説明

走査ヘッド及びドット照射素子

【課題】素子寿命を低下させることなく、出射面から出射する光量を増加させることのできる走査ヘッド及びドット照射素子を提供する。
【解決手段】走査ヘッド2は、面状に発光する複数の面発光部22が一列に配列された面発光部アレイパネル20と、面発光部22にそれぞれ対向した複数の導光部60とを備える。導光部60は、面発光部22に対向した入射面63と、入射面63に対して傾斜した状態で入射面63に対向した第一対向反射面64と、入射面63の延長平面上に延在する第二反射面53と、第一対向反射面64に沿って連続して設けられ入射面63と第一対向反射面64との間の狭角よりも大きな狭角となるように、第二反射面53に対して傾斜した状態で第二反射面53に対向した第二対向反射面54と、狭角に対向する出射面52とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、スキャナ、その他の画像出力装置又は画像入寮装置に適した構造を有する走査ヘッドに関するとともに、その走査ヘッドのドット照射素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ページプリンタは普通紙にも印刷できることから、近年ページプリンタの開発が盛んになっている。従来のページプリンタには、レーザダイオードとポリゴンレンズを組み合わせたレーザ型走査ヘッドが用いられている。しかし、レーザ型走査ヘッドはレーザ光の照射点をポリゴンレンズによって移動させるため、印刷の高速化や制御が難しいという問題点がある。
【0003】
一方、印刷の高速化を図るために、複数のLEDを用いたLED型走査ヘッドが開発されている。LED型走査ヘッドは複数のLEDを一列に配列するように実装させたものであり、これらLEDを同時に且つそれぞれ別個の強度で発光させることで感光体に対して走査を行う。しかしながら、さらなる高画質化の要求に伴い、複数のLEDの高密度実装技術に対して非常に高い精度が要求されるようになるとともに、その部品点数の増大が問題になってきた。
【0004】
このような問題を解決するために、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた走査ヘッドの提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−226172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子においても、感光体が十分に感光する程度の光量は、発光強度と感光体への露光時間との積になるため、1ドット当たりの有機エレクトロルミネッセンス素子の発光強度が弱いと、1ドット当たりの露光時間を長くしなければならない。露光時間を長くするためには、印刷速度を遅くしなければならない。一方、有機エレクトロルミネッセンス素子の1ドット当たりの発光強度を強くすれば1ドット当たりの露光時間が短くなり、印刷速度が速くなるが、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命の低下を招いていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、素子寿命を低下させることなく、発光部から入射した光を出射面から出射される出射光量を増加させることのできる走査ヘッド及びドット照射素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、
面状に発光する複数の面発光部が一列に配列された面発光部アレイパネルと、
前記面発光部にそれぞれ対向した複数の導光部とを備え、
前記導光部は、前記面発光部に対向した入射面と、前記入射面に対して傾斜した状態で前記入射面に対向した第一対向反射面と、前記第一対向反射面に沿って設けられ前記入射面と前記第一対向反射面との間の狭角よりも大きな狭角となるように、前記入射面に対して傾斜している第二対向反射面と、前記面発光部からの光を出射する出射面と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項10の発明は、
面状に発光する面発光部と、
前記面発光部に対向した導光部と、
前記導光部は、前記面発光部に対向した入射面と、前記入射面に対して傾斜した状態で前記入射面に対向した第一対向反射面と、前記第一対向反射面に沿って設けられ前記入射面と前記第一対向反射面との間の狭角よりも大きな狭角となるように、前記入射面に対して傾斜している第二対向反射面と、前記面発光部からの光を出射する出射面と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1、請求項10の発明によれば、面発光部から発した光が導光部の入射面に入射し、入射した光が第一対向反射面や第二対向反射面で反射して、反射した光が出射面から出射する。このように導光部内を伝播することにより、第二対向反射面は、第一対向反射面と入射面との間の狭角よりも大きな狭角となるように、傾斜した状態で設けられているため、出射面に対して垂直な方向への光の指向性を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の走査ヘッドにおいて、
