説明

走行支援装置

【課題】周辺車両の存在に基づいて行う走行支援の処理負荷を軽減することができる走行支援装置を提供する。
【解決手段】周辺車両の存在に基づいて車両の走行を支援する走行支援装置であって、車両A1の進行方向及び周辺車両Bn、Cnの進行方向のそれぞれと交差点ノードXnを含む範囲の誤差エリアPnとが重なる場合には、周辺車両Bn、Cnを監視対象として運転支援に関する処理を実行する運転支援手段を備えることにより、車両の位置とリンクとをマッチングする処理を行うことなく運転支援に関する処理を開始できるので、交差点Knで衝突する可能性のある車両を簡易な処理で迅速に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行を支援する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行を支援する装置として、周辺車両との衝突を判定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の装置は、ノードを結合するリンクと車両位置とをマッチングさせるマップマッチング処理を行い、複数の交差点ノード群からなる特定の領域内を通過する車両との衝突判定を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−171269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の走行支援装置にあっては、衝突判定の前提としてマップマッチング処理を必ず行う必要がある。このため、処理対象の車両や交差点の数が多くなるとマップマッチング処理の処理負荷が増大し、衝突判定等の走行支援に関する処理が遅延するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、周辺車両の存在に基づいて行う走行支援の処理負荷を軽減することができる走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る走行支援装置は、周辺車両の存在に基づいて車両の走行を支援する走行支援装置であって、前記車両の進行方向及び前記周辺車両の進行方向のそれぞれと交差点ノードを含む範囲の所定領域とが重なる場合には、前記周辺車両を監視対象として運転支援に関する処理を実行する運転支援手段を備えて構成される。
【0007】
本発明に係る走行支援装置では、運転支援手段により、車両の進行方向及び周辺車両の進行方向のそれぞれと、交差点ノードを含む範囲の所定領域とが重なる場合には、周辺車両が監視対象として運転支援に関する処理が実行される。このように、車両及び周辺車両の進行方向のそれぞれが同一の所定領域と重なる場合には、当該交差点で交錯可能性があるものとして運転支援に関する処理を実行することができる。すなわち、車両の位置とリンクとをマッチングする処理を行うことなく運転支援に関する処理を開始できるので、交差点で衝突する可能性のある車両を簡易な処理で迅速に判断することができる。よって、走行支援に関する処理負荷の軽減化を図ることが可能となる。
【0008】
ここで、前記運転支援手段は、前記所定領域を設定する領域設定手段と、前記領域設定手段により設定された前記所定領域と前記車両の位置を起点とする前記車両の進行方向ベクトル及び前記周辺車両の位置を起点とする前記周辺車両の進行方向ベクトルのそれぞれとが重なるか否かを判定する交錯可能性判定手段とを備えてもよい。
【0009】
このように構成することで、領域設定手段により所定領域が設定され、交錯可能性判定手段により、車両の位置を起点とする車両の進行方向ベクトル及び周辺車両の位置を起点とする周辺車両の進行方向ベクトルのそれぞれと、所定領域とが重なるか否かが判定される。
【0010】
また、前記領域設定手段は、前記交差点ノードが複数存在する場合には、前記所定領域同士が重ならないように前記所定領域を設定することが好適である。このように構成することで、交差点ノードが複数存在する場合であっても、交差点での衝突可能性を簡易な処理で迅速に判断することができる。
【0011】
さらに、前記領域設定手段は、前記交差点ノードの交差点の道路形状に基づいて前記所定領域を設定することが好適である。このように構成することで、交差点内の全てを所定領域に含ませることができるので、交差点での交錯可能性を適切に判断することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周辺車両の存在に基づいて行う走行支援の処理負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る走行支援装置の支援対象となる走行場面を説明する概要図である。
