説明

走行車両の泥落とし具

【課題】走行車両の走行装置の表面におけるラグの間及び側面に付着した泥を、効率よく落とすことができる走行車両の泥落とし具を提供する。
【解決手段】走行車両の走行装置の表面におけるラグRの間A及び側面Sに付着した泥を落とす泥落とし具1であって、棒状の柄部2と、柄部2の一端側に接合され、且つラグRの間A及び側面Sの泥を掻き取る板状の掻き取り部3とを備え、前記掻き取り部3は、前記ラグRに対してその両側に跨るように嵌合する嵌合部4を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両の走行装置の表面におけるラグの間及び側面に付着した泥を落とす走行車両の泥落とし具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの走行車両が圃場を走行することによって、クローラ、タイヤ等の走行装置の表面におけるラグ(突起物)の間及び側面に泥が付着し、道路走行中に泥が落下することで道路を汚すなどといった問題が生じていた。さらに、走行装置のラグの間及び側面に付着した泥が乾燥硬化してしまうと洗車時にも除去できなくなる問題も招いていたことから、頻繁に泥を落とす必要が生じていた。
そこで、走行装置のラグの間及び側面に付着した泥を、スコップ及び棒状のものを用いて掻き落とすことが行われていた。
【0003】
また、タイヤが回転することを利用して、タイヤに付着した泥を掻き落とすような装置が開示されている(特許文献1)。この装置は、タイヤの前後左右を取り囲むように大きな枠体を設け、この枠体の前後の部分によってタイヤの表面に付着した泥を掻き落とす構造となっていた。
【特許文献1】特開2001−080473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スコップ及び棒状のものを用いた場合、ラグの間及び側面に付着した泥は非常に落としにくく、隆起する複数のラグの形状に沿わせて付着した泥を落とすため、その作業は重労働であり効率も悪かった。また、スコップ及び棒状のものにおける先端の形状・大きさは、走行装置のラグの間及び側面の形状・大きさと異なっており、ラグの間及び側面に付着した泥を全て落とすことは困難であった。
さらに、道路上等で落とした泥をスコップなどで掻き集める作業も、非常に手間がかかり煩わしかった。そして、泥を落とすスコップ等を搭載するスペースを走行車両に確保することは困難であった。
【0005】
一方、特許文献1に記載された装置では、タイヤのラグの上面付近に付着した泥しか掻き落とすことができず、タイヤのラグの間及び側面に付着した泥を落とすことはできなかった。
かかる問題に鑑み、本発明は、走行車両の走行装置の表面におけるラグの間及び側面に付着した泥を、効率よく落とすことができる走行車両の泥落とし具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
第1に、走行車両の走行装置の表面におけるラグRの間A及び側面Sに付着した泥を落とす泥落とし具であって、柄部2の一端側にラグRの間A及び側面Sの泥を掻き取る掻き取り部3を備え、前記掻き取り部3は、前記ラグRに跨るように嵌合する嵌合部4を有していることを特徴とする。
第2に、前記柄部2は、前記掻き取り部3と接合している端部が前記嵌合部4を目視可能にすべく二叉形状となっていることを特徴とする。
【0007】
第3に、前記掻き取り部3には、前記掻き取り部3より広巾の平板5を着脱自在に装着していることを特徴とする。
これにより、ラグRに跨るように嵌合する嵌合部4を有している掻き取り部3を、ラグRの間A及び側面Sに沿わせて掻き取るだけで、ラグRの間A及び側面Sに付着した泥を非常に簡単に効率よく落とすことができる。
また、柄部2の掻き取り部3と接合している端部が二叉形状となっているため、嵌合部4がラグRに嵌合して泥を掻き取る様子を目で確認しながら、ラグRの間A及び側面Sに付着した泥を落とすことができる。
【0008】
さらに、掻き取り部3より広巾の平板5を掻き取り部3に装着させることで、道路上等で落とした泥を容易に掻き集めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、走行車両の走行装置の表面におけるラグの間及び側面に付着した泥を、効率よく落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜5に示す第1実施形態の泥落とし具1は、クローラ型トラクタのクローラ走行装置の泥落としに使用されるものである。この泥落とし具1は、棒状の柄部2と、柄部2の一端側に接合され、且つラグRの間A及び側面Sの泥を掻き取る板状の掻き取り部3とからなる。
柄部2は、把持棒6と、把持棒6の一端に被せられたキャップ7と、キャップ7と掻き取り部3とを接合する二叉部8とからなる。把持棒6は、泥落としをする作業者が片手又は両手で把持する長さを持つ。キャップ7は、一方のみ開口した筒状であり、嵌合した把持棒6の一端に被せ、ネジ止め、接着等によって把持棒6に固定されている。
