説明

赤外光反射膜および赤外光反射板

【課題】重合性液晶化合物を含み、遮熱性能に優れ、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい赤外光反射膜および赤外光反射板の提供。
【解決手段】樹脂基材と、液晶化合物層と、粘着材層とをこの順で含み、前記液晶化合物層が水平配向剤と重合性液晶化合物を含み、下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする赤外線反射膜。
式(1) B−A>0N/25mm
式(2) C−A>0N/25mm
(式中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外光反射膜および赤外光反射板に関する。詳しくは、重合性液晶化合物を含む光反射層を有する赤外光反射膜および赤外光反射板であって、主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射膜および赤外光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く、その一つとして住宅及び自動車等の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のある、ガラス及びフィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるのには、太陽光スペクトルの可視光領域または赤外領域のいずれかの太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
【0003】
赤外光反射膜において、コレステリック液晶相を利用する方法が、提案されている。例えば、特許文献1に開示されているように、一方の方向の円偏光の光を1つのコレステリック液晶層をλ/2板の両面に形成することで、700〜1200nm領域の光を選択的に効率よく反射させることができる。
【0004】
一方、赤外光反射膜を建造物及び車両等の窓の遮熱に利用する場合、ガラスへ貼り付けたときの接着性が良好であると同時に、ガラスからの再剥離の際に層間剥離を起こしてガラス側に粘着材が残ったり(糊残り)、反射膜が粘着材ごとガラス側に転写してしまったりしないように、ガラスと粘着材の間で剥離することが求められている。
この問題に対し、化粧硝子板に関する特許文献2には、樹脂基材シートと粘着材層との接着力を、粘着材層と硝子基板間の接着力(3〜30N/25mm)よりも大となるように設計して解決する方法が開示されている。同文献では具体的な手法としてプライマー層の形成などを挙げている。しかしながら、同文献には、光反射板への応用については言及がない。
また、特許文献3には、ガラス板に貼り付ける時の施工性が良く、かつ剥がす必要があるときには糊残りが生じない粘着材層を有し、さらに高透明で、かつ熱線や紫外の光透過を抑え、また飛散防止性能に優れる窓貼り用積層フィルムが開示されている。同文献では、具体的な手法として、用いる粘着材としてアクリル溶剤系粘着材を用いることで、この問題を解決しようとしている。しかしながら、同文献では、赤外線等の熱線を反射するために金属および/または金属化合物層を設ける態様のみを開示しており、重合性液晶化合物を用いた赤外光反射層を形成することについては言及がない。
【0005】
このように、重合性液晶化合物を含む光反射層を有する赤外光反射膜において、糊残りの問題や反射膜の転写の問題はいままで検討されていなかったのが実情であった。また、重合性液晶化合物を含む光反射層を有する赤外光反射膜を構成する各層間の接着力についても検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4109914号公報
【特許文献2】特開2005−138454号公報
【特許文献3】特開2000−96009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、重合性液晶化合物を含み、遮熱性能に優れ、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい赤外光反射膜を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、前記赤外光反射膜をガラス板に貼り付けた赤外線反射板を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、重合性液晶化合物に対して水平配向剤を添加して固定し、各層間の剥離力が特定の関係を満たすように剥離力を制御することで、上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 樹脂基材と、液晶化合物層と、粘着材層とをこの順で含み、前記液晶化合物層が水平配向剤と重合性液晶化合物を含み、下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする赤外線反射膜。
式(1) B−A>0N/25mm
式(2) C−A>0N/25mm
(式(1)および(2)中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)
[2] 下記式(3)および(4)を満たすことを特徴とする[1]に記載の赤外線反射膜。
式(3) B−A≧2N/25mm
式(4) C−A≧2N/25mm
(式(3)および(4)中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)
[3] 前記樹脂基材の前記液晶化合物層と接している側の面、ならびに液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面および前記粘着材層と接している側の面の少なくとも一つの面に表面処理が施されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の赤外線反射膜。
[4] 前記表面処理が、洗浄および易接着層の形成の少なくとも一方であることを特徴とする[3]に記載の赤外線反射膜。
[5] 前記樹脂基材の前記液晶化合物層と接している側の面、および液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面への前記表面処理が、洗浄であることを特徴とする[3]または[4]に記載の赤外線反射膜。
[6] 前記液晶化合物層の前記粘着材層と接している側の面への表面処理が、易接着層の形成を含むことを特徴とする[3]または[4]に記載の赤外線反射膜。
[7] 前記液晶化合物層が、前記樹脂基材と接している側に下塗り層および配向層の少なくとも一方を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[8] 前記液晶化合物層が、前記樹脂基材と接している側の表面から下塗り層、配向層、水平配向剤と重合性液晶化合物を含む層の順に積層されていることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[9] 前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間に第二の粘着材層を含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[10] 前記液晶化合物層が、樹脂基材上に形成された配向層上で液晶化合物を固定して設置された後、第二の樹脂基材に前記第二の粘着材層を介して転写されて得られたことを特徴とする[9]に記載の赤外線反射膜。
[11] 前記液晶化合物層が、赤外光反射層としてコレステリック液晶相を固定してなる層を含むことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[12] 前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることを特徴とする[11]に記載の赤外線反射膜。
[13] 前記水平配向剤がフッ素原子を含むことを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[14] 前記水平配向剤の添加量が、前記重合性液晶化合物に対して0.01〜10質量%であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[15] ガラス窓貼付用であることを特徴とする[1]〜[14]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