【図2】実施形態に係る走行支援装置を備える車両の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る走行支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係る走行支援装置の動作を説明するための概要図である。
【図5】実施形態に係る走行支援装置の動作を説明するための概要図である。
【図6】実施形態に係る走行支援装置の動作を説明するための概要図である。
【図7】マップマッチング処理を説明するための概要図である。
【図8】従来の走行支援に関する処理を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施形態に係る走行支援装置は、周辺車両の存在に基づいて車両の走行を支援する装置であって、例えば都市部や工業団地等の道路環境のように、複数の交差点が規定距離以上で連続して存在する場合に好適に採用されるものである。
【0016】
最初に、本実施形態に係る走行支援装置による走行支援について説明する。図1は、本実施形態に係る走行支援装置の支援対象となる走行場面を説明する概要図である。本実施形態に係る走行支援装置は、例えば、図1に示すように、交差点Kn(n:整数)が存在する走行環境を複数の車両A1、B1、B2が走行する場面において、車両間の相対位置関係や相対位置関係の変化を取得して交差点Knでの衝突可能性を判定し、必要に応じて事故防止のための走行支援を行うものである。走行支援としては、運転者への注意喚起や情報提示、車両制御等が行われる。
【0017】
次に、本実施形態に係る走行支援装置を備える車両の構成について説明する。図2は、実施形態に係る走行支援装置を備える車両の構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る走行支援装置を備える車両は、車車間通信機20、GPS(Global Positioning System)システム21、地図DB22、車速センサ23、操作SW24、ECU(Electronic Control Unit)2及び報知装置30を備えている。ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random AccessMemory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0018】
車車間通信機20は、周辺車両との通信のインターフェイスとしての機能を有している。車車間通信機20は、周辺車両から受信した信号をECU2へ出力する機能、ECU2から入力した信号を周辺車両へ送信する機能を有している。
【0019】
GPSシステム21は、例えば、GPS受信機(不図示)によって受信されたGPS衛星信号に基づいて自車両の位置情報を検出する機能を有している。また、GPSシステム21は、検出した自車両の位置情報をECU2へ出力する機能を有している。
【0020】
地図DB22は、地図情報及び地図情報に関連付けされた情報が格納されたデータベースである。例えば、ノード情報やリンク情報等の地図情報、カーブ情報等の道路属性が格納されている。なお、地図DB22はECU2から参照可能に構成されている。
【0021】
車速センサ23は、自車両の速度を検出する機能を有している。車速センサ23は、例えば、車輪の回転を車輪速パルスとして検出する機能を有している。また、車速センサ23は、検出した自車両の車速をECU2へ出力する機能を有している。
【0022】
操作SW24は、運転者による車両操作を入力する操作部である。操作SW24として、例えば、ブレーキSW、ウィンカSW等が用いられる。また、操作SW24は、入力した操作信号をECU2へ出力する機能を有している。
【0023】
ECU2は、運転支援装置1として機能する制御部であって、通信制御部10、送受信信号処理部11、交錯可能性判定部12、運転支援演算部13及びHMI(human machine interface)制御部14を備えている。
【0024】
通信制御部10は、車車間通信機20を所定の通信方式に従って制御する機能を有している。例えば、車車間の通信方式として、CSMA方式を用いた常時同報通信方式が用いられる。この通信方式は、通信ごとに送受信間調停を実施せず、衝突回避ができたタイミングで機械的に送出される方式である。
