説明

走行玩具

【課題】 小型且つ軽量で遊戯者が容易に取り扱うことのできる安価にしてウィリー走行が可能な走行玩具を提供する。
【解決手段】 走行玩具1は、本体2と、該本体2の前側に本体2に対し弾性体を介して保持された前輪6と、本体2の後側に取付けられた後輪7と、後輪7を駆動する後輪駆動部103aと、を備え、前輪6と本体2が相対的に近づく方向に手動による圧縮操作を加えたとき弾性体の圧縮が可能に構成されており、手動により圧縮が加えられたとき弾性体の圧縮状態を維持する係止機構31を更に備え、走行開始前に手動による圧縮操作を行って弾性体を圧縮し、係止機構31によって弾性体の圧縮状態を維持し、前輪6と後輪7による走行状態にあるとき、送信機からの遠隔操作によって係止機構31を開放し、弾性体を圧縮状態から開放したとき、前輪6に付勢力を与えることで前輪6を走行面60から浮上させ、後輪7による走行姿勢へ移行するように構成されて成ることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機からの操作信号によって遠隔操縦される走行玩具であって、特に、前輪を上げて後輪だけで走行することのできる走行玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔操縦式の自転車或いはオートバイ等の走行玩具において通常(前輪着地状態)の走行から、前輪を浮かせて後輪のみでの走行(いわゆるウィリー状態の後輪走行)に移行する機構を備えた走行玩具が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1の発明に係る走行玩具は、走行中に遊戯者の遠隔操作指示に応じて前輪と操舵部との距離が縮まるようにフロントフォーク部に備えられたコイルばねの圧縮を開始し、圧縮動作が所定状態に達したときコイルばねに対する圧縮を開放してコイルばねを急激に伸長させ急激に伸張するコイルばねに生じる走行面に向かう付勢力を前輪に与える構成を備え、前記コイルばねに対する圧縮の開放と連携して走行速度を加速し、前記付勢力と走行加速の相乗作用によって前輪を浮上させて後輪のみによる走行へ移行することができるものである。
【特許文献1】特開2008−409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、走行中に送信機からの遠隔操作信号によりコイルばねの圧縮を開始し、圧縮が所定状態に達したとき圧縮を自動的に開放する構成となっているため走行玩具の前側に(例えばフロントフォーク部に)コイルばねを圧縮させるのに十分な力を発揮する強力なモータを、後輪を駆動するための駆動モータとは別に、備える必要があった。したがって、高価にして重量のある独立したモータを必要とし、前側に高重量物を備えるためバランス制御に高度な技術が必要であった。更に前側に高重量物を装備することから前輪を浮上させ後輪走行を実現するための後輪駆動用モータ等も強力なモータが必要になり、走行玩具全体の重量及びコストの増加を伴い、又、小型化を困難にするといった問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、小型且つ軽量で遊戯者が容易に取り扱うことのできる安価にしてウィリー走行が可能な走行玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の走行玩具は、本体と、該本体の前側に前記本体に対し弾性体を介して保持された前輪と、前記本体の後側に取付けられた後輪と、前記後輪を駆動する後輪駆動部と、前記弾性体の圧縮状態を維持する係止機構と、を備え、前記前輪と前記本体が相対的に近づく方向に手動による圧縮操作を加えたとき前記弾性体が圧縮され該弾性体の圧縮状態が前記係止機構によって維持可能に構成されて成り、前記走行玩具の走行開始前に手動による前記圧縮操作を行って前記弾性体を圧縮し、前記係止機構によって前記弾性体の圧縮状態が維持された状態にある前記走行玩具を走行面に載置して前記走行玩具の走行を開始し、前記前輪と後輪による走行状態にあるとき、送信機からの遠隔操作信号に応答して前記係止機構の係止力を開放して、前記弾性体を圧縮状態から開放したとき、該弾性体の弾性力により前記前輪に走行面に向かう付勢力を与えることで前記前輪を走行面から浮上させ、前記後輪による走行姿勢へ移行するように構成されて成るものである。前記弾性体の弾性力の開放のタイミングにあわせて後輪に加わるトルクを増強する動作を行わせることにより当該付勢力と前記走行玩具の前方に向かう走行運動の相乗効果により更に前記後輪による走行姿勢へ移行を容易にすることが可能になる。
【0007】
本発明の走行玩具において、前輪を回転可能に保持する保持部と、本体を支持する支持管と、下部が前記保持部に固定され上部が前記支持管の管内に摺動可能に装着された摺動軸と、下部が前記保持部に装着され上部が前記支持管に装着された前記弾性体として作用するコイルばねとを具備し、前記支持管を前記保持部に対し前記コイルばねを介して揺動自在に支持し、前記摺動軸の軸上端に係止突起を設け、前記係止機構を前記支持管の前方に配置し、摺動軸が支持管の管内を上方に移動したとき前記係止突起と係合して前記係止突起を前記支持管上端の上方位置に係止する係止部材と、前記送信機からの遠隔操作信号に応答して前記係止突起と係止部材の係合を外す係止解除機構とを備える構成とすることができる。
【0008】
又、前記係止解除機構は、前記支持管に支持される回転軸を中心に揺動可能なカムバーと該カムバーを揺動させるカム駆動部を有し、前記係止部材は、前記カムバーの上端に設けられ、前記支持管上端と係止突起の間に挿入可能とされ、前記カムバーが揺動することにより前記係止部材が前記支持管上端と係止突起の間から外れるものである。
【0009】
そして、前記カム駆動部は、モータと減速機構と偏心カムを有し、該偏心カムの回転により前記カムバーの下端又は下端近傍を押圧するものである。又、前記係止部材は、前記カムバーの上端に揺動可能にピンで結合される場合もある。
【0010】
本発明の走行玩具において、更に前記本体の後端に小型車輪を有する後部支持部を設け、後輪走行姿勢に移行した際、当該玩具が、後輪と前記後部支持部とによって支持される構成とすることもある。
【0011】
更に、前記カムバーの下部に、該カムバーの下部と前記支持管とを離隔するように付勢可能な弾性体を備えることがある。
【0012】
