説明

赤色酵母由来の乳化剤

【課題】安全性の高い、単独で高い乳化性と乳化安定性を示す新規な乳化剤、当該乳化剤を用いることで得られる脂溶性物質を含有する水溶性組成物、及び、これらの製造法を提供すること。
【解決手段】赤色酵母を培養液中で培養して得られる培養液中の糖タンパク質複合体を、有効成分として含有してなる乳化剤。また、当該乳化剤及び脂溶性物質を含有してなる水溶性組成物。さらに、当該乳化剤及び水溶性組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な乳化剤及び水溶性組成物に関し、さらに詳しくは、水と油脂の混合物である乳化物を製造する際に助剤として用いられる、赤色酵母より得られる糖タンパク質複合体を成分として含む乳化剤、これを用いて得られる水溶性組成物、及び、これらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中に油滴をあるいは油中に水滴を均一に分散させた乳化物は、マヨネーズ、ドレッシング等の食品、インクや塗料等の工業製品等を構成するものであるが、元来水と油は混合しにくく、そのためこれを乳化し、さらにその安定化を促すための助剤が利用される。
【0003】
従来より、こうした工業用乳化剤としては、有機合成的に得られるアルキル硫酸塩やポリオキシエチレン系の低分子量の合成乳化剤等が利用されてきたが、これらは微生物による分解を受けにくく、環境中に放出された際に生分解を受けずに環境中に蓄積し、汚染を引き起こす可能性が指摘されている。また、従来から有機性の溶剤に溶かして用いられてきた塗料等にも同様の環境汚染の危惧があり、さらには作業上の安全性の見地から、用いられる溶剤を水へと転換することが望まれている。
【0004】
これに対応するために、例えば、塗料等を利用するにあたり、塗布後の塗布部での液だれを防止するために、塗料等に一定の粘性を付与する必要があったが、従来より用いられていた乳化剤では粘性が不十分であり、別に増粘剤を添加する必要があるため、より多くの組成となり、製造上あるいは経済的にも問題を有していた。
【0005】
また、哺乳動物に適用される乳化剤としては、シュガーエステル等の合成乳化剤も存在するが、その安全面から天然物を利用することが望まれており、例えば、天然乳化剤として、カゼイン等の蛋白質、レシチン等の脂質、あるいはアラビアガムのような植物多糖が利用されている。しかしながら、これらは、乳化性は高いものの、溶液の粘性が低いために長時間放置すると水相と油相が分離してしまうという欠点があった。この問題を解決するために、これらの乳化剤を多量に添加するか、あるいはキサンタン等の増粘剤との併用による安定化が必要となり、経済上あるいは製造上の課題を有していた。また、アラビアガムは植物由来であるため、その生産量が気候等に左右されやすく、安定的に供給することが難しいという課題もあった。
【0006】
カロチノイド又はビタミンを含有するエマルジョン中でポリアルコールを使用することが記載されている他の特許明細書では、アルコール、例えばエタノール(特許文献1参照)、非イオン性乳化剤、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、(特許文献2参照)又はその両方(特許文献3参照)を付加的に使用することが必要である。
【0007】
しかしながら、アルコール及び非イオン性乳化剤は、多くの製剤、特に哺乳動物に適用するために好ましくないか、又は一般的に食品中での使用は認可されていない。更に、グリセリン又はその他の多価アルコールをベースとし、軟質のゼラチンカプセルに充填するために使用されるカロチノイドエマルジョンの製造方法(特許文献4参照)が記載されている。当該文献の実施例で使用された乳化剤は、同様に非イオン性乳化剤であり、かつ比較的低い活性物質の含量がもう1つの欠点とみなされる。
【0008】
ユビデカレノン又は補酵素Q10として知られている補酵素Qの1種であるコエンザイムQ10は、脂溶性物質として知られ、その均質化、可溶化状態を保持させるための技術が開発されている。例えば、ポリエチレングリコール、硬化ヒマシ油ポリオキシエチレン−(20)−エーテル等の非イオン乳化剤を用いて、マントン−ゴーリン型の高圧ホモジナイザーで処理された脂肪乳剤が開示されている(特許文献5)。また、大豆油等の植物油、ホスファチジルコリン等のリン脂質乳化剤を用いて処理し、粒径を0.5〜300μmとした静注用乳化液が開示されている(特許文献6)。
ところが、前者の方法では、脂肪乳剤は、粒径が大きく透明感で劣る問題がある。さらに、後者の静注用乳化剤は、コエンザイムQ10の含有量が少なく、高濃度にした場合に保存安定性が悪い問題がある。コエンザイムQ10を含有する水溶性組成物としては、油成分を必要としないで乳化できる、製造の際に特殊な条件、複雑な工程等が不要であること等が求められている。
【0009】
また食品の製造工程においては、缶詰等、製造工程で加熱処理を受ける食品に、脂溶性天然物を添加しようとする場合、加熱により乳化が破壊され、脂溶性天然物が表面に浮上する現象としてクリーミングが発生するという問題点があった。この問題点をクリアするために、ショ糖縮合リシノール酸エステルとアルコールを用いて耐熱性乳化を試みている(特許文献7)。しかし、上記の先行技術も缶コーヒーのレトルト処理(一般的には125℃、20分)等、加熱条件が厳しい場合には乳化が破壊され、クリーミングが発生する。そのため、より熱に強い乳化剤が求められている。
