説明

走行台車とそれを備えた炊飯装置

【課題】 設置に大きなスペースを必要とせず、かつ、衛生的な炊飯装置を実現するために有用な走行台車と、それを備えた炊飯装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列の上部の空間を往復移動する走行台車であって、当該走行台車は、炊飯釜の把持・解放が自在な把持部を備えた把持装置と、把持装置を走行台車よりも下方の位置で走行台車に対して昇降させる昇降装置とを備えており、前記把持装置が、把持する炊飯釜の上部を覆う板状のカバー部材を備え、把持装置の把持部を作動させる空気圧シリンダおよび電磁弁と前記昇降装置とが、カバー部材よりも上方でカバー部材の外周よりも内側に位置し、把持装置の把持部がカバー部材の外周よりも外側の位置でカバー部材よりも下方に突出している走行台車と、それを備えた炊飯装置を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行台車とそれを備えた炊飯装置に関し、詳細には、列状に配置された複数台の炊飯機によって、炊飯釜ごとに炊飯を行う炊飯装置に使用される走行台車とそれを備えた炊飯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、列状に配置された複数台の炊飯機によって、炊飯釜ごとに炊飯を行う炊飯装置が種々提案されている。例えば、特許文献1、2には、2列に配置された複数の炊飯機の列の間を炊飯釜搬送装置が移動して、個々の炊飯機への炊飯釜のセットと、炊き上がった炊飯釜の炊飯機からの取り出しを行う炊飯装置が開示されている。しかし、これらの炊飯装置では、炊飯機列の側部に炊飯釜搬送装置の走行レールを設置し、その走行レール上を炊飯釜搬送装置が移動するように構成されているため、走行レールの設置に要する分だけ余分のスペースを必要とし、省スペースでないという欠点がある。
【0003】
一方、特許文献3では、炊飯機列を上段に、蒸らし部を下段に配置することにより、設置に大きなスペースを必要としないようにした自動炊飯装置が提案されている。しかし、この自動炊飯装置においては、炊飯釜搬入部の高さと、炊飯釜を保持した状態で走行機構が移動できる高さと、炊飯釜を炊飯機にセットできる高さとがそれぞれ異なっているため、炊飯釜を上下させる昇降機構として、水平方向に配置された2つのシリンダを必要とし、構造が複雑であり、走行機構自体が大がかりなものとなり、炊飯釜の搬送や昇降を素早く行うことができないという欠点がある。さらには、走行機構が把持搬送する炊飯釜の上部に位置しているので、走行機構の可動部分から、油や、ゴミ、ホコリなどが下方に位置する炊飯釜上に落下する可能性があり、衛生面で十分なものとはいえないという不都合がある。
【0004】
また、上記のような従来の炊飯装置においては、炊飯釜の把持・解放や、昇降動作が確実に実行されたか否かの確認を自動的に行うようにすることは為されておらず、ややもすれば、一つの動作が未完のままに次の動作が行われたりする欠点があり、特に、一時的な電源の遮断からの復旧時には、炊飯装置全体として、個々の装置の動作がどこまで進行したかについての情報が完全に失われ、炊飯装置が停止したり、時には暴走してしまうといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−57234号公報
【特許文献2】特開2002−104646号公報
【特許文献3】特開2001−128850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の炊飯装置が有する問題点を解決するために為されたもので、設置に大きなスペースを必要とせず、かつ、衛生的な炊飯装置を実現するために有用な走行台車と、それを備えた炊飯装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を、複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列の上部の空間を往復移動する走行台車であって、当該走行台車は、炊飯釜の把持・解放が自在な把持部を備えた把持装置と、把持装置を走行台車よりも下方の位置で走行台車に対して昇降させる昇降装置とを備えており、前記把持装置が、把持する炊飯釜の上部を覆う板状のカバー部材を備え、把持装置の把持部を作動させる空気圧シリンダおよび電磁弁と前記昇降装置とが、カバー部材よりも上方でカバー部材の外周よりも内側に位置し、把持装置の把持部がカバー部材の外周よりも外側の位置でカバー部材よりも下方に突出している走行台車と、それを備えた炊飯装置を提供することによって解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の走行台車によれば、把持装置に、把持する炊飯釜の上部を覆うカバー部材が設けられているので、把持装置の可動部や昇降装置からゴミやホコリなどが下方に位置する炊飯釜上に落下する恐れがなく、衛生的であるという利点が得られる。また、本発明の走行台車を備えた炊飯装置によれば、炊飯釜を搬送する走行台車が炊飯機列の上部の空間を走行するので、平面的に占有するスペースが小さくて済み、省スペースな配置で炊飯装置を実現できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の炊飯装置の一例の正面図である。
【図2】本発明の炊飯装置の一例の平面図である。
【図3】走行台車の平面図である。
【図4】走行台車の側面図である。
【図5】図4のX−X’線で切断した把持装置の平面図である。
【図6】把持装置が把持・解放位置にある走行台車の側面図である。
【図7】把持装置が把持・解放位置にあり、把持部が解放位置にある走行台車の側面図である。
【図8】図7のY−Y’線で切断した把持装置の平面図である。
【図9】炊飯機の断面図である。
【図10】炊飯釜を収容した状態の炊飯機の断面図である。
【図11】停止位置記憶装置と相対パルス数差記憶装置についての説明図である。
【図12】本発明の炊飯装置の制御系統の説明図である。
【図13】本発明の炊飯装置の他の一例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0011】
図1は本発明の炊飯装置の正面図であり、便宜上、一部省略して示してある。図1において、1は本発明の炊飯装置を示し、2は、列状に配置された複数の炊飯機2、2、2・・・から構成される炊飯機列である。図示の例では、炊飯機列2は、炊飯機2〜2の5台の炊飯機から構成されているが、炊飯機の数は5台に限られず、6台以上であっても、4台以下であっても良い。