前記導光部の前記第一対向反射面、第二対向反射面には、反射膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の走査ヘッドにおいて、
前記入射面と前記第一対向反射面との間には第一側反射面が形成され、前記第一側反射面の高さは、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の走査ヘッドにおいて、
前記第一対向反射面の幅は、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の走査ヘッドにおいて、
前記第二対向反射面の幅は、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の走査ヘッドにおいて、
前記第二対向反射面と前記入射面側の面との間には、第二側反射面が形成され、前記第二側反射面の高さは、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の走査ヘッドにおいて、
前記面発光部が基板上に下部電極、有機EL層、上部電極の順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記導光部の前記入射面が前記上部電極側において前記上部電極に対向していることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の走査ヘッドにおいて、
前記入射面側の面における前記第二対向反射面との対向部には、反射膜が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の走査ヘッドにおいて、
前記入射面は、前記面発光部の発光形状に重なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光部から入射した光を出射面から出射される光量を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
図1は、画像出力装置1を示す斜視図である。図1に示すように、この画像出力装置1においては、複数の発光素子を有する走査ヘッド2が、その光出射部が感光ドラム3の母線に対向するように且つその長手方向がローラ状の感光ドラム3の回転軸と平行になるように配置されている。そして、走査ヘッド2の光出射部と感光ドラム3の母線との間にはセルフォックレンズアレイ4が感光ドラム3の半径方向の線上を光軸とする複数のセルフォックレンズを走査ヘッド2の光出射部に沿って一列又は複数列に配列されている。走査ヘッド2の光出射部からの光はセルフォックレンズアレイ4によって感光ドラム3の母線に結像される。
【0021】
図2は、走査ヘッド2のうち発光素子3ドット分の構成を示した斜視図である。走査ヘッド2は、面発光部アレイパネル20と、面発光部アレイパネル20の発光面21上に一列に配列された複数の導光部60と、を具備する。
【0022】
図3は、面発光部アレイパネル20の発光面21の平面図であり、図4は、図3の切断線IV−IVを通り絶縁性基板30の厚さ方向に沿った面の矢視断面図であり、図5は、図3
の切断線V−Vを通り絶縁性基板30の厚さ方向に沿った面の矢視断面図である。
図3〜図5に示すように、面発光部アレイパネル20は、絶縁性基板30と、絶縁性基板30上で、導光部60の下面に位置するように一列に配列され、平面視して略長方形状(略四辺形)に発光する複数の面発光部22と、を備えている。
【0023】
面発光部22は、有機エレクトロルミネッセンス素子27を有する。即ち、面発光部22は、絶縁性基板30上に形成された光反射性の下部電極23と、下部電極23上に積層された有機EL層と、透明な上部電極26と、を備える。
【0024】
有機EL層は、例えば図4に示すように、正孔輸送層24と発光層25とを備える。正孔輸送層24は、例えば、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)を含む。発光層25は、例えば、ポリフェニレンビニレン等の共役二重結合ポリマを含む。なお、面発光部22が有機エレクトロルミネッセンス素子として発光するのであれば、下部電極23と上部電極26との間の有機EL層が正孔輸送層24と発光層25の二層構造となっていなくても良い。例えば、下部電極23と上部電極26との間の層が、下部電極23から順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層となる三層構造であっても良いし、発光層からなる一層構造であっても良いし、発光層と電子輸送層であっても良いし、これらの層構造において適切な層間に電子又は正孔の輸送層が介在した積層構造であっても良いし、その他の積層構造であっても良い。また、下部電極23をカソード、上部電極26をアノードとした場合では、下部電極23が電子輸送性の電荷輸送層、上部電極26側に正孔輸送性の電荷輸送層を配置させる。
