説明

赤外光リフレクタならびに赤外光リフレクタを備えた二輪車およびヘルメット

【課題】車両に設置する場合でも、その設置箇所に関する制約が少ない赤外光リフレクタを提供する。
【解決手段】 赤外光リフレクタ10,11,12は、可視光および赤外光を反射する一般的な光リフレクタ100の表面に、可視光成分は遮蔽して赤外光は透過させる可視光カットフィルタ200を接着固定して構成される。光リフレクタ100は、支持板101と、この支持板101の主面に固定された光反射板102と、この光反射板102の主面に固定されたマイクロプリズム103とを主要な構成としている。可視光カットフィルタ200は、一般的にはスモーク材と呼ばれる灰色系や黒色系の可視光カットフィルタ材を塗布またはテープ状の可視光カットフィルタを接着して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光リフレクタ、ならびにこの赤外光リフレクタを備えた二輪車およびヘルメットに係り、特に、可視光を遮蔽して赤外光のみを選択的に透過させる可視光カットフィルタと光リフレクタとを組み合わせて構成される赤外光リフレクタならびにこの赤外光リフレクタを備えた二輪車およびヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
道路交通の様々な問題を解決する目的で高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)が研究されている。このITSでは、昼夜を問わず、また天候に左右されずに安定的な検出が可能な赤外光を利用して車両を認識するシステムの開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、環状交差点内の車両を検出する赤外線センサと、道路から環状交差点内に進入する車両を検出する赤外線センサとを設置し、それら赤外線センサが車両を検出したとき、これを表示するための表示装置を備えた掲示板を各道路から見得る所に設置し、また、赤外線センサが車両を検出したことを車両の車載装置に送信して車両の表示装置を表示する技術が開示されている。特許文献2には、対象物体に赤外線を投光し、その反射光に基づいて対象物体までの距離を求める技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−301884号公報
【特許文献2】特開2005−77130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
夜間、赤外線カメラに対して車両等の物体を認識させるためには、物体に赤外光源を搭載して、自ら赤外光を能動的に発光させるか、あるいは赤外線ライトから照射された赤外光を受動的に反射させる必要がある。ここで、赤外光を能動的に発光させるためには、赤外光源を駆動するための電源や配線の引き回し等が必要となる。
【0005】
これに対して、赤外光を受動的に反射させるための光リフレクタには電源が不要であるものの、従来の光リフレクタは赤外光のみならず可視光も同様に反射してしまうので、車両前部のように、道路運送車両の保安基準等で反射板の設置が制限されている部位には設置できない。
【0006】
さらに、光リフレクタは、その設置位置(配置)、形状、面積、反射光量(強度)に関して設計の自由度が高く、これらを工夫して特徴を持たせることにより、例えば光リフレクタの装着車両が四輪車および二輪車のいずれであるか等の識別力を付与できるので、この点でも利用価値が高い。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、車両に設置する場合でも、その設置箇所に関する制約が少ない赤外光リフレクタならびに赤外光リフレクタを備えた二輪車およびヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を含むことを特徴とする。
【0009】
(1)請求項1の車両用赤外光リフレクタは、少なくとも可視光および赤外光を反射する光リフレクタと、前記光リフレクタの表面に配置され、可視光を遮蔽して赤外光を透過させる可視光カットフィルタとを含むことを特徴とする。
【0010】
(2)請求項2の車両用赤外光リフレクタは、テープ状の可視光カットフィルタを光リフレクタの表面に接着して構成されたことを特徴とする。
【0011】
(3)請求項3の二輪車は、赤外光リフレクタが車両の前面および両側面の少なくとも一方に装着され、前記赤外光リフレクタが、少なくとも可視光および赤外光を反射する光リフレクタと、前記光リフレクタの表面に配置された可視光カットフィルタとを含むことを特徴とする。
【0012】
(4)請求項4の二輪車は、その赤外光リフレクタが左右のサイドミラーの前部に装備されたことを特徴とする。
【0013】
(5)請求項5の二輪車は、その赤外光リフレクタがフロントフェンダーの前部に装備されたことを特徴とする。
【0014】
