説明

赤外線通信装置及びフィールド機器

【課題】作業者の作業性を向上させて赤外線通信に係る作業を短時間で完了させることができる赤外線通信装置及びフィールド機器を提供する。
【解決手段】赤外線アダプタ2bは、外部のフィールド機器に向けた赤外光を射出する赤外線受発光部21と、赤外光が射出される方向にレーザ光を射出するレーザ発光部22とを備えており、接続ケーブル2cによってノート型のパーソナルコンピュータ等の携帯性を有する端末装置に接続されて外部のフィールド機器と赤外線通信を行う。この赤外線アダプタ2bと赤外線通信を行うフィールド機器には、赤外線アダプタ2bからの赤外光を受光する受光部の周囲に、赤外線アダプタ2bからのレーザ光の照射によって蛍光を発し、或いは、赤外線アダプタ2bからのレーザ光を反射する指示部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線通信装置及びフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
フィールド機器は、流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器の総称である。従来のフィールド機器は、プラント等に敷設された有線の通信バスを介して測定信号や制御信号等の各種信号の送受信を行うものが殆どであったが、近年では、ISA100.11aやWirelessHART等の産業用無線通信規格に準拠して無線により各種信号の送受信を行うフィールド機器(無線フィールド機器)が実現されている。
【0003】
上記の産業用無線通信規格に準拠した無線通信システムは、おおよそ上記の無線フィールド機器、無線ネットワーク管理装置、及び上位管理装置から構成される。無線ネットワーク管理装置は、無線フィールド機器との間で無線通信を行いながら、無線ネットワークに接続された無線フィールド機器を統括して管理する装置である。上位管理装置は、無線通信システムの管理者によって操作され、管理者の指示に応じて無線フィールド機器との間で個別に通信を行って、無線フィールド機器に対する各種設定、調整、故障診断等を実現する装置である。
【0004】
ここで、上記の無線フィールド機器を無線ネットワークに参入させるには、参入する側の無線フィールド機器に対して「プロビジョニング(Provisioning)」と呼ばれる機器情報の取得作業を行うとともに、参入される側の無線ネットワーク管理装置に対してプロビジョニングを行った無線フィールド機器を特定する機器情報の登録作業を行う必要がある。無線フィールド機器に対するプロビジョニングは、例えば無線フィールド機器との間で赤外線通信が可能な赤外線通信装置を用いて作業者により行われ、無線ネットワーク管理装置に対する登録作業は上位管理装置を用いて管理者により行われる。
【0005】
無線ネットワーク管理装置に登録された機器情報と一致する機器情報が設定されている無線フィールド機器は無線ネットワーク管理装置によって無線ネットワークへの参入が許可され、それ以外の機器情報が設定された無線フィールド機器は無線ネットワーク管理装置によって無線ネットワークへの参入が拒否される。尚、フィールド機器のプロビジョニングについては、例えば以下の非特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山本周二,他2名,「計装を革新するISA100.11a準拠フィールド無線ソリューション」,横河技報,Vol.53,No.2,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したプロビジョニングを行う場合には、作業者が、赤外線通信装置に設けられた赤外光の受発光部を無線フィールド機器に設けられた赤外光の受発光部に向かい合わせ、赤外線通信が可能な距離まで赤外線通信装置を無線フィールド機器に近づける必要がある。しかしながら、無線フィールド機器は、プラント等に設置されるものであるため、作業者が作業しやすい場所に設置されるものもあれば、作業しづらい場所に設置されるものもあり、プロビジョニングが困難になる状況が生ずることもある。
【0008】
例えば、無線フィールド機器が薄暗い場所に設置されている場合には、作業者が無線フィールド機器に設けられた受発光部の位置を特定することが困難になり、赤外線通信装置の向きを定めることができない状況が生じ得る。このような状況では、赤外線通信装置を上下左右に振って赤外線通信が可能となる方向を探る操作が作業者によって行われることが多い。しかしながら、かかる操作によって赤外線通信が開始されたとしても、直ちに赤外線通信装置の向きが変わることから赤外線通信が途切れる可能性が高く、赤外線通信に失敗した場合には上記の作業を繰り返す必要がある。このように、作業者が作業しづらい場所に無線フィールド機器が設置されている場合には、プロビジョニングに時間を要するという問題がある。