本発明の走行玩具は好ましくは、本体の前側にフロントフォーク部と該フロントフォーク部の上部に設けられた操舵部とを設け、前記フロントフォーク部を構成する一対の分岐部材のそれぞれを前記保持部と前記支持管と前記係止突起を有する摺動軸と前記係止部材と前記係止解除機構と前記コイルばねで構成し、前記本体の後部から突出して設けられた小型車輪を有する後部支持部を更に設け、走行開始前に手動による前記圧縮操作により前記コイルばねのそれぞれを圧縮して前記係止機構によって前記コイルばねの圧縮状態を維持した状態で前記走行玩具を前記前輪と前記後輪が走行面に接するように走行面に載置して前記走行玩具の走行を開始し、前記後輪走行姿勢に移行したとき前記後輪と前記小型車輪が走行面に接して後輪走行姿勢を維持する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行前に弾性体を手動で圧縮可能とし、係止機構で弾性体を圧縮維持した状態で走行面に走行玩具を載置してから走行を開始する構成としたので、弾性体の圧縮のための強力なモータを不要とし、小型且つ軽量で遊戯者が容易に取り扱うことのできる安価な後輪走行玩具を提供することができる。また、走行玩具の前側の軽量化は後輪走行姿勢に移行させるための前輪に向かう付勢力と前方に向かう加速度の適正化に有利で安定的に前輪を浮上させる機構を実現することを可能にする。
【0014】
更に、本発明によれば、走行前に予め弾性体を圧縮した状態で走行させ、任意のタイミングで走行中に送信機から遠隔操作信号を送信して係止機構による弾性体に対する係止力を解除できる構成としたので、走行状態で弾性体の圧縮を開始しなければならない従来走行玩具のように走行中の弾性体に対する圧縮が所定状態に達するのを待つ必要がなく、この遊戯者の好ましいタイミングで後輪走行姿勢に移行させることができる。
【0015】
また、弾性体の圧縮のための強力なモータが不要になることから弾性体の圧縮を維持するための機構は、係止解除機構を支持管に支持される回転軸を中心に揺動可能なカムバーと該カムバーを揺動させるカム駆動部による簡単な構成とすることで、カムバーの上端に係合された係止部材の係止状態をカムバーを僅かに揺動させることで解除し弾性体の圧縮状態維持を容易に開放することができるため、カム駆動部に必要とされる駆動力を容易に小さくすることができる。
【0016】
更に、カム駆動部にモータと減速機構と偏心カムを備えることにより、弾性体の圧縮状態維持を、より小さな駆動力で安定的に開放することができる。そして、カムバーの上端に揺動可能にピンで結合されている係止部材を備えることにより、弾性体の圧縮状態維持を更に小さい力で開放することもできる。
【0017】
そして、本体の後端に小型車輪を有する後部支持部を設けることで、走行玩具を後方により傾斜させた際にも、該後輪と小型車輪で走行玩具を支えることで、後部側への転倒を防止できると共にウィリー走行を安定して継続することができる。この場合も前述した走行玩具の前側の軽量化はウィリー走行を安定化させるのに有利となる。
【0018】
又、カムバーの下部に、該カムバーの下部と支持管とを離隔するように付勢可能な弾性体を備えることで、係止状態を解除して弾性体の圧縮状態維持を開放した後、係止機構による係止状態前の状態に復元されることとなる。これにより、再び手動で弾性体を圧縮し、係止機構により圧縮状態を維持させてウィリー走行を行わせることが可能となる。したがって、遊戯者は走行玩具の前部を下方に押圧する操作を行うことによって簡単に弾性体を圧縮し、係止突起を係止して弾性体の圧縮状態を再び維持することができるため、複雑な動作を要せず容易に走行玩具を取り扱うことができる。
【0019】
本発明による後輪走行姿勢に移行させる機構は軽量化、小型化が可能であり、本体の前側にフロントフォーク部と該フロントフォーク部の上部に設けられた操舵部とを設けた二輪走行玩具に特に好ましく、前記フロントフォーク部の軽量化により、後輪走行姿勢に移行させるための前輪に向かう付勢力と前方に向かう加速度の適正化に有利で安定的に前輪を浮上させる機構を実現することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を図1に図示される走行玩具1を用いて説明する。送信機110からの操作信号によって遠隔操縦される走行玩具1は、本体2と、該本体2の前側に設けられたフロントフォーク部3と、該フロントフォーク部3の上部に設けられた操舵部4と、前記フロントフォーク部3の下部において本体2に対し弾性体を介して保持された前輪6と、前記本体2の後側に取付けられた駆動用モータを有する後輪駆動部103aと、該後輪駆動部103aによって駆動可能に取付けられた後輪7と、を備え、前記フロントフォーク部3は、図3に図示されるように弾性体であるコイルばね35を具備するフロントフォーク30と、係止機構31と、を備え、走行玩具1の走行開始前に手動で前記前輪6を前記操舵部4(本体2の前側)に近づける方向に前記コイルばね35を圧縮し、前記係止機構31で前記コイルばね35の圧縮状態を維持した状態にある走行玩具1を走行面に置いて走行を開始させ、前記送信機110からの遠隔操作信号に応答して走行制御を行う。そして、前輪6と後輪7が走行面60に接して走行中に、送信機110を操作して前記係止機構31を開放する信号を送信すると前記コイルばね35の圧縮状態を維持する係止力が開放され、係止から開放された前記コイルばね35の弾性力によって生じる走行面60に向かう付勢力を前記前輪6に与えることで、当該付勢力と前記走行玩具1の前方に向かう走行運動の相乗効果により前記前輪6を走行面60から浮上させ、前記後輪7による後輪走行姿勢へ移行するように構成されて成る。
【0021】
そして、前記フロントフォーク30は、図4に図示されるように、前輪6を保持する一対の保持部34と、一対の摺動軸33と、本体2を支持する一対の支持管32と、による圧縮手段と、弾性体である一対のコイルばね35とを具備し、この圧縮手段は、前輪6と本体2が相対的に近づく方向に手動による圧縮操作を加えたとき弾性体を圧縮可能に構成されて成るものであり、摺動軸33はそれぞれ下部に対応する保持部34が装着固定されて保持され、摺動軸33の上部が支持管32内に摺動可能に挿入され、コイルばね35はそれぞれ下部が保持部34に上部が支持管32に装着されており、支持管32は保持部34に対しコイルばね35を介して上下方向に揺動可能に支持される。弾性体であるコイルばね35は走行時に走行面60から前輪6に伝わる上下動を吸収する緩衝機能を担うと共に、後輪走行移行時には圧縮から開放したときの伸張力を利用して保持部34(従って前輪6)に対し下方に向かう衝撃力を付勢すると同時に支持管32を上方に押し上げる力を付勢する機能も担う。摺動軸33は上端に係止突起33aを有し、前記係止機構31は、前記支持管32の前方に配置されて前記係止突起33aを前記支持管32の上端の上方に係止する係止部材45(図5)を有すると共に、前記送信機110からの操作信号に応答して前記係止突起33aと係止部材45の係合を外す係止解除機構を備えている。
