説明

赤外線センサ

【課題】赤外線検出部とキャップレンズとを備えた赤外線センサにおいて、検知エリア以外から入射する赤外線が不正に赤外線検出部に入射することを防止して誤検知の発生を防止する。
【解決手段】赤外線センサ1は、2つの焦電素子2a、2bを内部に有する赤外線検出部3と、2つのレンズ部6a、6bを有するキャップレンズ5と、キャップレンズ5の筒状部5aの内周面を覆うように挿入されたスリーブ状の赤外線反射防止部材7とを備える。各検知エリアA、Bから出射してレンズ部6a、6bによって集光された赤外線Ra、Rbは、筒状部5a内を通過して各焦電素子2a、2bに入射することによってそれぞれ検知エリアA、Bにおける対象物の存在として検出される。検知エリア以外からキャップレンズ5内に入射する赤外線Rrは、赤外線反射防止部材7によって反射を防止され赤外線検出部3に到達せず、従って、誤って対象物を検出することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の検知エリアに人体等の赤外線を放出する対象物が存在するか否かを検出する赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物から放出される赤外線を、焦電素子等から構成される赤外線検出部へ光学レンズによって集光し、該赤外線検出部からの出力電圧に基づいて対象物である人体や小動物等の存在、又は動きを検出する赤外線センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の赤外線センサでは、光学レンズ等の赤外線集光系を経ることによって赤外線検出部に到達する光エネルギーが減少してしまわないように、赤外線検出部の前方に形成された窓材自体を集光レンズ機能を有するものに構成すると共に、窓材の一方の面に赤外線反射防止膜を形成している。
【0003】
また、赤外線検出部に赤外線を集光するための光学レンズが、赤外線検出部に被されるキャップ状部材に一体的に形成された赤外線センサが知られている。この赤外線センサ101は、例えば、図8に示されるように、焦電素子等の赤外線検出素子102a、102bを内部に有するボックス状の赤外線検出部103と、このボックス状の赤外線検出部103の一面に形成された赤外線透過用の窓部104を覆うように被された樹脂製のキャップ状部材105とを備え、キャップ状部材105の上部にレンズ部106a、106bが形成されている。以下、赤外線を集光するための光学レンズが一体的に形成されたキャップ状部材をキャップレンズ105と称する。
【特許文献1】特開平9−311072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、赤外線センサの対象物検知エリアは、赤外線を焦電素子等の赤外線検出素子へ集光する光学レンズの配光特性によって規定される。例えば、図8に示された赤外線センサ101では、赤外線検出部103に2つの焦電素子102a、102bを有し、互いに独立した2つの検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbを各別の焦電素子102a、102bへ集光するように2つのレンズ部106a、106bがキャップレンズ105に形成されている。レンズ部106a、106bは、フレネルレンズに構成されている。
【0005】
ところが、図8に示される従来の赤外線センサ101の場合には、レンズ部106a、106bを透過してキャップレンズ105内に進入した赤外線の一部Rrがキャップレンズ105の筒状部105aの内周面によって反射されて、方向が変更された状態で焦電素子102a、102bへ入射する現象(一般的に回り込みと言われる現象)が生じ、検知エリアA、Bの外側の領域の対象物を誤って検知してしまう不具合が生じる虞があった。また、図8に示される赤外線センサ101のように、複数の検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbを、それぞれ各別の焦電素子102a、102bへ集光するようにして、単一の赤外線センサでありながら複数の検知エリアA、Bの対象物を別々に検知できるように構成した赤外線センサ101において上記の回り込み現象が生じる場合には、例えば検知エリアAからの赤外線Raの相当部分が対応付けられた焦電素子102aに正しく入射せず、本来対応付けられていない側の焦電素子102bに入射してしまうことが生じ得、検知エリア別の対象物検知機能の信頼性が低下するといった不具合が生じる虞もあった。
