感度に一斉定量するために用いる、ヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列等からなるペプチドやその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトをも含む哺乳類における代謝酵素としては、薬物代謝酵素、ステロイド代謝酵素、アミノ酸代謝酵素、核酸代謝酵素等があるが、なかでも薬物代謝酵素は、薬物を代謝により修飾することによって薬の効き目や毒性発現に関わっている重要な酵素である。かかる代謝酵素にはCYP(P−450)や、グルクロン酸抱合、硫酸抱合、及び、グルクロナイド抱合酵素などがある。これらの酵素分子は、様々な要因で発現の誘導、抑制がかかり、そのような発現の変動によって薬の効き目や毒性発現が変化する。従って、薬物代謝酵素群の発現プロファイルはどのように薬が代謝されるかを規定するため、薬の開発において非常に重要な情報である。
【0003】
薬物代謝酵素の発現プロファイルは、PCRやDNAチップ等を用いてmRNAレベルで解析を行うことが可能である。しかし、mRNAの発現は活性の実態であるタンパク質の発現と必ずしも一致しない。さらに、一つの薬物が複数の代謝酵素で代謝されることが多く、このような場合、mRNA発現では、各代謝酵素の寄与の大きさは解析できない。従って、代謝酵素をタンパク質発現量で解析し、さらにその絶対発現量を求めることによって異なる代謝酵素間の比較を可能にすることが望まれている。
【0004】
代謝酵素タンパク質を検出する一つの方法に、抗体を用いた方法がある。当該方法では、Western blotによって検出及び定量が可能であるが、特異的抗体を調製することが大変困難であるだけではなく、複数分子のプロファイルを構築することは大変な時間と労力を有する。
【0005】
一方、近年、質量分析法(mass spectrometry)の進展が目覚しく、種々の生物学材料の検出や測定にこの方法が検討され、利用されてきた。質量分析計には、エレクトロスプレー・イオン化法(ESI:electrosprayionization)による質量分析計、液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー(LC−MS)をもつ質量分析計、質量分析計を2台結合した、MS/MSスペクトル(MS/MSspectrum)又はタンデムマススペクトル(tandem mass spectrum: tandem MS)質量分析計等、種々の機能をもつ質量分析計が開発されており、これらの機能を組み合わせたものが、生物学材料の検出や測定や定量に利用されている(特許文献1〜3)。
【0006】
本発明者らは質量分析装置を用いて20種類以上の膜タンパク質の絶対発現量を一斉定量する方法を発明している(特許文献4)。この発明は、標的タンパク質のトリプシン消化ペプチドのうち、高感度ペプチドを選択し、そのペプチドと同一アミノ酸配列を持つ安定同位体標識ペプチドを用いて、トリプシン消化した生体試料中の定量対象ペプチドの絶対発現量を定量することによって標的タンパク質の絶対発現量を求める方法である。従って、標的タンパク質中の高感度のペプチドを選択することが、定量において高い感度、精度、信頼性を達成するために非常に重要である。
【0007】
しかし、上記特許文献4記載の発明は、細胞膜タンパク質の絶対発現量の定量に関する方法とペプチドのアミノ酸配列に関する発明であり、細胞内のタンパク質である代謝酵素の定量に用いることができるペプチドに関する情報は不明であった。細胞膜と比較して細胞内には膨大なタンパク質が存在することから、細胞内タンパク質である代謝酵素の定量は、より複雑なタンパク質試料中の微量なタンパク質を定量する必要があり、細胞内タンパク質を試料とする代謝酵素の定量のための定量対象ペプチドの選択は、細胞膜タンパク質の定量対象ペプチド選択と比較してより困難が予想されていた。
【0008】
【特許文献1】特開2004−28993号公報
【特許文献2】特開2004−77276号公報
【特許文献3】特表2004−533610号公報
【特許文献4】国際公開公報WO07/055116号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、生体試料中の代謝酵素のタンパク質絶対量を高感度に一斉定量することが可能なアミノ酸配列からなるペプチドやその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、特定のアミノ酸が存在するとペプチドがイオン化しにくく感度が低くなること、これとは異なる特定のアミノ酸が存在すると衝突誘起解離の効率が上がりペプチドがイオン化しやすく感度が高くなることを見出し、それぞれのクライテリアにスコアをつけて総合スコアで複数のペプチドから候補を絞り込むことにより、細胞内タンパク質である代謝酵素を高感度に一斉定量することを可能とする、質量分析装置で高感度検出可能なペプチドを選択し、アミノ酸配列を同定するに至り本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、(1)質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1〜412のいずれかに示されるヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドや、(2)質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号413〜695のいずれかに示されるマウス代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドや、(3)質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1〜695のいずれかに示されるアミノ酸配列中の1又は2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドや、(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドにおいて、ペプチドを構成するアミノ酸の1個以上が、15N,13C,18O,及びHのいずれか1以上を含むことを特徴とする安定同位体標識ペプチドに関する。
【0012】
また、本発明は、(5)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチド、及び、前記(4)に記載の安定同位体標識ペプチドを備えた、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用キットや、(6)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチド、及び、前記(4)に記載の安定同位体標識ペプチドを、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用プローブとして使用する方法に関する。
【0013】
さらに、本発明は、(7)(a)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドと前記(4)に記載の安定同位体標識ペプチドとを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程;(b)試料の被定量代謝酵素タンパク質をトリプシンにより断片化して得られるペプチド断片に、前記(4)に記載の安定同位体標識ペプチドを添加してLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量代謝酵素タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程;(c)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程;を備えた安定同位体標識ペプチドを用いた液体クロマトグラフ−タンデム質量分析装置(LC−MS/MS)による代謝酵素群の一斉タンパク質の定量法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアミノ酸配列によって構成されるペプチドを用いた質量分析による代謝酵素タンパク質の定量法により、従来法では困難であった代謝酵素タンパク質の定量を、簡便、かつ迅速に、更に、精度よく行うことが可能となる。また、本発明の代謝酵素タンパク質の定量法は、抗体を使用せずに、代謝酵素タンパク質を定量することできるので、従来もっとも時間のかかっていた抗体作製の段階を省略することができ、更に、抗体が作製できない代謝酵素についても定量が可能となって、適用範囲の広い、精度の高い細胞内タンパク質である代謝酵素タンパク質の定量法を提供することができる。従って、本発明を利用した代謝酵素タンパク質の定量法は、薬物の相互作用、個人差、毒性の解明において大きく貢献が期待できるものである。特に、新薬の開発に際しては、新薬候補物質がどのような代謝酵素をどの程度発現を変動させるかは相互作用や毒性を予測する上で非常に重要な意義を有しており、新薬開発における開発促進に多大な貢献が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(ヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチド)