[16] [1]〜[15]のいずれか一項に記載の赤外線反射膜と、該赤外線反射膜の前記粘着材層上に積層されたガラスを含むことを特徴とする赤外線反射板。
[17] 下記式(5)を満たすことを特徴とする[16]に記載の赤外線反射板。
式(5) A≧4N/25mm
(式中、Aは前記ガラスと前記粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合性液晶化合物を含み、遮熱性能に優れ、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい赤外光反射膜を提供することができる。また、前記赤外光反射膜をガラス板に貼り付けた赤外線反射板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の赤外光反射膜の一例の断面を表した模式図である。
【図2】本発明の赤外光反射膜の一例の断面を表した模式図である。
【図3】本発明の赤外光反射膜の一例の断面を表した模式図である。
【図4】本発明の赤外光反射膜の一例の断面を表した模式図である。
【図5】本発明の赤外光反射板の一例の断面を表した模式図である。
【図6】本発明の赤外光反射板の一例の断面を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[赤外光反射膜]
本発明の赤外線反射膜は、赤外線反射膜樹脂基材と、液晶化合物層と、粘着材層とをこの順で含み、前記液晶化合物層が水平配向剤と重合性液晶化合物を含み、下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
式(1) B−A>0N/25mm
式(2) C−A>0N/25mm
(式(1)および(2)中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)
【0014】
<構成>
以下、図面を用いて、本発明の赤外光反射膜の実施形態について説明する。
図1に示す赤外光反射膜1は、樹脂基材11の一方の表面に、液晶化合物層(CL層)12を有する。さらに、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層の最外層上に、粘着材層13を有する。
本発明の赤外線反射膜は、前記液晶化合物層が、赤外光反射層としてコレステリック液晶相を固定してなる光反射層14a及び14bを含むことが好ましい。ただし、本発明においては、光反射層14a及び14bの樹脂基材11からの積層順や積層枚数は、図1の記載される順番に限定されるものではない。
【0015】
樹脂基材11は、例えば、ポリマーフィルムであり、その光学特性については特に制限はない。本発明では、特に、面内レターデーションReについてバラツキのある部材を基板として用いてもよい。但し、樹脂基材11としてλ/2板等の正確に位相差が調整されている位相差板を利用することを妨げるものではない。
【0016】
具体的には、樹脂基材11の光学特性については特に制限はなく、位相差を示す位相差板であっても、又は光学的に等方性の基板であってもよい。即ち、樹脂基材11は、その光学特性が厳密に調整された、λ/2板等の位相差板である必要はない。本発明においては、樹脂基材11の波長1000nmにおける面内レターデーションRe(1000)のバラツキが、20nm以上であるポリマーフィルム等からなっていてもよい。さらに、Re(1000)のバラツキが100nm以上であるポリマーフィルム等からなっていてもよい。また基板の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。基板として利用可能なポリマーフィルムの例については、後述する。
【0017】
(各層間の剥離力)
本発明の赤外線反射膜は、下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
式(1) B−A>0N/25mm
式(2) C−A>0N/25mm
(式(1)および(2)中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)
但し、前記Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間に易接着層がある場合は、易接着層と粘着材層間の値とする。また、前記Cは、前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間に下塗り層がある場合は下塗り層と樹脂基材まで測定した値とし、一方、後述する図4の構成の場合のように前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間粘着材層がある場合は液晶化合物層と樹脂基材間で測定した値とする。
【0018】
このような構成をとることにより、再剥離性を改善し、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい赤外光反射膜とすることができる。液晶化合物層を赤外線反射層として用いた場合に、このような構成とすることは従来公知ではなかった。特に、液晶化合物としてコレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射膜を用いる場合は、反射性能すなわち配向制御の観点から、上記式(1)および(2)のうち、式(1)を満たさないように製造されるのが通常であった。これに対し、本発明では、式(1)を満たすようにすることで、液晶化合物を用いることで赤外線反射性能を高め、かつ、再剥離性を改善した。また、本発明では、上記構成の本発明の赤外線反射膜を、後述する表面処理を用いることにより、容易に製造する方法を提供することができる。
なお、液晶化合物層を赤外線反射層として用いると、その選択反射性により、その他の態様と比べると可視光領域における反射が生じない点で好ましい。
【0019】
本発明の赤外線反射膜は、下記式(3)および(4)を満たすことが好ましい。
式(3) B−A≧2N/25mm
式(4) C−A≧2N/25mm
本発明の赤外線反射膜は、下記式(3’)および(4’)を満たすことがより好ましい。
式(3’) 10N/25mm≧B−A≧3N/25mm
式(4’) 10N/25mm≧C−A≧3N/25mm
【0020】
図2に、本発明の他の実施態様の赤外光反射膜の断面図を示す。図2に示す赤外光反射膜1は、樹脂基材11と、光反射層との間に配光層26を有する。また、さらに光反射層14aと14bの表面上にさらに光反射層16aと16bを有する。樹脂基材11に対して、双方の面に光反射層を積層した構成であっても構わない。但し、反射中心波長が等しい光反射層の組合せは、樹脂基材11に対して同一表面側にあることが好ましい。
【0021】
本発明の赤外線反射膜は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることが好ましい。
光反射層14a、14b、16a及び16bは、コレステリック液晶相を固定してなる層であるので、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す。本発明の1つの実施形態では、隣接する光反射層14aと14bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ14が同一である。また、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ16が同一である。本実施形態では、λ14≠λ16を満足するので、光反射層14aと14bによって所定の波長λ14の左円偏光及右円偏光を選択反射するとともに、光反射層16aと16bによって、波長λ14とは異なる波長λ16の左円偏光及び右円偏光を選択反射しており、全体として、反射特性の広帯域化が図れている。
【0022】
