説明

質量分析装置

【課題】GCで分離された試料を高感度分析できる質量分析装置を提供する。
【解決手段】(a1)針電極、1次イオン生成用ガスの排出開口を具備し、針電極の放電により1次イオン生成用ガスから1次イオンを生成する第1イオン化部と、(a2)1次イオンが通過する1次イオン導入細孔と、(a3)1次イオン生成用ガスの導入開口とを具備し、1次イオンと、GCのカラムの終端から導入された試料ガスとの反応により、試料イオンを生成し、カラムの終端が内部に配置される第2イオン化部とを、具備する大気圧化学イオン源と、(b)試料イオン移動細孔と、(c)試料イオンの質量分析を行う質量分析部とを有し、1次イオン生成用ガスが1次イオン導入細孔を通り、針電極の先端から排出開口に流され、1次イオン導入細孔の半径をR、1次イオン導入細孔と試料ガス移動細孔とを結ぶ軸と、カラムの終端との距離をrとする時、r≦2Rを満たす位置にカラムの終端が配置される。
【効果】汚染、試料ガスの希釈の影響が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフィーにより分離された試料ガスを分析する大気圧化学イオン化質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下では、ガスクロマトグラフィーをGC(Gas Chromatography)、質量分析計をMS(Mass Spectrometer)、ガスクロマトグラフィーと質量分析計を結合した装置をGC/MS(Gas Chromatography/Mass Spectrometer)、大気圧化学イオン化源をAPCI(Atmospheric Pressure Chemical Ionization)源、大気圧化学イオン化質量分析計(APCIとMSを結合した装置)をAPCI/MS(Atmospheric Pressure Chemical Ionization/Mass Spectrometer)、化学イオン化源をCI(Chemical Ionization)源、電子衝撃イオン源をEI(Electron Impact)源と、ガスクロマトグラフィーと大気圧化学イオン化質量分析計を結合した装置をGC/APCI/MS(Gas Chromatography/Atmospheric Pressure Chemical Ionization/Mass Spectrometer)と、それぞれ略記する。
【0003】
GC/MSは周知の分析技術である。APCI/MSは、イオン−分子反応を用いて混合試料中の微量成分をイオン化し高感度に検出する装置であり、環境試料、生体試料中の微量成分の分析に利用されている。半導体特殊ガスを含む各種微量不純物分析を行うGCとAPCI/MSとを結合した高感度分析装置の報告(特許文献1を参照)、各種高純度ガス中のppb〜サブppbレベルの微量不純物を測定するためのガス中の微量不純物の分析を行うGCとAPCI/MSとを結合した分析装置の報告(特許文献2を参照)がある。また、イオン発生部と試料ガス導入部とを別個にし、かつ、イオンを効率よく細孔に輸送することにより、イオン源内汚染を生じやすいモノシランやジシランなどの半導体材料ガスに関しても、微量不純物を高感度にかつ長時間安定に測定できるAPCI源の報告がある(特許文献3を参照)。
【0004】
特許文献1では、GCのカラムで分離された試料ガスはキャリアガスと混合されてラインを介してAPCI源へ導入され、ラインに流されるキャリアガスの流量は、高感度分析を行うために、APCI源の放電空間で大気圧を維持できる最小流量とし、容易に放電空間を定常的に大気圧として、APCI源の排気ラインの流量を最小流量に調整できるよう、オリフィスが装備されている。
【0005】
特許文献2では、GCを介してAPCI/MSに導入する系統があり、GCからの流出流路に接続するメークアップガス経路が設けられている。また、特許文献2には、「APCI/MSに導入する試料がガスの流量は、通常、数百mL(ミリリットル)/minから数mL/minである。GCのキャリアガスの流量は、通常、毎分20〜50ミリリットルである。従って、GCからの流出ガスには、メークアップ経路から相当量のメークアップガスを加える必要があるが、このメークアップガスは、想定対象である不純物を希釈してしまうため、できるだけ流量を少なくする必要がある。従って、GCを介しての分析おける不純物の感度を高めるためには、APCI/MSへ導入される試料ガス量を極力最小仕様のガス流量にすることが望ましく、例えば、300mL/min程度にすることが望ましい。」との記載がある。
【0006】
特許文献3では、「1次イオン発生用ガスの導入口とイオン化手段とを有し1次イオンを発生させる領域であるイオン発生部と、試料ガスを導入する領域である試料導入部と、イオン発生部から1次イオン発生用ガスとともに供給される1次イオンと試料ガスとが混合され、イオン−分子反応で試料ガス中の目的物質のイオンを発生する領域である混合部と、混合部から細孔通って導入されるイオンが質量分離される高真空に保持される質量分離部を備え、混合部に設置された電極により電界を付加してイオンを細孔に輸送する手段と、イオン発生部と試料導入部とを2重管で形成することによって、混合部における1次イオン発生用ガスと試料ガスの流れを平行にする手段、または、細孔付近に到達したガスを細孔を有する面に沿う方向に排出する手段のうち、少なくとも1つの手段を付加することによって、検出イオン量を増大させる。」記載がある。
【0007】
また、特許文献3の(従来の技術)の欄では、「1次イオンは、1次イオン発生用ガスとともに、大気圧下に噴出され、大気圧下において、質量分析部の細孔の前で、1次イオンは試料ガスと混合され、イオン−分子反応により、目的物質のイオンが生成される。APCI/MSでは、イオン発生部と試料導入部が分離されているため、試料ガスとしてGCやLC(液体クロマトグラフ)から流出してくるガスを用いた場合でも、イオン発生部は汚染されることはない。従って、長時間安定なイオン化が可能になっている。」と記載されている。
空気中でのコロナ放電による試料ガスのイオン化は周知である(非特許文献1を参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平9−15207号公報
【0009】
【特許文献2】特開平11−295269号公報
【特許文献3】特開平6−310091号公報
【非特許文献1】The Journal of Chemical Physics, Vol.53, 212-229(1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、GCのカラムで分離された試料ガスはキャリアガスと混合されてラインを介してAPCI源へ導入されるため、また、特許文献2では、GCからの流出ガスには、メークアップ経路からメークアップガスを加えられAPCI/MSに導入されるため、GCからの流出ガスは希釈される構成となっている。また、特許文献3の(従来の技術)の欄に記載の試料のイオン化は、大気圧下で行われるため、GCからの流出ガスは希釈されてしまう。さらに、特許文献3に記載の検出イオン量を増大させる構成で、試料導入部にGCからの流出ガスを流したとしても、混合部で1次イオン発生用ガスにより希釈されてしまう。このように、従来技術では、GCからの流出ガスをAPCI源に導入する際の希釈に十分配慮が成されておらず、感度が低下するという課題があった。
【0011】
GC/MSによる分析は、混合試料中の複数の成分、とくに揮発性の高い成分の分離分析に適している。一般に、GC/MSに用いられるイオン源として、CI源、EI源がある。これらイオン源は、0.1torr〜数torr程度の真空下でイオン化を行う。GCにより分離された試料ガスは、この真空下のイオン源に導入されるが、試料が多くの夾雑物を含む場合、夾雑物が、イオン源の壁、構成要素へ吸着したり、イオン源内部に残留したりして、イオン源は汚染され、S/Nの悪化を起こす。従って、頻繁なイオン源のクリーニングなどのメンテナンスを行うことが必要で、効率的な分析の妨げとなっていた。