【0006】
そこで、本発明は、赤外線検出部とキャップレンズとを備えた赤外線センサにおいて、所定の検知エリア以外からキャップレンズ内に入射した赤外線が回り込み現象により不正に赤外線検出部に入射することを防止することによって所定の検知エリア以外の対象物を誤検知することを防止することができる赤外線センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、赤外線検出部と、該赤外線検出部に赤外線を集光するレンズ部を有し、かつ該レンズ部により集光された赤外線が通る光路空間を形成する筒状部を有するキャップレンズと、を備えた赤外線センサにおいて、前記キャップレンズの筒状部の内周面に赤外線の反射を防止する赤外線反射防止部材を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、キャップレンズの筒状部の内周面にある赤外線反射防止部材が、キャップレンズ内の光路空間に入射した赤外線の反射を防止するので、赤外線検出部が所定の検知エリア以外にある対象物を誤って検知してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサについて、図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の赤外線センサ1は、図1及び図2(a)乃至(c)に示されるように、検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbが入射する2つの焦電素子2a、2bを内部に有する赤外線検出部3と、該赤外線検出部3の2つの焦電素子2a、2bに赤外線を集光する2つのレンズ部6a、6bを有するキャップレンズ5と、キャップレンズ5の筒状部5aの内周面を覆うように挿入された赤外線の反射を防止するスリーブ状の赤外線反射防止部材7と、を備える。なお、図2(a)乃至(c)は、キャップレンズ5、赤外線反射防止部材7、及び赤外線検出部3が組み立てられる前の個別の態様を示すものである。
【0010】
赤外線検出部3は、円筒形のケース8と、該ケース8の上面の窓部9に設けられた赤外線透過フィルタ11とを有し、ケース8内の底面に2つの焦電素子2a、2bが、端子12を下方へ突出するようにして固定されている。2つの焦電素子2a、2bは、図3に示されるように、それぞれ極性の異なる2つの素子部2aa、2ab、2ba、2bbを有し、各素子部2aa、2ab、2ba、2bbは、図4に示されるように、電界効果トランジスタ13、14、及びゲート抵抗15、16に接続されている。
【0011】
キャップレンズ5は、光透過性の樹脂材料から構成され、赤外線検出部3のケース8の外周に嵌合する円筒形状の嵌合部5bと、該嵌合部5bが赤外線検出部3のケース8に嵌合されたときにケース8の窓部9の上方を覆うドーム状のキャップ頭部5cとを有する。キャップ頭部5cは、その上部が半球形部5dに形成され、下部が筒状部5aに形成されており、半球形部5dに2つのレンズ部6a、6bが形成され、筒状部5aが、レンズ部6a、6bによって集光された赤外線が通過する光路空間Sを形成している。
【0012】
赤外線反射防止部材7は、例えばカーボンブラック等の顔料をアクリル樹脂やABS樹脂に分散させたものの表面をサンドブラスト処理することによって形成されたスリーブ状部材であり、図2(a)、(b)に示されるように、外径d1が、キャップレンズ5の筒状部5aの内径d2と同一であり、高さh1が、キャップレンズ5の筒状部5aの高さh2より僅かに大きい寸法に形成されている。換言すると、組み立て時に赤外線反射防止部材7がキャップレンズ5のキャップ頭部5c内に挿入されたとき、赤外線反射防止部材7の外周とキャップレンズ5の筒状部5aの間に隙間が生じず、赤外線反射防止部材7の下端と赤外線検出部3のケース8の上面との間にも隙間が生じないように構成されている。組み立てられた状態の赤外線センサ1(図1)の、キャップレンズ5、赤外線反射防止部材7、及び赤外線検出部3のケース8のそれぞれの間に隙間が生じないことによって、キャップレンズ5内における赤外線の不要な反射が防止される。
【0013】
また、赤外線反射防止部材7の上端開口縁は、上方へ向かって先細りになるように斜めに裁断されており、裁断された斜面部7aがキャップ頭部5cの曲面に略沿うようになっている。上記斜面部7aは、キャップ頭部5cのレンズ部6a、6bを覆うことによってレンズ部6a、6bの有効面積を実質的に減少させることから、可能な限り小面積であることが望ましく、赤外線反射防止部材7の厚みt自体を薄くすることによって斜面部7aを小面積にすることが望ましい。換言すると、赤外線反射防止部材7は、可能な限り肉薄のスリーブ状であることが望ましい。なお、赤外線反射防止部材7の材質は、黒色に着色されたプラスチックであって、表面につやが生じないように粗面処理されたものであればよい。
