説明

走行制御装置

【課題】増速変化地点の手前で、先行車両との流れに合わせて車速を制御する。
【解決手段】走行制御用コントロールユニットは、制限速度の増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に車両Aが進入してからは、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差に基づいて制駆動力を制御するようにした。それゆえ、車両Aの進行方向に制限速度の増速変化地点が存在する場合には、先行車両Bの制限速度の増速に追従するように車両Aを加速させることができ、先行車両Bと車両Aとの車速差を低減できる。そのため、先行車両Bとの流れに合わせて車両Aの車速を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速を制御する走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
この特許文献1に記載の技術では、自車両の現在位置の制限速度に基づいて道路勾配に応じた目標加速度を算出し、算出した目標加速度に基づいて制駆動力を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、例えば、自車両の進行方向に制限速度が増速方向に変化する地点である増速変化地点が存在する場合、自車両が増速変化地点に到達するまでは、現在位置の制限速度に基づいて制駆動力を制御する。しかし、先行車両はその時点では既に増速変化地点の制限車速付近まで増速されており、それゆえ、先行車両との車間距離が離れてしまい、流れを乱してしまう可能性があった。
本発明は、上記のような点に着目し、制限速度の増速変化地点の手前の区間において、先行車両との流れに合わせて車速を制御可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明では、増速変化地点の手前に設定した設定区間内に自車両が存在しない場合には、先行車両と自車両との間の相対値である車間相対値に基づいて制駆動力を制御する追従制御を実行する。また、設定区間内に自車両が存在する場合には、自車両の車速と将来制限速度とに基づいて、将来制限速度に達するように制駆動力を加速制御する。
【発明の効果】
【0006】
この構成によれば、増速変化地点の手前の設定区間に自車両が進入してからは、自車両の車速と将来制限速度との差が低減するように、制駆動力を制御できる。それゆえ、自車両の進行方向に制限速度の増速変化地点が存在する場合、先行車両の制限速度の増速に追従するように自車両を加速させることができ、先行車両と自車両との車速差を低減できる。そのため、先行車両との流れに合わせて車速を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両Aの走行制御装置の構成を表す概念図である。
【図2】現在制限速度Vcl、将来制限速度Vnlおよび変化距離CDを表す図である。
【図3】先行車両追従処理を表すフローチャートである。
【図4】目標加減速度演算処理のフローチャートである。
【図5】目標車間距離算出処理のフローチャートである。
【図6】優先目標加減速度算出処理のフローチャートである。
【図7】目標車速算出処理のフローチャートである。
【図8】車速優先目標加減速度算出処理のフローチャートである。
【図9】目標加減速度選択処理のフローチャートである。
【図10】車両Aの走行制御装置の動作を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(構成)
車両Aの走行制御装置の構成について図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の車両Aの走行制御装置の構成を表す概念図である。
図1に示すように、車両Aは、車間距離センサ1、車輪速度センサ2、およびブレーキペダルスイッチ3を備える。
【0009】
車間距離センサ1は、車両Aの前側に配設され、先行車両Bと車両Aとの間の車間距離を検出する。そして、車間距離センサ1は、検出結果を表す検出信号を走行制御用コントロールユニット16に出力する。なお、車間距離センサ1は、先行車両Bを検出していない場合には、検出信号として、先行車両Bを検出していないことを表す信号を走行制御用コントロールユニット16に出力する。
【0010】
車輪速度センサ2は、後輪4RL、4RRそれぞれに配設され、後輪4RL、4RRそれぞれの車輪速VwRL、VwRRを検出する。そして、車輪速度センサ2は、検出結果を表す検出信号を走行制御用コントロールユニット16に送信する。
ブレーキペダルスイッチ3は、ブレーキペダル5に配設され、ブレーキペダル5の踏み込みを検出する。そして、ブレーキペダルスイッチ3は、検出結果を表す検出信号を走行制御用コントロールユニット16に出力する。
また、車両Aは、ナビゲーションシステム6を備える。
【0011】
ナビゲーションシステム6は、車両Aの現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)受信機、および車両Aが走行する地域の道路地図データを格納する格納装置を備える。そして、ナビゲーションシステム6は、車両Aの現在位置をGPS受信機から検出し、格納装置に格納している道路地図データを参照して、現在制限速度Vcl、将来制限速度Vnl、および変化距離CDを表す情報を取得する。現在制限速度Vclとは、図2に示すように、車両Aの現在位置における道路の制限速度である。ここで、道路の制限速度とは、車両Aが出すことのできる最高速度である。また、変化距離CDとは、車両Aの現在位置から制限速度変化地点までの距離である。ここで、制限速度変化地点とは、車両Aの進行方向に存在し、車両Aの現在位置から最も近くにある道路の制限速度が変化する地点である。また、将来制限速度Vnlとは、変化した後の道路の制限速度である。そして、ナビゲーションシステム6は、取得した現在制限速度Vcl、将来制限速度Vnl、および変化距離CDを表す情報を走行制御用コントロールユニット16に出力する。
【0012】
図1に戻り、設定車速設定装置7は、運転者のスイッチ操作に応じて設定車速Vsを設定する。設定車速Vsとは、後述する先行車両追従処理で使用する設定値である。例えば、車両Aの現在位置の制限速度を上限として設定する。そして、設定車速設定装置7は、設定結果を表す設定信号を走行制御用コントロールユニット16に出力する。
また、車両Aは、エンジン出力制御装置8およびエンジン9を備える。
【0013】
エンジン出力制御装置8は、走行制御用コントロールユニット16が出力した指令に従って、エンジン9の出力を制御する。本実施形態では、エンジン9の出力の制御方法として、スロットルバルブの開度を調整してエンジン回転数を制御する方法を採用する。
なお、本実施形態では、スロットルバルブの開度を調整してエンジン回転数を制御する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、アイドルコントロールバルブの開度を調整してエンジン9のアイドル回転数を制御する構成としてもよい。
【0014】
エンジン9は、エンジン出力制御装置8が制御するスロットルバルブの開度に応じて駆動力を発生する。そして、エンジン9は、発生した駆動力を自動変速機10、プロペラシャフト11、最終減速装置12および車軸13を介して後輪4RL、4RRに伝達する。
また、車両Aは、制動制御装置14およびディスクブレーキ15を備える。
制動制御装置14は、走行制御用コントロールユニット16が出力した指令に従って、ディスクブレーキ15の制動流体圧を制御する。