【0012】
3は、炊飯機列2の上部の空間を走行する走行台車、4、4は、走行台車3の走行輪、5は、走行輪4、4を回転駆動する電動機、6は、炊飯機列2の上部の空間に配設された走行路であって、走行台車3の走行輪4、4がその上を走行する通路となるものである。電動機5によって走行輪4、4を前進または後進方向に回転駆動させることにより、走行台車3は、図中矢印で示すように、走行路6上を往復移動する。
【0013】
7は、把持装置であり、8は、把持装置7を走行台車3に対して昇降させる昇降装置である。昇降装置8によって、把持装置は、図中Aで示される実線で描かれた走行位置と、Bで示される破線で描かれた把持・解放位置との2位置間で上下に昇降する。
【0014】
9は、炊飯機列2の一方端の延長線上に設けられた受入部、10は、炊飯機列2の他方端の延長線上に設けられた搬出部であり、Pは炊飯釜である。受入部9および搬出部10のそれぞれには、炊飯釜Pを搬送する複数の回転ローラ11が設けられている。12、12は、受入部9上で、炊飯釜Pを停止させるストッパである。受入部9は、未炊飯の米と水を収容した炊飯釜Pを先行するラインから受け入れ、受け入れた炊飯釜Pを、走行台車3に備えられた把持装置7が把持可能な位置に保持する部分であり、搬出部10は、炊飯を終えた炊飯釜Pを把持装置7が解放するのを受け取り、後続するラインへと送り出す部分である。
【0015】
受入部9において、把持可能な位置に保持されている炊飯釜Pの高さ(図中「Hin」で示される高さ)と、搬出部10において、解放される炊飯釜Pを受け取る高さ(図中「Hout」で示される高さ)とは、共に、炊飯機2〜2にセットされたときの炊飯釜Pの高さ(図中、炊飯機2において、Hで示される高さ)と同じになるように構成されている。炊飯装置1が順次炊飯する複数の炊飯釜Pは、通常、一定の同じ形状を有しているので、受入部9、搬出部10、および炊飯機2〜2において炊飯釜Pの高さが同じということは、炊飯釜Pにおける被把持部の高さがいずれの位置においても同じであるということを意味する。このため、把持装置7は、受入部9、搬出部10、および炊飯機2〜2のいずれの位置においても、同じ高さで炊飯釜Pを把持したり、解放したりすることが可能となり、昇降装置8は、把持装置7を、炊飯釜Pを把持または解放する把持・解放位置Bと、把持した炊飯釜Pを搬送する走行位置Aの2位置間を昇降させれば良く、昇降装置8の構造やその制御が極めて簡単、かつ容易になるという利点が得られる。
【0016】
13は、内部に各種信号線、電力線、および加圧空気管を収容したケーブルベアであり、その一端は、走行台車3に設けられた移動端14に、他端は、炊飯装置1のフレーム15に設けられた固定端16に取り付けられている。17は制御装置、18は電源、19は圧縮空気源であり、それぞれ、適宜の信号線17a、電力線18a、および空気管19aによって、固定端16の図示しないコネクタ部に連結されている。これにより、電源18および圧縮空気源19は、コネクタ部およびケーブルベア13に収容されている対応する線路および管路を介して、走行台車3に電力や圧縮空気を供給し、また、制御装置17は、走行台車3との間で、各種信号をやり取りして、走行台車3を制御することができるようになっている。
【0017】
本例に示すように、電源18および圧縮空気源19を共に外部に設けることによって、走行台車3の構造を簡単にすることができる上に、走行台車3を軽量化することができるので、走行台車3の走行速度を高めることが可能となり、また、その停止位置の制御もより正確に行うことができるという利点がある。さらに、走行台車3と制御装置17とが無線ではなく有線で結ばれているので、両者間での信号のやり取りに要する時間にロスがなくなり、迅速な制御が可能になるという利点も得られる。
【0018】
図2は、図1に示す炊飯装置1の平面図であり、便宜上、制御装置17など、一部省略して示してある。図に示されるとおり、炊飯機列2を構成する炊飯機2〜2は直線状に配置され、その一方端の船長線上に受入部9が、他方端の延長線上に搬出部10が配置されている。炊飯機列2を構成する炊飯機2〜2の配置は必ずしも直線状に限られず、曲線状であっても良いし、直線と曲線との組合せからなる線状に配置されていても良い。なお、図示の例では、受入部9は、炊飯機列2の列方向と直交する方向から炊飯釜Pを受け入れ、搬出部10は、炊飯機列2の列方向に沿った方向に炊飯釜Pを搬出するように構成されているが、炊飯機列2に対する受け入れ方向および搬出方向は、炊飯装置1が設置される周囲の環境に応じて適宜変更可能であることは勿論である。
【0019】
図3は、走行台車3の平面図である。図3において、4a、4aは、走行輪4、4の車軸であり、走行台車3に取り付けられている軸受4b、4b・・・によって回転自在に軸支されている。5aは、電動機5の回転軸に取り付けられた駆動側プーリであり、タイミングベルト20を介して、車軸4a、4aの一方に取り付けられた従動側プーリ4cに回転動力を伝達し、走行輪4、4を回転駆動させる。
【0020】
21は、走行路6と平行に設置されたチェーン、22は、このチェーン21と係合する歯を備えたスプロケットである。22aはスプロケット22の回転軸であり、走行台車3に取り付けられている軸受22b、22bによって回転自在に支承され、その先端には回転伝達プーリ22cが取り付けられている。23はロータリエンコーダであり、その回転軸の先端には従動側プーリ23bが取り付けられ、回転伝達プーリ22cと従動側プーリ23bとの間にはタイミングベルト24が架け渡されている。
【0021】
走行台車3が走行路6上を走行すると、その走行に伴い、チェーン21と係合するスプロケット22は回転し、その回転は、回転軸22a、回転伝達プーリ22c、タイミングベルト24、および従動側プーリ23bを介して、ロータリエンコーダ23に伝達され、ロータリエンコーダ23は、その回転に応じたパルス列を出力する。このパルス信号は、移動端14からケーブルベア13内に収容されている信号線を介して、制御装置17に送信される。制御装置17は、送信されてきたパルス信号を、走行台車3の走行方向に応じて、加算または減算して、制御装置17に備えられている走行位置カウンタでカウントし、走行台車3の走行路6上の位置を表す情報として使用する。走行台車3の走行方向の判別は、ロータリエンコーダ23が回転軸の回転方向の判別手段を備えているものであれば、ロータリエンコーダ23からの信号に基づいて行っても良いし、制御装置17から電動機5に対して出されている制御信号が正転信号であるか、逆転信号であるかに基づいて行うようにしても良い。
【0022】
