説明

走査型撮像装置

物体からイメージャまでの距離より大きい物体を撮像するためのテラヘルツ走査型撮像装置。イメージャは走査素子、センサ、および画像プロセッサを備える。走査素子は放射線をセンサに向けるために使用される。多数の走査素子およびセンサを使用することができ、各々が視野の一部分を走査する。センサと連絡している画像プロセッサは、視野の統合2次元画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型撮像装置に関し、特に、センサの配列を使用した撮像装置に関する。本発明は特にミリメートルおよびサブミリメートル波長の撮像に適するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
実時間画像を生成する能力は、セキュリティ、自動製造工程、および娯楽産業のような様々な分野に用途を見出してきた。CCDカメラをはじめとする可視波長カメラは、画像を生成するために使用することができる。固定CCDカメラは、カメラの視野を横切る物品または人々の通過の画像を捕獲ことができる。しかし、カメラの固定された視野より大きい領域の画像を生成することがしばしば必要になる。そうするために走査型CCDカメラが使用され、そこではカメラの検出器を形成する電荷結合センサの配列が、その関連光学系に対して固定された関係に取り付けられ、かつカメラが移動すると、電荷結合センサの配列および関連光学系の両方が一緒に移動するので、固定された視野のカメラよりずっと大きい視野の画像を捕獲することができる。走査領域に対する感知素子の配列の移動を使用する撮像システムのさらなる例としてデジタルスキャナがある。スキャナの多数のセンサは一般的に、走査対象領域を単一方向に配列として掃引される線形配列状に配列される。スキャナでは、各々の個別センサが、スキャナ全体の視野よりずっと小さいそれ自体の視野を有する。したがって、配列に走査対象領域を横切るように掃引させるときに、各々の個別センサは、生成される画像全体のうちの1本の帯状部分をもたらす。
【0003】
領域を走査するさらなる公知の代替的方法は、センサの固定配列を個別センサの全部に共通する可動光学素子と組み合わせて使用するものである。これの1例が、回転鏡を使用して、鏡が回転するときに大きいエリアの異なる領域をセンサの配列に反射させるようにした、米国特許第4056720号に記載されている。共通走査システムは、ディスクの面の法線から数度ずれた軸を中心に各々回転する2つの反射ディスクの使用を含む。第1のディスクに入射した放射線は、第2の回転ディスクに向かって斜めに入射するように反射し、そこで放射線は次に再び反射する。2つの回転ディスクのこの構成により、2つの回転ディスクの軸の角度およびそれらの回転速度の選択に応じて、エリアの多くの異なる走査パターンを達成することができる。
【0004】
ミリメートルおよびサブミリメートル波長での撮像に関する限り、固定および走査センサ配列の両方が考案されてきた。X線のようにこれらの波長は、衣服の下または容器の内部に隠すことのできる、セキュリティ上危険な物質を識別するために使用することができるので、セキュリティ用途に関しては特に興味深い。例えば国際公開第WO03/048815号には、禁制品および不法入植者を識別する目的で、容器の内部を撮像するための固定または走査センサのいずれかを使用するポータル撮像システムが記載されている。国際公開第WO03/048815号のポータル撮像システムに実現するのに適した走査システムは、国際公開第WO00/14587号に記載されている。国際公開第WO00/14587号には、光学系を折り畳むようにした、従来の2つのディスク回転システムの変形が記載されている。しかし、国際公開第WO00/14587号でも、集光光学系および走査システムは配列内の個別センサの全てに共通のままである。
【特許文献1】米国特許第4056720号
【特許文献2】国際公開第WO03/048815号
【特許文献3】国際公開第WO00/14587号
【0005】
可視波長より長い走査波長の場合、集束光学系はより大きくかつ扱いにくくなる。また、撮像しようとする物体の高さ/幅と物体の撮像装置からの距離との比が1:1より大きい場合、そのような構成は物体の像を検出器に集束させるためにしばしばより複雑な光学系を必要とするので、別個の問題が生じる。ミリメートルおよびサブミリメートル波長では、これらの問題は特に深刻であり、従来の走査型撮像システムはこれらの問題に適切に対処していない。特に、画像を捕獲するためにかかる時間は、システムの検出画素数に正比例する。各画素の物理的サイズは、光学系の要件に厳しい制約を課す。固定光学要素の寸法の場合、最適に照明することのできる最大画素数があり、それは次に画像捕獲速度の限界を導く。
【発明の開示】
【0006】