【0025】
送受信信号処理部11は、送受信に必要な信号処理機能を有している。例えば、送受信信号処理部11は、自車両の車両位置情報や車両進行方向情報が含まれた送信情報に基づいて、通信可能なデータフォーマット等の変換処理を行って送信信号を生成する機能を有している。また、送受信信号処理部11は、受信信号に基づいて、周辺車両の車両位置情報や車両進行方向情報が含まれた受信情報を取得する機能を有している。
【0026】
交錯可能性判定部12は、所定の地域条件及び通信負荷条件を満たすか否かを判定する機能を有している。例えば、交錯可能性判定部12は、地図DB22を参照して、自車両周辺の交差点ノードを抽出する機能を有している。そして、交錯可能性判定部12は、自車両の周辺に存在する交差点が、1つ存在するか、又は、規定距離以上で連続して複数存在するという第1地域条件を満たすか否かを判定する機能を有している。規定距離として、例えば50m〜100m程度が用いられる。また、交錯可能性判定部12は、自車両周辺の領域において、交差点の形状がほぼ十字形状の3つ角又は4つ角で構成されているという第2地域条件を満たすか否かを判定する機能を有している。さらに、交錯可能性判定部12は、規定以上の通信頻度及び処理負荷が発生しているという通信負荷条件を満たすか否かを判定する機能を有している。規定以上の通信頻度が発生している場合は、例えば回線使用率が100%となる状態が所定期間続いた場合や遅延時間が発生した場合等であり、規定以上の処理負荷が発生している場合は、例えばCPUの使用率が100%となる状態が所定期間続いた場合等である。
【0027】
また、交錯可能性判定部12は、所定の地域条件及び通信負荷条件を満たす場合には、交差点ノードを含む範囲の所定領域(誤差エリア)を設定する機能を有している(領域設定手段)。例えば、交錯可能性判定部12は、交差点ノードの交差点の道路形状に基づいて誤差エリアを設定する機能を有している。また、交錯可能性判定部12は、自車両周辺に交差点ノードが複数存在する場合には、誤差エリア同士が重ならないように誤差エリアを設定する機能を有している。そして、交錯可能性判定部12は、設定した誤差エリアと、車両の進行方向(進行方向の延長直線)及び周辺車両の進行方向(進行方向の延長直線)のそれぞれとが重なる場合には、交錯可能性があると判定する機能を有している。すなわち、交錯可能性判定部12は、設定した誤差エリアと、自車両の位置を起点とする自車両の進行方向の方向ベクトル及び周辺車両の位置を起点とする周辺車両の進行方向の方向ベクトルのそれぞれとが重なるか否かを判定することによって、自車両と周辺車両とが交錯する可能性があるか否かを判定する機能を有している(交錯可能性判定手段)。
【0028】
運転支援演算部13は、基本的な機能として、GPSシステム21が出力した自車両の位置情報、送受信信号処理部11が出力した周辺車両の位置情報に基づいて、自車両と周辺車両との位置関係を把握し、交錯可能性を算出して運転支援内容を演算する機能を有している。例えば、GPSシステム21の位置精度によってはGPSシステム21が出力する自車両や周辺車両の走行位置が、建物、店舗、歩道等の走行不能地点となる場合がある。このため、運転支援演算部13は、車両の走行位置に最も近いノード(最短ノード)を探索する機能を有している。例えば、運転支援演算部13は、地図DB22を参照して得られた車両周囲のノードと、自車両及び周辺車両の走行位置とを比較して、各車両のそれぞれの最短ノードを探索する機能を有している。また、運転支援演算部13は、車両それぞれの進行方向に基づいて、当該車両の最短ノードに接続されたリンクのうち走行位置に最も近いリンクを特定する機能を有している(マップマッチング機能)。そして、運転支援演算部13は、実際の走行位置から特定されたリンクへ引き込む(すなわち、特定されたリンクに車両が存在することとする)機能を有している。そして、運転支援演算部13は、車両位置をリンクに引き込んだ処理後に、リンク上に存在する車両同士の衝突可能性について判定する機能を有している。例えば、運転支援演算部13は、自車両及び周辺車両の車速、車両位置、進行方向、交差点までの残距離や、操作SW24の操作情報等の車両走行データから予測される車両挙動を用いて、衝突判定を行う機能を有している。そして、運転支援演算部13は、衝突可能性がある場合には、衝突防止に必要な運転支援内容を演算する機能を有している。
【0029】
