説明

赤外線ガス分析計

【課題】 単一の光源から出射される赤外線を用いて試料セルの入射前及び入射後の光量を直接ガスセル検出器に入力させる構成の赤外線ガス分析計を提供する。【解決手段】 赤外線ガス分析計は、赤外光源で生成された赤外線を周期的に断続して入射する第1受光室と、前記第1受光室を通過した比較光線を、赤外線吸収を行う被分析ガスを含む試料ガスが充填されている試料セルに入射して通過した測定光線を入射する第2受光室と、前記第1及び第2受光室を連通するガス通路と、前記ガス通路内に配置されたフローセンサと、前記第1及び第2受光室内に前記被分析ガスと同種類のガスを充填すると共に、前記比較光線及び測定光線を周期的に断続して前記第1及び第2受光室に入射させたときに生じる前記第1及び第2受光室内の圧力変動に基づく前記ガス通路内のガスの流れを前記フローセンサで検出するガス吸収信号検出手段と、を備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ガス分析計に関し、詳しくは安価で、高精度測定を可能とする赤外線ガス分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における赤外線ガス分析計は、図6に示すように、赤外線光源111から発せられた赤外線が分配セル112により2つに分割され、それぞれ基準セル113、試料セル114に入射する。基準セル113には不活性ガスなど測定対象成分を含まないガスが充填されている。また、試料セル114には測定試料が流通する。分配セル112で2つに分けられた赤外線は試料セル114でのみ測定対象成分による吸収を受け検出器115に到達する。
【0003】
検出器115は、基準セル113からの赤外光と試料セル114からの赤外光を受ける2室(基準側室116、試料側室117)からなっており、その2室が流通路118でつながる構造をしており、その流通路118にガスの行き来を検出するためのサーマルフローセンサ119が取り付けられている。検出器115内には測定対象と同じ成分を含むガスが充填されており、基準セル113、試料セル114からの赤外線が照射されると測定対象成分ガスが赤外線を吸収することで、その中でガスが熱膨張する。
【0004】
試料セル114内の測定試料に測定対象成分が多く含まれると、赤外線はそこで多くが吸収されるため、検出器115では基準側室116に多くの赤外線が照射され、よりガスが膨張する。赤外線は回転セクタ121で遮断、照射を繰り返しており、遮断されたときは基準側室116、試料側室117とも赤外線が照射されないのでガスは膨張せず、赤外線が照射されると検出器115の試料側室117には試料セル114内の測定対象成分濃度に応じた赤外線が照射され、試料側室117には試料中の測定対象成分濃度に応じた赤外線が照射されるため、試料中の測定対象成分の濃度に応じて両室の間に差圧が生じ、両室間の間に設けられた流通器118をガスが行き来することとなる。そのガスの挙動をサーマルフローセンサ119で検出し、交流電圧増幅器122で交流電圧増幅し、濃度信号として出力する。
【0005】
このような構成からなる赤外線ガス分析計において、もし基準セル113が無い場合には、試料セル114を通過してきた多量の赤外線の中から、測定対象成分により吸収された僅かな光量変化の信号分を抽出する困難さに遭遇する。
【0006】
赤外線吸収量は、入射光量に比例するため、吸収量自体を大きくするためには、入射光量を増す必要性がある。大きな赤外線光量を得る過程では、当然光量の揺らぎやドリフトといった変動要因も比例して増大するという側面がでてくる。
【0007】
基準セル113を用いる目的は、このような制約の中で、低濃度のガスのような微弱信号の場合でも、検出器115から出力される信号の中から、入射光量の変動要因を極力排除し、試料ガス濃度に比例した信号を純度良く得られるようにするために、微弱信号を含む赤外線の中から信号に必要の無いオフセット部分を除去するためのものである。
【0008】
このため、分配セル112を用いて同一光源からの赤外線を2つに分割し、一方は試料ガスの流通する試料セル114に導き、他方は同一構造セルで赤外線吸収を引き起こさないガスの封入された基準セル113に導き、それぞれの出射光を、検出器115の試料側室117と基準側室116に導いている。こうすることで、信号に関係しない赤外線光量は、検出器115の各室で圧力変換された後に、相殺され、信号に相当する赤外線のみがフローセンサ119に取り出される。