したがって本発明は、既存の走査型撮像システムが経験する不利点の幾つかに対処しようとするものであり、好適な実施形態では、本発明は、画像を迅速に捕獲することができ、かつ撮像される物体が物体の撮像装置からの距離より大きい環境での使用に適した走査型撮像システムを提供するように努める。
【0007】
本発明は、視野を走査するように構成されたテラヘルツ走査型撮像装置であって、視野の複数のそれぞれの部分からのテラヘルツ放射線を検出するように構成された複数のセンサと、視野のそれぞれの部分からのテラヘルツ放射線を対応するセンサに向けるように構成された少なくとも1つの走査素子と、センサと連絡しており視野の統合画像を生成するための画像プロセッサとを備えた、装置を提供する。
【0008】
視野の部分は離散的であるかもしれず、あるいは部分間に多少の重なりがあるかもしれない。視野の統合された2次元画像が画像プロセッサによって形成されるときに、重なりを除去して空間的に連続した画像を形成することができる。
【0009】
好適な実施形態では、該装置は複数の走査素子を含み、各素子は、視野の部分の1つをそのそれぞれのセンサに取込むように構成される。
【0010】
代替的構成では、単一の走査素子を使用して、視野の複数の部分からの放射線を対応する複数のセンサ上に向ける。
【0011】
さらなる実施形態は、各走査素子が例えば2回転自由度、1回転および1並進自由度、または2並進自由度によって2次元の視野を走査するために移動できるように取り付けられて成る、テラヘルツ走査型撮像装置を提供する。2回転自由度を使用する場合、回転軸は交差することができる。
【0012】
特定の実施形態では、本発明は、イメージャの固定配列および画像プロセッサを備えた走査型撮像装置であって、固定イメージャの配列は前記固定イメージャによって生成される画像データに基づいて走査型撮像装置の視野の画像を生成するための画像プロセッサと連絡し、固定イメージャの前記配列は前記視野およびそれぞれの複数の走査素子に対して固定された複数のセンサを備え、各走査素子は前記視野の部分からの放射線をそのそれぞれのセンサに向けるように構成され、各走査素子は第1および第2方向に移動してそのそれぞれのセンサが前記視野の前記部分を対応する第1および第2走査方向に走査するように取り付けられ、それによって各固定イメージャが前記視野のそのそれぞれの部分に関係する画像データを生成するように構成された、撮像装置を提供する。
【0013】
好ましくは、固定イメージャの配列は、複数の固定イメージャからの画像データを並列に通信するように、画像プロセッサに接続される。また、好ましくは、各走査素子の第1および第2移動方向の少なくとも1つが軸を中心とする回転を含み、理想的には、走査素子の第1および第2移動方向が直交して、映像出力に容易に変換することのできる直線走査出力を提供する。
【0014】
好適な実施形態では、前記複数の走査素子は平面鏡の形の複数の反射素子を含み、対応する複数のコリメータが設けられ、放物面鏡のような各コリメータはそれぞれのセンサに対して固定された関係に配設され、それぞれの走査素子からの像をそのそれぞれのセンサ上に視準させるように構成される。走査型撮像装置はまた、前記複数の走査素子の回転を制御するための回転駆動装置をも含むことができ、それはステッパモータのような電動機または圧電駆動部材の形を取ることができ、好ましくは、それぞれ前記第1および第2軸を中心とする回転を制御するために、第1および第2回転駆動装置が設けられる。より好ましくは、第1および第2回転駆動装置の少なくとも1つは2つ以上の走査素子に共用される。
【0015】
理想的には、前記走査素子の各々は、視野の複数の異なる選択可能な部分を走査するように構成され、隣接する固定イメージャは、視野の部分の1辺縁に沿って重なり合う画像データを生成することができる。
【0016】
好適な実施形態では、複数のセンサはミリメートルまたはサブミリメートル波長の放射線を検出するように同調される。また、複数のセンサは少なくとも第1および第2群のセンサを含むことができ、各群のセンサは、他の群のセンサとは異なる波長の放射線を検出するように同調される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、単なる例示として、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1の走査型撮像装置は一般的に、固定センサの配列、視準光学系のそれぞれの配列、および操縦可能な2軸平面反射器のそれぞれの配列を含む固定イメージャの配列を備える。図示した実施形態では、6個のセンサ2が、各々3個のセンサから成る2つの略平行な直線配列に構成される。図1のセンサ2は、関連する信号収集および増幅回路4を伴うテラヘルツアンテナアレイ3を含む。各直線配列の3個のセンサ2から成る各群は、各センサ2をその隣接センサから略等距離の所定の位置にして、支柱5に固定される。センサは、撮像装置の視野に対して固定される。
【0019】
