説明

走行玩具

【課題】オルゴールに設けられたゼンマイを動力とし、ゼンマイの回転軸に歯車を備えることによって、オルゴールを正常に鳴すと共に、遊技者が走行玩具自体を押さずに走行させることができる走行玩具を提供することを課題とする。
【解決手段】ゼンマイを用いたオルゴールを有する走行玩具であって、前記オルゴールのゼンマイの回転軸に軸着した欠歯冠歯車と、前記欠歯冠歯車と係合し、同じ軸上に設けられた2つの小歯車とで構成した駆動部と、前記駆動部の駆動によって回転する車輪とを設けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルゴールを有する走行玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オルゴールを有する走行玩具において特開平06−285265号公報「走行玩具」のように、車輪の駆動に合わせ、オルゴールのドラム軸を回転させるもので、車輪の回転方向に関わらず、オルゴールのドラムを常に一定方向へ回転させ、オルゴールを正常に鳴らすことできるものであった。
【0003】
しかしながら、該走行玩具を走行させ、オルゴールを鳴らす為には、遊技者が、走行玩具自体を押して走行させる必要があるものであった。そこで、オルゴールを正常に鳴すと共に、遊技者が走行玩具自体を押さずに走行させる走行玩具が求められていた。
【特許文献1】特開平06−285265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に斯かる実情に鑑みなされたもので、オルゴールに設けられたゼンマイを動力とし、ゼンマイの回転軸に歯車を備えることによって、オルゴールを正常に鳴すと共に、遊技者が走行玩具自体を押さずに走行させることができる走行玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ゼンマイを用いたオルゴールを有する走行玩具であって、前記オルゴールのゼンマイの回転軸に軸着した欠歯冠歯車と、前記欠歯冠歯車と係合し、同じ軸上に設けられた2つの小歯車とで構成した駆動部と、前記駆動部の駆動によって回転する車輪とを構成し、前記駆動部は、前記欠歯冠歯車によって前記各小歯車に交互に歯合し、前記各小歯車が軸着した軸を正・逆回転させる事によって、前記走行玩具を前進及び後進走行させることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記走行玩具には、床面との摩擦によって回転する従動輪と、前記従動輪の回転によって動作する第一動作部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2において、前記走行玩具には、形象体を設け、前記第一動作部は、前記形象体の一部を動作させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3において、前記第一動作部は、形象体の頭部を模して形成され、前記第一動作部は、前記走行玩具が前進時に前記頭部が前方を向くように回転動作し、前記走行玩具が後進時に前記頭部が後方側を見るように回転動作することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記走行玩具には、前記駆動部の駆動によって動作する第二動作部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、オルゴールに設けられたゼンマイを動力とし、ゼンマイの回転軸に歯車を備えることによって、オルゴールを正常に鳴すと共に、遊技者が走行玩具自体を押さずに前後方向へ走行させることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ゼンマイの動力とは別に、床面との摩擦によって回転する従動輪の回転力を利用して、走行玩具に設けられた第一動作部を動作させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、該走行玩具には、形象体が設けられ、該形象体の一部を動作させるようにすることによって、遊技者に対して趣向の高い走行玩具を提供することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、該走行玩具が、前進走行するときには、形象体の頭部が走行玩具の前方を見るよう回転し、後進走行するときには、形象体の頭部が走行玩具の後方側に向けて回転し、形象体が後方確認をしつつ後進走行しているかのように表現でき、遊技者に対して趣向の高い走行玩具を提供することができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、ゼンマイの動力を元に動作する第二動作部を動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ゼンマイを用いたオルゴールを有する走行玩具であって、前記オルゴールのゼンマイの回転軸に軸着した欠歯冠歯車と、前記欠歯冠歯車と係合し、同じ軸上に設けられた2つの小歯車とで構成した駆動部と、前記駆動部の駆動によって回転する車輪と、床面との摩擦によって回転する従動輪と、前記従動輪の回転によって動作する第一動作部と、前記駆動部の駆動によって動作する第二動作部と、形象体とを設けて構成した。