【0022】
又、前記係止解除機構は、図5に図示されるように前記フロントフォーク30の支持管32に支持される回転軸32cを中心に揺動可能なカムバー36と該カムバー36を揺動させるカム駆動部103cを有し、前記係止部材45は、前記カムバー36の上端に設けられ、前記支持管32の上端と係止突起33aの間に挿入可能とされ、前記カムバー36が揺動することにより前記係止部材45が前記支持管32の上端と係止突起33aの間から外れる。
【0023】
そして、前記カム駆動部103cは、図8に図示されるように、モータ41と減速機構と偏心カム37を有し、該偏心カム37の回転により前記カムバー36の下端を押圧する。
【0024】
又、図14に図示されるように、前記係止部材45は、前記カムバー36の上端に揺動可能にピン50で結合されることもある。
【0025】
そして、この走行玩具1は、前記本体2の後端に設けられた小型車輪10を有する後部支持部12を備え、後輪走行の際、図13に図示されるように当該走行玩具1が、後輪7と前記後部支持部12の小型車輪10とによって支持されて後輪走行姿勢を維持するものである。
【0026】
更に、この走行玩具1は、図6に図示されるように、前記カムバー36の下部に、該カムバー36の下部と前記支持管32とを離隔するように付勢可能な弾性体であるコイルばね46を備えるものである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。本発明に係る走行玩具1は、図1に示すように、本体2と、該本体2の前側に設けられたフロントフォーク部3と、該フロントフォーク部3の上部に設けられた操舵部4と、該操舵部4を駆動する電磁コイルを有する操舵部駆動部と、フロントフォーク部3の下部において本体2に対し弾性体を介して保持された前輪6と、本体2の後側に取付けられた後輪7と、該後輪7を駆動する駆動用モータを有する後輪駆動部103aと、を備え、無線送信機からの操作信号によって遠隔操縦されるものである。
【0028】
又、この走行玩具1は、前輪6と本体2が相対的に近づく方向に手動による圧縮操作を加えたとき弾性体を圧縮可能に構成されて成る圧縮手段と、手動により圧縮が加えられたとき弾性体の圧縮状態を維持する係止機構と、を更に備えるものである。そして、この走行玩具1は、走行開始前に手動による圧縮操作を行って圧縮手段で弾性体を圧縮し、係止機構によって弾性体の圧縮状態が維持された状態で走行面に載置して送信機からの遠隔操作信号に応答して走行を開始し、前輪6と後輪7による通常の走行状態にあるとき、送信機からの遠隔操作信号に応答して係止機構の係止力を開放して、弾性体を圧縮状態から開放したとき、弾性体の弾性力により前輪6に走行面に向かう付勢力を与えることで走行玩具1の本体2前方を急激に上昇させて前輪6を走行面から浮上させ、後輪7による走行姿勢へ移行するように構成されて成るものである。
【0029】
そして、この走行玩具1の本体2は、例えば、プラスチック等による成型材料からなり、オートバイの形状を模した車体20と、この車体20に乗車した人形9と、車体20の中央の左右下部側に取付けられて人形9の両足が乗せられる側面支持部21等を備えているものである。この側面支持部21は、車体20の左右幅よりも突出した平板であって、走行玩具1が停止している状態において、走行面に接触して当該走行玩具1が転倒せずに傾斜した状態を維持することを可能にする部分である。そして、この車体20の中央部の人形9の下部側には、受信機が搭載されている。
【0030】
この受信機100は、図2に示すように、送信機110のアンテナ116から送信される信号を、アンテナ106を介して受信する受信回路101と、この受信回路101で受信した信号を受信して駆動部103を構成する後輪駆動部103a、操舵部駆動部103b及びカム駆動部103cへ制御信号を送信する制御部102と、電源スイッチ105と、この電源スイッチ105により受信回路101、制御部102及び駆動部103の各部へ電力を供給する電池104等とから構成されているものである。
【0031】
又、送信機110は、走行玩具1を遠隔操作する遊戯者が所持して制御信号を送信するものであり、直進走行及び左右への旋回走行を指示するための走行操作部113a及び旋回操作部113b、及びウィリー走行を指示するための係止解除操作部113cを有する操作部113と、この操作部113の操作に基づく制御信号を生成する制御部112と、この制御部112の制御信号をアンテナ116を介して送信する送信回路111と、電源スイッチ115と、この電源スイッチ115により操作部113、制御部112及び送信回路111へ電力を供給する電池114等とから構成されているものである。
【0032】
そして、このような構成の無線操縦式の走行玩具1では、受信機100の電源スイッチ105及び送信機110の電源スイッチ115をオンし、続いて、操作部113の走行操作部113a、旋回操作部113b、係止解除操作部113cを操作することで、制御部112で生成された走行制御信号が送信回路111からアンテナ116を介して受信機100側へ送信される。この送信機110から送信される走行制御信号は、走行玩具1の本体2に搭載された受信機100のアンテナ106を介して受信回路101で受信され、更に受信回路101から制御部102において走行制御信号に対応させた制御信号が生成され、この生成された制御信号が駆動部103の後輪駆動部103a或いは操舵部駆動部103b或いはカム駆動部103cへ送信される。
【0033】