【0009】
また、無線フィールド機器に設けられる受発光部が大きければ(例えば、数センチメートル四方程度以上であれば)、赤外線通信装置の向きが多少ずれても赤外線通信が失敗する確率は低いと考えられる。しかしながら、小型の無線フィールド機器は、受発光部が必然的に小さくなる(例えば、1センチメートル四方以下になる)ため、赤外線通信装置の向きが多少ずれただけでも赤外線通信が失敗する確率が高くなると考えられる。このように、小型の無線フィールド機器については、赤外線通信装置の向きを定めるのが困難になる状況が生じ安くなるため、プロビジョニングに要する時間が長くなる傾向があるという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、作業者の作業性を向上させて赤外線通信に係る作業を短時間で完了させることができる赤外線通信装置及びフィールド機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の赤外線通信装置は、外部の機器と赤外線通信を行う赤外線通信装置(2b、5、6、7)において、前記外部の機器に向けた赤外光を射出する赤外光射出部(21、41)と、前記赤外光が射出される方向にレーザ光を射出するレーザ光射出部(22、42)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、赤外光射出部から外部の機器に向けた赤外光が射出されるとともに、レーザ光射出部から赤外光が射出される方向にレーザ光が射出される。
また、本発明の赤外線通信装置は、前記レーザ光射出部からレーザ光を射出させるか否かを切り替えるスイッチ部(24、31)を備えることを特徴としている。
また、本発明の赤外線通信装置は、前記赤外光射出部から赤外光を射出させるか否かを制御する制御信号が入力されるインターフェイス部(23)を備えることを特徴としている。
また、本発明の赤外線通信装置は、前記レーザ光射出部から射出されたレーザ光の反射光を受光するレーザ光受光部(33)と、前記レーザ光受光部で受光された反射光に基づいて、前記外部の機器との距離を算出する算出部(34)と、前記算出部で算出された距離に応じて、前記赤外光射出部から赤外光を射出させるか否かを制御する制御部(35)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の赤外線通信装置は、前記外部の機器からの赤外光を受光する赤外光受光部(21、41)を備えることを特徴としている。
本発明のフィールド機器は、赤外線通信が可能なフィールド機器(1a、1b、1c)において、上記の何れかに記載の赤外線通信装置から射出される赤外光を受光する受光部(12)と、記受光部の周囲の少なくとも一部に設けられ、前記赤外線通信装置から射出されるレーザ光の照射により蛍光を発し、或いは、前記赤外線通信装置から射出されるレーザ光を前記赤外線通信装置に向けて反射する指示部(13、14)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、赤外線通信装置が外部の機器に向けた赤外光を射出するとともに、赤外光の射出方向にレーザ光を射出する構成であり、フィールド機器が赤外線通信装置との間で赤外線通信を行うとともに、赤外線通信装置から射出されるレーザ光により蛍光を発し、或いはレーザ光を反射する構成である。このため、作業者は、赤外線通信装置から射出されるレーザ光が照射されることによって発せられる蛍光又は反射光を目印にして赤外線通信装置の向きを定めることができ、赤外線通信に係る作業を短時間で完了させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による赤外線通信装置及びフィールド機器が用いられる通信システムの要部構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるフィールド機器の表示部を示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による赤外線通信装置の外観を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるフィールド機器の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による赤外線通信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるレーザ光の光路を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態による赤外線通信装置及びフィールド機器が用いられる通信システムの要部構成を示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態による赤外線通信装置の一部を切り欠いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による赤外線通信装置及びフィールド機器について詳細に説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による赤外線通信装置及びフィールド機器が用いられる通信システムの要部構成を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の通信システムCS1は、無線フィールド機器1a,1b(フィールド機器)、プロビジョニング装置2、無線ネットワーク管理装置3、及び上位管理装置4から構成され、無線フィールド機器1a,1bと無線ネットワーク管理装置3との間、或いは、無線ネットワーク管理装置3を介して無線フィールド機器1a,1bと上位管理装置4との間で通信が行われる。尚、図1では2つの無線フィールド機器1a,1bを示しているが、無線フィールド機器の数は任意である。
【0016】
無線フィールド機器1a,1bは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これら無線フィールド機器1a,1bの動作は、無線ネットワーク管理装置3或いは上位管理装置4から送信されてくる制御データに基づいて制御され、無線フィールド機器1a,1bで得られた測定データは、無線ネットワーク管理装置3或いは上位管理装置4に収集される。
【0017】
また、無線フィールド機器1a,1bは、赤外線通信機能を有しており、外部の赤外線通信機器との間で各種情報の送受信が可能である。具体的に、無線フィールド機器1a,1bは、プロビジョニング装置2との間で赤外線通信を行って、各種の設定情報(例えば、無線ネットワーク管理装置3によって形成される無線ネットワークN2に参入するために必要な情報)を取得するとともに、予め設定された機器情報を送信する。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態によるフィールド機器の表示部を示す正面図である。図2に示す通り、無線フィールド機器1a,1bの表示部10は、正面視の形状が円形形状の部位であって、その内部に表示装置11、赤外線受発光部12(受光部)、及び指示部13が設けられている。表示装置11は、例えば液晶表示装置であり、フィールド機器1a,1bで測定された温度等の測定結果、プロビジョニングを行う作業者に対する各種メッセージ、機器の状態を示す情報等を表示する。
【0019】
赤外線受発光部12は、プロビジョニング装置2から射出される赤外光を受光するとともに、プロビジョニング装置2に向けた赤外光を発する。この赤外線受発光部12で赤外光の受発光が行われることにより、フィールド機器1a,1bとプロビジョニング装置2との間の赤外線通信が実現される。指示部13は、プロビジョニングを行う作業者に対して赤外線受発光部12の位置を指示するために赤外線受発光部12の周囲に設けられた部位である。この指示部13には、プロビジョニング装置2から射出されるレーザ光が照射されると蛍光を発する蛍光体が設けられており、この蛍光体から発せられる蛍光によって赤外線受発光部12の位置が指示される。
【0020】
尚、この指示部13は、赤外線受発光部12の周囲の少なくとも一部に設けられていれば良い。つまり、図2に示す通り赤外線受発光部12の周囲を覆うように赤外線受発光部12の近傍に設けられていても良く、赤外線受発光部12の上部近傍、下部近傍、左部近傍、右部近傍のうちの1つ又は複数の部位に設けられていても良い。或いは、表示装置11及び赤外線受発光部12を除く表示部10全体に設けられていても良い。
【0021】