【0009】
従来技術での構成においては、ガスセル測定室(試料側室)117及び比較室(基準側室)116への入射赤外線は、赤外線光源111から赤外光を供給された分配セル112により分割することにより供給し、圧力バランスさせる構成であった。このような構成をとることで、信号に無関係な赤外線光量を、ガスセル内で相殺でき、高精度な計測を可能とする。
【0010】
【特許文献1】特開2004−177201号公報(第4頁〜第5頁 第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来技術で説明した赤外線ガス分析計においては、一つの赤外線光源から出射された赤外線を分配セルで分割し、基準セルと試料セルを透過させ、検出器に到達する赤外線の量の差を検出器で検出し、測定対象成分濃度を測定する構成とすることで、赤外線光源の揺らぎを除去すると共に、試料セル内の測定対象となる成分が低濃度の場合に、両セルを透過し検出器に至る赤外線光量の差が最も少なくなるよう構成されているため、低濃度を検出する場合に最も高精度に測定できるように構成されている。しかし、一つの赤外線光源を2つに分けて用いる構成のため、光源と検出器の間に試料セルに平行して配置される基準セルが不可欠であり、また、光源を一箇所でオン/オフするための回転セクタが必要であるという問題がある。
【0012】
従って、近年開発されている半導体などを用いて、長期間安定して赤外線を発生でき、又、電気的に高速にオン/オフ変調可能な光源を用いた場合に、高精度の測定を安価に実現する方法を提供し、更に装置に用いる赤外線光源の変動因子の影響をより一層減少させ得る赤外線ガス分析計の光学系を提供することに解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本願発明の赤外線ガス分析計は、次に示す構成にしたことである。
【0014】
(1)赤外線ガス分析計は、赤外光源で生成された赤外線を周期的に断続して入射する第1受光室と、前記第1受光室を通過した比較光線を、赤外線吸収を行う被分析ガスを含む試料ガスが充填されている試料セルに入射して通過した測定光線を入射する第2受光室と、前記第1及び第2受光室を連通するガス通路と、前記ガス通路内に配置されたフローセンサと、前記第1及び第2受光室内に前記被分析ガスと同種類のガスを充填すると共に、前記比較光線及び測定光線を周期的に断続して前記第1及び第2受光室に入射させたときに生じる前記第1及び第2受光室内の圧力変動に基づく前記ガス通路内のガスの流れを前記フローセンサで検出するガス吸収信号検出手段と、を備えたことである。
【0015】
(2)前記試料セルは、入射した比較光線を曲面形状に形成された曲面で反射させた測定光線を出射する構成である(1)に記載の赤外線ガス分析計。
【0016】
(3)前記第2受光室側に、前記赤外線と同期して生成する第2赤外線を照射する構成としたことを特徴とする(1)に記載の赤外線ガス分析計。
【0017】
(4)前記赤外光源で生成される赤外線は、周期的に断続して出力するように制御する光源駆動制御手段を備えたことを特徴とする(1)に記載の赤外線ガス分析計。
【0018】
(5)前記試料セルに校正用の測定対象成分を含まないガス(ゼロガス)を測定したときに、前記ガス吸収信号検出手段からの信号がゼロになるよう前記光源駆動制御手段を制御することが可能な測定制御装置を有することを特徴とする(4)に記載の赤外線ガス分析計。
【0019】
(6)ゼロガス測定時に前記ガス吸収信号検出手段の出力がゼロとなる光源制御情報を記憶するゼロガス測定時光源制御情報記憶装置を有すると共に、試料測定時においても前記ガス吸収信号検出手段の出力をゼロとなるように前記光源駆動制御装置を制御し、ゼロガス測定時光源制御情報記憶装置に記憶されている情報と試料測定時の光源制御情報より測定対象成分の濃度を求めるよう構成したことを特徴とする(5)に記載の赤外線ガス分析計。
【発明の効果】
【0020】
本提案によれば、
(1)赤外光源から発生する赤外線を周期的に断続して発生させるようにしたことで、回転セクタ、基準セルを必要とせず、高精度の測定を安価に実現することができる。