図1に示す赤外光反射膜1は、光反射層14aと14bによる選択反射の中心波長λ14が、例えば1010〜1070nmの範囲にあり、光反射層16aと16bによる選択反射の中心波長λ16が、例えば1190〜1290nmの範囲にあるなど、異なっていてもよい。選択反射波長がそれぞれ前記範囲である2組の光反射層を利用することで、赤外線の反射効率を改善できる。太陽光エネルギー強度のスペクトル分布は、短波長であるほど高エネルギーであるという一般的傾向を示すが、赤外光波長域のスペクトル分布には、波長950〜1130nm、及び波長1130〜1350nmに、2つのエネルギー強度のピークが存在する。選択反射の中心波長が、1010〜1070nm(より好ましくは1020〜1060nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層と、選択反射の中心波長が、1190〜1290nm(より好ましく波1200〜1280nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層とを利用することにより、該2つのピークに相当する光をより効率的に反射することができ、その結果、遮熱性をより改善することができる。
【0023】
上記反射中心波長を示すコレステリック液晶相の螺旋ピッチは、一般的には、波長λ14で650〜690nm程度、波長λ16で760nm〜840nm程度である。また、各光反射層の厚みは、1μm〜8μm程度(好ましくは3〜7μm程度)である。但し、これらの範囲に限定されるものではない。層の形成に用いる材料(主には液晶材料及びキラル剤)の種類及びその濃度等を調整することで、所望の螺旋ピッチの光反射層を形成することができる。また層の厚みは、塗布量を調整することで所望の範囲とすることができる。
【0024】
上記した通り、隣接する光反射層14aと14bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であり、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆である。この様に、逆向きのコレステリック液晶相からなり、選択反射の中心波長が同一の光反射層を近くに配置することで、同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射することができる。この作用は、樹脂基材11の光学特性とは無関係であり、樹脂基材11の光学特性には影響されずに得られる作用である。
例えば、光反射層16bを通過した光(波長λ16の右円偏光が反射され、左円偏光のみが透過した光)が、次に通過するのが16bではなく14aや14bのように、選択反射の中心波長がλ16ではない場合、波長λ16の左円偏光成分は螺旋ピッチのサイズが異なるコレステリック液晶層を通過することになる。この場合、波長λ16の左円偏光成分は、他の光反射層中のコレステッリク液晶相の旋光性の影響を僅かではあるが受けることになり、左円偏光成分の波長がシフトするなどの変化が生じる。当然のことながら、この現象は、「波長λ16の左円偏光成分」に限って起こるわけではなく、ある波長のある円偏光が、異なる螺旋ピッチのコレステリック液晶相を通過する場合に生じる変化である。本発明者が種々検討した結果、経験則的なデータではあるが、所定の螺旋ピッチのコレステリック液晶層によって反射されなかった一方の円偏光成分が、反射されないまま、螺旋ピッチが異なる他のコレステリック液晶層を通過する場合、通過する当該層の数が3以上になると、通過する円偏光成分への悪影響が顕著になり、その後に、当該円偏光を反射可能なコレステリック液晶層に到達しても、当該層による反射率が顕著に低下することがわかった。本発明では、選択反射の中心波長が互いに同一であり、且つ螺旋方向が互いに異なる一組の光反射層は、隣接させて配置しなくても、本発明の効果が得られるが、当該一組の光反射層の間に配置される、他の光反射層(螺旋ピッチが異なるコレステリック液晶相を固定して形成された、選択反射の中心波長が異なる光反射層)は、2以下であるのが好ましい。勿論、当該一組の光反射層が隣接しているのが好ましい。
【0025】
各光反射層は、種々の方法で形成することができる。一例は、後述する塗布により形成する方法であり、より具体的には、コレステリック液晶相を形成し得る硬化性液晶組成物を、基板、配向層、又は光反射層等の表面に塗布し、当該組成物をコレステリック液晶相とした後、硬化反応(例えば、重合反応や架橋反応等)を進行させることで硬化させて、形成することができる。
【0026】
本発明の赤外光反射膜のコレステリック液晶層の態様は、図1及び図2に示す態様に限定されるものではない。基板の一方の表面上に、5層以上光反射層積層した構成であってもよいし、また、基板の双方の表面上に、1組以上ずつ(合計で5層以上)光反射層積層した構成であってもよい。また、同一の反射中心波長を示す2組以上の光反射層を有する態様であってもよい。
【0027】
また、本発明の赤外光反射膜は、反射波長をより広帯域化することを目的として、他の赤外光反射膜と組み合わせて用いても勿論よい。また、コレステリック液晶相の選択反射特性以外の原理により所定の波長の光を反射する光反射層を有していてもよい。組合せ可能な部材としては、特表平4−504555号公報に記載の複合膜及びそれを構成している各層、並びに特表2008−545556号公報に記載の多層ラミネート等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の赤外線反射板は、勿論、上記2山のピークスペクトル以外の赤外線波長領域(例えば、780〜940nm、1400〜2500nm)に対しても、それぞれの波長域に合わせた選択反射特性を有していてもよい。例えば、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を、特には、互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる光反射層の1組をさらに積層することにより、選択反射波長域を広帯域化し、遮熱性能をより向上させることができる。
【0029】
また、本発明の赤外光反射膜は、粘着材層の他に、有機材料及び/又は無機材料を含む非光反射性の層を有していてもよい。本発明に利用可能な前記非光反射性の層の一例には、他の部材(例えば、ガラス)と密着するのを容易とするための易接着層が含まれる。図3に本発明の赤外光反射膜1が易接着層22を含む態様の一例を示す。前記易接着層22は、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層の最外層16aと、粘着材層13との間に配置されているのが好ましい。例えば、少なくとも4つの光反射層を基板の一方の表面に配置した態様では、最上層の光反射層の上に、易接着層を配置することができる。易接着層の形成に利用される材料は、当該易接着層を光反射層に隣接して形成するか、もしくは基板に隣接して形成するかによって、又は接着する他の部材の材質等によって、種々の材料から選択される。
また、本発明に利用可能な前記非光反射性の層の他の例には、コレステリック液晶相の光反射層と、樹脂基材との密着力を上げる下塗り層、及び光反射層を形成する際に利用される、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する配向層が含まれる。本発明の赤外光反射膜は、前記液晶化合物層が、前記樹脂基材と接している側に下塗り層および配向層の少なくとも一方を含むことが好ましく、すなわち、下塗り層及び配向層は、前記少なくとも1つの光反射層と樹脂基材との間に配置されるのが好ましい。さらに、図3に示すように、樹脂基材11、下塗り層24、配向層26、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層の順で含むことがより好ましい。すなわち、本発明の赤外光反射膜は、前記液晶化合物層が、前記樹脂基材と接している側の表面から下塗り層、配向層、水平配向剤と重合性液晶化合物を含む層の順に積層されていることが好ましい。
また配向層26を、それぞれの光反射層間にそれぞれ配置してもよい(図示せず)。
【0030】
図3に示す赤外光反射膜1は、図1および図2に記載の赤外光反射膜と同様に、優れた遮熱効果と良好な再剥離性を示すとともに、付加された各層の機能により、取り扱い性や、反射特性が改善されている。
【0031】
また、図4に示す様に、前記液晶化合物層12と第二の樹脂基材11’との間に第二の粘着材層13’を含む態様(但し、前記第二の樹脂基版11’と前記第二の粘着材層13’は、粘着剤層付きの第二の樹脂基材31を構成していてもよい)も好ましい。
図4の態様の本発明の赤外光反射膜は、例えば、前記液晶化合物層12が、仮の樹脂基材上に形成された仮の配向層上で液晶化合物を固定して設置された後、粘着剤層付きの第二の樹脂基材31をその粘着材層(図4の第二の粘着剤層13’に相当する)を介して貼り合わせ、前記仮の樹脂基材および前記仮の配向層を液晶化合物層の反対側の面から剥離し、別の粘着剤層13を剥離面に設置し、得られることが好ましい。