プロビジョニング装置2は、無線フィールド機器1a,1bとの間で赤外線通信が可能であり、無線フィールド機器1a,1bの設置やメンテナンスを行う作業者によって操作され、無線フィールド機器1a,1bに対する各種情報の設定や変更を行う。具体的に、プロビジョニング装置2は、無線フィールド機器1a,1bとの間で赤外線通信を行って前述した各種の設定情報(無線ネットワークN2に参入するために必要な情報等)を出力するとともに、無線フィールド機器1a,1bに予め設定された機器情報を取得する。
【0022】
このプロビジョニング装置2は、端末装置2a、赤外線アダプタ2b(赤外線通信装置)、及び接続ケーブル2cからなる。端末装置2aは、ノート型のパーソナルコンピュータ等の携帯性を有する端末装置である。この端末装置2aには、無線フィールド機器1a,1bに対するプロビジョニングを行うためのソフトウェア及び赤外線アダプタ2bを駆動するソフトウェア(ドライバ)がインストールされている。
【0023】
赤外線アダプタ2bは、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等の接続ケーブル2cによって端末装置2aに接続され、端末装置2aの制御の下でフィールド機器1a,1bに向けた赤外光を発するとともに、フィールド機器1a,1bから射出される赤外光を受光する。この赤外線アダプタ2bで赤外光の受発光が行われることにより、フィールド機器1a,1bとプロビジョニング装置2との間の赤外線通信が実現される。
【0024】
また、赤外線アダプタ2bは、作業者の操作に応じて赤外光が射出される方向にレーザ光を射出する。赤外線アダプタ2bから射出されるレーザ光は、可視レーザ光(例えば、波長が635〜690nm程度の赤色レーザ光、或いは、波長が530nm程度の緑色レーザ光)である。このように、赤外線アダプタ2bからレーザ光を射出させるのは、作業者が赤外線アダプタ2bの向きを無線フィールド機器1a,1bに設けられた赤外線受発光部12(図2参照)の方向に容易に合わせられるようにするためである。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態による赤外線通信装置の外観を示す図であって、(a)は接続ケーブルが接続された状態の平面図であり、(b)は前方斜視図であり、(c)は後方斜視図である。図3に示す通り、赤外線アダプタ2bは、平面視形状が略矩形形状である平板状の筐体を有する部材であり、作業者の右手又は左手に把持された状態で使用される。この赤外線アダプタ2bは、その前面20aに赤外線受発光部21(赤外光射出部、赤外光受光部)及びレーザ発光部22(レーザ光射出部)が設けられており、その背面20bに接続コネクタ23(インターフェイス部)が設けられており、その上面20cにスイッチ24(スイッチ部)が設けられている。
【0026】
赤外線受発光部21は、無線フィールド機器1a,1bに向けた赤外光を発するとともに、無線フィールド機器1a,1bから射出される赤外光を受光する。レーザ発光部22は、赤外線受発光部21から赤外光が射出される方向に、上述した波長を有するレーザ光を射出する。接続コネクタ23は、例えばメス型のUSBコネクタであり、接続ケーブル2cの一端が接続されて端末装置2aからの制御信号(赤外線受発光部21から赤外光を射出させるか否かを制御する制御信号)が入力される。この接続コネクタ23が設けられていることにより、接続ケーブル2cが赤外線アダプタ2bに対して着脱自在である。
【0027】
スイッチ24は、作業者によって操作され、その操作に応じてレーザ発光部22からレーザ光を射出するか否かを切り替える。具体的に、作業者によってスイッチ24が押下された場合に、レーザ発光部22からレーザ光が射出される。尚、赤外線受発光部21から赤外線を射出させ、或いは、レーザ発光部22からレーザ光を発光させるために必要となる電源は、接続ケーブル2cを介して端末装置2aから供給される。また、端末装置2aから出力される制御信号によってレーザ光の射出を制御可能に構成しても良い。
【0028】
無線ネットワーク管理装置3は、上位管理装置4が接続される有線ネットワークN1と、無線フィールド機器1a,1bが接続される無線ネットワークN2とを接続し、無線フィールド機器1a,1bと上位管理装置4との間で送受信される各種データの中継を行うとともに、上位管理装置4の管理の下で無線フィールド機器1a,1bを制御する。尚、無線ネットワーク管理装置3も上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。
【0029】