ディスクブレーキ15は、後輪4RL、4RRそれぞれに配設され、制動制御装置14が制御する制動流体圧に応じて制動力を発生する。そして、ディスクブレーキ15は、発生した制動力を後輪4RL、4RRそれぞれに伝達する。
【0015】
走行制御用コントロールユニット16は、マイクロプロセッサからなる。マイクロプロセッサは、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置およびメモリ等から構成した集積回路を備える。そして、走行制御用コントロールユニット16は、メモリが格納するプログラムに従って、各種センサ1〜3が出力した検出信号、およびナビゲーションシステム6が出力した情報に基づき、エンジン9に出力させる駆動力を算出し、算出した駆動力を出力させる指令をエンジン出力制御装置8に出力する。また、ディスクブレーキ15に出力させる制動力を算出し、算出した制動力を出力させる指令を制動制御装置14に出力する。これにより、車両Aは、先行車両Bが加減速を行うと、それに合わせて加減速を行い、先行車両Bとの間に適正な車間距離を維持しながら追従走行を行う。
【0016】
次に、走行制御用コントロールユニット16が実行する先行車両追従処理について図3のフローチャートを参照して説明する。図3の処理は、予め設定した周期ΔT(例えば、10msec.周期)で繰り返し実行するタイマ割り込み処理である。
図3のフローチャートでは、特に通信のためのステップを設けていないが、例えば、フローチャート中で得た情報は随時メモリに記憶し、必要な情報は随時メモリから読み出す。また、各装置間も相互通信を行っており、必要な情報は、主として制御を司っている装置から常時読み込み、取得した情報は、随時メモリに記憶する。
【0017】
この先行車両追従処理のステップS1では、走行制御用コントロールユニット16は、車間距離センサ1から車間距離Dを表す検出信号を読み込む。
次にステップS2に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS1で読み込んだ検出信号、この先行車両追従処理を前回実行したときに読み込んだ検出信号に基づき、下記(1)式に従って車両Aと先行車両Bとの相対速度Vrを算出する。
Vr=(D−Do)/ΔT ・・・(1)
ここで、Doは1周期ΔT前の車間距離Dである。
【0018】
次にステップS3に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、車輪速度センサ2が出力した検出信号を読み込む。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、読み込んだ検出信号に基づき、下記(2)式に従って自車速度Vcを算出する。
Vc=(VwRL+VwRR)/2 ・・・(2)
次にステップS4に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、設定車速設定装置7が出力する設定車速をVsを設定車速Vsを読み込む。なお、この先行車両追従処理を既に一度実行している場合には前回の処理で設定した設定車速Vsを読み込む。
次にステップS5に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、後述する図4の目標加減速度演算処理を実行する。目標加減速度演算処理では、車両Aの加減速度の目標値である目標加減速度G*を算出する。
【0019】
次にステップS6に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、加減速度制御を実行した後、メインプログラムに復帰する。加減速度制御処理では、前記ステップS4で算出した目標加減速度G*に車両Aの加減速度が一致するようにエンジン9のスロットルバルブの開度を調整する指令をエンジン出力制御装置8に出力する。或いは、前記ステップS4で算出した目標加減速度G*に車両Aの加減速度が一致するようにディスクブレーキ15の制動流体圧を調整する指令を制動制御装置14に出力する。
【0020】
次に、走行制御用コントロールユニット16が実行する目標加減速度演算処理について図4のフローチャートを参照して説明する。図4の処理は、図3の先行車両追従処理のステップS5で走行制御用コントロールユニット16が実行する処理である。
この先行車両追従処理のステップS11では、走行制御用コントロールユニット16は、車間距離センサ1が出力した検出信号を読み込む。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、読み込んだ検出信号に基づき、車間距離センサ1が先行車両Bを検出しているか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車両Bを検出していると判定した場合には(Yes)ステップS12に移行する。一方、先行車両Bを検出していないと判定した場合には(No)ステップS14に移行する。
【0021】
ステップS12では、走行制御用コントロールユニット16は、後述する図5の目標車間距離算出処理を実行する。この演算処理では、車両Aと先行車両Bとの間の車間距離Dの目標値である目標車間距離D*を算出する。
次にステップS13に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、後述する図6の優先目標加減速度算出処理を実行した後、前記ステップS14に移行する。この演算処理では、前記ステップS12で算出した目標車間距離D*、および前記ステップS1で読み込んだ車間距離Dに基づいて、車間距離Dを目標車間距離D*に一致させる車両Aの加減速度である車間距離優先目標加減速度GDを算出する。
【0022】
このように、前記ステップS13では、先行車両Bを検出した場合、車間距離Dを目標車間距離D*に一致させる車間距離優先目標加減速度GDを設定する。
前記ステップS14では、走行制御用コントロールユニット16は、後述する図7の目標車速算出処理を実行する。この演算処理では、車両Aの自車速度Vcの目標値である目標車速Vc*を算出する。
【0023】
次にステップS15に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、後述する図8の車速優先目標加減速度算出処理を実行する。この演算処理では、前記ステップS14で算出した目標車速Vc*および自車速度Vcに基づき、自車速度Vcを目標車速Vc*に一致させる車両Aの加減速度である車速優先目標加減速度Gvを算出する。
このように、前記ステップS15では、先行車両Bの検出の有無に関わらず、自車速度Vcを目標車速Vc*に一致させる車速優先目標加減速度Gvを設定する。
【0024】
次にステップS16に移行して、走行制御用コントロールユニット16は、後述する図9の目標加減速度算出処理を実行した後、この演算処理を終了して、図3の先行車両追従処理のステップS6に戻る。目標加減速度算出処理では、前記ステップS13で算出した車間距離優先目標加減速度GD、および前記ステップS15で算出した車速優先目標加減速度Gvのうちのいずれかの値を目標加減速度G*に代入する。
【0025】
このように、前記ステップS16では、車間距離優先目標加減速度GD、および車速優先目標加減速度Gvのうちのいずれかの値を目標加減速度G*に設定する。
図5のフローチャートを参照して説明する。図5の処理は、図4の目標加減速度演算処理のステップS12で走行制御用コントロールユニット16が実行する処理である。
この目標車間距離算出処理のステップS12aでは、走行制御用コントロールユニット16は、図3の演算処理のステップS3で算出した自車速度Vcを読み込む。
【0026】
次にステップS12bに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、図3の演算処理のステップS2で算出した相対速度Vrを読み込む。
