説明

走行型浸漬処理装置

【課題】自動車の車体の塗装システムにおいて、搬送用走行体の上で前向き水平に支持した車体を、搬送させながら被処理液中に回転させて浸漬処理する手段として活用できる走行型浸漬処理装置を提供する。
【解決手段】搬送用走行体(1)に、浸漬処理浴槽(2)上を水平に横断する回転軸(11)と当該回転軸(11)を回転駆動する回転軸駆動手段(16)を設け、回転軸(11)に設けられたワーク支持手段(15)に支持された被処理ワーク(W)を回転軸(11)の回転により浸漬処理浴槽(2)内に浸漬できるようにした走行型浸漬処理装置において、搬送用走行体(1)上に、当該搬送用走行体(1)の走行方向の前後に往復移動自在な可動台(5)が設けられ、この可動台(5)に前記回転軸(11)が支持され、前記可動台(5)を搬送用走行体(1)に対して前後往復移動させる可動台駆動手段(20)が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の走行型浸漬処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行型浸漬処理装置として、特許文献1に記載されるように、浸漬処理浴槽に沿って走行する搬送用走行体に、前記浸漬処理浴槽上を水平に横断する回転軸と当該回転軸を回転駆動する回転軸駆動手段を設け、前記回転軸にワーク支持手段を設け、このワーク支持手段に支持された被処理ワークを前記回転軸の回転により浸漬処理浴槽内に浸漬できるようにした走行型浸漬処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−100223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の走行型浸漬処理装置を自動車の車体の塗装システムにおいて利用する場合、従来周知のように、長尺大型の車体を、その長さ方向を搬送方向と平行に支持した状態で且つ当該車体の下側に位置する前記回転軸の周りに回動させることになるので、浸漬処理浴槽内に浸漬させるために前記車体を回動させたとき、その車体の回動軌跡が、搬送用走行体に支持されているときの当該車体の前後両端位置よりも大きく前後に張り出すことになる。従って、回動する車体が前後の搬送用走行体に支持されている車体と干渉するのを防止するために、搬送用走行体間のピッチを車体の全長と比較して大幅に広げておく必要が有り、この結果、搬送効率が低下するばかりでなく、浸漬処理浴槽の全長も長くなって、設備コスト、ランニングコストが高くつくことになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる走行型浸漬処理装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る走行型浸漬処理装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、浸漬処理浴槽(2)に沿って走行する搬送用走行体(1)に、前記浸漬処理浴槽(2)上を水平に横断する回転軸(11)と当該回転軸(11)を回転駆動する回転軸駆動手段(16)を設け、前記回転軸(11)にワーク支持手段(15)を設け、このワーク支持手段(15)に支持された被処理ワーク(W)を前記回転軸(11)の回転により浸漬処理浴槽(2)内に浸漬できるようにした走行型浸漬処理装置において、搬送用走行体(1)上に、当該搬送用走行体(1)の走行方向の前後に往復移動自在な可動台(5)が設けられ、この可動台(5)に前記回転軸(11)が支持され、前記可動台(5)を搬送用走行体(1)に対して前後往復移動させる可動台駆動手段(20)が設けられた構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記可動台駆動手段(20)は、前記可動台(5)上に支持され且つ前記回転軸(11)と平行な水平軸心の周りで当該回転軸(11)に連動して回転する回転アーム(21)と、この回転アーム(21)の1回転運動を搬送用走行体(1)に対する前記可動台(5)の1往復運動に変換する回転/直線往復動変換機構(22)とから構成することができる。この場合に必要な回転/直線往復動変換機構(22)としては、例えば前記回転アーム(21)の遊端部と、当該回転アーム(21)の回動空間に対して前後方向に離れた搬送用走行体(1)上の定位置に軸支された長尺リンクの遊端部とを支軸により連結して成る構造のものなど、種々考えられるところであるが、請求項3に記載のように、前記回転アーム(21)に隣り合うように前記搬送用走行体(1)に垂直上下方向に取り付けられたガイドレール(23)と、前記回転アーム(21)の遊端側に取り付けられ且つ前記ガイドレール(23)に昇降自在に係合する昇降部材(24)とから構成された回転/直線往復動変換機構(22)を利用するのが望ましい。