その後、図4の態様の赤外光反射膜は、粘着剤層13を介して目的とするガラス基板42に貼り合わせられて、図6の構成の赤外線反射板が得られることが好ましい。すなわち、液晶化合物層12が仮の樹脂基材から、ガラス基板42へ転写されて図6の構成の赤外線反射板が得られることが好ましい。
但し、図4の態様の本発明の赤外光反射膜は、このような製造方法で得られた赤外線反射膜に限定されるものではない。
【0032】
<材料>
次に、本発明の赤外光反射膜の作製に用いられる材料及び作製方法の例について詳細に説明する。
1.光反射層形成用材料
本発明の赤外光反射膜では、各光反射層の形成に、重合性液晶化合物を用いる。その中でも、硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の一例は、棒状液晶化合物、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を少なくとも含有する。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0033】
(1) 棒状液晶化合物
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0034】
本発明に利用する棒状液晶化合物は、重合性である。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0035】
(2) 光学活性化合物(キラル剤)
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであることが好ましく、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0036】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0037】
(3) 重合開始剤
前記光反射層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であるため、重合開始剤を含有しているのが好ましい。本発明では、紫外線照射により硬化反応を進行させるので、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0038】
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
(4) 配向制御剤
本発明では、前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤として、水平配向材を添加する。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生してヘイズの増大や回折性を示したりするため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0040】
以下、水平配向剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物について、順に説明する。
【0041】
【化1】

【0042】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0045】
【化3】

【0046】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0047】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の赤外線反射膜は、前記水平配向剤の添加量が、前記重合性液晶化合物に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。
具体的に水平配向剤の種類を限定する場合においても、前記液晶組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、液晶化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0049】
また、本発明の赤外線反射膜は、前記水平配向剤の添加量を上記範囲に抑える観点から、前記水平配向剤がフッ素原子を含むことが好ましく、パーフルオロアルキル基を含むことがより好ましく、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を含むことが特に好ましい。
なお、水平配向剤が非フッ素系である場合には、添加量が0.1質量%以上であれば、配向欠陥の問題が生じないため、好ましい。
【0050】
2. 樹脂基材
本発明の赤外光反射膜は、樹脂基材を有するが、当該樹脂基材は自己支持性があり、上記光反射層を支持するものであれば、材料及び光学的特性についてなんら限定はない。用途によっては、紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、また、面内レターデーションのバラツキが大きく、具体的には、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば、Re(1000)のバラツキが20nm以上、また100nm以上であり、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また樹脂基材の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
【0051】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記樹脂基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが好ましい。
【0052】
また、一度積層した後で別の樹脂基材に光反射層および粘着材層を転写する場合は、さらに別の目的の特性を有する第二の樹脂基材に転写してもよい。前記第二の樹脂基材としては、以下のものを挙げることができるが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
飛散防止フィルム、UVカットフィルム、拡散フィルム、(可視光)反射防止フィルム。
これらの中でも、例えば、飛散防止を目的として、飛散防止PETに転写する例などが好ましい。
【0053】
3. 粘着材層
本発明の赤外光反射膜は、粘着材層を含む。
前記粘着材は、本発明の剥離力を達成でき、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系など一般的な粘着剤を用いることができる。本発明では、その中でもポリエステル系やアクリル系を用いることが好ましく、アクリル系を用いることがより好ましい。
前記粘着材は商業的に入手してもよく、本発明に好ましく用いられる粘着材の一例としては、サンリッツ(株)社製のPET−Wやパナック工業(株)社製のPD−S1などを挙げることができる。また、後述の方法で粘着材を含む組成物を用いて製造してもよい。
【0054】
4. 易接着層
本発明の赤外光反射膜は、前記液晶化合物層の前記粘着材層と接している側の面への表面処理が、易接着層の形成を含むことが好ましい。一方、前記易接着層はその他の面への表面処理として形成されていてもよく、例えば樹脂基材の液晶化合物側の面上に形成すること(樹脂基材と配向層の間に配置する態様)も好ましい。
本発明の赤外光反射膜は、前記式(1)〜(4)の剥離性の条件を満たすためなどの目的で、一方又は双方の最外層として、易接着層を有していてもよい。易接着層は、例えば、光反射層と粘着材層との接着性を改善する機能を有する。易接着層の形成に利用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸触媒で反応させて生成するポリビニルアセタールの一種であり、下記構造の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0055】
【化4】

【0056】
また、前記易接着層は、いわゆるアンダーコート層といわれる、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層であってもよい。これらの材料からなる易接着層も塗布により形成することができる。なお、市販されているポリマーフィルムの中には、アンダーコート層が付与されているものもあるので、それらの市販品を基板として利用することもできる。さらに、前記易接着層には紫外線吸収剤や帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