【0025】
下部電極23は、有機EL層の光に対して反射性を示すことが好ましく、アノードとして適用される場合、正孔輸送層24に対して正孔を輸送しやすい材料からなり、例えば、アルミニウム、クロム、チタン等の金属を含むことが好ましい。またこのような反射性導電体層を下層に設け、その上層に正孔輸送層24に接するように、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、及びカドミウム−錫酸化物(CdSnO4)の少なくとも一種を含む透明導電体層を配置させた積層体でもよい。
【0026】
上部電極26は、有機EL層の光に対して透過性を示し、カソードとして適用される場合、電子輸送性の電荷輸送層に接する面に設けられる、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されているアノードよりも仕事関数の低い材料で1〜20nm、望ましくは5〜12nm程度の厚さの電子輸送膜と、カソードとしてのシート抵抗を低くするための透明導電体層とを有する。透明導電体層は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、及びカドミウム−錫酸化物(CdSnO4)の少なくとも一種を含む透明導電体層と、の積層体であり、アノード電極として適用される場合、正孔輸送性の電荷輸送層に接する面に錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、及びカドミウム−錫酸化物(CdSnO4)の少なくとも一種を含み、30〜200nmの厚さが好ましい。
【0027】
これら面発光部22では、各有機エレクトロルミネッセンス素子27が適宜独立して発光するように、上部電極26と下部電極23のうちの少なくとも一方が有機エレクトロルミネッセンス素子27ごとに電気的に絶縁されるように別々に形成されている。本実施形態では、下部電極23が面発光部22ごとに別々に形成され、上部電極26が全ての面発光部22に共通してべた一面に成膜されている。
【0028】
正孔輸送層24は、面発光部22ごとに別々に形成されていても良いし、全ての面発光部22に共通してべた一面に成膜されていても良い。発光層25も、面発光部22ごとに別々に形成されていても良いし、全ての面発光部22に共通してべた一面に成膜されていても良い。また、正孔輸送層24を全ての面発光部22に共通してべた一面に成膜し、発光層25を面発光部22ごとに異なる色に発光する発光層として別々に形成されていても良い。本実施形態では、正孔輸送層24及び発光層25がともに、面発光部22ごとに別々に形成されている。
【0029】
本実施形態では、下部電極23、正孔輸送層24及び発光層25が面発光部22ごとに別々に形成されているが、下部電極23、正孔輸送層24及び発光層25が絶縁膜28によって面発光部22ごとに仕切られており、平面視して下部電極23、正孔輸送層24及び発光層25が絶縁膜28によって囲繞されている。絶縁膜28は、窒化珪素、酸化珪素といった無機物からなるか、又は、ポリイミドといった感光性樹脂からなる。また、面発光部22が発光層25において発光するが、或る面発光部22の発光層25で発光した光が隣りの面発光部22の発光層25等に伝播しないように、絶縁膜28の表面が遮光性を有するとより好ましい。
【0030】
絶縁膜28及び上部電極26は、表面が平滑な透明の封止膜29によって覆われ、下部電極23、正孔輸送層24、発光層25及び絶縁膜28が封止膜29によって封止されている。面発光部22がトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子であるので、封止膜29の表面が面発光部22の出射面となる。
【0031】
1つの面発光部22につき1つの導光部60が対向し、1つの面発光部22とそれに対向する1つの導光部60からドット照射素子が構成される。
以下、導光部60について説明する。図1〜図5に示すように、導光部60は、面発光部22に対応する位置にある面発光部22からの光が入射される入射面63が開口された筒状の光反射部140及び封止膜29によって周囲を囲まれている。光反射部140は、面発光部22に対応し、内面が光反射性の第一反射部160と、平面視して面発光部22と重ならない位置に配置され、第一反射部160での光出射端面となる境界面61において第一反射部160と連結され、内面が光反射性の第二反射部150と、第二反射部150の下方に配置され、表面が光反射性の第三反射部170と、を有している。第一反射部160及び第二反射部150は、連続した反射膜70によって形成されている。第三反射部170は、反射膜71によって形成されている。反射膜70及び反射膜71は、ともに光反射性の金属、合金で形成されており、有機エレクトロルミネッセンス素子27の光に対して反射率が高い方が好ましい。有機エレクトロルミネッセンス素子27の発光の主たる波長域が400nm以上であれば、銀やアルミニウムが好ましく、600nm以上であれば金が好ましい。