【0007】
又、前記のような回転アーム(21)と回転/直線往復動変換機構(22)とから成る可動台駆動手段(20)ではなく、請求項4に記載のように、前記可動台駆動手段としては、前記回転軸駆動手段(16)のモーター(18)とは別のモーター(29)によって駆動される駆動用回動体(チエン、ベルト、ワイヤーロープ、ラックギヤと咬合するピニオンギヤなど)(30)を備えた可動台駆動手段(31)を使用することもできる。
【発明の効果】
【0008】
ワーク支持手段で支持されたワーク、例えば自動車の車体を、浸漬処理浴槽内に浸漬させるために搬送用走行体上の定位置にある回転軸を駆動して前下がり方向に回動させるとき、当該定位置にある回転軸の上側で水平に支持されているときの前記車体の前端位置よりも、回動する車体の前端位置が前方に張り出すことになるが、請求項1に記載の本発明の構成によれば、回動する車体の前端位置が前方に張り出す分だけ、前記可動台駆動手段を稼働させて回転軸の位置を搬送用走行体上で後方に移動させ、回動する車体が垂直姿勢から上下逆向き水平姿勢に向かって回動するときには、回転軸の位置を搬送用走行体上で前方に移動させて元の位置に戻し、更に回動する車体が上下逆向き水平姿勢から垂直姿勢に向かって上向きに回動するときは、回動する車体の前端位置が後方に張り出す分だけ、回転軸の位置を前記元位置から搬送用走行体上で前方に移動させ、回動する車体が垂直姿勢から元の水平支持姿勢に向かって回動する最終段階では、回転軸の位置を搬送用走行体上で後方に移動させて元の位置に戻すように、可動台を前後移動させることにより、搬送用走行体から見たときの車体の回動軌跡の前後方向の張り出しを殆ど無くすことができる。
【0009】
即ち、本発明の構成によれば、回転軸を支持する可動台を可動台駆動手段により回転軸(車体)の回転角の変化に従って前後移動させるだけで、搬送用走行体から見たときの車体の回動軌跡の前後方向の張り出しを殆ど無くすことができるので、従来のように、回動する車体が前後の搬送用走行体に支持されている車体と干渉するのを防止するために搬送用走行体間のピッチを車体の全長と比較して大幅に広げておかなければならないというような制約が無くなり、従って、搬送用走行体間のピッチを狭めて搬送効率を高めることができるばかりでなく、浸漬処理浴槽の全長も短くして、設備コスト、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0010】
尚、前記可動台駆動手段を請求項2に記載のように構成すれば、必須の回転軸駆動手段の駆動源を可動台往復動のための駆動源に兼用させることになるので、可動台駆動手段に専用のモーターなどの駆動源を必要とする場合と比較して、設備コスト及びランニングコストを一層低減することができる。この場合、請求項3に記載の構成によれば、回転アームの前後何れかに水平向きの長尺のリンクが必要となる構成と比較して、搬送用走行体の全長を、可動台の前後往復移動経路を確保できるだけの最小限に抑えることできる。
【0011】
勿論、前記可動台駆動手段を請求項4に記載のように構成することも可能であり、搬送用走行体上の構成をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示す一部縦断正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】浸漬処理浴槽を省いた側面図である。
【図4】可動台上の構成を示す側面図である。
【図5】図1の要部の拡大正面図である。
【図6】車体浸漬処理行程の第一段階を、浸漬処理浴槽を省いた状態で示す側面図である。
【図7】車体浸漬処理行程の第二段階を、浸漬処理浴槽を省いた状態で示す側面図である。
【図8】車体浸漬処理行程の第三段階を、浸漬処理浴槽を省いた状態で示す側面図である。
【図9】A図〜D図は、車体浸漬処理全行程における車体の回動軌跡を説明する概略側面図である。
【図10】A図は回転軸を前後移動させないときの車体の回動軌跡を示す概略側面図、B図は回転軸を前後移動させたときの車体の回動軌跡を示す概略側面図である。
【図11】A図は回転軸を前後移動させないときの浸漬処理浴槽に対する車体の移動軌跡を説明する概略側面図、B図は回転軸を前後移動させたときの浸漬処理浴槽に対する車体の移動軌跡を説明する概略側面図である。