【0012】
一方、イオン源としてAPCI源を用いた場合、試料のイオン化は大気圧下で行われる。イオン源部から真空下の質量分析部にイオンを輸送するための差動排気部を設ける。イオン源からのイオンは、0.1mmφ〜0.5mmφ程度のイオン導入細孔を経由して真空部に導入される。コロナ放電の安定な持続のためには、0.1L/min〜1L/min程度の流量のガス(1次イオン生成用ガス(放電用ガス))を定常的にイオン源に流すことが必要であり、イオン導入細孔に流れるガス流量は、0.1L/min〜1L/min程度となる。
【0013】
GCからのガス流量は、数mL/min〜数十mL/minであるため、GCからのガスは、イオン源に流す1次イオン生成用ガスにより希釈されてしまう。この希釈の効果は、夾雑物の影響によるイオン源の汚染を防ぐ。しかし、単純に、1次イオン生成用ガスにGCからのガスを混入させるだけでは感度が低下するという課題がある。
【0014】
本発明の目的は、汚染を生じにくいAPCI源を提供すること、このAPCI源を用いて、1次イオン生成用ガスによる試料ガスの希釈の影響を受けずに、高感度分析が可能な、ガスクロマトグラフィーと大気圧化学イオン化質量分析計を結合した質量分析装置及び質量分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の質量分析装置(GC/APCI/MS)の代表的な構成について説明する。APCI源は、内部に配置される針電極に印加される電圧によりコロナ放電により1次イオン生成用ガスから1次イオンを生成する第1イオン化部と、サンプルを分離するGCカラムの終端の開口が内部に配置され、この終端から直接導入される試料ガスと、第1イオン化部から送流される1次イオンとのイオン−分子反応により、試料イオンが生成される第2イオン化部とから構成される。
【0016】
GCカラムで分離された試料ガスは、完全に分離された単一成分、又は、完全に分離されない複数の成分を含んでいる。第1イオン化部と第2イオン化部は、1次イオンが通過する1次イオン導入細孔が形成された引き出し電極により隔てられている。第2イオン化部に導入される1次イオン生成用ガスは、1次イオン導入細孔を通り、針電極の先端部に流され、第1イオン化部から排出される。第2イオン化部で生成した試料イオンは、試料イオン移動細孔、差動排気部、試料イオン導入細孔を介して質量分析部へと導入され、質量分析される。
【0017】
試料ガスは、1次イオンが通過する1次イオン導入細孔の中心と、試料イオンが移動していく試料イオン移動細孔の中心とを結ぶ軸の近傍の位置から第2イオン化部に、GCカラムの終端の開口から直接導入される。1次イオン導入細孔の半径をR、1次イオン導入細孔の中心と試料イオン移動細孔の中心とを結ぶ軸からのGCカラムの終端の開口の中心までの距離をrとする時、GCカラムの終端の開口の中心を、1次イオン導入細孔のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔のイオン入口の中心とからほぼ等しい距離で、r≦2Rを満たす位置に配置する。
【0018】
試料ガスが希釈されない状態で直接にGCカラムの終端の開口から第2イオン化部にキャリアガスとともに導入される試料ガスは、1次イオン導入細孔と試料イオン移動細孔へ、1次イオン導入細孔の中心と試料イオン移動細孔の中心とを結ぶ軸に沿って、ほぼ同じ流量で流れていく。
1次イオンと試料分子が反応する場であるイオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が長くなり、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保されので、試料分子が効率よくイオン化され、試料イオンの生成量が増大し、感度が向上する。
【0019】
また、試料ガスは、1次イオン生成用ガスにより希釈された状態で、1次イオン導入細孔、試料イオン移動細孔を通過していくため、APCI源(第1イオン化部、第2イオン化部、針電極、細孔)が、試料ガスに含まれる夾雑物により汚染されることがなく、夾雑物の影響を受けずに高感度で分析できる。
本発明の質量分析装置(GC/APCI/MS)では、イオン源を夾雑物により汚染することなく夾雑物を多く含んだ混合試料を高感度に分析できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、汚染を生じにくいAPCI源、及び、このAPCI源を用いて、1次イオン生成用ガスによる試料ガスの希釈の影響を受けずに、高感度分析が可能な質量分析装置(GC/APCI/MS)及び質量分析方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明では、試料ガスを、高効率でイオン化できるイオン−分子反応の場に、直接導き、生じた試料イオンを効率よく質量分析部へ導入する構成を採用して、イオン源に導入される前の試料ガスの希釈による感度劣化を防止し、イオン源の汚染を防止し、高感度分析を可能にする。
本発明の実施例の質量分析装置について、詳細に図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施例)
図1は、本発明の第1の実施例の質量分析装置の構成を示す断面図である。この質量分析装置(GC/APCI/MS)は、GCカラムにより分離された試料分子(試料ガス)をAPCI源でイオン化し、質量分析する高感度な装置である。
【0023】
図1に示すように、第1イオン化部3と第2イオン化部5は、1次イオンが通過する1次イオン導入細孔11が形成された第1の隔壁(引き出し電極4)により隔てられている。試料分子と1次イオンとの反応(以下、「イオン−分子反応」という)により第2イオン化部5の内部で生成する試料ガスの試料イオンが通過する試料イオン移動細孔8が形成された第2の隔壁と第1の隔壁とにより挟まれる領域が、第2イオン化部5である。
【0024】
第1の実施例の質量分析装置は、第1イオン化部3と、第2イオン化部5と、差動排気部17と、質量分析部15とを有する。第1イオン化部3と第2イオン化部5との間は、1次イオン導入細孔11が形成された引き出し電極4により区切られ、第2イオン化部5と差動排気部17との間は、試料イオン移動細孔8が形成された壁により区切られ、差動排気部17と質量分析部15との間は、イオン導入細孔14が形成された壁により区切られている。1次イオン導入細孔11は、第1イオン化部3で生じた1次イオンが移動する細孔であり、試料イオン移動細孔8は、第2イオン化部5で生成された試料イオンが移動する細孔であり、イオン導入細孔14は、試料イオンを質量分析部15に導入する細孔である。試料イオンは、試料イオン移動細孔8、差動排気部17、イオン導入細孔14を通って、質量分析部15に移動する。
【0025】
コロナ放電部である第1イオン化部3には、内部に針電極10が配置され、1次イオン生成用ガス排出配管7が接続されている。1次イオン生成用ガス排出配管7は、針電極10の先端の反対側の位置で、引き出し電極4から遠い位置(針電極10の根元側の位置)で第1イオン化部3に接続される。
【0026】
第2イオン化部5には、ボンベ2から1次イオン生成用ガスを供給する1次イオン生成用ガス導入配管1が接続されている。ボンベ2からの1次イオン生成用ガスは、マスフローコントローラ6で流量が調節され、1次イオン生成用ガス導入配管1により第2イオン化部5に導入される。1次イオン生成用ガスとして、GCカラム9の終端の開口12から第2イオン化部5に導入される試料ガスのイオン化を妨害しないようなガス、例えば、空気、窒素、又は、イオン化効率の低いヘリウム、アルゴン等が好ましい。針電極10に高電圧が印加され、コロナ放電により1次イオン生成用ガスはイオン化され1次イオンが生成される。