なお、易接着層の厚みは、0.1〜5.0μmが好ましい。
【0057】
5. 下塗り層
本発明の赤外光反射膜は、コレステリック液晶相の光反射層と樹脂基材との間に下塗り層を有していてもよい。コレステリック液晶相の光反射層と樹脂基材との密着力が弱いと、コレステリック液晶相の光反射層を積層して製造する際の工程で剥離故障や、赤外光反射板としてガラスに貼り合わせた際の強度(耐衝撃性)低下を引き起こす。よって、下塗り層として、コレステリック液晶層と樹脂基材との接着性を向上させることができる層を利用することができる。樹脂基板と下塗り層、又は下塗り層とコレステリック液晶相の光反射層との界面には、剥離しない程度の接着性の強さが必要である。一方、後述する本発明の実施態様の一例である、コレステリック液晶相の光反射層から樹脂基材を剥離しながら別の樹脂基材に転写して本発明の図6に記載の態様の赤外光反射板を作製する場合には、光反射層/下塗り層/樹脂基材のいずれかの界面にて、剥離ができる程度の弱さが必要である。
下塗り層の形成に利用可能な材料の例には、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性ポリエステル等が含まれる。また、下塗り層の表面を中間膜と接着する態様では、下塗り層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、下塗り層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。また、下塗り層は、上記したように密着力を適度に調節する必要があるので、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類またはホウ酸等の硬膜剤を適宜用いて硬膜させることが好ましい。硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量の0.2〜3.0質量%が好ましい。
下塗り層の厚みは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0058】
6. 配向層
本発明の赤外光反射膜は、コレステリック液晶相の光反射層と基板との間に配向層を有していてもよい。配向層は、コレステリック液晶層中の液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。
配向層は、コレステリック液晶相の光反射層と隣接する必要があるので、コレステリック液晶相の光反射層と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し、下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また、光反射層の間に配向層を有していてもよい。
【0059】
配向層は、隣接する、コレステリック液晶相の光反射層、及び下塗り層又は基板のいずれに対しても、ある程度の密着力を有することが好ましい。ただし、コレステリック液晶相の光反射層/配向層/下塗り層/基板のいずれかの界面にて、剥離が生じない程度の強さが必要である。一方、後述する本発明の実施態様の一例である、コレステリック液晶相の光反射層から樹脂基材を剥離しながら別の樹脂基材に転写して本発明の図6に記載の態様の赤外光反射板を作製する場合には、光反射層/配向層/下塗り層/樹脂基材のいずれかの界面にて、剥離ができる程度の弱さが必要である。
【0060】
配向層として用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、それ自体が架橋可能なポリマーか、或いは架橋剤により架橋されるポリマーがよく用いられる。当然、双方の機能を有するポリマーも用いられる。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。また、配向層の表面を中間膜と接着する態様では、配向層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、配向層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。
前記配向層の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0061】
[赤外線反射板]
本発明の赤外線反射板は、本発明の赤外線反射膜と、該赤外線反射膜の前記粘着材層上に積層されたガラスとを含むことを特徴とする。
【0062】
本発明の赤外光反射板は、合わせガラス等の他の支持部材に一体化させて用いられてもよい。その際に、光反射層とともに基板も、他の支持部材と一体化してもよいし、基板を剥離して、光反射層を支持部材と一体化してもよい。
【0063】
本発明の赤外線反射板の態様の一例を図5に示す。図5は、図3に記載の態様の本発明の赤外線反射膜1を、その粘着材層13を介して、ガラス板42を積層した赤外線反射板41の態様である。また、本発明の赤外線反射板の態様の別の一例を図6に示す。図6は、図4に記載の態様の本発明の赤外線反射膜1を、その粘着材層13を介して、ガラス板42を積層した赤外線反射板41の態様である。
【0064】
本発明の赤外線反射板は、下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5) A≧4N/25mm
(式中、Aは前記ガラスと前記粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。)
さらに、前記Aは、4.5N/25mm以上であることがより好ましく、5N/25mm以上であることが特に好ましい。
【0065】
ガラス板の厚みについては特に制限はなく、用途に応じて好ましい範囲が変動する。例えば、輸送車両のフロントガラス(ウインドウシールド)の用途では、一般的には、2.0〜2.3mmの厚みのガラス板を用いるのが好ましい。また、家屋やビル等の建物用遮熱性窓材の用途では、一般的には、40〜300μm程度の厚みのガラス板を用いるのが好ましい。ただし、この範囲に限定されるものではない。また、ガラス板の種類についても、特に限定されない。
【0066】
[赤外光反射膜および赤外線反射板の製造方法]
本発明の赤外光反射膜は、塗布方法によって作製されるのが好ましい。製造方法の一例は、
(1) 樹脂基材の表面に、水平配向材と重合性(硬化性の)液晶化合物を含む組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2) 前記重合性液晶組成物(以下、硬化性液晶組成物とも言う)に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して光反射層を形成すること、
(3) 前記光反射層の最外層上に粘着材層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1)及び(2)の工程を、基板の一方の表面上で2回繰り返すことで図1に示す構成と同様の構成の赤外光反射膜を作製することができる。また、(1)及び(2)の工程を基板の一方の表面上で4回繰り返すことで、図2に示す構成と同様の構成の赤外光反射膜を作製することができる。
【0067】
<下塗り層、配向層の形成>
前記下塗り層は、塗布により樹脂基材の表面上に形成されることが好ましい。このときの塗布方法については特に限定はなく、公知の方法をもちいることができる。
前記配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。
【0068】
<(1)工程>
前記(1)工程では、まず、樹脂基材又は下層の光反射層の表面に、前記硬化性液晶組成物を塗布する。前記硬化性の液晶組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0069】
次に、表面に塗布され、塗膜となった硬化性液晶組成物を、コレステリック液晶相の状態にすることが好ましい。前記硬化性液晶組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0070】
<(2)工程>