【図12】本発明の他の実施例を示す、浸漬処理浴槽を省いた側面図である。
【図13】本発明一実施例の搬送用走行体の変形例を示す要部の正面図である。
【図14】同上搬送用走行体の拡大正面図である。
【図15】同上搬送用走行体の要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図5に基づいて本発明の一実施例を説明すると、1は搬送用走行体、2は浸漬処理浴槽であって、搬送用走行体1の走行経路に沿って配設されている。搬送用走行体1は、その走行経路に敷設された1本のガイドレール3に係合する前後一対の台車4a,4bを前後両端下側に備えたもので、上側には可動台5を備えている。前後両台車4a,4bは、搬送用走行体1に対して垂直軸心の周りに回転自在に取り付けられ、図5に示すように、H形鋼を利用したガイドレール3の上側水平レール部上を転動する支持用車輪6と、ガイドレール3の垂直板部を挟む左右一対前後二組の垂直軸周りに回転自在な姿勢規制用ローラー7を備えており、前側の台車4aには、その支持用車輪6を回転駆動する減速機付きモーター8が設けられている。従って、台車4aの減速機付きモーター8を稼働させて支持用車輪6を回転駆動することにより、搬送用走行体1をガイドレール3に沿って前進走行させることができ、各台車4a,4bが搬送用走行体1に対して垂直軸心の周りに回転することにより、水平カーブ経路部も円滑に走行することができる。
【0014】
可動台5は、搬送用走行体1上にその走行方向と平行に敷設された左右一対のスライドガイドレール9a,9bに嵌合するスライドガイド10を底部四隅に備えており、搬送用走行体1の走行方向と平行に前後往復移動自在に支持されている。そしてこの可動台5の上側には、この搬送用走行体1の走行経路の横側方に配設されている浸漬処理浴槽2の上を横断する水平方向の回転軸11が一端に同心状に結合された駆動軸11aが、左右一対の軸受け12a,12bにより自転可能に支持されている。前記回転軸11の遊端部には、ガイドローラー13が取り付けられ、このガイドローラー13を介して回転軸11を水平に支持するためのガイドレール14が、浸漬処理浴槽2の搬送用走行体1の走行経路のある側とは反対側の外側に敷設されている。そして回転軸11の長さ方向の中央部、即ち、浸漬処理浴槽2の幅方向の中央部上方に位置する箇所には、被処理ワークである自動車の車体Wを、その長さ方向が搬送用走行体1の走行方向と平行になる向きに支持するワーク支持手段15が取り付けられている。このワーク支持手段15は、その詳細構造は図示していないが、従来周知のように、支持している車体Wを回転軸11の回転により当該回転軸11の周りに安全に回転させることができる状態に、車体Wを強固に固定できるものである。
【0015】
図4及び図5に示すように、前記回転軸11は、回転軸駆動手段16によって回転駆動される。この回転軸駆動手段16は、左右一対の軸受け12a,12bの中間位置において前記駆動軸11aに取り付けられた大径平歯車17、可動台5上に設置された減速機付きモーター18、及びこの減速機付きモーター18の出力軸に取り付けられて前記大径平歯車17に咬合する小径平歯車19から構成されている。
【0016】
前記可動台5は可動台駆動手段20によって前後方向に往復駆動される。この可動台駆動手段20は、前記駆動軸11aの遊端に直角に固着された回転アーム21と、この回転アーム21の1回転運動を搬送用走行体1に対する前記可動台5の1往復運動に変換する回転/直線往復動変換機構22によって構成されている。この回転/直線往復動変換機構22は、前記回転アーム21の回動軌跡の外側に隣接するように搬送用走行体1の側部に固着された垂直上下方向のガイドレール23と、前記回転アーム21の遊端側に取り付けられ且つ前記ガイドレール23に昇降自在に係合する昇降部材24とから構成されている。具体的には、前記ガイドレール23は回転アーム21側に凹溝部23aが位置する溝形材で構成され、前記昇降部材24は、駆動軸11aと平行な支軸24aで軸支されて前記ガイドレール23の凹溝部内に遊転昇降自在に嵌合するローラーから構成されている。尚、前記ガイドレール23は、回転アーム21が1回転したときに昇降部材(ローラー)24が上下両端から外れない上下方向長さを有するもので、その中間位置が、図2に示すように、搬送用走行体1の側辺との間に回転アーム21の回動空間25を形成する支持部材26により搬送用走行体1に取り付けられている。