第一反射部160は、面発光部22に対応する下面の入射面63及び境界面61がそれぞれ開口された形状であり、第二反射部150は、境界面61、境界面61に対向して光出射端面となる出射面52、及び面発光部22側の下面がそれぞれ開口された形状であり、また出射面52が絶縁性基板30の端面30aに位置合わせされている。第三反射部170は、第二反射部150の開口された下面に配置された平面形状である。
第一反射部160の第一側反射面65,66が三角形であるため、導光部60のうち、第一反射部160及び封止膜29によって囲まれる空間は三角柱となっている。また、第二反射部150及び第三反射部170において、互いに対向し且つ開放された境界面61と出射面52は大きさが異なる相似状の四辺形になっているため、第二反射部150及び第三反射部170によって囲まれる空間は、四角錐台となる。
【0032】
導光部60は、入射面63と、出射面52と、入射面63の対側の第一対向反射面64と、入射面63の周縁と第一対向反射面64の周縁との間の第一側反射面65,66と、入射面63の延長平面上(封止膜29の上面)にある第二反射面53と、第一対向反射面64に沿って連続して設けられ、第二反射面53に対して傾斜した状態で第二反射面53に対向した第二対向反射面54と、第二反射面53の周縁と第二対向反射面54の周縁との間の第二側反射面55,56と、を有している。
第一反射部160における反射膜70は、入射面63に対向した光反射性の第一対向反射面64と、入射面63の周縁と第一対向反射面64の周縁との間の光反射性の第一側反射面65,66と、に接している。
封止膜29上に形成された第三反射部170の反射膜71は、表面が光反射性の第二反射面53に接している。
第二反射部150における反射膜70は、第三反射部170の第二反射面53に対向し、第一対向反射面64に沿って連続して設けられ、第二反射面53に対して傾斜した状態の光反射性の第二対向反射面54と、第二反射面53の周縁と第二対向反射面54の周縁との間の第二側反射面55,56と、に接している。
面発光部22から光反射部140内の導光部60に入射された光は、光反射部140内で反射されて出射面52から出射される、或いは直接、出射面52から出射されるように設定されている。
また、下部電極23は、発光層25で発光さる光のうち、直接入射される光や、第一対向反射面64、第一側反射面65,66で反射された光を、反射する反射面としての機能も有する。
【0033】
入射面63は、第一対向反射面64に対して傾斜している。第一反射部160と第二反射部150との間の境界面(入射面63と第一対向反射面64との間の狭角に相対する面)61と、入射面63とがほぼ直角とされている。第一側反射面65,66は、ともに入射面63に対して直交しており且つ第一対向反射面64に接する辺が端部62から境界面にかけて所定の仰角θ(θ>0゜)を持っている略楔形状であるため、境界面61に平行に切断した面の断面積が、端部62から境界面61にかけて、つまり境界面61に近づくにつれて、漸次大きくなっている。
また、入射面63及び第一対向反射面64は、導光部60の幅方向Wの長さが、端部62から境界面61にかけて略等しくなっている。これら入射面63及び第一対向反射面64は、端部62から境界面61にかけて長尺となる長方形状(四辺形状)である。そして、入射面63の面積は境界面61の面積よりも大きく、具体的に、入射面63は300μm×10μmの長方形であり、その面積は3000μm2、境界面61は10μm×5μmの長方形であり、その面積は50μm2である。
さらに、第一側反射面65,66は、導光部60の高さ方向Hの長さが、端部62から境界面61にかけて、つまり境界面61に近づくにつれて、漸次長くなっている。
【0034】
出射面52及び第二反射面53は、いずれも第二対向反射面54に対して傾斜している。出射面52は、第一対向反射面64と入射面63との狭角である端部62に相対する面である。出射面52は、第二反射面53との狭角がほぼ直角とされている。
第二側反射面55,56は、ともに第二反射面53に対して直交しており且つ第二対向反射面54に接する辺が境界面から出射面52にかけて所定の仰角θ’(θ’>θ)を持っている略楔状であるため、出射面52に平行に切断した面の断面積が、境界面61から出射面52にかけて、つまり出射面52に近づくにつれて、漸次大きくなっている。また、入射面63の面積は出射面52の面積よりも大きく、具体的に、出射面52は20μm×10μmの長方形であり、その面積は200μm2である。
仰角θ’は、仰角θよりも大きいので、第一対向反射面64と第二対向反射面54とは、境界面61において谷状となるように形成されている。
また、第二反射面53及び第二対向反射面54は、幅方向Wの長さが、境界面61から出射面52にかけて漸次長くなっている。第二側反射面55,56は、高さH方向の長さが、境界面61から出射面52にかけて漸次長くなっている。
【0035】