(6)請求項6の二輪車は、赤外光リフレクタが、テープ状の可視光カットフィルタを光リフレクタの表面に接着して構成されたことを特徴とする。
【0015】
(7)請求項7のヘルメットは、赤外光リフレクタが前部および上部の少なくとも一方に装着され、前記赤外光リフレクタが、少なくとも可視光および赤外光を反射する光リフレクタと、前記光リフレクタの表面に配置された可視光カットフィルタとを含むことを特徴とする。
【0016】
(8)請求項8のヘルメットは、その赤外光リフレクタが、テープ状の可視光カットフィルタを光リフレクタの表面に接着して構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0018】
(1)請求項1の車両用赤外光リフレクタは、光リフレクタの表面に可視光カットフィルタを配置することで構成できるので、赤外光のみならず可視光も反射する一般的な光リフレクタを利用して赤外光リフレクタを簡単に構成できるようになる。
【0019】
また、車両用赤外光リフレクタは、可視光をカットする光学フィルタが、一般的にはスモーク材と呼ばれる灰色系や黒色系の可視光カットフィルタ材を用いて構成されるので、リフレクタ表面の色彩を灰色系や黒色系にできる。
【0020】
(2)請求項2の車両用赤外光リフレクタによれば、テープ状の可視光カットフィルタを光リフレクタの表面に接着するだけで車両用赤外光リフレクタを構成できるようになる。
【0021】
(3)請求項3の二輪車は、赤外光リフレクタを車両の前面および両側面の少なくとも一方に装着したので、ヘッドライトが点灯されていない場合でも車両前面の赤外光リフレクタからの反射光を赤外線カメラに検知させることができる。また、車載型赤外線照射暗視カメラを搭載した車両に対して車両側面を認識させることができる。
【0022】
(4)請求項4、5の二輪車は、赤外光リフレクタを左右のサイドミラーの前部やフロントフェンダーの前部に装着したので、既存のデッドスペースに赤外光リフレクタを装着できる。
【0023】
(5)請求項6の二輪車によれば、テープ状の可視光カットフィルタを光リフレクタの表面に接着するだけで赤外光リフレクタを構成できるようになる。
【0024】
(6)請求項7のヘルメットは、赤外光リフレクタを前部や上部に装着したので、赤外光リフレクタが装着されていない車両に乗車した場合でも、自身を赤外線センサに検知させることができる。
【0025】
(7)請求項8のヘルメットによれば、テープ状の可視光カットフィルタを光リフレクタの表面に接着するだけで赤外光リフレクタを構成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の車両用赤外光リフレクタが装備される二輪車の右側面図、図2は、その正面図であり、ここでは、車体フレームをフロントカウル2、ロアカウル3、リヤカウル4で覆ってなるスクータ型二輪車1を例にして説明する。
【0027】
車体の前部には前輪WFが設けられ、前輪WFを支持するフロントフォーク6は、ステアリングシャフト(図示せず)を介してステアリングハンドル5に連結されている。車体の後部には駆動輪である後輪WRが設けられている。前記ステアリングハンドル5には左右一対のサイドミラー6L,6Rが装着されている。運転者席7aおよび同乗者席7bが一体に形成された乗員シート7の後方からは、上方を指向してアンテナ8が立設されている。
【0028】
前記フロントカウル2には、車両の斜め前方の上方から照射された赤外光を反射させる左右一対の赤外光リフレクタ10L,10Rが装着されている。前記サイドミラー6L,6Rの正面にも、それぞれ赤外光リフレクタ11L,11Rが装着されている。さらに、リヤカウル4にも、車両の側方から照射された赤外光を反射させる左右一対の赤外光リフレクタ12L,12Rが装着されている。
【0029】
図3は、前記赤外光リフレクタ10,11,12の第1実施形態の構成を示した断面図であり、可視光および赤外光を反射する一般的な光リフレクタ100の表面104に、可視光成分は遮蔽して赤外光は透過させる可視光カットフィルタ200を接着固定して構成されている。
【0030】
前記光リフレクタ100は、支持板101と、この支持板101の主面に固定されたマイクロプリズム(コーナーカットリフレクタ)103とを主要な構成とし、前記マイクロプリズム103は、例えばアクリル材で構成できる。また、前記マイクロプリズム103の反射面(裏面)には、必用に応じて光反射膜102がコーティングされる場合もある。
【0031】
前記可視光カットフィルタ200は、一般的にはスモーク材と呼ばれる灰色系や黒色系の可視光カットフィルタ材を塗布またはテープ状の可視光カットフィルタを接着して構成される。したがって、赤外光リフレクタ10,11,12の表面は視覚的には灰色系や黒色系であり、赤色、橙色、白色の反射板の設置が制限されている箇所、例えば車両前部にも設置できる。
【0032】
なお、前記光リフレクタ100は入射光(赤外光)を再帰反射させるので、各赤外光リフレクタ10,11,12は、その光リフレクタ100の表面が赤外光源を指向する姿勢で車両各部に設置されるようにすることが望ましい。