【0017】
尚、図2及び図3に示すように、搬送用走行体1の前後両端には、それぞれ前後方向に所要長さ延出するバー27,28が突設され、前側バー27の前端上側には衝突防止用センサー27aが取り付けられ、後側バー28の後端上側には被検出部28aが取り付けられている。衝突防止用センサー27aは、搬送用走行体1が直前を走行する先行搬送用走行体1に一定距離以内に接近したときに、当該先行搬送用走行体1の後側バー28の被検出部28aの上に被さって当該被検出部28aを検出するものであり、この先行搬送用走行体1を検出した衝突防止用センサー27aを備えた後ろ側の搬送用走行体1が、その検出信号に基づいて減速・停止制御されることにより、前後に隣り合って走行する搬送用走行体1が異常接近するのを防止すると共に、停止している搬送用走行体1の後続の搬送用走行体1を一定間隔で自動停止させることができる。
【0018】
上記構成の走行型浸漬処理装置において、図3に示すように、被処理ワークである車体Wは、回転軸11の上側でワーク支持手段15により水平に、前端が走行方向側に位置する向きで支持される。このとき、回転アーム21は上向きの垂直姿勢にあって、その遊端の昇降部材(ローラー)24は、ガイドレール23の上端近傍位置に嵌合している。そして可動台5は、その前後往復移動範囲の略中央のホームポジションに位置している。
【0019】
かかる状態で、回転軸駆動手段16の減速機付きモーター18を稼働させ、駆動軸11aを介して回転軸11を、車体Wが前下がりに回転軸11の周りで回転する向きに回転させると、回転軸11と一体に回転する回転アーム21の回転に伴って、その遊端の昇降部材24がガイドレール23に沿って降下しながら可動台5が後方にスライドし、回転軸11(回転アーム21)が90度回転したとき、図6(図9A)に示すように、可動台5が後退限位置に達して、車体Wは下向きの倒立姿勢となる。そして回転軸11(回転アーム21)が180度回転したとき、図7(図9B)に示すように可動台5が前方にスライドして元のホームポジションに戻り、車体Wは上下逆向きの反転姿勢となる。このとき回転アーム21は下向きの垂直姿勢となり、その遊端の昇降部材(ローラー)24は、ガイドレール23の下端近傍位置に嵌合している。更に、回転軸11(回転アーム21)が270度回転したとき、図8(図9C)に示すように可動台5がホームポジションから前方にスライドして前進限位置に達し、車体Wは上向きの倒立姿勢となる。そして、回転軸11(回転アーム21)が360度回転して1回転を終了したとき、図6(図9D)に示すように、可動台5が後方にスライドしてホームポジションに戻り、車体Wは元の前向きの水平姿勢となる。
【0020】
上記のように回転軸11を1回転させて、当該回転軸11の周りに車体Wを1回転させると、車体Wは回転軸11と共に、搬送用走行体1に対しホームポジションを中心にして、車体Wの前端が下向きに回動するときは後方へスライドし、車体Wの前端が上向きに回動するときは前方へスライドするように、前後に1往復移動することになる。即ち、図10Aに示すように、回転軸11が搬送用走行体1に対して前後往復移動しないで定位置で回転する場合と比較して、図10Bに示すように、回転軸11から最も離れた車体位置での回動軌跡が縦長となり、前後の張り出しが小さく抑えられることになる。従って、搬送用走行体1間のピッチを、隣り合う搬送用走行体1上の車体Wが如何なるタイミングで回転しても車体どうしが接触する恐れがないように、換言すれば、各搬送用走行体1上での車体Wの回転軌跡が互いに重ならないで前後に安全間隔を保って離れているように設定した場合、図10Aに示す従来の搬送用走行体1間のピッチP1に対して、本発明装置では、図10Bに示すように搬送用走行体1間のピッチP2を狭めることができる。
【0021】
従って、図11に示すように、車体Wを回転軸11の上側で前向き水平に支持している搬送用走行体1が、当該搬送用走行体1の走行により浸漬処理浴槽2の上側領域の始端部に達した時点から、上記のように回転軸11を回転駆動することにより、搬送用走行体1と一体に前進移動している車体Wを、回転軸11の周りの1回転中に浸漬処理浴槽2内の処理液中に浸漬処理することができるのであるが、上記のように搬送用走行体1間のピッチP2を狭めることができるので、例えば図示のように、浸漬処理浴槽2の始端部へ車体Wが下方に回転して浸漬処理が開始され、当該車体Wが図7(図9B)に示すように上下逆向きに反転した姿勢で、例えば搬送用走行体1間のピッチの2倍半程度進んだ後、浸漬処理浴槽2の終端部から浸漬処理済みの車体Wが上方に回転して処理液中から退出するように、浸漬処理浴槽2の長さを設定して走行型浸漬処理装置を構成した場合、図11Aに示すように、従来のピッチP1で搬送用走行体が連続走行しているときに必要な浸漬処理浴槽2の全長に対して、短いピッチP2で搬送用走行体1が連続走行しているときに必要な浸漬処理浴槽2の全長を短くすることができる。