また、運転支援演算部13は、交錯可能性判定部12が出力した判定結果に基づいて、運転支援に関する処理を開始する機能を有している。例えば、交錯可能性判定部12により交錯可能性があると判定した場合には、当該車両に関してはマップマッチング処理を行わずに監視対象車両として衝突判定処理を実行し、衝突可能性がある場合には、衝突防止に必要な運転支援を演算する機能を有している(運転支援手段)。
【0030】
HMI制御部14は、車両が有する報知装置30の制御を行う機能を有している。例えば、HMI制御部14は、運転支援演算部13が算出した走行支援内容に基づいて、報知装置の動作等を制御して運転者への報知態様を変更したり、報知タイミングを制御したりする機能を有している。
【0031】
報知装置30は、HMI制御部14の制御に基づいて運転者に報知する機能を有している。報知装置30は、例えば、ディスプレイ31、スピーカ32及びブザー33を備えている。
【0032】
次に、本実施形態に係る走行支援装置1の動作を説明する。図3は、本実施形態に係る走行支援装置1の動作を説明するフローチャートである。図3に示す制御処理は、例えば、イグニッションONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
【0033】
最初に、走行支援装置1は、位置情報取得処理から開始する(S10)。S10の処理は、ECU2が実行し、GPSシステム21から自車両の位置情報を取得する処理である。S10の処理が終了すると、条件判定処理へ移行する(S12)。
【0034】
S12の処理は、交錯可能性判定部12が実行し、地域条件及び通信負荷条件を満たすか否かを判定する処理である。交錯可能性判定部12は、例えば、GPSシステム21が出力した自車両の位置情報と、地図DB22を参照して得られた自車両周辺の道路情報とに基づいて、自車両の周辺に1つの交差点のみが存在するか、又は、自車両の周辺に複数の交差点が存在し、その交差点間が規定距離以上離れているという第1地域条件を満たしているか否かを判定する。また、交錯可能性判定部12は、交差点形状が3つ角又は4つ角であるという第2地域条件を満たすか否かを判定する。例えば、車両の走行場面が図1に示す道路環境である場合を例に説明する。なお、図1に示す道路環境の交差点Kn間の距離が100mであるとする。この場合、交差点Kn間の距離が規定距離以上離れているので、交錯可能性判定部12は、第1地域条件を満たすと判定する。また、交錯可能性判定部12は、各交差点Kの形状が十字路に準じており、交差パターンも複雑でないので、第2地域条件を満たすと判定する。さらに、交錯可能性判定部12は、通信制御部10の制御結果に基づいて、規定以上の通信頻度及び処理負荷が発生しているという条件を満たしているか否かを判定する。S12の処理において、地域条件及び通信負荷条件の両方の条件を満たしていると判定した場合には、周辺車両情報受信処理へ移行する(S14)。
【0035】
S14の処理は、ECU2及び車車間通信機20が実行し、車車間通信により周辺車両と通信して周辺車両情報を受信する処理である。車車間通信機20は、例えば、周辺車両の位置情報及び進行方向を含む周辺車両情報を受信する。S14の処理が終了すると、受信判定処理へ移行する(S16)。また、車車間通信機20が、所定時間の間、情報を受け取らない場合には、タイムアウトして受信判定処理へ移行する(S16)。
【0036】
S16の処理は、ECU2が実行し、S14の処理で情報受信したか否かを判定する処理である。S16の処理において、情報受信していないと判定した場合には、周辺に車両が存在しないものとして、条件判定処理へ再度移行する(S12)。一方、S16の処理において、情報受信したと判定した場合には、エリア内判定処理へ移行する(S18)。
【0037】
S18の処理は、ECU2が実行し、周辺車両の大まかな位置関係を把握する処理である。ECU2は、S16の処理で入力した位置情報に基づいて、周辺車両がS12の処理で判定した自車両周辺の領域内に存在するか否かを判定する。すなわち、地域条件及び通信負荷条件の両方を満たしている領域内に周辺車両が存在しているか否かを判定する。S18の処理において、周辺車両がS12の処理で判定した領域内に存在すると判定した場合には、交錯ノード探索処理へ移行する(S20)。
【0038】
S20の処理は、交錯可能性判定部12が実行し、自車両と周辺車両とが交錯するか否かを判定する処理である。最初に、交錯可能性判定部12は、誤差エリアの設定処理から開始する。交錯可能性判定部12は、地図DB22を参照して交差点ノードのみを抽出する。そして、交錯可能性判定部12は、少なくとも交差点ノードに対応する交差点内の全てが含まれるように、誤差エリアを設定する。例えば、図4に示すように、交差点ノードXnを中心として、誤差エリアPn(n:整数)を設定する。誤差エリアPnは、円形又は矩形の何れでもよく、道路形状に合わせて適宜選択すればよい。