これにより、後輪7が後輪駆動部103aの駆動用モータで駆動されることで直進走行が行われ、又、操舵部4の操舵部駆動部103bの電磁コイルが駆動されることで、フロントフォーク部3が左右に回動し、走行中にある走行玩具1の旋回走行が行われ、更に、カム駆動部103cが駆動されることで、係止機構によって弾性体の圧縮状態が維持された状態で走行する走行玩具1の係止機構の係止力が開放されて、圧縮状態から開放された弾性体の弾性力により前輪6に走行面に向かう付勢力を与えることにより走行玩具1の本体2前方を上昇させて前輪6を走行面から浮上させたウィリー走行が行われることとなる。
【0034】
次に、図3乃至図8を参照して、本発明の実施例に係る走行玩具1の構造を説明する。本発明に係る走行玩具1は、図3に示すように、オートバイの形状を模した車体20や人形9等から成る本体2と、フロントフォーク部3と、操舵部4、前輪6、後輪7等を備えるものである。
【0035】
操舵部4は、電磁コイル及び永久磁石から成る操舵部駆動部103bがケースに収納され、受信機100からの制御信号に基づいてこの操舵部駆動部103bの電磁コイルが左右へ回動することのできるように構成されて成るものである。そして、この電磁コイルを後述するフロントフォーク部3の支持管32にリンク部材を介して接続させるなどして電磁コイルの回動をフロントフォーク部3に伝達することにより、操舵部4の前端に設けられフロントフォーク部3の軸受によって軸支されるフロントフォーク受軸を中心にフロントフォーク部3が左右に回動可能となる。即ち、この操舵部4は、走行玩具1の走行中に、該走行玩具1の進行方向を左右へ変更することができるようにするものである。
【0036】
そして、後輪駆動部103aは、本体2の後方に配置されており、後輪7を回転させる駆動源である後輪駆動用モータ及びこの後輪駆動用モータの回転力を伝達するギア列等から構成され、箱状の駆動ケース11に収納されている。そして、この駆動ケース11は、前側の上部において車体20の後部側に設けられたコイルばね等から成る図示しない後輪緩衝部を介して回動自在に取付けられており、後側の側面には、ギア列により回転駆動可能なように後輪7が取付けられている。尚、この駆動ケース11の側面には、実際のオートバイを想起できるような、チェーン及びギア等の図柄が描かれている。
【0037】
又、後輪7は、内部にリング状に形成された金属材料等の部材からなるフライホイールが一体的に設けられたものである。このフライホイールは、後輪7と同速で回転することにより生じるジャイロ効果で走行の安定性を確保するためのものである。このようなジャイロ効果を生じさせるためにタイヤを除く後輪7の部分を金属材料等の部材で形成するようにしてもよい。
【0038】
又、図示しない後輪緩衝部は、車体20の後部側と駆動ケース11の前側の上部との間に取付けられたコイルばね等により構成されている。即ち、後輪緩衝部は、走行中に後輪7が走行面60から受ける衝撃を駆動ケース11を介してコイルばねにより緩衝できるようになっている。
【0039】
そして、この走行玩具1は、本体2の後部から突出して設けられた小型車輪10を有する後部支持部12を更に備えるものである。この後部支持部12は、後輪走行姿勢に移行した際、後輪7と共に走行玩具1を支持し、後輪走行姿勢を安定して継続できるようにする部分であり、車体20の後部側に設けられた取付け部と、この取付け部の端部に回転自在に設けられた小型車輪10等とから構成されているものである。
【0040】
そして、本発明の実施例に係るフロントフォーク部3は、図4乃至図6に示すように、フロントフォーク部3を構成する一対の分岐部材のそれぞれが保持部34と、支持管32と、係止突起33aを上端に有する摺動軸33と、による圧縮手段と、係止部材45と、係止解除機構と、弾性体であるコイルばね35と、を具備するものである。
【0041】
又、このフロントフォーク部3は、図3に示したようにフロントフォーク30と、係止機構31と、を備えるものであり、このフロントフォーク30は、該フロントフォーク30の正面図及び側面断面図である図4(a)及び図4(b)に示すように、前輪6を保持する一対の保持部34と、一対の摺動軸33と、本体2を支持する一対の支持管32と、弾性体である一対のコイルばね35を具備するものである。
【0042】
そして、摺動軸33は、それぞれ下部が対応する保持部34に装着されるように固定されて保持され、上部が支持管32内に摺動可能に挿入され、コイルばね35は、それぞれその下部が保持部34にその上部が支持管32に装着されており、支持管32は、保持部34に対しコイルばね35を介して上下方向に揺動自在に支持され、当該支持管32、保持部34、摺動軸33が、保持部34と支持管32を近づける方向(即ち前輪6と本体2を近づける方向)にコイルばね35を圧縮可能とする圧縮手段として構成されるものである。
【0043】
保持部34は、前輪6を回転可能に保持するものである。この保持部34は、略円筒形状に形成されるものであって、下端近傍に該保持部34の中心軸と直交するように円筒形状の軸受34bが一体的に設けられ、この軸受34bに左右の保持部34の外側外縁よりも突出するような長さに形成される軸5が、当該保持部34の軸受34b及び前輪6に挿入され、該軸5の両端部に嵌着される取付部材49により取付けられている。これにより、前輪6が、軸5を中心として回転可能に保持部34によって保持される。
【0044】
支持管32は、操舵部4に接続されて本体2を支持するものである。この支持管32は、略円筒形状に形成されるものであって、操舵部4の前方左右に配置されるものであり、上端及び中央近傍において、それぞれが平行に配置される二枚の板材である上板32a及び下板32bの両端において連結されるように一体成型されるものである。そして、上板32aの下面及び下板32bの上面の中央には、フロントフォーク部3の左右への回動の回転中心となるフロントフォーク受軸13の上下端を軸支する軸受48が備えられている。そして、操舵部4の前端に設けられるこのフロントフォーク受軸13が、軸受48により軸支されることにより、操舵部4とフロントフォーク部3とが接続される。
【0045】
即ち、フロントフォーク部3は、操舵部4のフロントフォーク受軸13が軸受48に接続されることにより、支持管32によって操舵部4を介して本体2を支持すると共に、フロントフォーク受軸13を中心として回動可能となる。これにより、フロントフォーク部3は、前述の操舵部4の電磁コイルが回動すると、支持管32に接続されるリンク部材等を介して電磁コイルの回動がフロントフォーク部3に伝わり、フロントフォーク受軸13を中心として左右に回動することとなる。