本発明のペプチドは、質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、ヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるものである。当該ヒト代謝酵素タンパク質としては、具体的にはCYP1A1(SwissProtアクセッション番号:P04798)、CYP1A2(SwissProtアクセッション番号:P05177)、CYP1B1(SwissProtアクセッション番号:Q16678)、CYP2A6(SwissProtアクセッション番号:P11509)、CYP2A7(SwissProtアクセッション番号:P20853)、CYP2A13(SwissProtアクセッション番号:Q16696)、CYP2B6(SwissProtアクセッション番号:P20813)、CYP2C8(SwissProtアクセッション番号:P10632)、CYP2C9(SwissProtアクセッション番号:P11712)、CYP2C18(SwissProtアクセッション番号:P33260)、CYP2C19(SwissProtアクセッション番号:P33261)、CYP2D6(SwissProtアクセッション番号:P10635)、CYP2E1(SwissProtアクセッション番号:P05181)、CYP2F1(SwissProtアクセッション番号:P24903)、CYP2J2(SwissProtアクセッション番号:P51589)、CYP2R1(SwissProtアクセッション番号:Q6VVX0)、CYP2S1(SwissProtアクセッション番号:Q96SQ9)、CYP2W1(SwissProtアクセッション番号:Q8TAV3)、CYP3A4(SwissProtアクセッション番号:P08684)、CYP3A5(SwissProtアクセッション番号:P20815)、CYP3A7(SwissProtアクセッション番号:P24462)、CYP3A43(SwissProtアクセッション番号:Q9HB55)、CYP4A11(SwissProtアクセッション番号:Q02928)、CYP4B1(SwissProtアクセッション番号:P13584)、CYP4F2(SwissProtアクセッション番号:P78329)、CYP4F3(SwissProtアクセッション番号:Q08477)、CYP4F8(SwissProtアクセッション番号:P98187)、CYP4F11(SwissProtアクセッション番号:Q9HBI6)、CYP4F12(SwissProtアクセッション番号:Q9HCS2)、CYP4F22(SwissProtアクセッション番号:Q6NT55)、CYP4V2(SwissProtアクセッション番号:Q6ZWL3)、CYP4X1(SwissProtアクセッション番号:Q8N118)、CYP4Z1(SwissProtアクセッション番号:Q86W10)、CYP7A1(SwissProtアクセッション番号:P22680)、CYP7B1(SwissProtアクセッション番号:O75881)、CYP8B1(SwissProtアクセッション番号:Q9UNU6)、CYP11B1(SwissProtアクセッション番号:P15538)、CYP11B2(SwissProtアクセッション番号:P19099)、CYP17A1(SwissProtアクセッション番号:P05093)、CYP19A1(SwissProtアクセッション番号:P11511)、CYP21A2(SwissProtアクセッション番号:P08686)、CYP24A1(SwissProtアクセッション番号:Q07973)、CYP26A1(SwissProtアクセッション番号:O43174)、CYP26B1(SwissProtアクセッション番号:Q9NR63)、CYP26C1(SwissProtアクセッション番号:Q6V0L0)、CYP27A1(SwissProtアクセッション番号:Q02318)、CYP27B1(SwissProtアクセッション番号:O15528)、CYP27C1(SwissProtアクセッション番号:Q4G0S4)、CYP39A1(SwissProtアクセッション番号:Q9NYL5)、CYP46A1(SwissProtアクセッション番号:Q9Y6A2)、CYP51A1(SwissProtアクセッション番号:Q16850)、UGT1A1(SwissProtアクセッション番号:P22309)、UGT1A3(SwissProtアクセッション番号:P35503)、UGT1A4(SwissProtアクセッション番号:P22310)、UGT1A5(SwissProtアクセッション番号:P35504)、UGT1A6(SwissProtアクセッション番号:P19224)、UGT1A7(SwissProtアクセッション番号:Q9HAW7)、UGT1A10(SwissProtアクセッション番号:Q9HAW8)、UGT2A1(SwissProtアクセッション番号:Q9Y4X1)、UGT2B4(SwissProtアクセッション番号:P06133)、UGT2B7(SwissProtアクセッション番号:P16662)、UGT2B10(SwissProtアクセッション番号:P36537)、UGT2B11(SwissProtアクセッション番号:O75310)、UGT2B17(SwissProtアクセッション番号:075795)、UGT2B28(SwissProtアクセッション番号:Q9BY64)、GSTA1(SwissProtアクセッション番号:P08263)、GSTA2(SwissProtアクセッション番号:P09210)、GSTA3(SwissProtアクセッション番号:Q16772)、GSTA4(SwissProtアクセッション番号:O15217)、GSTA5(SwissProtアクセッション番号:Q7RTV2)、GSTK1(SwissProtアクセッション番号:Q9Y2Q3)、GSTM1(SwissProtアクセッション番号:P09488)、GSTM2(SwissProtアクセッション番号:P28161)、GSTM3(SwissProtアクセッション番号:P21266)、GSTM4(SwissProtアクセッション番号:Q03013)、GSTM5(SwissProtアクセッション番号:P46439)、GSTP1(SwissProtアクセッション番号:P09211)、GSTT1(SwissProtアクセッション番号:P30711)、GSTT2(SwissProtアクセッション番号:P30712)、MGST1(SwissProtアクセッション番号:P10620)、MGST2(SwissProtアクセッション番号:Q99735)、MGST3(SwissProtアクセッション番号:O14880)、SULT1A2(SwissProtアクセッション番号:P50226)、SULT1A3(SwissProtアクセッション番号:P50224)、SULT1B1(SwissProtアクセッション番号:O43704)、SULT1C2(SwissProtアクセッション番号:PO00338)、SULT1C3(SwissProtアクセッション番号:Q6IMI6)、SULT1C4(SwissProtアクセッション番号:O75897)、SULT1E1(SwissProtアクセッション番号:P49888)、SULT2A1(SwissProtアクセッション番号:Q06520)、SULT2B1(SwissProtアクセッション番号:O00204)、SULT4A1(SwissProtアクセッション番号:Q9BR01)、SULT4S6(SwissProtアクセッション番号:Q7LFX5)、P450R(SwissProtアクセッション番号:P16435)、MGMT(SwissProtアクセッション番号:P16455)、dCK(SwissProtアクセッション番号:P27707)、CDA(SwissProtアクセッション番号:P32320)、cN−IA(SwissProtアクセッション番号:Q9BX13)、cN−IB(SwissProtアクセッション番号:Q96P26)、cN−II(SwissProtアクセッション番号:P49902)、cN−III(SwissProtアクセッション番号:Q9H0P0)、dNT−1(SwissProtアクセッション番号:Q8TCD5)、dNT−2(SwissProtアクセッション番号:Q9NPB1)、Ecto−5’−NT(SwissProtアクセッション番号:P21589)、RRM1(SwissProtアクセッション番号:P23921)、RRM2(SwissProtアクセッション番号:P31350)、UMP/CMPK(SwissProtアクセッション番号:P30085)、dCMPDA(SwissProtアクセッション番号:P32321)、CTP synthase1(SwissProtアクセッション番号:P17812)、CTP synthase2(SwissProtアクセッション番号:Q9NRF8)等を例示することができる。