【0011】
二叉部8は、後述する嵌合部4を目視可能とすべく、キャップ7側から掻き取り部3側にかけてV字型の二叉形状に分岐している。つまり、把持棒6を把持しながら泥を落とす作業者からも十分にラグRに嵌合する嵌合部4が視認できるように、二叉部8の分岐した各先端の間はラグRの巾よりも広く、二叉部8の分岐した各枝は十分な長さ及び開き具合を持つ。また、二叉部8の基部はキャップ7に溶接、接着等によって接合され、二叉部8の分岐した各先端は掻き取り部3に溶接、接着等によって接合されている。
なお、キャップ7と二叉部8との接合をより強固にするために、二叉部8の基部の下面に補強板9を取り付け、二叉部8の後端面及び補強板9の後端面とキャップ7の前端面とを接合させることで、キャップ7、二叉部8及び補強板9が互いに接触する面積を広げ、キャップ7と二叉部8との接合を補強している。さらに、掻き取り部3及び二叉部8の接合をより強固にするために、二叉部8の分岐した先端をそれぞれ下方に折り曲げ、掻き取り部3及び二叉部8が互いに接触する面積を広げ、掻き取り部3と二叉部8との接合を補強している。
【0012】
掻き取り部3は、矩形状の平らな板であり、その下縁3Aの中央にはラグRに跨るように嵌合する嵌合部4を有している。掻き取り部3の上下巾は、ラグRの高さよりも長くなっており、掻き取り部3の左右巾は、ラグRのピッチ寸法と同一又は長くなっている。
嵌合部4は、掻き取り部3における下縁3Aの中央を略台形状に切り欠いて形成されており、その深さ及び巾はラグRの高さ及び巾と略同一であり、その形状はラグRの断面形状と略相似形になっている。したがって、嵌合部4はラグRに対してその両側から跨るように嵌合することができ、ラグRの間Aに付着した泥は、掻き取り部3の下縁3Aによって落とすことができ、ラグRの両側面Sに付着した泥は、嵌合部4の左右の斜め側縁4Sによって落とすことができる。また、掻き取り部3における嵌合部4の底の両脇には、前述した二叉部8の分岐した先端が接合されており、泥落としをする作業者から見て、嵌合部4は二叉部8における分岐した各枝の間に位置する。したがって、嵌合部4が柄部2の陰に隠れることなく、作業者は視認しながら確実に嵌合部4をラグRに嵌合させることができ、しかも嵌合部4がラグRに嵌合し掻き取り部3が泥を掻き取る様子を目視しつつ、ラグRの間A及び側面Sから泥を落とす作業を行うことができる。
【0013】
なお、掻き取り部3の左右側縁3Sが、嵌合部4に嵌合するラグRと隣り合う左右のラグRに達するように掻き取り部3の左右巾を設定してもよい。これにより、嵌合部4に嵌合するラグRの両側面S、及びそのラグRと隣り合う左右のラグRとの間Aに付着した泥を落とすことができる。
さらに、掻き取り部3には、掻き取り部3よりも広巾の平板5を装着させることができる。平板5は、掻き取り部3に装着させて道路上等で落とした泥を掻き集めるために用いるものであり、掻き取り部3よりも巾の広い矩形の板部10と、板部10に掻き取り部3を挿入連結する連結部11とを設けている。板部10は、左右巾に長い矩形の平らな板状であり、その左右巾は掻き取り部3の左右巾よりも長く、その下縁10Aは一直線状となっている。よって、この広巾な下縁10Aで道路等の表面を掻くことで、道路等の上に落とした泥を一度で大量に掻き集めることができる。
【0014】
連結部11は、掻き取り部3の左右側部を上方から挟み留める左右一対のクリップ状のものであり、板部10の左右巾方向の中央に設けられている。また、作業者が道路上の泥を掻き集める際に、平板5に対して下向き及び左右方向に力がかかっても掻き取り部3から平板5が外れないように、連結部11の下方及び左右方向外側は閉じている。
なお、連結部11が掻き取り部3を挟み留めているだけであるため、平板5と掻き取り部3とは着脱自在である。したがって、作業者は道路上の泥を掻き集める必要が生じた場合には掻き取り部3に平板5を装着すればよいため、泥を掻き集めるための道具を別途用意する必要がなく、泥落とし具1を走行車両に搭載する際に掻き取り部3から平板5を取り外すことで省スペース化を図ることができる。
【0015】
本発明の第2実施形態を説明する。
図6には、本発明の第2実施形態の泥落とし具1が示されている。
第2実施形態の泥落とし具1は、タイヤ走行装置を前に、クローラ走行装置を後に備えたクローラ型トラクタの泥落としに使用されるものであり、第1実施形態と最も異なるところは、掻き取り部3の下縁31A及び上縁32Aのそれぞれに第1嵌合部41及び第2嵌合部42を有している点にある。
第1嵌合部41は、掻き取り部3における下縁31Aの中央を略台形状に切り欠いて形成されており、第2嵌合部42は、掻き取り部3における上縁32Aの中央を略台形状に切り欠いて形成されている。また、タイヤ走行装置及びクローラ走行装置におけるラグRの断面形状・大きさ等がそれぞれ異なっている場合であっても、第1嵌合部41の深さ及び巾をクローラ走行装置におけるラグRの高さ及び巾と略同一とし、第1嵌合部41の形状をクローラ走行装置におけるラグRの断面形状と略相似形とすると同時に、第2嵌合部42の深さ及び巾をタイヤ走行装置におけるラグRの高さ及び巾と略同一とし、第2嵌合部42の形状をタイヤ走行装置におけるラグRの断面形状と略相似形としている。つまり、各嵌合部41、42を後のクローラ走行装置及び前のタイヤ走行装置のそれぞれに対応させることで、前後両方の走行装置に付着した泥を1本の泥落とし具1で効率よく落とすことができる。