【0010】
化粧品に用いられる乳化剤は、紫外線を吸収させる為の紫外線拡散剤や紫外線吸収剤を肌になじませる為、また、化粧品内で紫外線拡散剤や紫外線吸収剤を均一に分散させる為等に加えられる。この場合、乳化剤が多く使用されており、直接肌に塗布し、長期間使用する場合は様々な障害を生じる可能性が指摘されており、このことから化粧品用途においても肌にやさしい天然由来の乳化剤が求められていた。
【0011】
入浴剤は、温泉由来の無機塩類を主成分としたものや、炭酸アルカリ塩と有機酸からなり浴湯中で炭酸ガスを発生するものに、香料や着色料、植物エキス等を配合したものが主体である。近年では、入浴によるスキンケア効果に関心が高まり、スキンケア効果を付与した入浴剤の提案が多くなされるようになってきた。入浴剤によってスキンケア効果を付与する方法としては多価アルコール、多糖類やミルク成分等の保湿成分を配合したもの、スキンケア効果のあるとされる植物エキスを配合したもの、油分を配合したもの等がある。しかし、水溶性の保湿成分は浴湯中に希薄に溶けてしまうため皮膚に残りにくく効果が弱い。また効果が期待できるほど多量に用いることは湯上がり後の肌のべたつき等の原因になったり経済的でない等、不具合である。それに対し、油分を用いるものは比較的少量の使用で効果や実感が得られ有効な手段であり、油分を乳化剤により浴湯中に乳化するタイプ等が通常用いられる。しかし油分の配合量には限度があり、入れすぎると製剤の流動性が悪くなり製剤化に支障を来すため、より少量で効果的な乳化剤が必要とされていた。また入浴時には多量の水を使用し多量の乳化剤を必要とするため、安全性にも問題が生じることが予想され、天然由来の乳化剤が求められていた。
【0012】
こういった理由から、従来より天然由来の乳化剤が求められており、生物材料からの乳化剤としては、以下のようなものの報告がある。Saccharomyces cerevisiaeの細胞壁にはマンノースとタンパク質の融合した物質が含まれ、これが乳化作用を示すことが知られている(非特許文献1参照)。この場合、この物質の調製には菌体を破壊せねばならず、非常に手間がかかるものであり、実用化には至っていない。またCandida lipolyticaでは培地中に乳化作用を示す物質を生産することが知られている(非特許文献2参照)が、ヘキサデカン等、難溶性の炭素源を培養時に使用することが必要であり、グルコース等の溶解性の炭素源では、その乳化作用が低いことが難点であるとされていた。
【0013】
乳化剤は、現代生活には欠かせない物質としていわゆる洗剤の他、様々な生産過程で使用されるとともに、様々な日用製品や食品中に含まれている。特に、天然の乳化剤として知られたサポニンやいわゆる石鹸の使用は歴史的にも長いが、天然の乳化剤はその界面活性能力や生産性から用途が限定されている。乳化剤としては、コストや生産量等から一般に合成乳化剤が用いられているが、生物毒性や環境残留性といった問題が指摘されている。
【0014】
一方、微生物由来の様々な乳化剤様物質が報告されており、これらはバイオサーファクタントと称されるが、ミセル形成臨界濃度(CMC)が合成洗剤に比べて低く、生物毒性や環境残留性がないといった長所を有している。また、培養により大量生産することができるといった特徴も有している。
自然界には様々な微生物が存在し、それらの中には未知の機能を持つものが含まれており、バイオサーファクタント生産菌も報告されている。ラムノリピド(非特許文献3参照)や、ソフオロリピド(非特許文献4参照)を含むいくつかのバイオサーファクタントは、生産性を上げて既に実用化されている。これらの中で酵母由来のものでは、ソフォロリピッドであるが、これはサーファクタントの分類上、糖脂質型であり、またこの生産菌であるCandida bombicolaは、本発明で用いる赤色酵母とは分類学上異なり、これらが産生するバイオサーファクタントも本発明のものとは異なる。
【特許文献1】特開昭47−25220号公報
【特許文献2】特公昭61−260860号公報
【特許文献3】特公昭60−000419号公報
【特許文献4】特公昭58−128141号公報
【特許文献5】特開昭60−199814号公報
【特許文献6】特開昭61−56124号公報
【特許文献7】特開平4−299940号公報
【非特許文献1】D.R.Cameron et al., Applied and Environmental Microbiology, June 1988,p.1420−1425
【非特許文献2】M.C.Cirigliano et al., Applied and Environmental Microbiology, Oct.1984,p.747−750
【非特許文献3】M.Benincasa et al., 2002. J.Food Eng. 54:283−288