【0046】
摺動軸33は、棒状に形成されるものであって、上下端に中央部の外径よりも径の大きい円柱形状の係止突起33a及び膨大部33bが固着されている。この摺動軸33は、それぞれ下部が対応する保持部34内に挿入された状態で膨大部33bと共に保持部34に固定して保持され、上部が支持管32内において支持管32の軸方向に摺動可能に挿入されているものである。
【0047】
尚、保持部34は、摺動軸33の外径と略等しい内径を有する円筒形状に形成することにより、保持部34の内面全体で摺動軸33の下部を保持し、挿入された摺動軸33と保持部34とを固定するように膨大部33bが固着され当該保持部34と一体となっているものであるが、摺動軸33を安定的に保持できるものであれば、円筒形状でなくともよい。又、摺動軸33と保持部34を、異なる部材として形成する場合に限ることなく一体的に形成してもよい。
【0048】
そして、支持管32は、内側下部において摺動軸33の外径よりも僅かに大きい内径となるように貫通孔が形成されているため、支持管32と摺動軸33とが略同軸上に配置されると共に、摺動軸33が支持管32の軸方向に摺動することができる。更に、支持管32は、内側上部において摺動軸33の係止突起33aの外径よりも大きい内径となるように貫通孔が形成されているため、摺動軸33が支持管32の軸方向に摺動する際、この貫通孔内に摺動軸33の上端に固着された係止突起33aが出入りすることができる。
【0049】
そして、支持管32と保持部34の間には、保持部34と支持管32を離隔する方向(即ち前輪6と本体2を離隔する方向)に付勢可能な弾性体であるコイルばね35が取付けられている。このコイルばね35は、それぞれ上部が支持管32の下板32bの下面に固着され、下部が保持部34の上端近傍において外方に突出するように形成されるリング状の鍔部34aの上面に固着されているものである。
【0050】
これにより、支持管32が、保持部34に対しコイルばね35を介して上下方向に揺動自在に支持されるため、当該支持管32、保持部34、摺動軸33が、保持部34と支持管32を近づける方向(即ち前輪6と本体2を近づける方向)にコイルばね35を圧縮可能とする圧縮手段としての機能を担い、コイルばね35が、走行時に走行面60から前輪6に伝わる上下動を吸収する緩衝機能を担うと共に、後輪走行移行時には圧縮から開放したときの伸張力を利用して保持部34(従って前輪6)に対し下方に向かう衝撃力を付勢すると同時に支持管32(従って支持管32が支持する本体2)を上方に押し上げる力を付勢する機能を担う。
【0051】
そして、フロントフォーク部3に備えられる係止機構31は、図5乃至図7に示すように、支持管32の前方に配置されており、摺動軸33が支持管32の管内を上方に移動したとき係止突起33aと係合して係止突起33aを支持管32の上端の上方位置に係止する一対の係止部材45を有すると共に、送信機110からの遠隔操作信号に応答して係止突起33aと係止部材45の係合を外す係止解除機構を備えているものである。
【0052】
この係止解除機構は、フロントフォーク30の支持管32の玩具中心側の側面において支持される一対の回転軸32cを中心に揺動可能なカムバー36と、該カムバー36を揺動させるカム駆動部103cを有しているものである。
【0053】
この係止解除機構のカムバー36は、略コ字状であって、それぞれの回転軸32cに軸支される軸受片36aが内側側面に突出するように固着され、上端において他の部分よりも肉厚に形成される一対の係止部材45を一体的に備えているものである。そして、この係止部材45は、支持管32の上端と係止突起33aの間に挿入可能とされ、保持部34と支持管32(即ち前輪6と本体2)が離隔するように移動することを妨げるように係止突起33aを係止するものである。
【0054】
そして、係止突起33aが係止された状態で、係止解除機構のカムバー36が回転軸32cを中心に揺動すると、係止部材45が支持管32の上端と係止突起33aの間から外れて、係止部材45による係止突起33aの係止状態が解除されることとなる。
【0055】
そして、カム駆動部103cは、図8に示すようにモータ41と減速機構と一対の偏心カム37を有し、偏心カム37の回転によりカムバー36の左右下端近傍を押圧して、カムバー36を揺動させるものである。このカム駆動部103cは、支持管32の前方に固着されたケース14に収納されており、モータ41を駆動源とし、該モータ41の回転力を、減速機構を構成するピニオンギア42、第一ギア43、第二ギア44を介してカム駆動軸40に固着される偏心カム37に伝達するものである。
【0056】
尚、カム駆動部103cの駆動源を電磁コイルと永久磁石として偏心カム37を駆動させることもできるが、カム駆動部103cをモータ41と減速機構と偏心カム37で構成することにより、係止突起33aの係止状態をより安定的に解除することができる。
【0057】
そして、図6及び図7に示すように、一対の支持管32の間において、支持管32の下板32bの下面に平板状の弾性体支持板47が固着されており、この弾性体支持板47の前側両端近傍には、コイルばね46の一端が固着されている。又、このコイルばね46は、他端がカムバー36の下部に固着されており、カムバー36の下部と支持管32とを離隔するように付勢する弾性体としての機能を担うものである。
【0058】
そして、係止部材45を支持管32の上端と係止突起33aの間に挿入させ、係止突起33aを係止するには、図9(a)に示すように、本体2を支持する支持管32が、前輪6を保持する保持部34に対しコイルばね35を介して上下方向に揺動自在に支持されている状態から、前輪6を本体2に近づけるように支持管32を手動で下方に押圧することによりコイルばね35を圧縮させると、図9(b)に示すように、支持管32が下方に移動して(即ち摺動軸33が支持管32の管内を相対的に上方に移動して)、摺動軸33の係止突起33aの上端が係止部材45の下端を押圧して、カムバー36の下部と支持管32とを離隔するように付勢するコイルばね46の弾性力に抗して、カムバー36が回転軸32cを中心に揺動することとなる。
【0059】
