赤外線センサ及び赤外線検出装置
【課題】センサからの遠近にかかわらず従来に比べて検出領域を高分解能にて検知可能な赤外線センサ、及び赤外線検出装置を提供する。
【解決手段】赤外線センサ101を構成する赤外線検出画素部20間のみにスリット8を形成することで、各画素部を熱分離する。スリット形成によって、画素配列方向25に対して線対称な感度特性を有する赤外線センサとなる。又、検出領域のセンサからの遠近に応じて画素配列方向における画素部の大きさを異ならせた。
【解決手段】赤外線センサ101を構成する赤外線検出画素部20間のみにスリット8を形成することで、各画素部を熱分離する。スリット形成によって、画素配列方向25に対して線対称な感度特性を有する赤外線センサとなる。又、検出領域のセンサからの遠近に応じて画素配列方向における画素部の大きさを異ならせた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や温度分布を検出する赤外線センサ、及び該赤外線センサを備えた赤外線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンなど家電製品等において、省エネ、快適空間を実現するために、人体の位置を検知する高感度で簡便な赤外線センサが求められている。
従来のサーモパイルを使用したセンサでは、当該サーモパイルを形成した基板のキャビティ上で誘電体層上に中空状態にて熱電対の温接点が設けられ、冷接点が上記基板の枠体上に形成されている。そして、温接点から冷接点への熱伝導を抑制することや、温接点の熱容量を下げることにより、当該サーモパイルの高感度化がなされている。
【0003】
検知部である温接点から冷接点が位置する基板への熱伝導の抑制方法としては、熱電対の長さを長くする方法がある。又、温接点の熱容量を低減する方法としては、熱電対の温接点を中空に保持している誘電体層にスリットを入れる方法などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
又、サーモパイルの3個以上の赤外線検出画素をアレイ状に並べたセンサもある。このようなセンサでは、アレイの周端部に位置する画素では、当該サーモパイルを形成する支持基板に熱が容易に伝わる。よって、支持基板に近い画素と遠い画素とでは、熱の逃げ方に差ができ、画素間で感度にばらつきが生じる。このため、検出感度の差を補償する手段を備えたサーモパイルアレイセンサも存在する。ここで、支持基板よりも遠い、例えばアレイ中央部に位置する画素と、周端部に位置する画素との検出感度の差を補償する方法としては、画素を構成する熱電対の数を異ならせる方法等がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平07−099346号公報(図1)
【特許文献2】国際公開WO2003−006939号(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の、画素をアレイ状に配列しサーモパイルにおいては、各々の画素内でも、中央部と端部とでは熱勾配が発生する。よって、従来センサの画素では、画素中心部の感度が最も高く、画素端部では感度低下してしまい、不感領域ができてしまう。また、配置された画素サイズがすべて同じであるため、センサが設置された位置から近い領域を検知する画素の視野は狭く、センサから離れた領域を検知する画素の視野は広くなる。1つの画素の出力は、その画素の視野における温度分布の平均値となるため、センサから離れた領域を分解能よく検出することができない。
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、センサからの遠近にかかわらず従来に比して検出領域を高分解能にて検知可能な赤外線センサ、及び該赤外線センサを備えた赤外線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における赤外線センサは、枠部及びキャビティ部を形成した基板と、該基板上に形成された絶縁膜上に形成され上記枠部に冷接点を配置し上記キャビティ部に温接点を配置した複数の熱電対を直列に接続して形成されたサーモパイルにて構成される赤外線検出画素部とを備え、複数の上記赤外線検出画素部を配列方向に沿って配列した赤外線センサであり、上記絶縁膜には、上記配列方向に隣接する上記赤外線検出画素部間の位置にて上記配列方向に直角な行方向に沿って形成され上記配列方向への上記赤外線検出画素部間での熱伝導を防止するスリットを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様における赤外線センサによれば、赤外線検出画素部と赤外線検出画素部との間に熱分離のためのスリットを備えている。よって、赤外線検出画素部間で赤外線検出画素部の配列方向への熱伝導がなく、配列方向に対して各赤外線検出画素部の検出感度を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態である赤外線センサ、及び該赤外線センサを備えた赤外線検出装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る赤外線センサ101の一実施例を示す図であり、図1内のA−A部における断面を図2に示す。
当該赤外線センサ101は、大きく分けて、Siからなる基板1と、該基板1上にICプロセスにより形成されサーモパイルを構成した赤外線検出画素部20とを備える。このような赤外線センサ101は、赤外線検出画素部20に入射する赤外線に応じて電圧を発生し、被検知領域における人体や温度分布を検出する。このような赤外線センサ101は、以下のような構成を有する。
【0012】
基板1の全面には、例えば、窒化シリコン(SiN)又はSiO2を用いて絶縁膜2が形成される。又、赤外線センサ101における基板1には、基板1の縁部に対応する枠部1a、及び基板1の中央部分をエッチングして形成されたキャビティ部6が形成される。
【0013】
絶縁膜2には、アルミニウム膜7aとポリシリコン膜7bとにより複数の熱電対7が形成される。これらの熱電対7は、直列に接続されてサーモパイルを形成する。当該赤外線センサ101では、図1に示すように、中心軸27を対称軸として左右に一対のサーモパイル20a,20bが線対称にて形成されている。これらのサーモパイル20a,20bは、直列接続されている。そしてこのような一対のサーモパイル20a,20bにて、一つの赤外線検出画素部20を形成し、当該赤外線センサ101では、合計4つの赤外線検出画素部20−1〜20−4が中心線27に沿う配列方向25に沿って一列に配列されている。4つの赤外線検出画素部20は、それぞれ電気的に独立している。よって、赤外線センサ101は、4×1の赤外線センサとなる。尚、赤外線検出画素部20は、赤外線検出画素部20−1〜20−4の総称である。又、赤外線検出画素部20の数は、上述の4つに限定するものではない。
【0014】