尚、搬送用走行体1の走行速度が同一である場合、全長の短い浸漬処理浴槽2を使用する構成では、車体Wが処理液中に浸漬処理されている時間が短くなるので、この車体Wが処理液中に浸漬処理されている時間を従来程度に長くするためには、搬送用走行体1の走行速度を低速にすれば良い。
【0022】
上記実施例では、回転軸11の回転力(回転軸駆動手段16の回転駆動力)を利用して、当該回転軸11を支持する可動台5を前後移動させるように構成しているが、図11に示すように、前記回転軸駆動手段16の減速機付きモーター18とは別のモーター29によって駆動される駆動用回動体30を備えた可動台駆動手段31により、可動台5を前後往復移動させるように構成することも可能である。図11に示す実施例では、前記駆動用回動体30は、可動台5の前後往復移動経路の両端外側の一方に軸支されて前記モーター29により回転駆動される回転体(歯輪やプーリーなど)30aと、可動台5の前後往復移動経路の両端外側の他方に軸支された回転体(歯輪やプーリーなど)30bとの間に掛張され、且つ可動台5に一部が係止された巻掛け回動体(チエンやベルト、ワイヤーロープなど)を利用しているが、可動台5の前後往復移動経路に沿って搬送用走行体1側に敷設されたラックギヤに咬合するように可動台5上に軸支され且つモーター駆動されるピニオンギヤを、駆動用回動体として利用することもできる。更に、このラックギヤとピニオンギヤを利用する可動台駆動手段の場合、ピニオンギヤを搬送用走行体1側の定位置に軸支し、ラックギヤを可動台5側に固定することもできる。
【0023】
上記のような可動台駆動手段31を使用する場合も、先の実施例の可動台駆動手段20を使用して可動台5を前後往復移動させたときと同様に、回転軸11の回転角の変化に伴って可動台5の移動方向の切換えと速度変化を実現させるように、モーター29を制御することにより、図9に示したように、回転軸11の回転により車体Wを当該回転軸11の周りに1回転させたとき、車体Wは回転軸11と共に、搬送用走行体1に対しホームポジションを中心にして、車体Wの前端が下向きに回動するときは後方へスライドし、車体Wの前端が上向きに回動するときは前方へスライドするように、前後に1往復移動することになり、図10Bに示すように、回転軸11から最も離れた車体位置での回動軌跡が縦長となって、前後の張り出しを小さく抑えることができる。
【0024】
搬送用走行体1の構成は、上記一実施例のものに限定されない。例えば、上記実施例の構成では、回転軸11を両端支持構造とするために、回転軸11の遊端に軸支したガイドローラー13をガイドレール14で支持させたが、ガイドレール14に係合して走行する台車を設け、この台車上に回転軸11の遊端部を軸受けで支承させるように構成しても良い。又、搬送用走行体の構成によっては、回転軸11をこの搬送用走行体側でのみ片持ち状に支持させることもできる。
【0025】
図13〜図15は、回転軸11を片持ち状に支持する搬送用走行体32の一例を示している。この搬送用走行体32は、内側(浸漬処理浴槽に近い側)の第一ガイドレール33に係合支持される前後一対の台車34a,34bと、外側の第二ガイドレール35に係合支持される前後一対の台車36a,36bを備えている。内側の前後一対の台車34a,34bは、それぞれ垂直支軸37の周りに回転可能に搬送用走行体32の底部に支持されると共に、第一ガイドレール33の上側水平レール部上を転動する支持用車輪38と、第一ガイドレール33を挟む左右一対前後二組の垂直軸周りに回転自在な姿勢規制用ローラー39を備えており、前側の台車34aには、その支持用車輪38を回転駆動する減速機付きモーター40が設けられている。外側の台車36a,36bは、搬送用走行体32の底部にスライドガイドレール41を介して左右横方向に横動自在に設けられた前後一対の横動台42にそれぞれ垂直支軸43の周りに回転可能に支持されたもので、それぞれ第二ガイドレール35の上側水平レール部上を転動する支持用車輪44と、当該第二ガイドレール35の下側水平レール部の下側面に当接して転動するバックアップ車輪45、第二ガイドレール35の上側水平レール部を挟む左右一対前後二組の垂直軸周りに回転自在な姿勢規制用ローラー46、及び第二ガイドレール35の下側水平レール部を挟む左右一対前後二組の垂直軸周りに回転自在な姿勢規制用ローラー47を備えている。