制御装置17に備えられている走行位置カウンタのカウント数は、適宜、リセットすることが可能であり、リセットしたときの走行台車3の走行路6上の位置をもって、走行路6上の任意の原点とすることができる。同様に、走行位置カウンタのカウント数に適宜の数値を加算または減算して、任意の原点の位置を適宜の位置にずらすことも可能である。
【0023】
なお、ロータリエンコーダ23の回転軸は、走行台車3の走行に伴って回転するように構成されていれば良く、回転の伝達経路は図示のものに限られない。例えば、ロータリエンコーダ23の回転軸に直接スプロケット22を取り付けるようにしても良いし、プーリとタイミングベルトではなく、歯車機構によって、スプロケット22の回転をロータリエンコーダ23に伝達するようにしても良い。また、上記の例では、チェーン21とスプロケット22の組合せを用いているが、走行台車3の走行に伴う回転を発生させる機構は、これに限られない。例えば、走行路6と平行に設置されたラックと、このラック上をラックの歯と係合しながら回転移動する歯車との組合せによっても良く、単に、走行路6と平行に設置された側路と、その上を回転移動する回転輪との組合せによって、走行台車3の走行に伴う回転を発生させても良い。さらには、走行輪4の車軸4aから、走行台車3の走行に伴う回転を取り出し、ロータリエンコーダ23の回転軸に伝達するようにしても良い。ただ、走行台車3の走行に伴う回転を、滑りによる誤差なく取り出すという見地からは、図示したチェーン21とスプロケット22の組合せが確実であり、かつ安価でもあるので、最も好ましい。
【0024】
8cは、昇降装置8を構成する空気圧シリンダであり、8vは、空気圧シリンダ8cへの圧縮空気の供給を制御する電磁弁である。25、25は、把持装置7の昇降時のガイドバーである。
【0025】
図4は、走行台車3の側面図であり、図3におけると同じ部材には同じ符号を付してある。図4において、8rは、空気圧シリンダ8cのピストンロッドであり、ピストンロッド8rは、走行台車3から下方に突出し、その先端には把持装置7の天板71が連結されている。25a、25aは、ガイドバー25、25の案内管であり、案内管25a、25aは走行台車3を貫通している。ガイドバー25、25の下端は、ピストンロッド8rと同様に、把持装置7の天板71に連結されている。72は、天板71と一体に結合された板状のカバー部材であり、その大きさと形状は、把持装置7によって把持される炊飯釜Pの少なくとも上部開口部を覆う大きさ並びに形状とされている。カバー部材72には、その上面側であって、カバー部材72の外周よりも内側の位置に、左右一対の空気圧シリンダ7c、7cと、これら空気圧シリンダへの圧縮空気の供給を制御する電磁弁7v、7vとが取り付けられている。
【0026】
73、73は、左右一対の把持部であり、カバー部材72の外周よりも外側の位置で、カバー部材72よりも下側に突出し、その突出した下端には、把持爪73a、73aを備えている。75、75は、把持部73、73の水平方向への移動を案内するガイドバーであり、把持部73、73に取り付けられている案内管76、76の内部を貫通し、その先端は把持部材73、73よりも外側に突出している。また、この図には示されていないが、空気圧シリンダ7c、7cのピストンロッドの先端部は、それぞれ、把持部73、73に結合されている。
【0027】
図4において、昇降装置8の空気圧シリンダ8cは、ピストンロッド8rがストロークの一方端である最もシリンダ内部に引き込まれた状態にあり、把持装置7は最も上昇した走行位置にある。このときの把持装置7の位置を、例えば、カバー部材72の下面を基準にして示せば、図中Aで示す位置ということになる。また、把持装置7の空気圧シリンダ7c、7cは、それぞれのピストンロッドがストロークの一方端である最もシリンダ内側に引き込まれた状態にあり、把持装置7の把持部73、73は、把持爪73a、73aが互いに最も接近した把持位置にある。このときの把持部73、73の位置を、例えば、把持部73、73の外端を基準にして示せば、図中Cで示す位置ということになる。把持位置において、把持爪73a、73aは、その上面が、炊飯釜Pの上側の鍔部の下面に当接するか、当接できる位置にある。
【0028】
図5は、図4のX−X’線で切断した把持装置7の平面図である。図に示すとおり、一対の空気圧シリンダ7c、7cのピストンロッド7r、7rは、それぞれ、その先端部が左右の把持部73、73に結合されている。図示の状態では、ピストンロッド7r、7rは、最もシリンダ内側に引き込まれた状態にあり、把持部73、73は、把持爪73a、73aは互いに最も接近した把持位置にある。ピストンロッド7r、7rが、シリンダから突出すると、それに伴い、把持部73、73は、ガイドバー75、75に案内されて、それぞれ外側に向かって移動することになる。把持爪73a、73aの先端部は、図示のとおり、炊飯釜Pの被把持部における外周形状に沿った逆円弧状に湾曲している。
【0029】
図5に示すとおり、カバー部材72の平面形状は円形で、炊飯釜Pの上部開口部を覆う大きさとなっている。把持装置7を構成する空気圧シリンダ7c、7c、および電磁弁7v、7vは、全て、カバー部材72の上面側で、かつ、カバー部材72の外周よりも内側に配置されているので、電磁弁7v、7vや空気圧シリンダ7c、7cの作動時に何らかの塵埃が発生したとしても、それらの塵埃はカバー部材72の上面に落下し、炊飯釜Pの開口部内に落下することがない。カバー部材72上に落下した塵埃がカバー部材72上から更に下方に落下するのを防止するために、カバー部材72の外周端部には、上方に向かう折り返し部またはこれに相当する部材を設けるようにしても良い。なお、カバー部材72の大きさは、少なくとも炊飯釜Pの上部開口部を覆う大きさであれば十分であるが、鍔部も含めて、炊飯釜Pの上面をすっぽりと覆う大きさとしても良い。また、カバー部材72の平面形状は、図示の例では円形であるが、四角形でも良く、炊飯釜Pの平面形状に合わせて円形以外の適宜の形状としても良いことは勿論である。
【0030】
図6は、走行台車3の側面図であり、把持装置7が最も下降した把持・解放位置にある状態を示している。図に示すとおり、昇降装置8の空気圧シリンダ8cは、ピストンロッド8rがストロークの他方端である最もシリンダ外部に突出した状態にあり、把持装置7は最も下降した把持・解放位置にある。つまり、カバー部材72の下面の高さを基準に示せば、把持装置7は、図中Aで示される位置から、図中Bで示す位置まで下降したことになる。
【0031】