各群の3個のセンサには、放物面鏡6とアンテナ配列3との結合を最適化するように、それぞれのセンサ2のアンテナ配列3に対して所定の固定位置に各々取り付けられた3個の放物面鏡6の形の視準光学系のそれぞれの直線配列が設けられる。図示した好適な実施形態では、直線配列の放物面鏡6用の支持体7は、放物面鏡とそれらのそれぞれのセンサとの間の固定された空間関係を維持するように、支柱5に固定される。
【0020】
センサ2の各々はまた、各直線配列の3個のセンサ2に対し、対応する直線構成の3個の鏡8が設けられるように、それに関連付けられた平面鏡のようなそれぞれの操縦可能な2軸反射素子8を有する。各組の鏡8は、フレーム9内に取り付けられる。フレーム9は、各端をそれぞれ上部および下部横材11および12によって一体に接続された2つの略平行な縦材10を含む。したがって図1で、フレーム9は開放型の略矩形の構造で表現されているが、フレーム9の他の形状も予想される。
【0021】
フレーム9を横切るように3つのシャフト13が延在し、それらは各々フレーム9内で回転するように取り付けられ、かつ平面鏡8の1つを支持する。平面鏡8はそれらのそれぞれのシャフト13に固定され、したがってフレーム9内でシャフト13と共に回転するように構成される。したがって、各々の平面鏡の第1回転軸はシャフト13の回転軸と一致し、それは図1では、図1を左右に延びる回転軸と一致する。各シャフトの第1端は、フレームに対するシャフトの相対的回転ができるように、フレーム9に設けられた関連めくら穴内の1つ以上の軸受(図示せず)上に取り付けられる。各シャフトの反対側の端は、フレーム9を貫通して延び、再び好ましくは1つ以上の軸受けによって支持され、歯車14で終端する(分かりやすくするために、各歯車の歯は図面では省略されている)。各々同一フレーム9内に取り付けられた3つのシャフトには、各々のシャフトを共通コグドベルト16によって駆動する電動機15のような第1回転駆動装置の形の共通駆動装置が設けられる。したがって、第1モータ15の出力シャフトには、各々のシャフト13の端部に設けられたものと同様の歯車14が設けられ、第1モータ15およびシャフト13の両方の歯車14は、コグドベルト16の連続ループと係合する。
【0022】
加えて、フレーム9は、シャフト13の回転軸に対し垂直な軸(図1における垂直軸)を中心にフレームの回転を生じるように構成された回転自在の支持シャフト17上に、固定的に取り付けられる。第1モータ15がフレーム9と共に回転するように、第1モータ15もまたフレーム9に、または直接的に支持シャフト17に(図示ずるように)、固定的に取り付けられる。支持シャフト17の回転は、1対の歯車19、20および該歯車を連結するコグドベルト21によって支持シャフト17に接続される第2電動機18によって駆動される。
【0023】
平面鏡の2軸回転を駆動するためにコグドベルトを使用することで、それぞれの固定イメージャによって生成される画像データに対する操縦可能な鏡の位置の制御および監視が簡素化される。代替的にステッパモータを使用するか、あるいは非限定的に圧電駆動素子のような他の回転駆動素子を好ましくは位置トランスデューサと組み合わせて使用して、鏡の位置を制御し監視することができる。
【0024】
このようにして、各々の操縦可能な鏡8は、2軸回転ができるように取り付けられ、両方の回転軸はそのそれぞれのフレーム9の面内にあり、第1回転軸はフレームの上部および下部横材11、12と平行に延び、かつ第2回転軸はフレーム9の縦材10と平行に延びる。さらに、各々のセンサ2は、そのそれぞれの放物面鏡6を介して、そのそれぞれの操縦可能な鏡8の2つの回転軸の交点と位置合せされるように配置される。各センサ2の視野は各々の操縦可能な2軸鏡8の共通回転軸上に位置するので、両方のシャフト13、17の部分的回転により、各センサの視野の完全なマッピングが達成され、各センサ2からの画像データを結合することにより、撮像装置の視野の完全なマッピングが達成される。したがって、シャフト13、17が360度回転することができる必要は無いことが明らかであろう。それどころかシャフトは、センサ2の選択された視野を走査するために、90度未満、例えば60度、より好ましくは45度回転するだけでよい。下でさらに詳述する好適な実施形態では、鏡の掃引を調整可能にすることが考えられる。
【0025】
図2は、固定イメージャを形成する光学素子の相対的位置を示す、図1の走査型撮像装置の代替的略図を提示する。言うまでもなく、操縦可能な2軸平面鏡8は、撮像される物体からの放射線が鏡の反射面と鋭角に鏡に入射するように、かつこれが走査中に鏡の全ての位置に対して当てはまるように、配置しなければならないことは明らかであろう。この結果、センサ2は撮像装置の視野の方向を向かないように配置される。この構成は期せずして走査型撮像装置の物理的奥行きが従来の走査システムと比較して低減されるという追加の利点をもたらす。
【0026】