次に、(2)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0071】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0072】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に光反射層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0073】
<(3)工程>
次に、前記(3)工程では、前記光反射層の最外層上に粘着材層を形成する。
前記粘着材層の形成方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方式や印刷方式、貼り合わせ方式などを挙げることができ、その中でも塗布により設置する方法と粘着シートを貼り付けて形成する貼り合わせ方法を好ましく用いることができ、粘着シートを貼り付けて形成する貼り合わせ方法がより好ましい。
前記粘着シートを貼り付けて形成する方法としては、例えば、両面に剥離シートが設置されている粘着シートを用いて、前記粘着シートの一方の剥離シートを剥がした面を液晶化合物層に貼り合わせ、反対側の剥離シートを剥がしてガラスに貼り付けて設置する方法が挙げられる。
粘着材層を形成するときの好ましい方法を以下に記載する。
塗布方式(グラビアコート、ロールコート、スピンコートなど)、印刷方式(グラビア印刷、スクリーン印刷など)、貼り合わせ方式(ラミネート)。
【0074】
<表面処理>
本発明の赤外線反射膜は、前記樹脂基材の前記液晶化合物層と接している側の面、ならびに液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面および前記粘着材層と接している側の面の少なくとも一つの面に表面処理が施されていることが、前記式(1)〜(4)を満たすように層間の剥離力を調整する観点から、好ましい。
【0075】
本発明の赤外線反射膜は、前記表面処理が、洗浄および易接着層の形成の少なくとも一方であることが好ましい。
【0076】
(易接着層の形成)
前記易接着層は、塗布により形成することが好ましい。例えば、コレステリック液晶相の光反射層の表面に、塗布により形成してもよい。より具体的には、ポリビニルブチラール樹脂の1種を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、該塗布液を、コレステリック液晶相の光反射層の表面及び/又は基板の裏面に塗布して、所望により加熱して乾燥し、易接着層を形成することができる。塗布液の調製に用いる溶媒としては、例えば、メトキシプロピルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロパノール(IPA)等を用いることができる。塗布方法としては、従来公知の種々の方法を利用することができる。乾燥時の温度は、塗布液の調製に用いた材料によって好ましい範囲が異なるが、一般的には、140〜160℃程度であるのが好ましい。乾燥時間についても特に制限はないが、一般的には、5〜10分程度である。
【0077】
(洗浄)
本発明の赤外線反射膜は、前記樹脂基材の前記液晶化合物層と接している側の面、および液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面への前記表面処理が、洗浄であることが好ましい。このような洗浄は、液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面への前記表面処理として用いることがより好ましい。一方、本発明の赤外線反射膜が、前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間に第二の粘着材層を含む図4に態様の場合は、さらに前記液晶化合物層を別の樹脂基材に転写するために剥離した面を洗浄してから、別の樹脂基材に粘着材層を介して積層してもよい。
【0078】
前記洗浄の方法としては、以下の態様を挙げることができるが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
(1)液晶化合物層の洗浄方法
液晶化合物層の表面の洗浄方法としては、以下の方法が好ましい。
表面に存在する水平配向剤などの粘着材との接着を阻害する物質を溶解する溶剤などの洗浄液で、表面を物理的に洗浄する方法、プラズマ等の高エネルギー線を照射して表面エネルギーを増大させる方法など。
(2)樹脂基材の洗浄方法
樹脂基材の表面の洗浄方法としては、以下の方法が好ましい。
洗浄液を塗布する方法、洗浄液を吹き付ける方法、洗浄液の入った容器に浸漬させる方法など。
なお、その他本発明に好ましく用いられる洗浄の方法としては、特開2007−65634に記載の方法などを挙げることができる。
【0079】
(貼り合わせ及び/又は転写)
本発明の赤外線反射板は、本発明の赤外線反射膜を、該赤外線反射膜を構成する粘着材層を介して、ガラス板に貼り合わせて製造することができる。粘着材層を介したガラス板との貼合には、公知の貼合方法を用いることができ、例えば、水貼り法や熱圧着法(ラミネート)などを挙げることができる。
その中でも、水貼り法を用いることが好ましい。水貼り法ではあらかじめガラスに水を噴霧しておき、フィルムを重ね、気泡を取り除きながら貼り合せる方法であり、位置調整や貼りなおしが容易である。ガラスとの接着力は水が蒸発してから発現する。一方、熱圧着法では、赤外光反射膜とガラス板とが加工後に剥離してしまわないように、ある程度の加熱及び加圧条件下にて実施することが好ましい。
ラミネートを安定的に行なうには、ガラス板の接着する側の膜面温度が常温〜130℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。
ラミネート時には加圧することが好ましい。加圧条件は、2.0kg/cm2未満であるのが好ましく、0.5〜1.8kg/cm2の範囲であることがより好ましく、0.5〜1.5kg/cm2の範囲であることがさらに好ましい。
【0080】
また、本発明の赤外線反射膜および本発明の赤外線反射板は、ラミネートと同時に、又はその直後、もしくはその直前に、赤外光反射板から樹脂基材(又は少なくとも樹脂基材と、下塗り層および配向層を含む積層体)を剥離してもよい。即ち、ラミネート後に得られる積層体には、一時的に樹脂基材が無くてもよく、その後で別の樹脂基材に該積層体を転写して図4または図6に記載の本発明の赤外線反射膜および本発明の赤外線反射板としてもよい。例えば、本発明の図6に記載の赤外線反射板の製造方法の一例は、
(1) 赤外光反射膜の粘着材層の表面に、ガラス板を貼合して第1の積層体を得る第1の工程、及び、
(2)第1の積層体のガラス板が貼合されているのとは反対の側の表面に、第二の樹脂基材を貼合する第2の工程、を含み、
第1の工程において、赤外光反射膜とガラス板とを貼合するとともに、最初の樹脂基材を剥離し、第2の工程において、第二の樹脂基材を、前記最初の樹脂基材を剥離した面に貼合する、赤外線反射板の製造方法である。
この方法により、最初の樹脂基材を含まない、図6に記載の赤外線反射板を容易に作製することができる。破損等無く、安定的に基板を剥離するためには、コレステリック液晶相の光反射層から最初の樹脂基材を剥離する際の最初の樹脂基材の温度が40℃以上であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましい。
【0081】
一方、図4に記載の本発明の赤外線反射膜を製造してから、その後で図6に記載の本発明の赤外線反射板を製造してもよい。その場合の図4に記載の本発明の赤外線反射膜の製造方法としては、以下の方法を挙げることができる。
仮の樹脂基材に液晶化合物層12を形成し、液晶化合物層12の上に粘着材層13’を設置する。粘着材層13’の上に第二の樹脂基材11’を貼り合わせた後、(上下反転して)反対側の仮の樹脂基材を剥離する。最後に、剥離した側の液晶面上に粘着材層13を設置する。なお、上記手順中、粘着剤層13’と第二の樹脂基材11’が一体化し、粘着剤層13’と第二の樹脂基材11’から構成される粘着剤層付き樹脂基材31を液晶化合物12に直接貼り合わせる方法も好ましい。
【0082】
(赤外光反射板の用途)