このとき、把持爪73a、73aの上面は、受入部9または搬出部10の上、或いは、炊飯機2〜2のいずれかにセットされた状態にある炊飯釜P(図中破線で示す)の上側の鍔部の下面と離間した位置にあり、把持部73、73は、把持爪73a、73aが互いに最も接近した把持位置から、互いに最も離れた解放位置へと、外側に向かって移動可能な状態にある。また、図示の状態で、把持装置7が上昇すれば、把持部73、73は把持位置にあるので、把持爪73a、73aの上面は炊飯釜Pの上側の鍔部の下面と当接し、そのまま炊飯釜Pを把持して上昇することになる。このように、把持装置7が最も下降した把持・解放位置は、把持部73、73による炊飯釜Pの把持または解放動作のいずれもが可能な位置ということになる。
【0032】
図7は、走行台車3の側面図であり、把持装置7が最も下降した把持・解放位置にあり、かつ、把持部73、73が互いに最も離れた解放位置にある状態を示している。図6に示した状態から、把持装置7の空気圧シリンダ7c、7cが作動して、ピストンロッド7r、7rをストロークの他方端であるシリンダから最も外部に突出した位置まで押し出すと、把持部73、73は、図中矢印で示すとおり、把持爪73a、73aが互いに最も離れた解放位置へと移動する。このときの把持部73、73の外端は図中Dで示す位置にあり、つまり、把持部73、73は、Cの把持位置からDの解放位置まで移動したということになる。
【0033】
解放位置において、把持爪73a、73aは、炊飯釜Pの上側の鍔部の下には位置しておらず、この状態で把持装置7が上昇しても、把持爪73a、73aの上面は炊飯釜Pの上側の鍔部の下面とは当接しないので、把持装置7は炊飯釜Pを把持しないままに上昇することができる。
【0034】
図8は、図7のY−Y’線で切断した把持装置7の平面図である。図に示すとおり、空気圧シリンダ7c、7cのピストンロッド7r、7rは、シリンダから最も外側に突出した位置にあり、把持部73、73は、把持爪73a、73aが互いに最も離れた解放位置にある。この位置において、把持装置7が上昇しても、把持爪73a、73aは、炊飯釜Pの上側の鍔部とは当接しない。
【0035】
次に、炊飯機2〜2に設けられている炊飯釜Pの存在を検知する釜センサについて図9〜図10を用いて説明する。なお、以下の説明では、便宜上、炊飯機2を例に説明をしているが、他の炊飯機においても同様である。
【0036】
図9は、炊飯機2の断面図である。炊飯機2には、上部が開口した空間26と、図示しない加熱手段が設けられており、炊飯時には、炊飯釜Pがこの空間26内の所定位置、すなわち炊飯位置にセットされ、炊飯が行われることになる。27は、温度センサ、28は、温度センサ27に結合されている保護管であり、保護管28の内部には、温度センサ27の出力を外部に伝える信号線29が収容されている。温度センサ27は、炊飯釜Pが空間26内の所定位置にセットされたとき、炊飯釜Pの底面に当接して、炊飯釜Pの温度を計測する。計測された温度は、炊飯の進行度合いを示す信号として、加熱手段の制御に使用される。30は、バネ等の弾性部材であり、温度センサ27を常時、上方に向けて付勢し、温度センサ27をより確実に炊飯釜Pの底面と当接させるものである。31は、保護管28に固定された動作体、32は、動作体の移動を検知する近接センサである。
【0037】
図10は、炊飯機2に炊飯釜Pがセットされた状態を示している。図に示すように、炊飯釜Pが炊飯機2の炊飯位置にセットされると、温度センサ27の上面は炊飯釜Pの底面と当接し、弾性部材30に支承されつつ、少しの距離だけ下方に移動する。それに伴い、保護管28および保護管28に固定されている動作体31は、図中矢印で示すように下降し、動作体31は近接センサ32に接近し、近接センサ32はその接近を検知して、信号を出力することになる。この信号は、当該炊飯機2が、炊飯釜Pがセットされている状態にあることを示す信号として、制御装置17に送信される。なお、動作体31の下降は、近接センサ32ではなく、動作体31の下降によってリミットスイッチを作動させて検知するようにしても良い。なお、図示の例では、近接センサ32は、炊飯機2に炊飯釜Pがセットされた状態にあるときに信号を発生するようにされているが、例えば、近接センサ32を動作体31の上側に設置することによって、炊飯機2に炊飯釜Pがセットされていないときに信号を発生し、セットされたときには信号を発生しないようにして、炊飯釜Pの有無を検知するようにしても良い。
【0038】
また、温度センサ27の下降によって炊飯釜Pの存在の有無を検知するのではなく、例えば、炊飯釜Pの下側の鍔部と当接する炊飯機2の上面にリミットスイッチを設け、炊飯釜Pがセットされたことを検知することも可能であり、炊飯釜Pによって、例えば光の透過を妨げて、光電スイッチを作動させ、炊飯釜Pの存在を検知することも可能である。いずれにせよ、炊飯機2〜2には、炊飯釜Pが炊飯位置にセットされているか否かを検知する釜センサが設けられており、これにより、制御装置17は、各炊飯機に炊飯釜Pがセットされているか否かを知ることが可能となる。
【0039】
次に、図11を用いて、制御装置17に備えられている停止位置記憶装置33と、相対パルス数差記憶装置34について説明する。
【0040】
制御装置17は、停止位置記憶装置33を備えており、停止位置記憶装置33は、受入部9、搬出部10、および炊飯機2〜2に対応する走行路6上の位置を、それぞれ、ロータリエンコーダ23が出力するパルス数として記憶する装置である。図11において、走行路6の上に、「Hin」、「Hout」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」として下向きの黒三角を付して示す位置が、それぞれ、受入部9、搬出部10、および各炊飯機2〜2に対応する走行路6上の位置である。走行台車3は、例えば、走行台車3の走行路6方向の中心点を基準点とし、この基準点が、受入部9、搬出部10、および炊飯機2〜2に対応する走行路6上の位置と一致する位置に停止すると、その位置において、昇降装置8および把持装置7を作動させて、炊飯釜Pの把持・解放や昇降を行うことができるようになっている。つまり、受入部9、搬出部10、および炊飯機2〜2に対応する走行路6上の位置とは、走行台車3が基準点をその位置に一致させて停止したとき、昇降装置8および把持装置7を作動させて、炊飯釜Pの把持や解放、炊飯機2〜2へのセットや取り出しができる位置のことを意味する。
【0041】
なお、走行台車3の基準点は、走行台車3の走行路6方向の中心点に限られず、任意に設定することが可能である。走行台車3の基準点を変更した場合には、それに応じて、停止位置記憶装置33に記憶されている受入部9、搬出部10、および各炊飯機2〜2に対応する走行路6上の位置を変更すれば良い。