【0016】
ここで、クローラ走行装置において、そのラグRの間Aに付着した泥は掻き取り部3の下縁31Aによって落とすことができ、そのラグRの両側面Sに付着した泥は第1嵌合部41の左右の斜め側縁41Sによって落とすことができる。また、タイヤ走行装置において、そのラグRの間Aに付着した泥は掻き取り部3の上縁32Aによって落とすことができ、そのラグRの両側面Sに付着した泥は第2嵌合部42の左右の斜め側縁42Sによって落とすことができる。
なお、掻き取り部3における上下左右側縁等にそれぞれ異なる大きさの嵌合部4を設けてもよい。
【0017】
さらに、第2実施形態の泥落とし具1は、各嵌合部41、42が嵌合するラグRと隣り合う左右のラグRの側面Sに付着した泥も掻き落とせるように、掻き取り部3の左右側縁31S、32Sを、前後の走行装置におけるラグRの側面Sの形状にそれぞれあわせた形状にしている点においても第1実施形態と異なっている。
つまり、掻き取り部3の下縁31Aの長さは、第1嵌合部41が嵌合するラグRと隣り合う左右のラグRの側面Sに掻き取り部3の下寄り左右側縁31Sが達するように設定されている。また、掻き取り部3の下寄り左右側縁31Sの形状は、第1嵌合部41が嵌合するラグRと隣り合う左右のラグRの側面Sに掻き取り部3の下寄り左右側縁31Sが沿うように斜めに突出して形成されている。
【0018】
一方、掻き取り部3の上縁32Aの長さは、第2嵌合部42が嵌合するラグRと隣り合う左右のラグRの側面Sに掻き取り部3の上寄り左右側縁32Sが達するように設定されている。また、掻き取り部3の上寄り左右側縁32Sの形状は、第2嵌合部42が嵌合するラグRと隣り合う左右のラグRの側面Sに掻き取り部3の上寄り左右側縁32Sが沿うように斜めに切り欠いて形成されている。
また、タイヤ走行装置におけるラグRの間Aは曲面であるものの、掻き取り部3の上縁32AをラグRの間Aの曲面に沿うようにカーブ状に形成することで、タイヤ走行装置のラグRの間Aに付着した泥をより効率良く落とすことができる。
【0019】
さらに、第2実施形態の泥落とし具1は、二叉部8がコの字型の二叉形状となっている点も異なっている。この二叉部8は、細長い板状のものをコの字型に折り曲げて二叉形状としており、掻き取り部3及びキャップ7との接合面が広く、補強板9を用いずとも十分な強度を確保できる。また、部品点数を減らすことができ、生産効率を高め、生産コストを下げることができる。
なお、泥落とし具1等の各構成または全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0020】
また、本発明の泥落とし具1は、クローラ型トラクタに限らず、前後ともにタイヤ走行装置を備えたトラクタのタイヤに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を示す斜視図。
【図2】掻き取り部及び柄部の端部の平面図。
【図3】掻き取り部及び柄部の端部の正面図及び側面図。
【図4】掻き取り部に平板を装着した状態を示す斜視図。
【図5】平板の平面図及び正面図。
【図6】本発明の第2実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0022】
1 泥落とし具
2 柄部
3 掻き取り部
3A 掻き取り部の下縁
4 嵌合部
4S 嵌合部の側縁
5 平板
6 把持棒
7 キャップ
8 二叉部
10 板部
11 連結部
R ラグ
A ラグの間
S ラグの側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両の走行装置の表面におけるラグ(R)の間(A)及び側面(S)に付着した泥を落とす泥落とし具であって、
柄部(2)の一端側にラグ(R)の間(A)及び側面(S)の泥を掻き取る掻き取り部(3)を備え、
前記掻き取り部(3)は、前記ラグ(R)に跨るように嵌合する嵌合部(4)を有していることを特徴とする走行車両の泥落とし具。
【請求項2】
前記柄部(2)は、前記掻き取り部(3)と接合している端部が前記嵌合部(4)を目視可能にすべく二叉形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の走行車両の泥落とし具。
【請求項3】
前記掻き取り部(3)には、前記掻き取り部(3)より広巾の平板(5)を着脱自在に装着していることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行車両の泥落とし具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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