各赤外線検出画素部20に備わる各熱電対7の温接点4は、キャビティ部6に対応した位置に形成され、冷接点5は枠部1aに対応した位置に形成されている。又、各赤外線検出画素部20において、各熱電対7の温接点4を含む領域には、赤外線を吸収する赤外線吸収膜3が形成されている。尚、図1において、図示を明瞭化するため、ポリシリコン膜7bは、黒色にて図示している。
【0015】
当該赤外線センサ101では、サーモパイル20a,20bは、それぞれ5つの熱電対7を有する。よって、各赤外線検出画素部20は、計10個の熱電対7を有する。勿論、各赤外線検出画素部20が有する熱電対7の個数は、これに限定するものではない。
【0016】
さらに、4つの赤外線検出画素部20のそれぞれを熱的にも互いに独立させるため、絶縁膜2には、配列方向25に隣接する赤外線検出画素部20間の位置にて、配列方向25に直角方向の行方向26に沿ってスリット8が形成されている。スリット8は、キャビティ部6に対応して形成され、絶縁膜2を分断するもので、配列方向25への赤外線検出画素部20間での熱伝導を防止する。尚、図1等において、スリット8の図示にはハッチング等を施しているが、これは図示の明瞭化のためであり、断面を意味するものではない。
【0017】
さらにスリット8は、それぞれの赤外線検出画素部20が熱を検知する領域の当該赤外線センサ101からの遠近に対応して、各赤外線検出画素部20の配列方向25に沿う長さが異なるように、異なるピッチで配置される。即ち、当該赤外線センサ101に近い領域における熱源を検知する赤外線検出画素部20を区画するスリット8のピッチは、当該赤外線センサ101から離れた領域における熱源を検知する赤外線検出画素部20を区画するスリット8のピッチよりも大きい。
【0018】
具体的には、図1に示すように本実施形態では、4つの赤外線検出画素部20の内、赤外線センサ101に最も近い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−1を区画するためのスリット8の配列方向25におけるピッチを「d」、次に近い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−2を区画するためのスリット8のピッチを「c」、次に近い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−3を区画するためのスリット8のピッチを「b」、最も遠い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−4を区画するためのスリット8のピッチを「a」とすると、dが最も大きく、順次小さくなり、aが最も小さい。各赤外線検出画素部20に備わる、配列方向25における熱電対7の数は、本実施形態ではいずれも5つと同一である。よって、赤外線検出画素部20−1に配列されている各熱電対7の配列方向25におけるピッチが最も広く、赤外線検出画素部20−4に配列されている各熱電対7の配列方向25におけるピッチが最も狭くなる。
【0019】
尚、スリット8の配列方向25における幅寸法を変更することによっても、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズを変更することもできる。
【0020】
又、上述のように本実施形態では、一つの赤外線検出画素部20は、一対のサーモパイル20a,20bから構成している。これは、より検出感度を上げるための工夫であり、スリット8のピッチを変化させることとは関係がない。よって、本発明の実施形態における赤外線センサは、一つのサーモパイル、例えばサーモパイル20aにて一つの赤外線検出画素部を構成し一次元配列して構成することができる。
【0021】
以上のように構成される赤外線センサ101における動作を以下に説明する。
被検出領域から放射される赤外線は、赤外線吸収膜3で吸収され、これにより熱電対7の温接点4に熱が伝わる。熱電対7は、温接点4と冷接点5との温度差に応じて起電力を発生する。よって、各赤外線検出画素部20は、発生した起電力に応じてそれぞれ対応した熱検知領域からの赤外線量を検出する。
尚、熱電対7の温接点4の下部から冷接点5の間にはキャビティ6を形成しているので、赤外線吸収膜3で赤外線を吸収したときの熱は、基板1に伝導されにくい。
【0022】
一般的な従来の赤外線センサにおいて、複数個の熱電対にて構成された画素部を配列した場合、支持基板に近い画素部と遠い画素部とでは、基板への熱伝導に差があることから、各画素部間で感度にばらつきが生じる。又、同一画素部内でも、絶縁体膜、あるいは熱電対の材料を介した基板への熱伝導等の相違により、熱勾配が発生し、不感領域が発生してしまう。さらに、上述の本実施形態の赤外線センサ101とは異なり、配列された各画素部の配列方向におけるサイズが全て同じ場合、図3に示すように、センサXの設置位置から近い領域を検知する画素部の視野X4は狭く、センサXから離れた領域を検知する画素部の視野X1は広くなってしまう。このとき、画素部からの出力は、その画素部の視野の温度分布の平均値となるため、センサXから離れた領域を分解能よく検出することができない。特に、少数の画素部にて広い領域を検知する安価なセンサでは、このような不感領域が高感度化の妨げになっている。
【0023】
又、図4Aには、上述の本実施形態の赤外線センサ101のように赤外線検出画素部20に対してスリット8を設けた構成を示し、図4Bには、スリット8を設けていない構成を示す。いずれの構成でも、赤外線吸収膜3で吸収された赤外線により、熱電対7の温接点4の温度が上昇し、その熱は絶縁膜2等を介して伝導される。図4Aに示す構成では、上記熱は、Qsub.xとして、温接点4からX軸方向(行方向26)へは伝導するが、Y軸方向(配列方向25)にはスリット8が存在することから、Y軸方向には伝導していかない。これに対し、図4Bの構成では、スリット8を設けていないので、X軸方向のみならずY軸方向にも熱は、伝導する。よって、赤外線の吸収に伴って発生する熱は、基板1に伝わり、感度の低下を招く。
【0024】
又、図5は、図4Bに示す画素部を縦に5つ配列した、スリット8を有しない従来センサを使用して室内の人体検出や温度検出を行った場合のセンサの視野を示した図である。このような従来センサによるサーモパイルアレイセンサの各画素部では、上述したように熱伝導等の相違により熱勾配が生じることから、画素部の中心部の感度が最も高く、端部では感度は低下する。よって、図5に示すように、隣接する画素部間の境界部分に不感領域が生じる。一つの画素部の出力は、その画素部の視野の温度分布の平均値である。よって、不感領域付近に人体や熱源が存在した場合、それらを検知することが非常に困難である。
【0025】
これに対し、本実施形態の赤外線センサ101では、スリット8を有し、図4Aに示すようにY軸方向(配列方向25)への放熱が存在しない。よって、赤外線検出画素部20の配列方向25への熱伝導がなく、各赤外線検出画素部20の配列方向25における端部の感度の低下を防ぐことができる。したがって、配列方向25における赤外線検出画素部20の端部と中心部との検出感度の差を低減することができる。
【0026】