反射膜70は、第一反射部160及び第二反射部150に連続して形成されることが好ましいが、境界面61で分離した構造であっても良い。第一対向反射面64の形状及び第一対向反射面64に接している第一反射部160での反射膜70の形状は図3に示すように、平面視して略長方形状である。第一側反射面65,66の形状及び第一側反射面65,66に接している第一反射部160での反射膜70の形状は、図4に示すように、三角形状である。第二対向反射面54の形状及び第二対向反射面54に接している第二反射部150での反射膜70の形状は、図3に示すように、台形状であり、第二側反射面55,56の形状及び第二側反射面55,56に接している第二反射部150での反射膜70の形状は、図4に示すように、台形状である。第二反射面53の形状及び第二反射面53に接している第三反射部170での反射膜71の形状は台形状である。
【0036】
面発光部22は、図3に示すように入射面63に対してほぼ同一の寸法の相似形状であり、一端31から他端32に長尺となる長方形状に面発光する。面発光部22の面積は、導光部60の入射面63の面積の80%〜110%、好ましくは85%〜99%である。面発光部22が長方形状に面発光するために、上部電極26と下部電極23のうち各面発光部22ごとに電気的に独立して形成された電極、本実施形態では下部電極23が長方形状に形成されている。各面発光部22は、隣接する面発光部22に対応する導光部60に光が出射されないように、全面が、対応する入射面63のみに重なっていることが好ましい。
【0037】
そして、入射面63が面発光部22の出射面に対向するように当接し、入射面63が面発光部22の発光形状に重なり、端部62が面発光部22の一端31の縁部近傍に位置し、境界面61が面発光部22の他端32の底辺と平行になっている。面発光部22の一端31から他端32にかかる主軸方向は、図3に示すように、面発光部22の法線方向から見た導光部60の主軸Axの方向に一致している。
【0038】
導光部60の形状を定義づける光反射部140の反射膜70は、電子ビーム露光の際に、加速電圧を変化させて深さを制御した3次元金型に反射膜70となる反射性材料を注入することによって立体成型することができる。
【0039】
図1に示すように、複数の導光部60の出射面52が走査ヘッド2の光出射部となり、これら導光部60の主軸Axがセルフォックレンズアレイ4の光軸と一致するように出射面52がセルフォックレンズアレイ4の入射面に対向している。
【0040】
面発光部アレイパネル20の一方の面には駆動回路80が設けられ、各面発光部22の配線33が駆動回路80に接続され、駆動回路80は、印刷データとなる画像信号に基づいて配線33を通じて所望の電圧又は電流を各有機エレクトロルミネッセンス素子27に印加して有機エレクトロルミネッセンス素子27を適宜発光する。
【0041】
この時、下部電極23と上部電極26とに重なる部分の発光層25の形状が長方形状であるから、面発光部22が長方形状に発光する。そして、面発光部22から発した光が導光部60の入射面63に入射する。入射した光は、仰角θによって入射面63、第一対向反射面64、第一側反射面65,66での反射を繰り返して第一反射部160内を伝播し、さらに、仰角θ’によって第二反射面53、第二対向反射面54、第二側反射面55,56での反射を繰り返している間に、出射面52側に向けて進行するような指向性を付与されて導光部60内を伝播して導光部60の出射面52から導光部60の主軸Axに概ね沿うように出射する。このように導光部60自体が入射光の指向性を調整する光調整部として機能する。そのため、導光部60の入射面63に入射した光が出射面52から、出射面52から効率良く出射し、出射面52に対して垂直方向への光の指向性が高まる。そして、出射面52から出射した光がセルフォックレンズアレイ4によって回転する感光ドラム3の母線に結像され、感光ドラム3の側面に像が形成される。
【実施例】
【0042】
次に、図6に示すように、上述の第一反射部160のみによって定義される側面が三角形の三角柱の導光部(比較例)と、第一反射部160、第二反射部150及び第三反射部170によって定義づけされる導光部60(本発明例)とにおいて、出射面から出射する光量の比較を行った。面発光部22は、比較例、本発明例ともに同一形状、同一寸法に設定され、第一反射部160も、比較例、本発明例ともに同一形状、同一寸法に設定されているが、比較例では、第一反射部160の光出射端面である境界面61が、絶縁性基板30の端面30aと面一に揃っている。
第一反射部160における導光部60は、長さ300μm、幅10μm、境界面61での高さ5μmに設定されている。第二反射部160及び第三反射部170における導光部60は、長さ40μm、境界面61での幅10μm、出射面52での幅20μm、境界面61での高さ5μm、出射面52での高さ10μmに設定されている。
第一反射部160及び第二反射部150には空気(屈折率1.00)が充填されているとし、面発光部22の面積1μm2当たりの発光光束密度を「1」とした場合の導光部60の主軸Axの方向に対して25°以内に出射される光量の差異をそれぞれ相対値で比較した。