【0016】
また、前記第一動作部は、形象体の頭部を模して形成され、前記第一動作部は、前記走行玩具が前進時に前記頭部が前方を向くように回転動作し、前記走行玩具が後進時に前記頭部が後方側を見るように回転動作する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例である走行玩具の外観を示す図である。実施例の走行玩具10は、外輪12を有する蒸気船を模した形状となっており、蒸気船の甲板に、形象体14となるキャラクター人形が設けられ、該キャラクター人形が舵をとり恰も蒸気船を操舵しているかのように形成している。
【0018】
走行玩具10は、オルゴール18より音楽を奏でながら前後方向へと走行すると共に、舵78と外輪12を正・逆回転させ、キャラクター人形の頭部16を前後方向へ振る動作を行うようになっている。
【0019】
図2及び図3を用いて説明を行う。図2は、走行玩具10の分解斜視図面であり、図3は、機構部20の分解斜視図面となっている。走行玩具10は、図2及び図3に示すように駆動部22、第一動作部24、第二動作部25、形象体14からなる機構部20と、装飾品となる外装部品26で構成されている。また走行玩具10は、機構部20に、船底、船枠、蒸気機関を模した外装部品26を組み付けたものである。
【0020】
図3及び図4を用いて、機構部20の説明を行う。機構部20の形象体14は、キャラクター人形を模した形に形成され、第一動作部24は、該キャラクター人形の頭部16を模して形成され、第二動作部25は、舵78を模して形成されたものである。また形象体14は、例えば、動物・ロボット・仮想のキャラクターなど、どのような形象体14であっても構わない。また、第一動作部24及び第二動作部25は、該形象体14の手・頭・足などの一部を模して形成してもよく、その他にスクリュー、ハンドルなどを模して形成し動作させるようにしてもよい。
【0021】
次に駆動部22の構成は、オルゴール18のゼンマイ28により回転するシリンダ軸40及びシリンダ軸40の先端に取付けた欠歯冠歯車34と2つの小歯車36によって構成されており、オルゴール18は一般的なゼンマイ28、シリンダ30、コーム32を備えている。
【0022】
まずオルゴール18の説明を行う。オルゴール18には、シリンダ式とディスク式の2種のオルゴール18が有るが、どちらのオルゴール18でも構わない。実施例では、シリンダ式のオルゴール18を使用している。
【0023】
ゼンマイ28は金属製の帯のような形をし、渦巻きのように巻かれているスプリング状のもので、巻き上げられることによって力が貯えられるようになっており、図示しないがレバー操作によって、ゼンマイ28の回転を作動させたり止めたりすることが可能となっている。
【0024】
またゼンマイ28の巾と厚みはゼンマイ28の発生するトルクに大きく影響を及ぼすようになっており、ゼンマイ28の巾が2倍になれば2倍のトルクを発生し、厚みが2倍になると8倍のトルクを発生するようになる。また、ゼンマイ28の持続時間は、ゼンマイ28の長さが長くなるほど力の発生する持続時間が伸びるようになっている。
【0025】
次にシリンダ30は、円筒形に設けられ、円筒外周面にピンが突設して形成されている。またコーム32は、櫛形状となっており、該櫛の1本1本の歯は、その長さや、重さなどで振動する周波数が変わり、音階を奏でるようになっている。ゼンマイ28の回転力によって、該シリンダ30が回転し、ピンが歯を持ち上げてはじくことによって、音を発生するようになっており、連続してピンが歯をはじくことによって音楽を出力するようになっている。このピンの配置と歯の構成を変えることによって、様々な音楽を奏でることが可能となっている。
【0026】
そして駆動部22の欠歯冠歯車34と、2つの小歯車36の説明を行う。欠歯冠歯車34は、オルゴール18のシリンダ軸40の先端に軸着し、オルゴール18に設けられたゼンマイ28の回転力によって回転するようになっている。
【0027】