次にステップS12cに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12aで読み込んだ自車速度Vc、および前記ステップS12bで読み込んだ相対速度Vrに基づき、下記(3)式に従って先行車速度VFを算出する。
VF=Vc+Vr ・・・(3)
【0027】
次にステップS12dに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12cで算出した先行車速度VFが時速40km/h以下であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車速度VFが時速40km/h以下であると判定した場合には(Yes)ステップS12eに移行する。一方、先行車速度VFが時速40km/hより大きいと判定した場合には(No)ステップS12fに移行する。
【0028】
前記ステップS12eでは、走行制御用コントロールユニット16は、遅れ処理済み先行車速度VFFに5回前先行車速度VF5の値を代入した後、ステップS12oに移行する。遅れ処理済み先行車速度VFFとは、前記ステップS12oで目標車間距離D*の算出に用いる変数である。5回前先行車速度VF5とは、前記ステップS12eを5周期前、つまり、5回前に実行したときに前記ステップS12cで算出した先行車速度VFである。
【0029】
一方、前記ステップS12fでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12cで算出した先行車速度VFが時速50km/h以下であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車速度VFが時速50km/h以下であると判定した場合には(Yes)先行車速度VFが40km/hより大きく且つ50km/h以下の範囲にあると判定し、ステップS12gに移行する。一方、先行車速度VFが時速50km/hより大きいと判定した場合には(No)ステップS12hに移行する。
前記ステップS12gでは、走行制御用コントロールユニット16は、遅れ処理済み先行車速度VFFに4回前先行車速度VF4の値を代入した後、前記ステップS12oに移行する。4回前先行車速度VF4とは、前記ステップS12eを4周期前、つまり、4回前に実行したときに前記ステップS12cで算出した先行車速度VFである。
【0030】
一方、前記ステップS12hでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12cで算出した先行車速度VFが時速60km/h以下であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車速度VFが時速60km/h以下であると判定した場合には(Yes)先行車速度VFが50km/hより大きく且つ60km/h以下の範囲にあると判定し、ステップS12iに移行する。一方、先行車速度VFが時速60km/hより大きいと判定した場合には(No)ステップS12jに移行する。
【0031】
前記ステップS12iでは、走行制御用コントロールユニット16は、遅れ処理済み先行車速度VFFに3回前先行車速度VF3の値を代入した後、前記ステップS12oに移行する。3回前先行車速度VF3とは、前記ステップS12eを3周期前、つまり、3回前に実行したときに前記ステップS12cで算出した先行車速度VFである。
一方、前記ステップS12jでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12cで算出した先行車速度VFが時速70km/h以下であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車速度VFが時速70km/h以下であると判定した場合には(Yes)先行車速度VFが60km/hより大きく且つ70km/h以下の範囲にあると判定し、ステップS12kに移行する。一方、先行車速度VFが時速70km/hより大きいと判定した場合には(No)ステップS12lに移行する。
【0032】
前記ステップS12kでは、走行制御用コントロールユニット16は、遅れ処理済み先行車速度VFFに2回前先行車速度VF2の値を代入した後、前記ステップS12oに移行する。2回前先行車速度VF2とは、前記ステップS12eを2周期前、つまり、2回前に実行したときに前記ステップS12cで算出した先行車速度VFである。
一方、前記ステップS12lでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12cで算出した先行車速度VFが時速80km/h以下であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車速度VFが時速80km/h以下であると判定した場合には(Yes)先行車速度VFが70km/hより大きく且つ80km/h以下の範囲にあると判定し、ステップS12mに移行する。一方、先行車速度VFが時速80km/hより大きいと判定した場合には(No)ステップS12nに移行する。
【0033】
前記ステップS12mでは、走行制御用コントロールユニット16は、遅れ処理済み先行車速度VFFに1回前先行車速度VF1の値を代入した後、前記ステップS12oに移行する。1回前先行車速度VF1とは、前記ステップS12eを1周期前、つまり、1回前に実行したときに前記ステップS12cで算出した先行車速度VFである。
一方、ステップS12nでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12cを今回実行したときに算出した先行車速度VFの値を遅れ処理済み先行車速度VFFに代入した後、前記ステップS12oに移行する。
【0034】
前記ステップS12oでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12e、15g、15i、15k、15nのいずれかで算出した遅れ処理済み先行車速度VFFに基づき、下記(4)式に従って目標車間距離D*を算出する。
D*=α×VFF+β ・・・(4)
ここで、αは車間速度係数、βは停止時距離である。
このように、前記ステップS12oでは、先行車両Bを検出している場合には、先行車速度VFが速いほど最新の先行車速度VFに基づき目標車間距離D*を設定する。
【0035】
次にステップS12pに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、5回前先行車速度VF5に4回前先行車速度VF4の値を代入する。続いて、4回前先行車速度VF4に3回前先行車速度VF3の値を代入する。続いて、3回前先行車速度VF3に2回前先行車速度VF2の値を代入する。続いて、2回前先行車速度VF2に1回前先行車速度VF1の値を代入する。続いて、1回前先行車速度VF1に先行車速度VFの値を代入する。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、この目標車間距離算出処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS13に移行する。
【0036】
次に、走行制御用コントロールユニット16が実行する優先目標加減速度算出処理について図6のフローチャートを参照して説明する。図6の処理は、図4の目標加減速度演算処理のステップS13で走行制御用コントロールユニット16が実行する処理である。
まず、ステップS13aでは、走行制御用コントロールユニット16は、図3のステップS1で読み込んだ車間距離D、および図4のステップS12で算出した目標車間距離D*に基づき、下記(5)式に従って車間差ΔDを算出する。車間差ΔDとは、車間距離Dと目標車間距離D*との差である。