【0016】
本発明のペプチドは前記ヒト代謝酵素タンパク質タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドであり、具体的には例えば、CYP1A1の部分配列である配列番号1〜5に示される各アミノ酸配列;CYP1A2の部分配列である配列番号6〜8に示される各アミノ酸配列;CYP1B1の部分配列である配列番号9〜14に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCYP1A1、CYP1A2、CYP1B1を定量することができる。
【0017】
同様に、CYP2A6の部分配列である配列番号15〜17に示される各アミノ酸配列;CYP2A7の部分配列である配列番号18〜19に示される各アミノ酸配列;CYP2A13の部分配列である配列番号20〜21に示される各アミノ酸配列;CYP2B6の部分配列である配列番号22〜25に示される各アミノ酸配列;CYP2C8の部分配列である配列番号26〜29に示される各アミノ酸配列;CYP2C9の部分配列である配列番号30〜31に示される各アミノ酸配列;CYP2C18の部分配列である配列番号32〜34に示される各アミノ酸配列;CYP2C19の部分配列である配列番号35〜37に示される各アミノ酸配列;CYP2D6の部分配列である配列番号38〜39に示される各アミノ酸配列;CYP2E1の部分配列である配列番号40〜46に示される各アミノ酸配列;CYP2F1の部分配列である配列番号47に示される各アミノ酸配列;CYP2J2の部分配列である配列番号48〜55に示される各アミノ酸配列;CYP2R1の部分配列である配列番号56〜63に示される各アミノ酸配列;CYP2S1の部分配列である配列番号64〜72に示される各アミノ酸配列;CYP2W1の部分配列である配列番号73〜79に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCYP2A6、CYP2A7、CYP2A13、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C18、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP2F1、CYP2J2、CYP2R1、CYP2S1、CYP2W1を定量することができる。
【0018】
同様に、CYP3A4の部分配列である配列番号80〜81に示される各アミノ酸配列;CYP3A5の部分配列である配列番号82〜84に示される各アミノ酸配列;CYP3A7の部分配列である配列番号85〜88に示される各アミノ酸配列;CYP3A43の部分配列である配列番号89〜96に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてCYP3A4、CYP3A5、CYP3A7、CYP3A43を定量することができる。
【0019】
同様に、CYP4A11の部分配列である配列番号97〜101に示される各アミノ酸配列;CYP4B1の部分配列である配列番号102〜111に示される各アミノ酸配列;CYP4F2の部分配列である配列番号112〜114に示される各アミノ酸配列;CYP4F3の部分配列である配列番号115に示されるアミノ酸配列;CYP4F8の部分配列である配列番号116〜119に示される各アミノ酸配列;CYP4F11の部分配列である配列番号120〜122に示される各アミノ酸配列;CYP4F12の部分配列である配列番号123〜127に示される各アミノ酸配列;CYP4F22の部分配列である配列番号128〜136に示される各アミノ酸配列;CYP4V2の部分配列である配列番号137〜144に示される各アミノ酸配列;CYP4X1の部分配列である配列番号145〜154に示される各アミノ酸配列;CYP4Z1の部分配列である配列番号155〜165に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCYP4A11、CYP4B1、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F22、CYP4V2、CYP4X1、CYP4Z1を定量することができる。
【0020】
同様に、CYP7A1の部分配列である配列番号166〜171に示される各アミノ酸配列;CYP7B1の部分配列である配列番号172〜178に示される各アミノ酸配列;CYP8B1の部分配列である配列番号179〜185に示される各アミノ酸配列;CYP11B1の部分配列である配列番号186〜191に示される各アミノ酸配列;CYP11B2の部分配列である配列番号192〜195に示される各アミノ酸配列;CYP17A1の部分配列である配列番号196〜200に示される各アミノ酸配列;CYP19A1の部分配列である配列番号201〜207に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCYP7A1、CYP7B1、CYP8B1、CYP11B1、CYP11B2、CYP17A1、CYP19A1を定量することができる。
【0021】
同様に、CYP21A2の部分配列である配列番号208〜210に示される各アミノ酸配列;CYP24A1の部分配列である配列番号211〜216に示される各アミノ酸配列;CYP26A1の部分配列である配列番号217〜226に示される各アミノ酸配列;CYP26B1の部分配列である配列番号227〜238に示される各アミノ酸配列;CYP26C1の部分配列である配列番号239〜249に示される各アミノ酸配列;CYP27A1の部分配列である配列番号250〜256に示される各アミノ酸配列;CYP27B1の部分配列である配列番号257〜265に示される各アミノ酸配列;CYP27C1の部分配列である配列番号266〜275に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCYP21A2、CYP24A1、CYP26A1、CYP26B1、CYP26C1、CYP27A1、CYP27B1、CYP27C1を定量することができる。
【0022】
同様に、CYP39A1の部分配列である配列番号276に示されるアミノ酸配列;CYP46A1の部分配列である配列番号277〜284に示される各アミノ酸配列;CYP51A1の部分配列である配列番号285〜296に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCYP39A1、CYP46A1、CYP51A1を定量することができる。
【0023】
同様に、UGT1A1の部分配列である配列番号297に示されるアミノ酸配列;UGT1A3の部分配列である配列番号298〜299に示される各アミノ酸配列;UGT1A4の部分配列である配列番号300〜301に示される各アミノ酸配列;UGT1A5の部分配列である配列番号302に示されるアミノ酸配列;UGT1A6の部分配列である配列番号303〜305に示される各アミノ酸配列;UGT1A7の部分配列である配列番号306〜307に示される各アミノ酸配列;UGT1A10の部分配列である配列番号308に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれUGT1A1、UGT1A3、UGT1A4、UGT1A5、UGT1A6、UGT1A7、UGT1A10を定量することができる。
【0024】
同様に、UGT2A1の部分配列である配列番号309〜310に示される各アミノ酸配列;UGT2B4の部分配列である配列番号311に示されるアミノ酸配列;UGT2B7の部分配列である配列番号312〜313に示される各アミノ酸配列;UGT2B10の部分配列である配列番号314に示されるアミノ酸配列;UGT2B11の部分配列である配列番号315に示されるアミノ酸配列;UGT2B17の部分配列である配列番号316に示されるアミノ酸配列;UGT2B28の部分配列である配列番号317に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれUGT2A1、UGT2B4、UGT2B7、UGT2B10、UGT2B11、UGT2B17、UGT2B28を定量することができる。