具体的に、無線ネットワーク管理装置3は、上位管理装置4の管理の下で、無線ネットワークN2に参入している無線フィールド機器1a,1bの制御(例えば、弁の開閉等の制御)、及び無線ネットワークN2に参入している無線フィールド機器1a,1bで測定される測定データの収集等を行う。また、無線ネットワーク管理装置3には、無線ネットワークN2への参入が許可される無線フィールド機器を示す機器情報が登録されており、この機器情報を用いて新たな無線フィールド機器を無線ネットワークN2に参入させるか否かの参入処理等も行う。
【0030】
上位管理装置4は、有線ネットワークN1に接続されており、通信システムCS1の管理者によって操作される装置であり、例えばデスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ等で実現される。この上位管理装置4は、無線ネットワーク管理装置3との間で各種情報の授受を行い、或いは無線ネットワーク管理装置3を介して無線フィールド機器1a,1bに各種制御データを送信して、無線ネットワーク管理装置3及び無線フィールド機器1a,1bの管理を行う。
【0031】
次に、上記構成における通信システムCS1の無線ネットワークN2に、図1中の無線フィールド機器1aを新たに参入させる場合の動作について説明する。無線ネットワークN2に対し、新たに無線フィールド機器1aを参入させる場合には、まず作業者が無線フィールド機器1aに登録すべき情報をプロビジョニング装置2の端末装置2aに入力する。具体的には、無線ネットワークのID、ジョインキー、無線ネットワーク管理装置3のアドレス情報等を入力する。
【0032】
以上の入力作業が終了すると、作業者は、例えばプロビジョニング装置2の端末装置2aを左手に把持するとともに赤外線アダプタ2bを右手に把持し、赤外線アダプタ2bを把持している右手の空いている指で端末装置2aに対する赤外線通信開始指示を行う。この指示を行うと、作業者は、無線フィールド機器1aとの間の赤外線通信を実現するために、赤外線アダプタ2bの前面20aを無線フィールド機器1aに向けるとともに、赤外線アダプタ2bに設けられたスイッチ24を押下して赤外線アダプタ2bからレーザ光を射出させる。
【0033】
ここで、例えば無線フィールド機器1aが薄暗い場所に設置されているとすると、作業者は、赤外線アダプタ2bの前面20aを正確に無線フィールド機器1aの赤外線受発光部12に向けることができない。このため、作業者は、赤外線アダプタ2bを上下左右に振って赤外線通信が可能となる方向を探る操作を行う。かかる操作を行っている最中に、レーザ光が無線フィールド機器1aの表示部10に設けられた指示部13に照射されると指示部13から蛍光が発せられる。この蛍光によって、作業者は無線フィールド機器1aの赤外線受発光部12の位置を知ることができるため、蛍光が発せられる方向に赤外線アダプタ2bの向きを固定する。
【0034】
前述した通り、赤外線アダプタ2bからは、赤外光が射出される方向にレーザ光が射出されるため、蛍光が発せられる方向に赤外線アダプタ2bの向きを固定すると、赤外線アダプタ2bの赤外線受発光部21は、必然的に無線フィールド機器1aの赤外線受発光部12の方向に向くことになって赤外線通信が可能となる。これにより、端末装置2aに入力された情報が赤外線アダプタ2bを介して無線フィールド機器1aに送信されるとともに、無線フィールド機器1aの機器情報が赤外線アダプタ2bを介して端末装置2aに送信されてプロビジョニングが完了する。
【0035】
プロビジョニングが完了すると、端末装置2aで得られた無線フィールド機器1aの機器情報が上位管理装置4に出力される。そして、管理者が、上位管理装置4を操作して無線フィールド機器1aの機器情報を無線ネットワーク管理装置3に登録する作業を行う。以上の作業が終了すると、無線フィールド機器1aの機器情報が無線ネットワーク管理装置3に登録されているため、無線フィールド機器1aは無線ネットワーク管理装置3によって無線ネットワークN2への参入が許可される。
【0036】