【0042】
図11の例では、「Hin」の位置に対応する停止位置記憶装置33の数値は「0000」となっており、これは、この「Hin」、すなわち受入部9に対応する位置が、走行路6上の任意の原点として選択されていることを意味している。「1」〜「5」、「Hout」の各位置の上に示された数値は、それぞれ、「Hin」の位置から各位置まで、走行台車3が走行路6上を走行したときにロータリエンコーダ23が出力するパルス数の例である。つまり、図示の例においては、走行台車3が、受入部9に対応する「Hin」の位置から、炊飯機2に対応する「1」の位置まで走行すると、ロータリエンコーダ23は「250」パルスを、また、最も遠い搬出部10に対応する「Hout」の位置まで走行すると、「1300」のパルスを発生するということを意味している。
【0043】
これらのパルス数は、走行台車3を実際に走行路6上を走行させることによって知ることができ、また、ロータリエンコーダ23が発生するパルス数と走行距離との関係が分かっている場合には、対応する各位置間の距離を計測し、その距離に対応するパルス数を計算によって求めることもできる。制御装置17が、外部からの入力手段として、停止位置記憶装置33に記憶されている各停止位置のパルス数を適宜設定、変更する手段を備えていることはいうまでもない。
【0044】
走行台車3を走行路6上に走行可能な状態にセットし、走行台車3の基準点を走行路6上の原点として設定されている「Hin」の位置に合わせ、そのとき、制御装置17に備えられている走行位置カウンタのカウント数を「0」にリセットすることによって、走行位置カウンタの原点と、停止位置記憶装置33の原点とを一致させることができる。これにより、走行位置カウンタのカウント数が、停止位置記憶装置33に記憶されているカウント数と一致するように停止させると、走行台車3は、受入部9、搬出部10、または炊飯機2〜2のいずれかに対応する走行路6上の位置で停止することになる。
【0045】
なお、走行路6上の原点は、停止位置記憶装置33に記憶されている各位置のパルス数を、それぞれ同じ数だけ加算または減算することによって、任意の位置に変更可能である。例えば、「Hin」のパルス数を「500」にし、他の位置のパルス数を、それぞれ「500」だけ加算した数にすれば、走行路6上の原点は、「Hin」の位置から、図中右方向に「500」パルス分だけ移動したことになる。このときには、走行台車3の基準点を「Hin」の位置に合わせ、そのとき、制御装置17に備えられている走行位置カウンタのカウント数を「500」にセットすることによって、走行位置カウンタの原点と、停止位置記憶装置33の原点とを一致させることができることになる。
【0046】
制御装置17は、さらに、相対パルス数差記憶装置34を備えており、相対パルス数差記憶装置34は、受入部9、搬出部10、および炊飯機2〜2に対応する走行路6上の隣接する各位置間のパルス数の差を記憶する装置である。図11に示す例では、受入部9または搬出部10に対応する走行路6上の位置と隣接する炊飯機2または2に対応する走行路6上の位置とは「250」パルス分だけ離れており、各炊飯機間は「200」パルス分だけ離れているが、相対パルス数差記憶装置34は、これらのパルス数を隣接する各位置間のパルス数の差として記憶している。この記憶は、停止位置記憶装置33に各停止位置のパルス数が記憶されたときに、その差を演算によって求め、相対パルス数差記憶装置34に記憶させるようにしても良いし、走行路6上の各位置間の距離を計測し、その距離に対応するパルス数を計算によって求めて、相対パルス数差記憶装置34に記憶させるようにしても良い。
【0047】
停止位置記憶装置33に記憶されている少なくとも1つの位置のパルス数が変更されたときには、制御装置17は、相対パルス数差記憶装置34に記憶されている各位置間のパルス数差に基づいて、停止位置記憶装置33に記憶されている他の位置のパルス数を自動的に変更することができる。例えば、「Hin」のパルス数が「0」から「500」に変更されたときには、「1」の位置のパルス数は、「Hin」のパルス数「500」に、相対パルス数差記憶装置34に記憶されている「Hin」と「1」との間のパルス数差「250」を加算して、「1」の位置のパルス数を「750」に変更すれば良い。相対パルス数差記憶装置34が備えられていることによって、停止位置記憶装置33に記憶されている各位置のパルス数の変更が極めて容易になるという利点が得られる。
【0048】
図12は、本発明の炊飯装置1の制御系統の説明図である。図中、8cは、昇降装置8の空気圧シリンダ、7c、7cは、把持装置7の空気圧シリンダであり、本例においては、いずれも複動式の空気圧シリンダである。8pは、空気圧シリンダ8cのピストン、7p、7pは、空気圧シリンダ7c、7cのピストンであり、各ピストン8p、7p、7pには、それぞれ、位置検知用の磁石8s、7s、7sが取り付けられている。S、Sは磁気センサであり、各シリンダ内で、ピストン8p、7p、7pがストロークの一方端である最も後退した位置にあり、ピストンロッド8r、7r、7rが最もシリンダ内側に引き込まれた位置にあるとき、およびピストン8p、7p、7pがストロークの他方端である最も前進した位置にあり、ピストンロッド8r、7r、7rが最もシリンダ外側に突出した位置にあるときに、それぞれ信号を発生し、その信号は制御装置17へと送信される。
【0049】
圧縮空気源19からの圧縮空気は、それぞれ電磁弁8v、7v、7vを介して、各空気圧シリンダ8c、7c、7cへ供給される。電磁弁8v、7v、7vは、ダブルソレノイド電磁弁であり、それぞれ図示の位置にあるときには、各シリンダ内のピストンの右側に圧縮空気を供給し、ピストンロッド8r、7r、7rをストロークの一方端である後退位置へと引き戻し、図示の位置から切り替わったときには、各シリンダ内のピストンの左側に圧縮空気を供給し、ピストンロッド8r、7r、7rをストロークの他方端である前進位置へと押し出すように動作する。制御装置17は、各電磁弁8v、7v、7vのソレノイドに信号を送り、電磁弁8v、7v、7vを適宜のタイミングで、適宜の位置に切り換える。なお、電磁弁8v、7v、7vは、シングルソレノイド電磁弁であっても良いが、電源が一時的に遮断されたときなどには、動作が不安定になるので、ダブルソレノイド電磁弁を用いるのが好ましい。
【0050】
32、32・・・は、前述した釜センサとしての近接センサであり、それぞれ炊飯機2〜2に対応し、各炊飯機に炊飯機Pがセットされているか否かを表す信号を制御装置17に送信している。
【0051】