【0039】
そして、交錯可能性判定部12は、自車両の位置及び進行方向と、周辺車両の位置及び進行方向とに基づいて、交錯可能性を判定する。交錯可能性の判定処理について、図5を用いて説明する。図5は、交錯可能性を判定する処理を説明する地図上の概要図であって、車両A1を自車両、車両Bn、Cn(n:整数)を周辺車両として示している。最初に、交錯可能性判定部12は、自車両A1の位置及び進行方向に基づいて、自車両A1の進行方向ベクトルを算出する。進行方向ベクトルは、車両位置を基準とした進行方向を示す方向ベクトルである。そして、自車両A1の進行方向ベクトル及び地図DB22から取得した交差点ノードに基づいて、自車両A1の位置を基準とした進行方向の延長上に存在する交差点ノードXnを交錯候補ノードとして抽出する。例えば、自車両A1の進行方向ベクトルと誤差エリアPnとが重なった場合には、当該誤差エリアPnの交差点ノードXnを交錯候補ノードとして抽出する。進行方向ベクトルが重なる誤差エリアPnが複数存在する場合には、それらの全ての誤差エリアPnに対応する交差点ノードXnを交錯候補ノードとして抽出する。図5では、車両A1の進行ベクトルAs及び進行方向ベクトルArを示している。図5に示すように、進行方向ベクトルArと重なる誤差エリアP1、P2に対応する交差点ノードX1、X2が交錯候補ノードとされる。
【0040】
次に、交錯可能性判定部12は、周辺車両Bn、Cnにおいても車両A1の処理と同様の処理によって、交錯候補ノードをそれぞれの車両ごとに抽出する。これにより、全ての周辺車両ごとに交錯候補ノードが抽出される。そして、交錯可能性判定部12は、自車両A1の交錯候補ノードと、周辺車両Bn、Cnの交錯候補ノードとが同一の場合には、交錯可能性ありと判定する。例えば、図5に示すように、車両A1の交錯候補ノード(交差点ノードX1)と、車両B1〜B4の交錯候補ノード(交差点ノードX1)は同一であるので、車両A1と車両B1〜B4は、交差点ノードX1で交錯する可能性があると判定する。また、車両A1の交錯候補ノード(交差点ノードX2)と、車両C1〜C3の交錯候補ノード(交差点ノードX2)は同一であるので、車両A1と車両C1〜C3は、交差点ノードX2で交錯する可能性があると判定する。なお、同一の交錯候補ノードが存在しない車両同士は、交錯可能性が無いと判定する。S20の処理が終了すると、衝突可能性判定処理へ移行する(S22)。
【0041】
S22の処理は、運転支援演算部13が実行し、S20の処理結果に基づいて衝突可能性を判定する処理である。運転支援演算部13は、S20の処理で交錯可能性ありと判定した交錯候補ノードごとに衝突可能性を判定する。各交錯候補ノードでの処理は同一であるので、以下では説明理解の容易性を考慮して、図5の交差点ノードX1での衝突判定処理を説明する。図6は、図5の交差点ノードX1での衝突判定処理を説明するための概要図である。図6に示すように、交差点ノードX1で自車両A1と交錯可能性ありと判定した車両B1〜B4が存在する。運転支援演算部13は、S10の処理で取得した自車両A1の位置情報を用いて交差点ノードX1までの距離を算出する。例えば、自車両A1の進行ベクトルAsの方向ベクトルArと、方向ベクトルArに直交し交差点ノードX1を通過する線分L1との交点を算出し、自車両A1と交点までの距離を交差点までの距離として算出する。そして、車速センサ23により取得した自車両A1の速度と、算出した交差点までの距離を用いて交差点到達時刻を予測する。同様に、運転支援演算部13は、S20の処理において交差点ノードX1で交錯可能性ありと判定した車両B1〜B4のそれぞれの車速、それぞれの交差点までの距離を用いて、交差点到達時刻をそれぞれの車両ごとに予測する。そして、自車両A1の交差点到達時刻と車両B1〜B4の交差点到達時刻との差分を算出する。そして、到達時刻の差分が所定範囲内となる車両を衝突可能性がある車両とする。S22の処理が終了すると、運転支援実行処理へ移行する(S24)。
【0042】
S24の処理は、運転支援演算部13が実行し、自車両A1の運転支援を実行する処理である。運転支援演算部13は、例えば、衝突可能性のある車両の存在を運転者に報知する支援を演算し、HMI制御部14及び報知装置30を用いて運転支援を行う。S24の処理が終了すると、支援終了確認処理へ移行する(S26)。
【0043】