【0027】
第2イオン化部5に導入された1次イオン生成用ガス、及び、試料ガスは、1次イオン導入細孔11の中心と試料イオン移動細孔8の中心を結ぶ軸(図1に一点鎖線で示す)に沿って、1次イオン導入細孔11を通って第1イオン化部3へ、及び、試料イオン移動細孔8を通って差動排気部17へと流れていく。また、1次イオンは、図1に一点鎖線で示す軸に沿って、第2イオン化部5へと流れていく。従って、イオン−分子反応が進行するイオン−分子反応の場は、1次イオンと試料分子が共存して滞在する、図1に一点鎖線で示す軸の近傍の領域である。
【0028】
第2イオン化部5に導入する1次イオン生成用ガスの流量は、1次イオン生成用ガス排出配管7から排出されるガスの流量と、試料イオン移動細孔8から差動排気部17へ流出するガスの流量との和から、GCカラム9の終端の開口12から第2イオン化部5に導入される試料ガスの流量を差し引いたものである。1次イオン生成用ガスの流量の調整は、1次イオン生成用ガス導入配管1に配置したマスフローコントローラ6、又は、1次イオン生成用ガス排出配管7に配置する(図示せず)マスフローコントローラにより行う。
【0029】
サンプル(混合試料)は、キャリアガス13とともにGCカラムの一端(入口)に導入され、分離される。GCカラム9の入口に液体サンプルをインジェクションするか、固体吸着された成分の熱脱離によるガスがGCカラム9に導入される。GCカラム9に流すキャリアガス13は、不活性ガスである、ヘリウム、窒素等が好ましい。キャリアガス13の流量は、マスフローコントローラ又は圧力コントローラ(図示せず)で一定になるようにコントロールするのが良い。
【0030】
GCカラム9の終端の開口(他端)12の中心は、図1に一点鎖線で示す軸の近傍に配置される。GCカラム9で分離された試料ガス(GCカラムにより分離された試料ガスは、キャリアガスとともにGCカラムを流れ、完全に分離された単一成分、又は、完全に分離されない複数の成分を含む。)を導入するための、GCカラム9の終端の開口12を、図1に一点鎖線で示す軸の近傍の位置に配置することにより、1次イオン生成用ガスによる試料ガスの希釈の影響を受けないようにし、高感度化を実現する。GCカラム9の終端の開口12の中心を配置する位置の詳細な説明に関しては後述する。
【0031】
イオン−分子反応による試料イオンの生成量を増大させ、高感度を実現するためには、イオン−分子反応の場をできるだけ長い時間確保して、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間を長くさせて、イオン−分子反応が進行する時間を確保する必要がある。このためには、GCカラム9の終端の開口12から第2イオン化部5に導入される試料ガスが、第2イオン化部5の内部で1次イオン生成用ガスにより希釈されないように、図1に一点鎖線で示す軸の近傍の位置に試料ガスの導入を行うことが重要となる。
【0032】
第2イオン化部5には、引き出し電極4により1次イオンが引き出され、GCカラム9の終端の開口12から、図1に一点鎖線で示す軸の近傍の位置に試料ガスが導入され、イオン−分子反応により、試料イオンが生成される。GCカラム9の終端の開口12から導入した試料ガスは、第2イオン化部5内で希釈され、試料イオン移動細孔8、1次イオン導入細孔11から排出される。
GCカラム9の終端の開口12の中心が試料イオン移動細孔8に近づきすぎると、試料ガスの殆ど全量が試料イオン移動細孔8から排出される。この時、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が短くなり、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保できず、試料イオンの生成量が低下し、感度が低下してしまう。
【0033】
また、GCカラム9の終端の開口12の中心が1次イオン導入細孔11に近づきすぎると、試料ガスの殆ど全量が1次イオン導入細孔11から排出される。この時も、上記と同様に、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が短くなり、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保できず、試料イオンの生成量が低下し、感度が低下してしまう。
【0034】
試料イオンの生成量を増大させて、感度を向上させるためには、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間を長くして、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保することが重要である。1次イオン導入細孔11のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とからほぼ等しい距離の位置に、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置することにより、1次イオン導入細孔11と試料イオン移動細孔8とから、GCカラム9の終端の開口12より導入した試料ガスがバランス良く排出されるので、図1に一点鎖線で示す軸の近傍のイオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間を長くでき、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保できる。この結果、試料イオンの生成量が増大して、感度が向上する。試料イオンが生成されるプロセスの詳細については後述する。
【0035】
なお、第1の実施例の構成では、針電極10の先端、1次イオン導入細孔11の中心、試料イオン移動細孔8の中心、イオン導入細孔14の中心は、同一軸上に配置しているが、ずらして配置することも可能である。ずらして配置すると、中性分子が質量分析部15に混入するのを防止でき、中性分子によるノイズを低減できる。
【0036】
第2イオン化部5の内部で、図1に一点鎖線で示す軸の近傍の位置で生成された試料イオンは、試料イオン移動細孔8とイオン導入細孔14との間に印加される電位により、試料イオン移動細孔8を通過し、イオン導入細孔14を通って、図示しない排気系により高真空に排気された質量分析部15へ矢印の方向に導入され、試料イオンの質量分析がなされる。質量分析部15では、質量分析計として、4重極型質量分析計、イオントラップ型質量分析計、イオントラップTOF(飛行時間)型質量分析計、磁場型質量分析計等の質量分析計が、適用可能である。
試料イオン移動細孔8を流れる、1次イオン生成用ガス、及び、試料ガスは、差動排気部17を排気する図示しない排気系により排気される。
【0037】
図1に示す構成において、試料イオン移動細孔8の穴径が0.25mmφ、差動排気部の真空が2Torrとする時、第2イオン化部5は760Torr(大気圧)にあるので、試料イオン移動細孔8を流れるガスの流量は、約350mL/minとなり、1次イオン生成用ガスの導入量が1000mL/minの時、1次イオン導入細孔11から第1イオン化部3に流出するガス流量は約650mL/minとなる。
【0038】
サンプルは、GCカラム9により分離され、分離された試料成分は、順次、GCカラム9の終端の開口12から、キャリアガス13とともに、第2イオン化部5に導入される。分離能の高いキャピラリGCカラムを用いた場合、キャリアガス13の流量は、数mL/minであり、GCカラム9からの試料ガスは、図1に一点鎖線で示す軸の近傍の位置に導入されるので、試料イオンの生成量を増大できる。第2イオン化部5の内部へ流出する試料ガスは、図1に一点鎖線で示す軸に沿って流れ、1次イオン導入細孔11を通過した1次イオン生成用ガスにより充分に希釈されるため、第2イオン化部5の内壁が試料ガスに含まれる夾雑物により汚染されることはない。