ΔD=D−D* ・・・(5)
【0037】
次にステップS13bに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS13aで算出した車間差ΔDに基づき、下記(6)式に従って車間距離優先目標加減速度GDを算出する。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、この優先目標加減速度算出処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS14に移行する。
GD=F1×ΔD ・・・(6)
ここで、F1は、フィードバックゲインである。
【0038】
このように、前記ステップS13bでは、先行車両Bを検出している場合には、車間距離Dを目標車間距離D*に一致させる車間距離優先目標加減速度GDを設定する。
次に、走行制御用コントロールユニット16が実行する目標車速算出処理について図7のフローチャートを参照して説明する。図7の処理は、図4の目標加減速度演算処理のステップS14で走行制御用コントロールユニット16が実行する処理である。
【0039】
まず、ステップS14aでは、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から現在制限速度Vcl、将来制限速度Vnl、変化距離CDおよび設定車速Vsを読み込む。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、読み込んだ情報に基づき、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在し、かつ現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが大きいか否かを判定する(Vcl>Vnl)。これにより、車両Aの進行方向に存在する制限速度変化地点が増速変化地点であるか否かを判定する。制限速度変化検知区間とは、図2に示すように、車両Aの進行方向に制限速度変化地点があることを車両Aが検知できる範囲である。例えば、制限速度変化地点の500m手前の地点から制限速度変化地点までの範囲とする。そして、走行制御用コントロールユニット16は、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在し、かつ現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが大きい(Vcl>Vnl)と判定した場合には(Yes)増速変化地点であると判定してステップS14bに移行する。一方、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在せず、または将来制限速度Vnlが現在制限速度Vcl以下である(Vcl≦Vnl)と判定した場合には(Yes)増速変化地点ではないと判定してステップS14hに移行する。
【0040】
図7に戻り、前記ステップS14bでは、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から読み込んだ情報に基づき、車両Aがサイン認識可能区間内に存在するか否かを判定する。これにより、増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に車両Aが存在するか否かを判定する。サイン認識可能区間とは、図2に示すように、将来制限速度Vnlを表す道路標識、つまり、制限速度変化地点を運転者が認識できると想定した区間である。すなわち、道路標識を認識した運転者が将来制限速度Vnlに基づいて車両の加減速操作を開始する範囲である。例えば、制限速度変化地点の70m手前から制限速度変化地点までの範囲とする。そして、走行制御用コントロールユニット16は、車両Aがサイン認識可能区間内に存在すると判定した場合には(Yes)増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に存在すると判定して前記ステップS14hに移行する。一方、車両Aがサイン認識可能区間内に存在しないと判定した場合には(No)増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に存在しないと判定してステップS14cに移行する。
【0041】
図7に戻り、前記ステップS14cは、走行制御用コントロールユニット16は、このステップS14cを前回実行したときから予め設定した測定周期(例えば、1sec.周期)が経過したか否かを判定する。なお、このステップS14cを最初に実行したときには測定周期が経過したと判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、測定定周期が経過したと判定した場合には(Yes)ステップS14eに移行する。一方、測定周期が経過してないと判定した場合には(No)ステップS14hに移行する。
【0042】
前記ステップS14dでは、走行制御用コントロールユニット16は、このステップS14dを前回実行したときから今回実行するまでの間、車間距離センサ1が先行車両Bを継続して検出していたか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、車間距離センサ1が先行車両Bを継続して検出していたと判定した場合には(Yes)ステップS14eに移行する。一方、車間距離センサ1が先行車両Bを検出していないときがあったと判定した場合には(No)前記ステップS14hに移行する。
前記ステップS14eでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS12で算出した先行車速度VFに基づき、このステップS14eを前回実行したときから今回実行するまでの間の先行車両Bの平均車速Vfavを算出する。
【0043】
次にステップS14fに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS14eで算出した先行車両Bの平均車速Vfav、設定車速Vs、閾値Vthに基づき、不等式Vfav≧Vs+Vthを満たすか否かを判定する。これにより、先行車両Bの平均車速Vfavと設定車速Vsとの差が閾値Vth以上であるか否かを判定する。閾値Vthとは、制限速度変化地点の手前において先行車両Bが除々に車速を増加させていくところ、先行車両Bの平均車速Vfavと自車速度Vcとの差がどれだけの大きさとなったときに、設定車速Vs、つまり、自車速度Vcを増加させるのかを表す値である。例えば、設定車速Vsが常に先行車両Bの平均車速Vfav以下となるように、後述するステップS14gで設定車速Vsに加算する一定車速より大きい値(例えば、10km/h)とする。そして、走行制御用コントロールユニット16は、不等式Vfav≧Vs+Vthを満たすと判定した場合には(Yes)ステップS14gに移行する。一方、不等式Vfav≧Vs+Vthを満たさないと判定した場合には(No)前記ステップS14hに移行する。
【0044】
なお、本実施形態では、前記ステップS14fで不等式Vfav≧Vs+Vthを満たすか否かをする例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、先行車両Bと車両Aとの間の車間距離Dに基づいて判定を行う構成としてもよい。具体的には、走行制御用コントロールユニット16は、車間距離Dの時間微分値dD/dtが閾値Vth以上あるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、時間微分値dD/dtが閾値Vth以上であると判定した場合には前記ステップS14gに移行し、時間微分値dD/dtが閾値Vthより小さいと判定した場合には前記ステップS14hに移行する。