そして、保持部34と支持管32(即ち前輪6と本体2)を離隔させる方向に付勢するコイルばね35を更に圧縮すると、図9(c)に示すように、支持管32が更に下方に移動する。そして、摺動軸33の係止突起33aの下端と支持管32の上端との距離が、カムバー36の係止部材45の縦幅よりも長くなったとき、係止部材45が支持管32の上端と係止突起33aの間に潜り込むように、回転軸32cを中心として、カムバー36の下部と支持管32とを離隔するように付勢するコイルばね46の弾性力により回転軸32cを中心に揺動して、係止部材45が支持管32の上端と係止突起33aの間に挿入され、係止突起33aが係止部材45と係合して支持管32上端の上方位置において係止されることとなる。これにより、前輪6が走行面60に載置されている状態にあっては、支持管32の上方移動(前輪6に対する本体2の上方移動)が妨げられ、前輪6と後輪7による通常の走行状態にあるときでも、コイルばね35の圧縮状態を確実に維持することができる。
【0060】
そして、図10(a)に示すように、係止部材45が係止突起33aと係合して係止突起33aを支持管32上端の上方位置に係止して弾性体であるコイルばね35の圧縮状態が維持された状態にあるときに、送信機110を操作してカム駆動部103cにより偏心カム37を回動させると、図10(b)に示すように、偏心カム37の回転によりカムバー36の下端近傍が押圧されて、カムバー36が、カムバー36の下部と支持管32とを離隔するように付勢するコイルばね46の弾性力に抗して、回転軸32cを中心に揺動して係止部材45が前方に引き抜かれるようにして支持管32上端と係止突起33aの間から外れることとなる。
【0061】
尚、このとき、カムバー36と偏心カム37との接触点から回転軸32cまでの距離を係止部材45から回転軸32cまでの距離よりも大きくすることにより、梃子の原理によって僅かな力でカムバー36を揺動させて係止部材45を引き抜くように作動させることができるため、偏心カム37はカムバー36の下端により近い位置で接触させるように配置することが好ましい。更に、偏心カム37を用いてカムバー36を揺動させるため、偏心カム37を図に示した卵形や渦巻き形状としてなだらかに回転中心から外周までの距離を変化させることにより小さな回転トルクでカムバー36を揺動させることができ、モータ41を小型とすることが容易となる。
【0062】
そして、係止解除機構により係止突起33aと係止部材45の係合が外れて係止状態が解除されると、図10(c)に示すように、コイルばね35が圧縮状態から開放されて、該コイルばね35の弾性力により、勢いよく支持管32と保持部34とが離隔するように動くこととなる。したがって、前輪6が走行面60に接している状態において係止機構の係止力が開放されると、コイルばね35により前輪6に走行面60に向かう付勢力が与えられると共に、本体2に上方に向かう付勢力が与えられることにより、支持管32が本体2と共に瞬間的に上方へ跳ね上がり、跳ね上がった支持管32及び本体2は、更に上方へ浮上する際に摺動軸33の係止突起33aの下端が支持管32内の段差部に掛止して摺動軸33を持ち上げ、摺動軸33の下部において保持される前輪6を走行面60から浮上させることとなる。尚、前輪6の左右において一対のコイルばね35が軸対称に配置されることにより、安定的に前輪6を浮上させることができる。
【0063】
又、偏心カム37は、送信機110の遠隔操作信号に応答して一回転されるものである。したがって、係止部材45による係止突起33aの係止状態が解除された後は、偏心カム37が当初の所定位置まで回転し、カムバー36の下部と支持管32とを離隔するように付勢するコイルばね46によってカムバー36の下部が前方に移動するようにカムバー36が回動し、図9(a)に示したように、元の状態に復帰することとなる。
【0064】
以下、この走行玩具1を後輪走行に移行させるための手順と、前輪6と後輪7による通常の走行状態にある走行玩具1が後輪走行に移行する際の動作について説明する。
先ず、図11に示すように、走行玩具1の走行開始前に、手動による圧縮操作を行って圧縮手段で一対のコイルばね35のそれぞれを圧縮し、係止機構31によってコイルばね35の圧縮状態が維持された状態にある走行玩具1を前輪6と後輪7が走行面60に接する状態で走行面60に載置しておく。そして、送信機110の走行操作部113aを操作して、本体2の受信機100に前進走行の信号を送り走行玩具1の走行を開始させる。走行玩具1が安定して前輪6と後輪7による通常の走行状態にあるときに、送信機110の係止解除操作部113cを操作して係止解除の信号を発すると、受信機100がその遠隔操作信号に応答してカム駆動部103cのモータ41が駆動する。
【0065】
これにより、係止機構31による係止力が開放され、コイルばね35が圧縮状態から開放されると、コイルばね35の弾性力により前輪6に走行面60に向かう付勢力が与えられ、図12に示すように前輪6が走行面60から跳ね上がるように浮上することとなり、前輪6と後輪7による通常の走行姿勢から後輪7による走行姿勢へと移行する。
【0066】
そして、走行速度や加速度の程度によっては、傾斜角を例えば約90°となるまで走行玩具1を傾けることもできる。このとき、図13に示すように、走行玩具1の本体2の後端に設置される後部支持部12に設けられた小型車輪10が、後輪走行姿勢に移行したとき後輪7と共に走行面60に接するため、当該走行玩具1は、後輪7と後部支持部12とによって支持され、この後部支持部12の小型車輪10が回転することで、後部側への転倒を防止できると共に後輪走行姿勢を安定して維持することができる。
【0067】
そして、後輪走行姿勢を維持している状態において、前進走行の遠隔操作信号の送信を一時的に停止するなどして速度を緩めると、浮上していた前輪6が降下して走行面60に着地する。着地する際は、前輪6の緩衝部であるフロントフォーク30により、着地に伴う衝撃が吸収され着地後も安定的に走行を続けることができる。
【0068】
このように、走行前にフロントフォーク部3の弾性体であるコイルばね35を手動で圧縮可能とし、係止機構31で弾性体を圧縮維持した状態で走行面60に走行玩具1を載置してから走行を開始する構成としたので、弾性体の圧縮のための強力なモータを不要とし、小型且つ軽量で遊戯者が容易に取り扱うことのできる安価な後輪走行玩具を提供することができる。また、走行玩具1の前側の軽量化は後輪走行姿勢に移行させるための前輪6に向かう付勢力と前方に向かう加速度の適正化に有利で安定的に前輪6を浮上させる機構を実現することを可能にする。
【0069】