【0033】
図4は、前記赤外光リフレクタ10,11,12の第2実施形態の構成を示した断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0034】
本実施形態では、可視光および赤外光を反射する光リフレクタ100の表面の前方に、可視光成分は遮断して赤外光を透過させる板状の可視光カットフィルタ板300が距離Δdだけ離間して設置されている。この可視光カットフィルタ板300も灰色系や黒色系である。
【0035】
このように、本実施形態によれば、光リフレクタ100の前部に可視光カットフィルタ材200,300を接着または配置することで赤外光リフレクタを構成できるので、光リフレクタ100の表面の色にかかわらず、赤外光リフレクタの表面の色を灰色系や黒色系にできる。したがって、例えば保安基準等で光リフレクタの設置が禁止されている車両前部にも、赤外光を反射できる光リフレクタを設置できるようになる。
【0036】
図5は、本発明の第3実施形態に係るヘルメットの斜視図、図6は、その側面図であり、ヘルメットの前部、頂部、後部および両側部に、それぞれ赤外光リフレクタ13,14、15,16が装着されている。
【0037】
本実施形態の赤外光リフレクタ13,14、15,16(L,R)は、赤外光および可視光を反射する一般的な反射テープの表面に、可視光は遮蔽して赤外光は透過させるテープ状の赤外線フィルタを貼り付けて構成されている。なお、本実施形態では赤外光リフレクタがヘルメットの前部、頂部、後部および両側部の計5箇所に装着されるものとして説明したが、その一部のみに装着されるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の車両用赤外光リフレクタが装備されるスクータ型二輪車の右側面図である。
【図2】本発明の車両用赤外光リフレクタが装備されるスクータ型二輪車の正面図である。
【図3】本発明に係る赤外光リフレクタの第1実施形態の断面図である。
【図4】本発明に係る赤外光リフレクタの第2実施形態の断面図である。
【図5】本発明に係るヘルメットの斜視図である。
【図6】本発明に係るヘルメットの側面である。
【符号の説明】
【0039】
2…フロントカウル,3…ロアカウル,4…リヤカウル,6…サイドミラー,10〜16…赤外光リフレクタ,100…光リフレクタ,101…支持板,102…光反射膜,103…マイクロプリズム,200,300…可視光カットフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の赤外光リフレクタにおいて、
少なくとも可視光および赤外光を反射する光リフレクタと、
前記光リフレクタの表面に配置され、可視光を遮蔽して赤外光を透過させる可視光カットフィルタとを含むことを特徴とする車両用赤外光リフレクタ。
【請求項2】
前記可視光カットフィルタがテープ状であり、前記光リフレクタの表面に接着されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用赤外光リフレクタ。
【請求項3】
赤外光リフレクタが車両の前面および両側面の少なくとも一方に装備された二輪車において、
前記赤外光リフレクタが、
少なくとも可視光および赤外光を反射する光リフレクタと、
前記光リフレクタの表面に配置され、可視光を遮蔽して赤外光を透過させる可視光カットフィルタとを含むことを特徴とする二輪車。
【請求項4】
前記赤外光リフレクタが左右のサイドミラーの前部に装備されたことを特徴とする請求項3に記載の二輪車。
【請求項5】
前記赤外光リフレクタがフロントフェンダーの前部に装備されたことを特徴とする請求項3または4に記載の二輪車。
【請求項6】
前記可視光カットフィルタがテープ状であり、前記光リフレクタの表面に接着されたことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の二輪車。
【請求項7】
赤外光リフレクタが前部および上部の少なくとも一方に装着されたヘルメットにおいて、
前記赤外光リフレクタが、
少なくとも可視光および赤外光を反射する光リフレクタと、
前記光リフレクタの表面に配置され、可視光を遮蔽して赤外光を透過させる可視光カットフィルタとを含むことを特徴とするヘルメット。
【請求項8】
前記可視光カットフィルタがテープ状であり、前記光リフレクタの表面に接着されたことを特徴とする請求項7に記載のヘルメット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−74294(P2008−74294A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257120(P2006−257120)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】