以上の通り、本実施形態では、赤外線アダプタ2bについては、赤外光を射出する赤外線受発光部21に加えて、赤外光が射出される方向にレーザ光を射出するレーザ発光部22を設けた構成にし、無線フィールド機器1a,1bについては、赤外線アダプタ2bから射出される赤外光を受光する赤外線受発光部12の周囲の少なくとも一部にレーザ光の照射によって蛍光を発する指示部13を設けた構成にしている。このため、作業者は、赤外線アダプタ2bから射出されるレーザ光が無線フィールド機器1a,1bの指示部13に照射されることによって発せられる蛍光を目印にして、赤外線アダプタ2bの向きを定めることができる。これにより、作業者の作業性が向上してプロビジョニングに係る作業を短時間で完了させることができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態によるフィールド機器の正面図である。図4に示す無線フィールド機器1cが、図1,2に示す無線フィールド機器1a,1bと相違する点は、表示部10の内部に設けられる指示部13が指示部14に変更された点である。図1,2に示す無線フィールド機器1a,1bの指示部13には、レーザ光が照射されると蛍光を発する蛍光体が設けられていたが、図4に示す無線フィールド機器1cの指示部14には、レーザ光を反射する反射部材が設けられている。また、図2に示す指示部13は赤外線受発光部12の周囲を覆うように赤外線受発光部12の近傍に設けられていたが、図4に示す指示部14は、表示装置11及び赤外線受発光部12を除く表示部10の全体に設けられている。
【0038】
作業者は、指示部14で反射されるレーザ光を目印にすることで、第1実施形態と同様に作業効率を向上させることができる。ここで、指示部14に設けられる反射部材としては、赤外線アダプタ2bからのレーザ光を赤外線アダプタ2bに向けて反射するコーナーキューブ等を用いることができる。このコーナーキューブは、例えば互いに90°の角度をなす3つの反射面を有する単位部材が、表示装置11及び赤外線受発光部12を除く表示部10の全体に敷き詰めらるように形成されたプラスチック素材のものである。
【0039】
図5は、本発明の第2実施形態による赤外線通信装置の要部構成を示すブロック図である。本実施形態の赤外線通信装置としての赤外線アダプタ5は、外部構成が図1,図3に示す赤外線アダプタ2bと同様であり、接続ケーブル2cによって端末装置2aに接続された状態で用いられる。但し、本実施形態の赤外線アダプタ5は、無線フィールド機器1cとの距離を測定し、この測定結果に基づいて赤外線通信を行うか否かを制御することが可能である。
【0040】
図5に示す通り、赤外線アダプタ5は、スイッチ部31、レーザ駆動部32、レーザ受光部33(レーザ光受光部)、距離演算部34(算出部)、制御部35、及び赤外線受発光部36を備える。スイッチ部31は、作業者による図3に示すスイッチ24の操作に応じてレーザ駆動部32を動作させる。レーザ駆動部32は、図3に示すレーザ発光部22を備えており、スイッチ部31の指示に応じてレーザ発光部22を駆動する。レーザ受光部33は、無線フィールド機器1cから反射されるレーザ光を受光する。
【0041】
距離演算部34は、レーザ受光部33の受光結果に基づいて、無線フィールド機器1cとの間の距離を求める。例えば、レーザ駆動部32で図2に示すレーザ発光部22が駆動されてレーザ光が射出されてから、無線フィールド機器1cの指示部14で反射されたレーザ光がレーザ受光部33で受光されるまでの時間から距離を求める。制御部35は、距離演算部34で求められた距離に応じて、赤外線受発光部36を用いてフィールド機器1cとの間で赤外線通信を行うか否かを制御する。赤外線受発光部36は、図3に示す赤外線受発光部21に相当するブロックである。
【0042】
上記構成において、第1実施形態と同様に、作業者が、例えばプロビジョニング装置2の端末装置2aを左手に把持するとともに赤外線アダプタ5を右手に把持した状態で、赤外線アダプタ5を無線フィールド機器1cに向けて、赤外線アダプタ5に設けられたスイッチ24を押下して赤外線アダプタ5からレーザ光を射出させる。赤外線アダプタ5からのレーザ光が、無線フィールド機器1cの指示部14に照射されると、図6に示す通りレーザ光は赤外線アダプタ5に向けて反射される。これは、入射した光をその方向に反射するというコーナーキューブの性質によるものである。図6は、本発明の第2実施形態におけるレーザ光の光路を示す図である。
【0043】
無線フィールド機器1cの指示部14で反射されたレーザ光が赤外線アダプタ5のレーザ受光部33で受光されると、無線フィールド機器1cとの距離が距離演算部34で求められ、その距離を示す情報が制御部35に出力される。制御部35は、距離演算部34からの情報に基づいて、無線フィールド機器1cとの間で赤外線通信が可能であるか否かを判断し、赤外線通信が可能であると判断した場合には、端末装置2aからの制御信号に基づいて赤外線受発光部36を制御して無線フィールド機器1cとの間の赤外線通信を実行させる。
【0044】