制御装置17には、ロータリエンコーダ23からのパルス信号も送信され、送信されてきたパルス信号は、走行台車3の走行方向に応じて、加算または減算して、走行位置カウンタ35でカウントされる。33は前述した停止位置記憶装置、34は前述した相対パルス数差記憶装置、36はCPU、37は適宜の入出力装置であり、38は、走行台車3、昇降装置8、および把持装置7に対して出された命令を逐次記憶する命令記憶装置である。
【0052】
以下、図1と図12を参照しながら、本発明の炊飯装置1の動作を説明する。未炊飯の米と水を収容した炊飯釜Pが、図示しない搬送手段によって受入部9にまで搬送され、ストッパ12、12に当接して停止すると、受入部9から制御装置17に、炊飯待ちの炊飯釜Pが存在することを知らせる信号が送信される。この信号は、炊飯釜Pがストッパ12、12に当接したことをリミットスイッチ等で検知して、制御装置17に送信するようにしても良いし、受入部9に重量計を取り付けておき、炊飯釜Pの存在を受入部9の重量変化で検知して、送信するようにしても良い。
【0053】
炊飯待ちの炊飯釜Pが存在することを知らせる信号を受信すると、制御装置17は、走行台車3に受入部9への走行命令を出す。受入部9への走行命令は、電動機5を走行台車3が受入部9に向かう方向に駆動させる信号と、走行台車3が受入部9に対応する走行路6上の位置に接近すると走行台車3の走行速度を減速させる信号と、走行台車3が停止したときに、走行位置カウンタ35のカウント数と停止位置記憶装置33に記憶されている受入部9に対応する位置のカウント数とが一致するように、タイミングを見計らって電動機5の回転駆動を停止させる信号とを含んでいる。
【0054】
制御装置17は、走行位置カウンタ35のカウント停止をもって走行台車3の走行停止を認識し、そのときの走行位置カウンタ35のカウント数と、停止位置記憶装置33に記憶されている受入部9に対応する位置のカウント数とを比較して、両者が予め定められた許容誤差の範囲内(例えば±5パルスの範囲内)で一致したときには、走行台車3の受入部9への走行命令が実行されたと判断する。許容誤差の範囲内で一致していないときには、制御装置17は、走行台車3に、調整命令を出し、電動機5を必要な方向に短時間だけ駆動して、走行台車3を微小移動させ、その都度、走行位置カウンタ35のカウント数と、停止位置記憶装置33に記憶されている受入部9に対応する位置のカウント数とを比較しながら、両者が予め定められた許容誤差の範囲内で一致するまで、調整命令を繰り返す。
【0055】
走行位置カウンタ35のカウント数と、停止位置記憶装置33に記憶されている受入部9に対応する位置のカウント数とが予め定められた許容誤差の範囲内で一致し、走行台車3の受入部9への走行命令が実行されたと判断すると、制御装置17は、次に、昇降装置8に把持装置7の下降命令を出す。昇降装置8への下降命令は、電磁弁8vの弁位置を図12に示す位置から別の位置へと切り換える信号を含んでいる。
【0056】
電磁弁8vの弁位置が図12に示す位置から別の位置へと切り変わると、空気圧シリンダ8cにおけるピストン8pの左側に圧縮空気が供給されるので、ピストンロッド8rは押し出され、把持装置7は、下方の把持・解放位置へと下降する。ピストン8pがシリンダ内でストロークの他方端である最も前進した位置まで移動すると、磁気センサSがそれを検知し、信号を出力して制御装置17へと送信する。制御装置17は、空気圧シリンダ8cに設けられている磁気センサSからの信号を受信すると、その信号を把持装置7が把持・解放位置にあることを知らせる信号として認識し、昇降装置8への把持装置7の下降命令が実行されたと判断する。つまり、空気圧シリンダ8cに設けられている磁気センサSは、把持・解放位置センサとして機能していることになる。
【0057】
なお、昇降装置8への下降命令を出した後、予め定められた時間内に、空気圧シリンダ8cに設けられている磁気センサSからの信号を受信しない場合には、制御装置17は、何らかのトラブルが発生したと判断して、動作を停止させるとともに、アラームを鳴らして、作業者の注意を喚起する。これは、以下に説明する他の命令の場合においても同様である。
【0058】
昇降装置8への把持装置7の下降命令の後、把持・解放位置センサとして機能している磁気センサSからの信号を受信すると、制御装置17は、当該下降命令が実行されたと判断し、次に、把持装置7に、炊飯釜Pの把持命令を出す。把持命令は、電磁弁7v、7vの弁位置を、別の位置から図12に示す位置へと切り換える信号を含んでいる。
【0059】
電磁弁7v、7vの弁位置が別の位置から図12に示す位置へと切り変わると、空気圧シリンダ7c、7cにおけるピストン7p、7pの右側に圧縮空気が供給されるので、ピストンロッド7r、7rはストロークの一方端へと引き戻され、把持装置7の把持部73、73は、把持爪73a、73aが互いに最も接近した把持位置へと移動し、炊飯釜Pを把持する。ピストン7p、7pがシリンダ内で最も後退した位置まで移動すると、磁気センサS、Sがそれを検知し、信号を出力して制御装置17へと送信する。制御装置17は、空気圧シリンダ7c、7cに設けられている磁気センサS、Sからの信号を受信すると、その信号を把持装置7の把持部73、73が把持位置にあることを知らせる信号として認識し、把持装置7への把持命令が実行されたと判断する。つまり、空気圧シリンダ7c、7cに設けられている磁気センサS、Sは、把持位置センサとして機能していることになる。
【0060】
把持装置7の把持命令の後、把持位置センサとして機能している磁気センサS、Sからの信号を受信すると、制御装置17は、当該把持命令が実行されたと判断し、次に、昇降装置8に把持装置7の上昇命令を出す。昇降装置8への上昇命令は、電磁弁8vの弁位置を別の位置から図12に示す位置へと切り換える信号を含んでいる。
【0061】
電磁弁8vの弁位置が別の位置から図12に示す位置へと切り変わると、空気圧シリンダ8cにおけるピストン8pの右側に圧縮空気が供給されるので、ピストンロッド8rは引き戻され、把持装置7は、炊飯釜Pを把持したまま、上方の走行位置へと上昇する。ピストン8pがシリンダ内でストロークの一方端である最も後退した位置まで移動すると、磁気センサSがそれを検知し、信号を出力して制御装置17へと送信する。制御装置17は、空気圧シリンダ8cに設けられている磁気センサSからの信号を受信すると、その信号を把持装置7が走行位置にあることを知らせる信号として認識し、昇降装置8への把持装置7の上昇命令が実行されたと判断する。つまり、空気圧シリンダ8cに設けられている磁気センサSは、走行位置センサとして機能していることになる。
【0062】