本発明の赤外光反射板は、遮熱性能に優れ、好ましくは太陽光エネルギーのピークに対応する1010〜1070nm、1190〜1290nmに反射ピークのある選択反射特性を示す。また、本発明の赤外線反射板は、再剥離性にも優れ、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい。この様な特性の反射板は、住宅、オフィスビル等の建造物、又は自動車等の車両の窓に、日射の遮熱用の部材として貼付される。 本発明の赤外線反射膜は、ガラス窓貼付用であることが好ましい。又は、本発明の赤外光反射板は、日射の遮熱用の部材そのもの(たとえば、遮熱用ガラス、遮熱用フィルム)として、その用途に供することができる。
【0083】
赤外光反射板としてその他の重要な性能は、可視光の透過率とヘイズである。材料の選択及び製造条件等を調整して、用途に応じて、好ましい可視光の透過率及びヘイズを示す赤外光反射板を提供できる。例えば可視光の透過率が高い用途に用いられる態様では、可視光の透過率が90%以上であり、且つ赤外の反射率が上記反応を満足する赤外光反射板とすることができる。
【0084】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0085】
[実施例1]
(下塗り層用塗布液の調製)
下記に示す組成の下塗り層用塗布液(S1)を調製した。
下塗り層用塗布液(S1)の組成:
アクリルエステル樹脂ジュリマーET−410
(東亞合成(株)製、固形分濃度30%) 50質量部
メタノール 50質量部
【0086】
(配向層用塗布液の調製)
下記に示す組成の配向層用塗布液(H1)を調製した。
配向層用塗布液(H1)の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0087】
(重合性液晶を含む塗布液(重合性液晶組成物)の調製)
下記表に示す組成の重合性液晶を含む塗布液(R1)及び(L1)をそれぞれ調製した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【化5】

【0091】
【化6】

【0092】
【化7】

【0093】
また、重合性液晶を含む塗布液(R1)のキラル剤LC−756の処方量を0.236質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(R2)を調製した。
【0094】
また、重合性液晶を含む塗布液(L1)のキラル剤化合物2の処方量を0.148質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(L2)を調製した。
【0095】
(塗布および製膜)
PETフィルム(下塗り層無し、富士フイルム(株)製、厚み:188μm、樹脂1)の表面上に、下塗り層用塗布液(S1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、下塗り層を形成した。
次いで、形成した下塗り層の上に、配向層用塗布液(H1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、配向層を形成した。配向層に対し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
【0096】
次いで、調製した重合性液晶を含む塗布液(R1)、(R2)、(L1)、(L2)を用い、下記の手順にてコレステリック液晶相を固定し、液晶化合物層(以下、CL層とも言う)を製造した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが6μmになるように、前記PETフィルム上に、室温にて塗布した。
(2)室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、その後95℃でコレステリック液晶相とした。次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、膜(光反射層)を作製した。
(3)室温まで冷却した後、上記工程(1)及び(2)を繰り返し、4層積層されたコレステリック液晶相の赤外光反射層を作製した。
なお、塗布液は、(R1)、(R2)、(L1)、(L2)の順番に塗布を行なった。
【0097】
(表面処理)
得られた赤外光反射層(CL層)の表面を、下記の手順にて洗浄した。
2−ブタノンの入った容器に、上記で製膜したフィルムを浸漬させ、40℃で10分間、洗浄処理をした。
【0098】
(ガラス板への赤外線反射膜の貼合せ)
赤外光反射層(CL層)の表面を洗浄した後、下記の手順にて粘着層を介してガラスと接着した。
まず、粘着材としてサンリッツ(株)社製PET−Wを用い、PET−Wの一方の剥離シートを剥がした面を、赤外光反射層(CL層)の洗浄された表面と貼り合わせた。その後、PET−Wのもう一方の面の剥離シートを剥がし、透明ガラス(厚さ:1.8mm)と貼り合わせ、実施例1の赤外線反射板を形成した。なお、透明ガラスはイソプロピルアルコールで汚れを拭き取って放置したものを使用し、貼り合わせ時の圧着は以下の態様で行った。
ゴムローラーを用いて25℃、相対温度60%の条件下、0.5kg/cmの面圧でラミネートした。
【0099】
[比較例1]
赤外光反射層(CL層)の表面を洗浄しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の赤外線反射板を形成した。
【0100】
[比較例2]
重合性液晶を含む塗布液中に、水平配向剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例2の赤外線反射板を形成した。
【0101】
[実施例2〜4]
下記表3に記載したとおりに水平配向剤の種類と、重合性液晶化合物に対する添加量(質量%)を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の赤外線反射板を形成した。
【0102】
[実施例5]
(易接着層用塗布液の調製)
下記に示す組成の易接着層用塗布液を調製した。
易接着層用塗布液(I1)の組成:
ポリビニルブチラール樹脂B1776(長春株式会社(台湾)製) 10質量部
メトキシプロピルアセテート(PGMEA) 100質量部
【0103】
次いで、上記実施例1と同様の手順で形成したコレステリック液晶相の赤外光反射層の最上層の表面に、洗浄を実施例1と同様の手順で行い、その洗浄した面上に易接着層用塗布液(I1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、易接着層を形成した。
その後、実施例1と同様にして透明ガラスと貼り合わせ、実施例2〜4の赤外線反射板を形成した。
【0104】
[実施例6]
実施例1で下塗り層と配向層を塗布する以外は同様の方法でラビング処理したPETフィルム上にCL層を設置した。CL層の表面を前記と同様の手順で表面処理をした後、粘着剤層付きの第二の樹脂基材(飛散防止用フィルム、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製、商品名SPS7710、厚さ75μm、粘着層付き。樹脂2と記載。)の粘着材側に貼り付け、反対側の初めにラビング処理したPETフィルムを剥がした。初めにラビング処理したPETフィルムを剥がした側のCL層膜面を、粘着剤PET−Wを介して、透明ガラスに貼り付けた。
このようにして得られた実施例6の赤外線反射板の構成を図6に記載した。
【0105】
[実施例7]
実施例6で製膜したCL層付きPETフィルムを実施例1と同様にしてガラス基板に貼り合わせた。
【0106】
[比較例3]
実施例6で樹脂基材にPETフィルム(帝人デュポン(株)製テトロンフィルム、厚さ50μm。樹脂2と記載。)を使用する以外は同様の方法でCL層を設置し、得られたCL層付きPETフィルムを実施例1と同様にしてガラス基板に貼り合わせた。
【0107】
[性能評価]
(剥離力の測定)
各実施例および比較例の赤外光反射板について、各層間の剥離力の測定を行った。
接着力(粘着力)の測定は、JIS A 5759に準じて引張試験機を用いて行った。具体的な手順は、以下のように行った。
(1)試験片とする赤外光反射板を幅25mm、長さ50mmに切断した。
(2)ガラスと粘着層間の剥離力は、あらかじめガラスと粘着層の間に非接着部分を設け、ガラスと液晶層を設置した樹脂基材を引張試験機の上下のチャックに挟み、樹脂基材を180°折り返して両者を引っ張ることにより測定した。
(3)粘着層と液晶化合物層(CL層)間の剥離力を、粘着層とCL層の間にあらかじめ非接着部分を設け、(2)と同様に180°ピールの態様で測定した。但し、易接着層がある場合は、易接着層と粘着層との間で測定した。
