説明

赤外線熱センサ装置

【課題】熱センサの検出結果と条件との比較によって設定モードに移行して絶対温度補正を行う。
【解決手段】 装置本体10と;赤外域の輻射エネルギ強度を検出する熱センサ11と;キャリブレーション情報を記憶するための記憶部14と;前記熱センサ11の検出結果に応じて設定モードに移行して、前記キャリブレーション情報を前記記憶部14に記憶させる制御部12と;を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線によって熱を検出する赤外線熱センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線を検出することで、物体の温度を検出する赤外線熱センサ装置が開発されている。対象物である物体は、その温度に応じた赤外線を放出しており、温度と放射される赤外線エネルギとは一定の関係を有する。赤外線熱センサ装置は、物体からの遠赤外域の輻射エネルギを検出することで、物体の温度を求める。
【0003】
このような赤外線熱センサ装置を、室内の天井等にとりつけ、人感センサとして用いることが考えられる。しかしながら、このような赤外線熱センサ装置においては、赤外線量が取り込まれない(赤外線量が0)の場合の温度を基準として、赤外線量に応じて温度を認識する。即ち、従来の赤外線熱センサ装置においては相対的な温度しか認識することができない。
【0004】
なお、特許文献1においては、数式を用いて絶対温度を算出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−181626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の提案では、固定された数式を用いて絶対温度を算出していることから、室内の任意の場所に存在する人物の体温を検出する場合のように、検出環境が異なるときには絶対温度を算出することができないことがあるという問題点があった。また、天井等に埋め込んで使用する場合には、絶対温度検出のためのキャリブレーション作業が煩雑であるという問題もあった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、簡単にキャリブレーション作業を行うことを可能にして、絶対的な温度の検出を容易にすることができる赤外線熱センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の赤外線熱センサ装置は、装置本体と;赤外域の輻射エネルギ強度を検出する熱センサと;キャリブレーション情報を記憶するための記憶部と;前記熱センサの検出結果に応じて設定モードに移行して、前記キャリブレーション情報を前記記憶部に記憶させる制御部と;を具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の赤外線熱センサ装置は、前記記憶部が、前記設定モードに移行するための条件を記憶し、前記制御部は、前記記憶部から読み出した条件に従って前記設定モードへの移行を行うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の赤外線熱センサ装置は、前記記憶部が、外部からネットワークを介して前記設定モードに移行するための条件が伝送されて記憶されることを特徴とする。
【0010】
そして、赤外線熱センサ装置において、熱センサは、遠赤外域の輻射エネルギ強度を検出する。制御部は、熱センサの検出結果に応じて設定モードに移行して、キャリブレーションを行う。キャリブレーション情報は、記憶部に記憶させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単にキャリブレーション作業を行うことを可能にして、絶対的な温度の検出を容易にすることができるという効果を有する。
【0012】
こうして、設定モードへの移行が容易であると共に、記憶部に記憶されたキャリブレーション情報に基づいて絶対的な温度の判定を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る赤外線熱センサ装置を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す赤外線熱センサ装置は、例えば、オフィスビルや各種施設などの各フロアや各エリアなどの人感センサ等に用いることができる。図1において、赤外線熱センサ装置1は、装置本体10およびこの装置本体に配設される熱センサ11、制御部12、ネットワーク通信部13、記憶部14からなる。
【0016】
熱センサ11は遠赤外域の輻射エネルギ強度を検出し、検出結果を制御部12に出力する。熱センサ11としては、例えば、センサ部がアレイ状に配置された熱画像センサを用いてもよい。
【0017】
制御部12は、マイクロコンピュータ等によって構成することができ、熱センサ11からのデータを取込んで各種処理を行う。記憶部14は制御部12からの情報を記憶する。ネットワーク通信部13は、有線または無線通信が可能に構成されており、図示しない無線または有線の外部のネットワークに接続されており、制御部12からのデータを外部に出力すると共に、外部からのデータを制御部12に与える。
【0018】
なお、ネットワーク通信部13は、無線通信によってリモコンと通信可能に構成されていてもよい。
【0019】
本実施の形態においては、制御部12は、記憶部14に、熱センサ11のキャリブレーション情報を保持させるようになっている。更に、本実施の形態においては、制御部12は、熱センサ11のキャリブレーションを行う設定モードへの移行の条件を、記憶部14に記憶させるようになっている。なお、制御部12は、外部からネットワーク通信部13を介して取り込まれた設定モード移行条件を記憶部14に記憶させることができるようになっている。これにより、設定モード移行条件の変更を容易に行うことが可能である。
【0020】
設定モード移行条件としては、種々の条件が考えられる。例えば、ネットワーク通信部13と通信可能な図示しないリモコン装置等を用いて、設定モードへの移行を指示してもよい。また、所定の時間スケジュールに従って、設定モードに移行するようにしてもよい。更に、本実施の形態においては、熱センサ11の検出結果に基づく設定モード移行条件を採用することもできる。
【0021】
さらに、このリモコン装置を用いて、設定モードへの移行条件を設定または変更できるようにしてもよい。
【0022】
例えば、熱センサ11の検出結果が「高温→常温→検知無し」と変化し、この変化が3回繰返されることによって、設定モードに移行するという条件を採用することも可能である。上述したように、熱センサ11はキャリブレーションを施さなければ、温度の絶対的な値は検出困難である。しかし、適宜の閾値を設定することで、極めて高温であること、常温であること、赤外線を検知していないことは区別することは可能である。そこで、「高温→常温→検知無し」の検出結果が所定時間内に3回繰り返されることを設定モード移行条件とすることで、確実に設定モードへの移行が可能である。