昇降装置8への上昇命令が実行されると、制御装置17は、走行台車3を、炊飯釜Pを把持したまま、炊飯機2〜2のうちの適宜の炊飯機に対応する位置まで走行させる走行命令を出す。このとき、制御装置17は、炊飯釜Pの有無を知らせる近接センサ32、32、・・・からの信号を参照し、選択した炊飯機に炊飯釜Pがセットされている場合には、その炊飯機に代えて、他の炊飯機を選択する。制御装置17は、炊飯機の選択を変更すると、再度、炊飯釜Pの有無を知らせる近接センサ32、32、・・・からの信号を参照する動作を繰り返し、最終的に、炊飯釜Pがセットされていない炊飯機を選択し、走行台車3に、その炊飯機への走行命令を出す。或いは、制御装置17は、先に、炊飯釜Pの有無を知らせる近接センサ32、32、・・・からの信号を参照し、炊飯釜Pがセットされていない炊飯機の中から適宜の炊飯機を選択し、その炊飯機への走行命令を出すようにしても良い。
【0063】
上記選択された炊飯機への走行命令が、上述した受入部9への走行命令と同様の手順を経て実行されると、制御装置17は、昇降装置8に把持装置7の下降命令を出し、その下降命令が、上述した受入部9での下降命令と同様の手順を経て実行されると、制御装置17は、把持装置7に対して、解放命令を出す。把持装置7への解放命令は、電磁弁7v、7vの弁位置を、図12に示す位置から別の位置へと切り換える信号を含んでいる。
【0064】
電磁弁7v、7vの弁位置が図12に示す位置から別の位置へと切り変わると、空気圧シリンダ7c、7cにおけるピストン7p、7pの左側に圧縮空気が供給されるので、ピストンロッド7r、7rはストロークの他方端へと押し出され、把持装置7の把持部73、73は、把持爪73a、73aが互いに最も離れた解放位置へと移動し、炊飯機に炊飯釜Pをセットした状態で、炊飯釜Pの把持を解放する。ピストン7p、7pがシリンダ内で最も前進した位置まで移動すると、磁気センサS、Sがそれを検知し、信号を出力して制御装置17へと送信する。制御装置17は、空気圧シリンダ7c、7cに設けられている磁気センサS、Sからの信号を受信すると、その信号を把持装置7の把持部73、73が解放位置にあることを知らせる信号として認識し、把持装置7への解放命令が実行されたと判断する。つまり、空気圧シリンダ7c、7cに設けられている磁気センサS、Sは、解放位置センサとして機能していることになる。
【0065】
一方、炊飯機2〜2のうちのいずれかの炊飯機で炊飯終了の信号が出されると、制御装置17はその信号を受信し、走行台車3に当該炊飯機への走行命令を出す。当該走行命令が実行され、走行台車3が当該炊飯機に対応する走行路6上の位置に停止すると、制御装置17は、昇降装置8に把持装置7の下降命令を出し、当該下降命令が実行されると、把持装置7に把持命令を出して、炊飯が終了した炊飯釜Pを把持させる。制御装置17は、続いて、昇降装置8に上昇命令を出し、把持装置7を走行位置まで上昇させると、走行台車3を搬出部10へと走行させ、その位置で、昇降装置8に下降命令を出して、把持装置7を把持・解放位置まで下降させ、炊飯が終了した炊飯釜Pを搬出部10上に解放する。
【0066】
このように、制御装置17は、走行台車3、昇降装置8、および把持装置7に各命令を出すとともに、その命令の実行を各センサからの信号によって確認した上で次のステップに進むようにプログラムされているので、制御装置による制御がより確実なものとなり、誤動作が少ないという利点がある。
【0067】
次に、電源の一時的な遮断からの復旧時における本発明の炊飯装置1の動作を説明する。
【0068】
図12に示すように、制御装置17は、走行台車3、昇降装置8、および把持装置7に対して出した命令を逐次記憶する命令記憶装置38を備えている。制御装置17は、電源の一時的な遮断を経て電源が再投入されたとき、電源の一時的な遮断前に出された最も新しい命令を命令記憶装置38から読み出し、当該命令が、例えば、走行台車3に対する特定位置への走行命令であった場合には、走行台車3の現在位置を表す走行位置カウンタ35のカウント数と、停止位置記憶装置33に記憶されている指定された走行位置のカウント数とを比較し、当該走行命令が実行されたかどうかを判断する。当該走行命令が実行されたと判断される場合には、次のステップに進み、実行されたと判断できない場合には、制御装置17は、再度、当該走行命令を走行台車3に対して出し、電源の遮断直前の未完の命令から再スタートすることになる。
【0069】
命令記憶装置38から読み出された、電源の一時的な遮断前に出された最も新しい命令が、例えば、昇降装置8への上昇命令であった場合には、制御装置17は、当該上昇命令と、走行位置センサからの信号、すなわち、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号とを比較し、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号を受信している場合には、当該上昇命令が実行されたと判断して、次のステップに進む。一方、上昇命令があったにもかかわらず、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号を受信していない場合には、制御装置17は、当該上昇命令は実行されていないと判断し、再度、当該上昇命令を昇降装置8に対して出し、電源の遮断直前の未完の命令から再スタートすることになる。
【0070】
命令記憶装置38から読み出された、電源の一時的な遮断前に出された最も新しい命令が、例えば、昇降装置8への上昇命令であった場合には、制御装置17は、当該上昇命令と、走行位置センサからの信号、すなわち、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号とを比較し、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号を受信している場合には、当該上昇命令が実行されたと判断して、次のステップに進む。一方、上昇命令があったにもかかわらず、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号を受信していない場合には、制御装置17は、当該上昇命令は実行されていないと判断し、再度、当該上昇命令を昇降装置8に対して出し、電源の遮断直前の未完の命令から再スタートすることになる。電源の一時的な遮断直前の命令が、昇降装置8に対する下降命令である場合にも、比較する信号が、把持・解放位置センサからの信号、すなわち、空気圧シリンダ8rの磁気センサSからの信号に代わるだけで、同じである。
【0071】