以上の通り、本実施形態では、赤外線アダプタ5から射出されるレーザ光が無線フィールド機器1cの指示部14に照射されることによって得られる反射光を目印にして、作業者が赤外線アダプタ5の向きを定めることができる。これにより、作業者の作業性が向上してプロビジョニングに係る作業を短時間で完了させることができる。また、本実施形態では、無線フィールド機器1cとの距離に応じて赤外線通信を行うか否かが制御されるため、作業者の利便性を向上させることができる。
【0045】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態による赤外線通信装置及びフィールド機器が用いられる通信システムの要部構成を示す図である。図7に示す通り、本実施形態の通信システムCS2は、プロビジョニング装置2に代えてプロビジョニング装置6(赤外線通信装置)が用いられる点において図1に示す通信システムCS1と相違する。図1に示すプロビジョニング装置2は、赤外線アダプタ2bを接続ケーブル2cによって端末装置2aに接続することにより赤外線通信が可能となるものであった。これに対し、図7に示すプロビジョニング装置6は、赤外線通信機能を備えるプロビジョニング専用の装置である。
【0046】
具体的に、プロビジョニング装置6は、図3に示す赤外線アダプタ2bと同様に、平面視形状が略矩形形状である平板状の筐体を有する装置であり、作業者の右手又は左手に把持された状態で使用される。このプロビジョニング装置6は、その前面40aに赤外線受発光部41(赤外光射出部、赤外光受光部)及びレーザ発光部42(レーザ光射出部)が設けられており、その上面40bに表示部43及び操作部44が設けられている。
【0047】
以上のプロビジョニング装置6を用いた場合であっても、第1実施形態と同様の手順でプロビジョニングを行うことができる。つまり、作業者がプロビジョニング装置6の操作部44を操作して、無線ネットワークN2に参入させようとする無線フィールド機器(例えば、無線フィールド機器1a)に登録すべき情報を入力し、操作部44を操作して赤外線通信を開始させる指示を行うとともにレーザ光を射出させる。プロビジョニング装置6から射出されたレーザ光が無線フィールド機器1aの指示部13に照射されると指示部13から蛍光が発せられるため、蛍光が発せられる方向にプロビジョニング装置6の向きを固定すれば、ほぼ確実に無線フィールド機器1aとの間で赤外線通信が行われる。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、赤外光を射出する赤外線受発光部41と赤外光が射出される方向にレーザ光を射出するレーザ発光部42とを備えるプロビジョニング装置6を用いている。このため、第1実施形態と同様に、フィールド機器1a,1bの指示部13にレーザ光が照射されることによって発せられる蛍光を目印にしてプロビジョニング装置6の向きを定めることができ、これにより作業者の作業性が向上してプロビジョニングに係る作業を短時間で完了させることができる。尚、プロビジョニング装置6は、レーザ光を反射する指示部14を有する無線フィールド機器1c(図4参照)のプロビジョニングを行う場合にも用いることができる。
【0049】
〔第4実施形態〕
図8は、本発明の第4実施形態による赤外線通信装置の一部を切り欠いた斜視図である。図8に示す通り、プロビジョニング装置7(赤外線通信装置)は、図7に示すプロビジョニング装置6と同様に、平面視形状が略矩形形状である平板状の筐体を有する装置であるが、図3に示す赤外線アダプタ2bが着脱可能に構成されており、赤外線アダプタ2bが装着された状態で赤外線通信が可能となる点において図7に示すプロビジョニング装置6とは相違する。
【0050】
具体的に、プロビジョニング装置7は、その前面50aに赤外線アダプタ2bが介挿される開口部51が形成されており、その上面50bに表示部52及び操作部53が設けられている。プロビジョニング装置7の内部には、開口部51に連通して赤外線アダプタ2bが収容される穴部54が形成されている。この穴部54には、赤外線アダプタ2bが装着された状態で、赤外線アダプタ2bの接続コネクタ23と嵌合する接続コネクタ55が設けられている。尚、接続コネクタ55は、例えばオス型のUSBコネクタである。
【0051】
赤外線アダプタ2bがプロビジョニング装置7に介挿された状態では、嵌合状態にある接続コネクタ55,23を介してプロビジョニング装置7からの制御信号(赤外線通信を行わせる制御信号、或いは、レーザ光を射出させる制御信号)が赤外線アダプタ2bに入力される。尚、プロビジョニング装置7の上面50bに設けられた表示部52及び操作部53は、図6に示すプロビジョニング装置6の上面40bに設けられた表示部43及び操作部44とそれぞれ同様のものである。