(2)ゼロガス測定時に検出器の測定室に取り付けた光源の光量を調整し、その時の光源制御情報を記憶するよう構成し、試料測定時にもフローセンサ信号がゼロになるよう検出器の測定室に取り付けた光源の光量を調整しながら測定するよう構成したため、高濃度の試料を測定する場合でも、低ノイズの測定が可能となる。
(3)単一の光源から出射される赤外光量を用いて、試料セルの入射前及び入射後の光量を直接ガスセル検出器に入力するため、赤外光源そのものの揺らぎや変動の影響が減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本願発明に係る赤外線ガス分析計の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
本願発明に係る赤外線ガス分析計は、赤外線光源から出射された赤外線が、試料セルに入射する前、及び透過後の光量変化(試料ガス吸収による赤外線の減衰)のみを、直接ガスセル検出器で検出するよう構成したものである。但し、試料セル内での赤外線の反射損や伝搬効率が関与するため、校正時或は測定時のガスセル検出器出力をゼロ化して行う計測手法を可能にするため、測定室側には補助加熱手段の、ヒータ或は赤外線光源を設けた構成となっている。
【0023】
その構成は、図1に示すように、測定対象となる試料ガスが、試料ガス入口11より試料セル12に入り、試料ガス出口13より排出される。
第1赤外光源14から出射される赤外光は、干渉ガスセル15及びガスセル検出器16の第1受光室である比較室17を透過し、積分球形状の試料セル12内に入射する。赤外光は試料セル12内で拡散反射を繰り返しながら、測定成分の赤外吸収を受ける。
【0024】
測定成分による赤外吸収を受けた後の赤外光は、ガスセル検出器16の第2受光室である測定室18に入射する。
ガスセル検出器16の比較室17と測定室18、及び両者が連通されたフローセンサ19が配置されるガス通路21には、測定対象となる被分析ガスと同種類のガスが充填されている。
比較室17及び測定室18に入射した赤外線は、封入ガス成分による赤外線吸収のため、それぞれ熱膨張が発生し圧力の上昇が起きる。
【0025】
測定室18に入射する赤外光は、既に試料セル12で測定対象成分による赤外線吸収を受けているので、比較室17に比べ赤外光量は減少しており、両室17、18の圧上昇量には不均衡が発生するので差圧が駆動力となって微小なガス流が両室17、18のガス通路21に発生し、フローセンサ19がこれを検出する。フローセンサ19の出力は、交流電圧増幅器22で増幅された後、測定制御装置23に入力される。
【0026】
試料セル12は、入射した比較光線を曲面形状に形成された曲面で反射させた測定光線を出射する。
光源、ヒータ駆動制御回路24は、第1赤外光源14及びヒータ或は第2赤外光源25に接続され、一定周期の矩形波で、必要な増幅で駆動する。測定制御装置23は、赤外光源やヒータ駆動の同期信号と、フローセンサ19の交流信号をもとに、測定対象成分の濃度信号を算出し出力する。
又、測定制御装置23には、ゼロガス校正時の第2赤外光源25、ヒータ駆動制御情報を記憶し、又、読み出すためのゼロガス校正時制御情報記憶装置26が付随する。
【0027】
このような構成からなる赤外線ガス分析計は、光源、ヒータ駆動制御回路24により、一定周期の矩形波の駆動信号が、第1赤外光源14及びヒータ或は第2赤外光源25に同時に送られ、点灯、消灯を繰り返す。第1赤外光源14の点灯により発生した赤外線は、干渉ガスセル15及びガスセル検出器16の比較室17を経て、試料セル12に入射する。ヒータ或は第2赤外光源25の点灯により発生する赤外線或は熱量は、ガスセル検出器16の測定室18側に与えられる。比較室17と測定室18へ加えられる赤外線パワー或は熱量は、同期して与えられるので各室内を同時に熱膨張させ圧力上昇を引き起こす。両室17、18の圧力上昇が均衡していない場合、圧力差が発生し、これが元になりガスセル検出器16のガス通路21にガス流が生じ、フローセンサ19にて検出される。
【0028】
光源、ヒータ駆動制御回路24が、消灯信号を送る場合には、両室17、18のガス温度が周辺温度と平衡に到達するため同一温度に戻り、この結果点灯時に移動したガス量に相当する逆の差圧が発生し、これを駆動力として点灯時の移動ガス量が逆流し、元の状態へ復帰する。