【0039】
試料ガスのイオン化のプロセスの概要は、以下の通りである。正のイオン化の場合を例にとり説明する。+4kV程度の高電圧を印加された針電極10と、約+1kVが印加された引き出し電極4との間で、コロナ放電を起こす。例えば、1次イオン生成用ガスに乾燥空気を用いた場合、(化1)、又は、(化2)に示す反応により、1次イオン(NあるいはN)が生成する(非特許文献1を参照)。
【0040】
→N+e …(化1)
+2N→N+N …(化2)
引き出し電極4には、約2mmφの1次イオン導入細孔11が形成されており、生成した1次イオンが電界により第2イオン化部5に導入される。第2イオン化部5では、コロナ放電で生成した1次イオンと、GCカラム9の終端の開口12から導入される試料ガスとのイオン−分子反応により、試料ガスのイオン(2次イオン:試料イオン)が生成される。
【0041】
また、図1に示す第1の実施例の構成は、試料ガスの負イオン化を行う場合に特に有効である。1次イオン生成用ガスに空気を用いて、試料ガスの負イオン化を行う場合には、1次イオン生成用ガスが、針電極10の針先から針電極10の根元側に向かって流れるので、コロナ放電により生じるラジカルNOと1次イオンOの反応を抑制でき、第2イオン化部5に引き出されるOが、GCカラム9の終端の開口12から導入される試料ガスと効率よく反応するので、感度を向上できる。
【0042】
図2は、図1の部分拡大図であり、第2イオン化部5内での、GCカラム9の終端の開口12の中心位置、第2イオン化部5内のガスの流れを説明する図である。
図2に示す構成において、第2イオン化部5の圧力Pが760Torr、差動排気部17の圧力PQ‘が2Torr、試料イオン移動細孔8の、直径がD=0.25mmφ、長さが20mmの時、試料イオン移動細孔8に流入するガス量Qは、約350mL/minとなる。図1、図2に一点鎖線で示す軸の近傍の位置が、コロナ放電により生成した1次イオンの濃度が高い領域であり、この領域に直接試料ガスを注入することにより、高感度化が実現できる。
【0043】
1次イオン導入細孔11の内径(半径)をR、GCカラム9の終端の開口12の中心と、図1、図2に一点鎖線で示す軸との間の距離をrとする時、r≦2Rとする構成が好ましい。また、図1、図2に一点鎖線で示す軸の方向におけるGCカラム9の終端の開口12の中心は、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間を長くでき、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保できる位置に、配置するのが好ましい。
【0044】
GCカラム9の終端の開口12の中心が試料イオン移動細孔8に近づきすぎると、試料ガスの殆ど全量が試料イオン移動細孔8から排出される。この時、イオン化されずに1次イオン導入細孔11から試料ガスが排出されてしまうため、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が短くなり、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保できず、試料イオンの生成量が低下し、感度が低下してしまう。
【0045】
また、GCカラム9の終端の開口12の中心が1次イオン導入細孔11に近づきすぎると、試料ガスの殆ど全量が1次イオン導入細孔11から排出される。この時も、イオン化されずに1次イオン導入細孔11から試料ガスが排出されてしまうため、上記と同様に、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が短くなり、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保できず、試料イオンの生成量が低下し、感度が低下してしまう。
【0046】
つまり、高感度化を実現するためには、第2イオン化部5内において、1次イオン導入細孔11と試料イオン移動細孔8の間で、GCカラム9の終端の開口12より導入した試料ガスが、1次イオン導入細孔11と試料イオン移動細孔8とから、バランス良く排出される位置に、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置することにより、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間を十分長くして、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保して、試料イオンの生成量を増大させて、感度を向上させることができる。
【0047】
GCカラム9の終端の開口12を流れる試料ガスの流量をQ、Qのうち試料イオン移動細孔8を経由して差動排気部17へ排出される流量をQ’とする時、0.02Q≦Q’≦0.95Qを満たすように、図1、図2に一点鎖線で示す軸からの位置、及び、図1、図2に一点鎖線で示す軸の方向での、GCカラム9の終端の開口12の中心位置を調整するのが好ましい。
試料分子と1次イオンとのイオン−分子反応により生成する試料イオンの数は、(数1)により求められる。
【0048】
試料イオンの数=感度係数(A)×衝突断面積(σ)×1次イオン密度(I)×反応時間(T)×試料濃度(ρ)
…(数1)
ここで、GCカラム9の出口の終端の開口12の中心位置の、試料イオン導入細孔8のイオン入口からの距離dを変えた場合、(数1)におけるA、σ、Iは、不変であり、ρも同じサンプル条件で測定した場合は、一定である。反応時間Tについては、以下のように見積もることが出来る。
【0049】
1次イオン生成用ガス導入配管1から導入された1次イオン生成用ガスの導入部近傍の乱れがないものとして、第2イオン化部5の内部の速度分布を考える。また、GCカラム9の出口の終端の開口12から導入した試料ガス流量は、1次イオン生成用ガス導入配管1から導入した1次イオン生成用ガス流量に比べて極めて小さいため、試料ガスを導入したことによる流れ場への影響は無視する。1次イオン導入細孔11のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とを結ぶ軸近傍で、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心から距離dだけ離れた位置での流速ベクトルは、試料イオン移動細孔8から排気されるガス流れによる速度ベクトルV(向きは試料イオン移動細孔8の中心を指す)と、1次イオン導入細孔11から排気されるガス流れによる速度ベクトルV11(向きは試料イオン移動細孔11の中心を指す)の合成和となる。それぞれのベクトルの大きさ(流速)は、(数2)、(数3)となる。
【0050】
=Q/2πd …(数2)
11=Q11/(2π(L−d)) …(数3)
ここで、Q、Q11はそれぞれ、試料イオン移動細孔8、1次イオン導入細孔11から排気されるガス流量を示し、Lは試料イオン移動細孔8の中心と1次イオン導入細孔11の中心との距離を示す。(数2)、(数3)ともに、それぞれの排気口(試料イオン移動細孔8と1次イオン導入細孔11)から離れれば離れるほど、流速が小さくなることを示している。
【0051】
試料イオン移動細孔8の中心から距離d離れた場所にある試料分子が試料イオン移動細孔8に入るまでの時間Tを考える。例えば、試料イオン移動細孔8の近傍で速度ベクトルV11が無視できるほど小さい場合に、つまりdがLに比べて小さい場合には、流速としては、Vのみを考慮すれば良く、GCカラム9の出口の終端の開口12から導入された試料分子が試料イオン移動細孔8に入るまでの時間(反応時間)Tは、(数2)を積分することにより、(数4)となる。
【0052】
=(2πd)/(3Q) …(数4)