欠歯冠歯車34は、円周の周縁の一部だけに歯部に有する歯車となっている。また、2つの小歯車36は、同じ軸42に該欠歯冠歯車34に歯合するように隣接して軸着している。欠歯冠歯車34が一定方向に回転を継続すると、2つの小歯車36に交互に歯合し該軸42は交互に正・逆回転するようになっている。欠歯冠歯車34の歯と、小歯車36の歯との歯合始めの際に起こる負荷と、回転の方向の転換による負荷が大きい歯車構造となっており、比較的高トルクを容易に発生させることのできるゼンマイ28が好適である。
【0028】
また軸42の両先端に車輪44が設けられており、該車輪44の外周には、環状の弾性体46が設けられている。この弾性体46の作用によって路面との摩擦を増やし、車輪44の空転を減らようになっている。車輪44は、ゼンマイ28の回転力が伝達され走行玩具10自体を前進及び後進走行させることができる。尚、この車輪44は、外装部品26の内側に配置され、走行玩具10の外部からは見え難くしている。
【0029】
また該軸42には、第一平歯車48が軸着しており、該第一平歯車48と中間歯車を介して係合する第二平歯車50が設けられている。該第二平歯車50には、軸52が軸着され該軸52の両先端は外装部品26より外側に延びる長さとして、両先端には外輪12が設けられている。外輪12は、ゼンマイ28の回転力が伝達され、走行玩具10の前進及び後進走行に合わせて外輪12の回転方向が変化することによって、趣向の高い玩具とすることができる。
【0030】
第一動作部24の動作を説明する。走行玩具10の前方には、走行玩具10の後方に設けられた車輪44と共に玩具自体を支える従動輪54が設けられ、該従動輪54の回転によって第一動作部24を動作させるようになっている。
【0031】
従動輪54は、玩具を安定して保持する為に、軸に連接する2つの車輪で形成されている。また各車輪の外周には、環状の弾性体46が設けられ、路面との摩擦を増やし、従動輪54の空転を減らすようになっている。この従動輪54が回転することによって、従動輪54の上に載置された円板56が回転するようになっている。該円板56には軸58が軸着され、軸58の上端に係合部60が軸着されている。従って該円板56の回転によって軸58と共に係合部60が回転するようになる。また円板56は、円板56の突起57と、軸58の支持板の裏面係止部により、その回転範囲は90°〜120°程度に制限されている。
【0032】
そして係合部60は、形象体14の頭部16を模した第一動作部24と係合し、従動輪54の回転によって軸58が回転し、第一動作部24(頭部16)が回転するようになっている。また走行玩具10が、前後方向へ走行するときに円板56の突起57により回転範囲が制限されている為に、形象体14の頭部16が1回転せずに、所定の範囲内で、頭部16を前後へと振る動作を行うことが可能となっている。
【0033】
また、頭部16の回転角度を走行玩具10の前方を向く角度から、走行玩具10の後方側を見ることのできる角度までに回転を抑制することによって、走行玩具10が前進走行している際には、頭部16は走行玩具の前方を向くように回転させ、走行玩具10が後進走行している際には、頭部16は恰も後方確認するかのように走行玩具10の後方側を向くように回転させることによって、キャラクター人形が走行玩具10である蒸気船を操縦しているかのように表すことができるようになっている。
【0034】
図3・4を用いて次に第二動作部25(舵78)を説明する。ゼンマイ28からの回転力が伝達される軸52には、偏心カム53が軸着されており、この偏心カム53の回転によって、キャラクター人形が操舵する舵78が、正・逆回転する動作をするようになっている。この第二動作部25(舵78)を回動させる機構の構成としては、偏心カム53、揺動継手62、L字型継手70、係合凸板76が用いられている。
【0035】
揺動継手62は、端部に該偏心カム53と係合する長穴64と、中央部に機構部20に設けられた軸に軸支する軸穴66と、長穴64の対向する端部に凸部68を有している。またL字型継手70には、キャラクター人形を載置する台座に設けられた軸に回動自在に軸支され、このL字型継手70の端部には各々に凹部72が形成されている。この凹部72には、縦方向に揺動動作する揺動継手62の凸部68が係合し、別の凹部72には、一部を凸形状に形成された係合凸板76が係合するようになっている。舵78は、舵軸80を中心に回動自在に設けられ、舵78の下方には係合凸板76が固着されている。
【0036】
第二動作部25(舵78)の動作を説明する。ゼンマイ28からの回転力によって、偏心カム53が回転し、その回転によって揺動継手62は、軸穴66を中心に縦方向に揺動動作を行う。該揺動継手62が縦方向に揺動動作を行うことによって、L字型継手70は、軸穴72を中心として一端を上下に他端を左右に揺動させるように回転運動を行う。そして、L字型継手70の回動運動により揺動継手62からの縦方向の揺動動作を横方向への揺動動作へ変換し、係合凸板76を横方向へ揺動動作させることができる。このため係合凸板76が揺動運動することによって、係合凸板76が固着される舵78は、舵軸80を中心に回動することになる。