図2に示す固定イメージャでは、操縦可能な鏡8と放物面鏡6との間に偏光子27が含まれる。偏光子27は、センサ2によって収集される画像信号のノイズを低減するのを助ける任意選択的特徴である。屋外撮像の場合、入射放射線の偏光は、天空における太陽の位置によって変化する。したがって、結合を最適化するために、偏光子およびセンサを回転させて、観察される信号レベルを最適化することができる。図2のシステムは、センサ2によって生成される信号のノイズをさらに低減するために設けられる遮蔽体28をも含む。この遮蔽体は、センサ2によって捕らえられる寄生放射線成分を低減することによって、検出される信号コントラストを高めるために、冷却することができる。しかし、適切に設計された光学素子と共に整合したアンテナ配列3により、センサの副視野からの放射線以外の放射線はほとんど検出されなくなり、走査型撮像装置を完全に遮蔽する必要性は軽減される。
【0027】
図1および2に示す鏡8は平面鏡であるが、必要に応じて、凹面鏡および楕円鏡をはじめ、他の形の反射素子を使用することが予想される。さらに、鏡をレンズに置き換えることができる。しかし、特にテラヘルツ周波数では、鏡はレンズより損失が著しく少ない(したがって放射が少ない)ので、鏡が好ましい。
【0028】
物体マッピングの総時間を短縮するために、各センサは単一アンテナを持つことができるが、各センサは光学系の焦点面で直線配列のアンテナを使用することが好ましい。これは瞬間視野を拡張し、かつ前部走査角度範囲を低減し、したがって所定の時間または信号対雑音比を改善するためにより長い露光時間で物体の大きいゾーンをマッピングすることが可能になる。しかし、焦点面における軸外検出素子の使用は、配列の辺縁画素の画像品質の劣化によって影響を受ける。これは配列の前の光学素子のさらなる整形(初期放物面鏡表面の追加的な小振幅最適化変形)によって補償することができる。ミリメートルおよびサブミリメートル波長の場合、各センサの個々のアンテナは約5〜3mm離して配置することが好ましい。
【0029】
センサ2の各々によって生成されるデータは、画像処理ユニット23のデータ入力ポート22に出力される(16個のセンサの各々のための1つのデータ入力ポートが図1に示されている)。入力ポート22は、簡潔にするために完全には図示されていないデータ線24によって、センサ2の出力に接続される。画像処理ユニット23が従来のデスクトッププロセッサハードウェアを含む場合、データ入力ポート22は、例えば専用シリアルポートまたはLAN接続によって設けることができる。画像処理ユニット23はまた、モニタ24のような、しかしそれに限定されない1つ以上の出力装置とも連絡し、かつキーボード25またはマウスのような、しかしそれに限定されない1つ以上の入力周辺装置とも連絡する。
【0030】
画像処理ユニット23はまた駆動制御装置26とも連絡し、それは次にモータ15、18と連絡する。駆動制御装置26はモータ15、18の作動を管理し、したがって鏡8の動きを制御する。こうして、駆動制御装置26によって画像処理ユニット23は、センサ2から受け取る画像データを、画像データが収集されたときのセンサの各々の視野に対する位置情報と同期化する。位置情報は、画像処理ユニット23によって駆動制御装置26に出力されるタイミング命令に対して画像処理ユニットが予測的に決定することができ、かつ/またはモータ15、18に対してかつ/または鏡8の測定された位置に対して駆動制御装置26によって生成されるフィードバックデータに対して決定されることが好ましい。
【0031】
画像処理ユニット23は、位置情報に対してセンサ2の各々から収集された画像データを解析するため、およびセンサの各々からの画像データを結合して、固定イメージャの全部の個別副視野を包含する単一の画像を構築するための画像処理ソフトウェアを含む。画像処理ユニット23によって生成される単一の画像は次いで、走査システムのユーザが見るために、例えばモニタ24に出力することができる。
【0032】
走査型撮像装置の第2の実施形態を図4および5に示す。この構成ではイメージャは、垂直面を撮像するように相互に略平行に配設された1列の固定イメージャ(図4および5には4個が図示されている)から成る固定イメージャの配列を有する。固定イメージャのそのような構成は、人のような丈が高く細長い物体を撮像するときに望ましい。各固定イメージャは、横1列に配設された複数の固定検出器3から成ることが好ましい。固定検出器3は、装置の基部のそれぞれの固定放物面鏡40、および撮像面の底部から頂部までの垂直方向の可動放物面鏡41の移動および主光軸を中心とする回転を可能にするキャリッジ42に取り付けられたそれぞれの垂直方向可動方物面鏡41の主光軸上に配置される。固定検出器3は、走査型撮像装置の完全な視野の画像を構築するためにデータ線24で画像プロセッサ(図示せず)に通信するための画像データを収集する。
【0033】