又、赤外線センサ101は、赤外線検出画素部20を配列方向25に一列に配列したリニアセンサであるので、画素部を2次元配列したアレイセンサに比べて、温接点と冷接点の距離を十分確保することができる。よって、図4Aに示した放熱Qsub.x、つまり温接点4から冷接点5への熱伝導をより小さくすることができる。
【0027】
これらの効果によって、各赤外線検出画素部20について、配列方向25に対しては検出感度を均一にでき、さらに、図1に示すように一対のサーモパイル20a,20bを有する赤外線センサ101では、中心軸27に対して線対称な感度特性を有する赤外線センサが構成可能となる。よって、赤外線センサ101では、図6に示すように、従来センサにおける不感領域を減少させることができ、上記不感領域に存在する人体や温度物体を検知することが出来る。
【0028】
各赤外線検出画素部20の配列方向25における大きさは、各赤外線検出画素部20が検知する視野角に応じて決定する。図7には、赤外線検出画素部20を配列方向25に5つ配列した赤外線センサ102にて、床面を均等な距離aずつ検知するセンサ102が示されている。図7に示す「H」は、センサ102が設置される高さである。また、「θ」及び「L」は、センサ102が高さHの位置に設置されたときの俯角によって決定される。距離aは、等間隔に検知される距離で、検知対象の大きさ、必要とする分解能などに応じて決定される。センサ102から最も離れた領域を検知する赤外線検出画素部20の視野角θ11は、下記の式(1)で表される。
【0029】
θ11=tan−1(H/(L−a))−tan−1(H/L) (1)
【0030】
θ12は、下記の式(2)で表される。
【0031】
θ12=tan−1(H/(L−2a))−tan−1(H/(L−a)) (2)
【0032】
そのほかの赤外線検出画素部20の視野角θ13〜θ15も同様の方法で算出できる。この視野角の比θ11:θ12:θ13:θ14:θ15の比率に応じて、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズの比率を決定し、該サイズ比率に応じて赤外線検出画素部20間にスリット8を形成する。これにより、赤外線センサ102から離れた領域を検知する赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズは、赤外線センサ102から近い領域を検知する赤外線検出画素部20に比べて小さくなるよう、赤外線検出画素部20間にスリット8が形成される。したがって、それぞれの赤外線検出画素部20の視野を同程度にすることができ、センサ102から離れた領域についても、分解能よく検出することが可能となる。
【0033】
図7に示す例では、赤外線センサ102からの遠近に対応して順番に視野角θが小から大へと変化しているが、要するに、視野角の比率に応じてスリット8のピッチを設定すればよく、赤外線検出画素部20の配列方向25における長さが順番に変化する必要はない。
【0034】
例えば、検知対象を人体とした場合の例を図8に示す。この例では、上述した赤外線センサ101又は赤外線センサ102のようなセンサを使用し、該センサから所定の水平距離だけ離れた人間の頭部が赤外線検出画素部20の視野に入るように、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズが決定されている。図8において、「T」は人間の身長で、「ΔT」は頭部の長さである。図8に示す「H」は、センサが設置される高さで、「θ」はセンサ101又は102が高さHの位置に設置されたときの俯角によって決定される。センサ101又は102からの距離L1の領域を検知する画素の視野角θ21は、下記の式(3)にて表される。視野角θ21は、最低でもセンサ101又は102の視野に人間の頭部が入る視野角とする。
【0035】
θ21=tan−1((H−T+ΔT)/L1)−tan−1((H−T)/L1)
(3)
【0036】
センサ101又は102から距離L2の領域を検知する赤外線検出画素部20の視野角θ22も同様に求めることができる。これらの視野角の比率に応じて、赤外線検出画素部20間に形成するスリット8のピッチを決定し、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズを変えて配置する。赤外線センサを設計する際、センサの用途に応じて、何メートル先の人体を検知するか想定し、センサ設置俯角、赤外線検出画素部20のサイズ、赤外線検出画素部20の数を最適化すれば良い。
【0037】
よって、例えば、赤外線センサが固定設置され、かつ被検出領域の一部には熱源が存在しないことが明らかであるような状況であれば、熱源が存在しない領域に対応する赤外線検出画素部20のサイズを最小とし、配列方向25において、例えば「最大」、「最小」、「中大」、「中小」のサイズの順に、各赤外線検出画素部20を配列してもよい。
【0038】
実施形態2.
上述したように、赤外線センサ101では、図1に示すように、赤外線検出画素部20−1〜20−4を配列方向25に沿って一次元配列した構成である。これに対し、本実施形態2では、図9に示すように、赤外線センサ101と同様の構成にてなり、第1画素群に相当する赤外線センサ101Aと、第2画素群に相当する赤外線センサ101Bとを、中心線28を境として、行方向26に一対設け、赤外線検出画素部20を二次元配列した赤外線センサ103を形成している。赤外線センサ103も一つの基板1にて構成されている。
【0039】
赤外線センサ101A、101Bにおける構成は、各赤外線検出画素部20における基準電位端子を共通化した以外、赤外線センサ101における構成に同一である。よって、図9において、図1に示す構成部分と同じ構成部分については同じ符号を付し、赤外線センサ101A、101Bの構成について、ここでの説明は省略する。尚、図9において、上述した赤外線検出画素部20について、赤外線センサ101Aに備わるものには「20A」を符番し、赤外線センサ101Bに備わるものには「20B」を符番する。
【0040】
一方、赤外線センサ103において、赤外線センサ101Aと、赤外線センサ101Bとは、配列方向25に互いにずれて配置されている。両者のずれ量は、行方向26にて対応する赤外線検出画素部同士が、例えば、赤外線検出画素部20A−1と赤外線検出画素部20B−1とが、赤外線検出画素部の配列方向25における長さの1/2又は約1/2の長さに相当する。尚、該ずれ量値は、一例であり、赤外線センサ103の被検出対象との関係にて最良の検出が可能となるような値が決定される。又、赤外線センサ101A、101Bの赤外線検出画素部20の全行にわたりずらすのではなく、奇数行又は偶数行を配列方向25にずらして配置してもよい。
又、赤外線センサ103では、赤外線センサを2列に配列した構成であるが、配列数は3以上とすることもできる。
【0041】
このように、赤外線センサを複数列にて配置し、かつ隣接するセンサ間で配置を配列方向25にずらした赤外線センサでは、被検出領域において配列方向25に対応する分解能を高くすることができる。
【0042】
実施形態3.
