説明

走行型芝刈機

【課題】走行機体2に装着のモア装置8で刈り取った刈取草を前記集草ボックス10内に導くための排出ダクト12の底面を,はね上げ回動式の底面板18,19に構成し,この底面板を,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢から刈取草の放出姿勢に切り換え作動したときに上ねきにはね上げ回動するように構成した場合に,前記集草ボックスが刈取草の受け入れ姿勢の状態にあるときに前記底面板の上面に堆積する刈取草を簡単を操作で除去する。
【解決手段】
前記走行機体に回動式の手動操作レバー31を設け,この手動操作レバーにより前記排気ダクトにおける底面板18,19を,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢に保持した状態のままで,上向きにはね上げ回動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,走行機体に,地面に植立する芝草を刈り取るためのモア装置を装着して成る走行型の芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,この種の走行型芝刈機においては,従来から良く知られているように,走行機体に,少なくとも地面に植立する芝草を刈り取るためのモア装置と,集草ボックスと,排出ダクトとを備えて成り,前記集草ボックスを,前記モア装置における刈取草を前記排出ダクトを介して受け入れる姿勢と,その内部に受け入れた刈取草を当該集草ボックス内から放出する姿勢とに選択的に切り換え作動する構成にしている。
【0003】
先行技術としての特許文献1は,前記した走行型芝刈機において,その排出ダクトの底面板を,当該底面板のうち集草ボックス側の端部を中心にしてはね上げ回動するように構成し,この底面板を前記集草ボックスに連動連結することにより,当該集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢にしたとき前記底面板が前向きに倒れ回動することにより,刈取草を集草ボックス内に受け入れるようにガイドし,集草ボックスを刈取草の放出姿勢にしたとき前記底面板が上向きにはね上げ回動して,刈取草を前記集草ボックス内に受け入れることなく地面に散布するようにガイドするという構成にすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−238799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1は,その排出ダクトの底面板を前記集草ボックスに連動連結して,この底面板における上向きへのはね上げ回動を,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢から刈取草の放出姿勢にしたときに限って行なうという構成であることにより,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢した状態で,前記底面板の上面に刈取草が堆積するとか刈取草の詰まりが発生した場合,この堆積とか詰まり等を解消するために前記底面板を上向きへのはね上げ回動するに際しては,その都度,前記集草ボックスを刈取草の放出姿勢に切り換え作動することが必要で,操作が面倒であるばかりか,前記集草ボックス内に折角溜めた刈取草を放出するという事態を招来し,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢にしたままで,前記底面板の上面における刈取草の堆積とか詰まり等を解消することができないという問題があった。
【0006】
本発明は,この問題を解消した芝刈機を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「走行機体に,モア装置と集草ボックスとを備えるとともに,前記モア装置における刈取草を前記集草ボックス内に導く排出ダクトを備え,前記集草ボックスを,刈取草の受け入れ姿勢と受け入れた刈取草の放出姿勢とに切り換え作動するように構成する一方,前記排出ダクトの底面板を,その集草ボックス側の端部を中心にしてはね上げ回動可能に構成し,この底面板と前記集積ボックスとを,集草ボックスを放出姿勢にしたとき底面板が上向きにはね上げ回動するように連動して成る走行型芝刈機において,
前記走行機体に回動式の手動操作レバーを設け,この手動操作レバーにより前記排気ダクトにおける底面板を,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢に保持した状態のままで,上向きにはね上げ回動するように構成した。」
ことを特徴としている。
【0008】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記手動操作レバーを,前記集草ボックスにおける放出姿勢への切り換え作動では回動しないように構成した。」