【0052】
以上のプロビジョニング装置7を用いても、図7に示すプロビジョニング6と同様の手順でプロビジョニングを行うことができる。このため、フィールド機器1a,1bの指示部13にレーザ光が照射されることによって発せられる蛍光、或いは、図4に示すフィールド機器1cの指示部14で反射されるレーザ光を目印にしてプロビジョニング装置7の向きを定めることができ、これにより作業者の作業性が向上してプロビジョニングに係る作業を短時間で完了させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態による赤外線通信装置及びフィールド機器について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ISA100.11aに準拠した無線通信と赤外線通信とが可能な無線フィールド機器を例に挙げて説明したが、本発明は有線による通信と赤外線通信とが可能な無線フィールド機器にも適用することが可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、無線フィールド機器1a,1b,1c、赤外線アダプタ2b,5、及びプロビジョニング装置6,7の全てが、赤外線の発光及び受光をすることができるものである例について説明した。しかしながら、赤外線アダプタ2b,5、及びプロビジョニング装置6については赤外光の発光のみが可能であり、フィール機器1a,1b,1cについては赤外線の受光のみが可能であるものであっても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1a,1b,1c 無線フィールド機器
2b 赤外線アダプタ
5 赤外線アダプタ
6,7 プロビジョニング装置
12 赤外線受発光部
13,14 指示部
21 赤外線受発光部
22 レーザ発光部
23 接続コネクタ
24 スイッチ
31 スイッチ部
33 レーザ受光部
34 距離演算部
35 制御部
41 赤外線受発光部
42 レーザ発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の機器と赤外線通信を行う赤外線通信装置において、
前記外部の機器に向けた赤外光を射出する赤外光射出部と、
前記赤外光が射出される方向にレーザ光を射出するレーザ光射出部と
を備えることを特徴とする赤外線通信装置。
【請求項2】
前記レーザ光射出部からレーザ光を射出させるか否かを切り替えるスイッチ部を備えることを特徴とする請求項1記載の赤外線通信装置。
【請求項3】
前記赤外光射出部から赤外光を射出させるか否かを制御する制御信号が入力されるインターフェイス部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の赤外線通信装置。
【請求項4】
前記レーザ光射出部から射出されたレーザ光の反射光を受光するレーザ光受光部と、
前記レーザ光受光部で受光された反射光に基づいて、前記外部の機器との距離を算出する算出部と、
前記算出部で算出された距離に応じて、前記赤外光射出部から赤外光を射出させるか否かを制御する制御部と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の赤外線通信装置。
【請求項5】
前記外部の機器からの赤外光を受光する赤外光受光部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の赤外線通信装置。
【請求項6】
赤外線通信が可能なフィールド機器において、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の赤外線通信装置から射出される赤外光を受光する受光部と、
前記受光部の周囲の少なくとも一部に設けられ、前記赤外線通信装置から射出されるレーザ光の照射により蛍光を発し、或いは、前記赤外線通信装置から射出されるレーザ光を前記赤外線通信装置に向けて反射する指示部と
を備えることを特徴とするフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−142842(P2012−142842A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−564(P2011−564)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】