同様に、試料分子の位置が1次イオン導入細孔11に近く、dがLに近い場合は、流速としては、V11のみを考慮すればよく、反応時間T11は、(数3)を積分することにより、(数5)となる。
【0053】
11=(2π(L−d))/(3Q11)…(数5)
(数1)で示した試料イオンの数を増加させる、つまり感度を向上させるために、反応時間T又はT11を増加させるような位置に、GCカラム9の出口の終端の開口12を配置するのが良い。
【0054】
図3は、図1、図2に示す第1の実施例の構成において、GCカラム9の終端の開口12の中心位置と、図1、図2に一点鎖線で示す軸との間の距離rを変えた時に検出された、試料イオンによる信号強度(任意単位)の変化(感度変化)の測定結果を示す図である。なお、図3の縦軸における表示では、例えば、2.00E+7は、2.00×10を意味する。図4、図7の縦軸における表示についても同様である。
【0055】
図3の測定条件は、GCカラム9に、濃度1ppmのトリクロロフェノール(TCP)のトルエン溶液を試料として、1μL注入し、キャリアガス流量を5mL/minとし、正イオンをイオントラップ型質量分析計で測定した。図3には、比較のために、同じ試料を同じ条件でGCカラム9に注入し分離を行い、図1に示す、マスフローコントローラ6と第2イオン化部5との間の1次イオン生成用ガス導入配管1に、GCカラム9の終端の開口12を接続し、1次イオン生成用ガス導入配管1に1000mL/minで流された1次イオン生成用ガスに、GCカラム9の終端の開口12から流出する分離された試料ガスを混合して測定された信号強度(任意単位)を、基準感度として示している。
【0056】
基準感度と比較すると、r=1mm、2mm、4mmとした時、感度はそれぞれ、3.2倍、2.2倍、1.3倍向上した結果が得られた。この結果から、rが大きくなる程、即ち、GCカラム9の終端の開口12の中心と、図1、図2に一点鎖線で示す軸との間の距離rが大きくなる程、感度は低下している。図3の結果から、1次イオン導入細孔11の内径(半径R=2mm(2R=4mm))に対して、r≦2R=4mmを満たすr=1mm、2mm、4mmの時に測定された信号強度(任意単位)は、基準感度よりも大きくなっている。r≦2Rであれば、単に、1次イオン生成用ガス導入配管1にGCカラム9の終端の開口12を接続し、1次イオン生成用ガスに、GCカラム9の終端の開口12から流出する分離された試料ガスを混合して測定する場合よりも、高感度化できることが確認された。
【0057】
図4は、図1、図2に示す第1の実施例の構成で、GCカラム9の終端の開口12の中心と、図1、図2に一点鎖線で示す軸との間の距離を一定、r=1mmとして、図1、図2に一点鎖線で示す軸の方向におけるGCカラム9の終端の開口12の中心位置を変化させた時に検出された、試料イオンによる信号強度(任意単位)の変化(感度変化)の測定結果を示す図である。即ち、図4は、図4の横軸に示す、GCカラム9の終端の開口12の中心位置の、試料イオン導入細孔8のイオン入口からの距離d(図2を参照)を、変化させた時に検出された、試料イオンによる信号強度の変化を示している。測定条件は、図3の結果を得た時と同じである。
【0058】
1次イオン生成用ガス導入配管1に流量1000mL/minの1次イオン生成用ガスを流し、流量350mL/minの1次イオン生成用ガスが試料イオン導入細孔8から排気され、流量650mL/minの1次イオン生成用ガスが1次イオン導入細孔11から排気されている。
図4に示す点Aは、GCカラム9の終端の開口12の中心位置を試料イオン移動細孔8の極近傍に配置し、d=0.5mmとした時に検出された、試料イオンによる信号強度(任意単位)を示している。d=0.5mmとした時には、GCカラム9の終端の開口12から流出する試料ガスのほぼ全量が試料イオン移動細孔8に導入される。
【0059】
図4に示す点Bは、1次イオン導入細孔11のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とからほぼ等しい距離の中間の位置に、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置し、d=3mmとした時に検出された、試料イオンによる信号強度(任意単位)を示している。d=3mmとした時には、GCカラム9の終端の開口12を流れる試料ガスの流量のほぼ半分の流量が、試料イオン導入細孔8から排気され、残りの試料ガスの流量が、1次イオン導入細孔11から排気される。
【0060】
図4に示す点Cは、GCカラム9の終端の開口12の中心を、第1イオン化部3内で1次イオン導入細孔11と針電極10の先端部の中心の位置との間の、第1イオン化部3内の位置に配置し、d=9mmとした時に検出された、試料イオンによる信号強度(任意単位)を示している。d=9mmとした時には、GCカラム9の終端の開口12を流れる試料ガスの流量のほぼ全量が、1次イオン生成用ガス排出配管7から排気される。基準感度と比較すると、図4に示す点Bでの感度は3.2倍向上した結果が得られ、点Aでの感度は0.7倍、点Cでの感度は0.1倍以下であり、基準感度よりも低かった。この結果から、1次イオン導入細孔11のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とからほぼ等しい距離の中間の位置に、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置した時に、基準感度と比較して優位な感度が得られることが確認できた。
(数1)において、A’=A×σ×I×ρ×(信号強度)/(試料イオンの数)とおくと、(数6)となる。
【0061】
(信号強度)=A’×反応時間(T) …(数6)
ここで、図4に示す点Aは、試料イオン移動細孔8に近く、(数7)と見なせることができる。
【0062】
T≒T=(2πd)/(3Q) …(数7)
点A(d=0.5mm、Q=350mL/min、信号強度=4E+6)の条件を代入すると、A’=8.0E+9となる。点A(d=0.5mm)における感度が基準感度の0.7倍であるから、基準感度と等しい感度を得られる位置は、(数6)(数7)からd=0.6mmが得られる。
同様に、1次イオン導入細孔11に近い位置で基準感度と等しい感度を得られる位置は、(数6)において、(数8)とみなせて、L=6mm、Q11=650ml/min、A=8.0E+9を代入して、d=5.4mmを得ることができる。
【0063】
T≒T11=(2π(L−d))/(3Q11)…(数8)
図4に示す点Bにおいては、GCカラム9の出口の終端の開口12から導入した試料ガスは、ほぼ半分ずつ1次イオン導入細孔11と試料イオン移動細孔8から排気されるので、反応時間については、TとT11の平均値とみなせる。(数6)、(数7)、(数8)にd=3mmを代入すると、信号強度=1E+9となり、図4に示した実験値と合わないが、点Bでは、反応が十分進行し、飽和しているものと見なせる。
【0064】
以上の結果から、距離dと信号強度の関係を、図4に点線で記す。0.9mm≦d≦5.1mmの範囲では、反応が飽和しているため、それ以上信号強度が上昇しない状態となっている。
GCカラム9の出口の終端の開口12の位置を、d=0.9mmに配置したの時の、速度ベクトルV及びV11から得られる流速比は、V:V11≒18:1である。GCカラム9の出口の終端の開口12から導入した試料ガス流量Qが、この流速比に従って分配され、試料イオン移動細孔8及び次イオン導入細孔11から排気されるとすると、試料イオン移動細孔から排出される流量Q’は、Q’≒0.95Qとなる。同様に、d=5.1mmに配置したときのQ’は、Q’≒0.02Qとなる。
【0065】
以上を纏めると、GCカラム9の出口の終端の開口12から導入した試料ガスの流量をQとすると、試料ガスQの内、試料イオン移動細孔8から排出される流量Q’は、0.02Q≦Q’≦0.95Qを満たす位置にGCカラム9の出口の終端12を配置するのが好ましい。