本実施形態3では、上述した実施形態1及び実施形態2で説明した赤外線センサのいずれか一方を備えた赤外線検出装置について、図10から図13を参照して説明する。
赤外線検出装置は、上述した赤外線センサ101、102、103のいずれかと、赤外線センサにて検知される熱源の被検出体に対する上記赤外線センサの相対位置関係を変更する駆動装置10とを備える。駆動装置10により、赤外線センサを移動させて人体や温度分布の検知を可能とする。
【0043】
図10は、駆動装置10として回転機構10aを備えた赤外線検出装置111を図示している。回転機構10aは、赤外線センサ101、102、103のいずれかを回転軸29を中心に、その軸周りに回転させる装置である。ここで回転軸29は、赤外線センサ101、102では中心軸27が対応し、赤外線センサ103では中心軸28が対応する。
【0044】
回転軸29を中心にして、回転機構10aにて、所定の駆動角度分だけ、赤外線センサを回転させることによって、人体や温度分布を検出する。赤外線センサにて取得される画像の縦方向の解像度は、例えば赤外線センサ101にて配列方向25に配列される赤外線検出画素部20の数で決まり、横方向の解像度は、撮像時に回転軸29を中心に駆動角度分にて回転駆動させる回数によって決まる。尚、図10において、符号31は、赤外線センサによる撮像時の視野を示している。
【0045】
図11は、駆動装置10として移動機構10bを備えた赤外線検出装置112を図示している。移動機構10bは、赤外線センサ101、102、103のいずれかを中心軸27,28を基準にして、行方向26、例えば水平方向に移動させる装置である。
移動機構10bにて赤外線センサ101、102、103のいずれかを移動させることで、人体や温度分布を検出する。赤外線センサにて取得される画像の縦方向の解像度は、例えば赤外線センサ101にて配列方向25に配列される赤外線検出画素部20の数で決まり、横方向の解像度は、撮像時に赤外線センサ101を駆動ピッチ分だけ水平移動させる回数によって決まる。尚、図11において、符号32は、赤外線センサによる撮像時の視野を示している。
【0046】
又、図12は、例えば赤外線センサ101を、移動機構10bにて、駆動ピッチ分だけ水平移動させたときに、赤外線センサ101から得られる画像データの一例を示している。ここで、上記駆動ピッチの一例としては、赤外線センサ101の行方向26における幅寸法が相当する。
【0047】
又、図13は、図9に示す赤外線センサ103を、移動機構10bにて、駆動ピッチ分だけ水平移動させたときに、赤外線センサ103から得られる画像データの一例を示している。ここで、上記駆動ピッチの一例としては、赤外線センサ103の行方向26における幅寸法が相当する。取得される画像の縦方向の解像度は、赤外線センサ103における奇数行あるいは偶数行のどちらかにおける赤外線検出画素部20から得られる画像が縦方向(図13では上下方向)に1/2画素分ずれた画像となる。赤外線センサ103の構成により取得される赤外画像は、図1に示す赤外線センサ101の構成により取得される赤外画像に比べて、縦方向(図13では上下方向)の分解能は2倍になり、横方向の解像度は、撮像時に赤外線センサ103を所定の駆動ピッチ分、水平移動あるいは回転駆動させる回数の2倍の解像度となる。
【0048】
上述したように、駆動装置10を備えた赤外線検出装置111,112では、赤外線センサを駆動させるときの駆動ピッチ及び駆動角度の大きさを変更することにより、赤外線センサから取得する画像の解像度を容易に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態1による赤外線センサの一構成例における平面図である。
【図2】図1に示すA−A部における断面図である。
【図3】従来の赤外線センサとセンサ視野との関係を示す図である。
【図4A】図1に示す赤外線センサにおける一つの赤外線検出画素部を示す平面図であり、熱伝導を説明するための図である。
【図4B】従来の赤外線センサにおける一つの赤外線検出画素部を示す平面図であり、熱伝導を説明するための図である。
【図5】従来の赤外線センサとセンサ視野との関係を示す図である。
【図6】図1に示す赤外線センサとセンサ視野との関係を示す図である。
【図7】図1に示す赤外線センサにて検知される領域を説明するための図である。
【図8】図1に示す赤外線センサにて人間を検知する状態を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態2における赤外線センサの一例における平面図である。
【図10】本発明の実施形態3における赤外線検出装置、及びその視野範囲を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3における赤外線検出装置、及びその視野範囲を示す図である。
【図12】図11に示す赤外線検出装置に備わる図1に示す赤外線センサにて得られる画像データの一例を示す図である。
【図13】図11に示す赤外線検出装置に備わる図9に示す赤外線センサにて得られる画像データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板、 2 絶縁膜、 3 赤外線吸収膜、 4 温接点、 5 冷接点、
6 キャビティ、 7 熱電対、 7a アルミニウム膜、
7b ポリシリコン膜、 8 スリット、 10 駆動機構、 10a 回転機構、
10b 移動機構、 20 赤外線検出画素部、
101〜103 赤外線センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や温度分布を検出する赤外線センサ、及び該赤外線センサを備えた赤外線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンなど家電製品等において、省エネ、快適空間を実現するために、人体の位置を検知する高感度で簡便な赤外線センサが求められている。
従来のサーモパイルを使用したセンサでは、当該サーモパイルを形成した基板のキャビティ上で誘電体層上に中空状態にて熱電対の温接点が設けられ、冷接点が上記基板の枠体上に形成されている。そして、温接点から冷接点への熱伝導を抑制することや、温接点の熱容量を下げることにより、当該サーモパイルの高感度化がなされている。
【0003】
検知部である温接点から冷接点が位置する基板への熱伝導の抑制方法としては、熱電対の長さを長くする方法がある。又、温接点の熱容量を低減する方法としては、熱電対の温接点を中空に保持している誘電体層にスリットを入れる方法などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
又、サーモパイルの3個以上の赤外線検出画素をアレイ状に並べたセンサもある。このようなセンサでは、アレイの周端部に位置する画素では、当該サーモパイルを形成する支持基板に熱が容易に伝わる。よって、支持基板に近い画素と遠い画素とでは、熱の逃げ方に差ができ、画素間で感度にばらつきが生じる。このため、検出感度の差を補償する手段を備えたサーモパイルアレイセンサも存在する。ここで、支持基板よりも遠い、例えばアレイ中央部に位置する画素と、周端部に位置する画素との検出感度の差を補償する方法としては、画素を構成する熱電対の数を異ならせる方法等がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平07−099346号公報(図1)
【特許文献2】国際公開WO2003−006939号(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の、画素をアレイ状に配列しサーモパイルにおいては、各々の画素内でも、中央部と端部とでは熱勾配が発生する。よって、従来センサの画素では、画素中心部の感度が最も高く、画素端部では感度低下してしまい、不感領域ができてしまう。また、配置された画素サイズがすべて同じであるため、センサが設置された位置から近い領域を検知する画素の視野は狭く、センサから離れた領域を検知する画素の視野は広くなる。1つの画素の出力は、その画素の視野における温度分布の平均値となるため、センサから離れた領域を分解能よく検出することができない。