出射面から出射する光のうち、主軸Axの方向に対して25°以内に出射される光量は、比較例では「131」であり、これに対して、本発明例では「420」を得ることができた。従って、25°以内に出射する光量を従来の約3.2倍にすることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態によれば、面発光部22から発した光が導光部60の入射面63に入射し、導光部60内を伝播して出射面52から光が出射する。第二対向反射面54は、第一対向反射面64と入射面63との間の狭角θよりも大きな狭角θ’となるように第二反射面53に対して傾斜した状態で設けられているため、出射面52に対して垂直な方向への光の指向性を高めることができ、素子寿命を低下させることなく出射する光量を増加させることができる。その結果、隣接する画素間でのクロストークを防止することができる。
【0044】
また、出射面52の面積は、入射面63の面積より小さいので、面発光部22から入射面63に入射した光が収束された状態で出射面52から出射する。面発光部22の単位面積当たりの発光強度が低くても、出射面52では高強度で光が出射する。そのため、短い露光時間で感光ドラム3が感光し、そのため感光ドラム3を高速に回転させることができ、強いてはプリント時間を短縮することができる。
【0045】
また、出射面52から出射する光の強度を上げるために、面発光部22の発光強度を高めることが考えられるが、面発光部22の発光強度を高めることは面発光部22の寿命を縮めることにつながる。しかしながら、面発光部22から入射面63に入射した光が収束された状態で出射面52から出射するので、面発光部22の発光面積を大きくすることによっても、出射面52から出射する光の強度を上げることができる。面発光部22の発光面積を大きくしたものとしても、それに合わせて入射面63の面積を大きくすれば、出射面52の面積を大きくせずとも、出射面52での光強度が高まる。そのため、ドット径が大きくならず、高解像度の画像を形成することができる。
【0046】
また、導光部60に入射された光が、出射面52に向けて進行しやすいように導光部60の形状を設定したので、入射面63から取り込んだ光を効率良く出射することができ、さらに、導光部60の主軸Axでの光強度が強くなるような指向性が付与されたため、セルフォックレンズアレイ4に効率良く入射することができ、光の利用効率が向上するので、短い露光時間で感光ドラム3が感光し、感光ドラム3を高速に回転させることができ、強いてはプリント時間を短縮することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の改良並びに設計変更を行っても良い。
例えば、反射膜70及び反射膜71等で仕切られた上記導光部60には、透光性を有する空気等の気体が充填されていたが、これに限らず、低屈折率の透明な固体材料、例えばポリジメチルシロキサン樹脂、フッ化エチレンやフッ化プロピレン等の重合体からなるフッ素系樹脂、エポキシ系熱硬化樹脂やガラス等や、低屈折率の透明な液体材料、例えば水(屈折率nD20=1.33)、メチルアルコール(屈折率nD20=1.32)、エチルアルコール(屈折率nD20=1.36)を適用してもよい。ただし、液体材料の場合、出射面52等から漏洩しないように他の透明部材で十分封止する必要がある。固体材料の場合の導光部の形成方法としては、例えば、固体材料が溶解された溶液をナノインプリント技術によってナノサイズに微細加工されたレジストパターンの鋳型に流し込み、固めて作製してもよい。屈折率は空気と同じ1に近いほど好ましく、樹脂としては1.5以下であることが好ましい。そして、導光部の所定箇所に、反射膜を成膜することによって反射面を形成すれば良い。
【0048】
また、上記実施の形態において、第二反射部150は、例えば、図7に示すように、反射膜71を設けずに、絶縁性基板30上の面発光部22を第二反射部150の下面まで形成して有機エレクトロルミネッセンス素子27の光反射性の下部電極23を第三反射部170としてもよい。
また、上記実施形態では、面発光部22(下部電極23と上部電極26とに重なる部分の発光層25)、導光部60の入射面63及び第一対向反射面64、第一対向反射面64に接する第一反射部160はいずれも長方形であったが、図8、図9に示すように、三角形にしても良い。つまり、第一反射部160での導光部60を境界面61を底面とした四角錐として、出射効率を向上するようにしてもよい。この場合においてもθ’>θである。また第一反射部160での端部162の角度α及び第二反射部150での第二対向反射面54に対応する角度α’は、α<α’となるように設定されている。このような形状は、下部電極23の周縁を覆うよう絶縁膜を形成し、絶縁膜での下部電極23が露出する開口部を三角形とすればよい。 なお、面発光部22(下部電極23と上部電極26とに重なる部分の発光層25)、導光部60の入射面63及び第一対向反射面64、第一対向反射面64に接する第一反射部160は図10に示すように台形であってもよい。この場合においてもθ’>θである。また第一反射部160での端部262の角度β及び第二反射部150での第二対向反射面54に対応する角度β’は、β<β’となるように設定されている。このような形状は、下部電極23の周縁を覆うよう絶縁膜を形成し、絶縁膜での下部電極23が露出する開口部を台形とすればよい。