ことを特徴としている。
【0009】
また,請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記手動操作レバーの先端部を,走行機体に対して内向きに曲げた。」
ことを特徴としている。
【0010】
更にまた,請求項4は,
「前記請求項1〜3のいずれかの記載において,走行機体に,前記排気ダクトにおける底面板に連動して回動する簡易レバーを設けた。」
ことを特徴している。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によると,手動操作レバーを操作することにより,排気ダクトにおける底面板を,集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢にしたままの状態で上向きにはね上げ回動することができる。
【0012】
これにより,刈取草を集草ボックスに受け入れる作業中に,排出ダクトにおける底面板の上面に刈取草が堆積又は詰まった場合に,この底面板の上面に堆積又は詰まった刈取草は,前記底面板を前記手動操作レバーの手動操作にて上向きにはね上げ回動することによって,前記集草ボックスへの刈取草の受け入れを継続しながら,前記底面板の上面における刈取草の堆積とか詰まり等を解消することができる。
【0013】
特に,請求項2によると,前記手動操作レバーは,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢から刈取草の放出姿勢に切り換え作動した場合に,これに連動して回動することがないので,前記手動操作レバーが前記集草ボックスの切り換え作動に連動して回動することによって作業者に危険性を及ぼすことを確実に回避でき,安全性を確保できる。
【0014】
また,請求項3によると,前記手動操作レバーの先端部に,作業者等の他物が引っ掛かるおそれを大幅に低減できて,安全性をより向上できる。
【0015】
更にまた,請求項4によると,簡易レバーの回動位置によって,前記底面板が倒れ回動した位置にあるか,上向きにはね上げ回動した位置にあるか否かを確認することができるほか,この簡易レバーの回動操作によっても,前記底面板の上向きへのはね上げ回動を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】走行型芝刈機の側面図である。
【図2】走行型芝刈機の平面図である。
【図3】図2のIII −III 視拡大断面図である。
【図4】図3のIV−IV視平断面図である。
【図5】図3のV−V視断面図である。
【図6】図3のVI−VI視断面図である。
【図7】図4のVII −VII 視拡大断面図である。
【図8】図7の作動状態を示す図である。
【図9】図3のIX−IX視拡大断面図である。
【図10】図9のX−X視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明における実施の形態を,図1〜図10の図面について説明する。
【0018】
これらの図面は,走行型芝刈機1を示している。
【0019】
この走行型芝刈機1は,左右の前輪3及び後輪4にて支持されて走行する走行機体2を備え,この走行機体2は,その上面に前から順番にエンジン5,操縦ハンドル6及び操縦座席7が設けられ,前記前輪3及び後輪4のうちいずれか一方又は両方を前記エンジン5にて回転駆動することにより,適宜速度で走行するように構成されている。
【0020】
また,前記走行機体2のうち前記前輪3と前記後輪4との間には,前記エンジン5からの動力伝達にて駆動されるモア装置8が配設され,このモア装置8は,前記走行機体2に昇降用リンク機構9により,地面32に対して一定の姿勢を保った状態で,後方に向かって斜め上向きの傾斜に沿って昇降動するように吊設されている。
【0021】
一方,前記走行機体2のうち前記後輪4よりも後部には,集草ボックス10が,後方に向かってはね上げ回動するように横ピン軸11にて枢着されている。
【0022】
更にまた,前記走行機体2における下面には,前記モア装置8で刈り取った刈取草を前記集草ボックス10内に導くための排出ダクト12が,前記両後輪4の間を後方に延びるように設けられている。
【0023】
前記集草ボックス10は,前記走行機体2に対して横ピン軸11にて自在に回動するように装着されており,図1に実線で示す位置にあるとき,つまり,前記排出ダクト12に接続された状態にあるときには,その内部に,前記排出ダクト12から後方に放出される刈取草を受け入れ,そして,受け入れた刈取草が所定量になると,二点鎖線で示すように,前記横ピン軸11を中心にして,前記排出ダクト12から離れるように後方にはね上げ回動することにより,その内部に溜めた刈取草を放出するという構成になっている。
【0024】
前記集草ボックス10を刈取草の受け入れ姿勢と地面への放出姿勢とに選択的に切り換えることは,前記走行機体2に設けた油圧シリンダ34を,同じく前記走行機体2に設けた姿勢レバー33によって切り換え作動することによって行なうように構成している。