【非特許文献4】M.Deshpande and L.Daniels, 1995. Bioresour.Technol. 53:143−150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、安全性の高い、単独で高い乳化性と乳化安定性を示す新規な乳化剤、当該乳化剤を用いることで得られる脂溶性物質を含有する水溶性組成物、及び、これらの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、赤色酵母の培養液中の糖タンパク質複合体を脂溶性物質の溶液に添加したところ、脂溶性物質を均質化することによって、安定に乳化させることができ、この乳化液を加熱処理した後も乳化が長期間安定であることを見い出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、赤色酵母を培養液中で培養して得られる培養液中の糖タンパク質複合体を、有効成分として含有してなる乳化剤に関する。
また、本発明は、上記乳化剤及び脂溶性物質を含有してなる水溶性組成物に関する。
さらに、本発明は、赤色酵母を培養液中で培養し、得られた培養液中の糖タンパク質複合体を含有する画分を分離及び回収することを特徴とする、乳化剤の製造方法に関する。
また、本発明は、上記乳化剤と脂溶性物質を混合することを特徴とする、水溶性組成物の製造方法に関する。
【0018】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の乳化剤は、赤色酵母を培養液中で培養して得られる培養液中の糖タンパク質複合体を、有効成分として含有してなるものである。
【0019】
本発明において用いられる赤色酵母としては、糖タンパク質複合体を生産できる酵母であれば、特にその属、種については限定されることはないが、その培養が容易であり、また栄養源として安価な材料より生育できる点から、ロドトルーラ(Rhodotorula)属、キサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、キャンディダ(Candida)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等が、好ましく用いられる。
【0020】
さらにこれらの赤色酵母の内、乳化作用をもつ物質を大量に生産することから、Rhodotorula mucilaginosa KUGPP−1株、Rhodotorula mucilaginosa NBRC0003、Xanthophyllomyces dendrorhous NBRC10129、Rhodosporidium toruloides NBRC0388等が、より好ましく用いられる。
当該赤色酵母は、単独で用いても、2種以上を併用することもできる。
なお、Rhodotorula mucilaginosa KUGPP−1は、南極より分離され、受領番号FERM ABP−10500として、国際寄託の受領日2006年2月2日(原寄託日2005年2月8日の国内寄託を国際寄託へ移管)に、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
また、他の上記赤色酵母は、NBRC(独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門)より入手可能である。
【0021】
当該赤色酵母は、培養が容易であり、大量に培養して、凝集阻害物質(乳化成分)である糖タンパク質複合体を製造するのに適した性質を備えている。すなわち、当該赤色酵母は、グルコースを唯一の炭素源とした無機塩類のみよりなる培地で良好に生育し、その培養液中の、アセトン等によって沈殿、濃縮しうる画分(糖タンパク質複合体を含有する画分)に、強力な乳化活性を有する。
【0022】
赤色酵母の培養方法については、通常微生物の培養に用いられる培地で培養すれば良い。
培地に含まれる赤色酵母の成育に必要な炭素源としては、グルコースが好ましく用いられる。その濃度は、好ましくは0.1〜5容量%程度、より好ましくは0.5〜1.5容量%程度である。
この際、グルコースの代わりに、エタノール等のアルコール類や、コーン油、大豆油等の油類を炭素源として用いることもできる。
【0023】
また、窒素源としては、アンモニウム塩が好ましく用いられ、特にpH緩衝能やリン分の補給の点から、リン酸アンモニウムが好ましい。
また、培養が進行すると培地のpHが低下するため、アルカリを滴下して、好ましくはpH6〜8、より好ましくはpH6.5〜7.5となるように調整して、培養を行うことが好ましい。
この際使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン化合物等、任意のものが使用できるが、細胞増殖のための窒素源を補給する面からアンモニアが好ましく用いられる。
【0024】
また、培地には、ビタミン類等の補給のため、酵母エキスを添加しても良い。
また、炭素源のグルコースも細胞増殖につれて徐々に減少していくので、順次追加していく必要があるが、この際にアンモニアとエタノールの混合液を追加することもできる。追加の方法としては、一定量ずつ断続的に追加する方法、連続的に追加する方法等、あらゆる方法を採用することができる。
【0025】
培養温度としては、細胞の増殖速度の面から通常0〜50℃であるが、より好ましくは25〜35℃付近である。
培養時間としては、特に限定されないが、好ましくは12〜70時間、より好ましくは24〜48時間である。
培養にあたっては、撹拌培養、静置培養のいずれも採用でき、また、通気培養、密閉培養のいずれでもよいが、微生物の増殖を早めるために、通気下で撹拌培養することが好ましい。
【0026】