【0014】
次に、本実施形態の赤外線センサ1の検知動作について、図1を参照して説明する。検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbは、それぞれレンズ部6a、6bによって集光され、キャップレンズ5の筒状部5aによって形成された光路空間Sを通って赤外線検出部3の各焦電素子2a、2bへ入射する。従って、焦電素子2aから検知出力が発生するときには、検知エリアAに人体等の赤外線を放出する対象物が存在することが検出され、焦電素子2bから検知出力が発生するときには、検知エリアBに人体等の赤外線を放出する対象物が存在することが検出される。
【0015】
一方、検知エリアA、B以外からキャップ頭部5cを透過してキャップレンズ5内に進入した赤外線Rrは、赤外線反射防止部材7によって反射を防止され(吸収され)、赤外線検出部3に到達することがなく、いずれの焦電素子2a、2bからも検知出力が発生しないので、検知エリアA、B以外からの赤外線を誤って検知してしまう虞が低減される。また、例えば、検知エリアAからの赤外線であって、レンズ部6aによって集光された後に、焦電素子2aに至る正規の光路を外れて比較的急な角度で赤外線反射防止部材7に向かう赤外線Rsも、赤外線反射防止部材7によって反射を防止され(吸収され)、焦電素子2bに到達することがないので、検知エリアAからの赤外線Raを焦電素子2bにより検出することによって、検知エリアBに対象物が存在するという誤った検出を行うことが防止される。
【0016】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサについて、図5を参照して説明する。第2の実施形態に係る赤外線センサ1は、第1の実施形態に係る赤外線センサ1とほぼ同一の構造であり、異なるところは、赤外線反射防止部材7がスリーブ状部材ではなくテープ状部材である点である。第1の実施形態の赤外線センサ1と同一構造部分については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0017】
第2の実施形態の赤外線センサ1における赤外線反射防止部材7は、第1の実施形態の赤外線センサ1における赤外線反射防止部材7と同様に、例えばカーボンブラック等の顔料をアクリル樹脂やABS樹脂に分散させたものの表面をサンドブラスト処理することによって形成されたテープ状部材であり、アクリル系の接着剤によってキャップレンズ5の筒状部5aの内周面に接着されている。テープ状であることから、厚みtを、スリーブ状である場合よりも容易に薄くでき、キャップ頭部5cのレンズ部6a、6bを覆う面積を最小限にすることができる。
【0018】
本実施形態の赤外線センサ1による検知動作は、第1の実施形態の赤外線センサ1と同様に、検知エリアA、B以外からキャップ頭部5cを透過してキャップレンズ5内に進入した赤外線Rrは、赤外線反射防止部材7によって反射を防止され(吸収され)、赤外線検出部3に到達することがなく、いずれの焦電素子2a、2bからも検知出力が発生しないので、検知エリアA、B以外からの赤外線を誤って検知してしまう虞が低減される。また、例えば、検知エリアAからの赤外線であって、レンズ部6aによって集光された後に、赤外線反射防止部材7に向かう赤外線Rsも、赤外線反射防止部材7によって反射を防止され(吸収され)、焦電素子2bに到達することがないので、検知エリアBに対象物が存在するという誤った検出を行うことが防止される。
【0019】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る赤外線センサについて、図6及び図7を参照して説明する。第3の実施形態に係る赤外線センサ1は、第1の実施形態に係る赤外線センサ1とほぼ同一の構造であり、異なるところは、スリーブ状の赤外線反射防止部材7内に仕切り板部7bが設けられた点である。第1の実施形態の赤外線センサ1と同一構造部分については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0020】