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、センサからの遠近にかかわらず従来に比して検出領域を高分解能にて検知可能な赤外線センサ、及び該赤外線センサを備えた赤外線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における赤外線センサは、枠部及びキャビティ部を形成した基板と、該基板上に形成された絶縁膜上に形成され上記枠部に冷接点を配置し上記キャビティ部に温接点を配置した複数の熱電対を直列に接続して形成されたサーモパイルにて構成される赤外線検出画素部とを備え、複数の上記赤外線検出画素部を配列方向に沿って配列した赤外線センサであり、上記絶縁膜には、上記配列方向に隣接する上記赤外線検出画素部間の位置にて上記配列方向に直角な行方向に沿って形成され上記配列方向への上記赤外線検出画素部間での熱伝導を防止するスリットを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様における赤外線センサによれば、赤外線検出画素部と赤外線検出画素部との間に熱分離のためのスリットを備えている。よって、赤外線検出画素部間で赤外線検出画素部の配列方向への熱伝導がなく、配列方向に対して各赤外線検出画素部の検出感度を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態である赤外線センサ、及び該赤外線センサを備えた赤外線検出装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る赤外線センサ101の一実施例を示す図であり、図1内のA−A部における断面を図2に示す。
当該赤外線センサ101は、大きく分けて、Siからなる基板1と、該基板1上にICプロセスにより形成されサーモパイルを構成した赤外線検出画素部20とを備える。このような赤外線センサ101は、赤外線検出画素部20に入射する赤外線に応じて電圧を発生し、被検知領域における人体や温度分布を検出する。このような赤外線センサ101は、以下のような構成を有する。
【0012】
基板1の全面には、例えば、窒化シリコン(SiN)又はSiO2を用いて絶縁膜2が形成される。又、赤外線センサ101における基板1には、基板1の縁部に対応する枠部1a、及び基板1の中央部分をエッチングして形成されたキャビティ部6が形成される。
【0013】
絶縁膜2には、アルミニウム膜7aとポリシリコン膜7bとにより複数の熱電対7が形成される。これらの熱電対7は、直列に接続されてサーモパイルを形成する。当該赤外線センサ101では、図1に示すように、中心軸27を対称軸として左右に一対のサーモパイル20a,20bが線対称にて形成されている。これらのサーモパイル20a,20bは、直列接続されている。そしてこのような一対のサーモパイル20a,20bにて、一つの赤外線検出画素部20を形成し、当該赤外線センサ101では、合計4つの赤外線検出画素部20−1〜20−4が中心線27に沿う配列方向25に沿って一列に配列されている。4つの赤外線検出画素部20は、それぞれ電気的に独立している。よって、赤外線センサ101は、4×1の赤外線センサとなる。尚、赤外線検出画素部20は、赤外線検出画素部20−1〜20−4の総称である。又、赤外線検出画素部20の数は、上述の4つに限定するものではない。
【0014】
各赤外線検出画素部20に備わる各熱電対7の温接点4は、キャビティ部6に対応した位置に形成され、冷接点5は枠部1aに対応した位置に形成されている。又、各赤外線検出画素部20において、各熱電対7の温接点4を含む領域には、赤外線を吸収する赤外線吸収膜3が形成されている。尚、図1において、図示を明瞭化するため、ポリシリコン膜7bは、黒色にて図示している。
【0015】
当該赤外線センサ101では、サーモパイル20a,20bは、それぞれ5つの熱電対7を有する。よって、各赤外線検出画素部20は、計10個の熱電対7を有する。勿論、各赤外線検出画素部20が有する熱電対7の個数は、これに限定するものではない。
【0016】
さらに、4つの赤外線検出画素部20のそれぞれを熱的にも互いに独立させるため、絶縁膜2には、配列方向25に隣接する赤外線検出画素部20間の位置にて、配列方向25に直角方向の行方向26に沿ってスリット8が形成されている。スリット8は、キャビティ部6に対応して形成され、絶縁膜2を分断するもので、配列方向25への赤外線検出画素部20間での熱伝導を防止する。尚、図1等において、スリット8の図示にはハッチング等を施しているが、これは図示の明瞭化のためであり、断面を意味するものではない。
【0017】
さらにスリット8は、それぞれの赤外線検出画素部20が熱を検知する領域の当該赤外線センサ101からの遠近に対応して、各赤外線検出画素部20の配列方向25に沿う長さが異なるように、異なるピッチで配置される。即ち、当該赤外線センサ101に近い領域における熱源を検知する赤外線検出画素部20を区画するスリット8のピッチは、当該赤外線センサ101から離れた領域における熱源を検知する赤外線検出画素部20を区画するスリット8のピッチよりも大きい。
【0018】
具体的には、図1に示すように本実施形態では、4つの赤外線検出画素部20の内、赤外線センサ101に最も近い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−1を区画するためのスリット8の配列方向25におけるピッチを「d」、次に近い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−2を区画するためのスリット8のピッチを「c」、次に近い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−3を区画するためのスリット8のピッチを「b」、最も遠い領域の熱を検知する赤外線検出画素部20−4を区画するためのスリット8のピッチを「a」とすると、dが最も大きく、順次小さくなり、aが最も小さい。各赤外線検出画素部20に備わる、配列方向25における熱電対7の数は、本実施形態ではいずれも5つと同一である。よって、赤外線検出画素部20−1に配列されている各熱電対7の配列方向25におけるピッチが最も広く、赤外線検出画素部20−4に配列されている各熱電対7の配列方向25におけるピッチが最も狭くなる。
【0019】
尚、スリット8の配列方向25における幅寸法を変更することによっても、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズを変更することもできる。
【0020】
又、上述のように本実施形態では、一つの赤外線検出画素部20は、一対のサーモパイル20a,20bから構成している。これは、より検出感度を上げるための工夫であり、スリット8のピッチを変化させることとは関係がない。よって、本発明の実施形態における赤外線センサは、一つのサーモパイル、例えばサーモパイル20aにて一つの赤外線検出画素部を構成し一次元配列して構成することができる。
【0021】
以上のように構成される赤外線センサ101における動作を以下に説明する。
被検出領域から放射される赤外線は、赤外線吸収膜3で吸収され、これにより熱電対7の温接点4に熱が伝わる。熱電対7は、温接点4と冷接点5との温度差に応じて起電力を発生する。よって、各赤外線検出画素部20は、発生した起電力に応じてそれぞれ対応した熱検知領域からの赤外線量を検出する。