一方、命令記憶装置38から読み出された、電源の一時的な遮断前に出された最も新しい命令が、把持装置7に対する把持命令であった場合には、制御装置17は、当該把持命令と、把持位置センサからの信号、すなわち、空気圧シリンダ7r、7rの磁気センサS、Sからの信号とを比較し、空気圧シリンダ7r、7rの磁気センサS、Sからの信号を受信している場合には、当該把持命令が実行されたと判断して、次のステップに進む。一方、把持命令があったにもかかわらず、空気圧シリンダ7r、7rの磁気センサS、Sからの信号を受信していない場合には、制御装置17は、当該把持命令は実行されていないと判断し、再度、当該把持命令を把持装置7に対して出し、電源の遮断直前の未完の命令から再スタートすることになる。電源の一時的な遮断直前の命令が、把持装置7に対する解放命令である場合にも、比較する信号が、解放位置センサからの信号、すなわち、空気圧シリンダ7r、7rの磁気センサS、Sからの信号に代わるだけで、同じである。
【0072】
以上のように、本発明の炊飯装置1は、走行台車3、昇降装置8、および把持装置7に対して出した命令を逐次記憶する命令記憶装置38を備えており、電源の一時的な遮断からの復旧時には、この命令記憶装置38に記憶されている遮断直前の命令を読み出し、当該命令が実行されたか否かを判断する手段を備えているので、停電や故障等により、電源が一時的に遮断されても、電源の再投入時には、遮断前に実行された命令の次の命令から炊飯装置1を再スタートさせることができるという利点を備えている。
【0073】
なお、以上の例においては、把持位置センサ、解放位置センサ、走行位置センサ、または把持・解放位置センサとして、空気圧シリンダ7c、7cに設けられている磁石7s、7sと磁気センサS、SまたはS、Sの組合せ、或いは、空気圧シリンダ8cに設けられている磁石8sと磁気センサSまたはSの組合せを例示しているが、用いることができる上記各センサは、例示されたものに限られない。例えば、空気圧シリンダ7cまたは8c内のピストンの位置を検知するのではなく、把持装置7の上下位置や、把持部73、73の水平位置を、光電スイッチ、近接スイッチ、リミットスイッチ等で検知して、それぞれが走行位置または把持・解放位置にあるか、把持位置または解放位置にあるかを信号として出力するようにしても良い。
【0074】
また、以上の例においては、把持装置7を昇降させる空気圧シリンダ8rは1本であるが、2本、または3本以上にしても良く、把持部73、73を移動させる空気圧シリンダ7c、7cは、各把持部73、73に対して2本以上であっても良い。
【0075】
図13は、本発明の炊飯装置1の他の例を示す正面図である。図13に示すとおり、本例の走行台車3には、把持装置7、7が、炊飯機列2の列方向に沿って2セット、設けられている。このように、走行台車3に把持装置を2セット設ける場合には、炊飯釜Pを2個ずつ同時に搬送したり、把持または解放することができるので、炊飯機列2を構成する炊飯機の数が増しても、効率良く炊飯を行うことができるという利点が得られる。本例においては、2セットの把持装置7、7の昇降は、一台の空気圧シリンダ8cに行っているが、天板71を2つに分割し、それぞれに把持装置7、7を結合し、それぞれを、別の空気圧シリンダによって昇降させるようにしても良い。把持装置の数は2セットに限られず、3セット以上であっても良い。
【0076】
以上の例においては、炊飯釜Pとして、把持装置7の把持部73、73と当接する下面を有する第1の鍔部と、炊飯機2〜2へのセット時に炊飯機の上面に当接する下面を有する第2の鍔部とを備えているものを使用しているが、本発明の炊飯装置1によって使用することができる炊飯釜は、このように二重鍔を有するものに限られない。炊飯機の上方から下降させて炊飯機にセットすることができ、かつ、把持部73、73によって把持・解放することができる被把持部を備えた炊飯釜であれば、どのような形状、構造の炊飯釜であっても良い。ただ、二重鍔を有する炊飯釜であれば、炊飯機へのセットも単に載置するだけで良く、また、把持・解放も、把持部73、73の把持爪73a、73aを上側の鍔部の下への出し入れで行うことができるので、把持に要するエネルギーも少なくて済み、装置7の構造が簡単となるので、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明の走行装置とそれを備えた炊飯装置によれば、省スペースな配置で、衛生的な炊飯装置を実現できるという優れた産業上の利用可能性が得られる。
【符号の説明】
【0078】
1 炊飯装置
2 炊飯機列
3 走行台車
4 走行輪
5 電動機
6 走行路
7 把持装置
8 昇降装置
9 受入部
10 搬出部
17 制御装置
18 電源
19 圧縮空気源
21 チェーン
22 スプロケット
23 ロータリエンコーダ
7c、8c 空気圧シリンダ
7v、8v 電磁弁
P 炊飯釜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列の上部の空間を往復移動する走行台車であって、当該走行台車は、炊飯釜の把持・解放が自在な把持部を備えた把持装置と、把持装置を走行台車よりも下方の位置で走行台車に対して昇降させる昇降装置とを備えており、前記把持装置が、把持する炊飯釜の上部を覆う板状のカバー部材を備え、把持装置の把持部を作動させる空気圧シリンダおよび電磁弁と前記昇降装置とが、カバー部材よりも上方でカバー部材の外周よりも内側に位置し、把持装置の把持部がカバー部材の外周よりも外側の位置でカバー部材よりも下方に突出している走行台車。
【請求項2】
カバー部材が、外周端部に、上方に向かう折り返し部またはこれに相当する部材を有している請求項1記載の走行台車。
【請求項3】
把持装置を、炊飯機列の列方向に沿って、2セット以上備えている請求項1又は2記載の走行台車。
【請求項4】
複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列と、その炊飯機列の上部の空間を走行する請求項1〜3のいずれかに記載の走行台車とを備えている炊飯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−194272(P2010−194272A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46823(P2009−46823)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2009−43211(P2009−43211)の分割
【原出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】