S26の処理は、運転支援演算部13が実行し、支援終了条件を満たすか否かを判定する処理である。例えば、運転支援演算部13は、支援時間や監視対象車両との位置関係等により設定された支援終了条件を満たすか否かを判定する。S26の処理で支援終了条件を満さないと判定した場合には、運転支援実行処理へ再度移行する(S24)。これにより、支援終了条件を満たすまで運転支援処理が実行されることとなる。一方、S26の処理で支援終了条件を満たすと判定した場合には、図3に示す制御処理を終了する。
【0044】
一方、S12の処理において、地域条件及び通信負荷条件の両方の条件を満たしていないと判定した場合、及びS18の処理において、周辺車両がS12の処理で判定した領域内に存在しないと判定した場合には、マップマッチング処理へ移行する(S28)。
【0045】
S28の処理は、運転支援演算部13が実行し、マップマッチングを実行する処理である。マップマッチング処理について、図7を用いて説明する。図7は、マップマッチング処理を説明するための概要図である。最初に、運転支援演算部13は車両位置から最も近いノードを探索する。図7(a)に示すように、GPSシステム21から得られた車両位置の周辺にノードX1、X11、X12が存在した場合、各ノードまでの距離をそれぞれ算出する。そして、図7(b)に示すように、最も車両に近いノードX12を選択し、進行方向に基づいてノードX11及びノードX12間のリンクLi2に車両を引き込む処理を行う。これにより、例えば、図8に示すように、自車両及び周辺車両の車両位置とリンクとがマッチングされる。S28の処理が終了すると、衝突地点判定処理へ移行する(S30)。
【0046】
S30の処理は、運転支援演算部13が実行し、S28の処理で引き込んだリンク上に存在する車両同士の交錯可能性を判定する処理である。例えば、車両の存在するリンクを交差点ノードまで辿っていき、交錯する交差点ノードを判定する。例えば、図8に示すように、自車両A1及び周辺車両B1〜B4、C1〜C3のリンクを辿り、自車両A1と交錯する可能性のある車両、及び交錯する交差点ノードを抽出する。S30の処理が終了すると、衝突可能性判定処理へ移行する(S32)。
【0047】
S32の処理は、運転支援演算部13が実行し、自車両A1とS30の処理で交錯可能性ありと判定した周辺車両との衝突可能性を判定する処理である。運転支援演算部13は、例えば、自車両A1のリンク位置及び速度に基づいて交錯する交差点ノードまでの到達時刻を予測し、同様に周辺車両の到達時刻を予測して、到達時刻の差分が所定範囲内にあるか否かに基づいて衝突可能性があるか否かを判定する。S30の処理が終了すると、運転支援実行処理へ移行する(S24)。
【0048】
以上、図3に示す制御処理を終了する。S12〜S22の衝突判定処理を行うことにより、マップマッチング処理を行うことなく衝突可能性が判定される。また、S20の処理において、リンク情報を用いることなく、交差点ノード情報及び車両の位置情報のみに基づいて交錯可能性が判断される。これにより、例えば、車両台数が多く通信頻度も高い都市部等の地域において、マップマッチ回数が比例的に増大することを抑制できるので、運転支援システム全体の処理負荷の低減化を図ることが可能となる。そして、受信データ欠損やHMIタイミング遅れ等を防止できるので、運転支援システムの信頼性を向上させることが可能となる。また、従来に比べて処理負荷が軽減されるのみならず、従来のようにマップマッチング処理で交錯可能性を判定する場合とほぼ遜色ない信頼性で交錯可能性を判定することが可能である。例えば、図8に示すように、全車両に対してマップマッチング処理を行って交錯可能性を判定した場合、自車両A1と交錯する可能性がある車両は、交差点ノードX1で車両B1〜B4、交差点ノードX2で車両C1〜C3である。一方、図5に示すように、誤差エリアを用いて交錯可能性を判定した場合には、交差点ノードX1で車両B1〜B4、交差点ノードX2で車両C1〜C3であり、マップマッチング処理を行った場合と同一の結果となる。
【0049】