尚、熱電対7の温接点4の下部から冷接点5の間にはキャビティ6を形成しているので、赤外線吸収膜3で赤外線を吸収したときの熱は、基板1に伝導されにくい。
【0022】
一般的な従来の赤外線センサにおいて、複数個の熱電対にて構成された画素部を配列した場合、支持基板に近い画素部と遠い画素部とでは、基板への熱伝導に差があることから、各画素部間で感度にばらつきが生じる。又、同一画素部内でも、絶縁体膜、あるいは熱電対の材料を介した基板への熱伝導等の相違により、熱勾配が発生し、不感領域が発生してしまう。さらに、上述の本実施形態の赤外線センサ101とは異なり、配列された各画素部の配列方向におけるサイズが全て同じ場合、図3に示すように、センサXの設置位置から近い領域を検知する画素部の視野X4は狭く、センサXから離れた領域を検知する画素部の視野X1は広くなってしまう。このとき、画素部からの出力は、その画素部の視野の温度分布の平均値となるため、センサXから離れた領域を分解能よく検出することができない。特に、少数の画素部にて広い領域を検知する安価なセンサでは、このような不感領域が高感度化の妨げになっている。
【0023】
又、図4Aには、上述の本実施形態の赤外線センサ101のように赤外線検出画素部20に対してスリット8を設けた構成を示し、図4Bには、スリット8を設けていない構成を示す。いずれの構成でも、赤外線吸収膜3で吸収された赤外線により、熱電対7の温接点4の温度が上昇し、その熱は絶縁膜2等を介して伝導される。図4Aに示す構成では、上記熱は、Qsub.xとして、温接点4からX軸方向(行方向26)へは伝導するが、Y軸方向(配列方向25)にはスリット8が存在することから、Y軸方向には伝導していかない。これに対し、図4Bの構成では、スリット8を設けていないので、X軸方向のみならずY軸方向にも熱は、伝導する。よって、赤外線の吸収に伴って発生する熱は、基板1に伝わり、感度の低下を招く。
【0024】
又、図5は、図4Bに示す画素部を縦に5つ配列した、スリット8を有しない従来センサを使用して室内の人体検出や温度検出を行った場合のセンサの視野を示した図である。このような従来センサによるサーモパイルアレイセンサの各画素部では、上述したように熱伝導等の相違により熱勾配が生じることから、画素部の中心部の感度が最も高く、端部では感度は低下する。よって、図5に示すように、隣接する画素部間の境界部分に不感領域が生じる。一つの画素部の出力は、その画素部の視野の温度分布の平均値である。よって、不感領域付近に人体や熱源が存在した場合、それらを検知することが非常に困難である。
【0025】
これに対し、本実施形態の赤外線センサ101では、スリット8を有し、図4Aに示すようにY軸方向(配列方向25)への放熱が存在しない。よって、赤外線検出画素部20の配列方向25への熱伝導がなく、各赤外線検出画素部20の配列方向25における端部の感度の低下を防ぐことができる。したがって、配列方向25における赤外線検出画素部20の端部と中心部との検出感度の差を低減することができる。
【0026】
又、赤外線センサ101は、赤外線検出画素部20を配列方向25に一列に配列したリニアセンサであるので、画素部を2次元配列したアレイセンサに比べて、温接点と冷接点の距離を十分確保することができる。よって、図4Aに示した放熱Qsub.x、つまり温接点4から冷接点5への熱伝導をより小さくすることができる。
【0027】
これらの効果によって、各赤外線検出画素部20について、配列方向25に対しては検出感度を均一にでき、さらに、図1に示すように一対のサーモパイル20a,20bを有する赤外線センサ101では、中心軸27に対して線対称な感度特性を有する赤外線センサが構成可能となる。よって、赤外線センサ101では、図6に示すように、従来センサにおける不感領域を減少させることができ、上記不感領域に存在する人体や温度物体を検知することが出来る。
【0028】
各赤外線検出画素部20の配列方向25における大きさは、各赤外線検出画素部20が検知する視野角に応じて決定する。図7には、赤外線検出画素部20を配列方向25に5つ配列した赤外線センサ102にて、床面を均等な距離aずつ検知するセンサ102が示されている。図7に示す「H」は、センサ102が設置される高さである。また、「θ」及び「L」は、センサ102が高さHの位置に設置されたときの俯角によって決定される。距離aは、等間隔に検知される距離で、検知対象の大きさ、必要とする分解能などに応じて決定される。センサ102から最も離れた領域を検知する赤外線検出画素部20の視野角θ11は、下記の式(1)で表される。
【0029】
θ11=tan−1(H/(L−a))−tan−1(H/L) (1)
【0030】
θ12は、下記の式(2)で表される。
【0031】
θ12=tan−1(H/(L−2a))−tan−1(H/(L−a)) (2)
【0032】
そのほかの赤外線検出画素部20の視野角θ13〜θ15も同様の方法で算出できる。この視野角の比θ11:θ12:θ13:θ14:θ15の比率に応じて、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズの比率を決定し、該サイズ比率に応じて赤外線検出画素部20間にスリット8を形成する。これにより、赤外線センサ102から離れた領域を検知する赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズは、赤外線センサ102から近い領域を検知する赤外線検出画素部20に比べて小さくなるよう、赤外線検出画素部20間にスリット8が形成される。したがって、それぞれの赤外線検出画素部20の視野を同程度にすることができ、センサ102から離れた領域についても、分解能よく検出することが可能となる。
【0033】
図7に示す例では、赤外線センサ102からの遠近に対応して順番に視野角θが小から大へと変化しているが、要するに、視野角の比率に応じてスリット8のピッチを設定すればよく、赤外線検出画素部20の配列方向25における長さが順番に変化する必要はない。
【0034】
例えば、検知対象を人体とした場合の例を図8に示す。この例では、上述した赤外線センサ101又は赤外線センサ102のようなセンサを使用し、該センサから所定の水平距離だけ離れた人間の頭部が赤外線検出画素部20の視野に入るように、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズが決定されている。図8において、「T」は人間の身長で、「ΔT」は頭部の長さである。図8に示す「H」は、センサが設置される高さで、「θ」はセンサ101又は102が高さHの位置に設置されたときの俯角によって決定される。センサ101又は102からの距離L1の領域を検知する画素の視野角θ21は、下記の式(3)にて表される。視野角θ21は、最低でもセンサ101又は102の視野に人間の頭部が入る視野角とする。
【0035】
θ21=tan−1((H−T+ΔT)/L1)−tan−1((H−T)/L1)
(3)
【0036】
センサ101又は102から距離L2の領域を検知する赤外線検出画素部20の視野角θ22も同様に求めることができる。これらの視野角の比率に応じて、赤外線検出画素部20間に形成するスリット8のピッチを決定し、各赤外線検出画素部20の配列方向25におけるサイズを変えて配置する。赤外線センサを設計する際、センサの用途に応じて、何メートル先の人体を検知するか想定し、センサ設置俯角、赤外線検出画素部20のサイズ、赤外線検出画素部20の数を最適化すれば良い。
【0037】
よって、例えば、赤外線センサが固定設置され、かつ被検出領域の一部には熱源が存在しないことが明らかであるような状況であれば、熱源が存在しない領域に対応する赤外線検出画素部20のサイズを最小とし、配列方向25において、例えば「最大」、「最小」、「中大」、「中小」のサイズの順に、各赤外線検出画素部20を配列してもよい。
【0038】
実施形態2.