この代替的走査型撮像装置の作動原理は以下で述べる。固定放物面鏡40は、可動放物面鏡41が移動する垂直面と位置合せされた円形断面の視準ビームを集光するために使用される。可動放物面鏡41は、撮像される物体上の集束スポットから視準ビームを生成する。垂直方向可動放物面鏡41は、その焦点が鏡から約0.5メートルの位置にくるように配置される。したがって、各固定イメージャは、各可動放物面鏡41の垂直面垂直の移動後に最終画像の垂直帯状部に関する画像データを収集する。各々の固定イメージャによって生成される垂直画像帯状部は隣接しておらず、相互に重なり合わない。それどころか、各々の垂直画像帯状部は、隣接する固定イメージャによって生成される画像帯状部から離れており、各々の画像帯状部の間の間隔は、まだ撮像されていない視野の領域を表わす。
【0034】
各々の可動放物面鏡41はまた、ステッパモータ駆動装置(図示せず)を介して、動放物面鏡41の直線移動軸と平行になるように構成することが好都合である固定および可動放物面鏡間のビームの光軸を中心に、回転できるように構成される。可動放物面鏡41の焦点は、好ましくは鏡の直線運動に略垂直な、鏡と撮像される物体との間の光軸上に位置する。このようにして、可動放物面鏡41の回転中に、鏡の焦点はほぼ同一垂直高さに維持することができる。したがって、可動放物面鏡41の各垂直方向並進後に、可動放物面鏡41は主光軸を中心に所定の度数だけ回転し、垂直面内の垂直の放物面鏡41の移動を繰り返すことによって隣接する垂直帯状部の新しい画像データを収集することができる。次いでこの手順は、異なるサイクルで隣接する固定イメージャによって生成される垂直帯状部の画像が重なるまで、周期的に繰り返される。画像データを各々の固定検出器3から受け取る画像プロセッサは次いで、垂直画像帯状部を結合して走査型撮像装置の視野の全体画像にする。
【0035】
画像捕獲プロセスの速度は、固定放物面鏡の撮像面内にX個の検出器の水平方向配列を使用することによって、側面検出器ラスタスキャンに比較して大幅に増大する。可動放物面鏡を垂直方向に並進するたびに、画像のX個の隣接帯状部が取り出される。可動放物面鏡は次いで、個々の検出器の画像帯状部の全幅と同等の角度回転し、次いでX個の新しい帯状画像を取り出す。このようにして、画像捕獲の速度がX倍増大する。各々がX個の検出器を有するY個の固定イメージャの配列を上述の方法で実現した場合、走査型撮像装置が画像を捕捉する必要のある回数は、側面検出器が画像面全体をラスタスキャンする必要のある総捕捉回数と比較して、X*Y倍早くなる。
【0036】
この構成の潜在的問題点は、可動鏡の軸外の回転と共に、これらの固定検出器が固定放物面鏡の主光軸から離れて配置されることから生じる。配列の最外縁の検出器の撮像点はもはや、中心軸と同一面同一に位置しなくなる。この効果は、画像ソフトウェアで画像再生における誤配置を補正するように補正することができる。代替的に、全ての画素が主光軸上に維持されるように、固定放物面鏡を頂部可動放物面鏡と同時に回転することができる。
【0037】
走査型撮像装置の視野全体を、画像データの平行な入力が予想される個々の副視野に分割するので、視野全体の画像は数秒内に生成することができる。実際、0.5m2の物体は約5秒で走査することができ、ミリメートルおよびサブミリメートルの場合、放射線は信号および画像処理後に5mmの解像度の画像が可能である。
【0038】
好適な実施形態では、画像処理ユニット23は個々のセンサの副視野の重なりを利用して、センサによって記録された画像の位置合せを確認する。例えば部分的重なりができるようにセンサが配設される場合、それぞれ第1および第2の隣接センサの第1および第2副視野に共通する縁部領域に特定的な画像データを画像処理ユニット23が比較して、データパリティ検査として、第1および第2センサからの画像データ間の同一性を確認することができる。
【0039】
図1は、簡潔にするために、1群の鏡に共通するモータを使用する機械的に同期される操縦可能な鏡を使用する走査型撮像装置を示す。しかし、各鏡はそれ自体の回転駆動装置によって独立に駆動してもよい。この代替的構成では、ソフトウェア設定可能な走査構成を実現することができる。特に、各固定イメージャの最大副視野が重なるようにする場合、隣接検出器の重なる走査領域を選択することによって接近ズーム機能を実行することが可能である。こうして走査型撮像装置は、関心項目が識別される場合に、個々の副視野をより緊密に迅速かつ選択的に解析するために使用することができる。重なる副視野の注意深い選択によって、信号対雑音比をさらに改善することも可能である。また、重なる副視野を使用して、撮像される人または物体に対する各検出器の位置に関する立体画像情報を生成することも可能である。個々の検出器からのデータ選択および/または選択された検出器によって走査される個々の副視野の選択は、入力周辺装置25によって画像制御装置に入力することが好ましい。