【0025】
同様に、GSTA1の部分配列である配列番号318に示されるアミノ酸配列;GSTA2の部分配列である配列番号319に示されるアミノ酸配列;GSTA3の部分配列である配列番号320に示されるアミノ酸配列;GSTA4の部分配列である配列番号321〜323に示される各アミノ酸配列;GSTA5の部分配列である配列番号324に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれGSTA1、GSTA2、GSTA3、GSTA4、GSTA5を定量することができる。
【0026】
同様に、GSTK1の部分配列である配列番号325に示されるアミノ酸配列;GSTM1の部分配列である配列番号326に示されるアミノ酸配列;GSTM2の部分配列である配列番号327〜328に示される各アミノ酸配列;GSTM3の部分配列である配列番号329に示されるアミノ酸配列;GSTM4の部分配列である配列番号330に示されるアミノ酸配列;GSTM5の部分配列である配列番号331に示されるアミノ酸配列;GSTP1の部分配列である配列番号332に示されるアミノ酸配列;GSTT1の部分配列である配列番号333〜334に示される各アミノ酸配列;GSTT2の部分配列である配列番号335に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれGSTM1、GSTM2、GSTM3、GSTM4、GSTM5、GSTT1、GSTT2を定量することができる。
【0027】
同様に、MGST1の部分配列である配列番号336に示されるアミノ酸配列;MGST2の部分配列である配列番号337に示されるアミノ酸配列;MGST3の部分配列である配列番号338に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれMGST1、MGST2、MGST3を定量することができる。
【0028】
同様に、SULT1A2の部分配列である配列番号339に示されるアミノ酸配列;SULT1A3の部分配列である配列番号340に示されるアミノ酸配列;SULT1B1の部分配列である配列番号341に示されるアミノ酸配列;SULT1C2の部分配列である配列番号342に示されるアミノ酸配列;SULT1C3の部分配列である配列番号343に示されるアミノ酸配列;SULT1C4の部分配列である配列番号344に示されるアミノ酸配列;SULT1E1の部分配列である配列番号345に示されるアミノ酸配列;SULT2A1の部分配列である配列番号346に示されるアミノ酸配列;SULT2B1の部分配列である配列番号347に示されるアミノ酸配列;SULT4A1の部分配列である配列番号348に示されるアミノ酸配列;SULT4S6の部分配列である配列番号349に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれSULT1A2、SULT1A3、SULT1B1、SULT1C2、SULT1C3、SULT1C4、SULT1E1、SULT2A1、SULT2B1、SULT4A1、SULT4S6を定量することができる。
【0029】
同様に、P450Rの部分配列である配列番号350〜359に示される各アミノ酸配列;MGMTの部分配列である配列番号360〜361に示される各アミノ酸配列;dCKの部分配列である配列番号362〜363に示される各アミノ酸配列;CDAの部分配列である配列番号364に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれP450R、MGMT、dCK、CDAを定量することができる。
【0030】
同様に、cN−IAの部分配列である配列番号365〜366に示される各アミノ酸配列;cN−IBの部分配列である配列番号367〜374に示される各アミノ酸配列;cN−IIの部分配列である配列番号375に示されるアミノ酸配列;cN−IIIの部分配列である配列番号376〜382に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれ、cN−IA、cN−IB、cN−II、cN−IIIを定量することができる。
【0031】
同様に、dNT−1の部分配列である配列番号383に示されるアミノ酸配列;dNT−2の部分配列である配列番号384〜385に示される各アミノ酸配列;Ecto−5’−NTの部分配列である配列番号386〜388に示される各アミノ酸配列;RRM1の部分配列である配列番号389〜392に示される各アミノ酸配列;RRM2の部分配列である配列番号393〜394に示される各アミノ酸配列;UMP/CMPKの部分配列である配列番号395に示されるアミノ酸配列;dCMPDAの部分配列である配列番号396に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれ、dNT−1、dNT−2、Ecto−5’−NT、RRM1、RRM2、UMP/CMPK、dCMPDAを定量することができる。
【0032】
同様に、CTP Synthase1の部分配列である配列番号397〜405に示される各アミノ酸配列;CTP Synthase2の部分配列である配列番号406〜412に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれ、CTP Synthase1、CTP Synthase2を定量することができる。
【0033】
(マウス代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチド)
また、本発明のペプチドは配列番号413〜695記載のマウス代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドである。当該マウス代謝酵素タンパク質としては、具体的にはCyp11a1(SwissProtアクセッション番号:Q9QZ82)、Cyp17a1(SwissProtアクセッション番号:P27786)、Cyp19a1(SwissProtアクセッション番号:P28649)、Cyp1a1(SwissProtアクセッション番号:P00184)、Cyp1a2(SwissProtアクセッション番号:P00186)、Cyp21(SwissProtアクセッション番号:P03940)、Cyp24a1(SwissProtアクセッション番号:Q64441)、Cyp26a1(SwissProtアクセッション番号:O55127)、Cyp27a1(SwissProtアクセッション番号:Q9DBG1)、Cyp27b1(SwissProtアクセッション番号:O35084)、Cyp2a4(SwissProtアクセッション番号:P15392)、Cyp2a5(SwissProtアクセッション番号:P20852)、Cyp2b19(SwissProtアクセッション番号:O55071)、Cyp2c29(SwissProtアクセッション番号:Q64458)、Cyp2c39(SwissProtアクセッション番号:P56656)、Cyp2c70(SwissProtアクセッション番号:Q91W64)、Cyp2d10(SwissProtアクセッション番号:P24456)、Cyp2d26(SwissProtアクセッション番号:Q8CIM7)、Cyp2d9(SwissProtアクセッション番号:P11714)、Cyp2e1(SwissProtアクセッション番号:Q05421)、Cyp2f2(SwissProtアクセッション番号:P33267)、Cyp2j5(SwissProtアクセッション番号:O54749)、Cyp2r1(SwissProtアクセッション番号:Q6VVW9)、Cyp2s1(SwissProtアクセッション番号:Q9DBX6)、Cyp39a1(SwissProtアクセッション番号:Q9JKJ9)、Cyp3a11(SwissProtアクセッション番号:Q64459)、Cyp3a13(SwissProtアクセッション番号:Q64464)、Cyp3a16(SwissProtアクセッション番号:Q64481)、Cyp3a25(SwissProtアクセッション番号:O09158)、Cyp46a1(SwissProtアクセッション番号:Q9WVK8)、Cyp4a14(SwissProtアクセッション番号:O35728)、Cyp4b1(SwissProtアクセッション番号:Q64462)、Cyp4f14(SwissProtアクセッション番号:Q9EP75)、Cyp4v3(SwissProtアクセッション番号:Q9DBW0)、Cyp5a(SwissProtアクセッション番号:P36423)、Cyp8b1(SwissProtアクセッション番号:O88962)、GSTO1(SwissProtアクセッション番号:O09131)、ST2B1(SwissProtアクセッション番号:O35400)、ST3A1(SwissProtアクセッション番号:O35403)、CHST3(SwissProtアクセッション番号:O88199)、SNAT(SwissProtアクセッション番号:O88816)、UD2B5(SwissProtアクセッション番号:P17717)、GSTP1(SwissProtアクセッション番号:P19157)、GSTM4(SwissProtアクセッション番号:P19639)、GSTA4(SwissProtアクセッション番号:P24472)、GSTA3(SwissProtアクセッション番号:P30115)、GSTM5(SwissProtアクセッション番号:P48774)、ST1E1(SwissProtアクセッション番号:P49891)、ARY1(SwissProtアクセッション番号:P50294)、ARY2(SwissProtアクセッション番号:P50295)、ARY3(SwissProtアクセッション番号:P50296)、ST1A1(SwissProtアクセッション番号:P52840)、UD12(SwissProtアクセッション番号:P70691)、CGT(SwissProtアクセッション番号:Q64676)、UD17C(SwissProtアクセッション番号:Q6ZQM8)、ST1C1(SwissProtアクセッション番号:Q80VR3)、CHST2(SwissProtアクセッション番号:Q80WV3)、MGST3(SwissProtアクセッション番号:Q9CPU4)、ST1C2(SwissProtアクセッション番号:Q9D939)、GSTK1(SwissProtアクセッション番号:Q9DCM2)、CHST7(SwissProtアクセッション番号:Q9EP78)、CHST1(SwissProtアクセッション番号:Q9EQC0)、CHST5(SwissProtアクセッション番号:Q9QUP4)、NAT6(SwissProtアクセッション番号:Q9R123)、CHST4(SwissProtアクセッション番号:Q9R1I1)、MAAI(SwissProtアクセッション番号:Q9WVL0)等を例示することができる。
【0034】
本発明のペプチドは上に列挙したタンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドであり、具体的には例えば、Cyp11a1の部分配列である配列番号413〜422に示される各アミノ酸配列;Cyp17a1の部分配列である配列番号423〜429に示される各アミノ酸配列;Cyp19a1の部分配列である配列番号430〜436に示される各アミノ酸配列;Cyp1a1の部分配列である配列番号437〜438に示される各アミノ酸配列;Cyp1a2の部分配列である配列番号439〜443に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCyp11a1、Cyp17a1、Cyp19a1、Cyp1a1、Cyp1a2を定量することができる。
【0035】
同様に、Cyp21の部分配列である配列番号444〜448に示される各アミノ酸配列;Cyp24a1の部分配列である配列番号449〜455に示される各アミノ酸配列;Cyp26a1の部分配列である配列番号456〜464に示される各アミノ酸配列;Cyp27a1の部分配列である配列番号465〜470に示される各アミノ酸配列;Cyp27b1の部分配列である配列番号471〜478に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCyp21、Cyp24a1、Cyp26a1、Cyp27a1、Cyp27b1を定量することができる。
【0036】
同様に、Cyp2a4の部分配列である配列番号479に示されるアミノ酸配列;Cyp2a5の部分配列である配列番号480に示されるアミノ酸配列;Cyp2b19の部分配列である配列番号481〜483に示される各アミノ酸配列;Cyp2c29の部分配列である配列番号484に示されるアミノ酸配列;Cyp2c39の部分配列である配列番号485〜488に示される各アミノ酸配列;Cyp2c70の部分配列である配列番号489〜492に示される各アミノ酸配列;Cyp2d10の部分配列である配列番号493に示されるアミノ酸配列;Cyp2d26の部分配列である配列番号494〜497に示される各アミノ酸配列;Cyp2d9の部分配列である配列番号498〜499に示される各アミノ酸配列;Cyp2e1の部分配列である配列番号500に示されるアミノ酸配列;Cyp2f2の部分配列である配列番号501〜505に示される各アミノ酸配列;Cyp2j5の部分配列である配列番号506〜511に示される各アミノ酸配列;Cyp2r1の部分配列である配列番号512〜513に示される各アミノ酸配列;Cyp2s1の部分配列である配列番号514〜526に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCyp2a4、Cyp2a5、Cyp2b19、Cyp2c29、Cyp2c39、Cyp2c70、Cyp2d10、Cyp2d26、Cyp2d9、Cyp2e1、Cyp2f2、Cyp2j5、Cyp2r1、Cyp2s1を定量することができる。
【0037】
同様に、Cyp39a1の部分配列である配列番号527に示されるアミノ酸配列;Cyp3a11の部分配列である配列番号528に示されるアミノ酸配列;Cyp3a13の部分配列である配列番号529〜534に示される各アミノ酸配列;Cyp3a16の部分配列である配列番号535〜536に示される各アミノ酸配列;Cyp3a25の部分配列である配列番号537〜538に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてCyp39a1、Cyp3a11、Cyp3a13、Cyp3a16、Cyp3a25を定量することができる。
【0038】
同様に、Cyp46a1の部分配列である配列番号539〜545に示される各アミノ酸配列からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてCyp46a1を定量することができる。
【0039】
同様に、Cyp4a14の部分配列である配列番号546〜550に示される各アミノ酸配列;Cyp4b1の部分配列である配列番号551〜554に示される各アミノ酸配列;Cyp4f14の部分配列である配列番号555〜558に示される各アミノ酸配列;Cyp4v3の部分配列である配列番号559〜566に示される各アミノ酸配列;Cyp5aの部分配列である配列番号567〜570に示される各アミノ酸配列;Cyp8b1の部分配列である配列番号571〜576に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCyp4a14、Cyp4b1、Cyp4f14、Cyp4v3、Cyp5a、Cyp8b1を定量することができる。
【0040】
同様に、GSTO1の部分配列である配列番号577〜578に示される各アミノ酸配列;ST2B1の部分配列である配列番号579に示されるアミノ酸配列;ST3A1の部分配列である配列番号580〜585に示される各アミノ酸配列;CHST3の部分配列である配列番号586〜595に示される各アミノ酸配列;SNATの部分配列である配列番号596に示されるアミノ酸配列;UD2B5の部分配列である配列番号597に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれGSTO1、ST2B1、ST3A1、CHST3、SNAT、UD2B5を定量することができる。
【0041】
同様に、GSTP1の部分配列である配列番号598に示されるアミノ酸配列;GSTM4の部分配列である配列番号599に示されるアミノ酸配列;GSTA4の部分配列である配列番号600〜603に示される各アミノ酸配列;GSTA3の部分配列である配列番号604〜605に示される各アミノ酸配列;GSTM5の部分配列である配列番号606〜609に示される各アミノ酸配列;ST1E1の部分配列である配列番号610〜613に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれGSTP1、GSTM4、GSTA4、GSTA3、GSTM5、ST1E1を定量することができる。
【0042】