このようにして培養した培養液から、糖タンパク質複合体を含有する画分、さらには糖タンパク質複合体が分離・回収される。分離・回収に先立って、赤色酵母菌体を遠心分離等の操作で培養液から予め除去しておくこともでき、培養液の上清を用いることもできる。
糖タンパク質複合体の分離・回収には、セチルピリジニウム塩酸、セチルトリブチル臭酸等の4級アミンを利用する方法や、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールやアセトンを培養液又は培養液の上清に添加する方法等が利用でき、より高純度の製品を得るには前者の方法が、より迅速に標品を得るためには後者の方法が好ましく用いられる。また、これら両方法を併用することもでき、その順序はどちらでも良い。
上記方法で分離・回収された糖タンパク質複合体は、公知の方法により乾燥した粉末として、あるいは再度水に溶解して水溶液として利用される。
また、イオン交換カラム、アフィニティーカラム等の親和性による分画、さらに限外ろ過、ゲルろ過カラム等の分子量による分画によっても、分離・回収することが可能である。
【0027】
本発明の乳化剤に有効成分として含まれる糖タンパク質複合体は、上記赤色酵母を培養することにより、培養液中に赤色酵母の細胞から分泌される、高分子の糖タンパク質複合体である。
当該糖タンパク質複合体は、培養液中に生産されるので、乳化剤としての作用が顕著であり、また、その赤色酵母が生産した後の培養液より該糖タンパク質複合体を回収する際の、赤色酵母菌体との分離が容易である。
当該糖タンパク質複合体は、上記赤色酵母を培養することにより、培養液中に赤色酵母細胞から分泌されるものを用いることができる。また、分泌される前の細胞壁や菌体中にとどまった状態でも利用可能である。
【0028】
当該糖タンパク質複合体とは、糖とタンパク質を有する複合体であり、糖とタンパク質が結合した糖タンパク質、又は、その糖タンパク質に脂質等が付加した一群の物質のことをいい、特に限定されない。なお、糖は、1つ又は2つ以上のオリゴ糖のことをいい、さらには特定の糖の繰り返し構造もこれに含まれる。また、タンパク質部分は、2つ以上のアミノ酸からなる。
当該糖タンパク質複合体は、1種でも2種以上でも用いることができる。
【0029】
当該糖タンパク質複合体は、平均分子量として3万以上の分子量を有することが好ましい。つまり、糖タンパク質複合体を含有する画分の、ゲルろ過によって示される分子量が30,000以上であることが好ましい。
当該平均分子量は、例えば、レーザー散乱計、ゲルろ過等の公知の方法により求めることができる。本発明においては、後述の実施例で記載しているように、ゲルろ過法により求めた。つまり、当該平均分子量は、得られた糖タンパク質複合体を、ゲルろ過の担体(Sephacryl S−400HR、φ1cm×長さ100cm)に供し、デキストランを分子量マーカーとして、測定することができる。
【0030】
本発明の乳化剤は、上記赤色酵母が生産する糖タンパク質複合体を有効成分として含有するものであるが、糖タンパク質複合体を生産した赤色酵母の培養液をそのまま、あるいは、糖タンパク質複合体を精製(=分離・回収)したものを用いることができる。
特に乳化剤を少量で用いる場合には、精製することで乳化剤中の糖タンパク質複合体の濃度を高めることができ、効果的である。
さらには、細胞壁や菌体中にとどまっている糖タンパク質複合体を利用するために、菌体をそのまま使用したり、菌体の破砕液を利用することも可能である。
【0031】
乳化剤中の他の成分としては、上述のように、糖タンパク質複合体以外の、赤色酵母の培養液成分等が挙げられ、また、乳化剤としての効果をより高めるために、種々の添加剤を用いてもよい。
添加剤としては、乳化剤の剤型を保つためや、糖タンパク質複合体が分解等によりその効果が減じてしまうのを防ぐために、安定化剤を用いたり、実際の使用を容易とするために、水等の液体を用いることもできる。また、添加剤として、例えば、酸化防止剤、防腐剤、化粧用活性剤、加湿剤、スフィンゴ脂質、脂溶性ポリマー等を含んでもよい。
さらに、本発明の乳化剤に加えて、既存の乳化剤を併用することもできる。
当該添加剤や、既存の乳化剤の添加量としては、その用途に応じて適宜決めればよい。
【0032】
乳化剤の剤型としては、液状又は固体状のいずれでもよいが、脂溶性物質との接触において乳化剤と脂溶性物質とを均一に混和するために、液状とすることが好ましい。
【0033】
乳化剤中の糖タンパク質複合体の含有量としては、特に限定されないが、乳化剤全体の0.00001重量%〜10重量%が好ましく、0.001重量%〜1重量%がより好ましい。
【0034】
本発明の乳化剤の製造方法は、赤色酵母を培養液中で培養し、得られた培養液中の糖タンパク質複合体を含有する画分を分離及び回収することを特徴とするものであり、具体的には上述のとおりである。
また、糖タンパク質複合体を含有する画分を分離及び回収することにより、ゲルろ過によって示される分子量が30,000以上の画分を得ることが好ましい。
【0035】
次に、上記赤色酵母が生産する糖タンパク質複合体を含む乳化剤を用い、これと脂溶性物質とを接触させて得られる、脂溶性物質を含有する水溶性組成物について説明する。
つまり、本発明の水溶性組成物は、上記乳化剤及び脂溶性物質を含有してなるものである。
【0036】