【0040】
図1に示した走査型撮像装置は、空港のような交通ターミナルでの隠匿された武器および/または危険物の識別に使用するのに特に適している。図3に、テラヘルツ周波数で動作可能な走査型撮像装置が図示されている。走査型テラヘルツ撮像装置30は壁に取り付けられ、4つの垂直方向に配設された直線配列のセンサ31、32、33、34を備え、各配列は5個のセンサを含む。センサ配列の数および寸法は、立っている人の幅および高さを超える視野を撮像するのに充分であるように選択される。
【0041】
図示する通り、直線配列のセンサおよびそれらの関連する操縦可能な鏡は、テラヘルツ放射線を実質的に透過するが、可視波長では実質的に不透過であることが好ましいスクリーンの後ろに配置される。走査型テラヘルツ撮像装置30は、図示するように、乗客が出発ゲートに到達するために通過しなければならない廊下の壁に配置することができる。代替的に、走査型テラヘルツ撮像装置30は、現在X線装置が使用されている例えば交通ターミナル内のセキュリティチェックポイントに設けることができる。その場合、走査型テラヘルツ撮像装置30は自立型スクリーン付きユニットとして設けることができ、その前で乗客は通常のセキュリティ上の手続きの一環としてスクリーンの方およびスクリーンの反対側を向いて瞬間的に立つように要求される。走査型撮像装置に使用される光学配置および8〜12cmの間の有効径(つまり7から10cmの間の入射瞳孔径)を有する操縦可能な平面鏡を使用する結果、走査装置に近接して立ったときに個人(約1.5m〜2.0mの高さ)つまり≒200cm未満の画像を生成することが可能である。これは、大きい(準無限の)焦点深度をもたらす望遠鏡(つまり有限‐無限)光学構成を使用する。これにより、システムは厳密な装置と物体との距離に耐えることができる。他方、さらに遠い物体は低い解像度で見える。物体が公称設計距離より近接している場合、走査型装置の固定イメージャを軸方向に並進させて、ピンボケの画像(近接場効果)を補償させることができる。最適な光学信号がアンテナ配列に結合するために、ミリメートル波長で2〜5mmの範囲の焦点深度を導く高速集束光学系が使用され、それは標準的な直線並進ステージで容易に管理可能かつ達成可能である。これは、本書に記載する走査型テラヘルツ撮像装置の焦点深度が従来のテラヘルツ走査システムのそれより小さいこと、およびそれがより単純な光学部品を用いて達成されることに起因する。
【0042】
〜5mmの公称解像度に基づいて、近接範囲で、つまり装置から〜50cmの物体をテラヘルツ撮像する場合、両方のスペクトル範囲それぞれの口径比F‐2およびF‐4のため、入射瞳孔径はミリメートル波長では直径20〜30cmの範囲であり、サブミリメートル波長では直径10〜20cmの範囲である。この構成により、走査型撮像装置は約10mmの焦点深度を有する。この構成の走査装置は、最小限2つの放物面鏡または2つの共焦点楕円面鏡のいずれかに基づく(中心部の曖昧さによる信号損失を防止するために軸外)ガウスビーム望遠鏡を介する有限‐有限共役光学システムを必要とする。放物面選択肢は最終的なスペクトル分割のための中間瞳面を提供する(多波長用途)一方、楕円面手法は、フィールド能力の低減(つまり劣化無く焦点面の直線配列のサイズを縮小すること)を犠牲にして放射線性能を改善するための中間視野絞りの自然の実現をもたらす。
【0043】
走査型テラヘルツ撮像装置30は、自然の背景テラヘルツ放射線を検出するように設定することができ、あるいは代替的に走査型テラヘルツ撮像装置30は、テラヘルツ放射線で走査される人々または手荷物を照射するためのテラヘルツ源35を含むことができる。受動放射線走査の場合、走査型テラヘルツ撮像装置30は、テラヘルツ放射線を強く反射する表面に向かって配置することが好ましい。この方法で、走査型撮像装置30と高度反射面との間に立つ人々(テラヘルツ放射線の吸収者である)は、明るく照明された背景における暗い特徴として撮像される。さらなる代替例では、各検出器はさらに、雑音の多いテラヘルツ放射線源を設けることができる。そのような放射線源は光学光源フィルタにかけて、光学成分を除去し、テラヘルツ成分を通過させることができる。テラヘルツ源は、撮像装置の前に立つ人々を照明するだけでなく、照明されたときにこれらの人々の画像を捕獲するために、コリメータおよび操縦可能な平面鏡の光学構成と位置合せされる。雑音が源からセンサ2に直接漏出しないことを確実にするために注意を払わなければならない。
【0044】
さらに、走査型撮像装置は、単一の所定の波長で撮像することに制限する必要はない。個々のセンサは異なる波長を検出するように同調させることができるので、多波長画像を生成することができる。好適な実施形態では、直線配列のセンサを直線配列の対または組のセンサに置き換えることができる。1組内の各センサは異なる波長に同調され、1組内の全てのセンサが同一副視野を同時に撮像する。この実施形態では、異なる波長の同一副視野の画像データを画像処理ユニット23で直接比較して、異なる撮像波長におけるそれらの特徴的放射線吸収に関連して物質および化合物を識別することができる。多波長の使用は、化学、生化学、および食品産業で特に有利である。