(4)液晶化合物層(CL層)と樹脂基材間の剥離力を、CL層と樹脂基材との間であらかじめ剥離部分を設け、(2)と同様に180°ピールの態様で測定した。
(5)剥離の条件は、引張速度300mm/minで180°の角度で3cm以上引き剥がして剥離力を測定した。
3回測定して、その平均を測定値とした。試験片の貼り付け、測定などの作業はすべて常態下(23±2℃、相対湿度50±5%)で行った。
得られた結果を下記表3に示した。
【0108】
(遮熱性能)
各実施例および比較例の赤外光反射板について、JIS A 5759に準じて日本分光(株)製分光光度計「V−670」を用いて300〜2500nmの波長範囲の透過および反射スペクトルを測定し、さらに赤外領域の反射率を赤外分光光度計「Varian 3000 FT−IR」を用いて2000〜450cm−1の範囲で測定して、両者の測定値から日射遮蔽係数を求めた(日射遮蔽係数の値は小さいほど遮熱性能が高い)。
○:遮蔽係数0.75未満。
△:遮蔽係数0.75以上〜0.85未満。
×:遮蔽係数0.85以上。
得られた結果を下記表3に示した。
【0109】
(再剥離性)
各実施例および比較例の赤外光反射板について、再剥離性を以下の態様で測定した。
幅25mm、長さ50mmの透明ガラスに貼り付けた赤外線反射フィルムをガラスと粘着材の間で剥がし、引張試験機にて180°ピール試験を300mm/minの速度で実施した。剥離した際、液晶膜および/または粘着材がガラスに残存する割合を評価した。
測定結果に基づいて、以下の基準に基づいて判定を行なった。
○:ガラスに全く残らない。
△:ガラスに残る割合が20%未満。
×:ガラスに残る割合が20%以上。
得られた結果を下記表3に示した。
【0110】
【表3】

【0111】
表3より、本発明の実施例によれば、遮熱性能に優れ、ガラスからの再剥離の際に層間剥離が生じにくい赤外光反射板を得られることがわかった。
一方、比較例1はCL層の表面処理を行なわず、ガラスと粘着層間の剥離力Aが、粘着層とCL層間の剥離力Bよりも大きくなるように製膜した態様であり、各実施例の赤外光反射板と比べて再剥離性に劣ることがわかった。比較例2は、水平配向剤を添加せずにCL層を製膜した態様であり、各実施例の赤外光反射板と比べて遮熱性能に劣ることがわかった。比較例3はガラスと粘着層間の剥離力Aが、CL層(下塗り層)と樹脂基板間の剥離力Cよりも大きくなるように製膜した態様であり、各実施例の赤外光反射板と比べて再剥離性に劣ることがわかった。
【符号の説明】
【0112】
1 赤外線反射膜
11 樹脂基材
11’ 第二の樹脂基材(粘着剤層付きの第二の樹脂基材の一部を構成していてもよい)
12 液晶化合物層(CL層)
13 粘着材層
13’ 第二の粘着材層(粘着剤層付きの第二の樹脂基材の一部を構成していてもよい)
14a コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
14b コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
16a コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
16b コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
22 易接着層
24 下塗り層
26 配向層
31 粘着剤層付きの第二の樹脂基材
41 赤外線反射板
42 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、液晶化合物層と、粘着材層とをこの順で含み、
前記液晶化合物層が水平配向剤と重合性液晶化合物を含み、
下記式(1)および(2)を満たすことを特徴とする赤外線反射膜。
式(1) B−A>0N/25mm
式(2) C−A>0N/25mm
(式(1)および(2)中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)
【請求項2】
下記式(3)および(4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射膜。
式(3) B−A≧2N/25mm
式(4) C−A≧2N/25mm
(式(3)および(4)中、Aは前記粘着材層をガラス面に貼り合わせた場合におけるガラスと粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Bは前記粘着材層と前記液晶化合物層との間の剥離力(単位:N/25mm)を表し、Cは前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。但し、Aは4N/25mm以上である。)
【請求項3】
前記樹脂基材の前記液晶化合物層と接している側の面、ならびに液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面および前記粘着材層と接している側の面の少なくとも一つの面に表面処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線反射膜。
【請求項4】
前記表面処理が、洗浄および易接着層の形成の少なくとも一方であることを特徴とする請求項3に記載の赤外線反射膜。
【請求項5】
前記樹脂基材の前記液晶化合物層と接している側の面、および液晶化合物層の前記樹脂基材と接している側の面への前記表面処理が、洗浄であることを特徴とする請求項3または4に記載の赤外線反射膜。
【請求項6】
前記液晶化合物層の前記粘着材層と接している側の面への表面処理が、易接着層の形成を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の赤外線反射膜。
【請求項7】
前記液晶化合物層が、前記樹脂基材と接している側に下塗り層および配向層の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項8】
前記液晶化合物層が、前記樹脂基材と接している側の表面から下塗り層、配向層、水平配向剤と重合性液晶化合物を含む層の順に積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項9】
前記液晶化合物層と前記樹脂基材との間に第二の粘着材層を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項10】
前記液晶化合物層が、樹脂基材上に形成された配向層上で液晶化合物を固定して設置された後、
第二の樹脂基材に前記第二の粘着材層を介して転写されて得られたことを特徴とする請求項9に記載の赤外線反射膜。
【請求項11】
前記液晶化合物層が、赤外光反射層としてコレステリック液晶相を固定してなる層を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項12】
前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることを特徴とする請求項11に記載の赤外線反射膜。
【請求項13】
前記水平配向剤がフッ素原子を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項14】
前記水平配向剤の添加量が、前記重合性液晶化合物に対して0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項15】
ガラス窓貼付用であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の赤外線反射膜。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の赤外線反射膜と、
該赤外線反射膜の前記粘着材層上に積層されたガラスを含むことを特徴とする赤外線反射板。
【請求項17】
下記式(5)を満たすことを特徴とする請求項16に記載の赤外線反射板。
式(5) A≧4N/25mm
(式中、Aは前記ガラスと前記粘着材層間の剥離力(単位:N/25mm)を表す。)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−32432(P2012−32432A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169247(P2010−169247)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】