【0023】
なお、「高温→検知無し」、「高温→常温」の検知結果が複数回繰り返されること、あるいはこれらの状態変化を適宜組合せたものを設定モードへの移行条件としてもよい。
【0024】
さらに、本願の赤外線熱センサ装置は、リモコン装置によって、または外部ネットワークを介して送信された信号に応じて閾値が設定、変更される構成であってもよい。
【0025】
制御部12は、設定モード時には、既知の熱源に対する熱センサ11の検出結果を、キャリブレーション情報として記憶部14に記憶させるようになっている。例えば、摂氏40度の熱源の検知結果を記憶部14に記憶させる。これにより、通常モード時には、熱センサ11の検出結果から、少なくとも摂氏40度の熱源の存在については、認知可能である。
【0026】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
図2のステップS1においては、通常モードが起動される。熱センサ11は遠赤外域の輻射エネルギを検出して検出結果を制御部12に出力する。制御部12は、輻射エネルギの検出結果に基づいて、対象物の温度を求める。例えば、制御部12は、求めた温度を図示しない表示部に出力してもよく、また、ネットワーク通信部13を介して外部に出力してもよい。更に、熱センサ11を人感センサとして用いた場合には、制御部12は、輻射エネルギの検出結果に基づいて、人物が存在するか否かを判定し、判定結果を出力するようにしてもよい。
【0028】
記憶部14には、設定モード移行条件が記憶されている。制御部12は、ステップS2において、設定モード移行条件を満足(yes)するか否(no)かを判定する。いま、熱センサ11から「高温→常温→検知無し」の検出結果が所定時間内、例えば10秒以内に3回繰り返されることが設定モード移行条件であるものとする。
【0029】
設定モードに移行させる場合には、適宜の手段によって、熱センサ11に既知の高温の熱源を検知させ、次いで常温の熱源を検知させ、更に熱センサ11への赤外線の輻射を遮断する処理を3回繰返す。これにより、制御部12は、高温の検知結果、常温の検知結果及び検知無しという検知結果を3回繰返して取得する。そうすると、制御部12は、ステップS3において設定モードに移行する。
【0030】
制御部12は設定モードにおいてはキャリブレーションのための検知を行う。例えば、適宜の手段によって、熱センサ11に既知の温度の熱源を検知させる。熱センサ11を人感センサとして用いる場合には、人の体温を既知の熱源とする。いま、例えば摂氏40度の熱源を熱センサ11に検知させるものとする。制御部12は、設定モード移行後または常温を検出した後所定の時間を設定して、キャリブレーションを行う(ステップS4)。即ち、制御部12は設定モードにおいて熱センサ11の検出結果が摂氏40度であるとして予め設定しておき、熱センサ11の検出結果を摂氏40度として記憶部14に記憶させる。
【0031】
設定モード移行後または常温の検出から所定期間が経過すると、制御部12は通常モードに移行する(ステップS5)。なお、LED、有機ELまたは液晶等からなる表示部を設け設定モードに移行した事、または設定モードが終了した事を表示させてもよい。また、複数の温度についてキャリブレーションを行うことで複数の温度の対象物を識別し、それぞれの対象物を確実に検知することができる。
【0032】
さらに、既知の熱源として設定される絶対温度はネットワーク通信部13を介して外部ネットワークに接続された図示しない設定機器またはリモコン装置を用いて設定、変更を行ってもよい。
【0033】
以後、制御部12は熱センサ11の出力と、記憶部14に記憶させた摂氏40度時の検出結果との比較によって、熱センサ11の検出結果が40度を示すものであるか否かを判定する。こうして、通常モードにおいて、少なくとも摂氏40度については、絶対的な温度の判定が可能である。
【0034】
摂氏40度の既知の熱源のみを用いてキャリブレーションを行ったが、温度が異なる複数の熱源を用いて同様のキャリブレーションを行うことで、複数の温度範囲について絶対的な温度判定を行うことができることは明らかである。
【0035】
このように、本実施の形態においては、熱センサの検出結果に基づいて自動的に設定モードへの移行が可能であり、更に、実際に既知の熱源を検知させることでキャリブレーションを行っており、実際の使用環境に応じた確実なキャリブレーションによって、絶対的な温度の判定を可能にすることができる。熱センサの検出結果を利用して設定モードに移行しており、装置を天井に設置する場合等のように制御部に対する入力が困難である場合においても、容易に設定モードへの移行が可能である。更に、実際の使用環境でのキャリブレーションが可能であるので、設置した室内や検出対象の位置等に応じた正確な温度判定が可能である。
【0036】
また、ネットワーク通信部を介して記憶部にデータを蓄積することで、外部から設定モード移行条件を設定すると共に、キャリブレーションの温度も設定することができ、装置設置後の設定作業が極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る赤外線熱センサ装置を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0038】
1…赤外線熱センサ装置
10…装置本体
11…熱センサ
12…制御部
13…ネットワーク通信部
14…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と;
赤外域の輻射エネルギ強度を検出する熱センサと;
キャリブレーション情報を記憶するための記憶部と;
前記熱センサの検出結果に応じて設定モードに移行して、前記キャリブレーション情報を前記記憶部に記憶させる制御部と;
を具備したことを特徴とする赤外線熱センサ装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記設定モードに移行するための条件を記憶し、
前記制御部は、前記記憶部から読み出した条件に従って前記設定モードへの移行を行うことを特徴とする請求項1に記載の赤外線熱センサ装置。
【請求項3】
前記記憶部は、外部からネットワークを介して前記設定モードに移行するための条件が伝送されて記憶されることを特徴とする1又は2のいずれか一方に記載の赤外線熱センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−31108(P2009−31108A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194994(P2007−194994)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】