上述したように、赤外線センサ101では、図1に示すように、赤外線検出画素部20−1〜20−4を配列方向25に沿って一次元配列した構成である。これに対し、本実施形態2では、図9に示すように、赤外線センサ101と同様の構成にてなり、第1画素群に相当する赤外線センサ101Aと、第2画素群に相当する赤外線センサ101Bとを、中心線28を境として、行方向26に一対設け、赤外線検出画素部20を二次元配列した赤外線センサ103を形成している。赤外線センサ103も一つの基板1にて構成されている。
【0039】
赤外線センサ101A、101Bにおける構成は、各赤外線検出画素部20における基準電位端子を共通化した以外、赤外線センサ101における構成に同一である。よって、図9において、図1に示す構成部分と同じ構成部分については同じ符号を付し、赤外線センサ101A、101Bの構成について、ここでの説明は省略する。尚、図9において、上述した赤外線検出画素部20について、赤外線センサ101Aに備わるものには「20A」を符番し、赤外線センサ101Bに備わるものには「20B」を符番する。
【0040】
一方、赤外線センサ103において、赤外線センサ101Aと、赤外線センサ101Bとは、配列方向25に互いにずれて配置されている。両者のずれ量は、行方向26にて対応する赤外線検出画素部同士が、例えば、赤外線検出画素部20A−1と赤外線検出画素部20B−1とが、赤外線検出画素部の配列方向25における長さの1/2又は約1/2の長さに相当する。尚、該ずれ量値は、一例であり、赤外線センサ103の被検出対象との関係にて最良の検出が可能となるような値が決定される。又、赤外線センサ101A、101Bの赤外線検出画素部20の全行にわたりずらすのではなく、奇数行又は偶数行を配列方向25にずらして配置してもよい。
又、赤外線センサ103では、赤外線センサを2列に配列した構成であるが、配列数は3以上とすることもできる。
【0041】
このように、赤外線センサを複数列にて配置し、かつ隣接するセンサ間で配置を配列方向25にずらした赤外線センサでは、被検出領域において配列方向25に対応する分解能を高くすることができる。
【0042】
実施形態3.
本実施形態3では、上述した実施形態1及び実施形態2で説明した赤外線センサのいずれか一方を備えた赤外線検出装置について、図10から図13を参照して説明する。
赤外線検出装置は、上述した赤外線センサ101、102、103のいずれかと、赤外線センサにて検知される熱源の被検出体に対する上記赤外線センサの相対位置関係を変更する駆動装置10とを備える。駆動装置10により、赤外線センサを移動させて人体や温度分布の検知を可能とする。
【0043】
図10は、駆動装置10として回転機構10aを備えた赤外線検出装置111を図示している。回転機構10aは、赤外線センサ101、102、103のいずれかを回転軸29を中心に、その軸周りに回転させる装置である。ここで回転軸29は、赤外線センサ101、102では中心軸27が対応し、赤外線センサ103では中心軸28が対応する。
【0044】
回転軸29を中心にして、回転機構10aにて、所定の駆動角度分だけ、赤外線センサを回転させることによって、人体や温度分布を検出する。赤外線センサにて取得される画像の縦方向の解像度は、例えば赤外線センサ101にて配列方向25に配列される赤外線検出画素部20の数で決まり、横方向の解像度は、撮像時に回転軸29を中心に駆動角度分にて回転駆動させる回数によって決まる。尚、図10において、符号31は、赤外線センサによる撮像時の視野を示している。
【0045】
図11は、駆動装置10として移動機構10bを備えた赤外線検出装置112を図示している。移動機構10bは、赤外線センサ101、102、103のいずれかを中心軸27,28を基準にして、行方向26、例えば水平方向に移動させる装置である。
移動機構10bにて赤外線センサ101、102、103のいずれかを移動させることで、人体や温度分布を検出する。赤外線センサにて取得される画像の縦方向の解像度は、例えば赤外線センサ101にて配列方向25に配列される赤外線検出画素部20の数で決まり、横方向の解像度は、撮像時に赤外線センサ101を駆動ピッチ分だけ水平移動させる回数によって決まる。尚、図11において、符号32は、赤外線センサによる撮像時の視野を示している。
【0046】
又、図12は、例えば赤外線センサ101を、移動機構10bにて、駆動ピッチ分だけ水平移動させたときに、赤外線センサ101から得られる画像データの一例を示している。ここで、上記駆動ピッチの一例としては、赤外線センサ101の行方向26における幅寸法が相当する。
【0047】
又、図13は、図9に示す赤外線センサ103を、移動機構10bにて、駆動ピッチ分だけ水平移動させたときに、赤外線センサ103から得られる画像データの一例を示している。ここで、上記駆動ピッチの一例としては、赤外線センサ103の行方向26における幅寸法が相当する。取得される画像の縦方向の解像度は、赤外線センサ103における奇数行あるいは偶数行のどちらかにおける赤外線検出画素部20から得られる画像が縦方向(図13では上下方向)に1/2画素分ずれた画像となる。赤外線センサ103の構成により取得される赤外画像は、図1に示す赤外線センサ101の構成により取得される赤外画像に比べて、縦方向(図13では上下方向)の分解能は2倍になり、横方向の解像度は、撮像時に赤外線センサ103を所定の駆動ピッチ分、水平移動あるいは回転駆動させる回数の2倍の解像度となる。
【0048】
上述したように、駆動装置10を備えた赤外線検出装置111,112では、赤外線センサを駆動させるときの駆動ピッチ及び駆動角度の大きさを変更することにより、赤外線センサから取得する画像の解像度を容易に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態1による赤外線センサの一構成例における平面図である。
【図2】図1に示すA−A部における断面図である。
【図3】従来の赤外線センサとセンサ視野との関係を示す図である。
【図4A】図1に示す赤外線センサにおける一つの赤外線検出画素部を示す平面図であり、熱伝導を説明するための図である。
【図4B】従来の赤外線センサにおける一つの赤外線検出画素部を示す平面図であり、熱伝導を説明するための図である。
【図5】従来の赤外線センサとセンサ視野との関係を示す図である。
【図6】図1に示す赤外線センサとセンサ視野との関係を示す図である。
【図7】図1に示す赤外線センサにて検知される領域を説明するための図である。
【図8】図1に示す赤外線センサにて人間を検知する状態を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態2における赤外線センサの一例における平面図である。
【図10】本発明の実施形態3における赤外線検出装置、及びその視野範囲を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3における赤外線検出装置、及びその視野範囲を示す図である。