同様に、ARY1の部分配列である配列番号614〜615に示される各アミノ酸配列;ARY2の部分配列である配列番号616〜620に示される各アミノ酸配列;ARY3の部分配列である配列番号621〜624に示される各アミノ酸配列;ST1A1の部分配列である配列番号625〜626に示される各アミノ酸配列;UD12の部分配列である配列番号627〜629に示される各アミノ酸配列;CGTの部分配列である配列番号630〜638に示される各アミノ酸配列;UD17Cの部分配列である配列番号639〜641に示される各アミノ酸配列;ST1C1の部分配列である配列番号642〜643に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれARY1、ARY2、ARY3、ST1A1、UD12、CGT、UD17C、ST1C1を定量することができる。
【0043】
同様に、CHST2の部分配列である配列番号644〜650に示される各アミノ酸配列;MGST3の部分配列である配列番号651に示されるアミノ酸配列;ST1C2の部分配列である配列番号652〜655に示される各アミノ酸配列;GSTK1の部分配列である配列番号656〜659に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCHST2、MGST3、ST1C2、GSTK1を定量することができる。
【0044】
同様に、CHST7の部分配列である配列番号660〜671に示される各アミノ酸配列;CHST1の部分配列である配列番号672〜676に示される各アミノ酸配列;CHST5の部分配列である配列番号677〜683に示される各アミノ酸配列;NAT6の部分配列である配列番号684〜686に示される各アミノ酸配列;CHST4の部分配列である配列番号687〜691に示される各アミノ酸配列;MAAIの部分配列である配列番号692〜695に示される各アミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれCHST7、CHST1、CHST5、NAT6、CHST4、MAAIを定量することができる。
【0045】
(ホモログ由来ペプチド又はヒトSNPs対応ペプチド)
また、本発明のペプチドとして、質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1〜695のいずれかに示されるアミノ酸配列中の1又は2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドを例示することができる。これらペプチドとして、具体的には、配列番号1〜695のいずれかに示されるアミノ酸配列中の1又は2個(好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、ヒト又はマウス以外の哺乳類のホモログ(相同タンパク質)に由来するペプチドや、配列番号1〜413のいずれかに示されるヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列中の1又は2個(好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、ヒト代謝酵素タンパク質のSNPsに対応するペプチドを好適に例示することができる。上記ヒト又はマウス以外の哺乳類としては、ヒト以外の霊長類(例えば、サル、ヒヒ又はチンパンジー等)、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、スナネズミ、ハムスター、ラット等を挙げることができる。
【0046】
本発明の前記ヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドや、前記ネズミ代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドや、上記ホモログ由来ペプチド又はヒトSNPs対応ペプチド(以下、これら本発明のペプチドを「本件非標識ペプチド」と総称する場合がある。)は、一般的な化学合成法により製造することができる。かかるペプチド合成法として、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法や、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法のいずれも採用することができる。
【0047】
(安定同位体標識ペプチド)
また、本発明の標識ペプチドとしては、上記の本件非標識ペプチドを構成するアミノ酸の1個以上が、15N,13C,18O,及びHのいずれか1以上を含む安定同位体標識ペプチドであれば、アミノ酸の種類、位置、及び数は、液体クロマトグラフ−タンデム質量分析装置(LC−MS/M)で分離可能な質量差を有する限りにおいて特に制限されないが、中でも13Cで6箇所標識されたロイシン(Leucine)を含むことがより好ましい。かかる安定同位体標識ペプチドは、安定同位元素により標識されたアミノ酸を用いてF−moc法(Amblard M, Fehrentz JA, Martinez J, Subra G. Methods Mol Biol.298:3-24(2005))等の適当な手段で目的ペプチドを化学合成することができる。また、安定同位体標識ペプチドは、定量対象ペプチドと標識アミノ酸の質量が異なる点以外では化学的に同一でLC−MS/MS測定において同一の挙動を示すことから、質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量における内部標準ペプチドとして有利に用いることができる。
【0048】
(定量用キットとプローブとしての使用)
本発明の代謝酵素群の一斉タンパク質定量用キットとしては、本件非標識ペプチドと本発明の安定同位体標識ペプチドとを備えたものであれば特に制限されず、また、本発明の使用方法としては、本件非標識ペプチドと本発明の安定同位体標識ペプチドとを代謝酵素群の一斉タンパク質定量用プローブとして使用する方法であれば特に制限されず、定量対象ペプチドでもある本件非標識ペプチドは、定量用の検量線作成に用いられ、安定同位体標識ペプチドは、定量用の検量線作成及び内部標準ペプチドとして用いられる。
【0049】
(代謝酵素群の一斉タンパク質の定量)
本発明の安定同位体標識ペプチドを用いたLC−MS/MSによる代謝酵素群の一斉タンパク質の定量法としては、(a)本件非標識ペプチドと本発明の安定同位体標識ペプチドとを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程、(b)試料の被定量代謝酵素タンパク質をトリプシンにより断片化して得られるペプチド断片に、本発明の安定同位体標識ペプチドを添加してLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量代謝酵素タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程、(c)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程の各工程を備えた方法であれば特に制限されず、定量の対象となるタンパク質の供給源としての上記試料として、肝臓等の各種組織、各種組織由来の培養細胞等を例示することができる。また、試料中に含まれる被定量タンパク質が質量分析計の測定限界値以下である場合、高圧窒素ガス充填法等により分画した試料を測定に用いることが好ましい。また、一つの標的代謝酵素タンパク質に対して複数の定量対象ペプチドが同定されている場合、複数の定量対象ペプチドを用い、定量することによってより精度と信頼性の高い代謝酵素群の一斉タンパク質の定量を行うことができる。
さらに、被定量タンパク質とそのサブタイプが極めて似たアミノ酸配列を有する場合には、それらに共通のペプチドの定量値と、一方に特異的なペプチドの定量値の差を求めることにより、被定量タンパク質を定量することもできる。例えば、代謝タンパク質CYP3A4の定量値は、(CYP3A4及びCYP3A5に共通のペプチドの定量値)−(CYP3A5特異的なペプチドの定量値)により求めることができる。
【0050】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
(nanoLC−MS/MSを用いたペプチド(CYP及びP450R)の検出)