【0025】
すなわち,前記横ピン軸11から一体に突出するアーム35の先端に,前記油圧シリンダ34におけるピストン杆34aを枢着ピン36にて連結することにより,前記集草ボックス10を刈取草の地面への放出姿勢とするようにはね上げ回動することを,前記油圧シリンダ34におけるピストン杆34aの突出動にて行なう一方,前記集草ボックス10を刈取草の受け入れ姿勢に戻すことを,前記油圧シリンダ34におけるピストン杆34aの後退動にて行なうように構成している。
【0026】
この場合,前記横ピン軸11には,略扇形にした面板37が回転自在に被嵌されており,この面板37には,前記横ピン軸11を中心とする円弧状にした長溝孔38が設けられ,この長溝孔38には,前記油圧シリンダ34におけるピストン杆34aの先端の枢着ピン36が摺動自在に嵌まっていいる。
【0027】
前記排出ダクト12は,天井板13と,この天井板13の左右両側から垂下する左右一対の側面板14a,14bとによって,底を開放した下向きのコ字状断面に構成されている。
【0028】
また,前記排出ダクト12における両側面板14a,14bの内側のうち前記モア装置8側の部分には,前記両側面板14a,14bと平行にした可動式の内側面板15a,15bが,前記モア装置8における刈取草排出口8aに向かって延びるように配設され,この両内側面板15a,15bのうち前記集草ボックス10側の基端部(後端部)は,前記排出ダクト12における両側面板14a,14bに,ピン16a,16bにて回転自在に枢着されている一方,前記両内側面板15a,15bのうち前記モア装置8側の先端部(前端部)は,前記モア装置8に対する昇降リンク機構9にリンク17a,17bを介して連結されている。
【0029】
前記排出ダクト12の底面は,前記集草ボックス10側に位置する出口側底面板18と,前記モア装置8側に位置する入口側底面板19とで塞ぐように構成されている。
【0030】
前記出口側底面板18は,当該出口側底面板18のうち集草ボックス10側の基端部(後端部)を前記排出ダクト12の後端下部に軸支した横軸20に固着することにより,前記横軸20の回動にて上向きにはね上げ回動するように取付けられている。
【0031】
前記横軸20は,前記集草ボックス10における前記面板37に,連杆21を介して連結されており,これにより,前記出口側底面板18は,前記集草ボックス10が図1に実線で示す刈取草の受け入れ姿勢にあるときには,図3に実線で示すように,前向きに倒れた姿勢になっているが,前記集草ボックス10が図1に二点鎖線で示す刈取草の放出姿勢になる直前において,前記油圧シリンダ34におけるピストン杆34aの先端の枢着ピン36が前記面板37の長溝孔38における終端38aに至り,前記面板37が後方上向きの反時計方向に回動すると,これに連動して,図3に二点鎖線で示すように,上向きにはね上げ回動するように構成されている。
【0032】
また,前記集草ボックス10が図1に実線で示す刈取草の受け入れ姿勢にあるとき,前記油圧シリンダ34におけるピストン杆34aの先端の枢着ピン36は,図3に示すように,前記面板37の長溝孔38のうち中程の部位に位置していることにより,この状態において前記出口側底面板18は,前記集草ボックス10の姿勢とは無関係に,前向きに倒れた姿勢から上向きにはね上げ回動できるとともに,その逆方向に回動できるという構成になっている。
【0033】
一方,前記入口側底面板19は,当該入口側底面板19のうち前記集草ボックス10側の基端部(後端部)を前記両内側面板15a,15bにピン22にて回転自在に枢着することにより,上向きにはね上げ回動するように構成されている。
【0034】
前記入口側底面板19のうち前記モア装置8側の先端部(前端部)19aは,前方のモア装置8に向かって斜め下向きの傾斜に折り曲げられ,そして,この先端部19aは,前記モア装置8における刈取草排出口8aの内部における底部に差し込お挿入されており,その先端部19aの下面に設けたカム23が前記刈取草排出口8aの底部に設けた横バー式の支持部材24に載っている。
【0035】
これにより,前記入口側底面板19は,前記モア装置8側における前記支持部材24にて,前後方向に自在に移動するように支持されており,この状態から上向きにはね上げ回動する。
【0036】
一方,前記モア装置8が,その昇降用リンク機構9にて斜め後方に向かって地面32から離れるように上昇動すると,当該モア装置8と,前記両内側面板15a,15b,ひいては,前記入口側底面板19とが互いに接近動することにより,前記入口側底面板19の先端部19aにおける前記刈取草排出口8a内への差し込み寸法(L)が,前記モア装置8の上昇動につれて,図7及び図8に示すように,最下降位置の(L1)から上昇位置の(L2)に大きくなるという構成になっている。
【0037】