【0066】
とくに、衝突断面積が小さく、飽和に達するまでの反応時間が長い試料成分をイオン化する場合には、Q’が約0.5Qとなるように調整する。1次イオン導入細孔11のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とからほぼ等しい中間の位置、正確には(数2)と(数3)から得られる流速VとV11がほぼ等しくなる位置に、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置すると、Q'=0.5Qが満たされる。このような場合(数4)又は(数5)から得られる反応時間T又はT11が十分長くなるので、イオン−、分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する反応時間を十分長くでき、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保でき、試料イオンの生成量を増大でき、感度を向上できる。なお実質的に、0.4Q≦Q’≦0.6Qを満たせば、同等の効果が可能である。
【0067】
即ち、1次イオン導入細孔11のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とからほぼ等しい中間の位置に、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置すると、Q’≒0.5Qが満たされる。Q’≒0.5Qが満たされる場合には、GCカラム9の終端の開口12より導入した試料ガスが、1次イオン導入細孔11と試料イオン移動細孔8とから、バランス良く排出されるので、イオン−分子反応の場に、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間を十分長くでき、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保でき、試料イオンの生成量を増大でき、感度を向上できる。
【0068】
(第2の実施例)
図5は、本発明の第2の実施例の質量分析装置の構成を示す断面図である。第2の実施例の構成は、試料ガスの正イオン化を行う場合に有効である。
【0069】
第2の実施例では、GCカラム9の終端の開口12から導入した試料ガスを、コロナ放電部(図2の点線で示される領域)に導入する。イオン化部18の内部に針電極10が配置され、針電極10の先端の反対側の位置で、イオン化部18に、試料イオン移動細孔8から遠い位置(針電極10の根元側の位置)で1次イオン生成用ガス導入配管1が接続されている。ボンベ2からの1次イオン生成用ガスは、マスフローコントローラ6で流量が調節され、1次イオン生成用ガス導入配管1によりイオン化部18に導入される。
【0070】
第2の実施例では、GCカラム9の終端の開口12の中心を、GCカラム9の終端の開口12からの試料ガスがコロナ放電部に導入されるような位置に配置する。この時、GCカラム9の終端の開口12がコロナ放電部内に配置されると、安定なコロナ放電が起きない、または、生成した試料イオンがGCカラム9の終端の開口12に付着して感度が低下するなどの影響があるので、GCカラム9の終端の開口12の中心を、x≧aを満たす位置であり、針電極10の先端部の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心との間の位置に配置するのが好ましい。ここで、aは、針電極10の先端部の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心との間の距離であり、xは、針電極10の先端部の中心と、GCカラム9の終端の開口12の中心との間の距離である。
【0071】
第2の実施例では、1次イオン生成用ガス、及び、試料ガスは、試料イオン移動細孔8のみから排出されるので、1次イオン生成用ガスの全量、及び、GCカラム9の終端の開口12から導入された試料ガスの全量が、試料イオン移動細孔8から差動排気部17へと排出される。従って、1次イオン生成用ガス、及び、試料ガスのイオン化部18への導入量の和が、試料イオン移動細孔8から排出されるガス量に等しくなる。イオン移動細孔8以外の排気口よりイオン化部18から試料ガスが排出されないので、試料分子が1次イオンと反応せずに排気される量が少なくなり、感度を高くできる。
【0072】
試料イオン移動細孔8を通るガス流量を350mL/min、GCカラム9の終端の開口12から導入される試料ガス流量を4mL/minとし、1次イオン生成用ガスの導入量と試料ガスの導入量の和の100%が試料イオン移動細孔8から排出されるとすると、1次イオン生成用ガスの導入量は346mL/minとなり、イオン化部18内での試料ガスの希釈率は、図1の構成よりも低くなるため、夾雑物によるイオン源の汚れが少ない場合に有効である。
【0073】
夾雑物によるイオン化部18の内部の汚れを少なくするために、1次イオン生成用ガスの流量を増やして、コロナ放電部の近傍の試料ガスを希釈するのが良いが、イオン化部18の内部の圧力を大気圧に保って測定するには、増やした1次イオン生成用ガスの流量の分だけ、イオン化部18から1次イオン生成用ガスと試料ガスの混合ガスを、試料イオン移動細孔8とは別の排気口から排気する必要がある。この排気口は、混合ガスを排気するために、イオン化部18のコロナ放電部の近く、試料イオン移動細孔8の近傍、例えば、針電極10に垂直な方向の、試料イオン移動細孔8が形成される隔壁に直交する、イオン化部18の壁に設けるのが良い。しかし、1次イオン生成用ガス流量を増やした場合は、試料ガスが1次イオン生成用ガスで希釈される割合が増えるので、感度が低下する。
【0074】
従って、イオン化部18に、試料イオン移動細孔8とは別の排気口(図示せず)を設けた場合には、1次イオン生成用ガスの導入量と試料ガスの導入量の和の80%以上が、試料イオン移動細孔8から排出されるようにするのが好ましい。
このような条件下では、1次イオンと試料ガス(分子)が効率的に反応を起こす、針電極10の先端部と試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とを結ぶ軸近傍に沿って流れる試料ガスの割合が、イオン化部18に導入した全量の80%以上を占めることになり、イオン化部18に導入した全量を、針電極10の先端部と試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とを結ぶ軸近傍に沿って流した場合と比較して、80%〜100%の感度を維持して測定することができる。
【0075】
なお、第2の実施例の構成では、針電極10の先端、試料イオン移動細孔8の中心、イオン導入細孔14の中心は、同一軸上に配置しているが、ずらして配置することも可能である。ずらして配置すると、中性分子が質量分析部15に混入するのを防止でき、中性分子によるノイズを低減できる。何れの場合も、生成された試料イオンは、試料イオン移動細孔8、イオン導入細孔14を通して、質量分析部15に導かれる。
【0076】
(第3の実施例)
図6は、本発明の第3の実施例の質量分析装置の構成を示す断面図である。第3の実施例の構成は、イオン化反応における反応速度定数の小さい試料成分の正イオン化を行う場合に特に有効である。
第3の実施例と第1の実施例との相違点は、GCカラム9の終端の開口12の中心を配置する位置と、1次イオン生成用ガスの導入配管1を配置する位置と、1次イオン生成用ガス排出配管7の代りにイオン通過細孔20からガスを排する点にあり、第3の実施例では、第2の実施例と同様に、GCカラム9の終端の開口12から導入した試料ガスを、コロナ放電部(図6の点線で示される領域)に導入する点にある。
【0077】