【0037】
また、実施例のようにキャラクター人形の両手を舵76に嵌着することによって、恰もキャラクター人形が、走行玩具10を操舵しているかのように表すことができる。
【0038】
上述のように構成することによって、走行玩具10のオルゴール18のゼンマイ28を巻き、ゼンマイ28を作動させると、走行玩具10は、オルゴール18より音楽を奏でながら前進及び後進走行を行うと共に、第二動作部25である舵78と外輪12を正・逆回転させる。この走行玩具10の前進及び後進走行によって従動輪54が回転し、その回転によって第一動作部24である形象体14の頭部16が前方及び後方に向けて回転動作させることができるようになる。
【0039】
この他に、従動輪54の回転によって、第一動作部24を動作させる場合において、回転力をクランク動作や、スライド動作に変換し、キャラクターの手を振るような動作や、首が伸びるような動作を行わせるようにすることもできるようになっている。
【0040】
この以上説明したように構成することにより、オルゴールに設けられたゼンマイを動力とし、ゼンマイの回転軸に歯車を備えることによって、オルゴールを正常に鳴すと共に、遊技者が走行玩具自体を押さずに走行させることができる走行玩具を提供することができる。また、好ましい実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的範囲内で種々に改変できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例である走行玩具の外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施例である走行玩具の分解斜視図面である。
【図3】本発明の一実施例である走行玩具の機構部の分解斜視図面である。
【図4】本発明の一実施例である走行玩具の第二動作部の動きを示す図面である。
【符号の説明】
【0042】
10 走行玩具
12 外輪
14 形象体
16 頭部
18 オルゴール
20 機構部
22 駆動部
24 第一動作部
26 外装部品
28 ゼンマイ
30 シリンダ
32 コーム
34 欠歯冠歯車
36 小歯車
40 シリンダ軸
42 軸
44 車輪
46 弾性体
48 第一平歯車
50 第二平歯車
52 軸
53 偏心カム
54 従動輪
56 円板
57 突起
58 軸
60 係合部
62 揺動継手
64 長穴
66 軸穴
68 凸部
70 L字型継手
72 凹部
74 軸穴
76 係合凸板
78 舵
80 舵軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼンマイを用いたオルゴールを有する走行玩具であって、前記オルゴールのゼンマイの回転軸に軸着した欠歯冠歯車と、前記欠歯冠歯車と係合し、同じ軸上に設けられた2つの小歯車とで構成した駆動部と、前記駆動部の駆動によって回転する車輪とを構成し、前記駆動部は、前記欠歯冠歯車によって前記各小歯車に交互に歯合し、前記各小歯車が軸着した軸を正・逆回転させる事によって、前記走行玩具を前進及び後進走行させることを特徴とした走行玩具。
【請求項2】
請求項1において、前記走行玩具には、床面との摩擦によって回転する従動輪と、前記従動輪の回転によって動作する第一動作部とを備えたことを特徴とした走行玩具。
【請求項3】
請求項2において、前記走行玩具には、形象体を設け、前記第一動作部は、前記形象体の一部を動作させるようにしたことを特徴とした走行玩具。
【請求項4】
請求項3において、前記第一動作部は、形象体の頭部を模して形成され、前記第一動作部は、前記走行玩具が前進時に前記頭部が前方を向くように回転動作し、前記走行玩具が後進時に前記頭部が後方側を見るように回転動作することを特徴とした走行玩具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記走行玩具には、前記駆動部の駆動によって動作する第二動作部を備えたことを特徴とした走行玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−122503(P2006−122503A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316985(P2004−316985)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(591200287)株式会社やのまん (12)
【Fターム(参考)】