この場合,前記モア装置8における刈取草排出口8aの底部に設けた支持部材24には,前記モア装置8が最下降位置にあるときには,図7に示すように,前記入口側底面板19における先端19aの下面に設けたカム23における平面23aが載る状態にあるが,前記モア装置8が地面32から離れるように上昇動したときには,図8に示すように,前記カム23における傾斜面23bが載る状態になるという構成になっている。
【0038】
前記出口側底面板18のうち前記モア装置8側の先端部(前端部)は,当該出口側底面板18が前向きに倒れた姿勢にあるとき,前記入口側底面板19のうち前記集草ボックス10側の基端部(後端部)に設けたストッパー片25a,25bに載った状態に支持されており,この状態からはね上げ回動する。
【0039】
そして,前記出口側底面板18及び前記入口側底面板19における左右両側面と,前記排出ダクト12における両側面板14a,14b及び両内側面板15a,15bとの間の各々には,隙間26a,26bが前後方向に延びるように形成され,この隙間26a,26b内には,帯状板にて構成したリンク杆27a,27bが,前記出口側底面板18及び前記入口側底面板19における左右両側面と平行に延びるように配設されている。
【0040】
前記両リンク杆27a,27bのうち前記集草ボックス10側の基端(後端)は,前記出口側底面板18のうち中程部の側面にピン28a,28bにて回動自在に枢着されている。
【0041】
一方,前記両リンク杆27a,27bのうち前記モア装置8側の先端(前端)は,前記入口側底面板19のうち中程部の側面にピン29a,29bにて回動自在に枢着されており,これにより,前記出口側底面板18がはね上げ回動するとこれに連動して前記入口側底面板19がはね上げ回動し,前記出口側底面板18が前向きに倒れ回動するとこれに連動して前記入口側底面板19が前向きに倒れ回動するように構成されている。
【0042】
また,前記入口側底面板19と前記両リンク杆27a,27bとを連結する枢着ピン29a,29bが嵌まるピン孔29a′,29b′を,図7及び図8に示すように,長溝孔にすることにより,前記入口側底面板19が,前記モア装置8の昇降動に連動して上下回動することを許容するという構成にしている。
【0043】
なお,前記出口側底面板18及び前記入口側底面板19とを連結するリンク杆は,これらにおける左右両側面の両方に設けることに限らず,前記出口側底面板18及び前記入口側底面板19における左右両側面のうち一方の側面にのみ設けるという構成にできる。
【0044】
この構成において,前記集草ボックス10が,図1に実線で示す刈取草の受け入れ姿勢にあるとき,前記排出ダクト12の底面を形成する入口側底面板19及び出口側底面板18は,リンク杆27a,27bを介して互いに連動しながら,同時に前向きに倒れ回動した姿勢になっているから,前記モア装置8において刈り取った刈取草は,前記入口側底面板19及び出口側底面板18の上面を後方に流れて,前記集草ボックス10に受け入れられることになる。
【0045】
次に,前記集草ボックス10を,前記油圧シリンダ34により,図1に二点鎖線で示す刈取草の放出姿勢にする場合,その放出姿勢の直前において,前記油圧シリンダ34のピストン杆34a先端の枢着ピン36が前記面板37の長溝孔38における終端38aに至り,前記面板37が後方上向きの反時計方向に回動することにより,これに連杆21を介して連動している前記入口側底面板19及び出口側底面板18が,リンク杆27a,27bを介して互いに連動しながら,同時に上向きにはね上げ回動する。
【0046】
これにより,前記モア装置8において刈り取った刈取草は,前記集草ボックス10に入ることなく,前記排出ダクト12の底から地面32に直接に放出されることになる。
【0047】
前記出口側底面板18と前記入口側底面板19との相互間を連結する前記リンク杆27a,27bは,前記出口側底面板18及び入口側底面板19の側面と,前記排出ダクト12における左右側面板14a,14b及び左右両内側面15a,15bとの間に形成した隙間26a,26b内に配設されていることにより,前記入口側底面板19及び出口側底面板18の上面における刈取草の流れを妨げることはなく,換言すると,前記入口側底面板19及び出口側底面板18の上面には刈取草が引っ掛かるものは存在しないから,刈取草の後方への流れが円滑になる。
【0048】
そして,前記リンク杆27a,27bは,平面視(図4)において,前記隙間26a,26bを,その略全長にわたって塞ぐという構成になっている。
【0049】
これにより,前記入口側底面板19及び出口側底面板18の上面を流れる刈取草が,前記隙間26a,26bから零れ落ちることを,前記リンク杆27a,27bによって確実に阻止することができる。
【0050】
図示の実施の形態においては,前記リンク杆27a,27bを,その上端縁に外向きへの折り曲げ片27a′,27b′を設けて,く字状の断面に構成することに加えて,このリンク杆27a,27bの基端に,前記出口側底面板18への枢着ピン28a,28bより後方への延長部27a″,27b″を設けることにより,前記隙間26a,26bをその略全長にわたって塞ぐという構成にしている。