第3の実施形態の赤外線センサ1における赤外線反射防止部材7は、第1の実施形態の赤外線センサ1における赤外線反射防止部材7と同様に、例えばカーボンブラック等の顔料をアクリル樹脂やABS樹脂に分散させたものの表面をサンドブラスト処理することによって形成されたスリーブ状部材であり、スリーブ内を横方向に2分割するようにして仕切り板部7bが設けられている。仕切り板部7bは、図6に示されるように、各レンズ部6a、6bによって集光された赤外線Ra、Rbが各焦電素子2a、2bへ入射する光路を遮らないように、平面視において各焦電素子2a、2bの中間の位置に設けられ、仕切り板部7bの厚さs1は、各焦電素子2a、2bの離間距離s2とほぼ同一に設定されている。
【0021】
本実施形態の赤外線センサ1による検知動作は、第1の実施形態の赤外線センサ1とほぼ同様であるが、仕切り板部7bが上記の位置に存在することによって、キャップレンズ5内の光路空間Sを通過する赤外線Ra、Rbが確実に分離されるので、レンズ部6a(又は6b)によって集光された赤外線Ra(又はRb)が焦電素子2b(又は2a)に入射してしまい、実際には存在しない検知エリアにおいて対象物が存在すると誤検知してしまう不具合の発生がより防止される。
【0022】
また、仕切り板部7bの厚さs1が各焦電素子2a、2bの離間距離s2とほぼ同一に設定されることによって、各検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbを最も効率よく制限して各焦電素子2a、2bへ入射させることができる。具体的には、仕切り板部7bの厚さs1の方が各焦電素子2a、2bの離間距離s2よりも大きい場合には(図8(a)参照)、各検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbの対向する領域Rah、Rbhが仕切り板部7bによって遮られて各焦電素子2a、2bへ入射する光量が減少してしまう不具合があり、仕切り板部7bの厚さs1の方が各焦電素子2a、2bの離間距離s2よりも小さい場合には(図8(b)参照)、各検知エリアA、Bからの赤外線Ra、Rbの交差する領域Rcが各焦電素子2a、2bへ入射して検知エリアの区切りがあいまいになってしまうといった不具合があるが、仕切り板部7bの厚さs1が各焦電素子2a、2bの離間距離s2とほぼ同一に設定される本実施形態の場合には、上記のような不具合を最も効率よく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサを示す側断面図。
【図2】(a)は同赤外線センサのキャップレンズの側断面図、(b)は同赤外線センサの赤外線反射防止部材の側面図、(c)は同赤外線センサの赤外線検出部の側断面図。
【図3】同赤外線センサの焦電素子の配置を示す平面図。
【図4】同赤外線センサの焦電素子に接続された検知出力回路を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサを示す側断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る赤外線センサを示す側断面図。
【図7】同赤外線センサにおける赤外線反射防止部材の平面図。
【図8】(a)は比較例としての赤外線センサにおいて仕切り板部の厚さが厚い場合の各検知エリアからの赤外線の入射状況を示す図、(b)は比較例としての赤外線センサにおいて仕切り板部の厚さが薄い場合の各検知エリアからの赤外線の入射状況を示す図。
【図9】従来の赤外線センサの側断面図。
【符号の説明】
【0024】
1 赤外線センサ
3 赤外線検出部
5 キャップレンズ
5a 筒状部
6a、6b レンズ部
Ra、Rb、Rr、Rs 赤外線
S 光路空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検出部と、該赤外線検出部に赤外線を集光するレンズ部を有し、かつ該レンズ部により集光された赤外線が通る光路空間を形成する筒状部を有するキャップレンズと、を備えた赤外線センサにおいて、
前記キャップレンズの筒状部の内周面に赤外線の反射を防止する赤外線反射防止部材を持つことを特徴とする赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−268128(P2008−268128A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114603(P2007−114603)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】