【0029】
このようにして、点灯と消灯を周期的に繰り返すことで、フローセンサ19からはガスセル検出器16の両室17、18の赤外線或は熱量の不均衡に関係した交流信号(流速信号)が検出され、交流電圧増幅器22で増幅された後、測定制御装置23に入力され、測定対象成分の濃度信号を算出し出力する。
【0030】
ここで、このような基本的な動作をもとに、ガス濃度を計測する手法としての測定モードは(1)ノーマル法及び(2)ゼロ位法がある。
【0031】
(1)ノーマル法
試料セル12に、測定対象成分濃度がゼロのガス(以下、ゼロガス)を流通させ、ガスセル検出器16の測定室18と比較室17の圧力上昇が均等化するように(具体的にはフローセンサ出力がゼロとなるように)、測定制御装置23より、各光源、ヒータ駆動制御回路24に、制御信号を与える。この時の制御信号量を、ゼロガス校正時制御情報記憶装置26へ書き込む。
【0032】
このゼロガス校正時の駆動条件を保持したまま、試料セル12に試料ガスが流れると、測定対象成分により赤外線が吸収される結果、ガスセル検出器16の測定室18に入射する赤外光量がゼロガス校正時に比べ減少するため、ガスセル検出器16の両室17、18には圧力上昇差が生じ、その結果微小なガス流が発生し、フローセンサ19にてガス信号が検出される。このフローセンサ19の信号は、試料セル12内の測定対象ガスの濃度に応じて赤外線を吸収したために発生したものであり、測定対象ガスの濃度が測定できる。
【0033】
(2)ゼロ位法
ノーマル法と同じく、ゼロガス測定時にガスセル検出器16の出力がゼロとなるように、ヒータ或は第1及び第2赤外光源14、25の駆動量を制御し、その時の制御情報をゼロガス校正時制御情報記憶装置26に記憶しておく。
【0034】
試料セル12内に測定対象ガスが流れるとき、ノーマル法と同様測定対象成分の濃度に応じたフローセンサ信号が得られるが、ゼロ位法ではこのフローセンサ信号が常にゼロ化するように、ヒータ或は第1及び第2赤外光源14、25への駆動量を増減して制御する。ゼロガス校正時の駆動量と、測定対象ガスの時の駆動量との差は、測定対象成分による赤外線吸収量を補填したことに相当するため、駆動量の変化を計測することで試料セル12内の測定対象成分の濃度を測定できる。
【0035】
次に、本願発明の赤外線ガス分析計が、やはり2光源を用いた光学系の構造をしたものと、如何に精度が向上したものであるかを、図面を参照して以下説明する。
【0036】
図2は、2光源を用いた光学系の基本構成を簡略化したものであり、駆動電源により赤外線を発射する第1赤外光源14、第2赤外光源25、第1赤外光源14からの赤外光を入射する試料セル12A、測定室18と比較室17を備え、それぞれを連通したガス通路21にフローセンサ19を備えたガスセル検出器16、からなり、第1赤外光源14からの赤外光は試料セル12に入射され、その出射光がガスセル検出器16の測定室18に入射される。一方、第2赤外光源25からの赤外光はガスセル検出器16の比較室17に入射する構成になっている。
る。
【0037】
今、第1及び第2赤外光源14、25の出射パワーを、それぞれI、Iとし、試料セル12A内での赤外損失を、Igas(ガス吸収によるもの)及びIloss(試料セル12A内の反射損失、伝搬損失など)とする。
【0038】
ガス吸収量を大きくし、上記損失を大きくすると、ガス濃度と赤外吸収量の関係において非線形性が強くなるために、これら損失を小さな値に設定されるのが常である。従って、損失量としては、入射パワーIに比べ、小さく線形領域に設定される。従って、
Igas =I〔1−exp(−αCL)〕<<I……(1)
Iloss=k・I <<I……(2)
【0039】
(1)式は、試料セル12AにおけるLambert−Beer則を表し、αはガス吸収係数、Cは濃度、Lは等価的なセル長を表す。(2)式のkは、損失の割合を示す係数を表したものである。
【0040】
ガスセル検出器16の測定室18及び比較室17に到来する赤外パワーは、それぞれ、
測定室;I−Igas−Iloss……(3)
比較室;I ……(4)
となるので、フローセンサ19の出力Sは、これらの赤外パワーの差分に比例した量で、
フローセンサ出力S∝I−(I−Igas−Iloss)