ヒト代謝酵素CYP及びP450Rの部分配列ペプチドである、定量対象ペプチド(非標識ペプチド:CYP1A2;YLPNPALQR(配列番号7)、CYP2A6;GTGGANIDPTFFLSR(配列番号15)、CYP2B6;GYGVIFANGNR(配列番号25)、CYP2C8;GNSPISQR(配列番号28)、CYP2C9;GIFPLAER(配列番号30)、CYP2C18;IAENFAYIK(配列番号32)、CYP2C19;GHFPLAER(配列番号35)、CYP2D6;DIEVQGFR(配列番号39)、CYP2E1;GIIFNNGPTWK(配列番号44)、CYP2J2;EENGQPFDPHFK(配列番号52)、CYP3A4;LQEEIDAVLPNK(配列番号81)、CYP3A5;DTINFLSK(配列番号83)、CYP3A7;FNPLDPFVLSIK(配列番号85)、CYP3A43;YIPFGAGPR(配列番号91)、CYP4A11;IPIPIAR(配列番号100)、CYP51A1;FAYVPFGAGR(配列番号290)、P450R;FAVFGLGNK(配列番号355)、及び合成した安定同位体標識ペプチド[同位体標識ペプチド:CYP1A2;YLPNPAL(1315N)QR(配列番号7)、CYP2A6;GTGGANIDPTFFL(1315N)SR(配列番号15)、CYP2B6;GYGVIFA(1315N)NGNR(配列番号25)、CYP2C8;GNSPI(1315N)SQR(配列番号28)、CYP2C9;GIFPL(1315N)AER(配列番号30)、CYP2C18;IAENFAYI(1315N)K(配列番号32)、CYP2C19;GHFPL(1315N)AER(配列番号35)、CYP2D6;DIEVQGF(1315N)R(配列番号39)、CYP2E1;GIIFNNGP(1315N)TWK(配列番号44)、CYP2J2;EENGQPFDPHF(1315N)K(配列番号52)、CYP3A4;LQEEIDAVLP(1315N)NK(配列番号81)、CYP3A5;DTINFL(1315N)SK(配列番号83)、CYP3A7;FNPLDPFVLSI(1315N)K(配列番号85)、CYP3A43;YIPFGAGP(1315N)R(配列番号91)、CYP4A11;IPIPIA(1315N)R(配列番号100)、CYP51A1;FAYVPFGA(1315N)GR(配列番号290)、P450R;FAVFGL(1315N)GNK(配列番号355)]を用いて、次の条件でnanoLC−MS/MS測定を行った。
1fmolの非標識ペプチドにそれぞれ50fmolの1315N標識ペプチドを添加し、nanoLC−MS/MSにより測定した。カラムは逆相C18 150μm I.D.×40mmを用い、移動相は0.1%ギ酸と0.1%ギ酸、アセトニトリルとし、35分間で0.1%ギ酸、アセトニトリル濃度が45%となるリニアグラジエントで分析を行った。質量分析計はアプライドバイオシステムの4000Qtrapを用いた。ペプチドは、定量対象ペプチドと標識ペプチドが、同一時間に溶出されることで同定した。結果を図1に示す。
【実施例2】
【0052】
(ヒト肝組織試料におけるCYP及びP450Rの一斉定量)
ヒト肝臓組織をハサミで細断した後に、10mM Tris−HCl,10mM NaCl,1.5mM MgClに懸濁した。ガラスホモジナイザーにてホモジナイズし、溶液を8,000×g,10分間遠心した。さらに、上清を100,000×g,60分間遠心して粗膜画分を得た。得られた粗膜画分を7M 塩酸グアニジン、0.1M Tris−HCl,10mM EDTA pH8.5緩衝液中で変性させ、システイン残基のSH基を保護するために、DTTによる還元処理とIodoacetamideによるカルバミドメチル化処理を行なった。メタノールクロロホルム沈殿法により、脱塩濃縮した。1.2M Urea、10mM Tris−HClに顕濁した後に、タンパク質重量の1/100量のTrypsinを加え37℃で16時間酵素消化してペプチド試料を得た。
【0053】
得られた粗膜画分ペプチド試料5μgに、50fmolの1315N標識ペプチドを加えてLC−MS/MSで測定した(図2)。測定後、MSスペクトル面積比(非標識ペプチド/1315N標識ペプチド)を算出し、検量線を用いて定量値を算出した。
【0054】
(検量線の作成)
選定した定量対象ペプチドを用いて、検量線を作成し直線性を検討した。1fmol,5fmol,10fmol,50fmol,100fmolの非標識ペプチドに、それぞれ50fmolの1315N標識ペプチドを添加し、同様にnanoLC−MS/MSにより測定した、MSスペクトル面積比(非標識ペプチド/1315N標識ペプチド)を算出し、検量線を作成した。
【0055】
CYP及びP450R定量結果を表1に示す。
【表1】

【実施例3】
【0056】
(ConventionalLC−MS/MSを用いたペプチド(Ara−C代謝酵素)の検出)
ヒトAra−C代謝酵素の部分配列ペプチドである、定量対象ペプチド(非標識ペプチド:dCK;AQLASLNGK(配列番号362)、CDA;AVSEGYK(配列番号364)、cN−IA;GFLEALGR(配列番号366)、cN−IB; GFLEDLGR(配列番号369)、 cN−II;VFLATNSDYK(配列番号375)、cN−III;GELIHVFNK(配列番号379)、dNT−1;TVVLGDLLIDDK(配列番号383)、Ecto−5’−NT;VPSYDPLK(配列番号388)、RRM1;LNSAIIYDR(配列番号390)、RRM2;ENTPPALSGTR(配列番号393)、UMP/CMPK;FLIDGFPR(配列番号395)、dCMPDA;LIIQAGIK(配列番号396)、CTPS1; FVGQDVEGER(配列番号402)、CTPS2;ADGILVPGGFGIR(配列番号409))及び合成した安定同位体標識ペプチド[同位体標識ペプチド:dCK; AQLASL(13,15N)NGK(配列番号362)、CDA; AV(1315N)SEGYK(配列番号364)、cN−IA;GFLEAL(1315N)GR(配列番号366)、cN−IB;GFLEDL(13,15N)GR(配列番号369)、cN−II;VFLA(1315N)TNSDYK(配列番号375)、cN−III;GELIHVF(1315N)NK(配列番号379)、dNT−1;TVVLGDLLI(1315N)DDK(配列番号383)、Ecto−5’−NT;VPSYDPL(1315N)K(配列番号388)、RRM1;LNSAII(1315N)YDR(配列番号390)、RRM2;ENTPPAL(1315N)SGTR(配列番号393)、UMP/CMPK;FLIDGFP(1315N)R(配列番号395)、dCMPDA;LIIQAGI(1315N)K(配列番号396)、CTPS1;FVGQDV(1315N)EGER(配列番号402)、CTPS2;ADGILVPGGFGI(1315N)R(配列番号409)]を用いて、次の条件でconventionalLC−MS/MS測定を行った。
10fmolの非標識ペプチドにそれぞれ500fmolの1315N標識ペプチドを添加し、conventionalLC−MS/MSにより測定した。カラムは逆相C18 0.5mm I.D.×150mmを用い、移動相は0.1%ギ酸と0.1%ギ酸、アセトニトリルとし、60分間で0.1%ギ酸、アセトニトリル濃度が45%となるリニアグラジエントで分析を行った。質量分析計はアプライドバイオシステムのAPI5000を用いた。ペプチドは、定量対象ペプチドと標識ペプチドが同一時間に溶出されることで同定した。結果を図7に示す。
【実施例4】
【0057】
(ヒト培養細胞におけるAra−C代謝タンパク質の一斉定量)
10% FBSを添加したRPMI1640培地において培養したヒト白血病細胞株K562細胞5.0×10個を、cavitation法によって細胞破砕した。この溶液を10,000×g,10分間遠心した。さらに、上清を100,000×g,60分間遠心して可溶性画分を得た。得られた可溶性画分を7M 塩酸グアニジン、0.1M Tris−HCl、10mM EDTA pH8.5緩衝液中で変性させ、システイン残基のSH基を保護するために、DTTによる還元処理とIodoacetamideによるカルバミドメチル化処理を行なった。 メタノールクロロホルム沈殿法により、脱塩濃縮した。1.2M Urea、10mM Tris−HClに顕濁した後に、タンパク質重量の1/100量のTrypsinを加え37度で16時間酵素消化してペプチド試料を得た。
【0058】
得られた粗膜画分ペプチド試料 50μgに、500fmolの1315N標識ペプチドを加えてLC−MS/MSで測定した。測定後、MSスペクトル面積比(1315N標識ペプチド)を算出し、検量線を用いて定量値を算出した。
【0059】
(検量線の作成)
選定した定量対象ペプチドを用いて、検量線を作成した。1fmol、5fmol、10fmol、50fmol、100fmol、500fmol、1000fmolの非標識ペプチドにそれぞれ500fmolの1315N標識ペプチドを添加し、実施例1と同様にconventional LC−MS/MSにより測定した、MSスペクトル面積比(非標識ペプチド/1315N標識ペプチド)を算出し、検量線を作成した。
【0060】
Ara−C代謝酵素定量結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
[比較例1]