本発明で用いる脂溶性物質としては、生理学的に認容されるものであれば特に限定されないが、例えば、コエンザイムQ10等の脂溶性薬物;脂溶性ビタミンA、D、E、K、及びそれらの誘導体等のビタミン類;精油(例えば、パイン油、ライム油、ゆず油等)、植物油(例えば、大豆油、菜種油、べに花油、コーン油、ごま油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ひまわり油等)、動物油(例えば、牛脂、ラード等)等の油脂;脂溶性色素(例えば、アナトー、ウコン、ベニコウジ、クロロフィル等);香料(例えば、オレンジオイル等);カロチノイド(例えば、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、アポカロチナール、β−カロチン等)等が挙げられる。
当該脂溶性物質は、単独で用いても、2種以上を併用することもできる。
【0037】
本発明の水溶性組成物には、上述の乳化剤で例示した添加剤をはじめ、顔料、調味料、抗菌剤等の種々の成分を含有させることができ、食品、化粧品、入浴剤等を含む工業品としての様々な性能を付与することができる。
また、当該水溶性組成物には、水;エタノール等のアルコール類等の溶媒を添加することもでき、好ましい。
【0038】
当該水溶性組成物中の糖タンパク質複合体の含有量としては、特に限定されないが、水溶性組成物全体の0.00001重量%〜10重量%が好ましく、0.001重量%〜1重量%がより好ましい。
脂溶性物質の含有量としては、特に限定されないが、水溶性組成物全体の0.00001重量%〜30重量%が好ましく、0.001重量%〜10重量%がより好ましい。
【0039】
本発明の水溶性組成物の製造方法は、上記乳化剤及び脂溶性物質を混合することを特徴とするものである。
【0040】
当該水溶性組成物の製造方法においては、乳化剤と脂溶性物質とを接触させ、両者を混和する。混和の方法としては、振とう、撹拌等、両者が十分に接触できるものであれば特に限定されないが、脂溶性物質等の粘性が比較的高いものを速やかにかつ十分に混和するために、攪拌することが好ましく、さらに撹拌に際しては、激しく撹拌することが好ましい。このような乳化剤と脂溶性物質との混和方法としては、ワーリングブレンダーやジューサーを用いる方法、マントン−ゴーリンホモジナイザーを用いる方法、超音波を利用する方法等、公知の方法が利用できる。
【0041】
また、乳化剤と脂溶性物質とを接触させ、さらに両者を混和させる条件において、処理温度、処理時間等も考慮する必要があるが、用いる脂溶性物質の種類や、得られる脂溶性物質を含有する水溶性組成物の用途に応じて、適宜適した条件にて行うことでよい。
例えば、混和中に熱が発生することがあるため、耐熱性の余りない材料を用いる場合には、高温とならないように注意して混和する必要がある。具体的には、食品等への適用や、塗料等のように揮発性を有する溶媒等が含まれる場合への適用には、前者については微生物の繁殖がないように、後者については溶媒が揮発してしまわないように、短時間で実施する必要がある。
【0042】
また、脂溶性物質に乳化剤を加える場合、両者を一度に加えた後に混和してもよいが、両者を少量ずつ徐々に加えて混和する、また、片方をもう一方へ徐々に加えて混和する等、あらゆる形態を採用できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、安全性の高い、単独で高い乳化性と乳化安定性を示す新規な乳化剤を得ることができ、また、当該乳化剤を用いることにより、安定に乳化された、脂溶性物質を含有する水溶性組成物を得ることができ、産業上での貢献は非常に大きいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
実施例1:酵母培養液由来の粗乳化剤の調整
10mlのYM培地(酵母エキス0.03g、モルトエキス0.03g、ペプトン0.05g、グルコース0.1g、pH6.0)を調製し、オートクレーブを用いて滅菌操作を行った。これに、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている赤色酵母Rhodotorula mucilaginosa KUGPP−1(FERM ABP−10500)を接種し、30℃で一晩培養し、これを前培養液とした。この前培養液を500mlの同培地に接種し、30℃で48時間培養した後、遠心により菌体を除いた約500mlの上清を回収した。この上清をカットオフ値MW100,000の限外ろ過膜を用いて約30mlまで濃縮を行った。その後、緩衝液A[20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]に対して透析を実施し、これを粗乳化剤(サンプルA)とした。
なお、本乳化剤の活性は、サンプル100μlを1.8mlの緩衝液Aに添加し、そこへ、ジメチルスルホキシドに200μg/mlになるように溶解させたアスタキサンチン(和光純薬社製)を100μl加え、よく混合し、約26℃で15分間静置後に凝集しないことを指標にした。つまり、約26℃で15分間静置後に凝集しない場合に、乳化活性があるものとした。
【0046】