【0045】
前記ステップS14gでは、走行制御用コントロールユニット16は、設定車速Vsを一定車速(例えば、5km/h)増大させる。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、目標車速Vc*に増大後の設定車速Vsの値を代入とした後、この目標車速算出処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS15に移行する。
【0046】
このように、前記ステップS14gでは、車両Aがサイン認識可能区間外を走行している状態で、先行車両Bの平均車速Vfavと設定車速Vsとの差が閾値Vthより大きく、車間距離Dが増大している場合には、設定車速Vsを一定車速増大させる。そして、目標車速Vc*を一定車速増大させ、先行車両Bが加速した場合に、車両Aが先行車両Bに追従するように車両Aを加速させる目標車速Vc*を設定する。これにより、車速差ΔVcが閾値Vth以下となるように車両Aの制駆動力を制御する追従制御を行う。
【0047】
なお、本実施形態では、車速差ΔVcが閾値Vth以下となるように車両Aの制駆動力を制御する追従制御を行う例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、車間距離Dが設定値以下となるように車両Aの制駆動力を制御する構成としてもよい。
一方、前記ステップS14hでは、走行制御用コントロールユニット16は、目標車速Vc*に設定車速Vsの値を代入した後、この目標車速算出処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS15に移行する。
【0048】
このように、前記ステップS14hでは、車両Aが制限速度変化検知区間外を走行している場合には、設定車速Vsを増大させることなく、車両Aを設定車速Vsで走行させる目標車速Vc*を設定する。また、車両Aがサイン認識可能区間内を走行しているが先行車両Bの平均車速Vfavと設定速度Vsとの差が閾値Vthより小さい場合にも、設定車速Vsを増大させることなく、車両Aを設定車速Vsで走行させる目標車速Vc*を設定する。これにより、設定車速Vsが先行車両Bの平均車速Vfavよりも常に低いものとすることができ、自車速度Vcが平均車速Vfavを超えない範囲で追従制御を行う。
【0049】
一方、前記ステップS14iでは、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から読み込んだ情報に基づき、設定車速Vsが将来制限速度Vnl以上(Vs≧Vnl)であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、設定車速Vsが将来制限速度Vnl以上(Vs≧Vnl)であると判定した場合には(Yes)前記ステップS14mに移行する。一方、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより小さい(Vs<Vnl)と判定した場合には(No)ステップS14jに移行する。
【0050】
前記ステップS14jでは、走行制御用コントロールユニット16は、自車速度Vcが設定車速Vs以上である(V≧Vs)か否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、自車速度Vcが設定車速Vs以上である(V≧Vs)と判定した場合には(Yes)ステップS14kに移行する。一方、自車速度Vcが設定車速Vsより小さい(V<Vs)と判定した場合には(No)ステップS14lに移行する。
【0051】
前記ステップS14kでは、走行制御用コントロールユニット16は、設定車速Vsを一定車速(例えば、5km/h)増大させた後、前記ステップS14lに移行する。但し、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより大きい場合には、設定車速Vsの増大を行わず、設定車速Vsの値を維持したまま、前記ステップS141に移行する。
このように、車両Aがサイン認識可能区間内を走行している状態で、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより小さく、さらに、自車速度Vcが設定車速Vs以上である場合には、設定車速Vsを将来制限速度Vnlまで5km/hずつステップ状に増大させる。
【0052】
前記ステップS14lでは、走行制御用コントロールユニット16は、目標車速Vc*に将来制限速度Vnlの値を代入した後、この目標車速算出処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS15に移行する。
このように、前記ステップS14lでは、増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内を車両Aが走行している状態で、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより小さい場合には、将来制限速度Vnlで走行させる目標車速Vc*を設定する。これにより、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差が低減するように車両Aの制駆動力を制御する加速制御を行う。
【0053】
一方、前記ステップS14mでは、目標車速Vc*に設定車速Vsの値を代入した後、この目標車速算出処理を終了し図4の目標加減速度演算処理のステップS15に移行する。
このように、増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内を車両Aが走行している状態で、設定車速Vsが将来制限速度Vnl以上である場合には、車両Aを設定車速Vsで走行させる目標車速Vc*を設定する。
【0054】
次に、走行制御用コントロールユニット16が実行する車速優先目標加減速度算出処理について図8のフローチャートを参照して説明する。図8の処理は図4の目標加減速度演算処理のステップS15で走行制御用コントロールユニット16が実行する処理である。
まず、ステップS15aでは、走行制御用コントロールユニット16は、図3のステップS3で算出した自車速度Vc、およびから図4のステップS13で算出した目標車速Vc*に基づき、下記(7)式に従って車速差ΔVcを算出する。車速差ΔVcとは、自車速度Vcと目標車速Vc*との差である。
ΔVc=Vc−Vc* ・・・(7)
【0055】
次にステップS15bに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から読み込んだ情報に基づき、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在し、かつ現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが大きいか否かを判定する。これにより、車両Aの進行方向に存在する制限速度変化地点が制限速度を増速方向に変化させる増速変化地点であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在し、かつ現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが大きい(Vcl>Vnl)と判定した場合には(Yes)増速変化地点であると判定してステップS15cに移行する。一方、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在せず、または将来制限速度Vnlが現在制限速度Vcl以下である(Vcl≦Vnl)と判定した場合には(Yes)増速変化地点ではないと判定してステップS15gに移行する。