上述したように、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、ECU2により、車両A1の進行方向及び周辺車両Bn、Cnの進行方向のそれぞれと、交差点ノードXnを含む範囲の誤差エリアPnとが重なる場合には、周辺車両Bn、Cnが監視対象として運転支援に関する処理が実行される。このように、車両A1及び周辺車両Bn、Cnの進行方向のそれぞれが同一の誤差エリアPnと重なる場合には、当該交差点Knで交錯可能性があるものとして運転支援に関する処理を実行することができる。すなわち、車両の位置とリンクとをマッチングする処理を行うことなく運転支援に関する処理を開始できるので、交差点Knで衝突する可能性のある車両を簡易な処理で迅速に判断することができる。よって、走行支援に関する処理負荷の軽減化を図ることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、交差点ノードXnが複数存在する場合には、誤差エリアPn同士が重ならないように誤差エリアPnを設定することができるので、交差点ノードXnが複数存在する場合であっても、マップマッチング処理により引き込まれるリンクに連結される交差点ノードと、誤差エリアPnを用いて判定する交差点ノードとを同一とすることができる。このため、従来のマップマッチング処理と同様の精度を維持しつつ、交差点Knでの衝突可能性を簡易な処理で迅速に判断することができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る走行支援装置1によれば、交差点ノードXnの交差点Knの道路形状に基づいて誤差エリアPnを設定することができるので、交差点Kn内の全てを誤差エリアPnに含ませることができるので、交差点Knでの交錯可能性を適切に判断することが可能となる。
【0052】
なお、上述した実施形態は本発明に係る走行支援装置の一例を示すものである。本発明に係る走行支援装置は、実施形態に係る走行支援装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る走行支援装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、図3のS12の処理において、地域条件として、第1地域条件及び第2地域条件を用い、第1地域条件及び第2地域条件を満たす場合には地域条件を満たすと判定する例を説明したが、第2地域条件は完全に満足しなくても良い。この場合、例えば、第1地域条件及び第2地域条件に重み付けを行い、第1地域条件及び第2地域条件を満たす度合いに対して重み付けを掛け合わせて足した値を評価することで、地域条件を満足しているか否かを判定してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、走行支援装置1が車載される例を説明したが、車外に設けられていても良い。また、上述した実施形態では車車間通信を行う車両に採用される例を説明したが、路車間通信で情報を取得し、車両側で衝突判定を行う場合に採用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…走行支援装置、2…ECU、12…交錯可能性判定部、13…運転支援演算部、Xn…交差点ノード、Pn…誤差エリア(所定領域)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺車両の存在に基づいて車両の走行を支援する走行支援装置であって、
前記車両の進行方向及び前記周辺車両の進行方向のそれぞれと交差点ノードを含む範囲の所定領域とが重なる場合には、前記周辺車両を監視対象として運転支援に関する処理を実行する運転支援手段を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記運転支援手段は、
前記所定領域を設定する領域設定手段と、
前記領域設定手段により設定された前記所定領域と前記車両の位置を起点とする前記車両の進行方向ベクトル及び前記周辺車両の位置を起点とする前記周辺車両の進行方向ベクトルのそれぞれとが重なるか否かを判定する交錯可能性判定手段と、
を備える走行支援装置。
【請求項3】
前記領域設定手段は、前記交差点ノードが複数存在する場合には、前記所定領域同士が重ならないように前記所定領域を設定する請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記領域設定手段は、前記交差点ノードの交差点の道路形状に基づいて前記所定領域を設定する請求項2又は3に記載の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−250616(P2010−250616A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100263(P2009−100263)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】