このサンプルAに約4倍量のアセトンを加え、遠心により沈殿物を回収した。この沈殿物を約5mlの緩衝液B[20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)]に懸濁、透析後、予め緩衝液Bで平衡化した陰イオン交換樹脂であるDEAE−TOYOPEARL650M(東ソー社製)を充填したカラム(φ1.6cm×10cm)に負荷し、0から1.0Mへの塩化ナトリウムの直線濃度勾配法(総溶出量360ml)で溶出させ、塩化ナトリウム濃度が300mMから350mMの間に溶出してくる約20mlの乳化活性画分を回収した。この画分を、限外ろ過膜により約1.5mlに濃縮し、これをサンプルBとした。
これを、緩衝液C[50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]で平衡化したSephacryl S−400HR(アマシャム社製)を充填したカラム(φ1cm×100cm)を用いたゲルろ過に供し、約5mlの活性画分(乳化作用物質)を獲得し、これをサンプルCとした(ゲルろ過時のピークからほぼ単一精製物であった)。
サンプルCを用いて、フェノール硫酸法を用いて糖量(グルコース換算)を、BCAキット(PIERCE社製)を用いてタンパク質量(BSA換算)を求めたところ、総糖量は2.6mg、総タンパク質量は0.3mgであった。これから、本乳化剤は糖とタンパク質が約9対1の割合で含まれるということが判明した。
【0047】
実施例2:乳化作用評価
実施例1で調製したサンプルAの100μlを、1.8mlの緩衝液A[20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]に添加し、そこへ、ジメチルスルホキシドに200μg/mlになるように溶解させたアスタキサンチン(和光純薬社製)を100μl加え、よく混合した。またコントロールとして、Saccharomyces cerevisiae NBRC223の培養液を実施例1に従って調製したものを使用した。
25℃で24時間まで静置して観察したところ、コントロールにおいては、約1時間後からアスタキサンチンの凝集物が析出し始め、24時間後には全てが沈殿してしまっていた。ところが、サンプルAを添加したものでは、24時間経過した時点においても、全く凝集が見られなかった。また、このサンプルAとアスタキサンチンの混合物を100℃で1時間処理しても、凝集物は析出しなかった。さらに、これらサンプルAとアスタキサンチンとの混合物を1週間室温(25℃)で放置しても、凝集物の析出はみられなかった。
【0048】
実施例3:乳化作用物質の精製
実施例1で調製したサンプルAを、予め緩衝液B[20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)]で平衡化した陰イオン交換樹脂であるDEAE−TOYOPEARL650M(東ソー社製)30mlを充填したカラム(φ1.6cm×10cm)に負荷し、0から1.0Mへの塩化ナトリウムの直線濃度勾配法(総溶出量760ml)で溶出させ、塩化ナトリウム濃度が300mMから400mMの間に溶出してくる約20mlの乳化活性画分を回収した。この画分を、遠心限外濾過膜セントリプレップ−10(アミコン社製)を用いて約2mlに濃縮した。これを、緩衝液C[50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]で平衡化したSuperose12(ファルマシア社製)を充填したカラム(φ1.6cm×100cm)を用いたゲルろ過に供し、約2mlの活性画分(乳化作用物質)を得た。
次いで、ProteinaseK(SIGMA社製)を200U/mlとなるよう調製し、活性画分と1:9(最終ProteinaseK濃度20U/ml)で混合し、25℃で2時間保持した。
このサンプルを用いて、実施例2と同様にして乳化作用を評価したところ、乳化作用が見られなくなった。また、この精製過程での画分の活性の強弱は、糖の吸収の強弱と一致していた。これらのことから、乳化作用物質は糖タンパク質であると考えられた。
【0049】
実施例4:乳化作用物質の分子量の測定
実施例1で精製したサンプルCの1.5mlを、ゲルろ過の担体(Sephacryl S−400HR、φ1cm×長さ100cm)に供し、デキストランを分子量マーカーとして分子量の測定を行った。この結果、本乳化作用物質は、分子量約730,000であることが推測された。
【0050】
実施例5:β−カロチン、ビタミン(A、E、K)、コエンザイムQ10の乳化作用
実施例3で調製した乳化作用物質100μlを、0.9mlの10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に添加したものを、10mgのβ−カロチン(ナカライテスク社製)、ビタミンA(ナカライテスク社製)、ビタミンE(ナカライテスク社製)、ビタミンK1(ナカライテスク社製)、コエンザイムQ10それぞれに加え、よく混合した。またコントロールとして、Saccharomyces cerevisiae NBRC223の培養液を実施例1に従って調製したものを使用した。
25℃で24時間まで静置して観察したところ、コントロールにおいては、添加直後から各サンプルの凝集物が析出し始め、1時間後には全てが沈殿してしまっていた。ところが、上記粗乳化剤を添加したものでは、24時間経過した時点においても、全く凝集が見られなかった。
【0051】
実施例6:他の赤色酵母培養液の乳化作用