内部に針電極10が配置されるイオン化部18’は、イオン通過細孔20が形成される引き出し電極4を介して、イオン移動空間(1次イオン生成用ガスが導入される領域)19に結合されている。イオン移動空間19は、試料イオン移動細孔8が形成される隔壁を介して、差動排気部17に結合されている。ボンベ2からの1次イオン生成用ガスは、マスフローコントローラ6で流量が調節され、1次イオン生成用ガス導入配管1により、針電極10の先端の反対側の位置で、イオン通過細孔20から遠い位置(針電極10の根元側の位置)から、イオン化部18’に導入される。イオン化部18’に導入された1次イオン生成用ガスは、試料ガス、1次イオン、及び、イオン化部18’で生成された試料イオンと共に、イオン通過細孔20通して、イオン移動空間19に導入され、差動排気部17から排出される。
【0078】
第3の実施例では、GCカラム9の終端の開口12の中心を、GCカラム9の終端の開口12からの試料ガスがコロナ放電部に導入されるような位置に配置する。この時、GCカラム9の終端の開口12がコロナ放電部内に配置されると、安定なコロナ放電が起きない、または、生成した試料イオンがGCカラム9の終端の開口12に付着して感度が低下するなどの影響があるので、GCカラム9の終端の開口12の中心を、x≧aを満たす位置であり、針電極10の先端部の中心と、イオン通過細孔20のイオン入口の中心との間の位置に配置するのが好ましい。ここで、aは、針電極10の先端部の中心と、イオン通過細孔20のイオン入口の中心との間の距離であり、xは、針電極10の先端部の中心と、GCカラム9の終端の開口12の中心との間の距離である。
【0079】
1次イオンと試料分子が共存する滞在時間をより長く確保するために、z≧aを満たすことが好ましい。ここで、aは、針電極10の先端部の中心と、イオン通過細孔20のイオン入口の中心との間の距離であり、zは、イオン通過細孔20のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心との間の距離である。
【0080】
コロナ放電部に導入された試料ガスは、イオン通過細孔20を通り、イオン移動空間19に導入される。コロナ放電によりコロナ放電部に生成した1次イオンと試料分子とのイオン−分子反応により、試料イオンが生成されると共に、イオン移動空間19において、イオン通過細孔20を通過した、1次イオンと試料ガスとのイオン−分子反応により、試料イオンが生成される。この結果、イオン−分子反応の場である、コロナ放電部及びイオン移動空間19の双方において、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が確保でき、イオン−分子反応が進行する十分な時間を確保でき、試料イオンの生成量を増大でき、感度を向上できる。
【0081】
第3の実施例では、第2の実施例と同様に、イオン化部18’又はイオン移動空間19に、1次イオン生成用ガス排出配管7とは、別の排気口(図示せず)を設けた場合にも、1次イオン生成用ガスの導入量と試料ガスの導入量の和の80%以上が、試料イオン移動細孔8から排出されるようにするのが好ましい。
第2の実施例と同様に、このような条件下では、1次イオンと試料ガス(分子)が効率的に反応を起こす、針電極10の先端部と試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とを結ぶ軸近傍に沿って流れる試料ガスの割合が、イオン化部18に導入した全量の80%以上を占めることになり、イオン化部18に導入した全量を、針電極10の先端部と試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心とを結ぶ軸近傍に沿って流した場合と比較して、80%〜100%の感度を維持して測定することができる。
【0082】
図5に示す第2の実施例では、試料ガスが、コロナ放電部から直接試料イオン移動細孔8へ排出されるため、イオン化反応における反応速度定数の小さな試料をイオン化する場合、イオン−分子反応の場であるコロナ放電部において、1次イオンと試料分子が共存する滞在時間が十分確保できず、イオン−分子反応が十分に進行する時間を確保できず、試料イオンの生成量を増大できない。この場合には、イオン移動空間19を設ける第3の実施例の方が、第2の実施例よりも高感度に分析できる。
【0083】
なお、第3の実施例の構成では、針電極10の先端、イオン通過細孔20の中心、試料イオン移動細孔8の中心、イオン導入細孔14の中心は、同一軸上に配置しているが、ずらして配置することも可能である。ずらして配置すると、中性分子が質量分析部15に混入するのを防止でき、中性分子によるノイズを低減できる。何れの場合も、生成された試料イオンは、イオン通過細孔20、試料イオン移動細孔8、イオン導入細孔14を通して、質量分析部15に導かれる。
【0084】
図7は、図6に示す第3の実施例の構成で、GCカラム9の終端の開口12の中心と、針電極10の先端部の中心との間の距離xを変化させた時に検出された、試料イオンによる信号強度(任意単位)の変化(感度変化)の測定結果を示す図である。測定条件は、図3の結果を得た時と同じである。
【0085】
針電極10の先端部の中心と、イオン通過細孔20のイオン入口の中心との間の距離aは、a=3.5mmであり、イオン通過細孔20のイオン出口の中心と、試料イオン移動細孔8のイオン入口の中心との間の距離zは、z=6mmであり、z≧aを満たしている。1次イオン生成用ガス導入配管1に流量約350mL/minの1次イオン生成用ガスを流しており、1次イオン生成用ガスの全量、及び、GCカラム9の終端の開口12からの試料ガスの全量が、イオン通過細孔20を通して、試料イオン移動細孔8を介して、差動排気部17から排出されている。
【0086】
基準感度と比較すると、x≦aである、x=2mmの時の感度は、基準感度の0.7倍であり基準感度よりも低いが、x≧aである、x=4mmの時の感度は、基準感度の3倍である。
なお、第1の実施例、第2の実施例、第3の実施例において、サンプル(混合試料)がキャリアガス13とともに導入されるGCカラムの一端(入口)と反対側の他端の出口を、試料ガス配管の一端に結合して、この試料ガス配管の他端の出口を、GCカラム9の終端の開口12に代えても良い。
【0087】
即ち、図1、図2に示す第1の実施例において、GCカラムの他端と第2イオン化部5とを試料ガス配管で結び、図1、図2に示すGCカラム9の終端の開口12の中心位置に、試料ガス配管の他端の出口を配置し、図5に示す第2の実施例、図6に示す第3の実施例においてそれぞれ、GCカラムの他端とイオン化部18、18’とを試料ガス配管で結び、図5、図6に示すGCカラム9の終端の開口12の中心位置に、試料ガス配管の他端の出口を配置する構成としても良い。また、これらの構成において、試料ガス配管の内径はGCカラムの内径と同一としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
混合試料をGCにより分離し、分離された試料ガスを、汚染を生じにくい構造のAPCI源を用いてイオン化して、1次イオン生成用ガスによる試料ガスの希釈の影響を受けずに、広い応用分野の混合試料に適用できる高感度分析が可能な質量分析装置(GC/APCI/MS)及び質量分析方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施例の質量分析装置の構成を示す断面図。
【図2】図1の部分拡大図であり、GCカラム9の終端の開口12の中心の第2イオン化部5内での配置、第2イオン化部5内のガスの流れを説明する図。
【図3】第1の実施例の構成において、GCカラム9の終端の開口12の中心と、図1、図2に一点鎖線で示す軸との間の距離rを変えた時に検出された、試料イオンによる信号強度の変化の測定結果を示す図。