【0051】
この図示の実施の形態によると,前記リンク杆27a,27bをく字状断面に構成したことにより,強度を向上しながら軽量化できる利点がある。
【0052】
また,他の実施の形態においては,図示以外の構成にて,前記隙間26a,26bをその略全長にわたって塞ぐように構成することもできる。
【0053】
前記入口側底面板19のうち前記モア装置8側の先端部(前端部)19aは,斜め下向きの傾斜に折り曲げられた上でモア装置8における刈取草排出口8a内の底部に差し込み挿入されており,この状態で前記モア装置8の上昇動に連動して,その間に高さ位置の相対的なずれを生じることなく,換言すると,前記モア装置8と一定の高さ位置を保持したままで上下動する。
【0054】
これにより,前記モア装置8における刈取草排出口8aから排出される刈取草を,前記モア装置8の昇降動にかかわらず,換言すると,前記モア装置8がどのような高さ位置にあっても,前記排出ダクト12内に前記入口側底面板19を介して零すことなく確実に受け継ぐことができる。
【0055】
そして,前記入口側底面板19は,前記モア装置8を上昇動したとき,その下面に設けたカム23における平面23aが支持部材24に載る状態から,図8に示すように,前記カム23における傾斜面23bが支持部材24に載る状態に移動することにより,その先端部19aを斜め下向きに傾斜する姿勢に保持することができるから,刈取草を排出ダクト12内に受け継ぐことができる。
【0056】
すなわち,前記カム23を,平面23aのみを有し,傾斜面23bを有しない構成にした場合,前記モア装置8の上昇動による前記入口側底面板19の上向きへの回動角度が,前記傾斜面23bを有する場合に比べて大きくなる。
【0057】
これにより,この入口側底面板19の先端部19aにおける斜め下向きの傾斜に折り曲げた部分が,前記モア装置8を上昇動するにつれて,次第に水平に近づくようになるから,前記モア装置8における刈取草の前記入口側底面板19による排出ダクト12内への受け継ぎ誘導性が低下することになる。
【0058】
これに対して,前記カム23に平面23aと傾斜面23bとの両方を設ける構成にした場合には,前記モア装置8の上昇動による前記入口側底面板19の上向きへの回動角度が,前記モア装置8側の支持部材24への前記カム23の接当が図8に示すように平面23aから傾斜面23bに移動する分だけ小さくなり,この入口側底面板19の先端部19aにおける斜め下向きの傾斜に折り曲げた部分が水平に近づくように小さくなる度合いを大幅に低減できるから,前記モア装置8における刈取草の前記入口側底面板19による排出ダクト12内への受け継ぎ誘導性を向上できる。
【0059】
そして,本発明の実施の形態においては,前記油圧切換操作レバー33とは別に(これに加えて),手動操作レバー31を,前記走行機体2における前記操縦座席7の右側の部位に前方に延びるように設けている。
【0060】
この手動操作レバー31は,以下に詳しく説明するように,これを手動にて上向きに回動操作することによって,前記出口側底面板18が,前記集草ボックス10を刈取草の受け入れ姿勢に保持した状態のままで,上向きにはね上げ回動するという構成になっている。
【0061】
すなわち,図9及び図10に示すように,前記走行機体2の右側における後部に,横向きに延びるレバー軸39を,一対の軸受け部40により,その軸線の回りに自在に回転するように軸支して,このレバー軸39に,前記手動操作レバー31の基端を固着するとともに,中空軸41を回転自在に被嵌する。この中空軸41は,後述する構成にしたことで,前記両底面板18,19における重量により,常時反時計方向に回転するように付勢さする構成にするか,或いは,図示していないが,この中空軸41に,当該中空軸41を常時反時計方向に回転するように付勢するばね手段を設ける構成にしている。
【0062】
前記中空軸41の一端(内端)から突出するアーム42の先端と,前記出口側底面板18の基端における横軸20から突出するアーム43との間をリンク杆44にて連結することにより,前記中空軸41における時計方向への回転にて,前記両底面板18,19が上向きにはね上げ回動し,前記中空軸41における反時計方向への回転にて,前記両底面板18,19が前向きに倒れ回動する構成にする。
【0063】
この場合,前記前記集草ボックス10が刈取草の受け入れ姿勢あるとき,油圧シリンダ34におけるピストン杆34aの先端の枢着ピン36は,図3に示すように,前記面板37の長溝孔38のうち中程の部位に位置していることにより,前記集草ボックス10は,前記中空軸41の時計方向への回転では回動することはなく,刈取草の受け入れ姿勢に保持される。
【0064】