【図12】図11に示す赤外線検出装置に備わる図1に示す赤外線センサにて得られる画像データの一例を示す図である。
【図13】図11に示す赤外線検出装置に備わる図9に示す赤外線センサにて得られる画像データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板、 2 絶縁膜、 3 赤外線吸収膜、 4 温接点、 5 冷接点、
6 キャビティ、 7 熱電対、 7a アルミニウム膜、
7b ポリシリコン膜、 8 スリット、 10 駆動機構、 10a 回転機構、
10b 移動機構、 20 赤外線検出画素部、
101〜103 赤外線センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠部及びキャビティ部を形成した基板と、該基板上に形成された絶縁膜上に形成され、上記枠部に冷接点を配置し上記キャビティ部に温接点を配置した複数の熱電対を直列に接続して形成されたサーモパイルにて構成される赤外線検出画素部とを備え、複数の上記赤外線検出画素部を配列方向に沿って配列した赤外線センサにおいて、
上記絶縁膜には、上記配列方向に隣接する上記赤外線検出画素部間の位置にて上記配列方向に直角な行方向に沿って形成され上記配列方向への上記赤外線検出画素部間での熱伝導を防止するスリットを備えたことを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
上記スリットは、各赤外線検出画素部の検出視野角に対応して上記配列方向に異なるピッチにて配置される、請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
それぞれの上記赤外線検出画素部が検知する領域の当該赤外線センサからの遠近に対応して各赤外線検出画素部の上記配列方向におけるサイズが異なるように、上記スリットは、異なるピッチで配置される、請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項4】
当該赤外線センサに近い領域を検知する上記赤外線検出画素部を区画する上記スリットのピッチは、当該赤外線センサから離れた領域を検知する上記赤外線検出画素部を区画する上記スリットのピッチよりも大きい、請求項3記載の赤外線センサ。
【請求項5】
上記配列方向に沿って複数の上記赤外線検出画素部を配列した一列の第1画素群に対して上記行方向に隣接して配列され上記第1画素群と同一に形成された第2画素群をさらに備え、上記第1画素群と上記第2画素群とは、上記配列方向に互いにずれて配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
上記第1画素群と上記第2画素群とのずれ量は、上記第1画素群と上記第2画素群とにおいて上記行方向に対応する赤外線検出画素部同士が上記配列方向における長さの1/2に相当する、請求項5記載の赤外線センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の赤外線センサと、
上記赤外線センサにて検知される被検出体に対する上記赤外線センサの相対位置関係を変更する駆動機構と、
を備えたことを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項8】
上記駆動機構は、上記赤外線センサに備わる赤外線検出画素部が配列されている配列方向に直角な行方向に沿って上記赤外線センサを移動させる移動機構と、上記配列方向に沿った上記赤外線センサの中心軸を中心にして上記赤外線センサを回転させる回転機構との少なくとも一方を有する、請求項7記載の赤外線検出装置。
【請求項1】
枠部及びキャビティ部を形成した基板と、該基板上に形成された絶縁膜上に形成され、上記枠部に冷接点を配置し上記キャビティ部に温接点を配置した複数の熱電対を直列に接続して形成されたサーモパイルにて構成される赤外線検出画素部とを備え、複数の上記赤外線検出画素部を配列方向に沿って配列した赤外線センサにおいて、
上記絶縁膜には、上記配列方向に隣接する上記赤外線検出画素部間の位置にて上記配列方向に直角な行方向に沿って形成され上記配列方向への上記赤外線検出画素部間での熱伝導を防止するスリットを備えたことを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
上記スリットは、各赤外線検出画素部の検出視野角に対応して上記配列方向に異なるピッチにて配置される、請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
それぞれの上記赤外線検出画素部が検知する領域の当該赤外線センサからの遠近に対応して各赤外線検出画素部の上記配列方向におけるサイズが異なるように、上記スリットは、異なるピッチで配置される、請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項4】
当該赤外線センサに近い領域を検知する上記赤外線検出画素部を区画する上記スリットのピッチは、当該赤外線センサから離れた領域を検知する上記赤外線検出画素部を区画する上記スリットのピッチよりも大きい、請求項3記載の赤外線センサ。
【請求項5】
上記配列方向に沿って複数の上記赤外線検出画素部を配列した一列の第1画素群に対して上記行方向に隣接して配列され上記第1画素群と同一に形成された第2画素群をさらに備え、上記第1画素群と上記第2画素群とは、上記配列方向に互いにずれて配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
上記第1画素群と上記第2画素群とのずれ量は、上記第1画素群と上記第2画素群とにおいて上記行方向に対応する赤外線検出画素部同士が上記配列方向における長さの1/2に相当する、請求項5記載の赤外線センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の赤外線センサと、
上記赤外線センサにて検知される被検出体に対する上記赤外線センサの相対位置関係を変更する駆動機構と、
を備えたことを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項8】
上記駆動機構は、上記赤外線センサに備わる赤外線検出画素部が配列されている配列方向に直角な行方向に沿って上記赤外線センサを移動させる移動機構と、上記配列方向に沿った上記赤外線センサの中心軸を中心にして上記赤外線センサを回転させる回転機構との少なくとも一方を有する、請求項7記載の赤外線検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−298665(P2008−298665A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146571(P2007−146571)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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