【0056】
前記ステップS15cでは、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から読み込んだ情報に基づき、車両Aがサイン認識可能区間内に存在するか否かを判定する。これにより、増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に車両Aが存在するか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、車両Aがサイン認識可能区間内に存在すると判定した場合には(Yes)増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に存在すると判定して前記ステップS15dに移行する。一方、車両Aがサイン認識可能区間内に存在しないと判定した場合には(No)増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内に存在しないと判定して前記ステップS15gに移行する。
【0057】
前記ステップS15dでは、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から読み込んだ情報に基づき、設定車速Vsが将来制限速度Vnl以上(Vs≧Vnl)であるか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、設定車速Vsが将来制限速度Vnl以上(Vs≧Vnl)であると判定した場合には(Yes)前記ステップS15gに移行する。一方、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより小さい(Vs<Vnl)と判定した場合には(No)ステップS15eに移行する。
【0058】
前記ステップS15eでは、走行制御用コントロールユニット16は、ナビゲーションシステム6から読み込んだ情報に基づき、車両Aから制限速度変化地点までの変化距離CD、および自車速度Vcに基づき、下記(8)式に従って切替時間Tcを算出する。切替時間Tcとは、車両Aが制限速度変化地点に到達するまでに要する時間である。
Tc=CD/Vc ・・・(8)
【0059】
次にステップS15fに移行して、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS15aで算出した車速差△Vc、および前記ステップS15eで算出した切替時間Tcに基づき下記(9)式に従って車速優先目標加減速度Gvを算出する。車速優先目標加減速度Gvとは、車両Aが制限速度変化地点に到達したときに自車速度Vcを目標車速Vc*に一致させる加減速度である。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、この目標車速算出処理を終了し図4の目標加減速度演算処理のステップS15に移行する。
Gv=△Vc/Tc ・・・(9)
【0060】
このように、前記ステップS15fでは、増速変化地点の手前のサイン認識可能区間内を車両Aが走行している状態で、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより小さい場合には、車両Aを加速させる車速優先目標加減速度Gvを設定する。これにより、加速制御を、車両Aがサイン認識可能区間に進入した直後に開始する。
なお、本実施形態では、車速偏差ΔVcおよび切替時間Tcに基づき上記(9)式に従って車速優先目標加減速度Gvを算出するする例を示したが、他の構成を採用してもよい。例えば、車速偏差ΔVc、自車速度Vcおよび変化距離CDに基づき下記(10)式に従って車速優先目標加減速度Gvを算出する構成としてもよい。
Gv=△Vc・Vc/CD ・・・(10)
【0061】
一方、前記ステップS15gでは、走行制御用コントロールユニット16は、前記ステップS18aで算出した車速差ΔVcに基づき、下記(11)式に従って車速優先目標加減速度Gvを算出する。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、この目標車速算出処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS15に移行する。
Gv=(Kp+Ki/s+Kd・s)ΔVc ・・・(11)
ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、Kdは微分ゲイン、sはラプラス演算子である。ΔVc/sは車速差の時間積分値、ΔVc・sは車速差の時間微分値である。
【0062】
このように、車両Aがサイン認識可能区間外を走行している場合には、車速差ΔVcの絶対値を低減させる車速優先目標加減速度Gvを設定する。また、車両Aがサイン認識可能区間内を走行していているが現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが小さいため、車両Aの加速が必要ない場合にも、同様の車速優先目標加減速度Gvを設定する。
【0063】
次に、走行制御用コントロールユニット16が実行する目標加減速度選択処理について図9のフローチャートを参照して説明する。図9の処理は、図4の目標加減速度演算処理のステップS16で走行制御用コントロールユニット16が実行する処理である。
まず、ステップS16aでは、走行制御用コントロールユニット16は、車間距離センサ1が出力した検出信号を読み込む。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、読み込んだ検出信号に基づき、車間距離センサ1が先行車両Bを検出しているか否かを判定する。そして、走行制御用コントロールユニット16は、先行車両Bを検出していると判定した場合には(Yes)ステップS16bに移行する。一方、先行車両Bを検出していないと判定した場合には(No)ステップS16cに移行する。
【0064】
前記ステップS16bでは、走行制御用コントロールユニット16は、車両Aが設定車速走行を行っているか否かを判定する。設定車速走行とは、設定車速Vsと同一の速度又は設定車速Vsとほぼ同等(例えば、Vs±5km/hの範囲)の速度での走行である。そして、走行制御用コントロールユニット16は、車両Aが設定車速走行を行っている場合には(Yes)前記ステップS16cに移行する。一方、車両Aが設定車速走行を行っていない場合には(No)ステップS16dに移行する。
【0065】
前記ステップS16cでは、走行制御用コントロールユニット16は、図4のステップS15で算出した車速優先目標加減速度Gvの値を目標加減速度G*に代入する。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、この目標加減速度選択処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS16も終了する。
これにより、車間距離センサ1が先行車両Bを検出していない場合、または車間距離センサ1が先行車両Bを検出しかつ車両Aが設定車速走行を行っている場合には、車速優先目標加減速度Gvの値を目標加減速度G*の値として用いる。
【0066】
一方、前記ステップS16dでは、走行制御用コントロールユニット16は、図4のステップS13で算出した車間距離優先目標加減速度GD、およびステップS15で算出した車速優先目標加減速度Gvのうち絶対値の小さい方の値を目標加減速度G*に代入する。続いて、走行制御用コントロールユニット16は、この目標加減速度選択処理を終了し、図4の目標加減速度演算処理のステップS16も終了する。