また整合性があれば、このような変形例の構成を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】画像出力装置1の斜視図である。
【図2】走査ヘッド2のうち3ドット分の構成を示した斜視図である。
【図3】4ドット分の面発光部アレイパネル20の発光面21の平面図である。
【図4】図3の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】図3の切断線V−Vに沿った面の矢視断面図である。
【図6】比較例の走査ヘッドのうち3ドット分の構成を示した斜視図である。
【図7】走査ヘッド2の主軸方向に切断した断面図である。
【図8】走査ヘッド2のうち3ドット分の構成を示した斜視図である。
【図9】4ドット分の面発光部アレイパネル20の発光面21の平面図である。
【図10】4ドット分の面発光部アレイパネル20の発光面21の平面図である。
【符号の説明】
【0050】
20 面発光部アレイパネル
22 面発光部
52 出射面
53 第二反射面
54 第二対向反射面
55,56 第二側反射面
60 導光部
63 入射面
64 第一対向反射面
65,66 第一側反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状に発光する複数の面発光部が一列に配列された面発光部アレイパネルと、
前記面発光部にそれぞれ対向した複数の導光部とを備え、
前記導光部は、前記面発光部に対向した入射面と、前記入射面に対して傾斜した状態で前記入射面に対向した第一対向反射面と、前記第一対向反射面に沿って設けられ前記入射面と前記第一対向反射面との間の狭角よりも大きな狭角となるように、前記入射面に対して傾斜している第二対向反射面と、前記面発光部からの光を出射する出射面と、を有することを特徴とする走査ヘッド。
【請求項2】
前記導光部の前記第一対向反射面、第二対向反射面には、反射膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の走査ヘッド。
【請求項3】
前記入射面と前記第一対向反射面との間には第一側反射面が形成され、前記第一側反射面の高さは、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする請求項1又は2に記載の走査ヘッド。
【請求項4】
前記第一対向反射面の幅は、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の走査ヘッド。
【請求項5】
前記第二対向反射面の幅は、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の走査ヘッド。
【請求項6】
前記第二対向反射面と前記入射面側の面との間には、第二側反射面が形成され、前記第二側反射面の高さは、前記出射面に近づくにしたがって漸次広がっていくことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の走査ヘッド。
【請求項7】
前記面発光部が基板上に下部電極、有機EL層、上部電極の順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記導光部の前記入射面が前記上部電極側において前記上部電極に対向していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の走査ヘッド。
【請求項8】
前記入射面側の面における前記第二対向反射面との対向部には、反射膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の走査ヘッド。
【請求項9】
前記入射面は、前記面発光部の発光形状に重なっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の走査ヘッド。
【請求項10】
面状に発光する面発光部と、
前記面発光部に対向した導光部と、
前記導光部は、前記面発光部に対向した入射面と、前記入射面に対して傾斜した状態で前記入射面に対向した第一対向反射面と、前記第一対向反射面に沿って設けられ前記入射面と前記第一対向反射面との間の狭角よりも大きな狭角となるように、前記入射面に対して傾斜している第二対向反射面と、前記面発光部からの光を出射する出射面と、を有することを特徴とするドット照射素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−136890(P2007−136890A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334583(P2005−334583)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】