試験管に入れた100mlのYM培地に、赤色酵母であるRhodotorula mucilaginosa NBRC0003、Xanthophyllomyces dendrorhous NBRC10129、Rhodosporidium toruloides NBRC0388をそれぞれ接種し、30℃、120rpmで48時間培養し、その培養液について10,000×g、20分間の遠心分離を行い、菌体を除いた約100mlの上清を回収した。この画分を、遠心限外濾過膜セントリプレップ−10(アミコン社製)を用いて約10mlに濃縮し、これを粗乳化剤とした。
【0052】
実施例2と同様にして、アスタキサンチンに対する乳化作用、及び、実施例5と同様にして、β−カロチン、ビタミン(A、E、K)、コエンザイムQ10それぞれに対する乳化作用を評価したところ、何れの株においても乳化作用が見られた。
また、これら赤色酵母由来の粗乳化剤を、遠心限外濾過膜セントリプレップ−30(アミコン社製)を用いて濾過したところ、そのろ液(つまり分子量30,000未満)には乳化作用がなかったことから、乳化作用を示す物質は30,000以上であることが推測された。
【0053】
実施例7:pH安定性
実施例1で調製したサンプルBを、pH5と6の50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH6、7及び8の50mMリン酸カリウム緩衝液、pH8と9の50mMトリス緩衝液、pH9と10の50mM炭酸ナトリウム緩衝液で透析を行った後、サンプルBの100μlを最終濃度10μg/mlになるように、1.8mlのそれぞれのpH緩衝液に添加し、そこへ、ジメチルスルホキシドに200μg/mlになるように溶解させたアスタキサンチン(和光純薬社製)を100μl加え、よく混合した。混合直後の440nmにおける吸光度の絶対値(I)と、室温(約26℃)で15分間静置後の440nmにおける吸光度の絶対値(II)を測定し、(I)−(II)を算出し(ΔA440)、それを図1に示した。なお、アスタキサンチンの凝集が見られたものは、アスタキサンチンの最大吸収波長である440nmの吸光度の絶対値が低下する。上記(I)−(II)が、0〜0.1の範囲内であれば乳化が安定であると判定した。
その結果、本発明の乳化剤は幅広いpHで効果を発揮することが判明した。
【0054】
実施例8:乳化作用の強さについて(アスタキサンチンを用いて)
実施例1で調製したサンプルCを最終濃度(糖量換算)で1、5、10μg/mlになるように調製したそれぞれ100μlを、1.8mlの緩衝液Aに添加し、そこへ、ジメチルスルホキシドに1mg/mlになるように溶解させたアスタキサンチン(和光純薬社製)を100μl加え、よく混合した。同時に市販のバイオサーファクタントであるサーファクチンNa(和光純薬社製)を最終濃度1、5、10μg/mlになるように添加したものも実施した。26℃で24時間静置後の440nmにおける吸光度の絶対値を測定した結果を表1に示した。
その結果、サンプルCの乳化剤は、低濃度でもアスタキサンチンを安定に乳化したのに対し、サーファクチンNaは、低濃度の場合にアスタキサンチンが凝集した(アスタキサンチンの吸光度の絶対値が低下)。つまり、本発明の乳化剤は、アスタキサンチンに対し、サーファクチンNaよりも高い乳化作用を示すことが明らかとなった。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例9:色素退色を押さえる効果
実施例1で調製したサンプルCの100μlを、1.8mlの緩衝液A[20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)]に加え(糖換算で最終濃度10μg/ml)、これに、ジメチルスルホキシドに1mg/mlになるように溶解させたアスタキサンチンを100μl加え、よく混合した。また、市販のバイオサーファクタントであるサーファクチンNa(和光純薬社製)も同じ濃度になるように添加し、それぞれを26℃で1ヶ月保存した後、これら溶液の200nm〜700nmでのスペクトル測定(U−2000A、日立製作所社製)を行った結果を図2に示した。なお、この際、サンプルCやサーファクチンNaの代わりに100μlの緩衝液Aを加えたものをコントロールとし、アスタキサンチン添加直後のスペクトル測定を行ない、これを比較対照とした。データ1はコントロール(添加直後)のもの、データ2はサンプルC(26℃で1ヶ月保存後)のもの、データ3はサーファクチンNa(26℃で1ヶ月保存後)のものを示す。
その結果、本発明の乳化剤の存在下では、アスタキサンチンの吸収スペクトルに変化はなく安定であるが、サーファクチンNaの存在下では、アスタキサンチンが凝集したため、吸収スペクトルに変化が生じ、経時的に色調が変化した。つまり、本発明の乳化剤は、1ヵ月放置した後でも添加直後の色調を保持していることが判明した。
【0057】
実施例10:糖組成分析
実施例1で調製したサンプルCに、最終濃度2Nになるように濃硫酸を添加し、100℃で4時間処理した。水酸化ナトリウムで中和した後、20μg/ml(グルコース換算の糖濃度)のサンプルを100μl用い、糖分析用カラム(TSKgel Suger AXG、東ソー社製)で分析を行った。その結果を図3に示した。