これにより、車間距離センサ1が先行車両Bを検出しているが、車両Aが設定車速走行を行っていない場合には、車間距離優先目標加減速度GDおよび車速優先目標加減速度Gvのうち絶対値の小さい方の値を目標加減速度G*の値として用いる。
【0067】
(動作その他)
次に、車両Aの走行制御装置の動作について図10を参照して説明する。
図10は、車両Aの走行制御装置の動作を表すタイムチャートである。
図10の時刻t1に示すように、車両Aが制限速度変化検知区間内に進入したときに、車間距離センサ1が先行車両Bを検出したとする。また、将来制限速度Vnlが70km/h、現在制限速度Vclが40km/hであったとする。すると、走行制御用コントロールユニット16が、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在し、かつ現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが大きいと判定する(図7のステップS14a、Yes)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、車両Aがサイン認識可能区間内に存在しないと判定する(図7のステップS14b、No)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、図7のステップS14c、S14d、S14eを経て平均車速Vfavを算出する。ここで、算出した平均車速Vfavと自車速度Vcとの差が10km/hより小さかったとする。すると、走行制御用コントロールユニット16が、図7のステップS14fを経た後、目標車速Vc*に設定車速Vsの値を代入する(図7のステップS14h)。
【0068】
続いて、走行制御用コントロールユニット16が、自車速度Vcおよび目標車速Vc*に基づいて車速差ΔVcを算出する(図8のステップS15a)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、車両Aが制限速度変化検知区間内に存在し、かつ現在制限速度Vclより将来制限速度Vnlが大きいと判定する(図8のステップS15b、Yes)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、車両Aがサイン認識可能区間内に存在しないと判定する(図8のステップS15c、No)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、算出した車速差ΔVcに基づき車速差ΔVcが低減するように車速優先目標加減速度Gvを算出する(図8のステップS15g)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、図9のステップS16a、S16bを経た後、算出した車速優先目標加減速度Gvの値を目標加減速度G*に代入する(図9のステップS16d)。
【0069】
これにより、目標加減速度G*に応じた指令値を走行制御用コントロールユニット16が出力するところ、エンジン9およびディスクブレーキ15が、出力した指令に従って、駆動力または制動力を発生する。そして、車両Aが設定車速Vsの一定速で走行する。
上記フローを繰り返すうち、図10の時刻t2に示すように、先行車両Bの平均車速Vfavと自車速度Vcとの差が10km/hより大きくなったとする。すると、走行制御用コントロールユニット16が、不等式Vfav≧Vs+Vthを満たすと判定する(ステップS14f、Yes)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、設定車速Vsを5km/h増大させ、目標車速Vc*に増大後の設定車速Vsの値を代入する(ステップS14g)。そして、走行制御用コントロールユニット16が、車速差ΔVを増大させ(ステップS15a)、車速目標加減速度Gvを増大させる(ステップS15g)。
【0070】
これにより、エンジン9およびディスクブレーキ15が、走行制御用コントロールユニット16が出力する指令に従って、後輪4RL、4RRの駆動力を増大する。そして、車両Aが加速し、車両Aが先行車両Bに追従する追従制御を行う。
このように、本実施形態の走行制御装置によれば、先行車両Bの平均車速Vfavと自車速度Vcとの差が5km/hより大きくなった場合に、目標車速Vc*を増大させ、フィードバック的に車両Aを加速できる。それゆえ、車両Aの進行方向に増速変化地点が存在する場合には、先行車両Bがサイン認識可能区間で加速するところ、先行車両Bと車両Aとの車速差を低減できる。これにより、先行車両Bとの流れが乱れることを防止できる。
【0071】
また、先行車両Bが加速すると、加速した先行車両Bにあわせて車両Aの周囲の車両も加速するところ、周囲の車両の流れに合わせて車両Aを走行させることができる。
続いて、車両Aが加速したことにより、先行車両Bの平均車速Vfavと自車速度Vcとの差が10km/h以下になったとする。すると、走行制御用コントロールユニット16が、再び不等式Vfav≧Vs+Vthを満たさないと判定する(ステップS14f、No)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、目標車速Vc*に設定車速Vsの値、つまり、先行車Bの平均車速Vfavより小さい値を代入する(ステップS14h)。そして、走行制御用コントロールユニット16が、車速差ΔVの増大を抑制させ(ステップS15a)、車速目標加減速度Gvの増大を抑制させる(ステップS15g)。
【0072】
これにより、エンジン9およびディスクブレーキ15が、走行制御用コントロールユニット16が出力する指令に従って、後輪4RL、4RRの駆動力の増大を抑制する。そして、自車速度Vcが平均車速Vfavを超えない範囲で追従制御を行う。
このように、本実施形態の走行制御装置によれば、追従制御として、先行車両Bの平均車速Vfavと自車速度Vcとの差に基づいて、自車速度Vcが平均車速Vfavを超えない範囲で制駆動力を制御できる。それゆえ、先行車両Bの状態にあわせて、先行車両Bとの流れを適切に保ちながら、自車速度Vcを制御できる。
【0073】
また、上記フローを繰り返すうち、図10の時刻t3に示すように、車両Aがサイン認識可能区間に進入したとする。すると、走行制御用コントロールユニット16が、図7に示すように、車両Aがサイン認識可能区間内に存在すると判定する(ステップS14b、Yes)。ここで、設定車速Vsが45km/hであったとする。すると、走行制御用コントロールユニット16が、設定車速Vsが将来制限速度Vnlより小さいと判定する(ステップS14i、No)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、自車速度Vcが設定車速Vs以上であると判定した場合(ステップS15j、Yes)、設定車速Vsを5km/h増大させる(ステップS17k)。続いて、走行制御用コントロールユニット16が、目標車速Vc*に将来制限速度Vnlの値を代入する(ステップS14l)。そして、走行制御用コントロールユニット16が、再び車速差ΔVを増大させ(ステップS15a)、車速目標加減速度Gvを増大させる(ステップS15f)。
【0074】
これにより、エンジン9およびディスクブレーキ15が、走行制御用コントロールユニット16が出力する指令に従って、後輪4RL、4RRの駆動力を増大する。そして、車両Aが加速し、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差が低減する加速制御を行う。