=I−I+Igas+Iloss……(5)
で与えられる。これにより、信号として処理されるフローセンサ出力の変化量δSは、
フローセンサ出力変化δS∝δI+δI+δIgas+δIloss……(6)
【0041】
光学系へ投入した赤外パワー(I+I)に対する、フローセンサ出力変化量δSは、
δS/(I+I)=(δI+δI)/(I+I
+δIloss/(I+I
+δIgas/(I+I)……(7)
【0042】
フローセンサ出力変化量δSを知ることで、ガスによる吸収量δIgasを推定するわけであるが、投入パワー対信号量δSの中には、上式第1項の光源安定度と、第2項の光学系反射損が関与することを示す。この第2項は、短期的に変動する可能性は少ないため、この方式の精度を決める因子としては、第2項の光源揺らぎに起因する変動が関与する。ガス吸収量による赤外減衰量に比べ、光源出射パワー自体は大きな量であるため、光量変動比δI/Iが充分安定な光源を供給することが必要である。
【0043】
これに対して、本願発明の赤外線ガス分析計を示す図1の構成を簡略化した図3に示すように、ガスセル検出器16の比較室17と測定室18を、試料セル12の前後に配置した構成になっている。
【0044】
試料セル12に入射する赤外光は、第1赤外光源14から出射されたIから、比較室17における損失Icellを引き算した光量;I−Icellが入射する。比較室17の赤外損失Icellは、入射パワーIに比例すると考えられので、
Icell∝r・I (r<I)……(8)
【0045】
試料セル12内では、上記図2で示した構成の分析計と同様、ガス吸収Igasと反射損などの伝送損失Ilossが発生するため、ガスセル検出器16の測定室18に到達する赤外パワーは、I−Icell−Igas−Iloss+Iとなる。
【0046】
この時、ガスセル検出器16の測定室18に印加する補助的Iは、フローセンサ出力をゼロ化するための補助的なパワーなので、Iのオーダーは各損失(Icell+Igas+Iloss)と同等の大きさとなる。
【0047】
本提案のフローセンサ出力Sは、従って、
S∝I−(I−Icell−Igas−Iloss+I
=Icell+Igas+Iloss−I……(9)
となる。(9)式の中には、第1及び第2赤外光源14、25からの直接の出射パワーのような大きな光量が含まれず、いずれも光源パワーに比べ、小さな量から構成される。フローセンサ出力変化量δSを求めると、
δS∝δIcell+δIgas+δIloss+δI……(10)
となる。投入した赤外パワーIに対する、フローセンサ出力δSの比は、
δS/I∝(δIcell+δIloss+δI)/I+δIgas/I……(11)
【0048】
上式の第1項のうち、ガスセル検出器16の比較室17の吸収量変動δIcellは封入したガスによる吸収で、第1義的には安定とみなしてよく、反射損δIlossは短期的には安定である。又、δIは、他項の変動(δIloss+δIgas)の補償量なので、投入光量Iと比較して小さいと見なせる。
従って、本提案の構成に現れる変動要因は、大光量の光源パワー変動δIを含まないため、より安定な信号を得ることができ、高精度な計測が実現できる。
【0049】
以上、本願発明の特徴を開示したが、本願発明の試料セルは積分球形状に形成した曲面形状の曲面に反射させる反射部材を形成してあるが、これに限定されることなく、例えば、図4に示すように、ガスセル検出器16の測定室18及び比較室17に隣接した位置に試料セル12Bを配置し、その試料セル12Bに隣接して配置されたガスセル検出器16と反対側の隣接した位置に曲面形状に形成された反射用部品27を配置した構成にしてもよい。
【0050】
このような構成にすることで、第1赤外光源14からの赤外光が比較室17に入射し、その比較室17を通過した出射光が試料セル12Bに入射する。この試料セル12Bに入射した赤外光は試料セル12B内部の試料ガスを通過し、その通過した赤外光は反射用部品27で反射されて測定室18に入射する。
【0051】
他の変形例として、図5に示すように、試料セルでの反射部材を曲筒形状のライトガイド型試料セル12Cにした構成である。