ヒトトランスポーターENT2(SLC29A2)の部分配列ペプチドである、定量対象ペプチド(非標識ペプチド:ENT2;VALTLDLDLEK(配列番号696))及び合成した安定同位体標識ペプチド[同位体標識ペプチド:ENT2;VALTLDLDL(1315N)EK(配列番号696)]を用いて次の条件でLC−MS/MS測定を行ったが、検出感度が低く、定量することができなかった。
500fmolの非標識ペプチドにそれぞれ500fmolの1315N標識ペプチドを添加し、conventionalLC−MS/MSにより測定した。カラムは逆相C18 0.5mm I.D.×150mmを用い、移動相は0.1%ギ酸と0.1%ギ酸、アセトニトリルとし、60分間で0.1%ギ酸、アセトニトリル濃度が45%となるリニアグラジエントで分析を行った。質量分析計はアプライドバイオシステムのAPI5000を用いた。ペプチドは、定量対象ペプチドと標識ペプチドが同一時間に溶出されることを同定条件としたが、両者とも感度が低くピークとして確認することができなかった。
【0063】
[比較例2]
ヒトトランスポーターBGT1(SLC6A12)の部分配列ペプチドである、定量対象ペプチド(非標識ペプチド:BGT1;QELIAWEK(配列番号697))及び合成した安定同位体標識ペプチド[同位体標識ペプチド:BGT1;QELIA(1315N)WEK(配列番号697)]を用いて、次の条件でLC−MS/MS測定を行ったが、逆相カラムに保持されないため検出感度が低く、定量することができなかった。
500fmolの非標識ペプチドにそれぞれ500fmolの1315N標識ペプチドを添加し、conventionalLC−MS/MSにより測定した。カラムは逆相C18 0.5mm I.D.×150mmを用い、移動相は0.1%ギ酸と0.1%ギ酸、アセトニトリルとし、60分間で0.1%ギ酸、アセトニトリル濃度が45%となるリニアグラジエントで分析を行った。質量分析計はアプライドバイオシステムのAPI5000を用いた。ペプチドは、定量対象ペプチドと標識ペプチドが同一時間に溶出されることを同定条件としたが、定量対象ペプチド、標識ペプチドともにピークは検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】1fmolの非標識定量対象ペプチドにそれぞれ50fmolの1315N標識ペプチドを添加し、nanoLC−MS/MSによって測定した図である。NanoLCによって1fmolの選択したペプチド(CYP)が検出可能である。
【図2】ヒト肝臓のCYP絶対発現量解析例:ヒト肝臓を解析した際の定量対象ペプチドのピーク(左図、赤)と内部標準としての標識ペプチドのピーク(右図、赤)。両ピークは同じ溶出時間に検出されている。グラフの横軸は溶出時間(分)を示し、縦軸はIntensity (cps)を示す。
【図3】ヒト肝臓のCYP絶対発現量解析例:ヒト肝臓を解析した際の定量対象ペプチドのピーク(左図、赤)と内部標準としての標識ペプチドのピーク(右図、赤)。両ピークは同じ溶出時間に検出されている。グラフの横軸は溶出時間(分)を示し、縦軸はIntensity (cps)を示す。
【図4】ヒト肝臓のCYP絶対発現量解析例:ヒト肝臓を解析した際の定量対象ペプチドのピーク(左図、赤)と内部標準としての標識ペプチドのピーク(右図、赤)。両ピークは同じ溶出時間に検出されている。グラフの横軸は溶出時間(分)を示し、縦軸はIntensity (cps)を示す。
【図5】ヒト肝臓のCYP絶対発現量解析例:各CYP分子の検量線である。横軸は定量対象ペプチドの量(fmol)を示し、縦軸は定量対象ペプチド対標識ペプチドのピークエリア比を示す。チャート中、青丸は合成ペプチドの標準品、緑三角は試料中の定量対象ペプチドをそれぞれ示す。
【図6】ヒト肝臓のCYP絶対発現量解析例:各CYP分子の検量線である。横軸は定量対象ペプチドの量(fmol)を示し、縦軸は定量対象ペプチド対標識ペプチドのピークエリア比を示す。チャート中、青丸は合成ペプチドの標準品、緑三角は試料中の定量対象ペプチドをそれぞれ示す。
【図7】10fmolの非標識定量対象ペプチドにそれぞれ500fmolの1315N標識ペプチドを添加し、conventionalLC−MS/MSによって測定した図である。ConventionalHPLCによって10fmolのペプチド(Ara−C代謝酵素)が検出可能である。
【図8】ヒト白血病細胞のAra−C関連代謝酵素絶対発現量解析例:ヒト白血病細胞を解析した際の定量対象ペプチドのピーク(左図、赤)と内部標準としての標識ペプチドのピーク(右図、赤)。両ピークは同じ溶出時間に検出されている。グラフの横軸は溶出時間(分)を示し、縦軸はIntensity(cps)を示す。
【図9】ヒト白血病細胞のAra−C関連代謝酵素絶対発現量解析例:ヒト白血病細胞を解析した際の定量対象ペプチドのピーク(左図、赤)と内部標準としての標識ペプチドのピーク(右図、赤)。両ピークは同じ溶出時間に検出されている。グラフの横軸は溶出時間(分)を示し、縦軸はIntensity(cps)を示す。
【図10】ヒト白血病細胞のAra−C関連代謝酵素発現量解析例:各Ara−C代謝酵素分子の検量線である。横軸は定量対象ペプチドの量(fmol)を示し、縦軸は定量対象ペプチド対標識ペプチドのピークエリア比を示す。チャート中、青丸は合成ペプチドの標準品、緑三角は試料中の定量対象ペプチドを示す。
【図11】ヒト白血病細胞のAra−C関連代謝酵素発現量解析例:各Ara−C代謝酵素分子の検量線である。横軸は定量対象ペプチドの量(fmol)を示し、縦軸は定量対象ペプチド対標識ペプチドのピークエリア比を示す。チャート中、青丸は合成ペプチドの標準品、緑三角は試料中の定量対象ペプチドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1〜412のいずれかに示されるヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号413〜695のいずれかに示されるマウス代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項3】
質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1〜695のいずれかに示されるアミノ酸配列中の1又は2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドにおいて、ペプチドを構成するアミノ酸の1個以上が、15N,13C,18O,及びHのいずれか1以上を含むことを特徴とする安定同位体標識ペプチド。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチド、及び、請求項4に記載の安定同位体標識ペプチドを備えた、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用キット。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のペプチド、及び、請求項4に記載の安定同位体標識ペプチドを、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用プローブとして使用する方法。
【請求項7】
以下の工程(a)〜(c)を備えた安定同位体標識ペプチドを用いた液体クロマトグラフ−タンデム質量分析装置(LC−MS/MS)による代謝酵素群の一斉タンパク質の定量法。
(a)請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドと請求項4に記載の安定同位体標識ペプチドとを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程;
(b)試料の被定量代謝酵素タンパク質をトリプシンにより断片化して得られるペプチド断片に、請求項4に記載の安定同位体標識ペプチドを添加してLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量代謝酵素タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程;
(c)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程;

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−85103(P2010−85103A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251212(P2008−251212)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】