このように、本実施形態の走行制御装置によれば、サイン認識可能区間に車両Aが進入してからは、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差が低減するように、制駆動力を制御できる。それゆえ、車両Aの進行方向に制限速度の増速変化地点が存在する場合、先行車両Bの制限速度の増速に追従するように車両Aを加速させることができ、先行車両Bと車両Aとの車速差を低減できる。そのため、先行車両Bの流れに合わせて車両Aの車速を制御できる。これにより、先行車両Bとの流れが乱れることを防止できる。
【0075】
また、加速制御として、車速差ΔVc並びに切替時間Tcに基づいて、車両Aの車速優先目標加減速度Gvを算出できる。また、算出した車速優先目標加減速度Gvに基づいて、車両Aの制駆動力を制御できる。それゆえ、加速制御に伴う制御負荷をかけることなく、先行車両Bとの流れを適切に保ちながら、自車速度Vcを制御できる。
また、加速制御を、車両Aがサイン認識可能区間に進入した直後、つまり、運転者が増速変化地点を認識できると想定した区間に進入した直後に開始できる。それゆえ、運転者の認識にあわせて、先行車両Bとの流れを適切に保ちながら自車速度Vcを制御できる。
【0076】
以上、本実施形態では、図1の車輪速度センサ2、および図3のステップS3が自車速検出部を構成する。また、図1の車間距離センサ1が車間距離検出部を構成する。さらに、車間距離D又は相対速度Vrが車間相対値を構成する。また、図1の車間距離センサ1、および図3のステップS1が車間相対値算出部を構成する。図2の制限速度変化地点が増速変化地点を構成する。以下同様に、図1のナビゲーションシステム6が増速変化地点検出部を構成する。また、図2のサイン認識可能区間が設定区間を構成する。さらに、図1のナビゲーションシステム6、図7のステップS14b、図8のステップS15cが存在区間判定部を構成する。また、図1の走行制御用コントロールユニット16、図3のステップS6、図7のステップS14b、S14g、S14l、図8のステップS15d〜S15fが走行制御部を構成する。また、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差が自車両速度差を構成する。さらに、変化距離CDが到達距離を構成する。また、切替時間Tc到達時間を構成する。
【0077】
(本実施形態の効果)
本実施形態は、次のような効果を奏する。
(1)走行制御用コントロールユニット16は、増速変化地点の手前に設定したサイン認識可能区間内に車両Aが存在しない場合には、先行車両Bと車両Aとの間の相対値である車間相対値に基づいて制駆動力を制御する追従制御を実行する。また、走行制御用コントロールユニット16は、サイン認識可能区間内に車両Aが存在する場合には、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとに基づいて、将来制限速度Vnlに達するように駆動力を加速制御する。
【0078】
この構成によれば、増速変化地点の手前のサイン認識可能区間に車両Aが進入してからは、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差が低減するように、制駆動力を制限できる。それゆえ、車両Aの進行方向に制限速度の増速変化地点が存在する場合、先行車両Bの制限速度の増速に追従するように車両Aを加速させることができ、先行車両Bと車両Aとの車速差を低減できる。そのため、先行車両Bとの流れが乱れることを防止できる。
【0079】
(2)走行制御用コントロールユニット16は、自車速度Vcと将来制限速度Vnlとの差、並びに変化距離CDまたは切替時間Tcに基づいて、車両Aの車速優先目標加減速度Gvを算出する。また、走行制御用コントロールユニット16は、算出した車速優先目標加減速度Gvに基づいて、車両Aの制駆動力を制御する。
この構成によれば、加速制御に伴う制御負荷をかけることなく、先行車両Bとの流れを適切に保ちながら、自車速度Vcを制御できる。
【0080】
(3)走行制御用コントロールユニット16は、サイン認識可能区間として、運転者が増速変化地点を認識できると想定した区間を設定する。また、走行制御用コントロールユニット16は、加速制御を、車両Aがサイン認識可能区間に進入した直後に開始する。
この構成によれば、運転者の認識にあわせて、先行車両Bとの流れを適切に保ちながら、自車速度Vcを制御できる。
(4)走行制御用コントロールユニット16は、追従制御として、先行車両Bの平均車速Vfavと自車速度Vcとの差に基づいて、自車速度Vcが平均車速Vfavを超えない範囲で車両Aの制駆動力を制御する。
この構成によれば、先行車両Bの状態にあわせて、先行車両Bとの流れを適切に保ちながら、自車速度Vcを制御できる。
【符号の説明】
【0081】
1は車間距離センサ
2は車輪速度センサ
3はブレーキペダルスイッチ
4FL〜4RRは車輪
5はブレーキペダル
6はナビゲーションシステム
7は設定車速設定装置
8はエンジン出力制御装置
9はエンジン
10は自動変速機
11はプロペラシャフト
12は最終減速装置
13は車軸
14は制動制御装置
15はディスクブレーキ
16は走行制御用コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を検出する自車速検出部と、
自車両前方を走行する先行車両の自車両との車間距離を検出する車間距離検出部と、
前記車間距離検出部が検出した車間距離に基づいて、先行車両と自車両との間の相対値である車間相対値を算出する車間相対値算出部と、
自車両の現在位置の制限速度から当該制限速度より大きい制限速度である将来制限速度に変化する地点である増速変化地点を検出する増速変化地点検出部と、
前記増速変化地点検出部が検出した前記増速変化地点の手前に設定した区間である設定区間内に自車両が存在するか否かを判定する存在区間判定部と、
前記存在区間判定部が前記設定区間内に自車両が存在しないと判定した場合には、前記車間相対値に基づいて制駆動力を制御する追従制御を実行し、前記存在区間判定部が前記設定区間内に自車両が存在すると判定した場合には、自車両の車速と前記将来制限速度との差に基づいて、前記将来制限速度に達するように制駆動力を加速制御する走行制御部と、を備えたことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、自車両の現在の車速と前記将来制限速度との差である自車両速度差、並びに自車両と前記増速変化地点との間の距離である到達距離または自車両が前記増速変化地点に到達するまでに要する時間である到達時間を算出し、前記自車両速度差と前記到達距離または到達時間に基づいて目標加減速度を算出し、算出した前記目標加減速度に基づいて制駆動力を制御することを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記設定区間は、運転者が前記増速変化地点を認識できると想定した区間であり、
前記走行制御部は、前記加速制御を、自車両が前記設定区間に進入した直後に開始することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記車間相対値算出部が算出する車間相対値は、先行車両と自車両との間の車速差であり、
前記走行制御部は、前記車速差から先行車両の車速を求め、前記追従制御として、前記自車両の車速と先行車両の車速に基づいて、自車両の車速が先行車両の車速を超えない範囲で制駆動力を制御することを特徴する請求項1から3のいずれか1項に記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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