このような構成にすることで、第1赤外光源14からの赤外光が比較室17に入射し、その比較室17を通過した出射光がライトガイド型試料セル12Cに入射する。このライトガイド型試料セル12Cに入射した赤外光は試料セル内部の曲面に沿って試料ガスを通過しながら反射されて測定室18に入射する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
単一の光源から出射される赤外線を用いて試料セルの入射前及び入射後の光量を直接ガスセル検出器に入力させる構成の赤外線ガス分析計を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本願発明の赤外線ガス分析計を略示的に示したブロック図である。
【図2】同、2光源方式の基本的な構成を示したブロック図である。
【図3】同、図1における分析計を概念的に示したブロック図である。
【図4】同、他の例の試料セルを示したブロック図である。
【図5】同、更に他の試料セルを示したブロック図である。
【図6】従来技術における赤外線ガス分析計を略示的に示したブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
11 試料ガス入口
12 試料セル
12A 試料セル
12B 試料セル
12C 試料セル
13 試料ガス出口
14 第1赤外光源
15 干渉ガスセル
16 ガスセル検出器
17 比較室
18 測定室
19 フローセンサ
21 ガス通路
22 交流電圧増幅器
23 測定制御装置
24 光源、ヒータ駆動制御回路
25 ヒータ或は第2赤外光源
26 ゼロガス校正時制御情報記憶装置
27 反射用部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光源で生成された赤外線を周期的に断続して入射する第1受光室と、
前記第1受光室を通過した比較光線を、赤外線吸収を行う被分析ガスを含む試料ガスが充填されている試料セルに入射して通過した測定光線を入射する第2受光室と、
前記第1及び第2受光室を連通するガス通路と、
前記ガス通路内に配置されたフローセンサと、
前記第1及び第2受光室内に前記被分析ガスと同種類のガスを充填すると共に、前記比較光線及び測定光線を周期的に断続して前記第1及び第2受光室に入射させたときに生じる前記第1及び第2受光室内の圧力変動に基づく前記ガス通路内のガスの流れを前記フローセンサで検出するガス吸収信号検出手段と、を備えたことを特徴とする赤外線ガス分析計。
【請求項2】
前記試料セルは、入射した比較光線を曲面形状に形成された曲面で反射させた測定光線を出射する構成である請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
【請求項3】
前記第2受光室側に、前記赤外線と同期して生成する第2赤外線を照射する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
【請求項4】
前記赤外光源で生成される赤外線は、周期的に断続して出力するように制御する光源駆動制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
【請求項5】
前記試料セルに校正用の測定対象成分を含まないガス(ゼロガス)を測定したときに、前記ガス吸収信号検出手段からの信号がゼロになるよう前記光源駆動制御手段を制御することが可能な測定制御装置を有することを特徴とする請求項4に記載の赤外線ガス分析計。
【請求項6】
ゼロガス測定時に前記ガス吸収信号検出手段の出力がゼロとなる光源制御情報を記憶するゼロガス測定時光源制御情報記憶装置を有すると共に、試料測定時においても前記ガス吸収信号検出手段の出力をゼロとなるように前記光源駆動制御装置を制御し、ゼロガス測定時光源制御情報記憶装置に記憶されている情報と試料測定時の光源制御情報より測定対象成分の濃度を求めるよう構成したことを特徴とする請求項5に記載の赤外線ガス分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−329913(P2006−329913A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156760(P2005−156760)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】