【図4】第1の実施例の構成において、GCカラム9の終端の開口12の中心と、図1、図2に一点鎖線で示す軸との間の距離を一定にして、図1、図2に一点鎖線で示す軸の方向におけるGCカラム9の終端の開口12の中心位置を変化させた時に検出された、試料イオンによる信号強度の変化の測定結果を示す図。
【図5】本発明の第2の実施例の質量分析装置の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施例の質量分析装置の構成を示す断面図。
【図7】第3の実施例の構成において、GCカラム9の終端の開口12の中心と、針電極10の先端部の中心との間の距離を変化させた時に検出された、試料イオンによる信号強度の変化の測定結果を示す図。
【符号の説明】
【0090】
1…1次イオン生成用ガス導入配管、2…ボンベ、3…第1イオン化部、4…引き出し電極、5…第2イオン化部、6…マスフローコントローラ、7…1次イオン生成用ガス排出配管、8…試料イオン移動細孔、9…GCカラム、10…針電極、11…1次イオン導入細孔、12…GCカラム9の終端の開口、13…キャリアガス、14…試料イオン導入細孔、15…質量分析部、17…差動排気部、18、18’…イオン化部、19…イオン移動空間、20…イオン通過細孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)コロナ放電のための電圧が印加される針電極、及び、1次イオン生成用ガスの排出開口を具備し、前記針電極の放電により前記1次イオン生成用ガスから1次イオンを生成する第1イオン化部と、(a2)前記1次イオンが通過する1次イオン導入細孔と、(a3)前記1次イオン生成用ガスの導入開口とを具備し、前記1次イオン導入細孔から導入された前記1次イオンと、ガスクロマトグラフィーのカラムの終端から導入された試料ガスとの反応により、前記試料ガスの試料イオンを生成し、前記カラムの終端が内部に配置される第2イオン化部とを、具備する大気圧化学イオン源と、(b)前記試料イオンが移動する試料イオン移動細孔と、(c)前記試料イオンの質量分析を行う質量分析部とを有し、前記排出開口が前記針電極の先端と逆の側の部位に配置され、前記第2イオン化部に導入された前記1次イオン生成用ガスが、前記1次イオン導入細孔を通り、前記針電極の先端から前記排出開口に流され、前記1次イオン導入細孔の内径の半径をR、前記1次イオン導入細孔の中心と前記試料ガス移動細孔の中心とを結ぶ軸と、前記カラムの終端との距離をrとする時、r≦2Rを満たす位置に、前記カラムの終端が配置されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記カラムの終端での前記試料ガスの流量をQ、前記第2イオン化部に導入された試料ガスの、前記試料イオン移動細孔から排出される流量をQ’とする時、0.02Q≦Q’≦0.95Qを満たすことを特徴とする質量分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記カラムの終端での前記試料ガスの流量をQ、前記第2イオン化部に導入された試料ガスの、前記試料イオン移動細孔から排出される流量をQ’とする時、0.4Q≦Q’≦0.6Qを満たすことを特徴とする質量分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料イオン移動細孔を移動した前記試料イオンが、差動排気部を経由して前記質量分析部に導入されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記カラムの終端に接続される試料ガス配管を有し、前記第2イオン化部の内部に配置される前記カラムの終端に代えて、前記試料ガス配管の終端を前記第2イオン化部の内部に配置することを特徴とする質量分析装置。
【請求項6】
(a)コロナ放電のための電圧が印加される針電極、及び、1次イオン生成用ガスの導入開口を具備し、前記針電極の放電により前記1次イオン生成用ガスから1次イオンを生成し、ガスクロマトグラフィーのカラムの終端が内部に配置され、前記カラムの終端から導入された試料ガスと前記1次イオンとの反応により、前記試料ガスの試料イオンを生成するイオン化部とを、具備する大気圧化学イオン源と、(b)前記試料イオンが移動する試料イオン移動細孔と、(c)前記試料イオンの質量分析を行う質量分析部とを有し、前記カラムの終端が、前記針電極の先端部と前記試料イオン移動細孔との間に配置されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の質量分析装置において、前記針電極の先端部の中心と、前記試料イオン移動細孔のイオン入口の中心との間の距離をa、前記針電極の先端部の中心と、前記カラムの終端の開口の中心との間の距離をxとする時、x≧aを満たす位置に、前記カラムの終端が配置されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
請求項6に記載の質量分析装置において、前記カラムの終端に接続される試料ガス配管を有し、前記カラムの終端に代えて、前記試料ガス配管の終端を前記大気圧化学イオン源の内部に配置することを特徴とする質量分析装置。
【請求項9】
請求項6に記載の質量分析装置において、前記試料イオン移動細孔を移動した前記試料イオンが、差動排気部を経由して前記質量分析部に導入されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項10】
(a1)コロナ放電のための電圧が印加される針電極、及び、1次イオン生成用ガスの導入開口を具備し、前記針電極の放電により前記1次イオン生成用ガスから1次イオンを生成し、ガスクロマトグラフィーのカラムの終端が内部に配置され、前記カラムの終端から導入された試料ガスと前記1次イオンとの反応により、前記試料ガスの試料イオンを生成するイオン化部と、(a2)前記試料イオン、前記1次イオン、前記1次イオン生成用ガス、前記試料ガスとが通過するイオン通過細孔と、(a3)前記イオン通過細孔を通して、前記試料イオン、前記1次イオン、前記1次イオン生成用ガス、前記試料ガスとが導入される領域とを、具備する大気圧化学イオン源と、(b)前記試料イオンが移動する試料イオン移動細孔と、(c)前記試料イオンの質量分析を行う質量分析部とを有し、前記カラムの終端が、前記針電極の先端部と前記イオン通過細孔との間に配置されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項11】
請求項10に記載の質量分析装置において、前記針電極の先端部の中心と、前記イオン通過細孔のイオン入口の中心との間の距離をa、前記針電極の先端部の中心と、前記カラムの終端の開口の中心との間の距離をxとする時、x≧aを満たす位置に、前記カラムの終端が配置されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項12】
請求項10に記載の質量分析装置において、前記試料イオン移動細孔を移動した前記試料イオンが、差動排気部を経由して前記質量分析部に導入されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項13】
請求項10に記載の質量分析装置において、前記カラムの終端に接続される試料ガス配管を有し、前記カラムの終端に代えて、前記試料ガス配管の終端を前記イオン化部の内部に配置することを特徴とする質量分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−86002(P2006−86002A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269112(P2004−269112)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】