更に、本発明によれば、走行前に予め弾性体を圧縮した状態で走行させ、任意のタイミングで走行中に送信機110から遠隔操作信号を送信して係止機構31による弾性体に対する係止力を解除できる構成としたので、走行状態で弾性体の圧縮を開始しなければならない従来走行玩具のように走行中の弾性体に対する圧縮が所定状態に達するのを待つ必要がなく、この遊戯者の好ましいタイミングで後輪走行姿勢に移行させることができる。
【0070】
また、弾性体の圧縮のための強力なモータが不要になることから弾性体の圧縮を維持するための機構は、係止解除機構を支持管32に支持される回転軸32cを中心に揺動可能なカムバー36と該カムバー36を揺動させるカム駆動部103cによる簡単な構成とすることで、カムバー36の上端に係合された係止部材45の係止状態をカムバー36を僅かに揺動させることで解除し弾性体の圧縮状態維持を容易に開放することができるため、カム駆動部103cに必要とされる駆動力を容易に小さくすることができる。
【0071】
更に、カム駆動部103cにモータ41と減速機構と偏心カム37を備えることにより、弾性体の圧縮状態維持を、より小さな駆動力で安定的に開放することができる。
【0072】
そして、本体2の後端に小型車輪10を有する後部支持部12を設けることで、走行玩具1を後方により傾斜させた際にも、後輪7と小型車輪10で走行玩具1を支えることで、後部側への転倒を防止できると共にウィリー走行を安定して継続することができる。この場合も前述した走行玩具1の前側の軽量化はウィリー走行を安定化に有利である。
【0073】
又、カムバー36の下部に、該カムバー36の下部と支持管32とを離隔するように付勢可能な弾性体を備えることで、係止状態を解除して弾性体の圧縮状態維持を開放した後、係止機構31による係止状態前の状態に復元されることとなる。これにより、再び手動で弾性体を圧縮し、係止機構31により圧縮状態を維持させてウィリー走行を行わせることが可能となる。したがって、遊戯者は走行玩具1の前部を下方に押圧する操作を行うことによって簡単に弾性体を圧縮し、係止突起33aを係止して弾性体の圧縮状態を再び維持することができるため、複雑な動作を要せず容易に走行玩具1を取り扱うことができる。
【0074】
更に、送信機110からの係止解除の信号を受信機100が受信した際、制御部102がカム駆動部103cを駆動させると共に、後輪駆動部103aの駆動モータの回転速度を加速させることとすれば、前輪6と後輪7による通常の走行状態にあるとき、送信機110からの遠隔操作信号に応答してカム駆動部103cが駆動し係止機構31の係止力が開放されると共に、後輪駆動部103aから後輪7に加わる駆動力が増強され、コイルばね35が圧縮から開放されたときに生じる弾性力により前輪6に走行面60に向かう付勢力と走行玩具1の前方に向かう走行加速の相乗作用により前輪6を走行面60から浮上させ、走行玩具1を後輪7による走行姿勢へ容易に移行させることもできる。又、この相乗効果を利用することにより弾性体の弾性力の軽減を図ることができるため、弾性体を軽量なものとすることもできる。
【0075】
そして、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。例えば、図14に示すように、係止機構31の係止部材45を、カムバー36とは独立した部材として形成し、カムバー36の上端において、摺動軸33と直交するように設けられたピン50を回転中心として揺動可能に当該ピン50で結合することもある。
【0076】
これにより、係止状態にある係止部材45を引き抜く際、摺動軸33の係止突起33aを持ち上げるように加える上方への力を抑えることができるため、摺動軸33を下方に付勢する弾性体であるコイルばね35の圧縮状態維持を更に小さい力で開放することができる。
【0077】
又、本発明における走行玩具1は、無線遠隔操縦式の玩具であるが、操作部113と本体2を有線により繋ぐことにより操縦可能としてもよい。又、走行玩具1は、オートバイに限らず、マウンテンバイク等の自転車を模したものでもよいし、二輪走行車に限定することなく、後輪として左右に各々車輪を有する三輪バイク又は三輪自動車のような三輪走行車とする場合や、前後を各々二輪とする四輪走行車としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例に係る走行玩具の斜視図。
【図2】本発明の実施例に係る走行玩具の送信機及び受信機の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の実施例に係る走行玩具の通常走行時の状態を示す側面図。
【図4】本発明の実施例に係る走行玩具のフロントフォークの正面図及び側面断面図。
【図5】本発明の実施例に係る走行玩具のフロントフォーク部の正面図及び側面断面図。
【図6】本発明の実施例に係る走行玩具のフロントフォーク部の正面図及び側面断面図。
【図7】本発明の実施例に係る係止部材と係止突起の係止状態を示す斜視図。
【図8】本発明の実施例に係るカム駆動部の斜視図。
【図9】本発明の実施例に係るフロントフォーク部の動作を示す図。
【図10】本発明の実施例に係るフロントフォーク部の動作を示す図。
【図11】本発明の実施例に係る走行玩具の通常走行時の状態を示す側面図。
【図12】本発明の実施例に係る走行玩具の後輪走行時の状態を示す側面図。
【図13】本発明の実施例に係る走行玩具の後輪走行時の状態を示す側面図。
【図14】本発明の実施例に係る係止部材と係止突起の係止状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0079】
1 走行玩具 2 本体
3 フロントフォーク部 4 操舵部
5 軸 6 前輪
7 後輪 9 人形
10 小型車輪 11 駆動ケース
12 後部支持部 13 フロントフォーク受軸
14 ケース
20 車体 21 側面支持部
30 フロントフォーク 31 係止機構
32 支持管 32a 上板
32b 下板 32c 回転軸
33 摺動軸 33a 係止突起
33b 膨大部 34 保持部
34a 鍔部 34b 軸受
35 コイルばね 36 カムバー
36a 軸受片 37 偏心カム
40 カム駆動軸 41 モータ
42 ピニオンギア 43 第一ギア
44 第二ギア 45 係止部材
46 コイルばね 47 弾性体支持板
48 軸受 49 取付部材
50 ピン
60 走行面