同時に、単糖の標準品と比較したところ、これら3つのピークはリテンションタイムの早いものから順にマンノース、ガラクトース、グルコースのピークと一致した。
【0058】
実施例11:粒子径
1.8mlの緩衝液Aに、ジメチルスルホキシドに12.5μg/mlになるように溶解させたアスタキサンチン溶液を100μl添加し、実施例1で調製したサンプルCを最終濃度A:0.125μg/ml、B:0.25μg/mlになるように100μl添加し、よく混和した。なお、サーファクチンNa(和光純薬社製)も同濃度で実施した。26℃で24時間保存した後、動的光散乱式粒径分布装置(LB−550、堀場製作所社製)を用いて、溶液中のアスタキサンチンの粒径を測定し、その平均粒径(nm)の結果を表2に示す。
この結果から、本発明の乳化剤を用いると、市販のバイオサーファクタントを用いるよりも、脂溶性物質であるアスタキサンチンの粒径がより小さいものが形成されることが判明した。
【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、安全性の高い、単独で高い乳化性と乳化安定性を示す新規な乳化剤を得ることができ、また、当該乳化剤を用いることにより、安定に乳化された、脂溶性物質を含有する水溶性組成物を得ることができ、産業上での貢献は非常に大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】乳化剤のpH安定性を示すグラフである。
【図2】色素退色を押さえる効果を示すグラフである。
【図3】糖組成分析のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色酵母を培養液中で培養して得られる培養液中の糖タンパク質複合体を、有効成分として含有してなる乳化剤。
【請求項2】
該赤色酵母が、Rhodotorula属、Xanthophyllomyces属及びRhodosporidium属から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の乳化剤。
【請求項3】
該赤色酵母が、Rhodotorula mucilaginosa KUGPP−1、Rhodotorula mucilaginosa NBRC0003、Xanthophyllomyces dendrorhous NBRC10129、及び、Rhodosporidium toruloides NBRC0388から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の乳化剤。
【請求項4】
該糖タンパク質複合体の、ゲルろ過によって示される分子量が30,000以上である請求項1〜3のいずれかに記載の乳化剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の乳化剤及び脂溶性物質を含有してなる水溶性組成物。
【請求項6】
該脂溶性物質が、脂溶性薬物、ビタミン類、油脂、脂溶性色素、香料及びカロチノイドから選ばれる1種以上である、請求項5記載の水溶性組成物。
【請求項7】
該脂溶性薬物がコエンザイムQ10であり、該ビタミン類がビタミンA、D、E、K、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上であり、該油脂が精油、植物油及び動物油から選ばれる1種以上であり、該カロチノイドがカンタキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、アポカロチナール及びβ−カロチンから選ばれる1種以上である、請求項6記載の水溶性組成物。
【請求項8】
赤色酵母を培養液中で培養し、得られた培養液中の糖タンパク質複合体を含有する画分を分離及び回収することを特徴とする、乳化剤の製造方法。
【請求項9】
糖タンパク質複合体を含有する画分を分離及び回収することにより、ゲルろ過によって示される分子量が30,000以上の画分を得ることを特徴とする、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の乳化剤と脂溶性物質を混合することを特徴とする、水溶性組成物の製造方法。
【請求項11】
該脂溶性物質が、脂溶性薬物、ビタミン類、油脂、脂溶性色素、香料及びカロチノイドから選ばれる1種以上である、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
該脂溶性薬物がコエンザイムQ10であり、該ビタミン類がビタミンA、D、E、K、及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上であり、該油脂が精油、植物油及び動物油から選ばれる1種以上であり、該カロチノイドがカンタキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、アポカロチナール及びβ−カロチンから選ばれる1種以上である、請求項11記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−255692(P2006−255692A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39651(P2006−39651)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】