一方,前記手動操作レバー31の基端部にはストッパー片45を固着し,このストッパー片45を,前記中空軸41の他端(外端)から突出するアーム片46に,前記手動操作レバー31を上向きに回動すると前記中空軸41が前記両底面板18,19の重量又はそのばね手段に抗して時計方向に回転するように接当する構成にし,更に,前記アーム片46に,簡易レバー30を設けており,この簡易レバー30は,前記手動操作レバー31よりも内側(走行機体2側)に位置している。
【0065】
この構成において,手動操作レバー31を操作することにより,前記中空軸41が前記両底面板18,19の重量又はそのばね手段に抗して時計方向に回転するから,排気ダクト12における両底面板18,19は,集草ボックス10を刈取草の受け入れ姿勢にしたままの状態で,上向きにはね上げ回動されることになる。
【0066】
これにより,刈取草を集草ボックス10に受け入れる作業中に,排出ダクト12における両底面板18,19の上面に刈取草が堆積又は詰まった場合に,この両底面板18,19の上面に堆積又は詰まった刈取草は,前記両底面板18,19を前記手動操作レバー31の手動操作にて上向きにはね上げ回動することによって,前記集草ボックス10への刈取草の受け入れを継続しながら,前記両底面板18,19の上面における刈取草の堆積とか詰まり等を解消することができる。
【0067】
前記刈取草の堆積とか詰まり等を解消すると,前記手動操作レバー31を下向きに回動操作することにより,前記中空軸41は,前記両底面板18,19の重量又はそのばね手段にて反時計方向に回転するから,前記両底面板18,19は,前方に倒れるように回動して,元の姿勢に戻ることにより,刈取草を集草ボックス10内に導くようにガイドする。
【0068】
また,前記手動操作レバー31よりも内側における簡易レバー30は,前記中空軸41に固着されていることにより,前記両底面板18,19と一緒に回動するから,この簡易レバー30における回動位置によって,前記両底面板18,19が倒れ回動した位置にあるか,上向きにはね上げ回動した位置にあるか否かを確認することができるほか,この簡易レバー30の手動による回動操作によっても,前記両底面板18,19の上向きへのはね上げ回動を行なうことができる。
【0069】
なお,前記した実施の形態は,排出ダクト12の底面を,入口側底面板19と出口側底面板18との二枚にして,この間を連結することにより,同時にはね上げ回動及び倒れ回動する構成にした場合であったが,本発明は,これに限らず,一枚の底面板の構成にできることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1 芝刈機
2 走行機体
3 前輪
4 後輪
5 エンジン
8 モア装置
8a モア装置の刈取草排出口
9 モア装置の昇降用リンク機構
10 集草ボックス
12 排出ダクト
13 排出ダクトの天井板
14a,14b 排出ダクトの側面板
18 出口側底面板
19 入口側底面板
20 横軸
26a,26b 隙間
27a,27b リンク杆
30 簡易レバー
31 手動操作レバー
39 レバー軸
41 中空軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に,モア装置と集草ボックスとを備えるとともに,前記モア装置における刈取草を前記集草ボックス内に導く排出ダクトを備え,前記集草ボックスを,刈取草の受け入れ姿勢と受け入れた刈取草の放出姿勢とに切り換え作動するように構成する一方,前記排出ダクトの底面板を,その集草ボックス側の端部を中心にしてはね上げ回動可能に構成し,この底面板と前記集積ボックスとを,集草ボックスを放出姿勢にしたとき底面板が上向きにはね上げ回動するように連動して成る走行型芝刈機において,
前記走行機体に回動式の手動操作レバーを設け,この手動操作レバーにより前記排気ダクトにおける底面板を,前記集草ボックスを刈取草の受け入れ姿勢に保持した状態のままで,上向きにはね上げ回動するように構成したことを特徴とする走行型芝刈機。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記手動操作レバーを,前記集草ボックスにおける放出姿勢への切り換え作動では回動しないように構成したことを特徴とする走行型芝刈機。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記手動操作レバーの先端部を,走行機体に対して内向きに曲げたことを特徴とする走行型芝刈機。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかの記載において,走行機体に,前記排気ダクトにおける底面板に連動して回動する簡易レバーを設けたことを特徴とする走行型芝刈機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−155875(P2011−155875A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19106(P2010−19106)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】