100 受信機 101 受信回路
102 制御部 103 駆動部
103a 後輪駆動部 103b 操舵部駆動部
103c カム駆動部 104 電池
105 電源スイッチ 106 アンテナ
110 送信機 111 送信回路
112 制御部 113 操作部
113a 走行操作部 113b 旋回操作部
113c 係止解除操作部 114 電池
115 電源スイッチ 116 アンテナ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体の前側に前記本体に対し弾性体を介して保持された前輪と、前記本体の後側に取付けられた後輪と、前記後輪を駆動する後輪駆動部と、を備え、送信機からの操作信号によって遠隔操縦される走行玩具であって、
前記走行玩具は、前記前輪と前記本体が相対的に近づく方向に手動による圧縮操作を加えたとき前記弾性体の圧縮が可能に構成されており、手動により圧縮が加えられたとき前記弾性体の圧縮状態を維持する係止機構を更に備えて成り、
前記走行玩具の走行開始前に手動による前記圧縮操作を行って前記弾性体を圧縮し、前記係止機構によって前記弾性体の圧縮状態が維持された状態にある前記走行玩具を走行面に載置して前記走行玩具の走行を開始し、
前記前輪と後輪による走行状態にあるとき、前記送信機からの遠隔操作信号に応答して前記係止機構の係止力を開放して、前記弾性体を圧縮状態から開放したとき、該弾性体の弾性力により前記前輪に走行面に向かう付勢力を与えることで前記前輪を走行面から浮上させ、前記後輪による走行姿勢へ移行するように構成されて成ることを特徴とする走行玩具。
【請求項2】
前記前輪を回転可能に保持する保持部と、前記本体を支持する支持管と、下部が前記保持部に固定され上部が前記支持管の管内に摺動可能に装着された摺動軸と、下部が前記保持部に装着され上部が前記支持管に装着された前記弾性体として作用するコイルばねとを具備し、
前記支持管は前記保持部に対し前記コイルばねを介して揺動自在に支持されており、
前記摺動軸は軸上端に係止突起を有し、
前記係止機構は、前記支持管の前方に配置されており、前記摺動軸が前記支持管の管内を上方に移動したとき前記係止突起と係合して前記係止突起を前記支持管上端の上方位置に係止する係止部材と、前記送信機からの遠隔操作信号に応答して前記係止突起と係止部材の係合を外す係止解除機構と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の走行玩具。
【請求項3】
前記係止解除機構は、前記支持管に支持される回転軸を中心に揺動可能なカムバーと該カムバーを揺動させるカム駆動部を有し、
前記係止部材は、前記カムバーの上端に設けられ、前記支持管上端と係止突起の間に挿入可能とされ、
前記カムバーが揺動することにより前記係止部材が前記支持管上端と係止突起の間から外れることを特徴とする請求項2に記載の走行玩具。
【請求項4】
前記カム駆動部は、モータと減速機構と偏心カムを有し、該偏心カムの回転により前記カムバーの下端又は下端近傍を押圧することを特徴とする請求項3に記載の走行玩具。
【請求項5】
前記係止部材は、前記カムバーの上端に揺動可能にピンで結合されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の走行玩具。
【請求項6】
前記本体の後端に設けられた小型車輪を有する後部支持部を備え、後輪走行姿勢に移行した際、当該玩具が、前記後輪と前記後部支持部とによって支持されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の走行玩具。
【請求項7】
前記カムバーの下部に、該カムバーの下部と前記支持管とを離隔するように付勢可能な弾性体を備えることを特徴とする請求項3乃至請求項6の何れかに記載の走行玩具。
【請求項8】
前記本体の前側に設けられたフロントフォーク部と該フロントフォーク部の上部に設けられた操舵部とを備え、前記フロントフォーク部を構成する一対の分岐部材のそれぞれが前記保持部と前記支持管と前記係止突起を有する摺動軸と前記係止部材と前記係止解除機構と前記コイルばねとを具備し、前記本体の後部から突出して設けられた小型車輪を有する後部支持部を更に備え、前記走行玩具の走行開始前に手動による前記圧縮操作により前記コイルばねのそれぞれを圧縮し、前記係止機構によって前記コイルばねの圧縮状態が維持された状態にある前記走行玩具を前記前輪と前記後輪が走行面に接する状態で走行面に載置して前記走行玩具の走行を開始し、前記後輪走行姿勢に移行したとき前記後輪と前記小型車輪が走行面に接して後輪走行姿勢を維持することを特徴とする請求項2に記載の走行玩具。
【請求項9】
本体と、該本体の前側に前記本体に対し弾性体を介して保持された前輪と、前記本体の後側に取付けられた後輪と、前記後輪を駆動する後輪駆動部と、を備え、送信機からの操作信号によって遠隔操縦される走行玩具であって、
前記走行玩具は、前記前輪と前記本体が相対的に近づく方向に手動による圧縮操作を加えたとき前記弾性体の圧縮が可能に構成されており、手動により圧縮が加えられたとき前記弾性体の圧縮状態を維持する係止機構を更に備えてなり、
前記走行玩具の走行開始前に手動による前記圧縮操作を行って前記弾性体を圧縮し、前記係止機構によって前記弾性体の圧縮状態が維持された状態にある前記走行玩具を走行面に載置して前記走行玩具の走行を開始し、
前記前輪と後輪による走行状態にあるとき、前記送信機からの遠隔操作信号に応答して前記係止機構の係止力を開放すると共に前記後輪駆動部から前記後輪に加わる駆動力を増強する動作を実行することにより、該弾性体が圧縮から開放されたときに生じる弾性力により前記前輪に走行面に向かう付勢力と前記走行玩具の前方に向かう走行加速の相乗作用により前記前輪を走行面から浮上させ、前記後輪による走行姿勢へ移行するように構成されて成ることを特徴とする走行玩具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−261592(P2009−261592A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114392(P2008−114392)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(307024004)株式会社タイヨー (6)
【Fターム(参考)】