【0045】
ミリメートルおよびサブミリメートル波長では、好ましくは個々の固定イメージャは30から80cmの間、さらに好ましくは50cm離して配置されるが、結合して連続した単一の画像をもたらすか、あるいは副視野の辺縁が部分的に重なる、個々の副視野を依然として走査することができる。
【0046】
言うまでもなく、上述した走査型撮像装置は直線配列の固定イメージャを含むので、モジュール式の実現に特に適しており、全視野が要求されるどんな走査装置の構成でも大幅に簡素化する。さらに、走査装置のモジュール性は、損傷したセンサ素子の修理/交換を簡素化する。
【0047】
上述した特定の実施形態はミリメートルおよびサブミリメートル波長で動作可能な走査型撮像装置に関係するが、走査型撮像装置は他の波長で撮像するために実現することができることは明らかであろう。しかし、テラヘルツ波長での本発明の走査型撮像装置の実現は、光学素子が本発明の走査型撮像装置に比較して複雑かつ高価であり、本発明で達成可能な解像度および速度で画像を生成することのできない従来のテラヘルツ走査装置に勝る、かなりの利点をもたらす。さらに、本書に記載した走査型撮像装置で使用する光学系の結果、該装置は特に、撮像される物体の寸法が、走査型撮像装置からの物体、例えばセキュリティスクリーンまたはポータルの前に立つ人の距離に近いかそれより大きい場合に特に適している。さらなる実施例として、手紙および小包の自動セキュリティ走査がある。
【0048】
付属の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、走査型撮像装置のさらなる実施形態も想定される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る走査型撮像装置の略図である。
【図2】図1の走査型撮像装置を形成する光学素子の相対位置を示す図である。
【図3】本発明に係るテラヘルツ走査型セキュリティ設備を示す図である。
【図4】本発明に係る代替的走査型撮像装置を示す図である。
【図5】図4の走査型撮像装置の周囲の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野を走査するように構成されたテラヘルツ走査型撮像装置であって、
前記視野の複数のそれぞれの部分からのテラヘルツ放射線を検出するように構成された複数のセンサと、
視野のそれぞれの部分からのテラヘルツ放射線を対応するセンサに向けるように構成された少なくとも1つの走査素子と、
前記センサと連絡しており、前記視野の統合画像を生成するための画像プロセッサと、を備えたテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項2】
複数の走査素子を備え、各素子が前記視野の前記部分の1つを走査してそれぞれのセンサに取り込むように構成された、請求項1に記載のテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項3】
各走査素子が前記視野を2次元で走査するために移動できるように取り付けられた、請求項1または2に記載のテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項4】
前記走査素子の各々が前記視野を2次元で走査するために2つの軸を中心に回転できるように取り付けられた、請求項3に記載のテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項5】
前記2つの回転軸が同一平面上にある、請求項4に記載のテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項6】
イメージャの配列を備え、各イメージャが前記走査素子および前記センサを含む、請求項1ないし5のいずれかに記載のテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項7】
前記画像プロセッサが前記視野の部分の複数の画像を結合することによって前記視野の画像を生成するように構成され、前記視野の部分の各画像がイメージャ配列の各イメージャによって提供される、請求項6に記載のテラヘルツ走査型撮像装置。
【請求項8】
固定イメージャの固定配列および画像プロセッサを備えた走査型撮像装置であって、前記固定イメージャの配列は前記固定イメージャによって生成される画像データに基づいて前記走査型撮像装置の視野の画像を生成するための画像プロセッサと連絡しており、前記固定イメージャの配列は前記視野およびそれぞれの複数の走査素子に対して固定された複数のセンサを含み、各走査素子は前記視野の部分からの放射線をそのそれぞれのセンサに向けるように構成され、各走査素子は、第1および第2方向に移動してそのそれぞれのセンサが前記視野の前記部分を対応する第1および第2走査方向に走査するように取り付けられ、それによって各固定イメージャが前記視野のそのそれぞれの部分に関係する画像データを生成するように構成された、走査型撮像装置。