【0026】
上記構成の搬送用走行体32は、第一ガイドレール33及び第二ガイドレール35によって安定的に自立して支持されるものでありながら、全ての台車34a,34b,36a,36bが垂直支軸37,43の周りに回転可能であることと、外側の台車36a,36bが横動台42により左右横方向に横動可能であることにより、第一ガイドレール33及び第二ガイドレール35が水平にカーブする水平カーブ経路部においても円滑に走行することができる。従って、先の実施例のように、この搬送用走行体32上にスライドガイドレール9a,9bとスライドガイド10とを介して支持させた可動台5上に、回転軸11を片持ち状に支持させることができる。このときに回転軸11に作用する車体Wの重量によって搬送用走行体32に作用する、第一ガイドレール35と内側の台車34a,34bの支持用車輪38との接点を支点とする転倒モーメントは、外側の台車36a,36bのバックアップ車輪45を介して第二ガイドレール35によって受け止められ、回転軸11は水平姿勢を保って搬送用走行体32と一体に移動することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の走行型浸漬処理装置は、自動車の車体の塗装システムにおいて、搬送用走行体の上で前向き水平に支持した車体を、搬送させながら被処理液中に回転させて浸漬処理する手段として活用することができる。
【符号の説明】
【0028】
W 自動車の車体(被処理ワーク)
1,32 搬送用走行体
2 浸漬処理浴槽
3,33,35 ガイドレール
4a,4b,34a,34b,36a,36b 台車
5 可動台
6,38,44 支持用車輪
7,39,46,47 姿勢規制用ローラー
8,18,40 減速機付きモーター
9a,9b,14 スライドガイドレール
10 スライドガイド
11 回転軸
11a 駆動軸
12a,12b 軸受け
13 ガイドローラー
15 ワーク支持手段
16 回転軸駆動手段
17 大径平歯車
19 小径平歯車
20,31 可動台駆動手段
21 回転アーム
22 回転/直線往復動変換機構
23 ガイドレール
23a 凹溝部
24 昇降部材(ローラー)
26 支持部材
29 モーター
30 駆動用回動体(チエン、ベルト、ワイヤーロープなど)
42 横動台
45 バックアップ車輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬処理浴槽に沿って走行する搬送用走行体に、前記浸漬処理浴槽上を水平に横断する回転軸と当該回転軸を回転駆動する回転軸駆動手段を設け、前記回転軸にワーク支持手段を設け、このワーク支持手段に支持された被処理ワークを前記回転軸の回転により浸漬処理浴槽内に浸漬できるようにした走行型浸漬処理装置において、搬送用走行体上に、当該搬送用走行体の走行方向の前後に往復移動自在な可動台が設けられ、この可動台に前記回転軸が支持され、前記可動台を搬送用走行体に対して前後往復移動させる可動台駆動手段が設けられている、走行型浸漬処理装置。
【請求項2】
前記可動台駆動手段は、前記可動台上に支持され且つ前記回転軸と平行な水平軸心の周りで当該回転軸に連動して回転する回転アームと、この回転アームの1回転運動を搬送用走行体に対する前記可動台の1往復運動に変換する回転/直線往復動変換機構とから構成されている、請求項1に記載の走行型浸漬処理装置。
【請求項3】
前記回転/直線往復動変換機構は、前記回転アームに隣り合うように前記搬送用走行体に垂直上下方向に取り付けられたガイドレールと、前記回転アームの遊端側に取り付けられ且つ前記ガイドレールに昇降自在に係合する昇降部材とから構成されている、請求項2に記載の走行型浸漬処理装置。
【請求項4】
前記可動台駆動手段は、前記回転軸駆動手段のモーターとは別のモーターによって駆動される駆動用回動体を備えている、請求項1に記載の走行型浸漬処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−16642(P2012−16642A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154020(P2010−154020)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】