【請求項9】
各走査素子の前記第1および第2方向の移動の少なくとも1つが軸を中心とする回転を含む、請求項8に記載の走査型撮像装置。
【請求項10】
各走査素子の前記第1および第2方向の移動が直交している、請求項8または9のいずれかに記載の走査型撮像装置。
【請求項11】
前記複数の走査素子が複数の反射素子を含む、請求項8ないし10のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項12】
前記反射素子が平面鏡である、請求項11に記載の走査型撮像装置。
【請求項13】
前記反射素子が放物面鏡である、請求項11に記載の走査型撮像装置。
【請求項14】
前記走査素子の各々が前記視野の複数の選択可能な異なる部分を走査するように構成される、請求項8ないし13のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項15】
前記複数の走査素子の回転を制御するための回転駆動装置をさらに備える、請求項9ないし14のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項16】
それぞれ第1および第2軸を中心とする回転を制御するために第1および第2回転駆動装置が設けられた、請求項15に記載の走査型撮像装置。
【請求項17】
前記第1および第2回転駆動装置の少なくとも1つが前記走査素子の2つ以上に共用される、請求項16に記載の走査型撮像装置。
【請求項18】
前記第1および第2回転駆動装置の少なくとも1つが電動機を含む、請求項16または17のいずれかに記載の走査型撮像装置。
【請求項19】
前記第1および第2回転駆動装置の少なくとも1つが圧電駆動部材を含む、請求項16または17のいずれかに記載の走査型撮像装置。
【請求項20】
複数のコリメータをさらに備え、各コリメータがそれぞれのセンサに対して固定された関係に配設され、それぞれの走査素子からの像をそのそれぞれのセンサ上に視準するように構成される、請求項8ないし19のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項21】
前記複数のコリメータが複数の放物面反射素子を含む、請求項20に記載の走査型撮像装置。
【請求項22】
前記固定イメージャの配列が、複数の前記固定イメージャからの画像データを並列に通信するように前記画像プロセッサに接続される、請求項8ないし21のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項23】
隣接する固定イメージャが、前記視野の1つの辺縁に沿って重なり合った部分の画像データを生成する、請求項8ないし22のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項24】
前記複数のセンサが少なくとも第1および第2群のセンサを含み、各群のセンサが他の群のセンサとは異なる波長の放射線を検出するように同調される、請求項8ないし23のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。
【請求項25】
前記複数のセンサがミリメートルまたはサブミリメートル波長の放射線を検出するように同調される、請求項8ないし24のいずれか一項に記載の走査型撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−509385(P2008−509385A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524399(P2007−524399)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003071
【国際公開番号】WO2006/013379
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507036647)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL FOR THE CENTRAL LABORATORY OF THE RESEARCH COUNCILS
【住所又は居所原語表記】Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxfordshire OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】